梶井基次郎: 奎吉
first published:『眞素木』1923年5月号
audio:https://www.youtube.com/watch?v=rVbfglcn2Pw
desc: 主人公奎吉沉溺于堕落的生活,被金钱的欲望驱使,想要向弟弟借钱。可与此同时,后悔与罪恶感却始终萦绕在他心头
「たうとう弟にまで金を借りる樣になつたかなあ。」と奎吉は、一度思ひついたら最後の後悔の幕迄行つて見なければ得心の出來なくなる、いつもの彼の盲目的な欲望がむらむらと高まつて來るのを感じながら思つた。
“终于到了向弟弟借钱这一步了。”奎吉感觉到他自己那盲目的欲望油然高涨。而且一旦想到这种方式,不走到最后后悔的那一步,他是不会甘休的。
彼にとつてはもうこうなればその醜い欲望が勝を占めてしまふに違ひなかつた。彼は彼で祕かにそれを見越して、それを拒否する意志の働くのを斷念する傾きが出來てゐたのだつた。
对他来说,到了这一步就一定是丑陋的欲望占了上风。他私下里已经预测到了这一点,而且他已经有了放弃抵抗这种意志的倾向。
彼は今金がつかんで見度くて堪らないのであつた。然し正當の手段でそれをこしらへるめどは周圍のどこにもなかつた。
现在的他太想手里握着钱了,但是周围完全没有正当的手段可以实现这一愿望。
彼は兩親から金を持つことを許されてゐないのであつた。どうして奎吉がそんな破目になつたかと云へば、それは彼の樣な性格の人間には當然な經緯の結果なのである。
他不被允许从父母那里拿钱。要说奎吉为什么会陷入如此窘境,都是他的性格使然。
――彼は二度續けて落第したため、最近迄籍をおいてゐた高等學校を追はれた。
——因为他连续两次落榜,所以最近被一直存放学籍的高中赶了出去。
あらゆる徳目と兩立しない欲望が、又しても又しても彼のちつぽけな意志を押し流した。彼の理想や彼の兩親の願望の忠臣である彼の意志なるものはあまりに弱かつたのである。彼はその度に後悔し誓つた。然し回を重ねるにつれて、放埒1の度は段々はげしくなつた。結局彼は引き摺られる所まで引き摺つてゆかれたのだ。――そして彼は學校を追はれたのだつた。
和所有美德都势不两立的欲望一次又一次地摧毁了他不堪一击的意志。他承载了自己的理想和父母的期许,可无奈他的意志实在太薄弱了。他每次都后悔,然后发誓。但是随着次数的增加,他越来越放纵。最终他被推到了边缘。——于是他被学校赶走了。
「お父さんも今度といふ今度は本當に慍つてゐらつしやる。」と奎吉は母に云ひきかされた。「お前の心が改まつたとわかるまで家へ置いてお小遣をやらないと云つてるからお前もその積りでゐなさい。それから將來の身の振方も考えてお置き、家ではもう學校へはやらない積りでゐるから。」
“你父亲这次是真的生气了。”奎吉被母亲训斥道,“他说在你知道悔改之前就在家里待着,零花钱也不会给你的,你做好这种准备。还有,想想你将来的路该怎么走,家里已经不打算再让你去上学了。”
奎吉は然し「はい。」とは返事が出來なかつた。が、彼の自由になる金が途絶えた生活は續けられて行つた。
奎吉连一声“是”都没有说。金钱能让他自由,然而他没钱的日子开始了。
然し彼はそろそろ金が欲しくなつて來た。彼は毎日散歩と稱して、息詰る樣な家の空氣から逃れ出た。然し金を持たずに街を歩くのは彼の憂鬱を増させるばかりであつた。
可是他很快就变得想要钱了。他每天自称去散步,其实是想逃离家里令人窒息的氛围。然而身无分文的他走在街上也不过是徒增了忧愁而已。
そしてその生活の二十日目程にあたる今日といふ今日は金のことばかりで思ひわづらつてゐた。賣つたり質屋へ持つてゆくものは何一つ見當らなかつた。あつても到底五十錢銀貨一枚つかめそうになかつた。そして最後に弟の貯金のことに不圖氣がついた時、彼はもう矢も楯もたまらなくなつた。
这样的生活持续到第二十天左右,也就是今天,他心里一直在考虑钱的事情。没有一件东西可以拿去卖,或者拿到当铺当掉。就算有,到最后也大概只能换一枚五十钱的银币。后来当他突然想到弟弟的存款时,已经完全无法抵抗了。
非常に卑しいことだと心に否定しながらもその欲望に身を委せてしまふ時、人はこの奎吉の樣な感じを抱くのであらうか。何にせよ奎吉はそのとき變な感じを經驗したのである。それは單に感じに止まつてゐたのであつて、何らの成心も必然其處に働いてゐたのではない樣であるが、私は其處に人間が自分の卑しさを庇はふとする意志が、感ぜられないながらも働いてゐるのではないかと思ふ。事實それは(せめてこの感じがする樣なら俺も眞から卑しくはないのだ)と自分自身に斷りを云ふことが出來るその證據になるのだから。
奎吉一面在心中思量“这是非常卑鄙的事”从而否定自己的想法,一面又委身于欲望之中。人们都有过奎吉这样的感受吧?总而言之,奎吉那时经历了奇妙的感觉。但是这种感觉仅止于感觉,他没有做出任何有企图的举动。可我倒认为,那感觉里存在人类想要隐藏自己的卑鄙的意志,然后若无其事地去采取行动。事实上,证据就是——至少这样想的话,我不是打心眼儿里就卑鄙——自己先进行了否定。
兔に角奎吉がその堪らなく嫌なことをやらうとした時、(いよいよ俺はやるな。)――何だかそこに第二の奎吉といふものがあつて本來の奎吉には何の申譯けもせずにそれをやり通す、そして本當の奎吉は傍からそれを眺めてゐるといふ樣な想像がふと起つたのである。
总而言之,奎吉打算要做这件非常讨厌的事情时,心想“终于要做了啊”的时候——不知怎的,另一个奎吉出现了。真的奎吉还没有作出解释,他就全部做完了,而且真的奎吉就只在一旁看着——奎吉突然想象出了这样一副场景。
彼の弟であるその莊之助は彼の父の外妾の子なのであつたが、その女は莊之助の十歳程の時死んでしまつたのを父は彼を自分の家へ置いて早く一人前にさせて、莊之助の祖母にあたる人間を養ふことが出來る樣にしてやらうと思つて兄弟の仲間入りをさせたのである。
奎吉的弟弟名叫庄之助,是他父亲在外面的小妾所生的孩子。那个女人在庄之助十岁左右就去世了,于是父亲把他带到家里。为了让他早日长大成人,以便能够赡养自己的外祖母,父亲把他当成和奎吉一样的儿子来抚养。
然し誰も彼もが不完全であつて、家の中は父が空想してゐた樣な調和がとれなかつた。そして誰も彼もが自分の狹量や不完全を感じる機會が多かつた。結局不幸なのは莊之助であつた。
然而不管是父亲还是别人都不是完美的,家里并不如他想象的那般和睦。而且不管是父亲还是别人,都有许多机会能够察觉到自己的小气和不足。到最后不幸的就是庄之助。
莊之助は最近に高等小學校を卒業して、極く少しの間父の知り合ひの店へ見習ひに行つてゐたのだつた。然し病弱でもあるし、當人もあまり氣が進まず、父もそれを可哀そうに思つて又家で紺飛白を着せて遊ばせてあつた。奎吉がふと思ひついたのはその莊之助の金を借りることだつた。
庄之助最近从高等小学毕业,到父亲熟人的店里见习了极短的时间。然而由于他多病体弱,自己也不太积极,父亲怜惜他,就又让他穿上蓝底白花的衣服出去玩耍。奎吉突然想到的就是,向庄之助借钱。
莊之助は最近見習ひに行つてゐた店から歸る時、そこの主人から包み金を渡された。そして彼の貯金には彼や彼の祖母が、幾度も空想してゐた種類の莊之助自身の金が加はつた譯であつた。
庄之助从近来见习的店回来之前,店主递给了他一包钱。这样一来,他的存款就是他祖母的钱,再加上奎吉数次憧憬过的庄之助自己得来的钱。
奎吉自身としてもそんな貯金から借りるのはどうしてもいやであつた。それに彼が今迄勝手氣儘に押へつけて來た弟にとつて奎吉のその申し出が、輕蔑となつて價ひするだらうとは奎吉は知つてゐた。そして奎吉は苦しんだ。然し此の際奎吉は手段などはどうでもいゝ程金が欲しかつた。その欲望はますます巨大に膨れ上つて、奎吉の良心を窒息させてしまひそうになつた。彼は非常に氣を重くさせてしまつた。何だか譯のわからないものゝ中にゐる樣な氣がした。が、とうとうその欲望が勝を占めた。その瞬間奎吉は第二の奎吉といふ樣なものがその醜い行爲をするのを傍觀する樣な、そして自分の聲をさへ一方から傍聽する樣な空想を起しながら、莊之助に呼びかけてしまつた。
奎吉原本是非常不乐意从那笔存款中借钱的。而且他知道,至今为止一直饱受奎吉颐指气使的弟弟如果听到他的这种要求,一定会鄙视他。奎吉发愁了。可是这时的奎吉想要钱想到了不择手段的程度。他的欲望不断地膨胀,良心快要窒息了。他犹豫极了。感觉有某种不明正体的东西堵在他心里。然而最终还是欲望占了上风。那一瞬间奎吉就好像旁观着第二个奎吉在做这丑陋的事,然后他仿佛听到了自己的声音叫住了庄之助。
「おい、莊之助、ちよつと。」
“喂,庄之助,过来一下。”
そう云つてしまつた時、彼はその聲が非常に不機嫌に重々しく響いたと思つた。
自己的声音说出了这样一句话。这声音重重地回荡着,让他极度厌恶。
雜誌に讀み耽つてゐた莊之助は、兄の視線の下で、身體を起しながらも、その頁から眼をはなさず、それでも兄のいらいらしてゐる視線にゆきあたつた時、機嫌をとる樣な作り笑ひをして近づいて來た。
正在专心阅读杂志的庄之助在哥哥的视线下站起身,眼睛却没从那书页上移开。尽管如此,当他和哥哥那焦急的眼神碰撞时,做出了讨好的笑容靠近了过来。
それが何か用事を云ひつける樣な時だと、そんな笑顏などは恥ぢて消えてしまふ程、ますます不機嫌な顏をして、ぶつきら棒2に「新聞とつといで」とでも云ふのであるが、奎吉は莊之助の視線に會ふと危く目をそらそうとした。奎吉は何だかもやもやしてゐるものゝ中に閉ぢ込められてゐる樣に思つた。然し努めて顏を無表情に裝ひながら、彼の弱味を見られまいとした。
奎吉在说要紧事的时候笑容就会消失,脸上一副越来越不高兴的神情,冷漠地说着“把报纸放下”,却在对上弟弟的视线时匆忙躲开了。奎吉感觉自己被囚禁在了一个虚无的地方,但他还是努力佯装一副没有表情的面孔,以防自己的弱点暴露。
「お前の貯金から少し金を出して來て呉れ。急に入用が出來たんだが、お母さんが今使ひに行つてゐないから。」
“从你的存款里给我拿点钱,突然有急用,妈妈现在还没给我。”
彼がやつとそれを云ひ終へた時には、さき程の變に歪められた(この樣な事件が今起つてゐるのだな。)といふ想像の氣持が丸切り影を消してゐた。
他终于把这些话说完的时候,刚才那奇怪的扭曲的(这样的事情刚才已经发生了)的想象的心情完完全全没了踪影。
莊之助は舞臺の上の人物が傍白を云ふ時の樣に一度目を横へそらせて「あゝ」と云つてうなづいた。奎吉は不幸にもその時の莊之助の顏に浮んだ微笑の影に、奎吉をなぐさめる樣な柔しい感情の表れがあつたのを見逃せなかつた。
庄之助就像舞台上的人物在说旁白时候一样把眼睛往边上一偏,“啊啊”地说着并点了点头。奎吉在那时庄之助的脸上浮现出的微笑背后不幸地看到了他安慰奎吉的温柔的表现。
その人間にその申し出が拒絶される時の氣不味さを氣遣ひながら、恐る恐る金を貸して呉れと他人に云ふ時に奎吉がいつも顏面に感じたあの堪らなく嫌な顏附きが、奎吉の努力を裏切つて、ここへも出たのではあるまいか、そして莊之助は俺のその顏から、俺の苦痛をヒユーメインにも知つて、あんなに柔しい顏附きをしたのではあるまいかと彼は疑つた。然も彼は莊之助のその顏を生意氣に思ひ、いまいましく感じた。
奎吉感受到了请求被拒绝时候的那种尴尬,战战兢兢地说“借我钱”时总能感受到的那种令人厌恶的表情背叛了奎吉的努力。他怀疑——是不是在这里也表现出来了?并且庄之助从我的脸上设身处地地理解了我的痛苦之后才做出那么温柔的表情?然而奎吉认为庄之助的表情是骄傲,于是感到非常愤怒。
「お前通帳と認印は自分で藏つてるんだね。ぢや直ぐ行つて五圓出しておいで、そしてこんなこと知れると少し都合が惡いから、俺が返すまで誰にも云ふんぢやないよ。いゝかい。その代り返す時には六圓にして返してやるからな。」
“你藏着存折和印章吧?那你赶紧去给我拿出来五元,还有这种事情被人知道不太好,到我还你为止谁都不要说。知道了吗?作为回报,还的时候我会还你六元。”
奎吉は最後の醜さを出してしまつた。然し彼はどうしても口止めをせずにはゐられなかつたのだつた。
奎吉暴露出了最后的丑陋,但是他无论如何都没能控制住嘴。
莊之助はそれを頷きながらきいてゐたが、おしまひに云ひ難くさを切り拔ける樣にしてこう云つた。「何も餘計にして返して貰はうとは思はないけど、確かに返してくれるのだつたら……。」
庄之助边听边点头,在最后努力地说着貌似难以启齿的话:“我没打算让你还我多余的钱,但如果你要还的话……”
奎吉は本當過ぎる程本當なそんな弟の言葉には全く參らされた。思ひがけなくも卑しい利息のことなどを云つたのを、堪らなく恥かしく思つた。金を返すにしても父が呉れる樣にならなければどうせ返せないのだし、金が手に入つても右左にそれを返すにはどうしても目をつぶつて自分を麻痺させなければ、惜しくて堪らなくなる自分の性質を省ても、莊之助の言葉は本當過ぎる位本當であつたので。
奎吉被弟弟这番真实得不能再真实的话打败了。自己竟寒碜地说出了利息的事,他感到无比羞愧。虽说要还钱,可如果父亲不给自己的话,是无论如何也还不起的。就算手里有了钱,要想还钱也要闭上双眼麻痹自己。就算察觉了自己不舍得还钱的心理,庄之助这番话也是真实得不能再真实的。
莊之助が出て行つてから彼は堪らない場面をとうとうやり過したといふ氣がしたが、次々に盛り上つて來る嫌惡の感じにゐたたまらなくなつた。そして變なことに、彼は舌をべろと出して見た。そして次には「やつた、やつた」と小聲で云ひながら踊る樣な眞似をした。彼はそれでもあきたらなかつた。最後に奎吉は「うー」と云ひながら顏を思ひ切つてしかめた。なほもなほもひどく。なにかその顏面筋肉の收縮の感覺に快感があるかの樣に。
庄之助外出后,令奎吉难堪的场面终于结束了,可是渐渐涌上来的厌恶感却吞噬了他。而且奇怪的是,他居然吐出了舌头。他小声嘟囔着“太好了、太好了”,手舞足蹈起来,且毫不厌倦地重复。最后奎吉说了一声“唔”后突然皱起了脸,越来越用力,越来越用力,仿佛能在脸部肌肉的收缩中感受到快感。