梶井基次郎: 愛撫
first published:『詩・現実』1930年6月16日発行創刊号・第一冊
audio:https://www.youtube.com/watch?v=jof59zZSZqI
desc: 从“试着像剪车票那样啪嚓一下剪掉猫耳朵会怎样” 这般空想开始,本以为接下来会提出 “要是把猫的爪子全都剪掉,猫到底会变成什么样?”这样的问题,结果画风一转,变成了一个略显残酷、偏暗黑的故事:梦里出现的女子,把猫的手切下来改造成化妆道具,还用那肉垫轻抚脸颊……以幽默的口吻,跨越时代地传递出爱猫之人想必也曾有过的某种心境,尽显散文的妙趣
猫の耳というものはまことに可笑しなものである。薄べったくて、冷たくて、竹の子の皮のように、表には絨毛が生えていて、裏はピカピカしている。硬いような、柔らかいような、なんともいえない一種特別の物質である。私は子供のときから、猫の耳というと、一度「切符切り」でパチンとやってみたくて堪らなかった。これは残酷な空想だろうか?
猫的耳朵着实奇怪。扁薄又冰凉,像竹笋皮一样,表面长着绒毛,里面却闪闪发光。有点硬,又有点软,实在是难以形容的一种特别的存在。从小只要一提到猫耳朵,我就很想拿 “剪票钳” 朝它的耳朵打洞。这算是很残酷的幻想吗?
否。まったく猫の耳の持っている一種不可思議な示唆力によるのである。私は、家へ来たある謹厳な客が、膝へあがって来た仔猫の耳を、話をしながら、しきりに抓っていた光景を忘れることができない。
不。这全是因为猫耳朵拥有的一种不可思议的暗示力量使然。曾经有位模样严谨的客人到我家做客,当时小猫爬到他膝盖上,他一面揉捏小猫的耳朵,一面说话,那幕光景令我难以忘怀。
このような疑惑は思いの外に執念深いものである。「切符切り」でパチンとやるというような、児戯に類した空想も、思い切って行為に移さない限り、われわれのアンニュイのなかに、外観上の年齢を遙かにながく生き延びる。とっくに分別のできた大人が、今もなお熱心に――厚紙でサンドウィッチのように挾んだうえから一思いに切ってみたら? ――こんなことを考えているのである! ところが、最近、ふとしたことから、この空想の致命的な誤算が曝露してしまった。
这样的疑惑变成了我心中一种很深的执念。像想用 “剪票钳” 朝耳朵打洞,这种如同儿戏般的幻想只要没拿定主意付诸行动,就会长期存活在我们的慵懒中,远超乎我们的外观年龄。明明早已是懂得明辨是非的成人,现在却仍很热衷地想着——要是用厚纸板夹住,像三明治一样,再狠狠地朝耳朵打个洞,不知道会怎样。不过,最近因为某个突发状况,暴露出这个幻想的致命错误。
元来、猫は兎のように耳で吊り下げられても、そう痛がらない。引っ張るということに対しては、猫の耳は奇妙な構造を持っている。というのは、一度引っ張られて破れたような痕跡が、どの猫の耳にもあるのである。その破れた箇所には、また巧妙な補片が当っていて、まったくそれは、創造説を信じる人にとっても進化論を信じる人にとっても、不可思議な、滑稽な耳たるを失わない。そしてその補片が、耳を引っ張られるときの緩めになるにちがいないのである。そんなわけで、耳を引っ張られることに関しては、猫はいたって平気だ。それでは、圧迫に対してはどうかというと、これも指でつまむくらいでは、いくら強くしても痛がらない。さきほどの客のように抓ねって見たところで、ごく稀にしか悲鳴を発しないのである。こんなところから、猫の耳は不死身のような疑いを受け、ひいては「切符切り」の危険にも曝されるのであるが、ある日、私は猫と遊んでいる最中に、とうとうその耳を噛んでしまったのである。これが私の発見だったのである。噛まれるや否や、その下らない奴は、直ちに悲鳴をあげた。私の古い空想はその場で壊れてしまった。猫は耳を噛まれるのが一番痛いのである。悲鳴は最も微かすかなところからはじまる。だんだん強くするほど、だんだん強く鳴く。Crescendo のうまく出る――なんだか木管楽器のような気がする。
原本猫就算像兔子一样,遭人抓住耳朵吊起来,也不会觉得痛。而且猫耳朵有一套对抗拉扯的奇妙构造。之所以这么说,是因为每只猫的耳朵都有像是被扯破过的痕迹。那破损的部位,被贴上巧妙的补丁。不论是对相信创造说的人,还是对相信进化论的人来说,猫耳朵依旧都不失为一种神秘又滑稽的耳朵。而这块补丁,在拉扯耳朵时,肯定会随之放松。因为这个缘故,当耳朵被拉扯时,猫依旧显得一派轻松。接下来谈到猫耳朵对压迫的反应,如果只是用手指夹住,不管再怎么用力,猫也不觉得痛。就算像刚才提到的那位客人一样捏住猫的耳朵,它们也鲜少会发出惨叫声。从这点来看,让人怀疑猫的耳朵拥有不死之身,进而让猫暴露在遭人用剪票钳“打洞”的危险之中。而就在某一天,我和猫玩耍时,我终于忍不住朝它的耳朵咬了一口。这是我的新发现。我甫一咬下,那无趣的家伙马上发出惨叫。我那长期以来的幻想马上就此崩毁。原来猫被人咬耳朵,会觉得那么疼。它的惨叫从轻微的疼痛开始。疼痛愈强,它叫得就愈大声。巧妙地发出 “渐强音”——感觉就像木管乐器一样。
私のながらくの空想は、かくの如くにして消えてしまった。しかしこういうことにはきりがないと見える。この頃、私はまた別なことを空想しはじめている。
我那长期的幻想,就这样幻灭。但这种事看来是不会结束的。最近我又展开其他幻想。
それは、猫の爪をみんな切ってしまうのである。猫はどうなるだろう? おそらく彼は死んでしまうのではなかろうか?
那就是将猫的爪子全部剪光,猫会变成怎样呢?该不会就这么死了吧?
いつものように、彼は木登りをしようとする。――できない。人の裾を目がけて跳びかかる。――異う。爪を研ごうとする。――なんにもない。おそらく彼はこんなことを何度もやってみるにちがいない。そのたびにだんだん今の自分が昔の自分と異うことに気がついてゆく。彼はだんだん自信を失ってゆく。もはや自分がある「高さ」にいるということにさえブルブル慄えずにはいられない。「落下」から常に自分を守ってくれていた爪がもはやないからである。彼はよたよたと歩く別の動物になってしまう。遂にそれさえしなくなる。絶望! そして絶え間のない恐怖の夢を見ながら、物を食べる元気さえ失せて、遂には――死んでしまう。
想和平时一样爬树——办不到。看准人们的衣服下摆扑来——没扑中。想磨爪子——根本就没爪子。它肯定一再重复做这样的事,而每次都会发现,自己变得和以前不一样了。它会渐渐失去自信。连意识到自己处在某个 “高度” 时,都会忍不住吓得浑身发抖。因为向来都保护它避免 “坠落” 的爪子已经不在了。它变成走起路来摇摇晃晃的其他动物。最后连路都不走了。只剩下绝望!接着它会做着永不停止的噩梦,连吃东西的力气都不剩,最后——就此死去。
爪のない猫! こんな、便りない、哀れな心持のものがあろうか! 空想を失ってしまった詩人、早発性痴呆に陥った天才にも似ている!
没有爪子的猫!还有比这个更令人心慌、悲伤的事吗?就像失去幻想的诗人、罹患早发性失智症的天才一样!
この空想はいつも私を悲しくする。その全き悲しみのために、この結末の妥当であるかどうかということさえ、私にとっては問題ではなくなってしまう。しかし、はたして、爪を抜かれた猫はどうなるのだろう。眼を抜かれても、髭を抜かれても猫は生きているにちがいない。しかし、柔らかい蹠の、鞘のなかに隠された、鉤のように曲った、匕首のように鋭い爪! これがこの動物の活力であり、智慧であり、精霊であり、一切であることを私は信じて疑わないのである。
这个幻想总令我心生悲戚。由于太过悲伤,就连这样的结局是否适当,对我来说也都无关紧要。不过,被剪去爪子的猫到底会怎样呢?就算被刨去眼睛、拔掉猫须,猫肯定一样活得好好的。但那是隐藏在柔软脚掌的护鞘里,像钩子一样弯曲,像匕首一样锐利的爪子啊!它是这种动物的活力来源,是智慧,是精灵,是它的一切。我对此坚信不疑。
ある日私は奇妙な夢を見た。
某天,我做了个奇怪的梦。
X――という女の人の私室である。この女の人は平常可愛い猫を飼っていて、私が行くと、抱いていた胸から、いつもそいつを放して寄来すのであるが、いつも私はそれに辟易するのである。抱きあげて見ると、その仔猫には、いつも微かな香料の匂いがしている。
地点在一个叫 “×” 的女人住处。这女人平常饲养可爱的猫,每次我去找她,她就会把抱在胸前的猫送到我怀里,这令我大喊吃不消。抱起来细看后,我发现这只小猫身上总是散发淡淡的香料气味。
夢のなかの彼女は、鏡の前で化粧していた。私は新聞かなにかを見ながら、ちらちらその方を眺めていたのであるが、アッと驚きの小さな声をあげた。彼女は、なんと! 猫の手で顔へ白粉を塗っているのである。私はゾッとした。しかし、なおよく見ていると、それは一種の化粧道具で、ただそれを猫と同じように使っているんだということがわかった。しかしあまりそれが不思議なので、私はうしろから尋ねずにはいられなかった。
梦里的那个女人在镜子前化妆。我一面看报纸之类的东西,一面偷瞄她,接着我微微发出一声惊呼。她竟然拿起猫的前脚,沾着香粉涂抹在自己脸上!我看得寒毛倒立。但当我更进一步仔细看才发现,那是一种化妆工具,她像猫一样用猫的前脚化妆。不过,这实在太不可思议了,所以我忍不住从背后向她问道:
「それなんです? 顔をコスっているもの?」
“那是什么?是用来涂脸的吗?”
「これ?」
“这个吗?”
夫人は微笑とともに振り向いた。そしてそれを私の方へ抛って寄来した。取りあげて見ると、やはり猫の手なのである。
女人嫣然一笑,转过头来。接着将那东西抛向我。我拿起来一看,果然是猫的前脚。
「いったい、これ、どうしたの!」
“这到底是怎么回事?”
訊きながら私は、今日はいつもの仔猫がいないことや、その前足がどうやらその猫のものらしいことを、閃光のように了解した。
我在询问的同时,脑中仿佛划过一道闪光,顿时意识到今天都没看到平时那只小猫,而这似乎就是那只小猫的前脚。
「わかっているじゃないの。これはミュルの前足よ」
“你应该知道吧。这是喵儿的前脚哦。”
彼女の答えは平然としていた。そして、この頃外国でこんなのが流行るというので、ミュルで作って見たのだというのである。あなたが作ったのかと、内心私は彼女の残酷さに舌を巻きながら尋ねて見ると、それは大学の医科の小使が作ってくれたというのである。私は医科の小使というものが、解剖のあとの死体の首を土に埋めて置いて髑髏を作り、学生と秘密の取引をするということを聞いていたので、非常に嫌な気になった。何もそんな奴に頼まなくたっていいじゃないか。そして女というものの、そんなことにかけての、無神経さや残酷さを、今更のように憎み出した。しかしそれが外国で流行っているということについては、自分もなにかそんなことを、婦人雑誌か新聞かで読んでいたような気がした。――
她回答得神态自若。还说最近国外流行这样,所以试着用喵儿做成这个。我内心暗自为她的残酷咋舌,同时问她,这是她自己做的吗。结果她说是一位大学医学院里的工友做的。我听说医学院里的工友会将解剖后的尸体头颅埋进土里,制成骷髅头,和学生暗中交易,所以非常反感。她大可不必去拜托那种家伙吧。身为女人,却沉迷这种事,这更加令我憎恨她的粗线条和残忍。不过,关于国外的这项流行,我好像也在妇女杂志或报纸上看过类似的报道。
猫の手の化粧道具! 私は猫の前足を引っ張って来て、いつも独り笑いをしながら、その毛並を撫でてやる。彼が顔を洗う前足の横側には、毛脚の短い絨氈のような毛が密生していて、なるほど人間の化粧道具にもなりそうなのである。しかし私にはそれが何の役に立とう? 私はゴロッと仰向きに寝転んで、猫を顔の上へあげて来る。二本の前足を掴んで来て、柔らかいその蹠を、一つずつ私の眼蓋にあてがう。快い猫の重量。温かいその蹠。私の疲れた眼球には、しみじみとした、この世のものでない休息が伝わって来る。
猫的前脚做成的化妆工具!我总是把猫的前脚拉过来,笑着抚摸它身上的毛。它用来清理脸部的前脚,侧面长满了像毛毯一样的短毛,确实好像能用来充当人类的化妆工具。但它对我能派上什么用场?我仰躺在地上,在面前高高举起猫儿。抓住它的两只前脚,将它脚上柔软的肉垫抵向我的眼睑。猫儿那舒服的重量。温暖的肉垫。我疲惫的眼球深深地传来一股世间难有的放松。
仔猫よ! 後生だから、しばらく踏み外さないでいろよ。お前はすぐ爪を立てるのだから。
小猫啊!拜托你,你的脚可别踩偏哦。因为你要是一踩偏,就马上会竖起利爪。