有島武郎: 一房の葡萄
first published:『赤い鳥』1920年8月号
audio: www.youtube.com/watch?v=NFo7r8YLDUM
desc: 有岛武郎的经典童话,取材于作者的童年经历,讲述少年犯错后主动坦白并得到宽恕的故事。文中的一串葡萄象征着包容与善意,这部以心灵成长为主题的佳作至今仍广受喜爱。
一
僕は小さい時に絵を描くことが好きでした。僕の通っていた学校は横浜の山の手という所にありましたが、そこいらは西洋人ばかり住んでいる町で、僕の学校も教師は西洋人ばかりでした。そしてその学校の行きかえりにはいつでもホテルや西洋人の会社などがならんでいる海岸の通りを通るのでした。通りの海添いに立って見ると、真青な海の上に軍艦だの商船だのが一ぱいならんでいて、煙突から煙の出ているのや、檣から檣へ万国旗をかけわたしたのやがあって、眼がいたいように綺麗でした。僕はよく岸に立ってその景色を見渡して、家に帰ると、覚えているだけを出来るだけ美しく絵に描いて見ようとしました。けれどもあの透きとおるような海の藍色と、白い帆前船などの水際近くに塗ってある洋紅色とは、僕の持っている絵具ではどうしてもうまく出せませんでした。いくら描いても描いても本当の景色で見るような色には描けませんでした。
我小时候很喜欢画画,我上的学校位于横滨的山上,那里住着很多西洋人,学校的老师也几乎都是洋人。我放学回家时,总会经过那条布满饭店与洋公司的海边道路。站在马路上往海边看,一片青蓝的海洋上满是军舰和商船,有些船的烟囱冒着烟,有些船的桅杆和桅杆之间挂着万国旗,美得让我眼睛都看痛了。我常常站在岸边看着这番景色,回家后再试图把自己脑中美美的画面画出来。但那澄澈透明的海蓝,还有那白色帆船漂在水线附近的洋红,却是我无论怎么用自己的画具都调不出来的颜色——无论怎么画,就是画不出自己双眼所看到的景色。
ふと僕は学校の友達の持っている西洋絵具を思い出しました。その友達は矢張西洋人で、しかも僕より二つ位齢が上でしたから、身長は見上げるように大きい子でした。ジムというその子の持っている絵具は舶来の上等のもので、軽い木の箱の中に、十二種の絵具が小さな墨のように四角な形にかためられて、二列にならんでいました。どの色も美しかったが、とりわけて藍と洋紅とは喫驚するほど美しいものでした。ジムは僕より身長が高いくせに、絵はずっと下手でした。それでもその絵具をぬると、下手な絵さえがなんだか見ちがえるように美しく見えるのです。僕はいつでもそれを羨しいと思っていました。あんな絵具さえあれば僕だって海の景色を本当に海に見えるように描いて見せるのになあと、自分の悪い絵具を恨みながら考えました。そうしたら、その日からジムの絵具がほしくってほしくってたまらなくなりました。けれども僕はなんだか臆病になってパパにもママにも買って下さいと願う気になれないので、毎日々々その絵具のことを心の中で思いつづけるばかりで幾日か日がたちました。
我突然想起了一个朋友的西洋画具,那位朋友是洋人,比我大两岁,身高也比我高,每当要看高大的他时,我总得抬头。名叫吉姆的这孩子,画具自然是上等的舶来品:在轻盈的木箱中,有四方形的颜料,十二色的它们,有如小墨条般地排成两列安坐。每个颜色都很美,但在那之中,海蓝和洋红更是美得让人吃惊。吉姆虽然身高比我高,但他不怎么会画画。然而,用上这组画具,就算画得不怎么好,看起来也很美,这让我一直很羡慕。只要有那组画具,我也能画出真正的海景。我甚至有点讨厌起自己粗恶的画具了。从那天开始,我就很想要吉姆的画具,但我就是个连向父母开口说想买画具都不敢的胆小鬼。就这样,我只能心中默默想着那个画具,就这样又过了好长一段日子。
今ではいつの頃だったか覚えてはいませんが秋だったのでしょう。葡萄の実が熟していたのですから。天気は冬が来る前の秋によくあるように空の奥の奥まで見すかされそうに霽れわたった日でした。僕達は先生と一緒に弁当をたべましたが、その楽しみな弁当の最中でも僕の心はなんだか落着かないで、その日の空とはうらはらに暗かったのです。僕は自分一人で考えこんでいました。誰かが気がついて見たら、顔も屹度青かったかも知れません。僕はジムの絵具がほしくってほしくってたまらなくなってしまったのです。胸が痛むほどほしくなってしまったのです。ジムは僕の胸の中で考えていることを知っているにちがいないと思って、そっとその顔を見ると、ジムはなんにも知らないように、面白そうに笑ったりして、わきに坐っている生徒と話をしているのです。でもその笑っているのが僕のことを知っていて笑っているようにも思えるし、何か話をしているのが、「いまに見ろ、あの日本人が僕の絵具を取るにちがいないから。」といっているようにも思えるのです。僕はいやな気持ちになりました。けれどもジムが僕を疑っているように見えれば見えるほど、僕はその絵具がほしくてならなくなるのです。
如今,我已经想不起来那是什么时候了,只记得当时葡萄已经成熟,所以应该是冬天来临前的秋末。那天的天空,正如那个时节常有的秋季天空一样,是个可以望见天空深处的晴朗日子。我们和老师一起吃着便当,纵使是在享用着期待已久的便当,我的心情也十分黯淡。我独自深思:如果有人看向我,想必可以发现我铁青的脸——我想要吉姆的画具想得快疯了,想得整个胸口都疼。而我觉得,吉姆一定知道我在想什么,于是我偷偷看了他一下。他像是什么都不知道般地开怀大笑,跟坐在一旁的学生聊着天。不过,我总觉得他知道我在打什么主意,他跟别人说话时,我觉得他一定是在偷偷说:“等着瞧,那个日本人一定会来偷我的画具!”我的心情郁闷起来。但吉姆越像在怀疑我,我就越想得到他的画具。
二
僕はかわいい顔はしていたかも知れないが体も心も弱い子でした。その上臆病者で、言いたいことも言わずにすますような質でした。だからあんまり人からは、かわいがられなかったし、友達もない方でした。昼御飯がすむと他の子供達は活溌に運動場に出て走りまわって遊びはじめましたが、僕だけはなおさらその日は変に心が沈んで、一人だけ教場に這入っていました。そとが明るいだけに教場の中は暗くなって僕の心の中のようでした。自分の席に坐っていながら僕の眼は時々ジムの卓の方に走りました。ナイフで色々ないたずら書きが彫りつけてあって、手垢で真黒になっているあの蓋を揚げると、その中に本や雑記帳や石板と一緒になって、飴のような木の色の絵具箱があるんだ。そしてその箱の中には小さい墨のような形をした藍や洋紅の絵具が……僕は顔が赤くなったような気がして、思わずそっぽを向いてしまうのです。けれどもすぐ又横眼でジムの卓の方を見ないではいられませんでした。胸のところがどきどきとして苦しい程でした。じっと坐っていながら夢で鬼にでも追いかけられた時のように気ばかりせかせかしていました。
我的脸蛋或许尚且称得上可爱,但身体和心灵都相当脆弱。不仅如此,我还是个胆小鬼,根本不敢说出想说的话,所以不怎么讨人喜欢,也没什么朋友。午餐时间一结束,活泼的孩子们就都到运动场去追赶跑跳、大玩特玩,但那天的我心情异常低落,独自回了教室。外面越是明亮,教室里就越显黑暗,一如我的内心。我坐在我的位置上,视线不时飘向吉姆的桌子,翻开小孩子们用小刀恶作剧地雕了纹样,又因被脏兮兮的手摸过而染黑的桌盖,里面放着书本、笔记本和石板,还有那个宛如糖果般的木色画具箱,画具箱里有墨条状的海蓝和洋红颜料。我觉得我的脸红了起来,我不由自主地转过身去,却又被它吸引,不得不往吉姆的桌子看去。心脏剧烈地跳动,甚至让人有点难受。明明只是坐着,却有如在梦中被恶鬼追着跑似的心慌。
教場に這入る鐘がかんかんと鳴りました。僕は思わずぎょっとして立上りました。生徒達が大きな声で笑ったり呶鳴ったりしながら、洗面所の方に手を洗いに出かけて行くのが窓から見えました。僕は急に頭の中が氷のように冷たくなるのを気味悪く思いながら、ふらふらとジムの卓の所に行って、半分夢のようにそこの蓋を揚げて見ました。そこには僕が考えていたとおり雑記帳や鉛筆箱とまじって見覚えのある絵具箱がしまってありました。なんのためだか知らないが僕はあっちこちを見廻してから、誰も見ていないなと思うと、手早くその箱の蓋を開けて藍と洋紅との二色を取上げるが早いかポッケットの中に押込みました。そして急いでいつも整列して先生を待っている所に走って行きました。
要学生回教室的钟,当当作响。我被吓得站了起来。从窗户望去,可以看到学生们笑语喧哗走向洗手间的情景。我那好似瞬间被冻结般的脑袋让我感到有些不舒服。我的身体摇摇晃晃地来到吉姆桌前,恍惚地掀开了桌盖——跟我预想的一样,在笔记本和笔盒之间,就是那个自己见过的画具箱。不知为何,我东张西望,确定没有人在看着自己后便打开箱子,取出海蓝和洋红的颜料块,塞进了自己的口袋,然后急急忙忙地前往我们班排队等老师的地方。
僕達は若い女の先生に連れられて教場に這入り銘々の席に坐りました。僕はジムがどんな顔をしているか見たくってたまらなかったけれども、どうしてもそっちの方をふり向くことができませんでした。でも僕のしたことを誰も気のついた様子がないので、気味が悪いような、安心したような心持ちでいました。僕の大好きな若い女の先生の仰ることなんかは耳に這入りは這入ってもなんのことだかちっともわかりませんでした。先生も時々不思議そうに僕の方を見ているようでした。
年轻的女老师带着我们进了教室,同学们都坐在了各自的座位上。虽然我不禁想看看吉姆现在的表情,但我始终没有把头转向吉姆。话虽如此,好像没有人发现我到底做了什么,这让我有点不自在,却又感到安心。我最喜欢这位女老师了,然而她上课的内容,我左耳进右耳出,完全没有听懂,老师也不时用不可思议般的表情看向我。
僕は然し先生の眼を見るのがその日に限ってなんだかいやでした。そんな風で一時間がたちました。なんだかみんな耳こすりでもしているようだと思いながら一時間がたちました。
说不出为什么,我那天非常不想和老师对视。就这样过了一个小时,我总觉得班上的同学们在交头接耳。
教場を出る鐘が鳴ったので僕はほっと安心して溜息をつきました。けれども先生が行ってしまうと、僕は僕の級で一番大きな、そしてよく出来る生徒に「ちょっとこっちにお出で」と肱の所を掴まれていました。僕の胸は宿題をなまけたのに先生に名を指された時のように、思わずどきんと震えはじめました。けれども僕は出来るだけ知らない振りをしていなければならないと思って、わざと平気な顔をしたつもりで、仕方なしに運動場の隅に連れて行かれました。
下课的钟声响起,我安心地吐出一口长长的气。但老师一走,我们班上最健壮又最聪明的学生立刻抓住了我的手肘,说道:“你来一下。”我随即就像被老师抓到没写作业的学生似的,整个人开始颤抖。但我又立刻觉得我应该装傻装到底,于是想摆出一副没事人的样子,跟着那个学生来到了运动场的角落。
「君はジムの絵具を持っているだろう。ここに出し給え。」
“你拿了吉姆的颜料对吧!快交出来。”
そういってその生徒は僕の前に大きく拡げた手をつき出しました。そういわれると僕はかえって心が落着いて、「そんなもの、僕持ってやしない。」と、ついでたらめをいってしまいました。そうすると三四人の友達と一緒に僕の側に来ていたジムが、「僕は昼休みの前にちゃんと絵具箱を調べておいたんだよ。一つも失くなってはいなかったんだよ。そして昼休みが済んだら二つ失くなっていたんだよ。そして休みの時間に教場にいたのは君だけじゃないか。」と少し言葉を震わしながら言いかえしました。
那个学生朝我伸手,张开手掌。听他这么一说,我反而镇定了下来:“那种东西,我才没拿呢。”我信口开河,而吉姆带着三四个朋友来到我身边:“在午休前,我可是检查过画具箱的,当时里面一个都不少。结果午休结束后我就发现少了两个!午休时人在教室的,就只有你一个啊!”吉姆的声音有点颤抖,反驳道。
僕はもう駄目だと思うと急に頭の中に血が流れこんで来て顔が真赤になったようでした。すると誰だったかそこに立っていた一人がいきなり僕のポッケットに手をさし込もうとしました。僕は一生懸命にそうはさせまいとしましたけれども、多勢に無勢で迚も叶いません。僕のポッケットの中からは、見る見るマーブル球(今のビー球だまのことです)や鉛のメンコ1などと一緒に二つの絵具のかたまりが掴み出されてしまいました。「それ見ろ」といわんばかりの顔をして子供達は憎らしそうに僕の顔を睨みつけました。僕の体はひとりでにぶるぶる震えて、眼の前が真暗になるようでした。いいお天気なのに、みんな休時間を面白そうに遊び廻っているのに、僕だけは本当に心からしおれてしまいました。あんなことをなぜしてしまったんだろう。取りかえしのつかないことになってしまった。もう僕は駄目だ。そんなに思うと弱虫だった僕は淋しく悲しくなって来て、しくしくと泣き出してしまいました。
觉得已经撑不下去的我感到血往头顶直冲,涨红了整张脸。这时,吉姆的一个朋友突然用手探向我的口袋。我虽然奋力抵抗,但寡不敌众,于是我口袋里的玻璃珠和铅制的尪仔标都被翻了出来。当然,那两块颜料也不例外。大家的脸上都写着“快看”,并用憎恶的表情看着我。我的身体不停颤抖,眼前快要一片漆黑了。天气这么晴朗,下课时间大家玩得这么开心,但我反而颓丧到了极点。我为什么要做那种事呢?这下不就无法挽回了吗?完蛋了!本来就很胆小的我,感到孤独和悲伤,哽噎了起来。
「泣いておどかしたって駄目だよ。」とよく出来る大きな子が馬鹿にするような憎みきったような声で言って、動くまいとする僕をみんなで寄ってたかって二階に引張って行こうとしました。僕は出来るだけ行くまいとしたけれどもとうとう力まかせに引きずられて階子段を登らせられてしまいました。そこに僕の好きな受持ちの先生の部屋があるのです。
“哭也没用!”成绩好又健壮的那个孩子用轻蔑和愤恨的声音说。大家想把瘫在原地、赖着不动的我拽去二楼。我本来不想动,但依然被连拖带拽地登上了楼梯。而楼梯上,就是我最喜欢的那位老师的办公室。
やがてその部屋の戸をジムがノックしました。ノックするとは這入ってもいいかと戸をたたくことなのです。中からはやさしく「お這入り」という先生の声が聞えました。僕はその部屋に這入る時ほどいやだと思ったことはまたとありません。
吉姆最后还是敲了那间办公室的门——敲门就是询问能不能进屋的意思。“请进!”老师说道。我从来没有像这次一样这么不想进这个房间。
何か書きものをしていた先生はどやどやと這入って来た僕達を見ると、少し驚いたようでした。が、女の癖に男のように頸の所でぶつりと切った髪の毛を右の手で撫なであげながら、いつものとおりのやさしい顔をこちらに向けて、一寸首をかしげただけで何の御用という風をしなさいました。そうするとよく出来る大きな子が前に出て、僕がジムの絵具を取ったことを委しく先生に言いつけました。先生は少し曇った顔付きをして真面目にみんなの顔や、半分泣きかかっている僕の顔を見くらべていなさいましたが、僕に「それは本当ですか。」と聞かれました。本当なんだけれども、僕がそんないやな奴だということをどうしても僕の好きな先生に知られるのがつらかったのです。だから僕は答える代りに本当に泣き出してしまいました。
老师似乎正在批改作业,看到一群人蜂拥而入,她有点吃惊。明明是位女性,却像男人一样头发只留到颈上。她边用右手抚着自己的头发边用平常那温柔的神情看向这边,偏了偏头,做出“有什么事”的动作。那个健壮又聪明的学生走上前,对老师详细地叙述了我偷拿吉姆颜料的事情。老师的表情变得有些阴沉,认真地看了看大家的脸,还有快哭出来的我,问我:“是真的吗?”虽然是真的,但我实在不想让最喜欢的老师知道自己是个这么恶劣的人,这太痛苦了。于是,我用哭泣作为回答。
先生は暫く僕を見つめていましたが、やがて生徒達に向って静かに「もういってもようございます。」といって、みんなをかえしてしまわれました。生徒達は少し物足らなそうにどやどやと下に降りていってしまいました。
老师又看了我一会,向大家说道:“大家先回去吧。”老师让大家先离开,大伙便不太满意地、闹哄哄地下了楼。
先生は少しの間なんとも言わずに、僕の方も向かずに自分の手の爪を見つめていましたが、やがて静かに立って来て、僕の肩の所を抱きすくめるようにして「絵具はもう返しましたか。」と小さな声で仰いました。僕は返したことをしっかり先生に知ってもらいたいので深々と頷いて見せました。
老师沉默了一段时间,也不看我,只看着她自己的指甲。之后,她缓缓地站起来,靠近我,抱住我的肩膀,轻声问:“画具,你还给人家了吗?”我想让老师知道我已经还了,所以深深地点了点头。
「あなたは自分のしたことをいやなことだったと思っていますか。」
“你知道这是件坏事吗?”
もう一度そう先生が静かに仰った時には、僕はもうたまりませんでした。ぶるぶると震えてしかたがない唇を、噛みしめても噛みしめても泣声が出て、眼からは涙がむやみに流れて来るのです。もう先生に抱かれたまま死んでしまいたいような心持ちになってしまいました。
当老师再度平静地开口时,我再也忍不住了。无论多么努力试图咬紧牙关,都忍不住哭声,忍不住眼泪……甚至有了干脆在老师的怀中一死了之的念头。
「あなたはもう泣くんじゃない。よく解ったらそれでいいから泣くのをやめましょう、ね。次ぎの時間には教場に出ないでもよろしいから、私のこのお部屋に入らっしゃい。静かにしてここに入らっしゃい。私が教場から帰るまでここに入らっしゃいよ。いい。」と仰りながら僕を長椅子に坐らせて、その時また勉強の鐘がなったので、机の上の書物を取り上げて、僕の方を見ていられましたが、二階の窓まで高く這い上った葡萄蔓から、一房の西洋葡萄をもぎって、しくしくと泣きつづけていた僕の膝の上にそれをおいて静かに部屋を出て行きなさいました。
“好啦,你也别再哭了。你知道这样不对就行了,别哭了,乖。下堂课,你就先在我这边休息吧。在这里静静地休息一下,等我从教室回来,好吗?”老师边说着边让我坐上了长椅。此时上课钟响了,于是她拿起了桌上的书本,看了我一眼,又从那爬到二楼窗户旁的葡萄藤上,摘了一串西洋葡萄。她将它放到正在不停哭泣的我的大腿上,静静地离开了办公室。
三
一時がやがやとやかましかった生徒達はみんな教場に這入って、急にしんとするほどあたりが静かになりました。僕は淋しくって淋しくってしようがない程悲しくなりました。あの位好きな先生を苦しめたかと思うと僕は本当に悪いことをしてしまったと思いました。葡萄などは迚も喰べる気になれないでいつまでも泣いていました。
喧嚣的学校,也在学生们进入教室后突然静了下来。我感到既寂寞又非常难过。我是如此喜欢这个老师,可是我显然让老师失望了,这又让我察觉到,自己真的做了件很坏的事。只顾着哭泣的我,自然也没有心情去吃放在我面前的葡萄了。
ふと僕は肩を軽くゆすぶられて眼をさましました。僕は先生の部屋でいつの間にか泣寝入りをしていたと見えます。少し痩せて身長の高い先生は笑顔を見せて僕を見おろしていられました。僕は眠ったために気分がよくなって今まであったことは忘れてしまって、少し恥しそうに笑いかえしながら、慌てて膝の上から辷り落ちそうになっていた葡萄の房をつまみ上げましたが、すぐ悲しいことを思い出して笑いも何も引込んでしまいました。
突然,有人轻轻地把我摇醒了——我在老师办公室里,不知不觉就哭到睡着了,有位高瘦的老师带着笑容低头看我。我或许是因为睡了一觉,心情也平复了不少,把那些事给抛在了脑后,不好意思地笑了笑,慌忙地把要从腿上掉下去的葡萄串捞起来。看着葡萄,我又想起那些悲伤的事,笑容又缩得不见踪影了。
「そんなに悲しい顔をしないでもよろしい。もうみんなは帰ってしまいましたから、あなたはお帰りなさい。そして明日はどんなことがあっても学校に来なければいけませんよ。あなたの顔を見ないと私は悲しく思いますよ。屹度ですよ。」
你也不用那么难过。大家都回去了,你也回家吧。明天无论如何都要来学校哦。要是没看到你,我会很难过的。就这么说定了哦!”
そういって先生は僕のカバンの中にそっと葡萄の房を入れて下さいました。僕はいつものように海岸通りを、海を眺めたり船を眺めたりしながらつまらなく家に帰りました。そして葡萄をおいしく喰べてしまいました。
老师边说边将葡萄放进了我的包包。我依照平日下课的路,沿着海边眺望大海、眺望船舶,跟以往一样回到家,享用了美味的葡萄。
けれども次の日が来ると僕は中々学校に行く気にはなれませんでした。お腹が痛くなればいいと思ったり、頭痛がすればいいと思ったりしたけれども、その日に限って虫歯一本痛みもしないのです。仕方なしにいやいやながら家は出ましたが、ぶらぶらと考えながら歩きました。どうしても学校の門を這入ることは出来ないように思われたのです。けれども先生の別れの時の言葉を思い出すと、僕は先生の顔だけはなんといっても見たくてしかたがありませんでした。僕が行かなかったら先生は屹度悲しく思われるに違いない。もう一度先生のやさしい眼で見られたい。ただその一事があるばかりで僕は学校の門をくぐりました。
然而,第二天我实在没有心情去学校。要是突然肚子痛就好了!要是突然头痛就好了!但这种时候,连蛀牙都不肯赏脸!无计可施之下,我只好心不甘情不愿地出了家门,缓缓走向学校。途中,我想着要怎么样才能不进校门。回想起昨天老师说过的话,我又突然很想见到老师!如果我不去学校的话,老师一定会很难过……想见到老师那温柔的眼神,我靠着这个念头,好不容易才踏入了学校大门。
そうしたらどうでしょう、先ず第一に待ち切っていたようにジムが飛んで来て、僕の手を握ってくれました。そして昨日のことなんか忘れてしまったように、親切に僕の手をひいてどぎまぎしている僕を先生の部屋に連れて行くのです。僕はなんだか訳がわかりませんでした。学校に行ったらみんなが遠くの方から僕を見て「見ろ泥棒の譃つきの日本人が来た」とでも悪口をいうだろうと思っていたのにこんな風にされると気味が悪い程でした。
令人吃惊的事发生了:吉姆一见我进学校,立刻就冲上前握住我的手,亲切得仿佛忘了昨天发生过的一切。他带着忐忑不安的我前往老师的办公室,我一头雾水,原本以为到了学校,会有一群人远远地打量我,七嘴八舌地说:“那个日本人小偷来啦!”这跟预想完全相反的状况反倒让我很不自在。
二人の足音を聞きつけてか、先生はジムがノックしない前に、戸を開けて下さいました。二人は部屋の中に這入りました。
或许是听到了我们两人的脚步声,老师在吉姆还没敲门之前就开了门,让我们进入她的办公室。
「ジム、あなたはいい子、よく私の言ったことがわかってくれましたね。ジムはもうあなたからあやまって貰わなくってもいいと言っています。二人は今からいいお友達になればそれでいいんです。二人とも上手に握手をなさい。」と先生はにこにこしながら僕達を向い合せました。僕はでもあんまり勝手過ぎるようでもじもじしていますと、ジムはいそいそとぶら下げている僕の手を引張り出して堅く握ってくれました。僕はもうなんといってこの嬉しさを表せばいいのか分らないで、唯恥しく笑う外ありませんでした。ジムも気持よさそうに、笑顔をしていました。先生はにこにこしながら僕に、「昨日の葡萄はおいしかったの。」と問われました。
“吉姆,你是个好孩子!吉姆说,你不用跟他道歉,只要你们接下来能当朋友就好了。握个手吧!”老师满面微笑地对我们说。对我而言,这情况未免太过离奇,令我感到有点慌乱。不过吉姆直接握住了我垂着的手,坚定地握了握。我已经不知道该如何表达自己内心的喜悦,只能不好意思地傻笑。吉姆看起来也笑得相当愉快。老师看着这一幕,笑问:“昨天的葡萄好吃吗?”
僕は顔を真赤にして「ええ」と白状するより仕方がありませんでした。
我除了满脸通红地回答“嗯”以外,别的什么也说不出口。
「そんなら又あげましょうね。」
“那再给你一些吧!”
そういって、先生は真白なリンネルの着物につつまれた体を窓からのび出させて、葡萄の一房をもぎ取って、真白い左の手の上に粉のふいた紫色の房を乗せて、細長い銀色の鋏で真中からぷつりと二つに切って、ジムと僕とに下さいました。真白い手の平に紫色の葡萄の粒が重って乗っていたその美しさを僕は今でもはっきりと思い出すことが出来ます。
老师说着,向窗外探出她那包裹着洁白亚麻布衣服的身体,摘下了一串葡萄。她将紫色的、沾了一点白霜的葡萄串放在她那白皙的左手上,接着用细长的银色剪刀,从中央将它剪成两半,分给了我和吉姆。在白皙的手上层叠的紫色葡萄粒,美到我现在都能清楚忆起。
僕はその時から前より少しいい子になり、少しはにかみ屋でなくなったようです。
在那之后,我变得更加乖巧,也没那么胆小了。
それにしても僕の大好きなあのいい先生はどこに行かれたでしょう。もう二度とは遇えないと知りながら、僕は今でもあの先生がいたらなあと思います。秋になるといつでも葡萄の房は紫色に色づいて美しく粉をふきますけれども、それを受けた大理石のような白い美しい手はどこにも見つかりません。
这么说来,我那位好老师到底去了哪里呢?虽然知道大概无法再相会了,但还是希望能再见到她。只要到了秋天,就能看到紫色的葡萄串上结了层美丽的白霜,然而,那双宛如大理石般承载它们的玉手,却已杳不可求。
Footnotes
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メンコ:[名]ボール紙で円,四角,人形などの形に作り,表に武者絵その他人気者の絵をはった玩具 ↩