化物語(中): 第三話 するがモンキー

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化物語(中): 第三話 するがモンキー
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desc: 沦为吸血鬼体质的高中生阿良良木历。他所邂逅的、向猴子许下愿望的少女,以及被毒蛇缠附缠身的少女,究竟是……?

001#

神原駿河といえば学校内で知らない生徒が一人もいないほどの抜きん出た有名人であり、当然ながら僕も何度となく聞いたことがある名前だった。いや、単純に有名人というならば、僕のクラスメイトであるところの羽川翼や戦場ヶ原ひたぎだって、ひょっとしたら彼女に引けを取らないのかもしれないが、しかしそれは、三年生という僕達の属する学年に限っての話である。そう、神原駿河は僕や羽川翼や戦場ヶ原ひたぎよりも一つ下、二年生でありながらにして、三年生の、それもそういう噂めいたことにはかなり疎い方である僕のいる地点にまで届くほどの、並外れた名声を得ているということなのだ。これは普通に考えて、ちょっとないことである。若いのに大したものだなんて大物ぶってお道化どけるにしても、ちょっとばかり言葉が真に迫り過ぎているというべきだろう。

说到神原骏河这个人,她可是出类拔萃的知名人物,在校内没有学生不认识她,当然我也在无意中耳闻过她的名字。不,如果光谈知名度的话,和我同班的羽川翼和战场原黑仪比,或许不会逊色于她,但这只局限于三年级——我们的学年之间。没错,神原骏河比我、羽川翼和战场原黑仪还要小一届,还是二年级生,就已经有名到连我这个平常不怎么关心这种事情的三年级生,都知道她的存在。以平常来看,这可非比寻常。就算我想装学长开玩笑说:「她年纪轻轻就这么不得了。」也无法忽视这一切,因为她的话题已经迫切地逼近到我的周遭。

また、神原駿河の場合、有名人と表現するよりはスターと表現した方が、その含むニュアンスが正確に伝わるかもしれない。羽川翼や戦場ヶ原ひたぎが、後者の人物のその実態はともかくとして、いわゆる優等生、成績優秀品行方正な真面目な生徒として認識されているのとは違い、彼女の場合、そういうイメージでは全くない──無論、スターというからには、荒くれ者のスケ番1として名をせているということでもない。羽川翼と戦場ヶ原ひたぎが極めているのが主に勉学方面であるのとは対照的に、彼女が極めている道はスポーツの道なのだ。神原駿河はバスケットボール部のエースなのである。一年生、入学したての頃から、あっと言う間にレギュラー入りし、それはそれだけなら入部した先が名も知れぬ、弱 小というのも恥ずかしい万年一回戦負け女子バスケットボール部だったからと理由付けが可能かもしれないが、その後の最初の公式戦から、その名も知れぬ、弱小じゃくしょうというのも恥ずかしい万年一回戦負け女子バスケットボール部を、いきなり全国大会にまで導いた、怪物的な伝説を築き上げてしまったとなれば、これはスター扱いされない方がおかしいというものだ。神原駿河はバスケットボール部のエースなのである。一年生、入学したての頃から、あっと言う間にレギュラー入りし、それはそれだけなら入部した先が名も知れぬ、弱 小というのも恥ずかしい万年一回戦負け女子バスケットボール部だったからと理由付けが可能かもしれないが、その後の最初の公式戦から、その名も知れぬ、弱小というのも恥ずかしい万年一回戦負け女子バスケットボール部を、いきなり全国大会にまで導いた、怪物的な伝説を築き上げてしまったとなれば、これはスター扱いされない方がおかしいというものだ。一体なんてことをしてくれるんだと逆に責めたくなってしまうくらい、まさに『築き上げてしまった』というほどの、それは、唐突な伝説だった。近隣の高校の男子バスケットボール部から練習試合の申し込みが、冗談でなくあるくらいの強豪チームに、我が校の女子バスケットボール部は、勃発的に成り上がってしまったというわけだ──たった一人の女生徒の力によって。

此外,与其称神原骏河为知名人物,毋宁说她是个明星,这样才能确切传达其中微妙的区别吧。羽川翼和战场原黑仪两人是大家公认成绩优秀、品行端正的优等生——先不管后者是否真是如此——而神原她给人的印象完全不是这样。当然,并不是因为她是知名的粗野太妹,所以才称她为明星。羽川翼和战场原黑仪主要精通的是课业之路;而她精通的则是运动之路,神原骏河是篮球社的王牌选手。她从一年级入学开始,短时间就当上正式球员,如果只是这样的话,那或许还找得到理由解释说:「那是因为她加入的是每次都在第一回合就输掉、弱小又默默无闻的女子篮球社。」但要是在那之后,她突然带领那个每次都在第一回合就输掉、弱小又默默无闻的女子篮球社,一路进军到全国大赛,这样她不被奉为明星才奇怪。这唐突的传说可说是非常地「出色」,反而会让人想责备她说:妳到底做了什么好事。我们学校的女子篮球社,一步登天成了一支强到不是在开玩笑的篮球劲旅,附近高中的男子篮球社还跑来申请,希望能打友谊赛。这些不过是因为一个女学生的力量。

取り立てて背が高いというわけではない。

她的身高不是特别高。

体格も普通の女子高生クラスだ。

体型也只是普通女高中生的身材。

むしろ、ちょっと小柄、瘦せ型なくらい。

甚至还有一点娇小纤细。

たおやかという表現がぴったりくる。

温柔优美一词,正好和她的身姿不谋而合。

しかし神原駿河は──跳ぶ。

但是,神原骏河她——会跳跃。

僕も去年、一度だけ、何かの付き合いで神原駿河の出場する試合を、少しばかり観戦したことがあるが──とにかくはしっこくすばしっこく、敵のディフェンスを抜くというよりはすり抜けるようにかわし、そして、かつて日本中を席巻したあの少年漫画のように、軽やかにダンクシュートを決めるのだった──楽々と、余裕で、爽やかなスポーツ少女の笑顔を浮かべたまま、とても気持ち良さそうに、何連続と、何十連続と。シュートは両手で打つのが基本である女子バスケットボール部の試合において、まさかのダンクシュートなんて、一体、どれだけの高校生が目撃できるというのだろうか? 一観客の身としては、彼女の凄みに圧倒されるというよりは、彼女の凄みに圧倒されてあからさまにやる気を失っていく敵チームの選手達があまりにも哀れで見ていられなくなって、見ていていたたまれなくなって、そっと、その場を離れることしかできなかったことを、全くもって、よく憶えている。

我去年不知道是陪谁,曾经稍微去看了一下神原骏河的比赛。总之她可说是技巧了得,三不五时就打破——应该说是「穿过」对方的防御,然后,就像过去曾经席卷全日本的某部少年漫画一样,轻快地灌篮得分。她轻轻松松,游刃有余,脸上还挂着运动少女的爽朗笑容,看似相当愉快,连续再连续地灌了好几十次的篮。女子篮球社之间的比赛用双手投篮可说是基本,现在居然有人会灌篮,到底有多少高中生可以目击到这种灌篮场景?我身为一个观众,没有被她的超人技巧给震慑住,反而同情起那些被她压着打、完全失去斗志的敌方成员,最后我看不下去也待不住,只好静静地离开会场。这件事我到现在记忆犹新。

とにかく、いくら僕らの通う高校が勉学メインの進学校であるとはいっても、それでも十代半ばの多感な若者の集う高等学校であることには間違いがなく、ただ勉強ができる優等生めいた生徒よりも、見た目に派手なスポーツの英雄の方が注目を浴び易いのは、当然のけつだろう──神原駿河が何をした、何に対してどういう行動を取った、なんて、いちいちどうでもいいと思えるような、いちいちどうでもいいとしか思えないようなことが、風評となって、学校中を駆け巡るのだった。それらの風評を全て収集すれば、一冊の本が書けてしまうくらいである。特に興味がなくとも、どころか、あえてそれを避けようとしてさえ、神原駿河の情報は、入ってきてしまうのだ。僕らの学校の生徒ならば学年を問わず、先輩後輩を問わず、誰だってその気になれば、彼女が今日、学食で何を食べたかを突き止めることすら、可能だろう。簡単である、その辺の奴に訊けばいいのだ。

总之,就算我们的学校是以课业挂帅的升学高中,但不容否认,里头聚集的全是一些多愁善感的十五岁少男少女。对他们而言,外表光鲜亮丽的运动英雄,当然比只会读书的优等生还要容易受到瞩目吧。神原骏河做了什么、对某件事物做出了什么反应……等,这些怎么样都好、怎么样都无所谓的事情,马上就会成为传闻,在学校里散播开来。要是把那些传闻收集成册,甚至可以写成一本书。就算我对她本人没兴趣,想刻意去避开那些话题,神原骏河的传闻还是会传到我的耳里。只要是我们学校的学生,不论学年高低,只要你有心,连她今天在学校餐厅吃了什么东西,大概都可以追查到吧。这很简单,只要问当时在场的人就知道了。

もっとも、噂は噂。

不过,传闻终究是传闻。

話半分。

只有一半的真实度。

それが真実であるとは限らない。

传闻不见得是直真实。

実際、さすがに僕のいる地点にまで届くほどの噂となると、鵜吞うのみにしていいのかどうか判断に迷う、信憑性に欠けるものが多い──というより、全く正反対の噂が、同時に流れていることだって、少なくないくらいだ。気性が荒い、いや穏やかだ、友達思いだ、いや冷たい、謙虚けんきょな性格だ、いや傲慢な奴だ、恋愛は激しいらしい、いや男と付き合ったことはないらしい──そんな条件を全て満たすことのできる個人がいたとしたら、そんな人間は人格が破綻しているとしか言いようがないだろう。だからその辺りは、彼女を見かけたことはあっても口を利いたことまではない、どころか五メートル以内に近付いたことさえないだろう僕としては、想像に任せるしかないところだった。とはいえ、現実問題、そんな想像をするような必要は、皆無と言ってしまっていいほど皆無だろう──やはり学年が違うし、また、スポーツスター、バスケットボール部のエース(僕の通う学校の部活は二年生までなので、確か現在は既に、キャプテンに任命されているという噂──このくらいは、素直に信用してもよさそうなものだ)となれば、僕のような落ちこぼれの三年生と、縁のできようはずもないからだ。

实际情况来说,就连流传到我这里的传闻,有很多都缺乏可信度,让我犹豫不知是否该照单全收。不仅如此,甚至有不少时候,同时会有正反两极的传闻在外流传。「她的性情粗暴;不,她的个性温和。」「她很替朋友着想;不,她很冷淡。」「她为人很谦虚;不,她很傲慢。」「她是一个谈起恋爱来很疯狂的人;不,她没有和男性交往的经验。」假如真有人可以满足上述的传闻,那我只能说此人的人格已经分裂了吧。我这个就算看到她也不会主动向她搭话,甚至不曾靠近她五公尺内的人,这些传闻也只好任凭自己去想象了。话虽如此,从现实面看来,我可以说是完全没有必要去想象吧。因为我们学年不同,对方又是运动明星,篮球社的王牌球员(我们学校社团活动到二年级为止,听说她现在被任命为队长。这点程度的传闻看起来应该可信),她和我这种吊车的三年级生,绝对不会扯上关系。

縁もゆかりもありはしない。

不会有任何牵扯和瓜葛。

勿論、彼女は僕のことなど知らないだろう。

当然,她也不知道有我这号人物的存在吧。

知る理由がないはずだ。

她没有理由会知道的。

と、そう思っていた。

我原本这么想。

僕はそう思い込んでいた。

如此深信不疑。

それが思い違いだったと知るのは、五月も末に差し掛かり、ころもえの六月を目の前にした頃のことである──僕の首元に刻まれた二つの小さな穴が、伸ばした襟足で、ぎりぎり隠れるか隠れないかくらいになり、この分なら、半月ほど絆創膏でも貼っておけばよさそうだと、胸を撫で下ろしていた頃……僕が、ふとしたきっかけから、戦場ヶ原ひたぎと、いわゆる恋人同士のお付き合いをするようになって、十日ほどの時間が経過した頃のことだった。

当我知道自己错了,是五月尾声,接近换季的六月前。此时是我松了一口气的时候,因为我脖子上被吸血鬼咬的两个小洞,就快可以用留长的发尾来遮住,照这样看来,我只要再贴半个月左右的 OK 绷即可;也是我因为一个小小的契机,和战场原黑仪以男女朋友的身份,交往了十天左右的时候。

足音を高らかに響かせながら近付いてきて、僕に話しかけてきた神原駿河は、そのときから既に、左手を、真っ白い包帯でぐるぐるに巻いていて──

神原骏河踏着响亮的脚步声跑来向我搭话,从这时开始,她的左手已经缠着一层洁白的绷带——

002#

「あ……ありゃりゃ木さん」

「啊……阿两两木。」

「阿良々木だ」

「是阿良良木。」

「失礼。嚙みました」

「抱歉。我口误。」

金曜日の学校帰り、坂道で自転車を漕いでいて、前方にリュックサックを背負ったツインテイルの小さな女の子、即ち八九寺真宵の姿を見かけたところで僕はブレーキを作動させ、彼女の左側に横付けしてから声をかけると、八九寺はその瞳をぱちくりとさせ、驚いたような素振りをしてから、いつも通りに、僕の名前を言い間違えた。

礼拜五放学回家的路上,我在坡道上踩着脚踏车时,怱见前方有一个身后背着背包、绑着一头双马尾的娇小女孩——即八九寺真宵的身影后,我随即按下煞车,停靠在在她的左侧出声叫她。随后,八九寺眨眨眼,一脸惊讶,然后一如往常地叫错了我的名字。

まだ僕の名前に言い間違える余地が残っていたことに若干の感動を覚えつつも、僕は律儀に訂正を入れる。

原来我的名字还有念错的空间啊,虽然我心中些许感动了一下,但我还是耿直地订正她。

「……っていうか、人の名前をうっかり八兵衛2みたいに言うんじゃない……」

「……我说妳啊,不要把人家的名字念得像冒失鬼八兵卫①一样。」

「可愛らしいと思いますが」

「我觉得这样很可爱啊。」

「すげえヘタレな奴みたいだ」

「听起来感觉给他非常地没出息。」

「んー。まあ、存外、お似合いではないかと」

「嗯——唉呀,那跟你很像不是吗?」

さらりと酷いことを言う小学五年生だった。

这小学五年级生,说话伤人的方式相当干脆。

「阿良々木さん、どうやらお元気そうで何よりです。またこうしてお会いすることができて、とても嬉しく思います。どうですか、阿良々木さん、あれ以来、特に何事もなく?」

「阿良良木哥哥,你看起来很有精神真是太好了。能够和你再会,我感到很高兴。如何啊,阿良良木哥哥,在那之后有什么特别的事情发生吗?」

「ん? ああ、別に。あんなこと、そうそうないよ。平和な生活を送らせてもらってるさ。平和っつーか、平穏っつーか。ああ、もうすぐ実力テストがあるから、それについちゃ、あんまり平和ってわけでも平穏ってわけでもないんだけどさ」

「嗯——啊,没有啊。那种事情不会常常发生的啦。在那之后我过着和平的日子。要说和平呢,还是该说安稳呢。对了,我就要实力测验了,从这点来看应该不算和平,也不算安稳吧。」

およそ二週間前──五月十四日、母の日。

大约在两个礼拜前——五月十四日,母亲节。

とある公園で、僕はこの八九寺真宵と出会い、そして、ちょっとした事件の渦中に身を置くことになってしまった……いや、それはあえて事件というほどに具体的だったわけでも、取り立てて取り上げるほどに抽象的だったわけでもないのかもしれないが、ともかく、少しばかり、普通ではない体験丶丶丶丶丶丶丶丶をすることになった。

我在某座公园和这位八九寺真宵相遇,接着被卷入一个小事件当中……不,或许那件事没有具体到能够称为事件,也没有抽象到需要特别拿来讨论,总之就是一个有点不寻常的体验。

普通ではないとは、普通ではないという意味だ。

不寻常的意思,就是不寻常。

まあ、結局それは、あの不愉快なおっさん、即ち忍野と、それに戦場ヶ原の力を借りる形で、解決を見た──ことなきを得たわけだが、あの五月十四日が偶然ではなく必然だったとするなら、その後の二週間、何事もなく、平和で平穏な毎日を送っている現在の僕というのもまた、偶然ではなく必然なのだと思う。

唉呀,虽然最后是借助那个让人不愉快的大叔——即忍野,还有战场原的帮助,才平安无事地获得解决,如果那五月十四日的事情,对我来说是必然而不是偶然的话,那我在那之后两个礼拜,每天会过着和平安稳的日子,我想也同样是必然而不是偶然。

こうしてみる限り、八九寺の方も、無事のようだし──それなら、あの母の日に起こったことは、万事丸く収まったといっていいのだろう。それは、普通ではない体験のその後という意味においては、珍しいことだった。僕は──あるいは羽川も──あるいは戦場ヶ原も、そういった意味合いでは、普通ではない体験のその後の方が、後始末の方が、むしろ大変だったというか──よっぽど残酷だったのだから。無惨といってもいい。

现在看起来,八九寺也一样平安无事。如此一来,母亲节发生的事情,可说是圆满解决了吧。经历过不寻常的体验之后,像她这种情况还挺稀奇的。因为我、战场原和羽川,在经历过不寻常的体验之后,善后处理可是相当辛苦……或者该说痛苦吧。要说凄惨也不为过。

八九寺真宵。

八九寺真宵。

そういう意味では、羨ましくはあるな。

这样看起来,她还真令人羡慕啊。

「おや、どうかなさいましたか? 阿良々木さん、そんな情熱的な目でわたしの身体を見つめるだなんて、いやらしいです」

「唉呀!你怎么了吗?阿良良木哥哥,居然用那么热情的眼神凝视我的身体,好猥亵喔。」

「……だから情熱的な目って、どんな目だよ」

「……妳所谓热情的眼神,到底是怎样的眼神?」

しかもいやらしいのか。

而且还很猥亵吗?

嫌な情熱だった。

那种热情还真讨人厌。

「そんな目で見つめられると、しゃっくりします」

「你用那种眼神看我,我会打嗝的。」

「お前の横隔膜は異常だ」

「妳横膈膜有问题啊。」

びっくりします。

应该是吓一跳。

まあ、八九寺の抱える事情というものを考えれば、ただ単純に羨ましいというような、一辺倒の感想を持っていいような場合でもないのだけれど……見ようによっては一番大変で一番残酷なのは、僕でも羽川でも戦場ヶ原でもなく、あるいは八九寺なのかもしれないのだから。その見方をするのが当たり前だという向きも、決して少なくないだろう。

唉呀,从八九寺抱持的问题来思考,也不是可以单纯用「羡慕」两个字一面倒地带过……换个不同的角度来看,我们当中最辛苦、最痛苦的人,不是我和羽川或战场原,而是八九寺也说不定。应该会有不少人会抱持这种看法吧。

考えていると、僕の自転車の左側を、二人組の高校生が通り過ぎていった。二人とも女子。僕の通う高校とは、別の制服だった。その二人は、あからさまに僕と八九寺の方を、いぶかしげに見るようにして、ひそひそと露骨に声を潜めながら通り過ぎる、という、非常に気分の悪い真似をしてくれた。……やっぱり、高校三年生阿良々木暦と小学五年生八九寺真宵が話し込んでいる姿というのは、一般的な趣味嗜好を旨とする方々からすれば、非常に異様に映ってしまうらしい。

在我思考的同时,有一对高中生从我脚踏车的左边穿过。两位都是女性。身上的制服和我不同,是别所学校的学生。那两人很讶异地看着我和八九寺的方向,露骨地发出窃窃私语,一边从我身旁走过。她们的行为举止,实在让我非常不舒服……果然,高中三年级的阿良良木历,和小学五年级的八九寺真宵在聊天的样子,在癖好正常的人眼中似乎非常奇怪的样子。

まあいい。

无所谓。

世間の冷たい視線など、知ったことか。

谁管世间的冷漠眼神怎么样啊。

そんな軽々しい覚悟で八九寺に声をかけたわけじゃない、何、真実は、僕と八九寺のお互いだけが理解しておけばよい。僕達の間に成立した友情は、その程度の偏見では決して揺るがないのだ。

我是有所觉悟才会向八九寺搭话的,无妨,真相只要我和八九寺能相互理解就好。建立在我们彼此之间的友情,决不会因为那种程度的偏见而有所动摇。

「あらら、あの人達にロリコンだと正体を見抜かれてしまったみたいですね、阿良々木さん。心中、お察し申し上げます」

「唉呀呀,那两位好像看穿你的真面目,知道你是萝莉控了呢,阿良良木哥哥。我真同情你呢。」

「お前が言うな!」

「不用妳来说我!」

「恥ずかしがることはありません。別に小さな女の子を好きだということ自体は、法律には触れないのですから。趣味嗜好は個人の自由ですよ。ただ、そのアブノーマルな思想を実行に移さなければよいだけなのです」

「这没什么好可耻的。因为喜欢小女孩这件事本身没有犯法。这种癖好是个人的自由。你不要把那种病态的思想付诸行动就好了。」

「たとえ僕が小さな女の子を好きだったとしても、そうだな、お前のことは嫌いだな!」

「就算找喜欢幼女,没错,我也不会看上妳!」

友情は成立していないようだった。

看来我们之间的友情尚未建立起来。

僕の周囲はこんな奴らばっかりか。

我的周遭都是这种家伙吗?

ちらりと、後ろを振り返る。

我转头向后看。

もう、誰も見当たらない。

身后看不见半个人影。

今のところは。

目前是如此。

「……ったく。言うことなすこと末頼すえたのもしい3奴だよ、お前は。で? 八九寺。お前、どうして、こんな時間にこんなところをうろうろしてんだ。またどっか行こうとして、迷子にでもなってんのか?」

「……拜托。妳这家伙的言行举止,还真是前途有为啊。那妳呢?八九寺。这种时间妳怎么还在这里闲晃啊。该不会妳想去哪里,结果又迷路了吧?」

「随分と失礼な言い方をされますね、阿良々木さん。わたし、迷子になったことなんて、生まれてこの方一度もありませんよ?」

「你说这话还真失礼呢,阿良良木哥哥。我出生到现在,从来都没有迷路过喔。」

「優れた記憶力をお持ちのようだな」

「妳的记忆力还真好啊。」

「褒められると照れます」

「你这样夸我,我会害羞。」

「いや、優れものだよ、都合が悪いことを全て忘れられることができるなんて」

「不,妳记忆力是真的很好,居然可以选择性地忘记对自己不利的事情。」

「いえいえ。ところであなた、誰でしたっけ?」

「哪里哪里。话说回来,你是谁啊?」

「忘れられた!」

「我被忘记了!」

なかなか鋭い切り返しだった。

她这反击还真是锋利啊。

センスあるな、こいつ。

这家伙的临场反应还真好啊。

「……いや、とはいえ、さすがに冗談だとわかっていても、人から忘れられるっていうのは、結構凹むぞ、八九寺……」

「……不过话说回来,就算知道妳在开玩笑,被人家遗忘真的会让人很受伤耶,八九寺……」

「頭が悪いことは全て忘れられますから」

「因为我把头脑差的人全都忘记了。」

「お前に言われるほど僕は頭悪くはないよ! 頭が悪いじゃない、都合が悪いだ!」

「我还没有笨到轮到妳来说我!我是说忘记对自己不利的事情,不是忘记头脑差的人!」

「都合が悪いことは全て忘れられますから」

「因为我把对我不利的事情都忘记了。」

「そうそう、それで正し……くない! 全然正しくない! 他人様の存在のことを都合が悪いとか言ってんじゃねえ!」

「对对,这样才对……才怪!一点都不对!别把别人的存在说的好像对自己不利一样!」

「自分で言ったんじゃないですか」

「这不是你自己说的吗?」

「黙れ。揚げ足を取ろう4とするな」

「闭嘴。不准挑我语病。」

「阿良々木さんは我儘ですね。わかりました、じゃあ、気を使わせていただいて、こういう言い方にしましょう」

「阿良良木哥哥还真是任性。我知道了,那我就注意措词,换句话来说吧。」

「どういう言い方にするんだ……」

「妳要换成什么……」

「不都合がいい」

「我只记得对自己有利的事情。」

「………………」

楽しい会話だった。

这对话还真愉快。

実を言うと小学五年生と同レベルで話ができる自分自身、阿良々木暦という名前の高校三年生について、ちょっとばかり思うところがないでもないのだが、まあ、なんだ、こうして話す分には、中学生の妹達と話しているのと、そんな変わらない感じだから……それに、そこが中学生と小学生の違いなのか、変に尖ったり妙にひねたりしていない分、妹達を相手にするのよりも、八九寺とは話題の進行がスムーズではある。

老实说,我阿良良木历一个高中三年级生,居然和小学五年级生聊成这副德性,也实在是有一点奇怪。不过,这感觉跟在和我两个国中生的妹妹说话一样,感觉没什么改变……而且,或许这是小学生和国中生之间的差异吧,小学生比较不爱闹别扭,所以跟我两个妹妹比起来,和八九寺聊起天来更为顺畅。

「はあ……」

「唉……」

ため息と共に、自転車から降りる。

我叹了口气,从脚踏车上下来。

そして、ハンドルを押し、徒歩で前方へ。

接着我牵着龙头,徒步往前走去。

八九寺と話すのは楽しいが、それはそれとして、同じところでじっとしたまま、立ち話と洒落込んでいる5と、ともするとこの後の予定に支障を来たすかもしれなかったので、まあそんなに時間に余裕がないわけでもないのだけれど、自転車を押して歩きながら、八九寺との会話を続けることにしたのだ。立ち話よりも歩き話。八九寺の方は、どうやらかくたる目的地があってうろうろしていたわけではないようで、特に何を言われるまでもなく何をうながされるまでもなく、自転車に添うように、てくてくと、僕についてくる。まあ、暇な奴なのだろう。

和八九寺聊天是很快乐,不过要是一直呆站在原地大聊特聊,可能会对我之后的行程到来影响,但现在时间上也还算充裕,因此我决定牵着脚踏车,边走边和八九寺继续聊天。走了比呆站在原地好。而八九寺也不是因为有什么地方要去才在这里闲晃,所以她不等我催喊,很自然就跟上了,走在我脚踏车旁边,她大概很闲吧。

移動することにした理由は、もう一つあるけれど──再度、ちらりと後ろを振り返ってみたところ、そちらについての心配は、今のところ、どうやらなさそうな感じだった。

我会决定移动的理由还有一个。我再次转头瞄了一眼,目前好像还不用担心「那位人士」会出现。

「阿良々木さん、どちらに?」

「阿良良木哥哥,你要去哪啊?」

「ん。一旦家」

「嗯,我要先回家。」

「一旦? するとその後、お出かけですか」

「先回家?意思就是说,之后你还要出门吗?」

「まあ、そんな感じ──ほら、さっき言っただろう? もうすぐ実力テストなんだよ」

「算是吧。我刚才有说过吧?我们学校就快实力测验了。」

「阿良々木さんの実力、つまりは真価が問われることになるのですね」

「那就代表阿良良木的实力,也就是真正的价值要被考验啰。」

「そんな大袈裟なもんじゃねえよ……問われるのは、卒業できるかどうかって、それだけだな」

「没那么夸张啦……这只是事关我能不能毕业而已。」

「そうですか。阿良々木さんが卒業できないかどうかが問われるのですね」 

「……这样啊。那是在考验看阿良良木哥哥能不能毕业啰。」

「…………」

同じ意味なのに、なんだそのニュアンスの違い。

这两句话明明意思相同,但听起来就是有这么点不一样。

日本語って本当に難しい。

国文真的很难懂啊。

「阿良々木さん、頭の不都合がいい方ですからね」

「因为阿良良木哥哥的脑袋不怎么聪明啊。」

「もう普通に頭が悪いって言ってくれた方がいくらか気が楽だよ、僕は」

「妳干脆直接说我笨,我听起来反而会舒服一点。」

「いえいえ、本当のことでも言っていいことと言うまでもないことがありますから」

「不不不,就算是事实,也有分『可以说的』和『没有必要多说的』两种。」

「言っちゃいけないことはないのかよ!」

「另一种应该是『不可以说的』吧!」

「あ、その、大丈夫です。わたしもあんまり成績はよくありませんから、阿良々木さんとおそろいですよ、おそろい」

「啊,那个没关系的。因为我的成绩也不是很好,我们是同伴、同伴。」

「………………」

小学生に慰められた。

我被小学生安慰了。

小学生とおそろいだった。

和小学生是同伴。

しかも、自分のことを表現するときには『頭が悪い』とは言わずに『成績はよくない』と言い換えているところに、八九寺真宵のさりげないまんを感じる。

而且,她说自己的时候不是说「笨」,而是若无其事地说自己「成绩不好」,从这点来看,我感觉八九寺真宵做人不够老实。

「……いや、でも、それって結構リアルな話でさ。この実力テストで下手を打つと、結構マジでやばいっぽいんだ」

「……不过这实力测验可不是闹着玩的。要是考不好的话,真的会有点糟糕。」

「退学処分ですか」

「会被退学吗?」

「進学校は進学校だけど、テストの点が低いことを理由に退学になったりするほどに逸脱した進学校じゃないよ、うちは。ていうか、世の中に実在するのか? そんな冗談みたいな進学校。まあ、だから、どんなに最悪でも留年って感じだけど……だけど、やっぱそれは避けたいよな」

「我的学校虽然是升学学校,不过没有夸张到会因为考试不好而被退学啦。话说,世上哪有那种升学学校啊?听起来像个笑话。唉呀,考不好顶多留级而已……不过我可不想留级啊。」

避けられるものなら。

如果可以避免的话。

いや、避けなければならないのだけれど。

不,我必须要避免才行。

「ふむ。では阿良々木さん、今日はもう、お出かけなんてしている場合ではないのではありませんか? 早く家にこもって試験勉強をしなければならないはずです」

「嗯。那阿良良木哥哥今天不应该出门才对吧?你应该在家闭门苦读。」

「意外と真面目なこと言うじゃん、八九寺」

「意外说出正经话呢,八九寺。」

「阿良々木さん、真面目なこと言うじゃんは余計です」

「阿良良木哥哥,『说出正经话呢』是多余的吧。」

「意外とだけでいいのか!?」

「只留下意外两个字就行了吗!?」

どんなエンターテイナーだ。

妳这是哪种搞笑角色。

「だけど心配はご無用だよ、むしろ話はそこに繫がるんだ、八九寺。言われるまでもないさ。お出かけっつったって、僕は別に遊びや買い物に行こうってわけじゃないんだ。勉強するために、お出かけするんだよ」

「不过妳不用担心啦,八九寺。我出门当然是和念书有关。不用妳来提醒啦。我说的出门可不是去买东西,也不是去玩。而是要出门念书。」

「ふむ?」

「喔?」

もっともらしく、首を傾げてみせる八九寺。

八九寺一本正经地歪着头,一脸不解。

「つまり、図書館か何かでお勉強をしようということですか? うーん。個人的には、わたしは、慣れた自分の部屋で落ち着いて勉強した方が、はかどると思いますけれど……ああ、それとも、阿良々木さんは、塾か何かに参加されるということなのですか?」

「也就是说,你要去图书馆之类的地方读书咯?嗯——我个人认为在熟悉的环境,也就是自己的房间里静下心来念书,会比较有效果……啊,还是说阿良良木哥哥有报名补习班之类的东西呢?」

「図書館と塾とじゃ、塾の方が近いかな」  僕は言った。 「ほら、憶えてるよな? 戦場ヶ原。あいつ、学年でもトップクラスの成績の持ち主だからさ、今日はこれからあいつん家に行って、勉強を教えてもらう約束なんだよ」

「要说是图书馆还是补习班的话,应该比较接近补习班吧。」我说。「你还记得她吧?战场原。那家伙的学年成绩名列前茅,今天我们约好要去她家,她要教我功课。」

「戦場ヶ原さん……」

「战场原……」

八九寺が腕を組んで、すっと俯く。

八九寺双手抱胸,嗖一声低下头。

まさか、忘れてしまったのだろうか。

她该不会忘记了吧。

都合が悪いというか、多分、恐怖がゆえに。

如果战场原的存在对八九寺不利的话,那大概是因为战场原太恐怖的关系。

「フルネームは、戦場ヶ原ひたぎ……なんだけど。ほら、この間、僕と一緒にいたポニテのお姉ちゃんで、お前のことを……」

「她的全名是战场原黑仪……就是上次和我在一起的那个马尾姐姐啊,她还帮你……」

「……ああ、あのツンデレの方ですか」

「……啊!是那个傲娇的大姐姐吗?」

「………………」

いや、憶えてはいたようだけれど。

看来她记得战场原。

なんか戦場ヶ原の奴、あちこちでその『ツ』から始まり『レ』で終わる、片仮名四文字の認識が定着しつつあるみたいだな……いいのかなあ。本人はそれについて、一体どう思っているのか、一度聞いておく必要がありそうだ。僕の対応も、それによって変わってくる。

战场原那家伙,似乎逐渐被定位成「傲」开头、「娇」结尾的角色……这样好吗?看来我有必要问问她本人对这点有何看法。我的应对方式,将会随着她的答复而改变。

「包容力に溢れた素敵な方でしたよね。わたしのことをずっとおんぶしてくださって、道案内をしてくれたものです」

「她是一个富有包容力的漂亮姐姐对吧。她那个时候一路上背着我,还替我带路。」

「過去の記憶が美化されてるぞ!?」

「你过去的记忆被美化咯……」

八九寺の中で戦場ヶ原とのことは、さだめしトラウマになってしまっているようだ。まあ、お互いの抱える事情を考慮すれば、さもありなんっていう感じだけど……。

先前她们之间的互动,在八九寺的心中想必造成了心理创伤。唉呀,如果从她们彼此抱持的问题来看,会这样也是理所当然的……

八九寺は腕組みを続けたまま、

八九寺的双手依旧交叉在胸前,

「ふうむ」

「嗯——」

と唸ってみせる。

她低吟了一声。

「あれ、でも……確か、阿良々木さんと戦場ヶ原さんは──その、まあ、何と言えばよいのでしょうか、えーっと」

「咦,可是……我记得阿良良木哥哥和她——那个,该怎么说才好呢,就是……」

八九寺はどうやら、慎重に言葉を選んでいるようだった。質問の内容はおおよそ見当がつくけれど、多分、八九寺としてはそれを直截的な表現で口にすることへの抵抗があり、なんとか別の言い方を探っているといったところだろう。小学五年生のボキャブラリーで、一体全体どのような取捨選択が行われるのか、好奇心というほどではないにせよ、少なからず興味があったので、あえて助け舟を出さずに、八九寺を見守る僕だった。

看来八九寺似乎在慎选措词的样子。我大概已经知道她想问什么了,但她似乎却在找寻别的表现方式,无法直接将那个字眼说出口。她小学五年级程度的词汇,到底会做出什么样的词汇选择?尽管我不是很好奇,但多少还是有一点兴趣,因此我故意不帮腔,静候她开口。

やがて、八九寺は言った。

最后,八九寺开口了。

「……恋愛契約を結んでらしたんですよね?」

「……你们是不是缔结了恋爱契约啊?」

「最悪のチョイスだな!」

「你这是最烂的词汇选择!」

まあ予想通り、怒鳴ることになった僕だった。

正如预期,我怒吼了。

教科書のように綺麗なやり取りだ。

这对答就跟教科书上写的一样漂亮。

「は? 阿良々木さん、わたし、何かおかしなことを言ってしまいましたか?」

「嗄?阿良良木哥哥,我说了什么奇怪的话吗?」

「表面的にはおかしな言葉ではなくとも、その裏に匂うとても嫌な意味合いを、感じ取れない人間はなかなかいないと思うぞ……」

「就算表面上你没说什么奇怪的话,但我想只要是人,都可以听得出你话中带有不好的含意。」

「契約……で駄目なら、阿良々木さん、取引ではいかがでしょうか。恋愛取引」

「契约……这个词如果不行的话,阿良良木哥哥,那我改成『交易』这个词你看怎样?恋爱交易。」

「より酷くなった! いいからもう普通に言え!」

「这更伤人了!拜托你用普通的说法就好!」

「はあ。ではまあ、お言葉に従いまして、普通に言うことにしましょう。その気になれば普通にすることくらい、わたしにとってはお茶の子さいさい6です。では、いきますよ? 阿良々木さんと戦場ヶ原さんって、確か、男女交際をされていましたよね」

「喔。那我就听你的,用普通的说法吧。只要我想,这对我来说是易如反掌。那我要说咯,阿良良木哥哥和战场原姐姐,现在好像在做男女交际对吧?」

「……うん、まあ」

「……嗯,算吧。」

男女交際か。

男女交际吗?

えらく古めかしい言い方で攻めてきたな。

她居然用这种古风的说法攻了过来。

それがお前の普通なのか……。

这就是她的普通说法吗……

「では、勉強を教えてもらうなんて言っても、そんなのはただの口実にしかならなくて、お二人でちちり合って7しまうだけではないですか?」

「那么,你说要请她教你功课,我想那只是借口吧,其实你们两个是去幽会吧?」

「………………」

乳繰り合うとは、また、古めかしい……。

幽会,这又是一个古色古香的词……

こいつのボキャブラリーは絶対に変だ。

这家伙的词汇选择肯定有问题。

「留年できるかどうかが問われている実力テストを前に、恋人さんのお家を訪問するだなんて、わたしからすれば、自殺行為としか思えませんが、阿良々木さん」

「在这关系到留级问题的实力测验前,你还跑到女朋友家做客,照我来看,这只能算是自杀行为呢,阿良良木哥哥。」

「卒業できるかどうかだ、僕が問われているのは」

「是关系到我能不能毕业,不是留级。」

かなりの馬鹿だと思われているらしい。

她似乎认为我很笨。

僕は僕が可哀想だった。

我觉得自己好可怜。

「あと、自殺行為とか言ってんじゃねえ」

「还有,别说这是自杀行为。」

どうやら僕は小学生から苛めに遭っているらしい。

看来我被小学生欺负了。

僕は僕が可哀想だった。

我觉得自己好可怜。

「お前とはいずれ、出るところに出て8決着つけなくちゃいけないみたいだよな……」

「看我们总有一天,我们必须对簿公堂,分个是非对错了……」

「出るところが出ている? 胸とかお尻とかですか? 阿良々木さんは小学生の身体に何を求めているのでしょう」

「该凸的地方?你是指胸部或屁股吗?阿良良木哥哥想要对小学生的身体要求什么啊。」

「黙れ。揚げてもない足を取ろうとするな」

「闭嘴。不要曲解我的意思。」

僕は八九寺の頭を叩いた。

我敲了八九寺的脑袋。

八九寺は僕のすねを蹴り返した。

八九寺回踹了我的胫骨一脚。

痛みわけ。

双方负伤平手。

あいたが9

同病相怜。

「まあ、でも、その辺は大丈夫だよ、八九寺……戦場ヶ原の奴、そういうところには、やたらめったら10厳しい奴だから」

「不过,你不用担心啦,八九寺……因为战场原对那方面的事情,可是很严格的。」

「厳しいとは、お勉強に? スパルタなんですね。ああ、そういえば、あの方、馬鹿が嫌いそうですよね」

「那方面是指课业上吗?她的教学方式是斯巴达式的吧。啊这么说来,她好像很讨厌笨蛋。」

「ああ。嫌いだって言ってた」

「嗯。她有说过。」

だから戦場ヶ原は子供が嫌いなのだ。

所以战场原才会讨厌小孩。

八九寺のことも嫌いなのだ。

也讨厌八九寺。

ひょっとしたら僕のことも嫌いかもしれない。

她可能连我都讨厌也说不定。

もっとも、今の会話の流れで言うならば、戦場ヶ原が厳しいのは、お勉強に対してということだけでは、ないのだが……まあ、その辺は、優等生ということで。

不过,从现在的对话方向来说,战场原似乎不只是对功课严格而已……唉呀,这里就用优等生一次来带过吧。

「さながらハートフル軍曹ですね」

「她宛如一个充满爱心的军曹。」

「なんだそのいい人そうな陸軍下士官は」

「那听起来像个好人的陆军士官是什么东西。」

「えーっと、戦場ヶ原さんのお家といいますと、この間の公園の──」

「嗯——说到战场原姐姐的家,不是在之前那座公园的——」

「いや、言ったと思うけれど、戦場ヶ原はそこからは結構前に引っ越していて──僕は、お前と会うちょっと前に一度、もうお邪魔したことがあるんだけど、結構、遠い場所でな。家に帰って、チャリを乗り換えて、それから向かうとして……ああ、考えてみりゃ、時間、そんな余裕あるわけでもないのかな」

「没有,我应该有说过吧,战场原很久之前就搬家了。我在遇见你之前去过她家一次,她家还满远的。所以我要先回家换脚踏车,然后再去她那里……啊,这样想想,我时间上好像不是很充裕的样子。」

「お急ぎでしたら、野暮なお引止めはしませんが」

「我没有那么不解风情,如果你赶时间的话,我就不留你了。」

「いや、切羽詰まっているってわけでもないさ」

「不会,我也不是很赶啦。」

それに、戦場ヶ原の家に行くのだと言っても、どうしてもやることがお勉強だから、いまいち乗り気になりきれないというのも、偽りのない本音の部分だしな……そんなことを戦場ヶ原に言ったりしたら、どんな暴言毒舌がこの身に浴びせられることになるのか、知れたものではないが。

而且,去战场原家是 OK,但如果目的是念书的话,说句真心话,这实在让我有点提不起劲来……要是我把这话告诉战场原,她不知道会用什么毒舌谩骂来洗礼我。

しかし、まあ。

但是,也罢。

戦場ヶ原ひたぎ。

战场原黑仪。

八九寺もそうなのだけれど、しかし、戦場ヶ原は戦場ヶ原で──

八九寺也是一样,但战场原也有她自己的——

「なあ、八九寺……お前って」

「我说八九寺……你——」

と、そんな風に。  言いさしたところで、背後から、音が聞こえた。

当我话说到一半的时候,身后突然传来一阵声音。

音。

那声音是……

足音、である。

脚步声。

細かく刻まれたリズムが小気味いい、『たっ、たっ、たっ、たっ、たっ、たっ』と、走っているというよりは、一歩ずつ跳ねているような、一歩ずつ跳んでいるような──そんな足音。

「咑、咑、咑、咑、咑、咑!」那紧凑的旋律,给人一种愉悦感。与其说脚步声的主人是用跑的,倒不如说他是用跳步的方式在前进。

もう、後ろを振り向いて確認するまでもなかった。

我没必要回头确认。

そうなんだよな……。

是啊……

平和で平穏でないというなら、ある意味、実力テストの他にも、非常に困った問題を抱えているんだよな、この僕は……。

要说我这阵子有哪里不和平安稳的话,在某种意义上,除了实力测验外还有另一个问题让我非常伤脑筋……

撒いたと思っていたのに。

我还以为自己已经甩掉她了。

たっ、たっ、たっ、たっ、たっ、たっ。

咑、咑、咑、咑、咑、咑!

どんどん近付いてくる足音。

脚步声快速逼近。

確認するまでもないとはいえ──

就算我没必要回头确认——

しかし、振り向かないわけにもいかない。

但我还是不得不回头。

たんっ!

蹬!

そして、僕が嫌々の渋々、ゆっくりと身体を捻ったときに──彼女は、跳んでいた。

接着,当我心不甘情不愿,缓缓转过身体时——她跳了起来。

彼女は。

她。

神原駿河は、跳んでいた。

神原骏河跳了起来。

走りはば跳び11よろしく、一メートルや二メートルではきかない距離を、まるで万有引力の法則を無視しているかのごとく、理想的なフォームと軌道で空中に──空中のままに、僕の右側を、ほとんど顔のすぐ横辺りを、通過して──

她的助跑跳远,随便一跳距离都超过一、两公尺,宛如无视万有引力定律,用相当标准的姿势和轨道,在空中穿过我右侧飞了过去,几乎快贴近我的脸旁——

そして着地する。

接着落地。

その瞬間、乱れた髪が、すぐに落ち着く。

在那瞬间,散乱的头发立刻就静止了下来。

制服姿。

她穿着制服。

今度は、言うまでもなく、僕の学校の制服。

这次的制服不用多说,当然是我们学校的制服。

スカーフの色が、二年生の黄色。

领带颜色是二年级的黄色。

ちなみに、そんな制服姿での跳躍だったために、その今風に短く改造されたスカートが思い切りめくれかえっていたが、しかし彼女は膝の辺りまで届くスパッツを着用していたため、僕は全く幸せな気持ちにはならなかった。

顺道一提,她刚才穿制服这样跳跃,身上那件时下流行的短百褶裙当然是整个翻了起来,不过她还穿着一件及膝的运动紧身裤,因此我丝毫没有感受到幸福的滋味。

そのスカートも、少し遅れ、ぱさりと元に戻る。

她身上那件裙子慢了半拍后,也跟着回到原位。

不意に、ゴムの焼けるような臭い。

四周突然传来橡胶烧焦的味道。

彼女の履いている、いかにも高級そうなスニーカーの裏面が、道路のアスファルトと激しい摩擦を起こした結果らしい……どんな桁外れの運動能力なのだろう、こいつは。

那味道是她脚下那双看似高级的帆布鞋,和柏油路面激烈摩擦所造成的结果……这家伙的运动神经,到底有多离谱啊。

そして、バスケットボール部のエース。

随后,篮球社的王牌选手——

神原駿河が──振り向いた。

神原骏河转过头来。

やや幼さが残るが、しかし、三年生でも滅多にいないような、凜々しい雰囲気を漂わす表情、そしてきりっとした眼で──まっすぐに、僕を見る。

她的表情微带稚气,但却有一种威严可敬的气息(就算是三年级生,也没几个人有这种神情)。接着,她用线条分明的眼眸直视着我。

宣誓でもするように、胸に手を置いて。

同时把手放在胸前,宛如在宣誓一般。

そして、にこりと、軽く微笑む。

最后,她露出了一抹微笑。

「やあ、阿良々木先輩。奇遇だな」

「唉呀!阿良良木学长。还真是巧啊。」

「こんな仕組まれた奇遇がありえるか!」

「最好是有这么刚好的巧遇啦!」

明らかに狙いすまして駆けてきただろうが。

她会跑过来很明显是针对我。

辺りを見れば、八九寺は、見事に姿を消していた。僕に対してはあんなずばずば12ずけずけ13と物を言う癖に、意外と人見知りをする子供である八九寺真宵、さすがに判断が早い、あまりにも軽やかなフットワークだった。まあ、あいつでなくっても、見知らぬ女がものすごいスピードで走ってきたりしたら(あいつの位置からは、神原が自分目掛けて突貫してきたように見えたはずだ)、誰だって普通に逃げるだろうけれど。

这时我往身旁一看,八九寺的身影已经消失得一干二净。那孩子——八九寺真宵跟我说话的时候毫不客气又没大没小,没想到居然还会怕生。她这落跑的判断下得还真快,脚下功夫实在不得了。唉呀,就算刚才在场的人不是她,假如有一个陌生的女子用惊人速度向你冲过来(从八九寺的位置来看,神原看起来像是朝她发动突击一样),任谁都会脚底抹油吧。

しかし、本当に友情に薄い奴だ……。

不过,友情这种东西还真是薄弱啊。

まあいいけど。

算了没差啦。

視線を戻すと、神原は、何故かうっとりした風に、深々と感じ入っているように、何度も何度も繰り返し、頷いていた。

我把视线挪回神原身上,她不知为何一脸陶醉,十分钦佩地反复点了好几次头。

「……どうしたんだよ」

「……你干么啊?」

「いや、阿良々木先輩の言葉を思い出していたのだ。心に深く銘記するためにな。『こんな仕組まれた奇遇がありえるか』、か……思いつきそうでなかなか思いつきそうにない、見事に状況にそくした14一言だったなあ、と。とうそくみょう15とはこのことだ」

「没有啦,我只是在回想阿良良木学长刚才说的话。我要把它铭记在心。『最好是有这么刚好的巧遇啦』吗……这种一语道破刚才那种情况的话语,乍看之下要想到似乎很容易,可是突然要想还想不太到呢。学长还真是随机应变啊。」

「………………」

「うん、そうなのだ」  そして神原は言った。 「実は私は阿良々木先輩を追いかけてきたのだ」

「嗯,学长说的没错。」神原接着说。「其实我是追着学长跑过来的。」

「……だろうな。知ってたよ」

「……我想也是。我早就知道了。」

「そうか、知っていたか。さすがは阿良々木先輩だ、私のような若輩がやるようなことは、全てお見通しなのだな。決まりが悪くて面映おもはゆい限りではあるが、しかし素直に、感服するばかりだぞ」

「学长已经知道啦。真不愧是阿良良木学长,我这种晚辈的所作所为,全部都被学长你看穿啦。这还真叫我难为情,不过我真的很佩服学长你呢。」

「………………」

やりづれえ……。

我快说不下去了……

僕の顔に、今どんな表情が貼り付いているのかは果たして定かではなかったが、しかし、そんな僕には全く構うことなく、神原駿河は、潑剌とした笑顔を、僕に向けているのだった。

我不清楚现现在自己脸上是什么表情,但神原骏河对此毫不在乎,用精力充沛的笑容看着我。

三日前。

三天前。

廊下を歩いていたら、よく響く足音と共に近付いてきたこの女、神原駿河から、当たり前のように声を掛けられた。あまりに当たり前のようだったから、そのときはつい普通に対応してしまったが、しかし相手は二年生のスター、抜きん出た有名人。いくら僕がそういった噂めいたものに疎い人間であったとしても、知らないわけがない相手だった──がしかし、彼女と僕との間に接点などありえないと、縁があるはずなんてないとばかり思っていた──ので、少なからず驚いた。

我走在学校走廊上时,这女人——神原骏河突然踏着响亮的脚步声,稀松平常地跑来向我搭话。由于她的举止实在太过自然,那时我也下意识地用普通的态度去对应她,但对方可是二年级的明星,出类拔萃的名人。就连我这个平常不怎么关心校内传闻的人,都知道有她这号人物——但是,我一直以为她和我之间不可能会有任何交集,我也不可能会有缘分认识她——因此,多少有一点讶异。

しかし、僕が真に驚いたのは、彼女の有するその性格の方だった。いや、何と言えばいいのかわからないけれど、とにかく、不可思議な……これまでの僕の人生で、一度も遭遇したことのないパーソナリティ、キャラクターを、神原駿河は有していたのだった。

不过,真让我讶异的东西是她的个性。不,我不知道该怎么说才好,总而言之,她很不可思议……神原骏河拥有的人格及性格,是我至今的人生当中从未遇过的。

そして。

接着。

それ以来、つまり三日前から今日この日この瞬間に至るまで、こんな風に──僕は神原駿河に、付きまとわれているというわけだ。いついつでも、どんな場所でも、『たっ、たっ、たっ、たっ、たっ、たっ』と、人の目も気にせずに、神原は僕を目掛けて駆け足で向かってくるのだった。

在那之后,也就是三天前开始,到今天的此刻为止,神原骏河就像这样,一直纠缠着我。不论我身在何方,她三不五时就会踏着「咑、咑、咑、咑、咑、咑!」的脚步声朝我冲来,毫不在意旁人的眼光。

「……休み時間やらはともかくとして、お前、神原、放課後は部活なんじゃないのかよ。こんなところにいていいのか?」

「……下课休息的时间也就算了,神原你放学之后不是还有社团活动吗。跑来这种地方可以吗?」

「ほほう。さすがに鋭いな、阿良々木先輩は。些細な疑問を絶対に見逃さない、まるで探偵小説の主人公だ。フィリップ・マーロウ16だって、阿良々木先輩の前では裸足で逃げ出すだろう」

「喔喔!阿良良木学长还真是敏锐啊。绝对不会看漏细微的疑点,简直就像侦探小说的主角一样。就算是菲力普 · 马罗,在阿良良木学长面前也会落荒而逃。」

「全国区のバスケットボール選手がこんな時間にこんなところにいる不自然を指摘したくらいのことで、そこまで誉めそやすな」

「我只是想说全国区的篮球选手,这种时间出现在这里相当反常而已,别说得我好像很厉害一样。」

この程度のことで裸足で逃げ出す探偵が主人公の探偵小説なんて、読みたくねえよ。

侦探小说主角会因为这种三脚猫功夫落荒而逃的话,那种小说我实在不想看。

「命から二番目の武器として謙虚な姿勢を決して見失わない、その慎み深いかいに満ちた言葉……ともすればすぐに自分自身を勘違いしてしまう私としては、積極的に見習わせていただきたいものだ。ふふ、古くから朱に交われば赤くなるというが、阿良々木先輩とこうしているだけで、自分が人間的に成長していくのを感じるな。あやからせて17もらうとはこのことだ」

「学长把谦虚当成仅次于生命的第二样武器,刚才那番话语中充满了谦虚谨慎的自我规戒……我这个人动不动就会错估自己,应该要积极向学长看齐才对呢。呵呵,自古以来就有『近朱者赤,近墨者黑』这句话,我光是这样和阿良良木学长聊天,就感觉到自己的人格有了成长呢。所谓的仿效就是指这样。」

にこにこしてそんなことを言う神原。

神原笑容满面地说。

笑顔に悪意は全くないが。

她的笑容没有半点恶意。

……僕は、今まで善人というのは、羽川みたいな奴のことをいうのだと思っていたけれど、その究極の形というのは、案外、この神原のような人間のことをいうのかもしれない。

……我至今一直认为所谓的善人一词,是指羽川那一类的家伙;但出人意料,神原这类的人可能是善人一词的最高级型。

要するに、羽川よりも酷い。

简单来说,她比羽川还要猛。

あの委員長よりも迷惑だ。

比那个班长还要麻烦。

「でも、ほら、今、私はこんな手だからな」

「不过,学长你看,我现在手这个样子。」

神原は、そう言って、自分の左腕を僕に示した。

神原一边说,一边出示自己的左手。

真っ白い包帯がぐるぐるに巻かれた、左腕。五指の爪先から手首の部分まで、隙間なくぐるぐるだ。制服の長袖に隠れてよく見えないけれど、実際、肘の辺りまで、包帯が巻かれているそうである。なんでも、ちょっと前に、自主トレ中に誤って、変な風に捻挫ねんざしてしまったとか、なんとか──まあ、その噂は、神原が僕に声をかけてくるその直前に、既に聞いていたのだが。

她的左腕上缠着洁白的绷带。绷带从她的五根手指一路缠绕到手腕处,包得密不透风。其实那绷带一直延伸到她的手肘处,只是手腕以上的部分被长袖制服遮住看不见而已。听说她是在自主训练的时候不慎挫伤,而且受伤的角度还很奇怪……等等之类的传闻,早在神原向我搭话前,我就已经有所耳闻。

噂は噂。

传闻终究是传闻。

話半分にしたって──これだけの運動能力、それに、身体の柔軟性を持つ神原駿河が、自主トレとはいえ捻挫だなんて、にわかには信じがたかったが、実際、こうして包帯を巻いている以上は、真実なのだろう。弘法こうぼう18にも筆の誤り、河童かっぱの川流れ、猿も木から落ちる。

就算传闻只有一半的可信服,我也很难相信有这等运动神经,且身体柔软的神原骏河会在自主训练的时候挫伤,但现在她缠着绷带的手就摆在眼前,看来那传闻是真的吧。正所谓仙人打鼓有时错。人有错手,马有失蹄。猴子也会从树上掉下来。

「プレイができない癖に体育館にいても、邪魔になるだけだから、私は現在、部活への参加は遠慮させてもらっているのだ」

「不能打球还待在体育馆只会给人添麻烦,所以我现在尽量避免参加社团活动。」

「つってもお前、キャプテンなんだろ? そうでなくとも、お前がいなきゃ、チームの士気が下がっちまうだろうに」

「不过你是队长吧?就算不是队长好了,要是你不在,队伍的士气也会下降吧。」

「私のチームを、そんなワンマンチームみたいに言われるのは心外だぞ、阿良々木先輩。私のチームは、私がいない程度のことで士気が下がるような、軟弱なチームではない」

「学长把我的队伍说得好像只有我一个人在打球一样,真叫我感到遗憾啊。我的球队可没那么软弱,她们不会因为我不在士气就下降。」

神原は語気を強くして、そう言った。

神原加强语气说。

「バスケットボールは過酷なスポーツなのだ。一人の力でどうにかなるものではない。ポジション的に、つまり役割として私が目立っているのは認めるのにやぶさか19ではないが、それもみんなの力があってこそなのだ。だから、私が浴びている称賛は、チームのみんなで分け合うべきものだ」

「篮球是相当激烈的运动。单靠一个人是没办法赢球的。我承认在位置上,也就是责任上我很显眼没错,但那是因为有大家的力量才会有我。因此我所受到的赞赏,应该和队伍中的每一个人分享。」

「……ああ、そうだな」

「……嗯,你说的没错。」

こういう奴……なんだよなあ。

她就是……这种人啊。

善良というか、善人というか。

要说她善良呢,还是说她是善人呢。

なんというか。

我也不知道该怎么说。

今に限ったことではなく、チームメイトの悪口(のつもりはなかったのだが)には、神原はどうやら、すごく敏感らしかった。一年生の頃、新聞部のインタビューで、当時の先輩に対し失礼なことを言われたという理由で、机をひっくり返した──みたいな噂もあるくらいだし(ちなみにその噂はデマだったが、しかし、どうやら似たようなことはあったらしい)。

神原会做出这种反应,不只局限于这次。只要有人说她队员的坏话(虽然我没这个意思),就会触碰到她的敏感神经。似乎还有传闻说,她在一年级接受新闻部采访的时候,只因为对方对她当时的学长说了不礼貌的话,她就气得翻桌(附带一提,这项传闻是子虚乌有,但似乎真的有发生过类似的事情)。

ふふ、と、そこで神原は笑みを漏らす。

呵呵,此时神原笑出声来。

「わかっているぞ、阿良々木先輩。今のは私のキャプテンとしての資質を試したのだろう?」

「我知道你的用意,阿良良木学长。你现在是在考验我,看我有没有当队长的资质对吧?」

「………………」

得意満面な手柄顔20で何を言い出す、この後輩。

这学妹洋洋得意、居功自傲地在说什么啊。

そんな目を僕に向けるな。

不要用那种眼神看着我。

「全く、阿良々木先輩の言葉を後世に残すために記述する際には、執筆者には全て太字ふとじにして傍点を振るようにしてもらわないと、読む者にその色合いが伝わらないだろうな、言葉の一つ一つに込められた重みが全然違う。説得力とは何を言うかではなく誰が言うかだとは、普通悪い意味で使われる言葉だが、阿良々木先輩についてそれを言うときに限っては、いい意味で使えそうだ。安心して欲しい。キャプテンとしての責務を放棄するつもりはない。そんな怠慢な真似をするほど、私は思い上がってはいないさ。曲がりなりにもエースとしての自覚はある。みんなにはちゃんと、練習メニューを指示してきた。何、私がいなければいないで、みんな、のびのびとプラクティスに集中できるものなのだ。鬼のいぬ間に洗濯21だな」

「说真的,要将阿良良木学长的语录,记录下来流传给后世的时候,必须要请执笔者把内容全部用成粗体,然后标上标点,不然个中的意义就无法传达给读者吧,因为这一字一语内含的重量完全不同。有句话说:『说服力不是取决于你说了什么,而是要看说这句话的人是谁。』平常这句话是用在负面的地方,但唯独套用在阿良良木学长身上,听起来就像是正面的了。请学长放心。我没有打算舍弃队长的责任和义务。我没有那么骄傲怠慢。好歹我也有身为王牌选手的自觉。我来这之前,已经确实指示大家练习的内容。我不在的话,大家反而能够轻松练习呢。所谓阎王不在小鬼翻天嘛。」

「鬼ね……まあ、それを聞いてほっとしたよ」

「阎王吗……听你这么说我就放心了。」

「スポーツとはいえ、あくまで学生の部活動だ。ましてうちの高校は、進学校。基本的には十代の楽しい思い出作りなのだから、部活は気さくに気楽に気兼ねなくが一番だ。しかし、本来無関係な私の人間関係、それにチームメイトのことまで気に掛けてくださるとは、阿良々木先輩は本当に思いやりのある人だ。細やかな心配り、痛み入る。実に懐が深い、一望千里な心具合だぞ。まさかバスケットボール部のためにあえて嫌われ役まで演じてくれるとはな。目下の者に対して本当に親身であればこその行いだ。私は阿良々木先輩のような人には会ったことがないぞ」

「我们的运动,说到底也只是学生的社团活动。况且我们学校是升学高中。社团活动基本上是用来制造青少年时代的快乐回忆,最重要的是要轻松且无顾虑。不过,没想到阿良良木学长居然会关心我这个陌生人的人际关系,甚至还顾虑到我的队友,你真是一个体贴的人啊。这无微不至的关怀,让我不胜惶恐。学长真是心胸宽大,胸襟广大无边啊。为了我们篮球社,居然特意扮黑脸。学长真的是把我们这些晚辈当成自己人才会这么做的。我从来没遇到过像阿良良木学长这样的人啊。」

「僕もお前みたいな奴には会ったことがねえよ……」

「我也从来没遇到过像你这样的家伙……」

多分、しんじく22だよな……。

大概是一种新创意吧……

ここまで天然の褒め殺しキャラ……。

这种天然型捧人上天的角色……

「そうか。阿良々木先輩からそう言っていただけるとは、光栄の至りだ。ふふ、阿良々木先輩くらい優渥ゆうあくな人から褒められると、自分でも不思議なほどに発奮はっぷんさせられるというのだろうか、なんだか、本来ないはずの勇気すらわいてくるようだな。今なら私は何でも出来るような気がするぞ。これからは、何か落ち込むようなことがあったときには阿良々木先輩を訪ねることにしよう。阿良々木先輩の謦咳けいがい23に接するだけで、私は何でも頑張れるに違いないのだからな」

「是吗。能够承蒙阿良良木学长这么说,我真是感到光荣至极呢。呵呵,被学长这种内心优质的人夸奖,我就会有一种想要努力向上的感觉,连我自己都觉得不可思议,我甚至感觉心中原本没有的勇气,都涌出来了一样。现在我感觉自己无所不能。我决定了,以后如果我意志消沉的时候,就来找学长你吧。因为只要拜见学长一面,不管遇到什么困难,我一定都可以继续努力下去。」

決して微笑みを絶やさない神原だった。

神原的脸上始终带着一抹微笑。

それはほとんど無防備とも取れる笑顔なのだが──しかし、芯のところにしっかりとした強さを感じさせるところが、決して無防備ではない。自分自身に対して絶対の自信をもっているからこその、その笑顔なのだろう。

她的笑容看起来毫无防备,但绝对不是如此,因为我感觉得到,她笑容的深处有一种坚强的意志。正因为她对自己有绝对的自信,才能露出这种笑容吧。

僕とは全く違う世界の人間。

她和我完全是不同世界的人。

僕とは全く違う種類の人間。

她和我完全是不同种类的人。

いや、それはそれ自体では、わかりきっていることだし──性格云々ではなく、スポーツ少女、学校のスターである神原と、阿良々木暦とが違う世界の人間だということ、違う種類の人間だということはわかり過ぎるほどにわかりきっていることだったが、しかし、問題は、その神原駿河が、どうして僕に声を掛けてきたのかということだ。

不,这些我老早就心知肚明,我不是在说性格方面的事情。神原是运动型少女,又是校内的明星人物,和我阿良良木历是不同世界、不同种类的人,这些我早就心知肚明道一塌胡涂的地步;不过问题在于,为什么神原骏河会来找我搭话?

声を掛けてきただけでなく。

不只是搭话而已。

こうして、声を掛け続けてくるのか──だ。

她还像这样一直跑来找我聊天。

駆けてきて──駆け続けてくるのか。

一而再、再而三地朝我跑来。

神原自身の言葉ではないが、何か落ち込むことがあったから、頑張るために訪ねてきている──のではないはずだ。僕にそんな、神通力みたいな力はない。あったら自分で惜しみなく使っている。

神原刚才说过,以后要是意志消沉就会跑来找我,以寻求努力的动力——她原来不是这样说,但语意应该差不多——但这应该不可能吧。我可没那种超能力。要是有的话,我早就不客气地用在自己身上了。

「で、神原。今日は何の用なんだ?」

「对了,神原。你今天找我有什么事?」

三日前から数えると、一体何度目の質問になるのかもうわからなかったが、僕は、神原に質問した。

我问。从三天前算起来,这问题我已经不知道问过几次了。

「ああ、そう……」

「啊,对喔……」

ここまで常にはきはきと、淀みなく応答してきた神原は、ここで初めて、言葉に迷ったようだった。しかしそれも一瞬、すぐに頰に微笑をたたえて、僕に言った。

平常神原听到这个问题部对答如流,但她今天却犹豫不知道该说什么。这还是头一遭。不过,那犹豫也只是一眨眼间,她马上就笑容满面地对我说:

「……今朝の新聞の国際面、読んだろう? ロシアのこれからの政治情勢について、阿良々木先輩の意見を聞きたいんだ」

「……学长有看今天早上报纸的国际版吧?我想听听阿良良木学长对俄罗斯未来的政治情势有什么见解。」

「時事ネタかよ!」

「时事话题吗……」

しかも、よりにもよって何てセンスだ。

而且选的偏偏还是这种话题。

日本の政治についてだって、僕はよく知らないというのに、海を渡ってロシアと来たか……。

我对日本政治都不是很懂了,还要我说海洋另一端的俄罗斯吗……

「ああ、インドの話の方が阿良々木先輩好みだったかな? ただ、私は残念ながらこの通り、体育会系、アウトドア系の人間なものでな、IT関連は弱いのだ。それよりも今はロシアの抱える問題の方が、私にとっては実際的だ」

「对啊,还是说阿良良木学长比较喜欢印度方面的话题?不过,很可惜就如学长听见,我是体育系又是户外派的人,IT 相关的话题我比较薄弱。而且现在俄罗斯方面的问题,对我来说比较实际。」

「……今朝は新聞、読んでないんだよ」

「……我今天早上没看报纸说。」

言った本人ですら誤魔化せるとは思えないほどにあからさまな言い訳の言葉を口にする僕だった。本当は、読むには読んだけれど、議論できるほどの嗜みがないだけなのだが……。

我说这话很明显是借口,连我自己都不觉得可以蒙混过关。其实报纸我是有看,但我的见识没有深入到可以和别人议论——

しかし神原はそれに対し、

然而,神原听到了我的说词,

「そうか」

「这样啊。」

と、ゆるやかに眼を細めるのみである。

只是瞇起眼睛,缓缓地笑着说。

「阿良々木先輩はぼうだからな、朝に新聞を読む暇がないのというのも無理はない。分もわきまえずに無神経なことを言ってしまった、申し訳ない。ならば、この話は明日に回そうと思うのだが、阿良々木先輩もそれでいいかな」

「阿良良木学长日理万机,早上会没空看报纸也不奇怪。我搞不清楚自己的身份,问这种有欠顾虑的问题,真的很抱歉。既然这样,这个话题我想我们明天再讨论好了,学长你可以吗?」

「いいよ……」

「可以啊……」

「心が広いな。そんな簡単に許してもらえるとは思わなかった。私の浅薄な発言に阿良々木先輩ほどの人が何も思っていないわけがないのに、そんなことはおくびにも出さず、その鷹揚おうよう24な対応。清濁併せ吞む大きな心とはこのことだ。私はまた阿良々木先輩のことが、一つ好きになったぞ」

「学长的心胸真宽大。我没想到学长会这么简单就答应我。优秀如学长的人物,听到我这种肤浅的发言不可能毫无想法,可是学长居然把自己的想法藏在心里,用这种落落大方的态度响应。这种胸襟宽阔、广纳百川的心胸,我又多喜欢上阿良良木学长的一个地方了。」

「そうか、ありがとう……」

「是吗,谢谢……」

「礼には及ばない。私の正直な気持ちだ」

「学长无须道谢。这是我真诚的内心话。」

「…………」

けれど、こいつ、それなりに頭もいいんだよな。

不过,这家伙的头脑还挺好的嘛。

スポーツができて頭がいいっていうのは、人間的にはかなりの反則だよなあ……羽川だって戦場ヶ原だって、運動能力が低いというわけではないのだろうが、この後輩を前にしてしまえば、さすがに較べるべくもないだろう。一応、戦場ヶ原は、中学生のとき、陸上部のエースだったとはいえ、高校生になってからのブランクは大きいだろうし──戦場ヶ原が抱えていた特殊な事情も、そこに加味すれば尚更だ。

这种文武双全的人,以人类来说可是相当犯规的存在……羽川和战场原运动方面虽然不差,但是根本无法和这位学妹相提并论吧。战场原在国中时代虽然是田径社的王牌,不过她升上高中后就没碰田径,有一段很大的空窗期,再加上她本身怀抱的特殊理由,就更不用说了。

いや、勿論。

不过,当然。

僕だってまさか、神原が本当に、僕と、ロシアの政治情勢について議論を戦わせたいのだとは思ってはいない──明らかに方便だろう。

我不认为神原是真的想和我议论俄罗斯的政治情势,她这么说很明显是权宜之计吧。

一体何の用なんだと、僕が何回訊いても、あくまでもそんな調子で、神原はまともに答えようとしない。

我每次问神原找我有什么事时,她都是这种调调,不肯认真回答我。

他に何か目的があるのだとは思う。

我觉得她找我可能另有目的。

しかし、それが見当もつかないのである。

但我却猜不透她。

一体こいつはなんで、それもいきなり、こんな風に僕に付きまとうようになったのだろう。学校のスターの神原と落ちこぼれ三年生の僕との接点なんて、一つもないはずなのに。

这家伙为何——而且还这么突然——一直缠着我不放呢。校内明星神原和我这个三年级的吊车尾,根本不会有任何交集。

縁もゆかりもありはしないはずなのに。

八竿子打不着边。

「ところで阿良々木先輩、今日は何か変わったことはなかったか?」

「对了,阿良良木学长,你今天有遇到什么奇怪的事情吗?」

「あん? 別に……普通だけど」

「嗄?没有啊……还挺普通的。」

お前のこと以外は。

除了你以外。

いや、そろそろお前のことにも慣れてきた。

不,我差不多也快习惯你了。

「実力テストが近いから、それがちょっとした頭痛の種って感じかな……」

「实力测验就快到了,让我有一点头痛啦……」

「実力テストか。ふむ、それには私も頭を痛めている。テストは、部活をやっているものにはとても迷惑なのだ。一週間前から練習が、学校側から強制的に禁止されてしまうから、自主トレに励むしかなくなるのだ」

「实力测验吗?呜,我对那个也很头痛。测验这种东西,对有社团活动的人而言相当困扰。因为学校会在考试前一个礼拜强制禁止我们练习,我们只能做自主训练。」

「ふうん」

「嗯——」

そうなんだ。

原来是这样啊。

禁止されたときくらい休めばいいのに自主トレに励むしかなくなるということになる理屈は理解しがたいが、まあ、違う世界の話。

既然被禁止就应该好好休息,为何还要做自主训练?这里有我很难理解,唉呀,毕竟他的世界和我不一样。

「でも、お前個人に限れば、それもまた都合がいいんじゃないのか? 左手の捻挫、その間に治るだろう」

「不过,这对你来说刚刚好吧?这段时间你左手的挫伤大概也好了吧。」

「ん? ああ……ああ、そうだな」

「嗯?啊……对啊,说的没错。」

左手に視線を落とす神原。

神原的视线落在左手上。

「さすが阿良々木先輩、見るところが違う。常に人が幸せになる方法を考えているという感じだな。素晴らしいポジティヴシンキングだ」

「不愧是阿良良木学长,看事情的角度和别人不一样。感觉学长好像常常在思考让人类幸福的方法。这种正面思考还真是令人感叹啊。」

「ポジティヴシンキングにかけては、百年経ってもお前の右に出られるとは決して思わないよ、僕は……」

「正面思考这方面,我再修练个一百年也绝对赢不了你……」

どんな育ち方をしたら、こんな人間ができあがるのだろう。

到底要怎么养育,才能培育出这种人才呢。

はなはだ不思議だ。

这真是非常不可思议。

「まあ、ありふれた言い方になってしまうが、やはり学生の本分は勉強だからな。迷惑とはいえ、実力テストは実力テストで、頑張らせてもらおうと思っているぞ」

「不过,套一句大家都知道的话,学生的本分就是念书嘛。实力测验虽然让我很困扰,不过我会努力去考的。」

「怪我が右手でなくてよかったな」

「好险你伤到的不是右手。」

「いや、私はサウスポー25なんだ」

「不,其实我是左撇子。」

神原は言った。

神原说。

「左利きというのは日常生活においては大概の場合とても不便なものなのだが、勝敗を競うスポーツの世界に限れば、優位に立てる場合が多いから、重宝している」

「左撇子在日常生活中大多数的情况下都很不方便,唯独在竞争胜败的运动世界中比较会有优势,所以可是很贵重的存在。」

「へえ、そうなのか?」

「咦——真的吗?」

「うむ、対人競技をやっているものならば常識だぞ。生まれは左利きであっても、今の日本では大抵の場合、矯正されてしまうからな、サウスポーのアスリートは十人に一人、いるかいないかという割合なのだ。阿良々木先輩、この割合をバスケットボールというスポーツに当てはめればどうなると思う? バスケットボールは五人対五人の球技だ、つまりコートの中にいるサウスポーはただ一人。そしてその一人とは即ちこの私だ。私がエースになれた理由の一つが、そこにある」

「是真的,这点有在玩运动的人都知道。天生惯用左手的人,在现今的日本通常都会被矫正,所以左撇子的运动选手,在比例上十个人里头只有一个,有时候还不一定会有呢。阿良良木学长,如果把这个比例套用在篮球这个运动上,你觉得会变成怎样?篮球是五对五的球技,也就是说场内只有一个人是左撇子。而那个人就是我。这就是我能够当上王牌选手的其中一个原因。」

「ふうん……」

「嗯……」

わかったようなわからないような話だな。

这话我听了似懂非懂。

「しかし、それだけに、自身の不注意が原因とは言え、いざこうなってしまうと、単純な不便さだけが募ってしまうのだがな」

「不过,就因为这样,万一要是左手受伤,那就只有麻烦而已了。虽然这是我自己不小心弄伤的啦。」

「左利きね……ま、僕はスポーツとかやらないからそういうのはよくわからないけれど、でも、単純に、左利きって、格好いいよな」

「左撇子啊……我没有在玩运动,所以对那方面的事情不是很清楚,我只是单纯觉得左撇子很帅。」

素直な感想。

这是我由衷的感想。

まあ、思い込みというかこれは偏見のレベルだけれど、左利きの人間って、僕にはなんだか、動作がいちいちスマートに見えるんだよな。

我总觉得左撇子的人举手投足看起来都很有型,这可能是我自以为是的偏见啦。

「そんなことを言って、阿良々木先輩も左利きなのだろう? ふふ、時計を右手首に巻いているからな、すぐに気付いたぞ。左利きの人間は左利きの人間には敏感なのだ」

「阿良良木学长说这么多,其实你自己也是左撇子吧?呵呵,因为学长的表戴在右手,我马上就发现了。左撇子的人对同类可是很敏感的。」

「…………」

時計はなんとなく右手首に巻いているだけだとは、口が裂けても言えなくなってしまった……これから先、僕は、こいつの前では左手で字を書き、左手で箸を使わなくてはならないのだろうか。スマートだとは思うけれど、矯正してまでそうなろうという気は決してなかったのだが……。

手表我只是无意中戴在右手而已,这件事我现在就算打死也不能说出口……以后我在这家伙面前必须用左手写字、用左手拿筷子了吗?我觉得左撇子很有型没错,但我压根没想过要把自己矫正成左撇子……

「じゃあ、試験、大変になっちまうわけだな。利き腕がその有様じゃ、国語の試験なんて、やってられないだろ」

「那你考试的时候不就糟糕了吗?惯用手变成这样,国文根本没办法考吧。」

「まあ、そうはいっても実力テストだ、どの教科にしたって論文を書くわけではないからな、多少字が歪む程度で、うん、平気だ。先生方もその辺りの事情はきちんと考慮してくださるだろうしな。阿良々木先輩に不要な心配をかけるような言い方になってしまった、申しわけない。それにしても、全く阿良々木先輩は本当に後輩思いなのだなあ。テストを前に私なんかの心配をする余裕があるなんて、さすがだとしか言いようがない。なかなかできることではないぞ」

「唉呀,但是也只是实力测验,不是每一科都要写论文啦,字稍微有点歪七扭八,嗯,没关系的。老师大概也会考虑到我的状况吧。阿良良木学长。抱歉让你担心了。话说回来,学长你真的很替学弟妹着想呢。在考试之前还有余力来担心我,我只能说这真是了不起。这可不是一般人都做得到的事情。」

「……いや、別に余裕はないんだけどな」

「……呃,我也不是很有余力。」

それは本当にもう。

这话是真的。

余裕があったら後輩の心配をするというわけではないにせよ、こと今現在に限っては、僕に余裕と言えるようなものは、一切ない。

我不是因为有余力才来担心学弟妹,眼下,我根本没有余力去担心别人。完全没有。

「今日もこれから、勉強会にお出かけだよ」

「我今天等一下还要去读书会。」

「勉強会?」

「读书会?」

きょとんとした仕草の神原。

神原的表情讶异。

勉強会という単語がぴんとこないらしい。

她对读书会一词似乎没有会意过来。

「えーっと、つまりだな、わかりやすく言うと、僕はこれまでの成績があんまりかんばしくなかったので……それに、一年のときと二年のとき、出席日数もやばかったので……」

「就是那个啊,简单来说,我从以前到现在的成绩不怎么理想……而且一、二年级的时候,出席率也很糟糕……」

何故こんな説明をしなくてはならないのだ。

为何我必须多作说明。

スターとはいえ、年下の後輩相手に。

就算对方是明星,也不过是年纪小我一岁的学妹。

「つまり、実力テストは、挽回の機会なんだ」

「总归一句话,实力测验是我挽回的机会。」

結局、見栄を張った言い方になってしまった。

最后我说出口的话,像是在打肿脸充胖子。

自分の器の小ささを思い知る。

我切身感受到自己的器量有多么狭小。

「ふむ。なるほど」

「嗯,原来如此。」

頷く神原。

神原点头说。

「私はあまり試験勉強に熱を入れないタイプだから、よくわからないのだが、まあ、そういえば、クラスの連中も、試験前は誰かの家に集まったりしていた……かな?」

「我是那种考试的时候不会认真读书的人,所以我不太清楚啦,不过这么说来,我班上同学在考试前也会聚集在其中一个人的家里念书……是那种的吗?」

「ん。まあ、そんな感じだ」

「嗯。大概就是那种感觉吧。」

そうか。では阿良々木先輩はこれから友達の家に行くのだな、じゃあ。しかし……」

「这样啊。那阿良良木学长待会要去朋友家咯。不过……」

と、若干、口ごもる風の神原。

神原的话中略带踌躇。

「スポーツと違って、勉強なんて、みんなで力を合わせたらどうこうという種類のものだとは思えないのだが……」

「我觉得读书和运动不太一样,不是大家努力就有办法搞定的东西……」

「大丈夫。勉強会とはいっても、僕が一対一で、一方的に教えてもらうだけだから、家庭教師みたいなもんだ。クラスに滅茶苦茶成績がいい奴がいてさ、そいつの世話になろうってこと」

「没问题的。说是读书会也只有两个人,我是负责等人教我的那一方,感觉就跟家庭教师一样。我班上有一个成绩超好的家伙,所以我要去麻烦她。」

「ふうん……ああ」

「喔……啊!」

神原は思いついたように、 「戦場ヶ原先輩か」  と言った。

神原有如想到什么一般,她说。「是战场原学姐吗?」

「……ん? 知ってるのか?」

「嗯?你认识她吗?」

「阿良々木先輩のクラスで成績がいいといえば、戦場ヶ原先輩をおいて他にいないだろう。かねてより、噂には聞いている」

「说到学长班上成绩好的人,除了战场原学姐外没别人了吧。我老早就有耳闻了。」

「ふうん……まあ、そうなんだけど」

「嗯——你说的没错啦。」

まあ、やっぱりあいつも有名人だしな。

战场原那家伙果然也是名人。

下級生にも一人くらい、戦場ヶ原のことを知っている奴がいたとしても、それほどおかしくはないのか。

就算一、二年级当中,有人知道她的事情也不足为奇吧。

ん?

嗯?

でも、どうだろう、成績がいいってことで有名なら、学年トップを誰にも譲ったことのない、より有名な羽川の方を、先に連想しそうなものだけれど……少なくとも戦場ヶ原をおいて他にいないってことはないはずだけれど。それに、普通、勉強会というニュアンスからだったら、順当には同性同士、この場合は女子ではなく男子の名を挙げるのが普通じゃないのか?

可是很奇怪,说道成绩优异的名人,应该会先联想到羽川才对吧,她从来没把学年第一的宝座让给别人……至少「除了战场原之外没有别人」这句话放在这里说不通。而且,读书会给人的感觉,通常都是去同性家读书,一般来说她应该先说男生的名字比较正常吧?

なんでいきなり戦場ヶ原なのだろう。

怎么会突然就提战场原呢。

「では、邪魔をしてはいけないな。今日は、ここで失礼させてもらおうと思う」

「那我不能耽误学长的时间了。今天就这样,我先告辞了。」

「そっか」

「好。」

引き際を心得ているみたいなことを言いながら、しっかり『今日は』と言ってのける辺りが、神原駿河である。

神原骏河似乎很明白进退的分寸,句尾不忘加上「今天」两字,这的确很像她的作风。

ぐっと腰を落として、脚を伸ばす。

接着,只见她沉下腰,拉直脚筋。

ウォーミングアップ。

暖身运动。

アキレス腱をじっくりと伸ばして──

她仔细地伸展阿基利斯腱——

「阿良々木先輩。ご武運を」

「阿良良木学长。祝你武运昌隆。」

と。  言ったが早いか、神原は、『たっ、たっ、たっ、たっ、たっ、たっ』と足音を響かせながら、来た道を逆に、駆け足で、戻っていった。かなりの健脚──ただ単に足が速いというんじゃなくて、異様なほど、トップスピードに乗るのが早い。多分、百メートル、二百メートルでタイムを取れば、そんなにずば抜けた記録が出るわけではないのだろうが──しかし、十メートル、二十メートルという超超短距離走なら、陸上部のレギュラーを相手にしたって、神原はそうそう引けをとることはないだろう。この辺り、バスケットボールのような限られたフィールド内で縦横じゅうおう無尽に動き回る競技に対して特化されたアスリートである、神原駿河の面目躍如めんもくやくじょか……あっという間に、その背中が見えなくなってしまった。激しい動きに、短めのスカートはめくれ放題だったが、そのスカートからはみ出すほどの長さのスパッツを穿いている神原が、そんなことを気にするはずもない。

语毕瞬间,她踏着「咑、咑、咑、咑、咑、咑!」的脚步声,沿着过来的路冲刺跑了回去。她的脚劲还真不错——不只跑得快,从加速到最高速度的时间更是快到吓人。她跑百米、两百米的秒数成绩,或许不会特别优异。但如果是十米、二十米这种超超短距离赛跑,神原绝对不会逊色于田径社的选手吧。神原骏河是篮球运动员,这方面的能力被特别强化,以便能在被局限的场地中自由活动,而眼前的场景更活生生地印证了这一点……她一眨眼间,背影就消失得无影无踪。她激烈的动作,让短裙任意翻动,但神原的裙下穿着及膝的运动紧身裤,根本不会在乎自己的裙子乱翻。

……でも、走るときはジャージにした方がいいとは思う……見てる側としてもよこしまな期待を抱かずに済むしな。

……可是,我觉得跑步还是穿运动裤比较好……看的人也不会有邪恶的期待。

そして、やれやれ。

接着,我叹了口气。

僕は肩の荷が降りたような気分になる。

我顿时感觉如释重负。

今回は、比較的、短時間で終わったけれど……どうしてあいつが僕にこうも付きまとってくるのか、その理由をさっさと明らかにしないことには、これからもずっと、こういう事態が続くのかもしれないと思うと、あまり暢気に構えてもいられない。いや、別に現実的な被害実害があるわけではないのだから、放置しておいてもいいといえばいいのだが、神原のあの性格は、僕みたいな人間にはちょっとばかり疲れる……いや、神原駿河と話していて、疲れることのない人間なんて、一人だっているのだろうか? そんなの、いたとしても──

这次和先前比起来,时间算短了……要是我不赶快弄清楚她缠着我的理由,以后这种状况可能会不断发生,一想到这我就无法悠闲下来。不过,她对我也没造成什么实质上的灾害,放着不管其实也无所谓,只不过神原她的个性,我这一类的人稍微有点招架不住……不,应该说真的有人和神原骏河说话,不会觉得疲惫的吗?就算有——

そうだな。

对了。

それこそ、戦場ヶ原くらいだろう。

那也只有战场原吧。

「良々々木さん」

「良良良木哥哥。」

「……さっきのに較べれば限りなく正解に漸近ぜんきんした感じではあるが、しかし八九寺、僕の名前をミュージカルみたいに歌い上げるな。僕の名前は阿良々木だ」

「……这名字和刚才比起来,的确非常接近正确答案,不过八九寺,你不要把我的名字像唱歌一样唱出来。我的名字是阿良良木。」

「失礼。嚙みました」

「抱歉。我口误。」

「違う、わざとだ……」

「不对,你是故意的……」

「嚙みまみた」

「我狗误。」

「わざとじゃないっ!?」

「还说不是故意的!」

かい見た」

「我偷窥了。」

「僕の才能の一端をか!?」

「你偷窥到我才能的冰山一角吗!?」

いつの間にか、僕の横に八九寺がいた。

八九寺不知何时出现在我身旁。

神原がいなくなったのを見て取って、戻ってきたらしい。八九寺のことだから本当のところはわからないけれど、その素早さからすると、一応、僕を置いて一人さっさと逃げ出したことについて、それなりの罪悪感を覚えていたのかもしれない。名前の間違いも、今回に限っては本当にわざと、故意の照れ隠しと見るのが正当か。

她似乎是看神原走了才跑回来的。虽然我一直搞不懂八九寺内心在想什么,但从她马上就跑回来这点来看,刚才她把我一个人丢下自己跑走一事,似乎让她抱有一定的罪恶感。而她这次念错名字是故意的,把它当作是遮羞比较妥当吧。

「何ですか? あの方は」

「那个人是谁啊?」

「見ててわからなかったか?」

「你看了还不知道吗?」

「ふうむ。阿良々木さんのことを先輩と呼んでいた辺りから推理させていただくと、そうですね、阿良々木さんの後輩ですか?」

「嗯——她叫你学长,从这一点来推理的话,没错,她应该是你的学妹吧?」

「……名推理だな」

「……好棒的推理啊。」

ここで神原なら、マーロウだかなんだか、とにかく古典の探偵なんかを引き合いに出して、八九寺を思い切り持ち上げるようなことを言うのだろうが、駄目だ、一瞬だけその真似をしてみようかと思ったのだけれど、僕の中の何かが、それを許可しようとしない……。

神原要是在场,她应该会列出几个像马罗那种古典侦探的名字,把八九寺一口气捧上天吧。我没办法,我瞬间有想要模仿神原的冲动,但我的灵魂却不允许自己这么做……

「しかし、阿良々木さん。陰でこっそり聞かせていただきましたが、あの方とはどうにも要領を得ない会話をされていましたね。会話のテーマが最後までよくわかりませんでした。あの方、雑談をするために、阿良々木さんを走って追いかけてきたのでしょうか?」

「不过,阿良良木哥哥。我刚才在暗处偷听你们的对话,她一直找你讲一些无关紧要的事情。我到最后还是搞不懂你们的主题是什么。她是为了和你闲聊才追上来的吗?」

「ああ……いや、八九寺、そんな風に訊かれても、僕にもそれはよくはわからないんだけれど……」

「嗯……不对,八九寺,你问我,我也不晓得……」

「わからないとは、えらく水彩画を描く意見ですね」

「不晓得?你这种说法还真是欠缺水彩呢。」

「僕の意見は美術部員か」

「我是美术社的社员吗?」

精彩せいさいを欠く、な。

是欠缺精彩吧。

僕は正直なところを八九寺に言った。

我决定老实对八九寺说。

「今、僕、あいつにストーキングされてんだよ」

「最近那家伙一直在跟踪我。」

「ストーキングといいますと、女性が下半身に穿く」

「跟踪是指女性下半身穿的那个?」

「それはストッキングだ」

「那个叫丝袜。」

「そうでしたっけ」

「是这样吗?」

「ストーキングじゃわからなかったか? まあ、ストーカーだよ、要するに」

「跟踪的意思你不懂吗?简单来说就是跟踪狂啦。」

「ストーカーと言いますと、女性が下半身に穿く」

「跟踪狂是指女性下半身穿的那个。」

「それはスカートか? なんで阿良々木さんはそこまで女性の下半身の着衣に対して興味津々な男なんだよ」

「那是裙子吧?我是一个对女生下身的衣着很感兴趣的男人吗?」

折角だから八九寺がスパッツと取り違えるような単語は何かないだろうかとちょっと考えてみたが、残念ながら僕の語彙ではそれを思いつくことはできなかったので、諦めてそのまま話を進行させることにした。

由于机会难得,因此我稍微想了想,八九寺会把「运动紧身裤」这个词和什么东西搞错,不过可惜我的单字量不足联想不到,所以我只好死心,继续进行对话。

「よくわかんないんだけど、三日前くらいから、やけに露骨に僕につきまとって、とにかく気が付いたらそこにいて、僕に話しかけてくるんだよ。一方的にな。それも、お前の言う通り、要領を得ない会話ばっかりで……雑談っつーのか何っつーのか、正直、何がしたいんだか、さっぱりだ」

「我也搞不清楚,她从三天前就一直缠着我,毫不避讳。总之每次等我注意到时,她已经站在我旁边要向我搭话了。都是她单方面来找我。而且就跟你说的一样,每次聊一些无关紧要的事情……不知道那应该算闲聊还是什么,说实话,我真的搞不懂她想做什么。」

目的は──そりゃ、あるはずなんだけれど。

她应该有目的才对。

推測の糸口もつかめない。

但我完全无法推测。

多分、はぐらかされている。

因为她几乎都在转移焦点。

三年生と二年生とじゃ、行動範囲がかぶるのはグラウンドくらいだから、たまたま会うということは滅多にない──つまり、逆に言えば、神原はわざわざ、短い休み時間を使って、隙間をうようにして僕を探しているということになるのだが、しかし……それくらいはわかるのだけれど、けれど、逆に言えば、それくらいしかわからない。

三年级和二年级,行动范围会重叠到的地方也只有操场,所以要巧遇的机会也不多。简单来说,用反向思考来看,神原她是可以利用短暂的下课时间,抽空来找我……这一点我知道,可是反过来说,我也只推测出这点东西而已。

「ふうむ。でも、阿良々木さん。そんな難しく考えなくっても、あれじゃないですか。あの方、普通に阿良々木さんのことが好きなんじゃないんですか?」

「嗯。可是,阿良良木哥哥。你不用想得太复杂,应该是那个吧。这是因为她喜欢你吧?」

「は?」

「嗄?」

「確か、そんなことを言ってらしたような」

「她刚才好像有跟你告白吧。」

「……ああ、そういえば。って、んなわけねえだろ。あんなの言葉の綾だって……ギャルゲーの主人公とかじゃないんだから、そんないきなり、ある日突然、モテモテになったりするわけねえだろ」

「……啊,听你这么一说——最好是有啦!你那种说法……我又不是美少女游戏的主角,哪可能突然有一天就受欢迎起来啊。」

「そうですね。阿良々木さんがギャルゲーの主人公だったら、わたしも攻略対象に入ってしまうわけですから、そんなのは真っ平御免です」

「说的也是。如果阿良良木哥哥是美少女游戏的主角,那我肯定也会被列入攻略的对象,我才不要那样呢。」

「…………」

小学生、ギャルゲーってわかるの?

小学生知道美少女游戏是什么?

僕もやったことがあるわけじゃないんだけど。

连我都没玩过呢。

「でも、もしそうだとしたら、わたしは難易度の高いキャラでしょうね、きっと」

「不过,真是那样的话,我一定是攻略难度很高的角色吧。」

「いや、多分チョロいぞ、お前……」

「不,要攻陷你大概轻而易举吧……」

人見知り属性さえ解除すれば、後はなし崩しだろう……。ヒロインが六人いたとしたら、四番目くらいに攻略されそうな感じ。

只要化解她怕生的属性,之后就能一点一点地把她蚕食掉吧……假如女主角有六个,她大概是第四个被攻陷的吧。

まあ、年齢的な問題を考慮すれば、確かに、かなりの難易度にはなるだろうけれど。

不过呢,要是考虑到年龄方面的问题,八九寺的确有相当的难易度。

「神原はそういう奴じゃ……ああ、でも、恋愛は激しい奴だという噂もあったっけな、そういえば。でも、それにしたって、神原と僕なんて、接点なんて噓偽りなくゼロだったんだぜ? 僕はあいつら……神原とかとは違って、有名人でも何でもないわけだし」

「神原不是那种人……啊,不过听说她谈起恋爱的时候很疯狂。不过就算那样好了,她之前和我的交集完全是零喔。我和那些人……和神原不一样,我什么都不是啊。」

しかし、考えてみれば、あいつ、最初に僕に声を掛けてきた段階で、もう僕のこと、少なくとも名前やクラスくらいは、知ってたってことになるんだよな。

可是仔细想想,她一开始会跑来向我搭话,就代表她至少知道我的名字和班级。

どうしてだろう。

这是为什么?

誰かに聞いた、とか、なのかな……?

她跑去向人打听……的吗?

「捨て猫を拾ったところを見られたのでは?」

「会不会是你在捡弃猫的时候被她看到了?」

「拾ってない」

「并没有。」

というか、見たことないぞ、捨て猫。

话说,我可没看过弃猫那种东西。

大体、拾ってくださいなんて書かれた段ボール箱に入れられたまま、じっとしてる猫なんているのか?

哪有猫会乖乖待在瓦楞纸箱——箱子上还要写着「请捡我」的字样——等人来捡的啊。

どれだけ躾けられてるんだよ。

最好是有猫咪家教这么好。

「では、ゴミを拾ったところを見られたのでは?」

「那会不会是你在捡垃圾的时候被她看到了?」

「お前今、猫とゴミとを同列に語らなかったか?」

「你现在是不是把猫和垃圾画上等号了?」

「それこそ言葉の綾です。因縁をつけないでください。か弱い女の子の言うことに言いがかりをつけて楽しむだなんて、阿良々木さんは本当に悪趣味ですね」

「你这种说法才奇怪。请不要故意找碴。阿良良木哥哥居然以挑我这种弱女子的语病为乐,这种兴趣真的很低级呢。」

「猫に謝れ。猫は怖いんだぞ」

「你快点跟猫道歉。猫可是很恐怖的喔。」

「そうでなくとも阿良々木さん、一目惚れというものは、実際に存在するらしいですよ。人間同士の関係なんて、ぶっちゃけ第一印象で決まってしまうらしいですし。そう理解すれば、一応、あの方が阿良々木さんに付きまとっているという現象にも、とりあえずの説明がつくのでは?」

「就算不是那样,阿良良木哥哥,一见钟情是真的存在的。人类彼此之间的关系,说穿了都是靠第一印象来决定的。只要理解到这一点,就有办法可以解释她为什么会缠上你了不是吗?」

きゃんきゃん笑いながら、嬉しそうに言う八九寺。

八九寺咯咯笑着,开心地说。

この辺り、小学生だ。

从这点来看,她果然是小学生。

「間違いありません。わたしの中の女の部分が間違いないと告げています。どうします? 阿良々木さん。今はまだ探りを入れられている段階のようですが、もしそうならば近い内にあの方、阿良々木さんに告白してくるかもしれませんよ? どうしますどうしますどうします?」

「绝对错不了。我体内的女性直觉告诉我这绝对错不了。该怎么办?阿良良木哥哥。她现在好像还在试探你,如果我没说错的话,她可能最近就会向你告白喔。该怎办、该怎办、该怎办?」

「あのなあ。僕はそういう、何でもかんでも恋愛感情で説明しちまう風潮ってのは、あんまり好きじゃないんだよ。昔の海外映画よろしくの、愛の力って奴か? それで全てが解決するなら、世の中、どんな楽か知れないよ。ありえないありえない。単純に、二次的で実際的な目的があるはずと探る方が、よっぽど納得が行くぜ。それに僕は」

「拜托。我不太喜欢什么东西都用恋爱两个字来说明。这说法不就好像以前海外电影里头,常常出现的爱的力量吗?如果用爱可以解决任何事情,这世界不知道会有多美好啊。不可能、不可能。单纯说她是别有用心,我还比较能接受。而且——」

僕は言った。

我接着说:

「一番難易度の高いキャラ、もう攻略しちまってるからさ」

「我已经攻陷难易度最高的角色了。」

003#

「不愉快なことを言われた気がするわ」

「我觉得好像有人在背后说我坏话。」

戦場ヶ原ひたぎは突然そんなことを呟いた。

战场原黑仪冷不防呢喃说。

本当にいきなりで、しかも何の脈絡もなかったために、びっくりして、ノートに走らせていた鉛筆の動きが止まってしまった。

这话真的突如其然,而且没有任何脉络可循,让我心头一惊,在笔记上振笔疾书的铅笔停了下来。

しかしどうやらその呟きは完全に独り言だったらしく、戦場ヶ原はすぐに「それにしても」と話題を切り替えて、

但那完全是战场原的自言自语,「话说回来,」她马上就转变话题说:

「勉強を教えるのって、難しいものなのねえ」  と言った。

「要教人功课,真的很困难呢。」

あれから、八九寺とは結局、僕の自宅の前まで一緒に歩き、まあ神原のことやそれ以外のことも含め、色々と話をし、そして、別れた。八九寺はいつもどこかをうろうろしているような奴なので、またすぐに、どこかで会えることだろう。で、リュックサックを置いて、着替えて、教科書とノートと参考書をボストンバッグに詰め込んで、自転車を通学用のママチャリからマウンテンバイクに乗り換え、戦場ヶ原の家へ。既に帰宅していた妹達から根掘り葉掘り訊かれそうになってしまったが、幸い、逃走することに成功した。

在那之后,八九寺陪我走回家,一路上和我聊了很多神原以及其他的话题,接着我和她告别了。八九寺老是四处闲晃,我们很快就会在某处再会吧。然后,我放下背包,换了套衣服,把教科书、笔记和参考书塞进波士顿包后,把上学用的菜篮车摆一旁,换乘越野脚踏车往战场原家出发。早就已经回家的两个妹妹,追根究底地想要逼问我去哪里,所幸我成功逃走了。

八九寺にも言ったが、戦場ヶ原の家は、それなりに遠い。普通は自転車では行かない距離だ。ただ、バスを使うと結果的に徒歩での距離が増えてしまうので、結局は自転車で向かうのが一番早いように、僕は思う──気分的な問題だろうし、戦場ヶ原の家を訪れるのはこれで二度目だし、自宅から向かうのはこれが初めてなので、はっきりしたことは言えないが。

刚才我也对八九寺说过,要到战场原家确实有一点远。一般来说不是骑脚踏车能去的距离。不过如果搭公交车过去,到头来还是要走一段路,因此我想还是骑脚踏车过去比较快。这是感觉上的问题,我去战场原家这次是第二次没错,但我还是第一次从自己家里过去,因此我也不能断定怎样去会比较快。

民倉荘──木造アパート二階建て。

民仓庄——木造的二楼公寓。

その二〇一号室。

里头的二〇一号房。

六畳一間、小さなシンク。

三坪的房间,一个小料理台。

卓袱台を挟んで二人の標準的体格の高校生が向かい合って、勉強用具を左右に広げれば、それでもう部屋がいっぱいになってしまうような環境である。戦場ヶ原家はいわゆる父子家庭で、戦場ヶ原はいわゆる一人っ子で、そして戦場ヶ原の父親はいわゆる夜遅くまで働き詰めなので、当然、この状況、二人きりだった。

两位标准体格的高中生,隔着日式矮桌面对而坐,要是把读书的东西拿出来摆在左右两旁,就足够把整个房间挤满。战场原是单亲家庭,又是独生女,而战场原的父亲又是晚归的拼命三郎,在这状况下,现在我们当然是两人独处。

阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎ。

阿良良木历和战场原黑仪。

健康な十代の若者が、狭い部屋で二人きり。

健康的少年少女,在狭窄的房间内两人独处。

男女。

一男一女。

そして、公式な恋人同士。

而且是彼此公认的情侣。

彼氏彼女の関係である。

是一对男女朋友。

それなのに。

然而。

「……どうして僕は勉強をしているんだろう」

「……为什么我还在读书啊。」

「え? 馬鹿だからじゃないの?」

「咦?因为你是笨蛋的关系吧?」

「嫌な言い方をするよなあ!」

「你这说法真讨人厌!」

その通りだけど。

虽然你说的没错。

もうちょっと何かあってもいいんじゃないのかと思うだけだ。

我只是希望能有一点特别的事情发生。

実際のところ。

老实说。

付き合うようになったのが八九寺真宵もからんだあの母の日、五月十四日で、それからこれまでにおよそ二週間が経過したわけなのだが、しかし、その間、色気のある展開になったことは、全くと言っていいほどなかった。

我们开始交往是在和八九寺真宵认识的那一天——母亲节,五月十四号,在那之后已经过了两个礼拜,却没有任何「桃色」的发展,完全没有。

………………。

あれ、デートしたこともないぞ?

咦,仔细想想,我们甚至连个约会都没有喔。

考えてみれば。  朝、学校で会って、休み時間に話して……一緒に昼食をとって……放課後、互いの帰り道の分岐点まで一緒に歩いて……、じゃあまた明日と言って、それくらいだ。そんなの、ちょっとさばけた連中なら、男女の垣根なんて関係なく友達同士でやってそうなことじゃないか……。

早上我们在学校见面,下课时间聊聊天、中午一起吃饭、放学后一块回家,走到分歧点后说再见。我们的交流只有这样而已。如果是观念比较开放的人,这种事情在普通的男女交际上也会做,根本不用当男女朋友吧……

色気のある展開を強く望むとは言わないけれど、もうちょっとこう、恋人同士らしい展開があっても、いいはずなのに。

我不是很强烈希望能有什么桃色发展,但至少能让我们有一点情侣之间的进展吧。

「勉強という言葉が含まれるイベントで苦労することなんて、私のこれまでの人生には全くなかったから、阿良々木くんが何に悩んでいるのか、何に行き詰っているのかが、ちっともわからないわ……阿良々木くんが何がわからないのかがわからないのよ」

「我活到现在从来不觉得读书辛苦,所以我完全不知道阿良良木你在烦恼什么、有哪里不懂……我不知道你哪里不会。」

「そうなのか……」

「是吗……」

凹むことを言う……。

这话还真让我沮丧……

こいつの学力と僕の学力との間には、一体どれほどの差があるというのだろう。底が見通せないくらいの、深い谷みたいな感じだろうか。

我们两个在程度上的差距到底有多大呢。那差距感觉就像一个深不见底的峡谷。

「わからない振りをしてウケを狙ってるんじゃないかとすら思うわ」

「我甚至以为你是想搞笑,才故意装作不懂的。」

「どんな捨て身だよ……。でも、戦場ヶ原、お前だって生まれたときから頭がよかったわけじゃないだろう? 血の滲むような努力の末に、学年トップクラスの成績を維持しているはずじゃないか」

「我干么这么委屈自己啊……不过战场原,你也不是一生下来头脑就很好吧?你应该是经过吐血般的努力,才让成绩维持名列前茅的吧?」

「努力している人間がそれを意識すると思うの?」

「你觉得一个努力的人会认为自己在努力吗?」

「……さいですか」

「……是喔。」

「あ、でも、誤解しないでね。努力が全く実を結ばない、どころか努力するすべさえも知らない阿良々木くんみたいな人間のこと、ちゃんと哀れんではいるのよ」

「啊,不过,阿良良木你不要误会喔。我是很同情像你这样努力完全得不到回报、甚至还不知道该怎么努力的人。」

「哀れまないでくれ!」

「拜托你别同情我!」

「ちゃんと儚んではいるのよ」

「我觉得你们的努力全是白费功夫,毫无意义。」

「ぐ、ううっ! 突っ込みを入れると形容がより酷くなるルールなのか……!? これでは迂闊に泣きを入れることもできない!」

「呃、呜呜!现在的游戏规则是我一吐槽你就说得更过分吗……?这样一搞,我甚至要用泪眼相对都不行!」

一体何のゲームなんだか。

这到底是什么游戏。

「雑草という名の草はなくとも、雑魚という名の魚はいる……」

「就算没有草叫做杂草,还是有一种鱼叫做杂鱼……」

「雑魚という名の魚もいねえよ!」

「也没有鱼叫做杂鱼吧!」

「雑草という名の草はなくとも、雑草と呼ばれる人間はいる……」

「就算没有草叫做杂草,还是有人被称作杂草……」

「呼ばれる人間がいるってことは呼ぶ人間がいるってことだぞ!」

「会有人叫做杂草,就代表有取这个绰号的人吧!」

「しかし、まあ、今度の実力テストで阿良々木くんに合格点を取らせることに成功すれば、私は人間として更にもう一歩、先へと進むことができるんだと思うと、やる気が出るわ」

「不过,唉呀,如果我这次让你在实力测验合格的话,我以一个人类来说,也会更往前推进一步。一想到这里我的干劲都来了。」

「僕の成績のことを自分の試練みたいに捉えてんじゃねえ……それに、お前が人間として先へと進むべきところは、もっと別にあるだろうよ」

「别把我的成绩拿来当作对自己的考验啦……而且你以一个人类来说,需要进步的应该是别的地方。」

「うるさいわね。絞め殺したわよ」

「你很烦耶。我把你勒死『了』。」

「過去形!? 僕は既に死んでいるのか!?」

「过去式?我已经死了吗!?」

こいつに勉強を教えてもらおうというのは、ミステイクだったかもしれない……うーん、素直に羽川に頼っておけばよかったのかなあ。

请她来教我功课,或许是个错误的决定……嗯——我应该拜托羽川才对。

でも。

不过。

八九寺にはああ言ったものの、正直、戦場ヶ原の家で二人きりになれば、ひょっとしたら何かあるかもしれないなとか、そんな、下心というのも恥ずかしいくらいの可愛らしいもく26が、あるにはあったんだけれど……。

我虽然对八九寺说那么多,但老实说,我的确有一种可爱又害羞的邪念,暗自期许在战场原家两人独处时会发生一些事情……

ちらりと、ノートから、戦場ヶ原に眼を移す。

我的视线从笔记上,往战场原身上瞄去。

戦場ヶ原は、相変わらずのお澄まし顔。

战场原依旧一本正经。

表情がほとんど動かない。

表情几乎没有变动。

恋人同士になったところで、僕だけに、誰にも見せない特別な表情を見せてくれたりはしない……そういった意味では、こいつは全く、ツンデレではないのだろう。

就算我们变成男女朋友,她在我面前也不会露出特别的表情……从这点来看,这家伙根本称不上傲娇吧。

態度も全く変わらない。

她的态度完全没变。

うーん。

嗯——

それとも、例によって、僕が過度に期待していただけなのだろうか。恋人同士という関係になれば、もっと特殊な会話をするものだと、なんとなく漠然と考えていたのだが、案外、どういう関係であろうと、話す内容なんて、それ以前までと変わらないと、そういうことなのだろうか。恋人同士の甘い会話なんて、馬鹿げた幻想ということなのだろうか。

还是说就跟往常一样,是我太过期待了呢。我曾经模糊想过,和她交往之后,应该会出现更特别的会话,但不管我们关系如何,谈话的内容依旧跟过去没两样。这就算过度期待吧。这代表情侣之间的甜言蜜语,是一种愚蠢的幻想吗?

「………………」

きっと。

一定是。

戦場ヶ原のこれまでを思えば、戦場ヶ原ひたぎが戦場ヶ原ひたぎであるための経緯を思えば、無論、貞操観念云々の問題もあるのだろうが、しかし、それだけでなく、きっと、戦場ヶ原は、僕らの関係性というものに、現状で満足しているということなのだろうと思う。

从我认识战场原到现在来看,从战场原黑仪之所以为战场原黑仪的原因来看,当然或许还有贞操观念等问题,但不光是这样,我想战场原或许对我们现在的关系感到很满足吧。

なあなあが嫌だと言っていた。

她说过,她最讨厌暧昧的关系。

言っていたということは、嫌なのだろう。

既然她说过,那就表示她真的很讨厌吧。

………いや。

……不对。

でも、それにしたってなあ……。

可是就算是这样……

大体、戦場ヶ原の方だって、この状況で、何も思っていないはずがないと思うのだけれど……でも、なんだかまだしも、前にこの民倉荘を訪れたときの方が色っぽい展開になったくらいなんだよな……。親のいない家に名目上の彼氏を招くということについて、全く意識しないほどに世間ずれしていない女でもないだろうに……まあ、そういう眼で見れば、こころなし、卓袱台に向かう戦場ヶ原の私服姿は、気合が入っているように、見えなくもないんだけれど、ただ、それにしてはスカートがやけに長いのが気になる。ストッキングを穿いていない生足なのだが、その長いスカートのお陰で生足の部分がほとんど見えない。意識されているというよりは警戒されているような感じだ。

我想战场原身处这种状况下,不可能没有任何想法吧……但不管怎么说,至少上次我来这里的时候,有发生一些色色的事情啊……她趁家人不在时,招待名目上的男朋友来家里,内心不可能毫无感觉,她不是那种不谙世事的女生……唉呀,假如用这种角度来看,或许是心理作用,矮桌另一端、战场原穿着便服的身影,看起来似乎有这么一点积极,只是我觉得她的裙子好像太长了。她裙下没穿裤袜,但多亏那条长裙,害我几乎看不到她的美腿。与其说她有感觉,不如说她在提防我。

ふう。

呼。

それともこういうときは、男である僕の方から、もっと積極的にアピールするべきなのだろうか? しかし、アピールといっても、今まで女の子と付き合ったことなんかないから、アピールのその方法がわからないぞ。

还是说这种时候,应该要由身为男性的我积极采取攻势呢?但就算要我采取攻势,我过去没交过女朋友,可不知道要如何攻起啊。

「どうしたの? 阿良々木くん。手元がお留守になっているわよ」

「怎么了?阿良良木。你的手在动喔。」

「別に……難易度高いなあと思って」

「没什么……我只是觉得这题很难。」

「この程度の問題で? 困ったものね」

「就这种程度的问题?你真让我伤脑筋耶。」

僕の心情を全く理解するつもりもないらしく、ただ単に、心底呆れ果てたような顔つきをする戦場ヶ原。それは人を見下すことに慣れている者の眼だった。

战场原丝毫不打算理解我的心情,仅露出愕然至极的表情响应我。那是惯于瞧不起他人的家伙,才会有的眼神。

そして憂鬱そうに、ぼそりと呟く。

接着她一脸忧郁,喃喃自语。

「もう、いいかな」

「不过,算了吧。」

「え? ちょっと待って、面倒臭そうにシャープペンシルを脇に置いていかにも気だるい物腰だけれど、戦場ヶ原、お前の中で僕を見捨てるっていう選択肢はあるわけなの?」

「诶?等等,你一脸麻烦地把自动铅笔放到一边,举止又很无精打采,该不会你心中还有『对我见死不救』这个选项?」

「なくはないわ」

「也不是没有。」

ばっさりだった。

十分干脆的一句话。

「6:4……いや、7:3、かしら」

「六 :四……不,七 :三吧。」

「どちらが7でどちらが3だとしても、とても現実的な比率だな……」

「不管哪边是七、哪边是三,这都是很现实的比率……」

まだしも9:1と言ってくれた方が気が楽だ。

你干脆直接说九 :一我会比较轻松点。

それで、実際はどちらが7なのだろう。

说真的,到底哪边是七啊?

「葛藤するところよね。頑張ってできないよりも頑張らずにできない方が、まだしもプライドは守れるもの」

「这让我很挣扎呢。我努力教你,你还不会;那我干脆随便教教,你不会就算了。这样才能保住我的面子啊。」

「見捨てないでください……」

「请不要舍弃我……」

本当に羽川を頼るしかなくなってしまう。

看来我真的只能拜托羽川教我功课了。

なんだかんだ言って、それは嫌だ。

不管怎么说,我都不喜欢那样。

あんな、誰だって頑張れば勉強はできるようになると、めず臆せず27常識レベルで思い込んでいる委員長から教えを受けるなんてこと、僕にはできない……。

那位班长认为:「只要努力用功,不管是谁都能把书读好。」同时毫不介意地把它当作常识,深信不疑。我实在没办法请她教我功课……

「まあ、そこまで言うのなら、見捨てないけれど」

「唉呀,既然你都这样说了,那我也不会对你见死不救啦。」

「そうしてくれれば救われるよ」

「真是这样就太好了。」

「いえいえ、来る者拒まず去る者逃がさずよ」

「好说好说,我这是来者不拒,去者不饶。」

「怖い考え方だな!」

「好可怕的思考方式!」

「大丈夫。やるとなれば、死力を尽くすわ」

「别担心。既然要教你,我就会拼死去做。」

「死力までは尽くさなくていい! 全力くらいでいいって! 僕にどれほどのことを強いる予定なんだよ、お前は!」

「不用拼死去做!你只要尽全力就好了吧!你是想用什么可怕的方法逼我念书啊!」

「……でも、阿良々木くん。そういえば、阿良々木くんは、確か数学だけはできるんでしょう?」

「……不过,阿良良木。这么说来,你好像只有数学还算不错对吧?」

「え? ああ、うん」

「诶?对,嗯。」

何故知っているのだろう。

你怎么会知道?

その疑問を口にする前に、戦場ヶ原は、

在我正要开口问之前,

「羽川さんから聞いたのよ」

「我听羽川同学说的。」

と言った。

战场原说。

そうか、羽川なら、僕の成績に誰より詳しい。

原来,羽川的确比任何人都还清楚我的成绩。

「ふうん……でも、羽川が他人の成績とか、吹聴ふいちょうするとは思えないけれど」

「嗯……可是,我想羽川不会把别人的成绩到处张扬吧。」

「ああ、フィーリングが違ったかしら? この間、阿良々木くんと羽川さんが話しているのを、横からこっそり聞いたという意味よ」

「啊,这应该说是我感觉到的吧?上次,阿良良木和羽川同学在聊天的时候,我在一旁间接听到的。」

「……それは本当にフィーリングが違うな」

「……那不叫感觉到吧。」

又聞きどころか盗み聞きじゃねえか。

什么间接,那根本是偷听吧。

「あらそう」

「唉呀,真的吗?」

全く気にした風のない戦場ヶ原。

战场原毫不在意。

困った奴である。

真是个伤脑筋的家伙。

「数学は暗記科目じゃないから、なんとなくできるんだよ。公式とか方程式とかって、なんかこう、必殺技めいてて、いいじゃん? スペシウム光線っぽいっていうか、かめはめ波っぽいっていうか、なんていうかさ。他の教科にもそういう必殺技があればいいんだけれどなあ」

「数学不是背诵科目,所以我多多少少会一点。我感觉公式和方程式很像必杀技,这很棒不是吗?就像斯派修姆光线、龟派气功之类的一样。如果其他科目也有那种必杀技就好了。」

「そんな都合のいいものがあれば誰も苦労はしないわ。でもまあ、科目自体の習得をとりあえず脇において、テスト勉強に関してだけ言うならば、必殺技というのはなくとも必勝法というのは、あるにはあるのよね──」

「如果有这么凑巧的话,那大家就不用读得那么辛苦了。不过呢,科目本身的学习先放一边,如果光指『考前复习』方面,虽然没有必杀技,但还是有必胜法则啦。」

戦場ヶ原は脇に置いたシャープペンシルを再び手にとって、

战场原再次拿起放在一旁的自动铅笔。

「その中でも、ヤマを張る28タイプの勉強方法は結果として射幸心を煽ることになるので、癖になるといけないから基本的にはあまりお勧めはしないのだけれど、こうなるともう姑息療法として、今回はそうするしかないかもしれないわね。やむなしってことで。なんだかんだ言って、要するに阿良々木くんは赤点さえ取らなければいいわけだから、ボーダーを平均点の半分として……」

「其中有一种考前猜题型的读书方法。以结果来说,这种方法会让人有投机取巧的心态,要是用上瘾了不太好,所以我不太推荐。不过事到如今,或许也只能用那种治标不治本的方式吧。这是不得已的。说这么多,简单来说只要你考试全部及格就好,所以把及格线设为平均分数的一半……」 と、すらすらと、ノートに数字を記す。

战场原说着,一边在笔记本写上数字。

予想平均点と、その半分の数字。

预测平均点,以及其一半的数字。

まあ、そういう風に示されると、さすがに何とかなりそうではある数字だった──勿論、そこを満点と看做せばということだけれど。

这样一写出来,感觉好像有办法达成的样子。当然,这意思就是要我把这数字当作是自己的一百分。

「暗記主体の教科の場合、教師側としては『絶対に出さなければならない問題』というものを幾つか抱えているから、それを狙うのが肝心ね。こし29ではない、ピンポイントの対策を練るということよ。解けない問題にかかずらっている内に解ける問題を見逃すような結果にならないようにしようってわけ。阿良々木くん、ここまで、私の言っていること、わかるかしら?」

「以背诵为主的科目,老师都会有几个必考题,因此那就是考试重点。我们不要随便猜题,要针对重点来拟定对策。不要钻牛角尖,要针对自己会的问题下手。阿良良木,到目前为止,我说的你听得懂吧?」

「……まあ、わかる」

「……嗯,还算懂。」

しかし、頭いい奴って、テストに対する考え方、全然違うな……試験を作る教師側の気持ちなんて、今まで想像したこともなかったぞ。いや、ひょっとすると、まだちゃんと点数を取れていた中学生の頃は、僕もそういうことを考えていたのかな……もう遠い昔の話のようだ。

不过,聪明人对考试的思考方式,真的完全不一样……我从来都没站在出题老师的角度去思考。不,我在国中功课很好的时候,或许也有同样的思考模式……但那已经是很久以前的事了。

中学生の頃。

国中时代。

懐かしくもない。

我一点都不怀念。

「では、まずは簡単な世界史から攻めましょう」

「那我们就先从简单的世界史开始读起吧。」

「世界史って簡単なのか……」

「世界史很简单吗……」

「簡単よ。重要語句を全部憶えればいいだけじゃないの」

「很简单啊。只要把重要的句子全部背起来就好了吧?」

「…………」

「言った通り、今回の阿良々木くんにはそこまでは要求しないけれど。でも、阿良々木くん。今回の実力テストは、今から私が協力して準備すれば、まあ恐らくはクリアできるでしょうけれど、これからのこと、一体、どういう風に考えているの?」

「我刚才说过,这次我不会要求你做到那种地步。不过,阿良良木。这次的实力测验,我现在开始帮你的话,你十之八九会及格吧,不过你对未来的事情,到底有什么看法呢?」

「これからのこと?」

「未来的事情?」

「進路のこと」

「未来的出路。」

言って、戦場ヶ原は、シャープペンシルの先で僕を指す。

说完,战场原用自动笔的前端指向我。

「進路って……いきなり、そんなこと言われても」

「未来的出路吗……突然说这种话题。」

「高校三年生の五月末よ。いくらなんでも、何も考えていないということはないでしょう? 前に卒業できればそれでいいみたいなことを言っていたようだけれど、それはつまり、阿良々木くんは卒業と同時に就職するということ? 何か具体的なプランが? 働き口にコネやアテがあるのかしら?」

「已经是高三的五月末了。不管怎么说,总不能什么都没考虑吧?以前好像说过只要能毕业就好的话,也就是说阿良良木在毕业的同时就职?有什么具体的计划吗?工作岗位有关系和证明吗?」 「えーっと……」

「那个……」

「それとも、とりあえずはフリーター? それともニートなのかしら。私、その辺りの言葉は問題を過度に安易に単純化しているようだから、あまり好きではないのだけれど、勿論阿良々木くんの意見、意志が何より優先されるわよね。ああ、でも、まずは専門学校で手に職をつけるという選択肢もあるにはあるのかしら?」

「还是,首先做个自由职业者?还是尼特族呢。我虽然不太喜欢这方面的话,会把问题过于简单化,但是阿良良木君的意见和意志比什么都优先。啊,不过,也有先在专门学校找到工作的选择吗? 」

「お前は僕の親なのか……?」

「你是我的家长吗?」

細かいことをちくちくと訊いてくる。

细问个不停。

そんな畳み掛けるように色々と訊かれても、答えられるわけがない……目の前に迫った実力テストのことだけで、もう僕がいっぱいいっぱいになっていることくらい、戦場ヶ原にもわかりそうなものなのに。

像这样被问到各种各样的问题,怎么可能回答……仅仅是眼前迫近的实力测试,我已经焦头烂额了,战场原也应该明白这种事。

「親? 何を言っているの。恋人でしょう」

「家长?你在说什么。是恋人才对吧。」

「………………」

直截的物言い。

直截了当。

必殺技。

必杀技。

ある意味、毒舌よりも必殺技だった。

在某种意义上,比毒舌更厉害的必杀技。

少なくとも、僕にとっては。

至少对我来说。

「進路か……そうだよな。確かに、そろそろ決めないとな……ところで、戦場ヶ原、お前はどうするんだ?」

「未来的出路吗……你说得对。的确要快点决定才行……对了,战场原你打算做什么?」

「進学ね。多分、推薦、取れるから」

「继续升学吧。我大概可以推荐入学。」

「……あっそ」

「……是喔。」

「多分という物言いは謙虚過ぎたかしら」

「我说大概是不是太谦虚了?」

「お前にしてはな」

「依你的个性来说,的确很谦虚。」

「とにかく、進学」

「反正就是升学。」

「進学か」

「升学吗……」

当たり前のように言うよな。

说得很理所当然一样。

当たり前なんだろうけれど。

但这本来就很理所当然。

さっきの戦場ヶ原の言葉じゃないが、それに今わからないわけだから一生わからないことなのだろうけれど、頭のいい奴の頭がいいっていう感覚は、一体、どういうものなのだろう。

聪明人的聪明到底是什么感觉呢,我现在无法明白,以后也永远不会明白(战场原刚才也说过类似的话语)。

「学費のことを考えたら、進むべき道は自然に絞られてしまうわね。まあ、幸いにというと自虐的になってしまうけれど、私は取り立ててやりたいことがあるわけでもないのだから、進路の方に私が合わせる感じになると思うわ」

「考虑到学费的话,我能去的学校自然有限。不过,说幸好的话或许有点自虐,我以后也没有特别想做的事情,所以感觉上我可以主动去配合学校方面。」

「別に、どこに行っても、お前はお前のままだろうよ」

「不管你去哪里,你都是你吧。」

「そうね。でも」 戦場ヶ原は言う。 「私はできれば、阿良々木くんと同じ道に進みたいものなのだけれど」

「是啊。不过,」战场原接着说:「可以的话,我希望能和阿良良木你走在同一条道路上。」

「いや……ちょっと、それは」

「呃,那可能有一点……」

そう言ってくれるのは、素直に嬉しいけれど、それはもう物理的に不可能だとしか言いようがないぞ……。

你这么说我是很高兴,但在现实上,只能说是不可能的任务吧……

そうよね、と頷く戦場ヶ原。

说的也对。战场原点头说。

「無知は罪だけれど、馬鹿は罪じゃないものね。馬鹿は罪じゃなくて、罰だもの。私のように前世でしっかりと徳を積んでおけば、そんなことにはならなかったのに、阿良々木くんは可哀想よね。寒さに凍えるキリギリスを見つめるアリの気持ちが、今、まざまざ30と実感できるわ。この私に虫けらの気持ちを体感させるとは、阿良々木くんも大したものね」

「无知是罪过,不过笨可不是。笨是一种惩罚。要是阿良良木像我一样在前世好好积阴德,现在就不会变成这样了,你好可怜啊。蚂蚁在凝视挨寒受冻的蟋蟀的心情,我现在可以清楚体会到了。阿良良木还真了不起,可以让本小姐体会到那些小虫的心情。」

「…………」

我慢しろ……。

我要忍耐……

この件に関しては、反論はただ傷口を広げるだけだ……。

这种事情要是反驳,只会白白让自己的伤口扩大……

「いっそ死んでしまえば、楽になるのに。キリギリスだって死骸になれば、貴重な栄養源として、アリに食べてもらえるんだから」

「你干脆赶快去投胎会比较轻松。因为蟋蟀死掉之后,至少还能变成珍贵的养分,成为蚂蚁的食物。」

「お前と次に会う場所は法廷だな!」

「我们下次见面就是在法庭上了!」

我慢できなかった。

我忍无可忍了。

僕もいまいち忍耐力に欠ける。

我也很欠缺忍耐。

「まあ、でもさ、そうはいっても、戦場ヶ原。卒業後の進路が分かれたところで、僕達、別に違う道を歩くわけじゃないだろう?」

「不过,就算你这么说,战场原。我们毕业后的目标不一样,也不代表我们走在不同的道路上吧?」

「そうよね。その通りだわ。でも、大学に入って合コン三昧な日々を送っている内に、心変わりしてしまったらどうしようかしら」

「也对。你说的没错。可是,要是我上了大学每天都在联谊,最后变心了怎么办?」

「キャンパスライフを満喫する気満々なのかよ!」

「你已经准备要快乐享受大学四年的生活了吗!?」

「どうする? 卒業したら、同棲でもする?」

「该怎么办?我们毕业之后要不要同居?」

さらっと、そんなことを言う。

战场原轻描淡写地说。

「それなら、互いの進路が分かれたところで、一緒にいられる時間は、今よりもむしろ増えるくらいでしょう」

「这样一来,就算我们的出路不同,在一起的时间也会比现在还要多。」

「まあ……、悪くはないよな」

「嗯……是不坏啦。」

「悪くはない? 何その言い方」

「不坏?你那是哪一国的说法。」

「……したいです。させてください」

「……我想要同居。请让我跟你同居。」

「あらそう」

「唉呀,是吗?」

そう言って──自然に教科書に眼を落とす。何気ない風を装ってはいるし、また、とりようによってはただの軽口ともとれるようなタイミングでの発言ではあったが、そういうときに冗談を交えるような奴ではないことくらい、いくら察しの悪い僕でも、もうわかっている。こいつは、戦場ヶ原ひたぎなのだ。

战场原说完,很自然地低头看课本。她虽然装作若无其事,说这话的时间点感觉又很像在说笑,但我知道她在这种事情上面,不是那种讲话会半开玩笑的人。就算我再迟钝,也看得出来。这家伙可是战场原黑仪。

……それにしても、先の先まで考えている。

……话说回来,她想得还真远。

いや、先のことというより──戦場ヶ原はそれほどに、僕のことを、真剣に考えてくれていると、そう受け取るべきなのかもしれない。普通、高校生同士のカップルで、付き合いをそこまで思いつめては考えないものだろうに。

不,或许我应该换个角度来看——战场原是如此认真地在为我着想。普通的高中情侣应该不会把交往两字想得这么远吧。

しかし、付き合うってなんなのだろう。

但是,所谓的交往又是什么呢。

口約束だし、保証があるわけでもないし。

只是一种口头约定,也没有任何的保证。

嘆息。

我叹了口气。

駄目だ、今まで女の子と付き合ったことなんかないから、アピールがどうとかいう以前に、こういう状況で一体どんな反応をするべきなのかすらわからないや。

我无法对应,因为我从来没和女生交往过,别说什么采取攻势,我根本不知道在这种状况下该做出何种反应。

全くもって見当もつかない。

完全找不到头绪。

これならギャルゲーとかやっとけばよかった。

这样的话就可以玩美少女游戏了。

参考くらいにはなっただろう。

至少可以拿来当作参考。

でも、攻略はいいけど、ゲームと違って現実にはクリアなんてないんだよな。

攻陷女生不是问题,但现实生活和游戏不同,没有破关那种东西。

「ため息が多いわね、阿良々木くん。ねえ、知っている? ため息一回につき、幸せが一つ、逃げていくそうよ」

「你的叹气还真多呢,阿良良木。呐,你知道吗?听说每叹一次气,幸福就会溜走一次喔。」

「既に千回単位で幸せを逃していそうだな、僕……」

「那我已经让幸福溜走了几千次了吧……」

「阿良々木くんがいくら幸せを逃そうと興味はないけれど、私の前でため息なんてつかないで欲しいものね。わずらわしいから」

「你让幸福溜走几次我没兴趣,我只希望你不要在我面前叹气。因为我会觉得很烦。」

「本当に酷いことを言うな、お前は」

「你讲话真的很狠耶。」

「煩わしいと言っても恋煩いよ」

「说是烦,也是为爱心烦。」

「……ん、反応が難しい振りだな、それ」

「……嗯,这话让我很难做出反应。」

微妙に嬉しい気もするし。

也让我听了有点高兴。

突っ込みトラップだった。

好一个吐槽陷阱。

「ところで、知っている? 阿良々木くん」

「对了,你知道吗?阿良良木。」

戦場ヶ原は言った。

战场原开口说。

「私、男と別れたことがないのよ」

「我,没有和男生分手的经验。」

「………………」

いや、それ、ものは言いようだろ?

不,这话有两种正反两面的意思吧?

ちょっと聞いたらすごく引く手数多ないい女っぽいけれど、それ、自分は男性経験ゼロだと堂々と宣言しているようなものじゃないのだろうか。

乍听之下,她彷佛是在说自己是一个追求者众多的好女人。但换个角度想,这句话不就等于在宣告自己没有和男性交往的经验吗?

「だから」

「所以」

しかし続ける。

战场原继续接着说。

「阿良々木くんとも、別れるつもりはないわよ」

「我也没打算和阿良良木分手。」

 お澄まし顔は、変わらない。表情一つ、眉一つ動かない。こいつには感情というべきものが皆無なのかもしれないと思わせる。ただし──それでも、やはり、意識していないわけがない、はずなのだ。

她依旧一副若无其事的表情。眉头没有半点抽动。甚至让人觉得,她没有一丝的自我情感。可是——尽管如此,她的内心绝不可能没有感觉。

二年間だ。

两年。

中学から高校に上がるための、中学生でも高校生でも、まして春休みでもない頃から、戦場ヶ原ひたぎは、他人との接触を、一切断っていた。他人との接触方法がわからなくなっても──それは無理もないし、また、通常以上に消極的に、必要以上に臆病になったとしても、それは仕方のないことだろう。警戒心の強い野良猫を相手にしているようなものだ──まあ、猫といえば、むしろ羽川の方なのだろうけど。

从国中升上高中之间,战场原黑仪在这段既不是国中生、也是不高中生,更不算是春假的时候开始,便完全断绝与他人的接触。她不知道怎么和别人接触,也不无道理;会变得比一般人还要消极、胆怯也无可厚非。这感觉就像一只警戒心很高的野猫——唉呀,猫还是拿来形容羽川比较贴切吧。

アピールの仕方がわからないのは、お互い様ってことなのか。

不知道如何采取攻势这点,我们彼此彼此吗?

「……なあ、戦場ヶ原」

「……我说,战场原。」

「何よ」

「干嘛?」

「お前、ホッチキスとか、まだ持ってるのか?」

「你最近还有把订书机之类的东西带在身上吗?」

「そういえば……最近は持ってないわね」

「你这么一说……我最近都没带了说。」

「あっそ」

「是喔。」

「うっかりしていたわ」

「我太大意了。」

「うっかりね」

「真的呢。」

なら──それも進歩か。

这样一来,也算有进步吧。

その程度の変化でツンデレというのは、土台無理があるけれど、それが戦場ヶ原のパーソナリティだというなら──

只有这种程度的变化,根本没办法称作傲娇,但如果傲娇是战场原的个性之一的话——

……ん、そういえば。

……嗯?这么说来。

その二年間以前の、戦場ヶ原といえば──

在那两年以前,战场原应该是——

「お前、そういえば、中学時代は、陸上部のエースだったんだよな?」

「你国中的时候,不是田径社的王牌选手吗?」

「ええ」

「嗯。」

「もう陸上とか、やらないのか?」

「你不想再练田径了吗?」

「ええ。やる理由がないから」

「嗯。因为没有继续练的理由。」

即答といっていい速度で答える戦場ヶ原。

战场原回答的速度可说是毫不犹豫。

「もう、あの頃に戻るつもりはないわ」

「我没有打算回到过去。」

「ふーん……」

「嗯——」

中学時代の戦場ヶ原は、すごく人当たりのいいいい人で、誰にでも優しく、努力もおこたらない、そして気取らない、人格者の陸上部のエースだったそうだ──元気一杯の、活発な生徒だったそうだ。

据说战场原在国中时代的人品卓越,是一个努力不懈、态度非常和蔼、对任何人都很温柔、自然不做作,而且又是田径社的王牌——是一个相当有朝气又活泼的学生。

噂の範疇を出ない話だが、しかしこれに関しては、かなり信憑性のある噂だといっていい。

这八成是谣言,但可信度可说是非常高。

それが、高校生になる直前に、変わった。

在她升上高中前,这些特质全都改变了。

そして二年。

接着过了两年。

変わったものは、戻った。

变调的东西,恢复了原状。

戻ったから──しかし、全てが戻るわけがない。

但却不是一切都恢复原状。

本人にも、そのつもりがないのだとすれば。

如果本人不想恢复的话。

「その必要性や必然性があるとも思えないし、それ以上に、今更戻っても仕方がないって思うし──色々、背負うべき荷物も増えたから。それに、そもそも、もう三年生だからね。でも、阿良々木くん。どうしてそんなことを訊くのかしら?」

「我想不到继续练田径的必要性和必然性,而且回去参加既没意义,也会让自己增加许多负担。况且,最重要的是我现在已经三年级了。不过,阿良良木,你怎么会问我这个?」

「いや、単純に、スポーツをやってた頃のお前ってのに興味があったもんでな……まあ、ブランクもあるわけだし、無理してまでやるようなものでもないか」

「没什么,我只是单纯对你之前在练体育的那段时间有兴趣而已……你这么久没练也会有空窗期,没必要勉强自己。」

猫といえば羽川翼であるように、スポーツといえば、今の僕の中では神原駿河なので、あの後輩の姿を脳裏に浮かべながらの質問だったわけだけれど……にべもない31とはこのことだ。

就像我说到猫会想到羽川翼一样,我问到有关运动的事情时,脑中自然浮现出那位学妹——神原骏河的身影……但,战场原的反应也太冷淡了。

前向きといえば前向き──しかし。

确实,她的思考是很积极向前看。但是——

けれど、果たして、後ろを振り返らないことを、前向きといっていいのかどうか。

不回首过往,真的就表示自己积极向前看了吗?

今の戦場ヶ原は、やっぱり……。

现在的战场原,果然……

「大丈夫よ。スポーツなんてしなくとも、このスタイルは維持するつもりだから」

「不要紧的。我就算不运动,也有自信维持现在的身材。」

「……いや、そういうつもりで言ったわけでは」

「……我不是怕你身材走样才这么说的。」

「男と別れたことのない、この弾性に富んだわがままなボディに、阿良々木くんは惹かれたのでしょう?」

「阿良良木不是被我这个没和男性交往过、又富有弹性的惹火身材给吸引住的吗?」

「身体目当てみてえに言ってんじゃねえよ!」

「别说的好像我是看上你的身体才跟你交往的一样!」

しかもわがままなボディって……。

还说什么惹火身材……

他に言いようはなかったのかよ。

没其他说法了吗。

「そう。身体目当てではないの」

「是吗?你不是看上我的身体啊。」

戦場ヶ原はとぼけた風に言った。

战场原装迷糊地说。

「なら、しばらくは、我慢できるわよね」

「既然这样,你应该暂时克制得住自己吧。」

それが言いたかったのだろうか。

原来她是想说这个吗。

だとすれば、随分、遠回しな──とても、戦場ヶ原らしい直截的物言いとは言えないような、酷くえんな言い方だけれど。

如果真是这样,这话还真是绕了一大圈,相当拐弯抹角。这种说法完全不符合战场原有话直说的个性。

貞操観念、ね。

贞操观念吗……

やはりそれだけではないのだろう、が。

应该不是这么简单而已吧。

「そうよね。阿良々木くんは、バイキング形式の料理を食べるときに、申し込んでしまった以上どうせ支払う料金は同じなのに、『料金分は食べたな』とか『もうちょっと食べないと勿体ない』とか、そんなせせこましいことを言うような厚顔無恥な人間ではないわよね」

「也对。去吃高级自助餐的时候,明明大家都付一样的钱,就是会有人想要把那笔钱吃回来、或者是想多吃一点免得吃亏。阿良良木你应该不会是那种小家子气又厚颜无耻的人吧。」

「…………」

それがどういう意味合いを含んだたとえ話なのかはわからないけれど、その意図するところが僕に対する何らかの牽制けんせいであることだけは、確かだな……。

我不知道战场原这比喻里头有什么含意,但她的意图很明显是想要牵制我……

人間関係に臆病。

她在人际关系方面很胆怯。

僕との関係に、慎重。

对我俩之间的关系,却很慎重。

ならば、それに付き合うもやぶさかではない。

既然这样,我也要尽心尽力和她交往。

付き合うというのがなんなのかはやっぱりよくわからないが、付き合うというからには、全てに付き合おうではないか。

我还是搞不清楚交往到底是什么感觉,但我既然和她交往,就要喜欢上她的一切。

「……ああ、そうだ」

「……啊,对了。」

と、そこで思いついて──僕は戦場ヶ原に、神原駿河のことを言っておくことにした。いや、余計な心配をかけてはいけないと思ってというような話でもなく、単に話す必要がないだろうと判断して、戦場ヶ原を煩わせてはいけないと黙っていたけれど、先ほど八九寺が、小学生特有の感性で解釈した、神原駿河の行動原理のことを思うと、万が一でもその可能性があるのかもしれないと思うと、立場的に、恋人である(はずの)戦場ヶ原にそれを黙っているままというのは、あんまりフェアじゃない感じもする。

此时,我想到一件事。我决定和战场原说神原骏河的事情。我不是怕她会担心才至今只字不提,只是单纯觉得没必要特别拿出来说,没必要说出口让她心烦。但方才八九寺用小学生独有的猜测,去解释了神原骏河的行动原理,万一真有那一丝的可能性,战场原在身份上(应该也算)是我的女朋友,我要是隐瞒对她似乎不怎么公平。

さっき脳裏に思い浮かべちゃったし。

这问题剐才就浮现在我的脑中。

それに、気になっていることも、あるのだ。

而且,有些地方也让我很在意。

「なあ、戦場ヶ原」

「我问你喔,战场原。」

「何よ」

「干么?」

「神原駿河って、知ってる?」

「你知道神原骏河这个人吗?」

「………………」

沈黙が返ってくる。

她以沉默回应。

いや、何も返ってこない。

不,应该说她没有任何的回答。

フェアじゃないというのなら、この質問の仕方自体が全くもってフェアじゃなかっただろう──だって、学校中のスターである神原駿河のことを、知らない生徒などいるわけがないのだから。今はどうなのかしらないが、どんな遅くとも来週頭には、神原が僕をストーキングしているという事実も、噂となって出回ることだろう。まあ、それは気を揉むまでもなくデマ扱いされておしまいだろうけれど──だけど、だから、自然、この質問は、別の意味をはらんでしまうことになる。あえてフォローを入れずにそのまま、生じた静寂に耐えていたら、

要说不公平的话,这个问题本身就很不公平吧。因为神原骏河是校内明星,在校内可说是无人不知、无人不晓。我不知道现在怎么样,但最迟下礼拜初,神原骏河在跟踪我的事实,也会变成传闻在校内流传吧。但我不用紧张,反正这传闻很快就会被当作谣言而告终吧。因此,这个问题自然有其他含意。我刻意不接话,耐着眼前的寂静之后——

「そうね」

「认识啊。」

と、戦場ヶ原は言った。

战场原开口说。

「神原駿河か。懐かしい名前だわ」

「神原骏河吗,好怀念的名字啊。」

「……そっか」

「……是吗?」

やっぱり──旧知か。

她们两个——果然是旧识。

そうだと思ったんだ。

我早就猜到了。

勉強会と言ったとき、神原が学年トップの羽川ではなく、まず最初に戦場ヶ原を連想した理由──それだけではなく、これまでの神原の台詞の端々から、そういうニュアンスは感じ取れた。八九寺が言うような可能性に、僕が全く思い当たらなかったのは、そういう雰囲気が漠然どころか歴然としてあったからだ。つまり、僕ではなく、僕以外の何かを、神原が目的としているという雰囲気──

所以我说到读书会时,神原最先联想到的不是学年第一的羽川,而是战场原——不光是这样,我从神原话中的细微之处,也感觉到一些微妙的区别。我完全想不到八九寺说的那种可能性,就是因为神原给我的那种气氛很明显。而那种气氛告诉我,神原的目标不是我,而是我以外的东西。

「それでさっき、阿良々木くんは私の中学時代のことを訊いたのかしら? ええ、あの子は中学時代の、私の後輩よ」

「所以你才会问我国中的事情吗?没错,那孩子是我国中的学妹。」

「今も後輩だろ。同じ学校なんだから。ああ、それとも、神原の奴、中学時代は陸上部だったってことか?」

「现在也是你学妹吧。因为我们同校。啊,还是说神原以前在国中也是田径社的?」

「いえ、あの子は中学生の頃からバスケットボール部だったわ。……神原? えらく親しげに呼ぶじゃない」

「不是,那孩子从国中开始就是篮球社……神原?你叫得还挺亲密的嘛。」

瞬間で、戦場ヶ原の目つきが剣吞なものへと変化した。普段、全く感情のこもらない戦場ヶ原の瞳が、やにわ物騒な光を放つ。僕が何か釈明の言葉を口にするのをわずかにも待つことなく、右手のシャープペンシルの先端が、僕の左眼を正確に目掛けて、ものすごいスピードで伸びてきた。反射神経で咄嗟にかわそうとしたが、右手の動きと全く同時に、その上に広がるノートをかき散らすことを一切構わずに卓袱台を膝立ちで乗り越える形で、反対側の左手で僕の後頭部を抱えるようにした戦場ヶ原によって、その動きは封じられた。

战场原的眼神瞬间变得很险恶。平常她总是不带情感的眼眸,冷不防凶光四射。她完全不等我开口解释,右手拿着自动铅笔,笔尖精准地朝着我的左眼伸了过来。我反射动作顿时想要闪躲,但她右手行动的同时一脚跨过桌子,完全不在乎桌上的笔记会散落一地,用左手抓住我的后脑,封住了我的动作。

シャープペンシルの先端は──眼球ギリギリの、寸止めということすらも非常におこがましい、瞬きも許さないほどのギリギリのところで、動きを止めていた。こうなると、後頭部を抱える形の左手は、僕が余計な動きを見せて自分の手元が狂わないようにという戦場ヶ原なりの配慮なのかもしれないと思わせるほどの、手際のよさだった。

自动铅笔的笔尖——以间不容发的距离停留在我的眼球前,最近距离可能连一张纸的厚度都不到,甚至让我无法眨眼。这样看来,战场原会用左手抱住我的后脑自然有她的顾虑,或许她是不希望我有多余的动作,免得自己失手伤到我也说不定。

……せ、戦場ヶ原、ひたぎ。

……战、战场原黑仪。

お前、ホッチキス持ってないってだけで、ちっとも変わってないじゃん!

你根本一点都没变,现在只是没拿订书机而已!

「あの子がどうかしたの、阿良々木くん」

「那孩子怎么了吗?阿良良木。」

「…………!」

おいおい……!

喂喂……!

こんな嫉妬深い女なのか、こいつ……!

这家伙的嫉妒心有这么重吗……?

何て冗談みたいな情の深さなんだ……大体、そんな親しげなニュアンスなんてなかっただろ、今の。後輩を呼び捨てにしただけだぞ? 自分の知らないところで自分以外の女子と知り合っているってだけで、ここまでの仕打ちをされてしまうのか……実際に浮気とかしたら、僕は一体、戦場ヶ原から、どんな目に遭わされてしまうんだ?

这种深情的程度还真扯……况且,刚才我没有叫得很亲密吧。我只不过是直呼学妹的姓而已吧?只因为我在她不知道的地方认识了其他女性,就要受到这种待遇吗?假如我真的劈腿的话,战场原到底会用什么方法来料理我?

こんな恐ろしい目に遭っているけど、しかしこれはこれで、逆に、早く言っておいてよかったと、安心させられるような状況だった。いや、本当によかった、十分に言い訳の余地がある今回のようなケースで、戦場ヶ原のそういう一面を知っておけて……!

眼前这恐怖的遭遇,反而让我松了口气。这真是太好了,我可以在有充分理由可以解释的情况下,早一步知道战场原有这样的一面……!

「阿良々木くんって、怪我の回復、とても早いのだったわよね。じゃあ、目玉の一つくらいなら、いいかしら?」

「阿良良木,你伤口恢复的速度很快对吧。那我弄瞎一只眼睛,应该没关系吧?」

「やめろやめろ! さすがに眼球はまずい! やましいところは何もない、親しげになんて全く思っていない、僕は戦場ヶ原一筋だ!」

「住手、住手!眼球千万不要!我没有做什么对不起你的事情,我跟她一点都不亲密,我的眼里只有战场原你一个人!」

「あらそう。気持ちいいことを言ってくれるわね」

「是吗,你这话还真中听。」

すっと──シャープペンシルを引く。それをくるりと手の内で二回ほど回転させて、卓袱台の上に置き、散らかってしまったノートや教科書を、整え直す。僕はばくばくしたまま静まることのない心臓を抑えながら、戦場ヶ原のそんな様子を見守った。

战场原嗖一声将自动铅笔收回,在手中旋转了两次后放在矮桌上,接着开始整理散乱的笔记本和教科书。我一脸茫然,压抑住静不下来的心脏,凝视着战场原的一举一动。

「少し熱くなってしまったかもしれないわ。びっくりさせちゃったかしら、阿良々木くん」

「我可能稍微激动了一些。吓到你了吗?阿良良木。」

「……お前、絶対その内、人を殺すぞ」

「……你再过不久一定会变成杀人犯。」

「そのときは、阿良々木くんにするわ。初めての相手は、阿良々木くんにする。阿良々木くん以外は、選ばない。約束するわ」

「到时候,我会选择杀你的。我第一次的对象会选择你,不会选择你以外的人。我跟你约好了。」

「そんな物騒なことをいい台詞みたいに言ってんじゃねえよ! 僕、お前のことは好きだけど、殺されてもいいとまでは思わないよ!」

「你不要把这么可怕的事情,说的好像很浓情蜜意一样!我是喜欢你没错,但还没到被你杀死也无所谓的地步!」

「殺したいくらいに愛されて、愛する人に殺される。最高の死に方じゃないの」

「被爱到想杀死自己的人所爱,然后死在他手上。这是最棒的死法不是?」

「そんな歪んだ愛情は嫌だ!」

「我讨厌那种扭曲的爱情!」

「そうなの? 残念ね。そして心外だわ。私は阿良々木くんにだったら──」

「是吗?真可惜。也让我很遗憾。如果是阿良良木的话,我就算被——」

「殺されてもいいっていうのか?」

「被杀死也无所谓吗?」

「……ん? え、あ、うんまあ」

「……嗯?啊,对,算是吧。」

「曖昧な返事だーっ!」

「你的回答还真是模棱两可!」

「うんまあ、それは、そうね、よくないけれども」

「呃,那个,被你杀死可能不太好。」

「そして曖昧なまま断ったーっ!」

「然后又模棱两可地拒绝了!」

「いいじゃない、納得しなさいよ。私が阿良々木くんを殺すということは、つまり阿良々木くんの臨終りんじゅうの際、一番そばにいるのがこの私ということになるのよ? ロマンチックじゃない」

「有什么关系,你就认命吧。我杀死你,就代表你在临终的时候,本小姐会陪在你身边喔。这不是很罗曼蒂克吗?」

「嫌だ、僕は誰に殺されるとしても、お前に殺されるのだけは嫌だ、誰にどんな殺され方をされてもお前に殺されるよりはマシな気がする」

「不要,就算我会被人杀死,我也绝对不要死在你手上。因为我觉得,不管别人怎么杀我,都比你亲自动手还要来得好。」

「何よ、そんなの、私が嫌よ。阿良々木くんが私以外の誰かに殺されたなら、私はその犯人を殺すわ。約束なんか、守るものですか」

「什么嘛,我讨厌那样。要是阿良良木被我以外的人杀死,我会去杀掉那个犯人。谁管我们刚才的约定怎样。」

「…………」

こいつの愛情は、既に相当、歪んでいる。

这家伙的爱相当地扭曲变形。

愛されてることは、実感できるけど……。

虽然我可以实际体会到她是真的爱我……

「ともあれ、神原の話だったわね」

「不管怎样,你刚才在问神原的事情吧。」

危険な会話はその辺りでおひらきとばかりに、戦場ヶ原は相変わらずの手順で、当然のように話を戻す。

战场原的态度彷佛在说危险的话题到此为止,用一如往常的步骤,理所当然地将话题拉回原点。

「まあ、部活は違ったのだけれど、私は陸上部のエースで、あの子はバスケ部のエースだったから、学年は違えど、それなりに付き合いがあって──それに」

「我们国中的社团虽然不一样,不过我们一个是田径社的王牌,一个是篮球社的,所以就算学年不同,我们还是有一定的交集。而且——」

「それに?」

「而且?」

「……まあ、今となっては取り立てて言うほどのことでもないんだけれど、部活を離れたプライベートにおいても、あの子には色々と面倒をかけたというか、面倒を見させられたというか……いえ、阿良々木くん」

「……事到如今也不用特别说明啦,不过我们除了社团活动外,私底下也有来往,我以前常常照顾那孩子,应该说那孩子硬逼我照顾她……不对,阿良良木。」

と、僕に水を向ける戦場ヶ原。

战场原开始试探我。

「その前に、どうして阿良々木くんがここで、あの子の名前を出したのか、教えてくれるかしら。やましいところがないのなら、ちゃんと説明してくれるわよね」

「在这之前你可以先告诉我,为何你会突然提到那孩子的名字吗?你要是问心无愧,应该会老实告诉我吧?」

「あ、ああ」

「啊、啊啊。」

「勿論、やましいところがあっても、ちゃんと説明してもらうわよ」

「当然,就算你做了什么对不起我的事情,你也要据实禀报。」

「………………」

下手に隠し立てをすると本当に殺されるかもしれなかったので、僕は三日前から、その、神原駿河からストーキングを受けているということを、戦場ヶ原に話した。後ろから『たっ、たっ、たっ、たっ、たっ、たっ』と、小気味よいリズムで駆けてきて、僕を相手に取り留めのない話をして、全く何の目的も匂わせないままに帰っていく一人の後輩──神原駿河。何か目的はあるのだろうけれど、その目的がわからない、と。

要是随便隐瞒她或许真的会招致杀身之祸,因此,我将神原骏河从三天前开始就一直跟踪我的事情,告诉了战场原。总是踏着「咑、咑、咑、咑、咑、咑!」的愉悦旋律跑到我身旁,找我说一些不着边际的话,然后在我还没猜出她的来意前就兀自离去的学妹——神原骏河。我还告诉战场原,她或许别有用意,但我一直猜不透她。

説明しながら、僕は思っていた。

在说明的同时,我想到一些事情。

神原はきっと、戦場ヶ原のいないところを狙って、僕を訪ねてきていたのだろう。今日、八九寺と一緒にいるところを目掛けて駆けて来たのは例外として、基本的には僕が一人でいるところを、狙い澄ましてきていたはずだ。つまり、戦場ヶ原が神原のストーキングを今まで知らなかったことは、たまたまではない。

神原肯定是看准战场原不在的时候,才跑来找我的吧。今天我和八九寺在聊天时,她跑来找我算是个例外,基本上她应该都是趁我落单的时候跑来。也就是说,战场原至今不知道神原的跟踪行径,这点并不是偶然。

更にもう一つ、思う。

还有一点。

親しげに呼ぶ──というのなら、僕よりもむしろ、戦場ヶ原ではないのか、と。中学時代の後輩とはいえ、戦場ヶ原が神原のことを、『あの子』なんて言い方をするのは、そう、ニュアンスとしてあまりにも──いや、それは単なる言葉の綾なのかもしれないけれど。

要说叫得很亲密,那战场原叫得不是更亲密吗?就算神原在国中是自己的学妹,她称呼神原时是用「那孩子」,没错,这样在语意上实在太过微妙——不,或许这只是单纯的修辞表现罢了。

感情が表情に出ないのと同様、戦場ヶ原は、感情が声音に全く現れない。どんなことを言うのにも、ほとんど平坦な口調といっていい。どれだけの強い意志で自分を律しているのだろうと考えると、ぞっとするくらいだ。

战场原的喜怒哀乐不形于色,声音也同样不带任何感情。她不管说什么,语调几乎都是四平八稳。她到底是用多强大意志力在约束自己啊,一想到这点我就毛骨悚然。

けれど──あの子、か。

可是……「那孩子」吗?

「そう」

「是吗。」

おおよその説明を聞いたところで、戦場ヶ原は、やがて、そう頷いた。やはり、表情一つ変わらないし、平坦な口調だった。

我大致说明完后,战场原终于点头说。她依旧一副扑克牌脸,语气平稳。

「ねえ、阿良々木くん」

「呐,阿良良木。」

「なんだよ」

「干嘛?」

「上は洪水下は大火事、なーんだ」

「上面是洪水,下面是大火灾,答案是什——么?」

「……?」

「……?」

どうしていきなりなぞなぞなのだろう。

为何突然问这种脑筋急转弯。

一体戦場ヶ原はいつからなぞなぞキャラになったんだと不思議に思いながら、僕はとりあえず、その問いに答える。それは幸い、知っているなぞなぞだった。

战场原何时变成这种会玩猜谜的角色?我心觉奇异,但还是作答了。这问题的答案我刚好知道。

「そりゃまあ、風呂ふろがま、だろ?」

「答案是洗澡用的大锅吧?」

「ぶっぶー。答は」

「噗噗——答错了。答案是……」

平坦なままで言う戦場ヶ原。

战场原语气平淡地说。

「……神原駿河の家よ」

「……神原骏河的家。」

「お前、学校のスターの家に何をするつもりだ!?」

「你想对学校明星的家做什么事情!」

マジ怖いって!

这真的很可怕!

眼が据わってるって!

她两眼发直,目露凶光了!

「まあ、冗談はともかく」

「唉呀,先不开玩笑了。」

「お前の冗談は洒落になってないんだよ……実行しかねないんだもん、お前」

「你的玩笑一点都不好笑……因为你真的有可能付诸行动。」

「そうかしら。でも、阿良々木くんがそこまで言うのだったら、冗談は口だけにしておいてあげてもいいわよ」

「是吗。不过,既然阿良良木你都这么说了,那要我把它当作是口头上的玩笑也行。」

「いや、それが普通なんだけどな……」

「一般来说都应该这样吧……」

「神原はね、阿良々木くんより一年前に、私の秘密に気付いたの」

「神原她啊,比你还要早一年发现了我的秘密。」

特にどうということもなさそうに──普通の調子で、しかしそれでも若干鬱陶しそうにしながら、戦場ヶ原はそう言った。

她说话的语气很自然,心情没有起伏,但语气中却带有若干的郁闷。

「私が二年生になったばかりの頃、つまり神原が直江津高校に入学してきてすぐのこと。学校の位置的に、それは、私のことを知っている後輩が新しく入学してくるだろうことは予想済みだったし、それについての対策も、一応、私なりに練ってはいたのだけれど──神原に関しては、少しばかり油断してしまったの」

「那是在我刚升上二年级,也就是神原刚进直江津高中的时候。我看学校的地理位置,早就预料到会有认识我的学弟妹进来就读,也有拟定适当的对策,不过,当时我对神原稍微大意了一点。」

「ふうん」

「嗯——」

戦場ヶ原ひたぎ。

战场原黑仪。

彼女の抱えていた秘密──

她所抱持的秘密——

僕は階段で足を滑らせた彼女を受け止めたことで、その秘密に気付いた──言うなればそれはただの偶然だ。だが、それは逆に、その程度の偶然で露見してしまうくらいの、危うい秘密だったという風に言うこともできる。秘密に気付いたのは僕が最初ではないと、戦場ヶ原自身も言っていたし──とすると、神原は……。

我因为在楼梯间接住失足滑倒的她,才进而知道了那个秘密。真要说的话,那只是普通的偶然。但反过来也可以说,这个秘密危险到只要一个小小的偶然,就会轻易地曝光。战场原刚才自己也说了,我不是第一个发现她秘密的人。这么一来,神原她……

神原の、あの性格からすると。

以她那种个性来看。

「あいつは……神原は多分、お前のことを助けようとしたんじゃないのか?」

「那时候她……神原大概有想要帮你吧?」

「ええ、その通りよ。拒絶したけれど」

「是啊,你说得对。但是我拒绝了。」

戦場ヶ原は平然と言う。

战场原泰然自若地说。

それが当然の文法のように、正しい日本語の使い方でもあるかのように。

仿佛那是一句文法正常,又是标准的国文一样。

「阿良々木くんのときと、似たような対処を取らせてもらったわ。阿良々木くんは、それでも私にかかわろうとした。神原は、それきり、戻ってこなかったわ。まあ、その程度の関係よ」

「我应对她的方式,和之前对付你的手法很像。阿良良木在那之后还是想帮我。而神原在那之后就没来找过我了。唉呀,这代表我们之间的关系,就那种程度而已。」

「……戻ってこなかった」

「……没来找过你。」

それが、一年前のことか。

那是一年前的事情吗。

多分、徹底的に──拒絶したのだろう。昔の自分を、中学時代、陸上部のエースだった時代の自分をよく知っている神原が相手だったがゆえに、恐らくは僕のときとは似ても似つかないほどの、強烈な拒絶をしたのに、違いない。そうでなければ──あの神原が、そうそう簡単に引くとは思えない。確か、僕が戦場ヶ原の抱える秘密を知った五月八日の段階で──今現在、学校内でそれをそれ丶丶丶丶丶と知っているのは、僕の他には保健の春上先生だけだと、戦場ヶ原は言っていた。

战场原大概拒绝得很彻底吧。正因为神原很了解她的过去,很了解过去在田径社时代的她。因此战场原拒绝她的方式,肯定比拒绝我的时候还要来得更狠。若不是这样,以神原的个性绝对不会乖乖退让。我知道战场原的秘密好像是在五月八号,那时候她说现在知道这个秘密的人,除了我以外只有保健室的春上医生。

今現在丶丶丶──と。

她说现在。

つまり、神原駿河は、過去に、戦場ヶ原の抱える秘密に気付いたものの、戦場ヶ原によってそれを無理矢理に忘れさせられた哀れな被害者……いや、犠牲者の内の一人ということになるのだろうが──しかし、それでも果たして、あの神原が、本当に、戦場ヶ原のことを、忘れられたのかどうか。

简单来说,神原骏河在过去发现了战场原的秘密,却被逼着要忘掉这件事,是个可怜的被害者……不,她应该算是其中一个牺牲者吧。但,神原是否真的能忘掉战场原的事情呢?

「……友達だったんだろ?」

「……你们是朋友吧?」

「中学生の頃はね。今は違うわ。赤の他人よ」

「那是国中的时候。现在不是了。毫不相干。」

「でも、お前はもう一年前とは……状況が変わっているっていうか、その、抱えている秘密って奴は、解決したんだから──」

「可是,你的状况……已经和一年前不一样了,应该说你的秘密已经解决了。所以——」

「言ったでしょう? 阿良々木くん」

「我刚才不是说过了吗?阿良良木。」

遮るように、戦場ヶ原は言う。

战场原打断我的话说。

「私、戻るつもりはないのよ」

「我,没有打算回到过去。」

「…………」

「そういう生き方を選んだのだから」

「这是我选择的生活方式。」

「そっか……」

「是吗……」

まあ。

唉呀。

それが戦場ヶ原の選んだ戦場ヶ原の生き方なのだとしたら、僕が横から口を挟むような問題ではないのだろうとは思う──理屈の上では、そう思う。自分の方から手酷く拒絶した相手と、災禍が解決したからといって元の鞘に収まろう32などと、そんな虫のいいことを言えるような性格でも、戦場ヶ原はないだろうし。

既然这是战场原自己选择的生活方式,那我也没必要从旁插嘴——在理论上,我是这么想的。过去这么严厉地拒绝对方,现在麻烦解决了就想跑去跟人家和好如初——战场原不是这种自私的人。

「しかし……お前と神原との関係はわかったけれど、それって、その神原が僕に付きまとう理由の説明には、あんまりなってないよな」

「可是……就算我知道了你和神原的关系,还是没办法说明她纠缠我的理由啊。」

「大方、私と阿良々木くんが恋人関係になったことを、知りでもしたのでしょうよ。私達が付き合い始めたのが二週間前、ストーキングが始まったのが三日前なら、タイミング的には丁度よさそうなものじゃない」

「那大概是因为,她听到我们变成情侣的传闻吧。我们是在两个礼拜前开始交往,她跟踪你是从三天前开始,以时间点看起来不是刚刚好吗?」

「何? つまり、戦場ヶ原ひたぎにできた彼氏ってのがどんな男なのか、気になって……それで探りを入れているってことなのか?」

「什么?也就是说,她想知道战场原黑仪的男朋友是怎么样的人……所以才跑来刺探我的吗?」

「そんなところだと思うわよ。迷惑かけるわね、阿良々木くん。そうね、それについては、私ができる釈明は一つもないわ。人間関係を清算し切れていなかった私の責任といっていいもの」

「我想八成是吧。我给你添麻烦了,阿良良木。关于这点我没有辩解的理由。人际关系没有清算干净,是我的责任。」

「清算って……」

「清算……」

嫌な言葉を使う。

用这种字还真讨厌。

むしろ凄惨って感じだし。

我反而感觉她这样很凄惨。

「大丈夫。責任は取らせてもら……」

「没关系。我会负起责——」

「取らなくていい取らなくていい! お前何するかわかんないもん! このくらいのこと、僕のトラブルだから僕が解決する!」

「不用、不用!天晓得你会做出什么好事来!这种小事情,我的麻烦我自己来解决!」

「遠慮しなくてもいいのに。水臭いわね」

「你不用跟我客气。太见外了吧。」

「血生臭いんだよ、お前は……」

「我是怕你让我见血……」

んー。

嗯——

しかし、なんだか、それでも、腑に落ちない。

可是,我还是不得其解。

「神原って、一年前、お前にこっぴどく拒絶されてるんだろ? それで、それ以来、それっきりなんだろ? なのに今更、お前に彼氏ができたくらいのことが、気になるもんなのか?」

「神原在一年前被你狠狠地拒绝了吧?然后,你们在那之后就没联络了吧?那为何事到如今,神原还要在乎你交了男朋友这种小事情呢?」

「これが一般的な事例で、ただ決別した先輩に彼氏ができたということだけならばともかく──この場合は違うでしょう? 阿良々木くん。阿良々木くんは、神原にはできなかったことをやったわけだから、それを不思議だとは思わないわよ。阿良々木くんがしたことは、神原にとって、自分ではできなかったことなのだから」

「在一般的情况下,如果只是单纯因为和自己绝交的学姐交了男朋友,那也就算了,我们的情况不一样吧?阿良良木。你做到神原做不到的事情,所以你自己不觉得奇怪。但对神原来说,那却是她想做而做不到的事情。」

「ああ……そういうことか」

「啊啊……原来是这样啊。」

戦場ヶ原ひたぎの秘密に気付いておきながら……拒絶されてしまった彼女。激しく、容赦なく、拒絶されてしまった彼女。恋人という立場にいる僕が、勿論、その秘密を知らないわけがないというくらいの推測は通常の手順で考えれば誰だってつくだろうし、そうすれば、僕が戦場ヶ原の秘密を知りながらにしてその隣にいるという姿を見て、確かに、神原からすれば、思うところがなくはないだろう。

她发现战场原黑仪的秘密……却被本人拒绝了。而且拒绝的方式十分激烈,毫不客气。我是战场原的男朋友,理所当然会知道她的秘密,这点任何人都可以推测到。这么一来,我知道战场原的秘密却还能待在她身边,肯定让神原看了觉得奇怪吧。

とはいえ。

话虽如此。

その秘密自体が既に解決していることにまで、神原が気付いているとは、思えないけれど。そこまで推測がついていたのなら、さすがに神原は、僕ではなく、直接、戦場ヶ原の方に接触するだろうと、思うから。

神原大概没注意到战场原的秘密已经解决了。因为假如她推测到这一点,应该会直接和战场原接触,而不是来找我吧。

「自分で言うのもなんだけれど、神原にとって、戦場ヶ原ひたぎは、憧れの先輩だったのよ」

「我自己说可能很奇怪。不过对神原而言,战场原黑仪是她崇拜的学姐。」

戦場ヶ原は目線を横にやりながら言った。

战场原看着一旁说。

「私自身、そういう位置づけにいたという自覚はあったし、自ら望んでそういうキャラクターを演じていたわけだしね。仕方のないことよ。仕方のないことだったと思う。だから、拒絶するときも、後腐れのないように注意をしたはずなのだけれど──そう。やっぱりあの子、まだ私のこと、忘れていなかったのね」

「我知道自己在她心目中的地位,才会扮演那样的角色。那也没办法。我想那是没办法的事情。所以我拒绝她的时候有特别留意,以免之后留下祸根。不过……对,看来那孩子还忘不了我。」

「……あんまり迷惑みたいに言うなよ。別に向こうは、悪気があるわけじゃないんだろ。大体、人から忘れられるっていうのは、結構凹──」

「……别把人说得像个麻烦一样。对方也没有恶意吧。况且被人遗忘这种事情,还挺让人沮——」

「迷惑よ」

「她是个麻烦。」

きっぱりと言う戦場ヶ原。

战场原斩钉折铁地说。

全く躊躇しない口振りだった。

语气毫不犹豫。

「悪気のあるなしなんて、関係ないわ」

「这和有没有恶意没有关系。」

「そんな言い方、するもんじゃないだろ……お前が神原にとって憧れの先輩だったっていうなら、それに、神原が今でもお前のことを気に掛けてるっていうなら……まあ、仲直りっていうのもおかしいかもしれないけれど、その余地くらいなら、あるんじゃないのか?」

「没必要这样说吧……你是神原以前崇拜的学姐,而且神原现在还会在乎你的事情……要你们和好或许很奇怪,但至少现在还有和好的余地吧?」

「ないわよ。一年も前のことだし、仲良くしていたのも中学生の頃のことだし、それに、仲直りっていうのも、やっぱりおかしいし。戻るつもりはないって、言ったでしょう?それとも阿良々木くん、私は今更のこのことあの子の前に出て行って、いっぱい待たせてごめんなさいとでも言えばいいわけ? 愚かしいことこの上ないわね」

「并没有。那已经是一年前的事了,我们是好朋友也是国中的事情,而且,现在要和好实在奇怪。我哪才有说过吧?我没有打算回到过去。还是说,阿良良木你希望我事到如今还跑到那孩子面前,说一声对不起让你久等了之类的话吗?没有比这还要更蠢的事情了。」

戦場ヶ原は、この問答はこれでおしまいだとばかりに、そしてたった今思いついたかのように、話題を変えた。その手際は、いつもながらの見事なものだった。

接着,战场原想让这段问答就此结束,有如临时想到什么一样,改变了话题。她转换话题的技巧,始终这么高超。

「そうそう、そういえば阿良々木くん、近い内に、忍野さんに会う予定とか、あるかしら?」

「对了、对了,你最近有要去找忍野吗?」

「忍野に? ん、まあ、なくもないけれど──」

「找忍野?嗯——也不是没有啦……」

忍野はともかく──忍に血を飲ませてあげなくちゃいけないから、あの学習塾跡には、そろそろ行かなくてはならない。今日が金曜日だから、そうだな、明日か明後日にでも、時間を作って……。

忍野先不管,我还要去给小忍喂血,所以最近要去那栋废弃的补习班一趟才行。今天是礼拜五,嗯,明天或后天找个时间……

「そう。じゃあ」

「是吗,那么,」

戦場ヶ原は音もなく立ち上がって、衣装簞笥の上に置いてあった封筒を手に取り、そして戻ってきた。封筒をそのまま、僕の前に差し出す。封筒には、郵便局のマークが入っていた。

战场原一声不响地站起,拿起放在衣橱上的信封,随后走了回来,直接把信封推到我面前。信封上头印有邮局的标志。

「これ、忍野さんに、渡しておいてもらえるかしら」

「这个可以麻烦你拿给忍野吗?」

「なんだこれ……ってああ」

「这啥啊……啊,对喔。」

訊いて、すぐに気付いた。

我问话的瞬间,立刻就注意到了。

忍野メメ──

忍野咩咩——

あの軽薄なアロハ野郎に支払う、仕事料か。

这是要付给那个轻浮的夏威夷衫混蛋的报酬吗?

戦場ヶ原が抱えていた秘密を、戦場ヶ原が見舞われていた災禍を、取り除くのに必要だった──対価としての、平たく言えば仕事料。

要消除战场原的秘密和她所遭遇的灾祸,这是必要的代价。简单来说就是报酬。

確か、十万円とか言っていた。

我记得没错的话,好像是十万块。

一応、中身を確認するが、間違いなく、万札が十枚、入っている。恐らくおろしてきたばかりの、ピン札が、ぴったり十枚。

我随手确认信封内的东西,没有错,万元钞票十张。这些钞票大概是刚领出来的新钞,正好十张,不多不少。

「へえ……思ったより早く準備したんだな。都合するのに時間がかかるみたいなこと言っていたのに。バイトするんじゃなかったのか?」

「哇……你这么快就准备好啦,比我想得还快呢。你不是说筹钱可能要一点时间吗,你该不会跑去打工了吧?」

「したのよ」

「是啊。」

戦場ヶ原はしれっと33言う。

战场原满不在乎地说。

「少しばかり、お父さんの仕事を手伝わせてもらってね。まあ、無理矢理手伝ったというのが正しいけれど、それで稼いだお金よ」

「我帮我爸工作,帮了他一点小忙。应该说是我自己硬要帮他的比较贴切,所以就赚了这笔钱。」

「ふうん」

「嗯——」

戦場ヶ原の父親は、外資系の企業に勤めているとのことだったが──まあ、選択としてはそれは妥当なのかな? やっぱり戦場ヶ原の性格じゃ、普通のアルバイトには向いていないだろうし、大体、僕らの学校は、アルバイト禁止のはずだ。

听说战场原的父亲是在外资企业工作,唉呀,以选择来说这比较妥当吧?依战场原的个性,她大概不适合一般的打工,况且我们学校禁止学生工读。

「個人的にはお父さんの力を借りるのは反則っぽいから、あまり気は進まなかったのだけれど、それでも、お金のことだけはきちんとしておきたいから。借金のある家庭で育った私としてはね。いくらかすう34が出たから、それはまあ今度、阿良々木くんに学食でもおごってあげるわ。我が校の学食は、レベルが高い割にリーズナブルだから、そうね、何を頼んでもいいわよ」

「我觉得请我爸帮忙有一点犯规,所以原本不想这么做的,但唯独钱的事情我想要早一点把它处理好。我是在有债务的家庭中长大的嘛。我手边还剩下一点零头,下次我请你在学校食堂吃顿饭吧。我们学校食堂的东西好吃,价钱又很合理,你要点什么都没关系。」

「……ありがとう」

「……谢谢。」

でも、学食なんだ。

可是,地点是学校食堂。

平日の昼休みなんだ。

时间是平常日的午休。

こいつ、僕とデートとかするつもり、そういうの、全くないのかな……。

这家伙完全没打算跟我约会……

「でも、それなら、お前が忍野に直接会って渡せばいいんじゃないのか?」

「不过既然这样,你直接去找忍野,当面交给他不就行了?」

「嫌よ。私、忍野さん、嫌いだもの」

「不要。因为我讨厌忍野先生。」

「なるほど……」

「原来如此……」

そういうこと、はっきり言うよな、恩人相手に。

对方是你的恩人,不要说得这么坦白。

それで決して、忍野に対して恩を感じていないわけではないというところが、戦場ヶ原の人間の大きいところだと思う。

这不代表战场原对忍野没有感谢之意,我想这点就是战场原心胸宽大的地方。

まあ、別に、僕も忍野が大好きってわけではないさ。

唉呀,我自己也不是非常喜欢忍野啦。

「できれば二度と会いたくないし、これっきりかかわりたくもないくらいね。あんな、他人のことを、見透かしたような人」

「可以的话我希望不要再见到他,我不想再和他那种能够看透别人的人扯上关系。」

「まあ、忍野がお前と相性が悪いってのはその通りだろうけどな。あの人を馬鹿にしきった軽薄な物腰は、お前の性格とは合わないだろうよ」

「唉呀,忍野的确和你个性不合。可是这种完全瞧不起他的轻浮态度,和你的个性不合吧。」

言いながら、僕はその封筒を、座布団の脇に置いた。そして、その封筒を上からぽんと叩いて、それから戦場ヶ原に、頷いてみせる。

我说话的同时,把信封放到我的坐垫旁。接着我拍了拍信封,对战场原点头说:

「わかったわかった。そういうことなら、もう何も言わないさ。じゃあ、確かに受け取った。今度、忍野に会ったときにでも、ちゃんと責任を持って、渡しておいてやるよ」

「我知道了、我知道了。既然这样我不会再多说什么了。那我确实收下了。下次我去找忍野的时候,我会负责把钱交给他的。」

「よろしくお願いするわ」

「麻烦你了。」

「うん」

「嗯。」

そして、僕は思った。

接着,我想到了一件事情。

相性。

个性契合度。

物腰。

处事态度。

性格。

还有个性。

あの後輩、神原駿河の、何とも形容のし難いあの新機軸のキャラクターは──そのまんま、戦場ヶ原のキャラクターの、裏返しなのではないだろうかと。相性や、物腰や、性格、それに、それ以外の全てを含んで──

那位学妹神原骏河那种难以形容的新创意角色,在性格上和战场原似乎完全相反。包含个性契合度、处事态度、个性,以及除此之外的一切——

戦場ヶ原は中学時代、陸上部のエースだった。

战场原在国中时是田径社的王牌选手。

それだけでなく、憧憬の対象だった。一身に集めていた尊敬の目線は──当然、神原のものだけではなかっただろう。そういう位置づけで、そういうキャラクターを演じていたのだろう──暴言や毒舌を撒き散らす、今の姿とは、多分、正反対のキャラクターを、演じていたのだろう。

不仅如此,还是人们崇拜的对象。聚集在她身上的尊敬目光——当然不光神原一个人。因为自己被当成崇拜对象,才扮演那种性格的角色。她当时扮演的角色,大概和她现在毒舌谩骂的性格完全相反吧。

暴言と甘言。

设骂和称颂。

毒舌と褒舌。

毒舌和褒奖。

正反対。

完全相反。

裏返し。

整个颠倒过来。

それはつまり。

这也就是说——

「では阿良々木くん」

「那么,阿良良木。」

戦場ヶ原は感情のこもらない眼で言った。

战场原用不带感情的眼神说。

「勉強を続けましょうか。知っている? 有名な、トーマス・エジソンの言葉。天才は九十九パーセントの努力と一パーセントの才能である、って。さすが天才、いいこと言うわよね。でもきっとエジソンは、一パーセントの方が大事だと思っていたに違いないのでしょうね。人間と猿とを分ける遺伝子の違いって、そのくらいだって言うわよね?」

「我们继续念书吧。你知道吗?托马斯 · 爱迪生说过一句名言。天才是一分的天分也认为那一分的天分很重要,据说人类和猿猴在基因上的差别,也不过就差那一点而已呢?」

004#

戦場ヶ原は二年間──そして僕は二週間、である。

战场原是两年,而我是两个礼拜。

羽川はゴールデンウィークの間中。

羽川是在黄金周的中期。

八九寺は、どうだろう、正確には不明。

八九寺我不清楚,正确时间不明。

何かといえば、それは、怪異に触れていた期間である。普通ではない体験をした時間──だ。普通ではとてもじゃないがありえない、恐るべき体験をした、期間と時間。

这是我们各自接触到怪异的期间。经历不寻常体验的时间。在这段期间和时间中,我们共同体验了一段非常不普通、绝无可能的恐怖事物。

たとえば阿良々木暦。

比方说阿良良木历。

僕の場合。

就拿我的状况来说。

僕はこの現代、二十一世紀の文明社会の世の中で、穴があったら入りたいほど恥ずべきことに、古式ゆかしき吸血鬼の被害にあった──血も凍るような恐怖と恐慌の、そして伝統と伝説の吸血鬼に、身体中の血液という血液を、搾り尽くされた。

我在这二十一世纪的文明社会中,遭逢到古典古老的吸血鬼毒手,说来真让我可耻到想找个地洞钻。之后,我被那恐怖到令人血液为之冻结、同时具有传统和传说的吸血鬼,吸干了全身的血液。

搾り尽くされ、からびて。

吸得一干二净,一滴不留。

そして僕は吸血鬼になった。

最后,我变成了吸血鬼。

太陽に怯え十字架を嫌い大蒜を忌避きひし聖水をけむたがる35、その代償として人間の数倍数十倍数百倍数千倍の肉体能力を得る、更にその代償として、人間の血に対して絶対的な飢えを感じる──漫画やアニメや映画の中で大活躍のナイトウォーカーとなった。いやはや、そんなリアルな吸血鬼、反則だと思ったものだ。今時の吸血鬼は、日中でも平気で歩いて、十字架のアクセサリーを着け、餃子でも食べて聖水でも飲み干して、それでも肉体能力だけはずば抜けて──というのが主流だろうに。

我畏惧太阳、厌恶十字架、忌讳大蒜、害怕圣水,但相对地我的肉体能力变得比人类还要强上数倍、数十倍、数百倍、数千倍。而其代价就是我会对人血感到绝对性的饥渴,成为动漫和电影中最活跃的夜行者。不对,电影那种真实系的吸血鬼,根本就是犯规。现在时下的吸血鬼就算白天也能大摇大摆地走在路上,身上可以穿戴十字架的饰品,能吃水饺畅饮圣水,而唯独优异的肉体能力没有打折扣——这才是时下的主流。

それでも。

即使如此。

やっぱり、吸血鬼という以上は、人の血を吸わなければならないところだけは、今も変わらないだろうけれど。

既然是吸血鬼,就避免不了吸食人血,唯独这点从古至今不曾改变。

血を吸う鬼──吸血鬼。

吸血的鬼——吸血鬼。

結局僕は、通りすがりのおっさん、別にヴァンパイアハンターでもなければキリスト教の特務部隊でもなく、同属殺しの吸血鬼でもない、普通の通りすがりのおっさん、軽薄なアロハ野郎こと忍野メメによって、そんな地獄から救い上げてもらったわけなのだけれど──しかしそれで、そんな二週間を送ったという事実自体が、消えてなくなったわけではない。

最后,我被一位路过的大叔所救。他不是吸血鬼猎人,也不是天主教的特务部队,更不是猎杀同族的吸血鬼,只是一个普通的路人大叔、轻浮的夏威夷衫混蛋。那个人就是忍野咩咩,他解救我脱离了地狱。但我确实经历了那段生活,这两个礼拜的事实不会就此消失。

鬼。

鬼。

猫。

猫。

蟹。

螃蟹。

蝸牛。

蜗牛。

ただ、それでも僕と、他の三人との間には、決定的な差異があるということを、忘れてはならない。特に、戦場ヶ原ひたぎの場合と阿良々木暦の場合には、かなりの違いがある。

但是,我和其他三人之间有着决定性的差异,这点千万不能忘记。特别是战场原黑仪和阿良良木历的情况,两者相差甚远。

それは期間の長さということではない。

这不是指期间上的长短。

失ったものの、多さだ。

而是指失去事物的多寡,

戻るつもりはない──と言った。

她说……不打算回到过去。

しかしそれは、必然性や必要性といった話ではなく、戦場ヶ原は戻りたくとも、もうあの頃には戻れないという意味ではないだろうか?

不谈必要性和必然性的问题,她说这句话的意思,是不是代表就算她想回去,也无法回到从前的意思呢?

何故なら戦場ヶ原は……二年間、他人付き合いというものを一切合財いっさいがっさい拒否してきた、クラスにおいて誰とも接触することもなく、二年間やってきた戦場ヶ原ひたぎは──その二年間が終わった今、何も変わっていない。

因为战场原……在那两年中一直拒绝和他人交际,在班上从不与人接触,作茧自缚了两年。现在那两年过去了,战场原黑仪依旧没变。

僕以外のことについて、何も変わっていない。

除了我的事情以外,其他事物一切没变。

阿良々木暦が戦場ヶ原にとって特別であり特例になっただけで、それ以外については、本当に戦場ヶ原は、何も変わっていないのだ。

因为阿良良木对战场原而言是特别的存在,也是个特例,除此之外战场原真的毫无变化。

それ以前とそれ以後に、差異がない。

前后没有丝毫的差异。

保健室に行かなくなっただけ。

只不过没再去保健室而已。

体育の授業に参加するようになっただけ。

只不过可以上体育课而已。

教室の隅の方で──静かに本を読んでいる。教室の中において、本を読むというその行為によって、クラスメイトとの間に、強固な壁を築いているかのように──

她总是在教室的一角……静静地看书。在教室中,她彷佛想藉由读书这个行为,在同班同学和她之间,筑起一道厚重坚固的墙壁。

本当に、僕と話すようになっただけだ。

她现在只和我交谈。

昼食を、僕と一緒に取るようになっただけだ。

只和我一起吃午餐。

未だあいつの、クラスの中における位置づけは、物静かで病弱な優等生──である。クラスメイトからは、心持ち、ある程度病状が回復した程度にしか、捉えられていない。

她在同学心目中还是和过去一样,是一个体弱多病的文静优等生。同学们只有稍微感觉到,她的病状有某种程度的好转。

委員長である羽川は、それでも大した変化だと、無邪気に喜んでいたけれど──僕はそれを、そういう風景をそんな感じに、単純に楽観的にとらえることはできない。

班长羽川觉得那已经是天大的变化,由衷地感到喜悦;但我却没办法想得太过乐观、太过单纯。

失ったのではない。

她不是失去。

捨てたのかもしれない。

或许是她自己舍弃的。

けれどそれは、結果からすれば同じこと。

但从结果来看,这两者没有差异。

わかったような口を叩くつもりはさらさらないし、これからどんな風に付き合っていったところで、本当のところがわかるわけじゃないのだろうけれど──僕が横から口を挟むような問題ではないのだろうけれど。

我不想说得自己好像很懂一样,未来不管我俩用什么方式交往,我可能都不会知道事实为何;但那些都不是我能从旁插嘴的问题。

容喙ようかいや干渉が、正しいとは思わないけれど。

我不觉得多嘴和干涉是正确的。

それでも、思わなくはない。

但我心中的想法,还是无法抹灭。

戦場ヶ原がもしも、と。

要是战场原她——

今、戦場ヶ原は、ホッチキスを持っていない……それが進歩で、それが変化であるというのなら、更にその先というのがあっても、いいはずじゃないのか、と。

现在,战场原没拿订书机了……如果这是一个进步、一个变化,那再更往前进一步,肯定会更好不是吗?

僕のことについてだけでなく。

不光是我的事情。

他のことについて、もしも──

对其他事物,要是——

「もしもし?」

「喂?」

「はい、お待たせしました、羽川です」

「喂!让你久等了,我是羽川。」

「…………」

いや、電話の受け答えとしてはとても正しいのだろうけれど、携帯電話でその台詞は、ちょっとおかしくないか?

这以电话的应答来说十分正确,但讲手机用这个台词似乎有点奇怪吧?

羽川翼。

羽川翼。

クラス委員長──優等生のハイエンド。

班长,登峰造极的优等生。

委員長になるために生まれてきたような女だ。

仿佛是为了当班长才生下来的女性。

神様に選ばれた委員長の中の委員長──と、最初は僕も冗談で言っていたのだけれど、クラスの副委員長として二ヵ月の時間を共に作業をしていて、僕はそれが本当に笑えないほどにマッチする表現であることを、知る羽目になった。知識は人間にとってすべからく大切であるべきものだが、できれば知りたくなかった。

被神选上的班长中的班长,这句话一开始只是我的玩笑话,但我任职副班长和她共事两个月后,我才知道那形容真是贴切到让我笑不出来。知识对人类而言应当是最重要的东西,但可能的话,这种事情我还真不想知道。

「どうしたの? 阿良々木くんが私に電話をかけてくるなんて、珍しいね」

「怎么了?阿良良木竟然会打电话给我,真是稀奇呢。」

「いや、別に──なんていうか、お前にちょっと訊きたいことがあって」

「也没什么事啦,该怎么说呢,我有点事情想要问你。」

「訊きたいこと? 別にいいけど。あ、文化祭の出し物の件? でも、実力テストが終わるまでは、文化祭のことについてはあまり考えない方がいいんじゃないのかな──阿良々木くん、かなり大変なんでしょう? 勿論、雑務は全部、私がやっておくけれど。それとも、出し物を変更しようってこと? アンケートで決めちゃったことだから、それは難しいと思うわよ。あ、ひょっとして、変更せざるを得ない何らかの問題があったとか? それだったら、早く対応しなくちゃいけないね」

「有事想要问我?没关系你问吧。啊,你是想问我文化祭的节目吗?不过,实力测验结束前,还是别去想文化祭的事情比较好吧。阿良良木你这样会很辛苦吧?当然,杂务方面我会全部处理好。还是说你想要变更文化祭的节目?我们是用问卷决定的,要改我想很难喔。啊,难道说出了什么不得不变更的问题吗?那样的话,我们必须尽早处理才行。」

「……相槌くらい打たせてくれ」

「……拜托让我答个腔,有个参与感吧。」

本当、話を勝手に進める奴だよな。

她真的是只顾自己说话的人。

思い込みが激しい上に、一瀉いっしゃせんによく喋る。

除了择善固执外,她说起话来更是一发不可收拾。

言葉を挟む隙を見つけるのが大変だった。

要找插话的空隙非常辛苦。

夜八時。

晚上八点。

民倉荘、戦場ヶ原の家からの帰り道、僕はサドルには跨らずに自転車を押して、アスファルトの道路を歩いていた。ペダルをこがずに自転車を押しているのは、隣に八九寺がいるからでもなくまたも神原が僕を目掛けて駆けてきたからでもなくて、何となく、考えごとをしたかったからだ。

我从民仓庄——战场原的家踏上归途,离开坐垫牵着脚踏车,走在柏油路上。我不骑车而用牵的,单纯只是因为我想思考一些东西,并不是因为八九寺在我身旁,也不是因为神原又朝我跑来的缘故。

結局、夜八時まで、勉強詰めだった。

在那之后,我们到晚上八点前一直在念书。

夕飯どき、ひょっとしたら戦場ヶ原の手料理がいただけるのではないかとにわかに期待を寄せていたのだが、あの女はそんな気配を全く見せなかった。耐え切れず、それとなく空腹を訴えたら、「そう。じゃあ今日はこれでお開きね。憶えてるとは思うけれど、この辺りは街灯が少ないから、帰路は気をつけて頂戴。シーユーレーター、アリゲーター」と、あっさりと追い出されてしまった。父親が仕事で夜中まで出ていることの多い、事実上一人暮らしの戦場ヶ原ひたぎのこと、料理が出来ないわけがないと思うのだが……。

晚饭时间,我原本还稍微期待战场原会为我洗手作羹汤,但那女人完全没有那样的打算。最后我耐不住饥饿,婉转地告诉她我肚子在唱空城计后,「是吗,那我们今天就到这里为止吧,我想你应该记得这附近的路灯很少,所以你回去的时候要小心点。See you later,Alligator.」她很爽快地就把我扫地出门了。她父亲常工作到三更半夜,因此战场原黑仪和独居没两样,所以我想她没理由不会做料理……

返す返すも、難易度の高い女だった。

她真的是难易度很高的女主角。

まあ、今の僕は、あんまりお腹の空かない体質だから、訴えた空腹というのは半分以上、噓なのだけれど。

唉呀,现在的我在体质上不太容易感到饥饿,刚才说肚子饿其实有一半以上是骗人的。

ともあれ。

无论如何。

考えごとといっても、教える立場の戦場ヶ原から平均点を取ることすら諦められてしまうような僕のこと、あまり考えごとが生産的な意味を持つわけではない。ほとんど自己満足みたいなものだ。しかし、世の中には自己満足で終わっていいことと、そうではないことがあり、この場合は後者だった。

虽然我在思考,但我可是连战场原都放弃要我拿到平均分数的人,对我而言思考不是一个创造性动词。只是一种自我满足。但是,这个世界上有些东西能以自我满足画下句点,有些则否。现在的情况就是属于后者。

で。

所以,

右手で自転車を押したまま、歩きながら、羽川の携帯電話に、僕は電話をかけたというわけだ。時間は夜の八時半──それほど親しくない間柄の女子に電話をかけるのに、相応しい時間なのかどうかは、どうだろう、僕にはよくわからないのだけれど、羽川の反応から見る限り、とりあえず許容範囲ではあるようだ。真面目の化身のような、人一倍モラルに厳しい羽川なら、駄目なときは駄目だと、ちゃんと言ってくれるはずである。

我才会右手牵着脚踏车,边走边打电话到羽川的手机。时间是晚上八点——我不知道在这时间打电话给关系不是很亲密的女生是否恰当,但从羽川的反应来看,似乎还行的话,她应该会清楚地教导我才对。

「えっと。ちょっとばかし長い話になるかもしれないんだけど、羽川、時間、いいか?」

「那个。可能会稍微占用你一点时间,你时间上没问题吧?」

「ん? いいよ? 軽く勉強してただけだから」

「嗯?没关系啊?我刚才在轻松念书。」

「…………」

嫌味なくさらっと、そんなことを言えてしまう辺り、神様に選ばれた委員長の中の委員長だ。

能干脆地说出这种话,又不让人反感,从这点来看她真的是「被神选上的班长中的班长」。

軽くって、どういう勉強のことなんだろう……?

轻松念书?到底是哪一种念书啊……?

「まあ、じゃあ、できるだけ手短に……羽川、戦場ヶ原と同じ中学だったよな? なんだっけ、確か──そうそう、公立清風中学だっけか」

「好,那我尽量长话短说……羽川你和战场原是同一所国中吧?那所国中好像叫……对了,是公立清风国中吧?」

「うん、そうだよ」

「嗯,对啊。」

「じゃあ、一個下の後輩で、神原駿河って奴、知ってるだろ?」

「那你应该认识晚你一届的学妹神原骏河吧?」

「そりゃ、勿論、知ってるけど? て言うか、神原さんのことを知らない人なんて、いるのかな? 阿良々木くんだって知っているでしょ? バスケットボール部のキャプテン、学校中のスター。私だって、友達と一緒に、試合の応援に行ったことあるくらいだし」

「当然知道啊。应该说,现在有人不认识神原同学吗?阿良良木你也知道吧?她是篮球社的队长,校内明星。她先前比赛的时候,我还和朋友去帮她加油过呢。」

「いや、だから今現在の話じゃなくて──神原の中学時代の話が聞きたいんだけれど」

「没有,我不是说现在的事情,我是想问神原在国中时候的事情。」

「んん? そうなの? なんで?」

「嗯嗯?是吗?为什么?」

「なんでも」

「没为什么。」

「ふうん……いや、でも、中学時代も、今とそんなに変わらないよ。バスケットボール部のエースで、大活躍。二年生の後半からは、今と同じようにキャプテンを務めていたみたいだし。それがどうかしたの?」

「嗯……不过她在国中的时候,也和现在差不多。一样是篮球社的王牌,在场上相当活跃。她好像从二年级下学期,就跟现在一样开始接任队长。她怎么了吗?」

「いや、えっと──」

「不是,那个——」

話せないよなあ。

我说不出口。

言えないよなあ。

无法表达。

信じないよなあ。

她不会相信吧。

よりにもよってそのスターが、こともあろうにこの僕を、言うにこと欠いてストーキングしているだなんて。

偏偏那个明星,好死不死地找上了,对我做了只能用「跟踪」两字来比喻的行为。

そうでなくとも、どこまで正直に事実を伝えていいものかという問題もあるわけなのだが、しかし、まあ、相手が羽川なら、ある程度の事情を話しても、いいかな。当然、包むべきところは、オブラート36に包ませてもらうけれど。

就算不是这样,该怎么把事情正确地传达出来也是个问题,既然对方是羽川,稍微透露一点原因也无妨吧。当然该委婉表现的地方还是要委婉一点。

「その神原と戦場ヶ原が、中学時代に仲がよかったって話なんだけれど──そうなのか?」

「听说神原和战场原在国中的时候是好朋友,这是真的吗?」

「んん? いや、前にも言ったと思うけれど、別に私、同じ中学だったっていうだけで、戦場ヶ原さんとそんな物理的接触があったわけじゃないんだよ? 戦場ヶ原さんが有名人だったから、地味めの私が一方的に知っていたっていうだけで──」

「嗯?我之前应该有说过,我和战场原同学虽然是同一所国中,但我们之间不是很常接触吧?战场原同学是个名人,所以就连不起眼的我也只是单方面认识她——」

「お前のその謙虚な姿勢にはいつもながら感動すら覚えるけれど、そういういつも通りのやり取りは今回はさておくとしてだな……」

「我每次听到你这么谦虚都会觉得很感动,不过这种一如往常的应对,这次就先摆到一边吧……」

「ヴァルハラコンビ」

「圣殿组合。」

「は?」

「嗄?」

「今、言われて、思い出した。ヴァルハラコンビってね、呼ばれてたよ。陸上部の戦場ヶ原さんとバスケ部の神原さんで、ヴァルハラコンビ」

「刚才听你这么一说我才想到。她们以前被称为圣殿组合。田径社的战场原和篮球社的神原,是圣殿组合。」

「ヴァルハラコンビ……? ヴァルハラってどういう意味だっけ、聞いたことあるような気もする単語だな。しかし、なんでそんな風に呼ばれることに……」

「圣殿组合……?这边的圣殿是什么意思来着,我以前好像有听过。可是为什么要那样称呼她们……」

「神原の『ばる』と、戦場ヶ原の『はら』で、『ヴァルハラ』なのよ。で、ヴァルハラっていうのは、北欧神話で、最高神オーディンの住む天上の宮殿のことで、戦死した英雄の霊が迎えられる、戦いの神様の聖地っていう意味があるから──」

「神原的『baru』和战场原的『hara』,念起来就变成圣殿『Walhalla』了。而瓦哈拉在北欧神话中式主神奥丁居住的天上宫殿,是战场上壮烈牺牲成仁的战士们最后的归宿,也是战神的圣地。所以——」

「……ああ、神原の『神』と戦場ヶ原の『戦場』か」

「……啊,是神原的『神』和战场原的『战场』吗?」

「それでヴァルハラコンビ」

「所以是圣殿组合。」

「はあ……」

「喔……」

嵌りすぎじゃん、それ。

这也未免太过贴切了。

たかだかニックネームのことなのに、うまいこと言う人間がいるもんだな……あえて難を言えば、その響きがあまりに綺麗過ぎて、聞いた側のリアクションとしてはただただ感心するばかりで、そういう意味では逆に反応に困ってしまうくらいであるということだが、しかしそんなの、突っ込み担当者の意地の悪い見方って奴だろう。

不过是个外号,居然有人可以取得这么贴切……硬要挑剔的话,就是外号听起来太美,让听者只有感到佩服的份,甚至困扰不知道该做出什么反应。不过这是负责吐槽的角色,坏心的见解。

「まあ、コンビなんて言われてるくらいなんだから、少なくとも仲が悪かったとか険悪だったとか、そういうことはないんじゃないの?「まあ、コンビなんて言われてるくらいなんだから、少なくとも仲が悪かったとか険悪だったとか、そういうことはないんじゃないの?

「既然她们被称为组合,至少她们不会是仇人或是关系险恶吧?战场原同学到毕业前一直都在参加社团活动,所以和运动社团之间应该有最低限度的交际吧。」

「お前は何でも知ってるな」

「你真是无所不知呢。」

「何でもは知らないわよ。知ってることだけ」

「我不是无所不知,只是刚好知道而已。」

いつも通りのやり取りだった。

一如往常的对话。

ともかく……まあ、話の裏は取れた感じ。

总而言之……已经查证完了。

裏が取れたところで──どうしようか。

查证完之后——该怎么办?

表を、どうしようか。

表面上该做些什么?

「前に訊いたことの繰り返しになってしまうけれど、中学時代の戦場ヶ原って……今とは全然違う感じだったんだよな」

「我以前好像也问过你同样的问题,战场原在国中的时候……感觉和现在完全不一样对吧?」

「うん、そうだよ。まあ、最近、戦場ヶ原さんも少しずつ変わってきてるみたいだけど、やっぱりそれでも、昔とは違うかな」

「嗯,没错。最近战场原同学似乎变得有点不一样,可是还是和以前完全不同。」

「そっか……」

「是吗……」

変わってきている。

变得有点不一样。

僕に関するところだけ。

只有在关于我的事情方面。

だから──昔とは違う。

所以……和以前不一样。

「やっぱり、後輩に人気とか、あった?」

「她在学弟妹之间也很有人气吧?」

「そうだね。男女問わず人気あったよ。後輩という区分にも、別に限らなかったみたいだよ? 先輩がいた頃には先輩にも可愛がられていたし、勿論、同級生にも評判がよくて──」

「是啊。她在男女之间都很受欢迎。也不限于学弟妹吧?还是二年级的时候,学长也很喜欢她,当然在同年级之间风评也很好——」

「つまり老若男女問わず──か」

「也就是不分男女老少……是吗?」

「先輩後輩だから、老若ってほどじゃないけどね。それでも、あえて言うなら、後輩の女子の人気が、一番高かったのかな。そういうことでしょ? 今阿良々木くんが聞きたいのって」

「只是学长姐、学弟妹而已,称不上是老少啦。不过真要说的话,她在学妹之间的人气最高吧。阿良良木你想问的是这个吧?」

「……察しがよくて助かるよ」

「……你的观察力这么好,真是帮了我一个大忙。」

ちょっと察しがよ過ぎるくらいだけどな。

不过好到有点过头了。

忍野じゃないが、見透かされた気分だ。

我有一种被看透的感觉,虽然她不是忍野。

「でも、阿良々木くんは、昔の戦場ヶ原さんのことなんて関係なく、今の戦場ヶ原さんのことが、好きなんだよねー?」

「不过,以前的她怎么样都没关系,阿良良木喜欢的是现在的战场原同学对吧?」

「………………」

お前、ノリが小学五年生と一緒だぞ。

你的反应和小学五年级生一样喔。

ちなみに、別に誰に宣言したわけでもないけれど、僕と戦場ヶ原が付き合っていることは、バレバレである。クラスにおいて大人しい優等生という位置づけであり、今もそうあり続けている戦場ヶ原は勿論、僕もまたそういう行為の対象となるクラスメイトでは決してないから、露骨にからかわれたり無闇にはやしたてられたりはしないけれど、しかしそれでも、いつの間にかそれ自体は周知の事実、暗黙の了解となっていた。

顺带一提,我和战场原交往的事情没有特别对谁宣言过,但明眼人一看即可明白。战场原在班上被定位为温顺的优等生,现在也依旧维持一贯作风。而我在班长更不可能有宣言的对象,因此没人会公然地跑来调侃我们,以及大肆宣扬此事,然而这件事情却在不知不觉间成了众所皆知的事实,一种默认。

噂というのは恐ろしい。

传闻真是恐怖的东西。

三年生と二年生の間にある壁を越え、神原のところにその噂が届くのには、さすがにある程度の時間を要したようだけれど……まあ、戦場ヶ原が有名人だということと、神原がその戦場ヶ原のことを気に掛けていたのだろうことを思えば、それでも少し、遅いくらいなのかもしれないが、やはり学年を跨いでしまえば、そんなものだろう。

不过要穿越二、三年级之间的障壁传到神原的耳朵里,的确多少需要一点时间……唉呀,战场原是个名人,神原大概也很挂心她的事情,照这样看来,神原知道的或许算慢了吧,隔了一个学年果然会需要一些时间。

「何度も言うけれど、清く正しい男女交際を心がけなさいよ、阿良々木くん。行状ぎょうじょうが噂になるようなことだけは、しないでね。戦場ヶ原さんは真面目そうだから、まあ、ただれた付き合いにはならないとは思うけれど」

「这算老生常谈了,不过你们要维持纯洁正常的男女关系喔,阿良良木。千万别传出不检点的风声喔。战场原同学看起来很正派,我想你们应该不会有不纯的交往吧。」

「はあ……真面目ね」

「咦……正派吗?」

そう言えば、羽川もまだ、戦場ヶ原の本性は知らないんだよな……他のクラスメイトはともかくとして、僕達が付き合う前から付き合うことを知っていた驚異の羽川委員長でさえ欺いているとは、戦場ヶ原も大したタマだ。そういう意味では、戦場ヶ原は誰にも見せない顔を僕だけに見せてくれているということになるんだろうけれど……あんまり嬉しくないなあ、それ。特別とか特例とかって、そういう意味じゃないわけだろう。

这么说来,羽川还不知道战场原的本性……班上其他同学先不管,没想到战场原居然连羽川班长都骗倒了,实在是了不起。对方可是在我们交往前,就预料到我们会交往的厉害人物啊。这是不是代表战场原只让我看到她不为人知的一面呢……这点我还真是高兴不起来。因为这不代表她认为我是特别或特例的存在吧。

いや、でも、僕達の付き合いの現状は、おおよそそんな感じなのか。手料理すら作ってくれないというのだから、爛れた付き合いになんて、なりようがない。  

可是我们交往的现状,大概就是那种感觉吧。她都不肯为我洗手作羹汤了,更别提我们会有不纯的关系。

…………。

ああ。  拒絶された──ということは、中学時代がどうあったところで、神原は、戦場ヶ原の本性を、はっきりと知っているということになるんだ。そしてそれでも尚、今、僕に声をかけてきたということは、神原は──

啊啊!不管她们国中时代的关系如何,神原曾经被战场原拒绝过,这代表神原已经很清楚知道她的本性。而且神原现在还跑来跟我搭话,这表示她——

「戦場ヶ原さんは、難しいよ?」

「战场原同学很难对付喔?」

羽川は、唐突に、そう言った。

羽川冷不防开口说。

そういえば──羽川には、前にも、似たようなことを言われたことを、僕は思い出す。勿論、羽川の言うことだから、それは戦場ヶ原ひたぎの、攻略難易度のことを指しているわけではないのだろう。

听她这么一说我才想到,先前羽川也曾对我说过类似的话语。当然,从羽川口中说出来的话,应该不会指战场原黑仪的攻略难度吧。

「それこそ、あんまり知った風なことを言うつもりはないけれど、戦場ヶ原さん、難攻なんこうらくのセルフフィールド、作っちゃってるからさ」

「唯独这件事,我不想说得自己好像很清楚一样,不过战场原同学在自己身旁张开了难攻不落的自我领域。」

「………………」

「阿良々木くんも、持ってる奴ね。強弱はともかく、セルフフィールド自体はプライバシーとかいって、誰でも持っているものだけれど、戦場ヶ原さんや阿良々木くんは、そこで更に、籠城戦を繰り広げちゃってるわけ。そういう人は、人付き合いそのものを鬱陶しいと思ってることが多いから。思い当たること、あるでしょ?」

「那东西阿良良木你也有。先不管强弱问题,自我领域本身是一种隐私,任何人都会有,不过战场原同学和你,却是更进一步把自己关在虫茧里头。这一类的人很多都对人与人之间的交际感到厌烦。你应该心里有数吧?」

「僕のことか? それとも、戦場ヶ原のことか?」

「你是在说我?还是在说战场原?」

「両方」

「你们两个都是。」

「まあ、あるね」

「算有吧。」

それはそうだ。

确实没错。

しかし、そうだとするなら。

但就算如此。

「でもね、阿良々木くん。人付き合いが嫌いなのと、人間嫌いは、違うんだよ?」

「可是呢,阿良良木。讨厌和人交际,并不等于讨厌人吧?」

「なんだよ。そんなの、一緒じゃないのか?」

「啥啊。这不是一样的意思吗?」

「『世の中に 人の来るこそ うるさけれ37』」

 「『人世之间,只因有人诞生,而吵杂不已』。」

落ち着いた、静かな声で、羽川は言った。

羽川用平稳沉静的声音说。

『とは言ふものの お前ではなし』……いくら阿良々木くんが国語苦手だって、このくらいなら、言ってる意味、わかるよね? それに、私が言いたいことも、わかってくれるよね?」

「『话虽如此,邢人绝非是你』……就算阿良良木你不擅长国文,这种程度你应该听得懂吧?而且,你也懂我想说的意思吧?」

「……わかった」

「……我懂了。」

そう答えるしかない。

我只有如此回答的份。

まるで子供扱いなのは、業腹ごうはら38だけれど。

虽然她把我当小孩,让我有点生气。

それでも──お礼を言う他に思いつかない。

但是……我除了道谢外,想不到其他的词汇。

「サンキュ。悪かったな、わけわかんないことで時間取らしちまって」

「Thank you。抱歉,我说了一些奇怪的话耽误了你的时间。」

「わけわかんなくはないよ。大切な彼女のことを知りたいと思うくらい、普通のことだもん」

「这一点都不奇怪啊。想了解自己最重要的女朋友,是很普通的事情吧。」

羽川は言う。

羽川说。

平気でそういう照れくさいことを言う。

她毫不介意就说出那种会让人害羞的话。

全く、委員長の中の委員長。

真不愧是班长中的班长。

「でも、あんまり恋人の昔を探るみたいなことは、しない方がいいとは思うよ? 興味半分面白半分にならないよう、阿良々木くん、その辺りは、きちんと節度を守ってね」

「可是我觉得,还是不要太常打听女朋友过去的事情比较好吧?你要有点分寸,不要因为好玩而随便乱打听喔。」

最後にもう一本、太い釘を刺すようなことを口にしてから、それじゃあばいばい、と続け、そして黙る羽川。

最后羽川贴心地叮咛我后,接着说了一声「那拜拜咯」,随后就沉默不语。

ばいばいと言ったきりどうして電話を切らないのだろうと僕は首を傾げたが、そうだ、僕は春休みに羽川に教えてもらっていた、電話というのは、掛けた方から切るのが礼儀なのだった。

都说再见了为什么还不挂电话?正当我感到疑惑时,这才想到羽川在春假时教过我的电话礼仪。打电话的时候,要让打过去的人先挂才是礼貌。

本当、怖いくらい律儀な奴だ……。

她真是有礼貌到可怕的境界……

そう思いながら、「じゃあな、また明日、学校で」と言って、僕は通話終了のボタンを押した。そして携帯電話を閉じて、尻のポケットに仕舞う。

我心想的同时一边说「那明天学校见」,随后按下通话结束的按钮。接着我盖起手机,放回臀部后方的口袋。

さて、どうしたものか。

这是为什么呢?

戦場ヶ原の言うことや、その態度に対し、当然、かつて同じ立場に立った者として、似たような経験をした者として、一定の理解を示さないわけじゃないのだけれど──僕としてはどうしても、神原の方に、同情的になってしまうな。

我过去和战场原站在同一种立场,有过相同的经验,多少可以理解为何她会用那种态度和话语拒人于千里之外;但是,我现在实在很同情神原啊。

できれば──と思う。

我想,如果可以的话。

それに、もしも、とも。

而且可能的话。

大きなお世話だろうし、余計なお節介だろうし、ありがた迷惑もいいところだろう──いつか戦場ヶ原は、優しさを敵対行為と看做すという、常軌を逸した思想哲学を僕に披露したけれど、これに関しては、優しさとさえ、いえないだろう。

或许是我鸡婆多管闲事,或许会帮倒忙吧。「我会将温柔视为敌对行为。」战场原先前曾对我透露过,她那超乎常理的思想哲学。但我现在要做的不能说是一种温柔吧。

だって、そこには、姑息な計算がある。口にするのも、思うことすら憚られるような、そんな口幅ったい39思惑が。

因为这只是一种权宜上的考虑。这种自以为是的想法,别说化为言语,就连去思考都令我有所顾忌。

でも、僕は思わざるを得ないのだ。

但我却不得不这么想。

戦場ヶ原に、失ったものを取り戻して欲しいと。

我希望战场原能够找回自己失去的东西。

戦場ヶ原に、捨てたものを拾って欲しいと。

我希望她能够拾回自己曾经舍弃掉的东西。

だって。

因为。

それは僕には丶丶丶丶丶丶絶対にできないことだから丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶──

这是我绝对做不到的事情——

「こればっかりは、忍野に相談してもしょうがないことだろうしな……あの陽気な馬鹿野郎は、フォローや事後処理に向いている性格じゃ、ないだろう。まあ、僕も人のことは言えないんだけど……って、あれ」

「这种事情就算和忍野讨论也没用吧……那个爽朗的混蛋,个性上不适合做事后处理,也不是那种会照顾人的家伙吧。不过我也没资格说别人啦……咦?」

ころっと忘れていた大事なことを、ふとした瞬間に、なんのけいもなく思い出すことはよくあるけれど、このときがまさにそうだった。僕は、肩にかけていたボストンバッグのチャックを開けて、中身をチェックする。チェックするまでもなく、その結果はわかっているのだけれど、なんていうか、わるきだった。案の定──戦場ヶ原から受け取ったあの封筒は、ボストンバッグの中になかった。

人们常会在毫无前奏的情况下,突然想起自己不慎忘记的重要事物。现在我正是这种情况。我拉开背在肩上的波士顿包拉链,检查里头的东西。其实我不用检查就已经知道结果,但是我就是想挣扎一下。果然,波士顿包内没有战场原给我的信封。

忍野に渡す仕事料の入った、あの封筒。

那个装有忍野工作报酬的信封。

「座布団の脇に置いたまま、忘れてきちゃったか……あーあ、どうするかな」

「我放在坐垫旁边忘了拿吗……啊——该怎么办。」

お金のことだから早めに済ませておいた方がいいのは確かだが、けれどそんな取り立てて急ぐというわけではないし、明日また学校で会ったときにでも受け取ればいい話ではあるのだが……どうしよう? そんなことはないとは思うけれど、本当はちゃんと服のポケットにでも入れていて、それを、羽川と電話しながら歩いている内に、気付かず落としてしまったという可能性もなきにしもあらずだから、念のために戦場ヶ原に電話をして確認を取った方がいいのか……いや。

金钱方面的问题最好赶快处理比较好,但这又不是特别急的事情,明天到学校见面再跟战场原拿也行……该怎么办?我想应该是不会啦,可是会不会我放在衣服的口袋里,然后刚才边走边和羽川讲电话时不小心弄丢了呢。这的确不无可能,为了安全起见,还是打通电话和战场原确认一下比较妥当……不。

自転車を押しながらの歩きだったから、そんな距離を稼いだわけでもない、ペダルを漕いで戻れば、すぐさま民倉荘に到着するだろう。ならば、今からでも取りに戻る方が正着手せいちゃくしゅだ。時間が時間だから、最悪の場合戦場ヶ原の父親と顔を合わせる羽目になるかもしれないが、しかし、話に聞く戦場ヶ原の父親の多忙さを考えれば、その確率は無視していいほどには低いはずである。

我刚才是牵着脚踏车走路,应该没有走多远。现在骑车回头的话,马上就能到民仓庄了吧。既然这样,现在回去拿才是正确答案。现在时间不早了,最糟的情况下可能会遇到战场原的父亲,但我耳闻战场原的父亲是个大忙人,因此碰面的机率应该低到可以直接忽视吧。

電話で済むと言われれば確かにその通りなのだけれど、戦場ヶ原とは、会えるチャンスには少しでも会っておきたいからな。

的确,我打通电话也能解决眼前的问题。不过只要有机会,我想要多见战场原一面。

アピールの仕方はわからないけれど。

虽然我不知道如何主动。

少しは恋愛気分を味わわせてもらうとしよう。

但我至少能够品尝恋爱的滋味。

「んじゃ、まあ」

「那就走吧。」

サドルにまたがりつつ、自転車の方向を反転させて──

我跨上脚踏车坐垫,同时调头——

僕は、雨が降ってきたのかと思った。

在这瞬间,我以为下雨了。

雫が頰に触れたから、とか、そういうことではなく、自転車を反転させたすぐ先にいた──まるで僕のことを今までずっと尾行していたかのように、すぐ先にいた『人物』の格好が、僕の視界に入ったからである。

不是因为有雨水滴到我的脸颊,而是因为脚踏车掉头后,有一个「人物」就像至今一直在尾随我一样,冷不防地出现在我面前。他身上的穿著,让我有下雨的联想。

『人物』。

「人物」。

上下のあま合羽がっぱ

穿着两截式雨衣。

フードをずっぽり、深く被っている。

雨帽深戴盖住头。

黒い長靴に……左右のゴム手袋。

脚上穿着黑色长靴,左右手戴着橡胶手套。

雨が降っているのならば、それは、その天候に対する完全装備といっていい……ただし、手のひらをかざしてみても、やはり雫一滴、僕には感じられなかった。

要是下雨的话,这可说是对应雨天的全套装备……可是,我伸手到半空中却感觉不到半滴雨水。

空は、星空。

头顶上星空高挂。

郊外の地方都市、その更に田舎町には──月の光を遮る、空を切り取る無粋なものなど、千切れた群雲の他には何もない。

此处为地方都市的郊外,又是乡下小镇——夜空中仅有一片不识趣的云横越而过,除此之外别无他物。

「……えっと」

「……请问——」

あー……。

啊……

わかってる……この展開は、わかってる……よく知っている、よくよく知っている展開だ。春休みに、嫌というほど体験した、あの展開だ……。

我知道……这种场面我知道……我非常清楚,清楚到刻骨铭心。这场面在春假时曾经体验到令我生厌……

僕は、この状況にあまりに似つかわしくない半笑いの表情を、しかし、浮かべざるを得なかった。

我脸上浮现出似笑非笑的笑容。我知道笑容和这状况不大相衬,但我也只能干笑。

場違いではあるが、懐かしいとすら思ってしまうほどの、しっくりくる感覚だ……ゴールデンウィークにおける、羽川との経験も、共に思い出しながら、僕はそう思った。

这么想或许不合时宜,但我甚至有一种怀念的调和感……我回想起在黄金周和羽川的共同经验,同时心想着。

問題があるとすれば……そうだな、春休みとは違って、僕はもう、不死身の身体でもなければ、ましてや吸血鬼でもないということか。

要说有什么问题的话……这个嘛,大概是我现在和春假时不一样,既非不死之身,更不是吸血鬼。

冷静でいられるような状況じゃないんだけど……『これ』が、どういう『相手』なのか、それを見極めるためには、何よりも冷静でなければならない。つまり、ここ数ヵ月の間に、僕も少しは慣れた、場数を踏んだということか──

我在这状况下理当惊慌失措……单为了看清眼前的「这个」是哪一种「对手」,我必须保持绝对地冷静。总之在最近这几个月,我也稍微习惯,有一些经验了——

怪異丶丶に対して丶丶丶丶

对「怪异」。

……母の日、八九寺のときの蝸牛のように、物理的には無害な怪異であってくれれば、助かるのだけれど……だけど、僕の本能が、ここは逃げの一手だと告げている。いや、僕の本能じゃない、僕の身体の中のどこかに巣食う、ざんとして確実に存在している、伝説の吸血鬼の本能が──

……如果这怪异和母亲节——八九寺的蜗牛一样,实际上无害的话,那我就不会有危险……但是现在,我的本能却要我赶快逃离现场。不对,不是我的本能,而是盘据在我体内某处、只剩残渣,但确实存在的吸血鬼本能。

自転車を再度反転させようとして──咄嗟の判断で、その自転車から、僕は転がり落ちるように飛び降りる。

我想将脚踏车再次掉头时——凭借瞬间的判断,我有如滚落般从脚踏车上跳下。

その判断は正しかったが──代償として僕は、大事な大事なマウンテンバイクを、永遠に失うことになってしまった。雨合羽は、眼にも留まらぬ速度で、こちらに向けて跳ねて来て、左手の拳で、僕がぎりぎり飛び退いた後のマウンテンバイクのハンドル部の真ん中あたりを殴りつけ──マウンテンバイクは、激しい竜巻に巻き込まれた重みを持たない紙屑のようにひしゃげ、凹み、ぶっ飛んだ。電柱にぶつかって止まるまでに、その、ついさっきまでマウンテンバイクの形だった物体は完全に、原形すらも失ってしまった。

这个判断是正确的——然而代价却是永远失去了自己最珍惜的越野脚踏车。雨衣怪用肉眼无法捕捉的速度朝我跳来,左手拳头一挥,我急忙闪开惊险躲过后,拳头打中越野脚踏车的龙头正中央——越野脚踏车有如被强力龙卷风吞噬的轻盈纸屑般,整台扁掉变形,飞了出去。在它撞上电线杆前,刚才外形还是越野脚踏车的物体,已经失去了原形。

避けてなかったら──僕がああなっていた。

要是我没躲开——变成那样的人就是我。

のか。

……是吗?

拳の巻き起こした風圧だけで、服が裂けている。

光是拳头刮起的风压,就割碎了我的衣服。

同様に、ボストンバッグのスリングが切れていて、どすんと、僕の肩から足元へと、落ちた。

波士顿的背带也同样被割断,咚隆一声从我的肩上掉落到脚边。

「……だ、段違いだ」

「……差、差太多了。」

苦笑いすら──さすがに引く。

我连苦笑也消失了。

直撃しなくとも、ただ巻き込まれるだけで、この驚異的な気配……伝説の吸血鬼とまでは到底いかないにしたって、それを連想するレベルの圧巻さ……物理的恐怖を伴う怪異。

不用直击,光是被削到而已,这种惊异的感觉……程度虽然不及传说中的吸血鬼,却能让我联想到她……这怪异伴随着实际的恐怖。

母の日なんてとんでもない。

这和母亲节的情况截然不同。

これは間違いなく、春休みだ。

肯定和春假的时候一样。

自転車は失った。

现在我失去了脚踏车。

それでも、走って逃げることは可能だろうか?

我有可能靠双脚奔跑,逃离这里吗?

雨合羽の今の動きを見る限りにおいて……いや、見えなかったのだけれど、つまりそれは見えないほどの速さだったということだから、僕の足では逃げ切ることなんて、不可能だ。

从雨衣怪刚才的动作来看……更正,我刚才根本看不见,既然他速度快到我看不见,我自然不可能靠两条腿逃离此地。

それに。

况且,

たとえ逃げるためであっても、この怪異に、背中を向けたいとは思えない──この雨合羽に背中を向けることが、目を逸らすことが、何より怖い。それは、剝奪することができそうもない、根源的な恐怖だった。

就算是为了逃走,我也不想背对这个怪异。背对这个雨衣怪或目光离开他,比任何事物都还要恐怖。这是内心深处无法抹灭的恐怖感。

早くも前言撤回だ。

我马上就收回前言。

慣れられるものか、こんな感覚。

这种感觉哪能习惯。

どれほどかずを踏んでも関係ない。

跟经验的多寡也没关系。

思い出すだけでも、御免だった。

我甚至不愿去回想。

くるぅり、と、雨合羽がこちらを向いた。フードを深くかぶっているため、その内側の表情は窺えない──が、しかし、表情がどうとかいうよりも、そこは、その部分は、深い洞にでもなっているかのようだった。暗く、暗く──全くもって、何も窺えない。

雨衣怪转身面向我。他雨帽深戴,我无法窥视帽内的表情。不过表情并非重点,他帽内的部分有如一个深不见底的窟窿。一片漆黑,完全看不见任何东西。

世界から欠け落ちているようだった。

有如从世界中消失一般。

世界から抜け落ちているようだった。

有如从世界中脱落一般。

そして、雨合羽は、僕に向かってきた。

接着,雨衣怪朝我攻了过来。

左拳。

左拳。

反射神経だけでかわせるような速度ではなかったが──しかし、さっきマウンテンバイクを破壊したときと同じく、まるっきりの直線的な動きだったため、初動の段階で、覚悟を決めた意志を持って反応できたため、またもすれすれで避けられた──避けた左拳は、あっさりと、当然のように、僕の背後の、ブロック塀を貫通した。カタパルトで40もぶちかましたかのような有様だった。

这速度无法只靠反射神经来闪躲,不过就跟刚才打坏越野脚踏车时一样,它的路径完全是一直线,因此在他做出挥拳的起步动作时,我下定决心做出反应,再次惊险地躲过。避开的左拳有如理所当然般,轻易地贯穿了我身后的水泥墙。这景象就像被弹射器打中一样。

その悪質な冗談みたいな破壊力に驚愕きょうがくする一方で、雨合羽がブロック塀から左手を抜くまでのタイムラグを利用して体勢を立て直せるかと思ったのだが、つまり、いうなら瓶の中に手を突っ込んだ猿みたいなイメージで、雨合羽に数秒の隙が生じるかと思ったのだが、そんな計算、甘い甘い、通じない。ブロック塀は、雨合羽が左拳で貫いたその部分から、堰堤えんてい一穴いっけつを中心に決壊けっかいするかのように、数メートルにわたってがらがらと、派手な音を立てて崩れていく。

这破坏力有如一种恶劣的玩笑,我感到惊愕的同时,打算利用雨衣怪把手从水泥墙抽出来的延迟时间,重整态势。简单来说,他现在就像把手伸入瓶中的猴子,我以为这会让雨衣怪产生几秒钟的空档,但我的估计实在太天真,完全不管用。水泥墙周围数公尺,有如拦河坝以一点为中心溃堤般,发出巨大的声响逐渐崩落。

懐かしい風景。

好怀念的光景。

タイムラグなんて一瞬もなかった。

根本没有一丝的延迟时问。

身体全体を捻るようにして、その左拳がそのまま直接、僕に向かってくる──今度は初動もモーションも何もない、ただそのままの位置から、僕の身体を思い切り殴りつけるだけ。

雨衣怪扭转全身,左拳直接朝我打来,这次没有任何起步动作和预兆,只是直接从刚才的位置,猛力贯进我的身体。

カタパルト。

弹射器。

回避どころか防御すら、間に合わなかった。

别说是闪躲,我连防御都来不及。

どこを殴られたのかも、わからなかった。

我也摸不清楚身体哪里被击中。

視界が一瞬で回転し、二回転三回転四回転、思考回路が揺さぶられるように、激しい重力加速度が前後左右にかかりまくり、世界全体が歪んで歪んで、そして、僕の身体はうつ伏せに、アスファルトの地面に、叩きつけられる。

我的视野瞬间回转,两圈、三圈、四圈,剧烈的重力加速度施加在我身体的前后左右,晃动了我的思考回路,我眼中的世界扭曲变形,随后我的身体朝下,狠摔在柏油路上。

全身をり下ろされる気分を味わった。

我体验到全身和柏油路摩擦的滋味。

磨り下ろされる大根の気分。

就像被擦碎的萝卜泥一样。

だが──痛い。

但是……好痛。

痛いということは、まだ、生きている。

会痛,就表示我还活着。

全身痛いが、一番痛いのは腹部──殴られたのは腹筋のようだった。慌てて起き上がろうとするが、足ががくがくと震え、うつ伏せの状態から表に返るのが、やっとだった。

我全身疼痛,但最痛的是腹部,刚才被打中的地方似乎是腹筋。我急忙想起身,但我双脚颤抖,光要翻身仰躺就已经用尽吃奶的力气。

雨合羽の姿が、やけに遠い。遠く感じる。錯覚かと思ったが──そうじゃなく、実際に遠い。どうやら、たかが一撃で、えらい距離を吹っ飛ばされたようだった。まさしくカタパルトだ。

雨衣怪的身影,离我有点远。感觉很远。我以为是自己的错觉,然而不是,是真的很远。看来刚才不过这么一拳,就让我飞得大老远。真不愧是弹射器。

腹の中身が──気持ち悪い。

我的腹部内侧——很不舒服。

この種類の痛みにも……覚えがある。

这种感觉的疼痛……我也有印象。

骨じゃない。

不是骨头在痛。

多分、いくつか、内臓が破裂している。

大概有几处的内脏破裂了。

だが、中身はそのように破壊されても、確認してみれば、僕の五体の形は、無事というなら無事のようだった。ああそうか、自転車と人間とじゃ、構造が違うから、同じように殴られたところで、同じように紙屑みたいな有様にはならないのか……ナイス関節、ビバ筋肉。

我虽然受了内伤,但经我确认之后,四肢的形状可说是完好无缺。原来如此,脚踏车和人类在构造上有所差异,就算同样被打中,身体也不会变得像纸屑那样吗……关节好棒,肌肉万岁。

とはいえ……。

话虽如此……

このダメージじゃ、やはりすぐには動けない。

受到这种冲击,我一时之间根本动弹不得。

そして、雨合羽は、僕に近付いてくる──今度は、目に、じっくりと映る、焼き付くようなゆっくりとした、のびやかな速度で。あと一撃、たとえそうでなくとも二、三撃、僕を殴りつければ、それで決着である──何も急ぐ必要も焦る必要もないということだ。

而雨衣怪则步步向我靠近。这次我看得很清楚,他的身姿悠然,不疾不徐的速度令我留下深刻的印象。他只要再给我一击,不行的话再两、三击,就会分出胜负,所以他根本没有着急的必要。

まあ、その通りだろう、妥当な判断だ。

嗯,正如这样,妥当的判断。

けれど……なんなんだ?

可是……为什么?

この、まるで通り魔のような『怪異』……自転車を潰し、ブロック塀を砕くあのパワーからして、どれほどにひとがたであったところで、あれが『人物』でないことは最早あからさまだが、しかし──その『怪異』が、どうして僕を襲う?

这个像拦路魔一样的「怪异」……从他打烂脚踏车、破坏水泥墙的那股力量来看,就算他再怎么人模人样,也绝对不可能是「人类」,这点一开始就很清楚——但是,这「怪异」为何要袭击我?

怪異にはそれに相応しい理由がある。

每个怪异都有适当的理由。

意味不明なばかりではない。

不会做出莫名其妙的举动。

合理主義──理に合する。

他们是合理主义者——每个行为都会有理由。

それが、僕が忍野から学んだ、あの美しき女吸血鬼との付き合いから学んだ、最大の収穫だった──なればこそ当然の帰結として、この怪異にも、必ず、理由があるはずなのに、それが僕には、全く思い当たらない──

这是我从忍野,以及和那位美女吸血鬼打交道时,学到的最大收获。那么理所当然,这怪异会攻击我也一定有理由,但我却完全想不到!

原因は何なんだ。

原因何在。

今日あったことを思い出す。

我回想今天经历过的事物。

今日会ったひとを思い出す。

我回想今天遇见过的人物。

八九寺真宵。

八九寺真宵。

戦場ヶ原ひたぎ。

战场原黑仪。

羽川翼──

羽川翼。

二人の妹に、担任の教師、顔も朧なクラスメイト達、それに──

两个妹妹、级任老师、五官模糊的同学们,还有——

順不同に頭の中に名前を挙げていき、

我不按顺序在脑中列举名字时,

最後に僕は、神原駿河の名を思い出す。

最后我想到了神原骏河。

「…………!」

そのとき──雨合羽が方向転換した。

这时,雨衣怪改变了方向。

その、ひとがたの身体を、真逆に転換させた。

将那人形的身体,整个转身向后。

そうするや否や、瞬間、駆け出して──

动作结束的瞬间,他开始奔跑——

あっという間に姿を消した。

一眨眼间就消失得无影无踪。

呆気に取られるほどの、それは、唐突さだった。

这突如其来的举动,叫人愕然。

「え……ええ?」

「诶……诶诶?」

どうして、いきなり……?

为何这么突然……?

全身を支配する痛みが、鈍いものから鋭いものに変化していく中、僕は空を見上げる──やはり星空、月が綺麗に映えている。

在支配全身的疼痛,从钝痛逐渐转为锐痛之间,我仰望夜空。天空依旧星光明媚。

自分の身体のあちこちから匂ってくる、ほのかな血の匂いが、酷く不似合いな風景だった。

我在身上各处隐约嗅到了血味,这味道相当不符合现在的光景。

口の中に、濃厚な血の味。

我的口中也有浓厚的血味。

やはり内臓が傷んでいる……はらわたがほどよい具合にかき混ぜられている。だがまあ、これなら、死ぬほどではないな……。それに、病院に行かなければならないほどでもない。既に不死身の身体ではなくなったとはいえ、それでもある程度の治癒力は残されている、一晩安静にしていれば、そこそこ回復するだろう……命からがら、助かったってところか……。

内脏果然受伤了……内脏适当地纠结在一起。但这种程度还死不了……而且也用不着去医院。虽然我已经非不死之身,但还有某种程度的恢复力。只要静养一晚,差不多就能恢复原状吧。这次九死一生,平安脱险了吗……

しかし……。

但是……

殴られる直前の記憶が、不意に、特に理由もなく、蘇る。雨合羽の左拳が、僕を目掛けて──その拳だけが、クローズアップされて、フラッシュバックする。自転車を殴ったときなのか、それともブロック塀を貫いたときなのか、摩擦で破れてしまったのだろう、ゴム手袋の、指の付け根の部分に並んで四つの穴が生じていて──やはりそこはフードの内側と同じく洞のようで、抜け落ちているようで欠け落ちているようで、しかし。

被击中之前的记忆,突然毫无理由地在我脑中复苏。雨衣怪的左拳朝着我飞来——现在我只仔细回想那个拳头。他手上的橡胶手套,在手指的衔接处有四个小洞,或许是在打烂脚踏车或贯穿水泥墙时弄破的,那里就和雨帽中的窟窿一样,何如脱落消失股,但是——

あの左拳の中身は。

那个左拳的真身是。

何かの、けだものの──

是某种野兽的——

「阿良々木くん」

「阿良良木。」

上から、声をかけられた。

上方突然传来呼唤声。

氷点下ほど冷えた、平坦な声。

一个冷若冰霜的平淡声音。

見れば、同じく冷えた、何の感情もこもってなさそうな眼で、僕を見下ろしていたのは──戦場ヶ原ひたぎだった。

仔细一看,有一个人用同样冷若冰霜、不带任何感情的眼眸,正在俯视我。是战场原黑仪。

「……よお、ご無沙汰」

「……哟!好久不见。」

「ええ、ご無沙汰ね」

「嗯,好久不见。」

一時間足らずの、ご無沙汰だった。

相隔不到一个小时的好久不见。

「忘れ物、届けにきたんだけれど」

「我把你忘记的东西送过来了。」

言ってから、戦場ヶ原は右手に持った封筒を、僕の眼前に、ぐいと、押し付けるように示す。そんな近付けられなくったってわかる、それは、戦場ヶ原から忍野へと支払われる、十万円の仕事料が入った、あの封筒。

战场原说完,把右手上的信封拿到我的眼前。不用拿这么近我也知道,那是装有十万块的信封,是战场原要付给忍野的报酬。

「私が渡したものをこうも堂々と忘れていくだなんて、極刑きょっけいものの罪悪よ、阿良々木くん」

「你居然随便忘记我交给你的东西,真是应该处以极刑呢,阿良良木。」

「ああ……悪かったよ」

「嗯……抱歉。」

「謝っても許さないわ。だから精一杯なぶってあげようと思って追いかけてきたのだけれど、既に自分で自分を罰していたとは、阿良々木くん、なかなか見上げた忠誠心だわ」

「你道歉我也不原谅你。所以我才追上来想要好好凌虐你一顿的说,没想到你居然自己处罚自己了,阿良良木你的忠诚心真叫我钦佩。」

「自分で自分を罰する趣味は僕にはねえ……」

「我没那种兴趣自己处罚自己……」

「隠さなくたっていいのよ。その忠誠心に免じて、半分くらい許してあげるから」

「你不用隐瞒了。我就看在你那忠诚心的份上,给你减刑一半吧。」

「…………」

減刑げんけいはされても免罪はされないのか。

减刑还不能获判无罪吗?

戦場ヶ原裁判所は厳しい戒律かいりつをお持ちのようだ。

战场原法院还真是戒律严苛。

「冗談はともかく」

「先不开玩笑了。」

戦場ヶ原は言う。

战场原说。

「クルマにでも轢かれたのかしら? あっちで、阿良々木くんがとても大切にしていた自転車らしきものが、大破していたようだけれど。大破していたというか、電柱に突き刺さっていたというか。コンボイにでも轢かれないと、あんなことにはならないでしょう」

「你是被车撞到的吗?那边有个东西面目全非,好像是阿良良木你很宝贝的脚踏车。或许应该说它整台插在电线杆上比较贴切。如果不是被车队撞到,应该不会变成那样吧。」

「えーっと……」

「这个嘛……」

「ナンバーは覚えているでしょうね。私が仕返しをしてきてあげるわ。クルマを完全にスクラップにするところから始めて、自転車で轢き殺してくださいと土下座するまで、ドライバーを痛めつけてきてあげる」

「你记得对方的车牌吧。我会替你报仇的。我会先把他的车子整台拆掉,然后痛扁驾驶一顿,直到对方跪下来求我用脚踏车辗死他为止。」

物騒なことを普通に言う戦場ヶ原ひたぎ。

战场原将如此恐怖的事情,稀松平常地挂在嘴边。

そのいつも通りさに、僕は、安心する。生きている実感を、戦場ヶ原の毒舌で得ることになるというのは、おかしくもあり面白くもありって感じだけれど……。

看到她一如往常的样子,我放下了心来。我居然从战场原的毒舌中得到活着的实感,真让我觉得既滑稽又有趣……

「……いや、僕が一人で転んだだけだよ。前方不注意でな……電話しながら、ペダルを漕いでいたら……電柱に、激突しちゃって……」

「……没有,是我自己一个人摔倒的。我没注意看前面……一边讲电话一边骑脚踏车……结果就撞到电线杆……」

「あらそう。なら、そうね、せめて電柱だけでも壊しておきましょうか?」

「是喔。既然这样,对了,那我就去把电线杆打烂吧?」

八つ当たりだった。

你那是迁怒。

逆恨みですらない。

连挟怨报复都谈不上。

「近隣の住民のみなさんに迷惑だろうから、それはやめておいてくれ……」

「那样会给附近的居民添麻烦,所以算了吧——」

「そう……けれど、あんな丈夫そうなブロック塀をも破壊する勢いで激突して、その程度の怪我で済むなんて、阿良々木くん、とても身体が柔らかいのね。感心するわ。その身体の柔らかさは、いつか役に立つときが来るでしょうね。えっと、救急車は……いらないんだっけ?」

「是吗……不过你连那么坚固的水泥墙都撞坏了,居然只受到这点程度的伤,看来阿良良木你的身体很柔软呢。真叫我佩服。你这柔软的身体,总有一天会派上用场的。对了,要帮你……叫救护车吗?」

「ああ……」

「啊……」

戦場ヶ原も、僕とは、会えるときには少しでも会っておきたいと思って、わざわざ手間をかけて、その封筒を持ってきてくれたのだろうか? バスを使って、僕の家にまで届けてくれるつもりだったのだろうか。だとすれば、僕としては、その行為だけでは、それでもまだツンデレというほどではないにしたって、単純に、浮かれちゃいそうでは、あるよな……。

战场原是不是也想多和我见面,所以才刻意花时间把信封拿过来给我的呢?她原本是打算坐公交车送到我家去的吗?真是这样的话,虽然光是这样的举动还称不上是傲娇,但我还是觉得高兴……

それに、お陰で助かった。

而且,多亏她的出现,我得救了。

図らずも。

不用想也知道。

雨合羽は、戦場ヶ原の姿を捉えて──姿を消したのだろうから。

因为雨衣怪看到战场原出现,就消失不见了。

「しばらく休んでりゃ、すぐ動けるようになるさ」

「我休息一下就好,很快就能动了。」

「そう。じゃ、そんな阿良々木くんに大サービス」

「是吗,那我就给躺在地上的阿良良木一个大优惠吧。」

ひょいっと──

突然——

戦場ヶ原は、仰向けに倒れている僕の頭を、跨ぐようにした。ちなみに、戦場ヶ原の今日のファッションは、先にも触れた、長めのスカート。ストッキングは穿いていない、すらりとした生足で──そしてこの場合、この視点からでは、スカートの長さは、あんまり関係がなかった。

战场原跨站在我的头上。附带一提,刚才也说过战场原今天的穿着是一件长裙。修长的美腿没有穿裤袜。而现在这个情况,从我的角度来看,裙子的长度根本不重要。

「動けるようになるまで、幸せな気分でいなさいな」

「你就沉浸在这幸福的气氛当中,直到你能动为止吧。」

「…………」

本当を言うと、もう、立ち上がるくらいのことは、できそうなのだけれど──まあ、ちょっとの間だけ、考えごとでもすることに、僕はした。僕の考えごとなんて、生産的な意味を持つわけではないのだけれど……それでも、とりあえず。

老实说,我已经可以起身了——不过我决定继续躺着,思考一些东西。虽然我的思考不是创造性的动词……但我还是——

とりあえず、戦場ヶ原のことと。

暂且思考了战场原的事情。

明日のことを、考えた。

以及明天该做的事。

005#

神原駿河の家は──学校の校門から数えて自転車で三十分ほどの距離にあった。そしてそれは、駆け足でも、三十分ほどの距離だった。最初、後ろに神原を乗っけての二人乗りをしようと思ったのだけれど、それは神原にそれとなく辞された。二人乗りは危険だし、そもそも法律違反だと。まあ、それはそう言われればその通りだし、あるいは後ろに乗って、僕に抱きつく形になることに対して、神原は抵抗があるのかもしれなかった。ならば僕が神原に合わせて、自転車を押して歩こうか、あるいは自転車を学校に置きっぱなしにして行こうかと考えたのだけれど、気にせず乗ってもらって構わないと、神原は言って、じゃあどうするつもりなのかと思ったら、当たり前のように、神原は「では、案内する」と、その両脚で駆け出したのだった。僕をストーキングしているときもそうだったが、この神原駿河、『徒歩』や『自転車』や『自動車』、『電車』という移動手段の候補の中に、同列のものとして『駆け足』を入れているようだった。そんな奴は体育会系の中でも、多分、珍しいのではないかと思う。『たっ、たっ、たっ、たっ、たっ、たっ』と、小気味のよいリズムで僕の自転車を先導する神原──そして左手の、真っ白い包帯。目的地に到着したところで、神原は心なし少々の汗をかいている程度で、呼吸一つ乱れていなかった。

神原骏河的家,从校门口骑脚踏车过去,大约要三十分钟左右。而用跑的也一样是相同的时间。一开始我原本想载神原,但她婉拒了。她说两人共乘很危险,而且法律上也不允许。她说得的确没错,也或许神原对坐在后座抱住我这件事情有抵抗感吧。既然这样,我原本想说要配合神原,要不牵脚踏车用走的,要不就把车放在学校,但神原却要我骑车过去不用在意她。我正想说那你要怎么办时,神原开口说:「那我来带路吧。」接着很理所当然地,用双脚开始奔跑。神原骏河在跟踪我的时候也一样,她把「跑步」列入自己的移动方式之一,和「徒步」、「脚踏车」、「汽车」、「电车」等选项同格。这种人在体育系当中,我想应该不稀奇。「咑、咑、咑、咑、咑、咑!」踏着愉悦的旋律,在前方替我脚踏车领路的神原——还有她左手的绷带。当我们抵达目的地时,神原只稍微流了一点汗,呼吸丝毫不乱。

立派な日本家屋だった。

在我眼前是一栋美观的日式房屋。

如何にも歴史がありそうな感じ。

看起来相当有历史。

『神原』という表札が、門扉にあがっている以上、ここが神原の家であることは間違いないのだろうけれど、なんだか、中に入ることを躊躇してしまう、重厚な空気のある屋敷である。

既然门上挂着「神原」的门牌,那这里应该是神原家没错,但这房屋却有一种持重的空气,会让人犹豫是否该进入屋中。

とはいえ、入らないわけにはいかない。

但是,我没办法不进去。

社会科の見学授業でどこかの神社仏閣ぶっかくでも訪れたかのような、そんな名状しがたい気分を味わいながら屋敷内にお邪魔して、ししおどし41の見える庭に面した廊下を歩いた先の、神原の部屋へと、障子を引いて、通された。

我就像在参加社会科的校外教学,要去看某处的神社佛寺一样,抱着难以言语的心情登门打扰,在神原的带领下走过面向庭院——当中可见竹筒敲石的造景——的走廊,拉开眼前的拉门,来到她的房间。

……よくこんな部屋に、大して親しくもない学校の先輩を通せたものだなというような、そんな有様の部屋だった。

……你还真敢带不是很熟的学长,来这种房间啊。这是我看到房内的景象后第一个感想。

布団は敷きっぱなし、服は脱ぎ散らかしっぱなし(下着含む)、本は教科書も小説も漫画も含めて裏向きに開かれてあったりなかったり、倉庫でもあるまいし段ボール箱が部屋の端に山積みで、何より酷いのは、ゴミがゴミ箱にも入れられず、その辺の畳の上に無造作に、あるいは精々、近所のスーパーのビニール袋に詰め込まれ、ただ放置されていることだ。いや、どうやらこの部屋には、そもそもゴミ箱という概念を与えられている容器が存在しないようである。

一床棉被铺在地上没收,衣服散落一地(包含贴身衣物),一堆书籍包括教科书、小说和漫画,有些书面朝上盖在地上。这房间不是仓库,角落却堆满了瓦楞纸箱。而更可怕的是垃圾没有丢进垃圾桶内,被随意丢弃在榻榻米上,要不充其量就是被塞进附近超商的塑料袋内,随兴丢在一旁。不对,追根究底来说,这房间内根本没有半个称得上是垃圾桶的容器。

十二畳ほどの広い部屋のはずなのに。

这宽敞的房间应该有六坪大。

足の踏み場もなく、まず一歩が踏み出せない。

然而现在却毫无立足之地,让我无法踏出第一步。

「散らかっていて申し訳ないな」

「抱歉我的房间很乱。」

振り向いて、胸の前に右手を置き、邪気なくにっこりとした笑顔で、神原駿河は、はきはきとそう言った。なるほど聞きようによっては状況に即した言葉なのかもしれないが、しかしその台詞は、整理整頓がある程度しっかりとされた部屋に人を通すときに謙遜で言う言葉だと、僕は思った。

神原骏河转过头将右手放在胸前,用天真无邪的笑脸爽快地说。原来如此,这句话的确很符合现状,但我想,这句应该是用在带客人到整理得还算干净的房间时,所说的客套话吧。

上は洪水下は大火事、なーんだ。

上面是洪水,下面是大火灾,答案是什——么?

言いえて妙だった。

这话形容得还真妙。

うわあ……。

呜哇……

生理用品まで転がってやんの……。

地上竟然还有生理用品……

僕は思わず目線を伏せる。

我下意识压低视线。

見ていたら、もっと見たらいけないものが、ごろごろ出てきそうな気がする……自分に自信があるのは立派なことだとは思うが、それは羞恥心がないのとは違うぞ、神原駿河……。

我觉得再继续看下去,会看到一堆更不应该看到的东西……对自己有自信是很棒,但有自信和没有羞耻心是两码子事啊,神原骏河……

ああ。

啊啊!

そういうところ、戦場ヶ原に通じるのな……。

这一点,套在战场原身上也通用……

もっとも戦場ヶ原の場合、部屋の中にはホコリ一つ落ちていなかったのだけれど……こいつ、性格のこともそうだけれど、中学時代の戦場ヶ原のパーソナリティから多大なる影響を受けて、その所為で却ってキャラクターが駄目になっちゃっているような気がする。

只不过战场原的房间里没有一粒灰尘就是了……这家伙在国中时代包含个性方面等,都受到战场原人格的深远影响,我觉得这反而让她的性格整个泡汤了。

「遠慮しなくていいんだぞ? よく知らない女の子の部屋に入るのに躊躇する阿良々木先輩の繊細さには素直に感じ入るが、今はそんな場合でもないだろう」

「学长不用客气喔。我们还不是很熟,所以我知道学长进去之前会犹豫,我也感觉到学长纤细的心情,可是现在不是在意这些的时候吧。」

「……神原」

「……神原。」

「なんだ?」

「什么事?」

「今がそんな場合じゃないのは重々わかっているんだが……それでも頼む、お願いがある」

「我很清楚现在不是在意这些的时候……不过,我还是想拜托你一件事。」

「いいぞ。なんでも言ってくれ。阿良々木先輩の頼みを断る私ではない」

「好啊。请尽管开口。我不会拒绝学长的要求的。」

「一時間、いや、三十分でいいから……僕にこの部屋を掃除するための時間をくれ。それから、でかいゴミ袋を」

「一个小时,不,三十分钟就好……可以让我打扫一下这个房间吗?然后再给找一个大垃圾袋。」

別に潔癖症のつもりはないけれど……僕だってそこまで、自分の部屋を綺麗にしているわけじゃないけれど、これはあまりに酷い……残酷とすら、言っていい。神原は、僕が一体何を言っているのかまるで理解できないというようにきょとんとしていたが、しかし、逆に言えば特に反対する理由もなかったのだろう、「わかった」と、ゴミ袋を取りに行ってくれた。

我没有洁癖,而且我自己的房间也没多干净,可是眼前这幅景象实在太超过……甚至可以说凄惨。神原愣了一下,似乎完全搞不清楚我的用意,但反过来说她也没有反对的理由,「我知道了。」她说完后,便去拿垃圾袋。

中略。

中略。

と、いうか。

应该这么说。

無論、神原の部屋の惨状は三十分程度でどうにかなるような生易しいものではなかったが、それに、そうはいってもやっぱりよく知らない女の子の部屋ということで、倫理的あるいは道義的に手をつけていいところと駄目なところがあったので、散らばっているゴミを一つにまとめ、本や雑誌を整理する(といっても、神原の部屋には本棚がないので、大きさ別に積み上げるだけだが)程度の、四角い部屋を丸く掃くようなある種適当、いい加減な清掃活動だったけれど、それでも最後に、布団を畳んで押入れに仕舞い込み、衣服を折りたたんで隅に寄せれば(簞笥どころかハンガーすらもなかった)、なんとか見られるくらいにはなったというか、少なくとも、僕と神原が座って向かい合えるくらいのスペースを作ることはできた。

神原房间的惨状处理起来没这么简单,当然不可能只花三十分钟就收拾干净,而且不管怎么说我跟她还不是很熟,房间内有些地方在伦理上或道义上我可以去碰,有些则反之,因此我只是将散乱一地的垃圾收集起来,把书本和杂志整理好(话虽如此,神原的房间内没有书架,因此我只是按大小把它们堆好而已),适当地、马马虎虎地将正方形的房间大致上扫过一次。不过最后,我把棉被折好收进壁橱,然后将衣服折好放到角落后(这里别说衣橱,连个衣架也没有),这才变得像样些,至少有空间可以让我和神原面对面坐下。

「見事だな、阿良々木先輩。私の部屋の畳とはこういう色をしていたのか。床が見えたことなど、果たして何年ぶりだろうな」

「你实在太厉害了,阿良良木学长。原来我房间的榻榻米是这种颜色的啊。我不知道已经有几年没看过地板了。」

「年単位なのかよ……」

「用年来计算的吗……」

「感謝する」

「感谢您。」

「……話がついたら、一日がかりで……いや、泊りがけで片付けようぜ、この部屋……今度は本格的に、洗剤とか染み抜きとか、一式揃えて持ってくるからさ……」

「……等事情解决之后,我会花一整天的时间……不,我会住下来帮你整理的。下次我会带一套像样的洗洁剂和去污剂过来的……」

「気を使わせてしまって申し訳ないな、阿良々木先輩。私はバスケットボールくらいしか取り柄のない女だから、こういう、片付け後片付け、始末後始末みたいな行動は不得手なのだ」

「抱歉让学长费心了。我是一个只会打篮球的女生,像这种打扫整理善后之类的东西,我最不擅长了。」

「…………」

自信たっぷりなにこにこ笑顔でそんなことを言われても困る……。三十分間、全く手伝おうとする素振りを見せず、廊下でつくねん42と所在なさげにしていたところを見ると、神原は面倒とか横着おうちゃく43とかそういうことではなく、本当に整理整頓が苦手なのだろうが、しかしそれでも、別に僕の関知すべきところではないけれど、神原をスター扱いしている学校の連中には、絶対に見せられない、見せてはいけない景色だったことは間違いがない。こいつ、まさかクラスの友達とか、家に呼んでないだろうな……友達ならまだしも部活の後輩とかだったら、最悪、トラウマになってしまうぞ。ゴミ袋に詰めたものの中には、炭酸飲料の握りつぶされた空き缶やスナック菓子の袋とかインスタント食品のカップとかも少なからず混ざっていたし……全国大会クラスのスポーツ少女がそんなもん飲み食いしてんじゃねえよ。

你笑容满面、一脸自信地跟我说这些,我也会很困扰……从她刚才那三十分钟都在走廊上发呆闲晃,完全没有打算帮忙这一点来看,神原不是怕麻烦或厚脸皮,而是真的不擅长打扫环境。话说回来,这虽然不是我该关心的地方,但刚才的光景,肯定不能让那些在学校把神原当明星的人看到。这家伙该不会有叫班上的朋友来家里过吧……朋友的话还无妨,如果是社团的学妹,在最糟的情况下可能会留下心理创伤吧。刚才我塞到垃圾袋里的东西中,混有不少被捏扁的碳酸饮料空罐、零食包装袋,以及快餐食品的杯子……全国大赛等级的运动少女,别吃那种东西啦。

有名人のちょっと抜けてる的なエピソードというのは、むしろ好感を持たれる理由になることもあるのだが、この場合、どう考えても行き過ぎだった。どう頑張っても、そのキャラクターには、萌えられない……。

名人一些脱线的插曲,有时反而会让人有好感,但这情况不管怎么想都太超过了。我再怎么努力,都不会萌上这种性格的人……

「じゃあ──さて」

「那——我们进入正题吧。」

明日のこと。

所谓明天的事情。

つまりは金曜日から翌日。

也就是礼拜五的隔天。

土曜日のこと。

礼拜六的事情。

世間では週休二日制が当たり前の習慣になって久しいが、僕らの通う私立直江津高校は名の知れた進学校、土曜日にも普通に授業がある。明日のことが今日のことになっても、結局のところ僕は結論を出すことができず、だから一時間目と二時間目の間の休み時間を使って、僕は二年生の校舎に向かった。何分相手は有名なスターのこと、どのクラスかなど、調べるまでもない。二年二組。三年生が教室を訪ねてきたということで、にわかにクラスは騒然となったが(最上級生になった身としては、今やそれは懐かしくも新鮮な感覚だった)、さすがに神原は──神原駿河は、堂々とした風格で、廊下で待つ僕のところに、大股で歩いてきた。

周休二日虽在社会上行之有年,被当作顺理成章的事情,但我们就读的私立直江津高中是知名的升学学校,礼拜六也会正常上课。就算明天的事情变成今天的事,我还是无法做出结论,因此我利用第一节下课,到二年级的校舍一趟。毕竟对方是明星,我不用调查就知道她的班级。二年二班。一个三年级生突然造访教室,当然会在班上造成一些骚动(升上三年级后的现在,这感觉让我既怀念又有新鲜感),但对方不愧是神原。神原骏河毫不避讳,朝着在走廊上等待的我,大步地走了过来。

「やあ、阿良々木先輩」

「你好啊,阿良良木学长。」

「よう、神原。お前に少し用があるんだけれどさ」

「哟,神原。我有事要找你。」

「そうか。ならば」

「是吗,既然这样——」

神原は何も質問を返さず、ただ答える。

神原没有任何反问,直接回答说。

まるで、予定調和のように。

仿佛我们事先说好了一样。

「放課後、私の家まで、付き合って欲しい」

「放学后,希望学长能到我家一趟。」

で──  

就这样——

神原駿河の家、日本家屋である。

我们来到一栋日式房屋中——神原骏河的家。

話をするだけならば、別に神原の家にまで行かずとも、学校の空き教室や、屋上やグラウンド、あるいは学校から外に出ても、その辺りのファーストフード店ででもすればいいと思ったし、実際に神原にもそう言ったのだが、神原としては、僕との話は自分の家でしたい理由があるようだった。

如果只是要说话,我想不用专程来神原家,只要随便在学校找间空教室,或是去屋顶和操场,不然到校外随便找一间快餐店也行,但神原却邀请我去她家谈,看来她似乎有什么理由。

理由があるのなら、従うまでだ。

既然她有理由,那我就顺从她的提议。

聞くまでもなく。

无须多问。

「何から話したものかな、阿良々木先輩──なにぶん私はこの通り口不調法なもので、こういう場合の手順というのはよくわからないのだが、まあ、とりあえずは」

「要从哪里开始说起呢,阿良良木学长。如你所见我是一个口拙的人,这种情况下我不知道该照什么顺序来说明,不过首先——」

神原はさっと脚を組み直して、ぺこりと、僕に向かって頭を下げた。

神原突然端正坐姿,朝我低下头。

「昨夜のことを、謝らせてもらおうと思う」

「我想先为昨天的事情向你道歉。」

「……ああ」

「……好。」

僕は、一日経って回復した──しかしそうはいってもまだ疼痛とうつうが残っているような気がする、腹部を撫でるようにしてから、頷いた。

我摸着肚子点头回应。经过一天我的身体已经恢复,不过还是觉得腹部有些疼痛。

「やっぱり、あれは、お前だったのか」

「果然昨天那个是你吗?」

雨合羽。

雨衣。

ゴム手袋、長靴。

橡胶手套、长靴。

さっき、片付けた衣類の中に──混じっていた。

刚才整理的衣物当中,这两样东西就参杂在其中。

言うまでもなく。

一切尽在不言中。

「やっぱりなどと、歯がゆい言い方をするのだな、阿良々木先輩は。奥床おくゆかしい44人だ。完全に見抜いていたのだろう? そうでなければ、阿良々木先輩の方から私を訪ねてくるはずがないからな」

「果然这个说词真叫人心烦啊,阿良良木学长。你还真贴心呢。其实你早就看穿了吧?不然学长也不会跑来找我啊。」

「別に……あてずっぽだよ。体格とか、輪郭とか、シルエットとかでの判断……僕が勉強会で戦場ヶ原の家に行くことを知ってた奴とか、そういう条件から絞った上で検索をかけて、そう考えれば、な……、まあ、お前を訪ねていったところで、間違っていたら間違っていたで、何か問題があるわけじゃないし」

「我只是……用猜的而已。从体格、轮廓、外形来判断……还有知道我去战场原家读书的人,我只是锁定以上的条件来思考罢了,而且就算跑来找你之后发现弄错了,也不会有什么问题。」

「ふむ、なるほど。卓見だ」

「嗯,原来如此。真是高见啊。」

本気で感心している風の神原。

神原一脸佩服地说。

「男子の中には腰の形で女子を判別できる者がいるというが、そういう類の話だろうか?」

「男生里面有人可以用腰形去分辨女性,学长是在说这个吧?」

「全然違うわ!」

「大错特错!」

雨合羽の上から腰の形なんてわかるか!

穿着雨衣哪看得出腰形啊!

「すまなかった。あんなつもりは、なかったんだ」

「抱歉,那真的不是我的本意。」

神原は、改めて、頭を下げた。

神原再次低下头。

それは──誠意のこもった謝罪だったように思う。

我想,这道歉非常地有诚意。

けれど、あんなつもりはなかったって……じゃあ、どんなつもりだったというのだ? 明らかにあれは、僕を狙っての──しかし、それすら、そうでないということなのだろうか?

但,她说那不是她的本意……那她的本意又是什么?昨天很明显是针对我,难道说针对我也非她的本意吗?

「……いや、謝ってもらっても、僕が知りたいのは、むしろ理由の方なんだけど。いや、理由は──ともかく」

「不,你不用道歉,我比较想知道理由。不对,理由……我们先不谈。」

その理由は。

攻击我的理由。

決して思い当たらないわけでもない。

我不是完全想不到。

この場面においてあえてそんなことは言わないけれど、それこそが、まず神原を、あの雨合羽の正体だと連想した、その契機、取っ掛かりだったのだから。

眼前我不用把它说出口,但那个理由,正是让我联想到雨衣怪是神原的契机与线索。

しかし──

但是——

「ともかく、あの力、怪力のことを──」

「总之,我想先问你——」

怪力。

怪力。

怪異。

怪异。

自転車を紙屑のように壊し。

把脚踏车像纸屑一样打烂。

ブロック塀を一撃で崩し。

一拳打坏水泥墙。

そして、人間を──

然后,把活人——

「聞きたい──んだけど。一体、お前……」

「关于那股怪力……的事情。你到底是……」

「ううむ。何から話したものかというなら、やはりその辺りからか。そうだな、しかし……阿良々木先輩は、突拍子もないことを、信じることができるタイプの人間かどうか、最初に質問しておきたいのだが」

「嗯。果然一开始要先从那边开始讲起啊。这个嘛,但是……我想要先问阿良良木学长,你是那种能够相信超常事物的人吗?」

「突拍子もないこと?」

「超常事物?」

と言えば──ああ、なるほど、そうか。

这是指——啊,原来如此。

神原は、僕の身体のことを知らない。元不死身の、僕の身体のことを──昨晩のことにしたって、受けた被害が被害だっただけに、目に見える速度で怪我が回復したわけではないから、それが知れるわけもない。だからこその前置きか──いや、そうじゃない。

神原不知道我身体的事情。我昨晚虽然被神原打伤,但我的伤口不是瞬间恢复,所以她不可能知道我的身体本是不死之身。所以才会有那个开场白吗?不,也不尽然。

神原は、僕のことは知らなくとも、戦場ヶ原のことを知っている。戦場ヶ原の突拍子もない秘密を、僕よりも先んじて、知っている。だから──戦場ヶ原の恋人であるところの僕が、その突拍子もない秘密を、知らないわけがないと思っているはずだ──つまり、今、まさに、僕は神原から、探りを入れられているということなのかもしれない。

神原就算不知道我的情况,也知道战场原的事情。她比我还要早知道战场原的超常秘密。所以,她应该知道我身为战场原的男朋友,不可能不知道那个秘密。也就是说,现在神原可能是在刺探我。

「わからないだろうか? つまり、阿良々木先輩は、自分の目で見たものを、信じられるかどうかという意味の質問なのだが」

「学长不懂吗?简单来说,学长是那种只相信自己听见事物的人吗?」

「僕は自分の目で見たものしか信じないよ。だから、見たものは全部、信じてきた。戦場ヶ原のことも、勿論な」

「我是那种眼见为凭的人。所以,我至今一直相信自己看见的东西。战场原的事情也是。」

「……なんだ、そこまでバレていたのか」

「……什么啊,连这点都被看穿了吗?」

言われても、さして悪びれる風もなく、後ろめたさもそれほど感じさせずに、

神原听到我的话后并不惊慌,也没有半点愧疚。

神原は、「しかし」と言う。「誤解しないで欲しい。私は、戦場ヶ原先輩とのことを知りたくて、ここ最近、阿良々木先輩について回っていたというわけではないんだ」

「可是,」她接着说。「学长请不要误会。我最近会跟踪学长,不是因为我想知道战场原学姐的事情。」

「え……? そうなのか?」

「诶……?是吗?」

それは──てっきりそうだと思っていたのだが。

我以为……肯定是那样呢。

阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎが付き合っているという噂の真偽を確かめようとしていたんじゃ──ないのか? それで、昨日、僕が一人で、戦場ヶ原の家を訪ね、一対一での勉強会を行うという話を聞き、確信を得たんじゃ──ないのか?

她那么做,不是为了想确认阿良良木历和战场原黑仪,在交往的传闻是真是假吗?而她昨天听到我要去战场原两人独处念书时,心中因此有了确信……不是这样的吗?

いや、それはそうなのだろうけれど。

不,这点当然是有。

その読みに狂いはないと思うけれど。

我想我的推测不会错。

ストーキング自体には別の理由があったとでも?

还是说她跟踪我有其它的理由?

「バスケットボール部のお前と陸上部の戦場ヶ原とで、合わせてヴァルハラコンビって、呼ばれてたんだろ?」

「国中的时候,篮球社的你和田径社的战场原,被称作圣殿组合对吧?」

「ああ、その通りだ。そんなことまでよく知っているな、阿良々木先輩、おみそれしたぞ。これまでだってできる限り高く評価していたつもりだったが、私はそれでも阿良々木先輩のことを侮っていたようだ。とてもじゃないが、阿良々木先輩は私の価値観で測れるような大きさではないな。知れば知るほど、遠く感じてしまう」

「对啊,没错。阿良良木学长你居然知道这件事情,我真是有眼不识泰山。我至今为止都对学长有很高的评价,不过我似乎还是太小看学长了。用我的价值观实在无法去衡量学长啊!我越是了解学长,就觉得学长离我更远了。」

「……人に聞いただけだけどな」

「……我只是听人家说的。」

これだけあからさまな美辞びじれいを並べても、全然腰巾こしぎんちゃくや太鼓持ちに見えないってのは、ある意味芸術作品だよな、こいつ。

她说了一连串露骨的美词丽句,却不见半点阿谀奉承,这家伙在某种意思上算是一种艺术品吧。

「由来も聞いたよ。よく考えられた通り名だよな」

「由来我也听说了。这个通称还真贴切啊。」

「そうだろう。私が考えたのだ」

「对吧。是我自己想的。」

誇らしそうに胸を張る神原だった。

神原自傲地挺起胸膛。

……自分で考えていた。

……自己想的。

こんな切ない気分、本当に久し振りだな……。

这种空虚的感觉,真是好久不见啊……

「一生懸命考えたものだぞ。ちなみに私個人のニックネームとしては、『ガンバルするがちゃん』というのを考えたのだが、残念ながらそちらは定着しなかった」

「我可是绞尽脑汁呢。顺便说一下,我还有替自己想一个绰号,叫『加油小骏河』。不过很遗憾,那个绰号没有定型下来。」

「僕も今とても残念だよ」

「我现在也觉得很遗憾。」

「そうか。同情してくれるのか」

「真的吗。学长也很同情我吗?」

ああ。

没错。

お前の感性にな。

同情你的感性啊。

「情け深いんだな、阿良々木先輩は。まあ、言われてみれば、呼びかけるには少し長いニックネームだったからな、仕方なかった」

「阿良良木学长,你真是以慈悲为怀。不过听学长这么一说,那个外号叫起来似乎太长了一点,所以也没办法。」

「反省点はそこじゃない気もするけどな」

「要反省的地方应该不是那里吧。」

どうやら、中学時代の神原は、とてもいい仲間に囲まれていた模様だ。

看来国中时代的神原,身边似乎有一群很好的伙伴。

当時の戦場ヶ原も含めて……。

包含当时的战场原在内……

「まあ、そうなのだ。ヴァルハラコンビはおいておいて、阿良々木先輩はかなり察しがよいようだから、こんな説明、ひょっとしたら鬱陶しいだけかもしれないが、戦場ヶ原先輩と私は、中学時代に──いや、その話をするよりも先に、先に見ておいてもらいたいものがあるのだった。そのために、わざわざ阿良々木先輩に、貴重なお時間を割いていただき、私の家にまでご足労そくろう願ったのだからな」

「总之就是这样。圣殿组合先摆一边、摆一边,学长好像已经知道很多了,所以我接下来的说明,可能会让你觉得有点烦,战场原学姐和我在国中的时候——不对,在这之前我要先让学长看一样东西。所以我才会请学长专程抽出宝贵的时问,长途跋涉来我家一趟的。」

「見ておいてもらいたいもの? ああ、なるほど。それが家にあったから、学校とかじゃ、話、駄目だったってことか」

「要先让我看一样东西?啊,原来是这样。因为那东西在家里,所以我们没办法在其它地方谈话咯?」

「いや、そうじゃなく、学校では目立つというか、人目をはばかるというか……できれば、他の人には見られたくなかったから」

「不是的,在学校太过显眼,或者该说我会忌讳他人的目光……可以的话,我不想让其它人看见。」

言って──神原は、左手の、真っ白い包帯を、解きにかかった。ぐるぐるに巻かれたその包帯を、がねを外し、指に近い方から、順番に──

说完,神原开始解开左手的洁白绷带。她解开别扣,一圈圈将绷带从手指附近,依序解开——

思い出す。

我回想起,

昨夜のこと。

昨晚的事情。

自転車を破壊したのも、ブロック塀を崩したのも、僕の内臓を破裂させたのも──

打烂脚踏车、打坏水泥墙,遗有让我内脏破裂的——

全て、左手で作った拳だったことを。

全都是一颗左拳的杰作。

「正直に言って、あまり人に見られたいものではないのだ。私はこれでも一応、女の子なのでな」

「老实说,我不想要被人看见这东西。我虽然这样,好歹也是一个女生。」

包帯が完全に解け──神原は制服の袖を、めくり上げる。そしてそこに僕が見たのは、神原の、女の子らしい、細くて柔らかそうな二の腕から連なる、肘から先が──野生のけだもの丶丶丶丶丶丶丶のそれのような、真っ黒い毛むくじゃらの、骨ばった左手だった。

绷带完全解开后,神原卷起制服的衣袖,露出纤细柔软的女性上臂。而手肘以下的地方,是一只骨瘦如柴的左手,上头盖着一层毛茸茸的黑毛,有如野兽之物。

破れたゴム手袋の穴から覗いた。

那是我从手套的破洞中,所看到的东西。

けだものの、匂い。

有野兽的味道。

「まあ、こういうことなのだが」

「唉呀,就是这个样子。」

「………………」

そういうデザインの手袋とか、マペット45とかじゃ──ないよな、明らかに。長さも細さも、それにしてはあからさまに不自然だし──それに、そんな見た目上の理屈を抜きにしたって、僕はゴールデンウィークに、これと似たようなものを、似て非なるものを、確実に目撃している──だから、僕にはこれがわかる。

这东西很明显不是造型手套或布偶。它的长度和粗细太不自然了,而且先不管外表,我先前确实目击过和这东西相似、或似是而非之物。所以我知道这个东西。

これが、怪異そのものであることが。

这东西就是怪异。

怪異。

怪异。

野生のけだもの──といっても、しかし、それが何かと問われれば、全くぴんと来ない。どんな動物のようでもあり、またどんな動物のものでもないような気がした。全てに似ている代わりに、何にも属していないように見えた。それでも、あえて言うなら、五指、それぞれにある程度の長さがある指の先の爪の形から、あえて言うなら──

那是野兽没错,但如果问我那是什么,我是完全摸不着边。我感觉那东西像动物的手,但却不属于任何一种动物。所有部分都和动物的手相似,但却无法归类。不过,从那五指各自的长度和指甲形状来看,硬要说的话——

それこそ女の子の身体の一部を形容するのに、あんまり、適切な表現だとは思わないけれど。

我觉得这表现,不太适合用来形容女性身体的一部分。

「猿の手」

「猿猴之手。」

僕は言った。

我说。

「猿の手──みたいだ」

「就像——猴掌一样。」

猿。

猿猴。

にゅうこうサル目類から、人類を除いた動物の総称。

哺乳纲灵长目中,除了人类以外的动物总称。

「ほう」

「喔——!」

神原は、何故か──感嘆したような表情をした。

神原不知为何做出感叹的表情。

そして、ぱしんと、組んだ膝を、自分で打つ。

接着,她拍打自己盘起的膝盖。

「阿良々木先輩はやはり計り知れないほどの慧眼けいがんだな。恐れ入った、持っている目がまるで違う。一見してこれの正体を見抜いてしまうとは、驚きの一言に尽きる。私のような凡俗とは、積み重ねている知識が全く違うようだな──となると、これ以上の余計な説明は不要というわけか」

「阿良良木学长果然拥有深不可测的慧眼啊。真叫我佩服,我们的眼睛好像是不同的东西一样。没想到学长居然一眼就识破这东西的真面目,我只有吃惊的份而已。学长累积的知识量,和我这种凡夫俗子截然不同啊!既然这样,我也不用多作说明了。」

「か、勝手に納得するな!」

「别、别随便就下结论!」

ここで説明をやめられてたまるか。

说明就此打住的话,我哪受得了。

生殺しもいいところだ。

虎头蛇尾也要有个限度吧。

「僕はただ、見たままの感想を述べただけだよ。何も見抜いてなんかいない」

「我只是说出自己看到的感想而已,并没有识破什么东西。」

「そうなのか? ウイリアム・ウイマーク・ジェイコブズの短編小説のタイトルなのだが──『猿の手』。原題は『The Monkey’s Paw』だから、まあ直訳と言ってもいいはずだ。『猿の手』というテーマ自体は色んなメディアでいいように使われているから、派生して派生して、色んなパターンがあるけれど──」

「真的吗?威廉 · 威马克 · 杰考布斯有一则短篇小说的标题,就叫《猴掌》。原文标题是《The Monkey’s Paw》,可以说是直译啦。《猴掌》这个标题被各种媒体随意引用,因此衍生再衍生,就产生了各种不同的模式——」

「全然知らない」

「我听都没听过。」

正直に言った。

我老实说。

そうなのか、と神原。

这样啊,神原说。

「何も知らないままに真実を言い当ててしまうなんて、阿良々木先輩は天におわす何者かに選ばれているとしか思えないな。理屈抜きで本質を直観するとは」

「什么都不知道却能一语道破真实,我只能认为学长是被天上的某位神明选中之人,学长居然可以舍去理论,直观事物的本质。」

「……まあ、勘のよさには定評があるよ」

「……还好啦,我的第六感还算小有名气。」

「やはりそうか。うん、私は私を誇らしく思う。阿良々木先輩ほどではないけれど、そんな阿良々木先輩に一目置いていた、私の勘にもまた、狂いはなかったということだからな」

「果然如此。嗯,我觉得自己很骄傲。虽然我不及学长你,不过我的直觉告诉我要敬学长三分,看来果然没错。」

「そうか……」

「是吗……」

照準しょうじゅん狂いまくりだと思うけれど。

我觉得是错得离谱。

えっと、と、僕は改めて、神原の左手を見る。

「嗯——」我再次看神原的左手。

けだものの手──猿の手。

野兽之手——猴掌。

「さ……触ってもいいのか」

「我……我可以摸一下吗?」

「うん。今は別に丶丶丶丶、大丈夫だ」

「嗯,现在没什么关系。」

「そ、そうか……」

「是、是吗……」

許可を受けて、僕は神原の手首の部分辺りに──そっと触れてみる。

得到她的许可后,我轻摸神原的手腕部分。

恐る恐る、こわごわと。

战战兢兢,提心吊胆。

質感、肉感……体温、脈拍。

这手有质感、肉感……体温和脉搏。

生きている。

是活着的。

この怪異は──やはり、生きているタイプの怪異丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶

这怪异——果然是活物型的怪异。

……あんな有様だった部屋を見られるのは平気な神原駿河でも、さすがにこの左腕を見られるのには、抵抗があった、というわけか……無論、自主トレ中に捻挫したというあの弁は、方便だったということになるのだろう。包帯は怪我を保護するためじゃなくて、腕を隠すための方法……、捻挫しているという割に、全くそんな素振りを、身体の左側を庇うような仕草を見せないから、どっかおかしいとは、思ってはいたのだが……いや、そんなことを、後から言っても、説得力はまるでない。

……难怪神原骏河可以让别人看自己的脏房间,却不愿让人看见这只左手。当然在自我训练中受伤,只是一个权宜之词吧。绷带是用来遮掩手臂,而不是用来保护伤口……她说自己扭伤,但我却看不出来,我从来没看过她保护自己身体的左侧,所以一直觉得很奇怪……不过谜底揭晓后才说这些,根本就没有说服力。

とは言え、しかし。

但是,

こんな左手では、バスケットボールができないのは、確かなのだろうけれど。

左手变成这样,不能打篮球大概是真的吧。

思わず。

我下意识,

ぎゅっと──その手首を、僕は握ってしまう。

用力紧握了她的手腕。

「ん、あ、やんっ」

「嗯啊,不要——!」

「変な声をあげんな!」

「不要发出奇怪的声音啦!」

思わず手を振り離した。

我下意识把手甩开。

「阿良々木先輩が変な触り方をするからだ」

「谁叫学长的摸法这么奇怪。」

「変な触り方なんてしてねえよ」

「我哪有啊。」

「私はくすぐったがりなのだ」

「我很怕痒的。」

「だからっていきなりこれまでのキャラを崩すような声音をあげてんじゃねえよ……」

「那你也不用突然发出和你个性不搭的声音吧……」

って、思い出してみれば、戦場ヶ原の奴も、そういうこと、何度かやってたな。勿論、使い方は、今の戦場ヶ原とは対極に違うのだろうけれど、しかし、神原が今のようにそれを体得しているということは、じゃあ、あれは中学時代からの戦場ヶ原の持ちネタだったってことか……。

说到这里我才想到,这种事情战场原那家伙也做过好几次。当然神原的用法和战场原有天壤之别,但从她已经学会这招来看,那就表一不战场原从国中开始就有这个绝活了吗……

「忘れてるのかもしれないけどな、神原、ここ、お前の家で、お前の部屋なんだぞ? そんな声を出してるのをお前の両親とかに聞かれたら、僕、どうなっちまうんだよ」

「你可能已经忘了,神原。这里是你家,你的房间喔。你发出那种声音被你爸妈听到的话,那我可惨了。」

「ああ、それは大丈夫」

「这点不要紧。」

神原は快活に言う。

神原活泼地说。

「両親のことは、全く、気にしなくていいから」

「学长完全不用在意我爸妈。」

「……なら、いいけど」

「……那就好。」

え……?

嗯……?

なんだその、触れられたくないみたいな、露骨にそれ以上の追及を拒むみたいな言い方は……それこそ、これまでのキャラを、崩すような言葉を、いつも通りに、快活に。

这说法是怎么回事?有一种很明显不想言及、不想让人深问的感觉……这点才和她至今的个性不搭。而她说话的语气,还是和往常一样活泼。

まあまあ、と、神原はさっさと、仕切り直す。

唉呀唉呀,神原快速切换话题。

左手を、ぐーぱーにしながら。

左手一边开合。

「この通り、今は、思い通りに動くのだが──しかし、思い通りに動かなくなるときがあるのだ。いや、違うな。思いに反して動くようになる、というのだろうか──」

「就像学长看到的一样,我现在可以自由控制手部的动作,可是有时候我会无法控制它。不对。应该说它的动作会违背我的意思——」

「思いに反して?」

「违背你的意思?」

「いや、思いというか、想いというなら──ううん。どうもわかりづらいな。自分でもよくわかっていないことを説明しようとしているのだから、当然なのかもしれないが……つまり、阿良々木先輩。昨晩、阿良々木先輩を襲ったのは確かに私なのだが、私で間違いないのだが──私にはその記憶が、ほとんど、ないのだ」

「该说是意识还是想法呢——不对。这样说很难懂。我现在说明的东西,连我自己都不太明白,所以这样很正常吧……简单来说,阿良良木学长。昨晚攻击学长的人是我,确实是我没错,可是我几乎没有昨晚的记忆。」

神原は、そう言った。

神原说。

「夢うつつというか夢心地というか──全く憶えていないわけではないのだが、まるでテレビの映像でも見ているようというか、関与できないというか──」

「当时该说我是意识模糊,还是该说我在做梦呢——我不是完全没有印象,但一切就好像在看电视一样,我没办法去干涉——」

「トランス」

「催眠。」

その説明に、僕は割り込んだ。

她说明到一半,我打岔说。

「トランス状態──って奴だよ、それ。知ってる……人間に憑依するタイプの怪異は、肉体と精神を、ざくざくに陵辱りょうじょくするから」

「那叫——催眠状态。我有听说过……附身型的怪异,会慢慢侵蚀被附身者。」

僕の場合はそれとは違ったけれど──羽川の場合は、羽川翼の猫の場合は、そうだった。だから羽川は、自身が怪異に接していたゴールデンウィークの出来事を、ほとんどといっていいほど、憶えていない。ケースとしては、今回はそれに近いということだろう──羽川のときも、その肉体が変態する種類の現象が起きていたし──

我的状况与此不同,不过羽川,羽川翼的猫就是如此。因此羽川几乎不记得自己在黄金周接触到怪异的事情。以案例来看,这次的状况大概和她类似吧。那时的羽川,也有出现肉体上的变化。

「物知りだな、阿良々木先輩は。そうか、怪異というのか、こういうのは──」

「阿良良木学长真是博学呢。原来这东西叫做怪异啊——」

「まあ、僕も、とりたてて詳しいというわけじゃないんだが。ただ最近、どうしてなのかそういう経験をすることが多くて、それに、そういうのに詳しい奴が──」

「我也不是很清楚啦,只是最近不知为何常碰到这种东西,而且有一个家伙——」

忍野。

忍野。

完全にこれは──忍野の領域だろう。

这完全是……忍野的专业领域了吧。

忍野の領分だ。

忍野的势力范围。

「──いて」

「比我还清楚这类的事情。」

「うん。そうか、阿良々木先輩が大きな人でよかった。この腕を見せた段階で逃げ出されでもしていたら、話はできなかったからな。それに、少なからず、傷ついていたと思う」

「嗯。原来如此,幸好学长是个大人物。要是你看到这手臂就逃走的话,那我就没办法和你谈话了。而且,我心里应该会稍微受点伤吧。」

「幸い、だから、突拍子もないことには、色々と慣れてるからさ、安心しろよ。突拍子もないこと……戦場ヶ原のことも、勿論──な」

「幸好我对这种超常事物早就习惯了,所以你放心吧。当然战场原的状况……也是超常事物。」

この分なら、僕自身が怪異に関わり、一時期吸血鬼と化していたことについても、後で説明しておいた方が、いいようだな……本来なら、アカウンタビリティという意味では、それは先に説明しておくのが筋かもしれないけれど、そうするためにはまだ、神原の左手の怪異について、わからないことが多過ぎる。

既然这样,关于我自己也和怪异有关,有一段时间还变成吸血鬼的事情,待会先说明一下会比较好……照理来说,我有义务事先和她说明,但神原左手的怪异,实在有太多的未解之谜。

「とはいえ、さすがにちょっと、びっくりはしたけどな。友達の小学五年生風に言うなら、しゃっくりしたって奴か。でも、最初に一番驚かせてくれたから、この先、どんなエピソードを聞いても、驚かない自信があるぜ」

「不过我还是有一点惊讶。照我一个小学五年级朋友的说法,应该是吓到打嗝吧。不过你一开始就让我这么惊讶,之后不管听到什么插曲,我都有自信不会再吓到了。」

「そうか。勿論そのために、最初にこの腕を見てもらったのだがな。一番大変なことを、一番最初に済ませたのだ。じゃあ、いよいよ、本題に入らせてもらおうと思う」

「真的吗?这就是我先让学长看手腕的目的。最麻烦的地方已经先处理好了。现在我们终于可以进入正题了。」

神原は笑顔で続けた。

神原面带笑容接着说。

「私はレズなのだ」

「其实我是蕾丝边。」

「…………」

ずっこけた。

我滑了一下。

藤子不二雄先生の漫画みたいにずっこけた。

就像藤子不二雄老师的漫画一样,滑了一下。

「ん、ああ」

「嗯,喔、喔。」

そんな僕の反応を見て、神原は、「阿良々木先輩は男だから、今のでは少し言葉が露骨だったかな。えーっと」と、首を傾げる。

看到我的反应后,「学长是男生,刚才我的说法可能有点露骨了。嗯——」神原歪头思考。

「言い直そう。私は百合なのだ」

「我换个说法吧,其实我是百合。」

「一緒だ、そんなもん!」

「这两个说法意思都一样吧!」

大声を出すことで自我を保とうとする僕だった。

我藉由大吼,想要把持住自己。

え? 何? どういうこと?

诶?什么?这是怎么回事?

それで、戦場ヶ原と、中学時代に、ヴァルハラコンビとか言って? 先輩後輩で? 戦場ヶ原は神原のことを『あの子』とか言って? ええ? 昨日言ってた、男と別れたことがないっていうの、ひょっとしてそういう意味だったのか?

所以,她和战场原在国中才会被称为圣殿组合?学姐和学妹?战场原用「那孩子」来称呼神原是因为这样?咦咦?昨天战场原还说她没和男生分手过,该不会是带有这层意思吧?

「ああ、それは違う。戦場ヶ原先輩のことは、私の一方的な片思いだったんだ。私にとって、戦場ヶ原先輩は、純粋にパーフェクトで、憧れの先輩だったからな、そばにいるだけで満足だったんだ」

「啊,不是的。是我在单恋战场原学姐的。对我而言学姐是一百分,是我崇拜的对象,只要待在她身边我就心满意足了。」

「そばにいるだけで満足……」

「只要待在地身边就心满意足……」

いい言葉だけど。

好棒的一句话。

それは確かにいい言葉だけど。

真的很棒没错。

その前に片思いって普通に言ったよ、この子……。

不过,她在这之前,轻松就把单恋两字说了出口……

八九寺、お前の中の女の部分は、全く的外れな答を導き出していたぞ……いや、落ち着け、なんでもかんでも、頭ごなしに否定してはいけない。そうだ……今時の女の子は、案外そんなものかもしれないじゃないか。僕の感覚が古いだけなのかもしれないじゃないか。もっとライトに、もっとリベラルに、考えるべきなのかもしれないじゃないか。

八九寺,你体内的女性直觉,导出了一个完全错误的答案……不对,我要冷静,我不能劈头就否定一切。对了……现在时下的女生,搞不好都是这样啊。可能只是我的感受性太古板了。或许我应该用更明亮、更自由的角度去思考才对。

「そうか、百合か……なるほど」

「是吗,百合吗……原来如此。」

「うん、百合なんだ」

「嗯,我是百合。」

何故か嬉しそうな神原だった。

神原不知为何一脸欣喜。

しかし、それにしても、なんだな……。

可是就算如此……

吸血鬼だったり猫だったり蟹だったり蝸牛だったり、委員長だったり病弱だったり小学生だったり、猫耳だったりツンデレだったり迷子だったり、挙句の果てには百合だったり、この世界は、なんて言えばいいのだろう、チャレンジャブルというか、貪欲だな……。

又是吸血鬼、猫、螃蟹、蜗牛;又是班长、体弱多病、小学生;然后又猫耳、傲娇、迷路小孩,最后还跑出一个百合,这个世界该怎么说才好呢,是要说有挑战精神,还是贪得无厌……

やりたい放題じゃん。

这样根本就是恣意妄为。

戦場ヶ原は、神原駿河がそうであるということを、知っているんだろうか……神原の言い方から判断すれば、知らないのだろう。まあ、知っていたところで知らなかったところで、中学時代の戦場ヶ原にしてみれば、そんなこと、それほど関係なかったと思うけれど。

战场原知道神原骏河是这样的人吗……从神原的说法来看,她八成不知道吧。不管知不知道,对国中时代的战场原来说,那种事情根本不重要吧。

陸上部のスターと、バスケットボール部のスター。

田径社和篮球社的王牌。

ヴァルハラコンビ。

圣殿组合。

「戦場ヶ原先輩はみんなの人気者だったけれど、私の戦場ヶ原先輩に対する想いは、その中でも一線を画していたように思う。その自負はある。私は戦場ヶ原先輩のためなら、死んでもいいとすら思っていたのだ。そう、言うならば、デッド・オア・アイラヴといった感じだった」

「战场原学姐是大家的偶像,不过我对学姐的爱慕和众人有明显的区别。我有这种自信。我甚至觉得如果是为了学姐,我死不足惜。真要说的话就是Dead or I Love这种感觉。」

「…………」

え……、えっと?

咦……那个?

それはうまいのかどうか、微妙なラインだぞ?

该说这英文是好是坏呢,感觉很微妙。

「む。私は今、なかなかどうして、面白いことを言ったな。アイラヴとアライヴと掛けるだなんて、我ながら冴えている。そうは思わないか? 阿良々木先輩」

「嗯。我这话说得还真有趣。I Love 和 Alive两字音近,我真是太高招了。你不觉得吗?阿良良木学长。」

「ああ。最初は微妙かと思ったが、後から自分でそう付け加えてくれたことによって、僕のジャッジは確定したよ」

「是啊。我一开始就觉得很微妙,听到你这么一说,我更肯定自己的判断是对的。」

うまくない。

你这个梗很冷。

ともかく。

不管怎么说。

僕は神原に、話の続きを、促した。

我催促神原继续说明。

「続きといっても、なんだろう、別に昔のことを話しているわけではないからな。続きというなら、今と地続きの話なのだ。そもそも、私が直江津高校を選んだのも、戦場ヶ原先輩を追ってのことだったのだから」

「也没什么好继续说的,现在也不是在说以前的事情。要继续说的话,就说一些和现在有关系的事情吧。我会选择直江津高中,老实说就是为了追随战场原学。」

「だろうな……その話を聞くと、そうなんだろうと思うよ。その辺は驚くというよりは、納得する感じだ」

「我想也是……听到你刚才的话,我就觉得是这样。这点我的理解大于惊讶。」

そんなことを言ったら、取りようによってはまたぞろ46神原のチームメイトを侮辱しているかのように取られてしまうかもしれないから、言わずに心中にとどめるけれど、でも、中学時代からバスケットボール部のエースだったというのなら、スポーツ推薦なり何なりで、もっと充実した環境でバスケットボールができたはずなのだ。それなのに、どうして神原は、バスケットボール部を含め、部活動に全くといっていいほど力を入れていない、進学校の直江津高校に入ったのか──その動機は何だったのかということ。

我想到一个问题。这问题我藏在心里没有说出口,因为依照看法的不同,神原可能会误会我又在侮辱她的队友。可是,既然她国中就是篮球社的王脾,她应该可以靠运动绩优之类的东西,到更棒的环境去打篮球才对。但神原却选择进入无心经营篮球等社团活动的升学高中——直江津高中。她的动机到底是什么?

一途な思い。

因为一心一意的爱恋?

というにも、真っ直ぐ過ぎる。

这也太过直接了。

「戦場ヶ原先輩のなめた飴ならなめられるくらい、惹かれていた」

「我被学姐吸引住,就算要我舔她舔剩的糖果我都甘愿。」

「…………」

それは他人に言っても大丈夫なたとえ話なのか?

这种比喻可以随便对别人说吗?

「でも、阿良々木先輩。戦場ヶ原先輩が中学を卒業してしまってからの、私の中学三年生の一年間というのは、全く、灰色でな」

「可是,阿良良木学长。战场原学姐毕业后,我国中三年级一整年都很灰暗。」

「灰色か」

「灰暗吗?」

「ああ。灰色の百合生活だった」

「对。灰暗的百合生活。」

「…………」

気に入ったんだね、百合って表現。

她似乎很喜欢百合这个表现。

好きにしていいよ。

随便她吧。

「灰色の脳細胞ならぬ灰色の百合生活だった」

「不是灰色的脑细胞,而是灰暗的百合生活。」

「それは明らかにうまいこと言えてないぞ」

「这个梗很明显一点都不好笑。」

無理矢理会話にギャグを挟もうとするな。

不要硬把冷笑话夹杂在对话里面。

いちじるしく緊張感に欠ける。

这样很明显缺乏紧张感。

「厳しいな、阿良々木先輩は。そのシビアな基準は私には高過ぎるハードルだぞ。でも、それも阿良々木先輩が私のためを思って言ってくれているのだと考えると、素直に受け入れられるのだから不思議なものだ」

「阿良良木学长好严格喔。这么严格的标准,对我来说门坎太高了。不过一想到学长说这些是为了我好,我就能够虚心接受,这真是不可思议呢。」

「で……それから、その灰色の百合生活で、どうなったんだ?」

「然后……那灰暗的百合生活怎么了?」

「うん。その一年間で、私は今更のように、私にとって、戦場ヶ原先輩がどれほどに大きな存在だったのかを、知った。案外、一緒にいた二年間よりも、離れていた一年間の方が、私にはよっぽど重かったのかもしれない。だから、もしも直江津高校に受かって、戦場ヶ原先輩と再会できたら、告白するつもりだったのだ。それを目標に、私は受験勉強に明け暮れた」

「嗯。在那一年间,我才后知后觉,知道了战场原学姐对我而言,是多么重要的存在。出乎意料地,和在一起的两年时光相比,分开一年对我的影响更大,所以,如果能考上真江津高中,再次遇见学姐的话,我原本打算和她告白,我以此为目标,认真准备升学考试。」

神原は言った。

神原说。

自信たっぷりの態度はいつものままだったが、しかし心なし、頰が上気している。どうやら、これは単純に照れているらしい──やばい、ちょっと可愛い。ストーキングされているときは面食らい混乱するばかりだったが、ここで初めて僕は、神原駿河のことを、本当に可愛い後輩だと思えた。ああ、僕の中に、百合という、新たな萌え領域が芽生えようとしている……。

她自信满满的态度一如往常,但或许是心理作用,我觉得她脸颊泛着红光。看来这单纯只是因为她觉得害臊。糟糕,稍微有点可爱。我被她跟踪时,满脑子只有吃惊和混乱,现在我初次觉得神原骏河真是一个可爱的学妹。啊啊!在我心中一块名为百合的萌之领域,即将新生发芽……

なんだか、もう、神原の左腕のけだものの手がどうでもよく思えてきた……違う、ストーリーの本筋は、あくまでその腕のはずなんだ……。

现在我突然觉得,就算神原的左手是兽手也无所谓……不对,故事的正题应该是那只手才对……

「飴どころじゃない。ガムだ。戦場ヶ原先輩のかんだガムならかめるぐらい、私は戦場ヶ原先輩に惹かれていたのだ」

「不只是糖果。是口香糖才对。我被学姐吸引住,就算要我吃她吃过的口香糖我都甘愿。」

「基準が全くわからねえ……」

「我完全搞不懂你的比喻基准……」

もっといい言い回しでちゃんとたとえろ。

请用更委婉的方式比喻好吗?

「けれど」

「但是。」

と──そこで、露骨に声のトーンを落とす神原。

神原说到这,语调明显降了下来。

「戦場ヶ原先輩は、変わってしまっていた」

「战场原学姐,她变了。」

「ああ……」

「嗯……」

「変わり果てて、いた」

「变得和以前,完全不一样。」

蟹。

螃蟹。

蟹と出会った──戦場ヶ原ひたぎ。多くのものを失い、多くのものを捨て、多くのものを無くし──全てを拒絶した、戦場ヶ原ひたぎ。羽川がそうだったけれど、中学時代の彼女を知っている者からすれば、それは別人と見まごうばかりの、変貌だったに違いない。まして、戦場ヶ原を信奉していた立場の神原からすれば──信じたくないほどの変貌だっただろう。

战场原黑仪遇到了螃蟹。她因此丧失、舍弃、失去了许多东西——拒绝了一切事物。国中时代的旧识包括羽川来看,一定会觉得战场原的改变判若两人。更何况神原信奉战场原,以她的立场来看战场原的改变肯定令她难以置信吧。

自分の目で見たものを、信じられないほどの。

甚至会让神原怀疑自己的眼睛。

「高校生になってから、重い病気を患ったということは、聞いていた──長患いで、陸上をやめてしまったことも、聞いていた。そこまでは、事前に、知っていたのだ。でも、あそこまで変わってしまっているとは──思いもしなかった。悪い噂だと思っていた」

「我听说学姐上高中后得了重病,也听说她因为久病不愈而停止了田径运动。这些我事前就知道了。可是我没想到……学姐会改变到那种地步。我原本以为那些只是不好的传闻。」

重い病気、ね……。

重病吗……

まあ、決して、その解釈が間違ってるわけでもないんだけれど……あれは戦場ヶ原にとって、結局のところ、今もなお完治していない、しつのようなものなのだから。

这说法没有错……但对战场原而言,那重病就像宿疾一样,至今还未痊愈。

「しかし──違った。噂自体は確かに真相を外してはいたが、そんな噂どころじゃなかった。戦場ヶ原先輩の身体には、もっと大変なことが、起きていた。私は、それに気が付いて──何とかしなければ、と思った。戦場ヶ原先輩を助けなければと思った。だってそうだろう? 私は中学生の頃、戦場ヶ原先輩にすごくお世話になったのだ。受けた恩を忘れたことはない。学年も部活も違ったけれど、戦場ヶ原先輩は、私に、とても優しくしてくれたんだ」

「但是——我错了。传闻本身虽然偏离事实,但一切都是真的。战场原学姐身上发生了更严重的事情。我发现到这点后一直在想办法。想要帮助学姐。这很正常吧?我在国中的时候,受到学姐很多的照顾。我没有忘记她的恩情。过去就算年级和社团下一样,学姐还是对我很温柔。」

「その優しさは……」

「那温柔……」

その優しさは戦場ヶ原にとって、どのような意味を持っていたのか──なんていうことは、この場面で、言うようなことでも、聞くようなことでも、ないのか。

那温柔对战场原而言,到底象征了什么?这种问题,在这个场合我根本说不出口,

「だから私は、戦場ヶ原先輩を助けようとしたんだ──助けたかったんだ。だけど、それは、取り付く島もなく、拒絶された」

「所以我才想要帮助学姐……我想要帮她。可是,却被学姐冷淡地拒绝了。」

「そっか……」

「这样啊……」

さすがに、どういう風に拒絶されたのかまでは、教えてくれないだろうな。それは多分、戦場ヶ原を庇ってのことだろう……神原は、戦場ヶ原について悪口らしきことを、絶対に何があっても、口が裂けても口にしたくないはずだから。

如何被拒绝这点,她终究无法告诉我吧。这大概是因为她想要保护战场原……因为神原不管发生什么事,就算嘴巴咧开也绝对不会说一句战场原的坏话。

やはり、僕と同じような目に、僕以上の酷い目に、遭わされたのだろうことは、容易に推測できるけれど……正直、それは僕も聞きたくない。

她受到的对待肯定和我一样,甚至比我还惨吧,这点我可以轻易地推敲出来……但老实说我并不想听。

僕のためにも、神原のためにも。

这是为了我,为了神原。

戦場ヶ原のためにも。

也是为了战场原好。

ホッチキス。

订书机。

「なんとかできると、思った」

「我以为,我能帮上忙。」

ざんの念に堪えないというように──心の底から悔いているような雰囲気を漂わせつつも、それでも気丈に、無理にさばさばとした風を装って、神原は言う。

神原似乎压抑不住心中的忏悔,感觉打从心里感到懊悔一般,但她还是故作坚强,勉强自己做出轻松愉快的表情。

「戦場ヶ原先輩の抱えているものを、私がなんとかできると思った。原因を取り除くことはできなくとも、現象を改善することはできなくとも、そばにいるだけで──戦場ヶ原先輩の心を、癒すことができると思っていた」

「我以为战场原学姐的问题,我有办法解决。就算自己无法根除原因,无法改善现状,只要我待在学姐身边就能治愈她的心灵。」

「…………」

「お笑い種だったな。おめでたい女だった。今から考えれば、滑稽千万だ」

「这很好笑吧。我真是个笨女人。现在回想起来,真是可笑无比。」

だって、戦場ヶ原先輩は、そんなこと、ちっとも求めてなかったんだから──

因为战场原学姐从来没有要求过——

と、神原は下を向く。

说完,神原伏首。

「あなたのことなんて友達とも思っていなければ後輩とも思っていない──今も昔も。そんなことを、はっきり言われた」

「学姐很清楚地对我说:我没有把你当成朋友,也没把你当成我的学妹。不管是现在还是以前都一样。」

「まあ……」

「诶呀……」

言うだろうな、当時のあいつなら。文房具以上の凶器として、あの辛辣な暴言毒舌を、戦場ヶ原ひたぎは持ち合わせていたのだから。

当时的她大概会那样说吧。因为战场原黑仪身上,有一种比文具还要更可怕的凶器——辛辣的毒舌漫骂。

「最初は、じゃあ戦場ヶ原先輩は私のことを恋人と思っていてくれたのかと思ったが、しかし、そうではなかった」

「一开始我以为学姐把我当成她的恋人,但我错了。」

「ポジティヴだったな」

「你当时的想法真的很正面。」

「うん。続けて、よりはっきり言われた。あなたのような優秀な下級生と仲良くしておけば自分の評判が上がるから、そのために仲良くしてあげていただけだ、面倒見のいい先輩を演じてあげていただけだ──と」

「嗯,接下来她说的更清楚了。她说和你这种优秀的学弟妹当朋友,我自己的风评也会提升,所以我才会跟你当朋友,扮演一个爱照顾人的学姐而已。」

「……酷いことを言うなあ」

「……这话还真狠啊。」

傷つけるのが目的で──

因为这话是以伤人为目的。

自分から離れさせるのが目的だから──

以疏远神原为目的——

でも、戦場ヶ原は昨日、神原のことをあの子と呼んで、中学時代の私の後輩だと言い、今は違うと言いつつも、中学時代の友達だったことは認めていた。それは、僕にとって都合のいい解釈なのかもしれないが、でも──それでも、だ。

不过,昨天战场原称呼神原为那孩子,还说神原是自己国中的学妹,虽然现在不是,但却承认神原在国中是她的朋友。或许这样的解释正合我意,可是……即使如此。

「優秀な下級生と言われたのは嬉しかったけれど」

「她说我是优秀的学妹,让我很高兴啦。」

ポジティヴだった。

好一个正面思考。

徹頭徹尾。

彻头彻尾的。

「でも──私は自分の無力さを思い知った。そばにいるだけで癒せるなんて、思い上がりも甚だしかった。戦場ヶ原先輩はむしろ──そばに、誰もいて欲しくなかったのだ」

「但是,当时我体会到自己的无能为力。我居然以为只要待在学姐身边就能治愈她,实在太自以为是了。战场原学姐反而希望身边不要有任何人。」

独りが寂しくない人間は──実在する。

这世间确实存在着独而不孤之人。

普通に考えれば、戦場ヶ原は、間違いなくその部類だろう──少なくとも、無意味に大勢でいることをよしとする人間では、そもそも、なかったのだと思う。人当たりがよかった中学時代ですら、戦場ヶ原は内心で、そう思っていたに違いないだろう──けれど。

正常情况来思考,战场原绝对是属于那一类人种。至少,她不是那种无端想要和他人群聚的人。就算在有亲和力的国中时代,战场原内心恐怕也是一样吧。但是——

独りが寂しくない、と。 独りでいたいは、違う。

孤而不独,和想要独自一人不同。

人付き合いが嫌いなのと、人間嫌いが違うように。

就像讨厌和人交际,并不等于讨厌人一样。

「だから私は、それ以来、戦場ヶ原先輩には、近付かなかった。それが、戦場ヶ原先輩が私に望んだ、唯一のことだったからな。勿論、戦場ヶ原先輩のことを忘れることなんてできるわけがなかったけれど──でも、私が身を引いて、何もしないことで、私が戦場ヶ原先輩のそばにいないことで、少しでも戦場ヶ原先輩が救われるというのなら──それを私はよしとできる」

「所以我在那之后,就没再接近战场原学姐。因为这是学姐对我的唯一希望。当然我绝对忘不了学姐,但是如果我离开、什么都不做、别待在学姐身旁,可以让学姐得到救赎,哪怕是一点也好,我都会很乐意去做。」

「……お前」

「……你。」

何と声をかけていいのか、わからない。それは単純に、その潔いとも言える態度に感じ入ったからというのではなく、その選択を、やむをえないとも仕方がないとも言わず、よしとできると表現した、言葉に、感じ入ったからだ。戻ってこなかったと戦場ヶ原は言ったが──そうじゃなく、神原は、自分の意志で、身を引いたのだ。

我不知道该说什么才好。我不是单单佩服她这可说是崇高的态度,而是佩服她不把这选择当作无可奈何或迫不得已,反而还很乐意去做。战场原说已经回不到过去,但其实不是如此,是神原凭借自己的意志而离开的。

本当に、真剣──なんだ。

神原是认真的。

戦場ヶ原のこと。

对战场原。

中学時代から、一年前まで想いを募らせ──それに。

从国中时代开始直到一年前,神原心中只有她一人——

今に至っても。

直到现在也是。

「戦場ヶ原先輩と顔を合わせないように気をつけた。廊下でばったり会ってしまったり、朝礼で姿を見かけたり、学食ですれ違ったりしないよう、行動範囲は全てずらした。私が戦場ヶ原先輩をというだけでなく、戦場ヶ原先輩が私を意識せずに済むよう、取り計らった。勿論、部活の試合で活躍したら、どうしたって私のことは噂にはなってしまうのだけれど、だから、私の噂には虚実、織り交ぜるよう、私自身が、コントロールした」

「我很小心不让自己和学姐碰到面。我把我们的行动范围完全错开,不让彼此在走廊上巧遇、在朝会上见面、在学生食堂擦身而过。这些举动不是为了我自己,而是为了让学姐不要在意我。当然,我如果在社团活动的比赛中大放异彩,学姐一定也会听到我的传闻,所以我才会在传闻当中夹杂了一点虚实。」

「……道理で、人格が破綻しているとしか思えない、ちぐはぐな噂が流れているわけだ」

「……难怪,所以才会有那种前后矛盾、让人以为你有人格分裂症的传闻啊。」

納得。

我懂了。

しかし、そこまで徹底して……ストーキングならぬ、逆ストーキング……とでも言えばいいのだろうか。

但是她居然做到那种地步……她那些行为有别于跟踪的寸步不离,可说是一种……反跟踪的方法吧。

「一年は、それでやり過ごしたのだ。灰色どころか、黒色の百合生活だったな。それでしゃ47になって、バスケットボールにより熱中できたのは、果たして、よかったのか悪かったのか……でも──そんな一年が経って、私は、阿良々木先輩のことを、知ってしまった」

「这一年来,我是这样度过的。这一年别说是灰暗,根本就是黑色的百合生活。所以我才会不顾一切,比以前更热忠篮球,这结果是好是坏我不知道……可是,过了那样的一年之后,我知道了学长你的事情。」

「…………」

戦場ヶ原のことを気に掛けていたにしては、彼女と僕とのことを知るのが遅いような気がしたが、それは学年を跨いだからではなく、あえて神原が、戦場ヶ原の話題については、避けるようにしていたから──だったのか。

我还在想她既然这么在意战场原,怎么会这么晚才知道我们交往的事情,原来不是因为我们隔了一个学年,而是神原她一直在躲避和战场原有关的话题吗?

それでも。

即便如此。

阿良々木暦のことを、知ってしまった。

他还是知道了阿良良木历的事情。

「いてもたってもいられず──一年ぶりに、私は、自発的に、戦場ヶ原先輩を……訪れた。訪れようとした。勿論、一年の間に、ケアレスミスは何度かあったけれど、しっかり、意思を持って戦場ヶ原先輩の姿を見たのは、それが初めてだ。戦場ヶ原先輩は──阿良々木先輩と、朝の教室で、喋々ちょうちょう喃々なんなんと、話していた。中学時代でも私に見せてくれたことがないような、幸せそうな、笑顔でな」

「我坐立难安,事隔一年我才主动地……去找战场原学姐。想主动和她接触。当然这一年间,我有好几次粗心大意不慎和学姐碰到面,但那还是我第一次想主动去见学姐。我看到战场原学姐面带笑容……和阿良良木学长两个人,在晨间的教室内喋喋不休地在聊天。我在国中的时候,学姐从来没对我露出那种幸福的笑容。」

「…………」

僕をどんな罵詈ばり雑言ぞうごんで苛めていたときの笑顔だろう……あの表情の変わらない女が笑顔を浮かべるときなんて、そのときくらいなのだけれど。

那大概是战场原把我骂得狗血淋头时的笑容吧……那只有一号表情的女人,也只有那个时候脸上才会浮出笑容吧。

「わかるか?」

「学长懂我的意思吗?」

神原は僕を向いた。

神原面向我说。

「阿良々木先輩は、私がしたくてしたくてしょうがなかった、したくてしたくてしょうがなかったのに諦めたことを……まるで当然のように、やっていたのだ」

「阿良良木学长,你做了一件我十分想做却又做不到,只能放弃的事情……学长好像很理所当然一样地达成了。」

「神原……いや、それは」

「神原……你误会了。」

「最初は、嫉妬した」

「刚开始,我很嫉妒你。」

一言一言、区切るように言う神原。

神原一字一句,断句分明地说。

「途中で、思い直そうとして」

「我在途中,虽然想改变自己的想法。」

溢れる感情を、抑えるような声で。

她的声音彷佛在克制自己满溢的感情。

「最後まで、嫉妬した」

「可是一直到最后,我还是很嫉妒你。」

そう締めくくった。

她做出结论说。

「…………」

「どうして私じゃ駄目だったのかと思った。阿良々木先輩に嫉妬したし、戦場ヶ原先輩に失望した。男だったらいいのかと思った。私が女だから駄目なのかと思った。友達や後輩はいらないけれど、恋人ならよかったのかと。だったら」

「我曾经想过为什么我就不行。我很嫉妒学长,同时也对战场原学姐感到失望。我一直在想是不是因为对方是男人就行,而我是女人所以不行。我还在想学姐是不是只要有恋人就够了,不需要朋友和学弟妹。既然这样,」

だったら──と、神原は僕を睨むようにした。

既然这样,神原重复同样的话语,瞪视着我。

初めて、僕にそんな批難がましい眼を向けた。

她初次对我露出谴责的目光。

「だったら、私でもいいはずじゃないか」

「既然这样我应该也可以不是吗?」

後輩で、年下の女子だと思っていても、性格的に逆上して僕につかみかかってくるようなことはないだろうとわかっていても──それでも怯んでしまうような、それは、剣幕だった。

我知道这个小我一岁的学妹,不会突然勃然大怒向我扑来,但她气势汹汹的态度,还是会让人下意识退缩。

「阿良々木先輩に嫉妬して、戦場ヶ原先輩に失望した。そして──そんな自分自身に、呆れ果てた。何が戦場ヶ原先輩を癒す、だ。何が身を引くだ──全部、そんなの、欺瞞だったということじゃないか。全部、私のエゴだったということじゃないか。自分さえよければそれでよかったということじゃないか。そうしていれば、戦場ヶ原先輩に、褒めてもらえるとでも思っていたのか? 馬鹿馬鹿しい。偽善にもほどがある。でも、それでも──私は、昔みたいに……戦場ヶ原先輩に、優しくして、もらいたかったのだ。エゴでも何でも、戦場ヶ原先輩のそばにいたい──だから」

「我嫉妒学长,对战场原学姐感到失望。然后……我非常惊讶自己会有这种想法。什么叫自愿离开……这一切都是自我欺骗。这一切都是我自私的想法。我根本只顾我自己好而已。我这样做,战场原学姐就会夸奖我吗?愚蠢。伪善也要有个限度。不过就算是这样,我还是希望学姐能够像以前一样温柔对我。我不管这是自私还是什么,我就是想待在战场原学姐的身旁。所以——」

と。  神原は、自分の右手で──自分の左手に触れた。

神原用自己的右手,触碰自己的左手。

けだものの左手に、触れた。

触碰那野兽的左手。

「だから私は、この手に、そう願ったんだ」

「所以我,才会向这只手许愿。」

006#

ウイリアム・ウイマーク・ジェイコブズの『猿の手』の粗筋あらすじを、ここで紐解き、詳しく説明する必要はないだろうけれど──その話を知らなかった僕にしたところで、聞いてみれば、なるほどそれは、怪談として、あるいはホラーとして、よくできたストーリーである。教科書通りの恐怖譚、由緒ゆいしょ48正しくしょく蒼然そうぜんとした、物語──そう、その話を知らなかった僕にしたところで、聞いてみれば、どこかで聞き覚えがあるような、思い当たる節があるような、そんな風な感想を持った。

威廉 · 威马克 · 杰考布斯的《猴掌》一书的大纲,在这里没有阅读和详细说明的必要——不过就连不知道那故事的我,听完后都会出声赞同,在怪谈和恐怖故事的分野当中,那的确是一个经典故事。一个就像教科书一样的恐怖谈、古色古香的故事。没错,即便我没听过那故事,听完都会觉得很耳熟,或是某些桥段很熟悉。

古典という奴なのだろう。

这就是所谓的古典吧。

神原に言わせれば、吸血鬼ほどではないにせよ、猿の手というアイテムはかなりメジャーなもので、色んなメディアで色んな風にアレンジされて、使用されているらしい。派生して派生して、生き物の進化図のように派生して、様々なバージョン違いはあるにせよ、その全てに共通し、確実に通底つうていしているのは、つまり、猿の手を猿の手たらしめている最大の要因は──

照神原的说法,这故事虽然不及吸血鬼,但猴掌这个道具相当一流,因此被许多媒体以不同的风格改编使用。作品衍生再衍生,就像生物的进化图般不停演化,最后虽出现了各式各样的版本,但有一点贯彻始终,从未变动过。那就是猴掌贵为猴掌的最大要因——

いわく、猿の手は持ち主の願いを叶えてくれる。

猴掌能够实现持有者的梦想。

いわく、ただし、持ち主の意に添わぬ形で──

但是,实现的方式会违背持有者的本意。

この二点であるらしい。

就是以上两点。

そんな、いわくつき49の、アイテム。

猴掌就是这种有问题的道具。

たとえば、大金が欲しいと願う。すると次の日、家族が死んで、その保険金が手に入るとか。たとえば、会社で出世したいと願う。すると次の日、会社が傾き、上層部が処分され、結果として、傾いた会社の中で出世することになる、とか。

例如,你许愿想要家财万贯。结果隔天家人突然横死,你也因此得到了保险金。例如,你许愿想要在公司飞黄腾达。结果隔天,公司的声势突然日落西山,上层人员被单职处分,你也因此在日落西山的公司中出人头地。

そんな感じ。

就是这种感觉。

何でも、猿の手はインドにおいて、霊験れいげんあらたかな老行者によって製作されたアイテムで、人間は運命に従って生きるべきであって、それに逆らおうとすると酷い災難に見舞われると教えるための代物であるらしい。三人の人間が三つずつ願いを叶えることができる、というような触れ込みで、物語に登場する。

故事中的猴掌是由印度那些灵验的老行者所制造的道具,目的是用来告诉众人:人类应该顺从自己的命运而生,若要违抗命运就会遭遇恐怖的灾难。故事中一开始所宣扬的一点就是:猴掌能够让三个人各自实现三个愿望。

三つの願いを叶えてくれるなんていえば、僕あたりが最初に連想するのは、アラビアンナイトの魔法のランプなのだけれど、さて、あれはどんな話で、どんなオチだっただろうか。他にも、世界中に、この手の話は、分布している。何でも願いを叶えてくれる存在が人間の前に現れるという物語形式は、決して叶え切れない膨大な欲望に支配された人間にとっては、根源的な物語形式なのかもしれない。怪談形式で最も名高いのは、やはり、『猿の手』らしいのだけれど──

说到能够实现三个愿望这点,我一开始联想到的是天方夜谭里头的神灯,那是一个怎么样的故事?结局又如何呢?这一类的故事分布在世界各地。能够实现任何愿望的道具出现在人类面前——这种故事类型,对于被无穷欲望所支配的人类来说,或许是最根本的故事形式吧。怪谈类型中最有名的,说到底还是「猴掌」——

「で──その人は、忍野メメという名前なのか? メメは、片仮名でいいのか?」

「对了,那个人叫作忍野咩咩吗?咩咩是口部吗?」

「ああ。とはいえ、名前ほど可愛らしい奴じゃないぞ。というか、言ったけど、アロハ趣味のおっさんだぞ。変な期待はしないでくれ。少なくとも、それらしくは見えないから、そこんところだけは、心構えをしておいて欲しい」

「对。不过他本人没有名字那么可爱。我之前有说过,他是一个爱穿夏威夷衫的大叔。你不要抱任何奇怪的期待。至少,他看起来不像干那行的,这点希望你要有心理准备。」

「いや……そういうことではなく、な。づらが印象的というか、象徴的というか……、まあ、別にいいのだが。しかし、メメとは、なんだかニックネームのつけにくそうな名前だな」

「我不是说这个……她的名字在字面上让人印象深刻,或许该说很有象征性……唉呀,这不是重点。不过咩咩这个名字,好像很容易被人家取绰号吧。」

「そういえば、そうだな……子供の頃、あいつ、なんて呼ばれてたんだろうな。興味なくもないけれど。……ていうか、あいつの子供時代自体、想像もつかないな」

「你这么说也是……那家伙小时候,别人是怎么叫他的呢。虽然我没兴趣知道……应该说那家伙的孩提时代本身,就让我无法想象。」

忍野の住処は、住宅街から少し離れた位置の、四階建ての学習塾跡──平たく言えば廃墟である。廃墟も廃墟、肝試しでだって近付きたくないどころか、普通に生活していれば恐らく建物という認識で目に入ることさえないだろう、風景としての廃墟である。大きな地震が来れば多分それで完膚なきまでに全壊してしまうであろう、ねんの入った廃墟だ──いや、年季といっても、この学習塾が駅前にできた大手予備校のあおりを食らって潰れたのは、精々数年前のはずなのだけれど。建物とは、数年間人が使わないだけでこんな酷いことになってしまうのだと学ばせてくれる、死に見本のような存在である。だから、住処といっても、忍野はあくまで勝手に住んでいるだけであって、言うならば不法占拠も甚だしい。私有地、立入禁止の看板に囲まれて、奴は春休みからこっちの二ヵ月を、送っているのである。廃墟内に残っていた机をベッド代わりに、日がなこの町を徘徊しているというわけだ。

忍野的住处,就在离住宅区不远的地方,是一栋四楼高的补习班旧址——简单来说就是废墟。平常所说的废墟,一般人都会有种恐怖的印象,就算办试胆大会也不会想要靠近,更别提把它当作建筑物在里面生活,外观上就是一座废墟。要是来场大地震,这栋上了年纪的废墟,恐怕会体无完肤地倒塌殆尽吧。不对,这间补习班因为站前新开的大型补习班而倒闭,也不过是几年前的事情,还称不上老旧。原来建筑物只要几年无人使用就会变得如此残破不堪,这补习班就像是一个死亡的样本,让我学习到了这一点。所以此处不是住家,不过是忍野擅自入住而已,也就是严重的非法侵占。那家伙在私有地和禁止进入的广告牌围绕下,从春假开始住了两个月的时间,直到现在。他以废墟内遗留的书桌为床,终日在这城镇中徘徊。

徘徊している。

徘徊。

そう、じっとしているわけではない。

没错,他不是一直待在这里。

だから、こうして訪ねてきてみても──奴が果たして建物の中にいるのかどうかは、出たとこ勝負である。携帯電話もPHS50も持っていない忍野に会うのは、正直、運任せの要素が強い。

因此,就算像现在一样跑来找他,他是否会在建筑物内也要听天由命。要见到没有手机和 PHS 的忍野,老实说运气因素占了很大一部分。

神原の日本家屋から、自転車で一時間少し。

从神原的日式房屋到这里,骑脚踏车需费时一个多小时。

勿論、神原なら、駆け足でも一時間少し。

当然,神原用跑的也是一个多小时。

僕達は、その学習塾跡を、見上げていた。

我们抬头仰望补习班旧址。

「ところで、阿良々木先輩。阿良々木先輩は、吸血鬼に襲われたとのことだったが──それが阿良々木先輩にとって、初めての怪異……その、怪異というものだったのか?」

「话说回来,阿良良木学长。学长曾经被吸血鬼袭击过,那是学长第一次遇到的怪异……遇到那个称作怪异的东西吗?」

「まあ、多分」

「嗯,大概是吧。」

気付いていなかっただけかもしれないけれど。

或许是我至今都没注意到。

少なくとも意識したのは、それが最初だ。

但至少吸血鬼是我第一次有意识到的怪异。

「それが春休みで、続いて、戦場ヶ原先輩に、私か……それまで何もなかったのに、ここに来て三連続とは、何か暗示的だな」

「那是在春假,然后是战场原学姐和我……学长以前根本没碰过的事情,最近却连续碰到三次,感觉好像在暗示什么一样。」

「ああ」

「嗯。」

実際は、羽川の分と八九寺の分を合わせて、五連続なのだけれど、その辺りの事情は、個人情報保護の理念に基づき、それぞれのプライバシーに配慮して、ある程度ぼかして、伏せておくことにしたのだった。

老实说,加上羽川和八九寺的部分已经连续五次了,但基于个人数据保护的理念,她们的事情必须要顾虑到两人的隐私,因此我决定适当地模糊焦点,隐瞒不提。

「一度体験したら、後も体験しやすくなるもの──らしいぜ? だから僕は、この先、ずっとそうなのかもしれないな」

「这种东西好像体验过一次,之后就很容易碰到……的样子喔?所以我以后可能会一直遇到也说不定。」

「それは辛いな」

「那还真痛苦啊。」

「別に……辛いことばかりでもないさ。怪異を体験したからこそ、普通でない体験をしたからこそ、気付いたことや、得たものだって、あるはずなんだから」

「也不全部都是……痛苦的事情。正因为体验过怪异、体验过不寻常的事情,我才能得到一些东西或注意到一些事物。」

そう言ったが、それがフォローのような、ともすれば論点をずらし、気持ちを誤魔化すような響きになるのは、避けることができなかった。実際、辛いことばかりでもないなんて、春休みの経験だけを思い出しても、ただ言を目一杯左右にしたようなものだと自分でも思う。その気まずさもあって、なんとなく、神原の左手を見る──巻き直された、真っ白い包帯。その中身は窺えないが、しかし、その正体を一度知ってしまうと、確かに、その長さやその形が、若干不自然であることが、外側からでも、わかる。わざと同じ箇所に何重にも巻くようにして、わかりづらくはしているようだけれど……。

话虽如此,但我这句话听起来像是在附和她,也像是在模糊焦点想要掩饰自己的心情,这无可避免。老实说,光是回想起春假的经验,我都觉得「不是只有痛苦的事情」这句话说得很心虚。在这尴尬心情的加成下,我不由得看向神原左手上重新缠的洁白绷带。现在虽看不到绷带底下的东西,但只要见过那只手的庐山真面目,就算从外观也能看出神原手部的长度和形状有些不自然。神原似乎刻意在同一个地方绕上好几圈,意图让人看不出来……

「阿良々木先輩と戦場ヶ原先輩は、持ち上がりでもないのに、一年、二年、三年とクラスが同じ仲だから、てっきり、前々からある程度は親しかったのかとばかり思っていたのだけれど──その話だと、つい三週間前に、初めて口を利いたということになると思うのだが」

「阿良良木学长和战场原学姐,每年都换班级却能够同班三年,我以为你们从以前开始关系就很亲密,照学长的说法听起来,你们是在三个礼拜前才第一次说话的样子。」

「絶対に初めてかと言われれば、そりゃまあ、怪しいけれど……少なくとも、あいつがくだらないミスさえしなければ、僕はあいつの秘密には気付かなかっただろうし、まあ、付き合うことも、なかったんだろうな。それに──忍野のことを知らなかったら、僕が戦場ヶ原の力になれることはなかったろうし……そういう意味ではたまたまだよ。都合がいいっていうか……不都合が悪いっていうか。神原、お前が知っていたのが猿の手であって、僕が知っていたのが吸血鬼だったっていうだけさ」

「说是第一次交谈听起来也有点奇怪啦……至少,要是她不犯那种无聊的失误,我也不会发现她的秘密,当然也就不会交往吧。而且,要是不认识忍野,我也没办法帮战场原……这样看起来只是偶然而已。要说是凑巧……还是不凑巧呢。神原,就像你知道猴掌的事情,而我刚好知道吸血鬼。」

一年前、神原が戦場ヶ原の抱える秘密に気付いたというとき──神原がそれをそれほどの抵抗なく飲み込めたのは、僕が鬼と猫をその時点で経験していたように、神原も、猿を知っていたから──なのだろう。だから、僕と神原との違いは、怪異に対する抵抗勢力としての忍野を知っていたかどうかということ。

一年前,神原发现战场原的秘密时,很轻易就会意了过来,这是因为她当时已经知道猿猴的事情吧,就跟我发现当时已经体验过鬼和猫一样。因此,神原和我之间的差异,只在于认不认识专门对抗怪异的忍野而已。

だから、考えざるを得ない。

因此,这里我不得不思考。

もしも、神原が忍野を──いや、忍野じゃなくてもいいのだけれど、戦場ヶ原に貸せるだけの力を持つ、テクノクラート51としての誰それを知っていて、一年前に、戦場ヶ原の抱える秘密を、解決できていたら。今の僕の立ち位置にいるのは、僕じゃなくて、神原じゃないのか──と。年齢や男女の違いは、とりあえず、おいておくとしたら──

要是神原认识忍野——不,不一定要忍野,她只要认识一位有办法帮助战场原的专家,在一年前就解决战场原的秘密,那现在神原是否会取代我的位置呢?先不看年龄和性别的差异——

たまたま、か。

碰巧,吧。

巡り合わせというにしても──ただの偶然。

就算是运气,说到底也不过是普通的偶然。

「気を使ってもらえるのは嬉しいばかりだが、そういうことを言わないで欲しい、阿良々木先輩。戦場ヶ原先輩はそんな人ではないさ。恩と愛と取り違えるような人ではない。そんなのは、ただのきっかけに過ぎないのさ」

「我很高兴学长顾虑到我,不过我希望学长别说那种话。战场原学姐不是那种人。她不是那种会把恩情和爱情混为一谈的人。那不过是你们认识的契机而已。」

神原は淡く寂しさを滲ませる口調で言った。

神原淡淡语气中,流露出寂寞。

「だからこそ、悔しいのだけれどな。戦場ヶ原先輩に拒絶されたとき、私は、戦場ヶ原先輩から、身を引いた。阿良々木先輩は、戦場ヶ原先輩を追いかけた。違いがあるとすれば、鬼と猿との違いなどではなく、忍野という人を知っていたかどうかではなく、その違いだったのさ」

「所以我才觉得懊悔。被学姐拒绝时,我抽身离开了学姐。学长则是追了过去。不是吸血鬼和猿猴的差异,认不认识忍野这个人也无关,如果要说的话,我们就差在这里吧。」

「…………」

決定的だな、と呟く神原。

这才是决定性的不同,神原呢喃说。

こうして話していると、意外とせい的な奴なんだな……それは、活発で潑剌としているスポーツ少女という彼女のイメージとは、裏腹な個性だった。けれど、それを後ろめたさと言うのなら、僕も神原と同様に抱えているような気がする。

在我们谈话当中,我意外发现她是一个会自省的人……这点和她活泼、精力充沛的运动少女形象,是完全相反的个性。但如果说那是一种内疚的话,我感觉自己也和神原一样有相同的问题。

なんなのだろう?

这是为什么呢?

神原とこうして話していると感じる、僕の心をちくちくと針で刺すような、この後ろめたさのような気持ちは──そんなことをする必要はないだろうに、ついつい、フォローみたいなことを、言ってしまう。

我和神原谈话的过程中,感觉到有种内疚的心情,就像针一样在刺弄我的心。刚才我没必要那么做,但却不自禁地说话想安慰她。

それがますます、後ろめたい。

这让我更加内疚。

「うん……しかし、戦場ヶ原先輩の抱えていた問題が、既に解決していたというのは、素直によかったと思う。私が礼を言うのもおかしな話なのかもしれないが、阿良々木先輩には、心から感謝させていただきたい」

「嗯……不过战场原学姐的问题已经完全解决了,我真的觉得很高兴。我来道谢可能很奇怪,不过我真的打从心底感谢学长。」

「だから僕じゃなくて、それは忍野の奴の功績なんだけどな──いや、違うな、それも違う。戦場ヶ原が助かったのは、戦場ヶ原のお陰だよ。あいつが一人で、勝手に助かっただけなんだ」

「所以说解决问题的人不是我,那是忍野的功劳。不,这么说也不对。战场原会得救是因为她自己。是她自己救了自己的。」

そういうことなのだ。

就是这样。

僕や忍野のしたことなど、たかが知れている。

我和忍野做的事情有限。

揺るぎ無く、それだけのこと──

无可辩驳,仅仅如此而已。

「そうか……そうなのかもしれないな。でも、一つ聞かせてくれ、阿良々木先輩」

「这样啊……或许学长说的没错。不过学长,我可以问一个问题吗?」

「なんだ?」

「什么问题?」

「戦場ヶ原先輩が阿良々木先輩に惹かれた理由はわかった。嫉妬や失望が、それには不釣合いなのだということも……うん、わかったつもりだ。でも、阿良々木先輩は戦場ヶ原先輩の、どういうところに惹かれたのだろうか? 二年以上、ただのクラスメイト、口も利いたことのないただのクラスメイトだったというのに」

「我知道战场原学姐喜欢上学长的理由了。我也知道……嗯,不能用嫉妒和失望去看待这件事……可是学长是看上学姐的哪个地方呢?你们只是同班两年,完全没说过话的普通同学啊。」

「それは……」

「这个……」

正面切って訊かれると、答えにくい。照れくさいというのもあるが、それ以上に、そんな風に明確な理由なんて、求められても……ただ、あの日、母の日の公園で──

当面被问到这种问题,让我很难回答。当然也有害羞的因素在内,但是要我说出一个明确的理由实在……单纯只是因为那天,母亲节在公园的时候——

ああ、そうか。

啊,对了。

なるほど。

原来如此。

この後ろめたさの正体は、それなのか。

我内疚的原因,原来是这个吗?

「……どうして、そんなことを訊くんだよ、神原」

「……为什么你要问这个问题啊,神原。」

「うん。つまりだな、もしも阿良々木先輩が、戦場ヶ原先輩の身体が目当てなら、私が代われると思うのだ」

「嗯。意思就是说,要是学长看上的是战场原学姐的肉体,那我可以代替学姐。」

「………………」

とんでもない申し出を受けた。

一个相当要不得的声明。

右手と包帯の左手で、ぎゅっと自分の胸をわしづかみにし、寄せて上げる仕草をする神原。制服姿のままなので、それが不謹慎なほどアンバランスに相まって、異様なほど艶かしい雰囲気を漂わせる、蠱惑的なポーズだった。

神原用右手和包着绷带的左手,一把抓住自己的双峰,集中托高。她做出这种和身上制服格格不入的轻率姿势,更让她飘散出一种异样的妖艳气息,充满诱惑的魅力。

「私はそこそこ可愛いと思うのだ」

「我觉得自己还算满可爱的。」

自分で言いやがった。

居然自己说出口了。

「髪の毛を伸ばせばもう少し女の子らしくなると思うし、肌ツヤも綺麗に保っている。それに、うん、昔からスポーツをやっているからな、ウエストの辺りなんかほどよくくびれて、引き締まったいい身体をしているのだ。男好きのする素敵なボディだと、言われたことがあるぞ」

「我只要再把头发留长一点,应该会变得比较有女人味,而且我肌肤的光泽也保持得很漂亮。还有,嗯,我从以前就一直在运动,所以腰部线条还算不错,整个身材相当紧实坚挺。还有人夸奖过我,说我的身材是男生会喜欢的完美身材呢。」

「それを言った奴を連れて来い、殺してやるから」

「你把说那话的人带来这里,我要宰了他。」

「部活の顧問だ」

「是我社团活动的顾问老师。」

「世も末だな!」

「世界末日了!」

「殺されては困る。出場停止になってしまう」

「他被杀掉我会很困扰的。这样我们就要停赛了。」

神原は、どうなのだ、と僕に重ねて問う。

怎么样?神原再次问我说。

冗談で言っているわけではないらしく、そして冗談半分でも冗談交じりでもないらしく、真剣そのものの剣幕で、執拗に、神原は僕に、イエスかノーかの二者択一を迫ってくる。

她看起来不像在开玩笑,而且也不像在半开玩笑,气势汹汹的态度十分认真,一直要逼我在 YES 和 NO 之间做一个选择。

「私の覚悟は本物だぞ。阿良々木先輩が求めるのなら、いつでもどこでも、阿良々木先輩の攻めを受け切るつもりはある」

「我的觉悟是认真的。只要学长想要,我随时随地都可以接受学长的『攻』。」

「攻め!? 受け!? なんで僕がそんなもんを求めなくちゃならないんだ!?」

「『攻』?『受』?为啥我必须去追求那种东西!」

「ん? ああ、そうか。阿良々木先輩はBLの素養がないのか。意外だな」

「嗯?啊!原来如此。学长没有 BL 的相关知识吗。真让人意外啊。」

「後輩の女子とBLの話とかしたくねえよ!」

「我不想和自己的学妹讨论 BL 的话题!」

「ん? BLとはボーイズラブの略だぞ?」

「嗯?BL是 Boys’ Love 的略称喔?」

「知っている! そこで勘違いはしていない!」

「我知道!我没有搞错这个字的意思!」

ああ、気付いてはいたさ。

是啊,我早就发觉到了。

神原の部屋を片付けたとき、散らかっている書籍の中に、いかにもそういうジャンルの表紙のものが大量に混じっていたことくらいは!

我在打扫神原房间时,早就看到散乱的书籍当中,确实有大量那种类型的封面混杂在里头!

でも、敢えて触れなかったのに!

可是我故意不去碰触那个话题!

見なかったことにしたのに!

我故意装作没看见的说!

「勘違いはしていないのか。反応からして、てっきりそうだと思ったのに。ならば、阿良々木先輩は今、一体全体何に怒っているのだろう? 私は阿良々木先輩の気分を害するようなことを言ったつもりはなかったのだが、ひょっとして、阿良々木先輩は受けなのか?」

「原来学长没搞错啊。从学长的反应来看,我还以为你一定搞错了呢。那学长现在到底在气什么呢?我应该没有说什么让学长不高兴的话吧,该不会学长其实是『受』?」

「この話はもう終わりだ!」

「这个话题就到此结束!」

「私はネコ52だから、攻めにはなれない」

「我是 NEKO,所以我当不了攻。」

「ん……? え、わからなくなったぞ?」

「嗯……?这边我就听不懂了。」

猫?

猫?

踏み込んではならない領域に入ってないか。

我还没踏进不可踏入的领域之内吗?

薄氷を踏むような会話をしている気がする。

总觉得这对话好像踏在薄冰上一样。

「大体、神原、男と女でどうしてBLを演じなくちゃいけないんだ。全くと言っていいほど必然性がないだろうが」

「况且,神原,为什么我们一男一女要演 BL 啊。根本完全没有那个必要吧。」

「しかしな、阿良々木先輩。私は、処女は戦場ヶ原先輩に捧げたいと──」

「可是啊,阿良良木学长。我想要把处女之身奉献给战场原学姐——」

「聞きたくねえ!」

「我不想听!」

薄氷は割れて、会話は水没した!

薄冰破了,谈话被水淹没了!

戦場ヶ原ひたぎと神原駿河、お前ら二人がかりで、僕の女性幻想を完膚なきまでに破壊しようとしてんのか! 今確信した、僕の危機管理意識が断言した、お前ら間違いなく、先輩後輩の旧知、ヴァルハラコンビだよ!

战场原黑仪和神原骏河,你们两个连手,想要把我对女性的幻想破坏得体无完肤吗!?我现在完全相信了,我的危机管理意识下了断言,你们两个绝对是学姐学妹旧知,圣殿组合!

幸せが大挙をなして、抜き足差し足忍び足、駆け足早足急ぎ足で、足並みを揃えて逃げていくのを全身でひしひしと感じつつ、深くため息。

我深刻地感觉到,全身的幸福蹑手蹑脚、快步急跑地大举离我而去,一边深叹了口气。

ああ……もう本当、身体目当てとかなんとか、弾性に富んだわがままで男好きのする素敵なボディとかなんとか、精神が磨り減り身を削るような際どい会話ばっかりだ……あいつはあいつでおませ53さんだけれど、それでも昨日の八九寺との会話は、変にすれてなくて本当に楽しかったよなあ──なんて、小学生との会話を懐かしむ僕だった。

啊啊……真是够了,什么目的是身体,什么弹性柔软讨男性喜欢的惹火身材,我们怎么一直在聊这种会磨耗精神、近乎下流对话啊……我开始怀念和小学生聊天了。八九寺那家伙虽然早熟,不过我们聊的话题很纯真,真的很快乐。

末期症状である。

我这是末期症状。

「恐れながら、差し出がましいことを言わせていただくが、阿良々木先輩。後輩の女子とお下劣な会話を楽しめないようでは、社会に出てからやっていけないと思うぞ? 女性幻想など、早めに捨てておいた方が正解だ」

「抱歉,我这么说可能太多嘴了,不过阿良良木学长,我觉得如果学长不能和学妹享受这种下流的话题,出社会可是吃不开的喔。学长最好早点舍弃对女性的幻想才好。」

「それこそ後輩の女子に諭されたくないよ」

「这点我不需要学妹开导我呢。」

それから、お下劣という言い方もどうだろう。

还有下流这个词也很奇怪。

他の言い方をすればいいというわけでもないが。

但也不是说用别的词汇替代就行得通。

「そうは言ってもな、阿良々木先輩。しつこいようだが、実際問題、そのような薄っぺらい女性幻想に基づいて貞淑であることを求められても挨拶に困るぞ。仕方あるまい、女の子だってエッチな話に興味があるのだ」

「话虽如此,阿良良木学长。我这样讲你可能听得很烦,但老实说,学长基于自身肤浅的女性幻想,想要我贞洁贤慧一点的话,我会不知道该怎么回答你才好。这没办法,因为女生也喜欢色色的事情。」

「はあ……」

「哈」

それはそれで、別の女性幻想をかきたてられるエピソードなのだけれど……戦場ヶ原とかお前とかの場合、そういうのとはまた境遇が違うと思うんだよなあ。

这样讲反而会让我挑起另一种女性幻想……不过战场原和你的情况,和那种幻想的境遇,我想是完全不同吧。

「さあ、それでは、阿良々木先輩はブリーフ派かトランクス派かという話を続けようではないか」

「好了,那我们继续回来讨论学长是三角裤派还是四角裤派的话题吧。」

「そんな話をしてはいなかったぞ!?」

「我们没聊那种话题吧!」

「あれ? 私がスパッツの下にパンツを穿いているかどうかという話だったか?」

「奇怪?那我们是在聊,我的紧身裤里头有没有穿内裤的话题吗?」

「穿いてないんですか、神原さん!?」

「你没穿吗?神原同学!」

動揺のあまり、丁寧語になってしまった。

我动摇之余,连称谓都加上了。

「じゃ、じゃあ、その、スカートからはみ出しているスパッツの下は……!」

「那、那你那件跑出裙子的紧身裤里头……!」

「たとえそうだったとしても驚くほどのことではないだろう。スパッツというのは元々肌着の一種だからな」

「就算我真的没穿也不用那么惊讶吧。紧身裤原本就是贴身衣物的一种。」

「だったら尚更、より一層だ! 常にパンツ見せびらかしながら生活してるようなもんじゃねえか、それ!」

「那就更夸张、更离谱了!这不就等于你每天都过着内裤外露的生活吗?」

しかも、お前……走ってるときとか飛び跳ねてるときとか、まにまにめくれまくってたぞ、そのスカート!

而且,你……跑步和跳跃的时候,那件裙子可是会顺势翻起喔!

「ふむ。そう言われればその通りなのだが、まあその辺りは、さしずめスポーツ少女からの小粋な贈り物といったところだな」

「嗯。学长这么一说也对,唉呀,那就当作是运动少女赠送的精美小礼品吧。」

「違う、露出狂の変態的行為だ!」

「不对!你那是暴露狂的变态行为。」

「ああそうだ、思い出した、そんな話もしていなかったぞ。私が戦場ヶ原先輩の代わりになれるかどうかと──」

「啊!对了,我想起来了。我们也不是在聊这个。我们是在聊我可不可以代替战场原学姐——」

「待て、ことの真相をはっきりさせないままに話を戻そうとするな! 本当は穿いているのか、それとも本当に穿いていないのか、ちゃんと明言するんだ!」

「给我等一下,在真相还没搞清楚前,你别想回到原来的话题!你是有还是没穿,快点讲清楚!」

「そういう下卑げびた事情は割愛かつあいしようではないか、阿良々木先輩。些細なことだ」

「那种下流的事情我们就跳过吧,阿良良木学长。不过是件小事。」

「些細じゃねえ、僕の後輩がスポーツ少女か露出狂かの分水嶺だ!」

「兹事体大,这是我的学妹是运动少女还是暴露狂的分水岭!」

エッチかどうかはともかく。

先不管这话题有无颜色。

至極、どうでもいい話が続いている。

接着,非常没意义的谈话又再度展开。

「そうだな。では、こう考えたらどうだろう。スポーツ少女でもありまた露出狂でもある。スポーツ少女だと思う者にはスポーツ少女であり、露出狂だと思う者には露出狂なのだ」

「嗯——那这样想如何?我是运动少女也是暴露狂。觉得我是运动少女的人就是运动少女:觉得我是暴露狂的人就是暴露狂。」

言葉で遊ぶな! 『○○でもあり××でもある、○○だと思う者には○○で、××だと思う者には××だ』っていう台詞が格好いいのは中学生までだ! お前は僕の妹か!」

「不要玩这种文字游戏!『我是OO也是XX。觉得我是OO的人就是OO;觉得我是XX的人就是XX。』这种台词只能帅到国中为止!你是我妹吗!?」

どうでもよさもここに極まった。

极其不重要的话题。

これ以上ないどうでもよさだ。

没有比这更没意义了。

「……でもな、神原。真面目な話、どんなに頑張ったところで、お前じゃ、戦場ヶ原の代わりにはなれないよ」

「……不过,神原。老实说,你不管再怎么努力,都没办法代替战场原的。」

「…………」

代わりにはなれない。

无法取代。

別に、このことだけを言っているのではなく。

我要说的不仅是这点。

「お前は戦場ヶ原じゃないしな。誰かが誰かの代わりになんてなれるわけがないし、誰かが誰かになれるわけなんかねーんだよ。戦場ヶ原は戦場ヶ原ひたぎだし、神原は神原駿河なんだから。いくら好きでも、いくら憧れてても、いくら憧れても」

「因为你不是战场原啊。谁也不能代替谁,谁也不能变成谁。因为神原是神原骏河,战场原是战场原黑仪。就算你再怎么喜欢她,再怎么崇拜她,再怎么仰慕她。」

「……そうだな」

「……说得对。」

沈黙の後、頷く神原。

神原沉默后,点头说。

「阿良々木先輩の言う通りだ」

「阿良良木学长你说得对。」

「ああ。じゃ、無駄口叩いてないで、もう行こうぜ。ていうか、いい加減そのポーズを解除しろ。さっきから僕が自分の胸を揉みしだいている女子高生と会話している奴になっている。こんなシュールな絵はねえよ」

「嗯。那我们不要再打屁了,走吧。还有,拜托你快点停止那个姿势吧。我从刚才开始,一直在和一个猛揉自己胸部的女高中生说话。没有比这更难以理解的景象了。」

「む。それは気付かなかった」

「呜。这点我没注意到。」

「気付け」

「注意一下吧。」

色んなことに、早く気付け。

有许多事情,你必须快点注意到。

「本当に早くしないと、そろそろ日が暮れてしまいそうだな──夜になったらやばいんだろ? その左手」

「我们不快点的话,太阳就要下山了。到晚上那只左手可就糟糕了吧?」

「うん。逆に言えば、日のある内は問題がないということだ。少なくとも、あと数時間くらいは確実に大丈夫だな」

「嗯。反过来说。只要太阳还在就没问题。至少在几个小时以内它不会发作。」

「そっか……活動時間が夜だけだっていうのは、なんとなく、僕としては吸血鬼を思い出さざるをえないな……」

「是吗……活动时间只限夜晚这点,让我不由得想起吸血鬼啊……」

ビルディングを囲む金網に沿うように神原と一緒に歩いて、そこに大きく開いた穴を見つける。三週間前、戦場ヶ原と共に、この穴をくぐったのだ──今回は、その後輩の、神原と一緒に。

我和神原沿着围绕大楼的铁丝网向前,随后在铁网上找到了一个大破洞。三个礼拜前,我和战场原一起钻过这个破洞。这次则是和学妹——神原一起。

縁もゆかりもありやしないと思っていたけれど。

我虽然不相信什么因缘际会。

こうなるともう、合縁あいえんえんだ。

但这已经是一段奇缘了。

袖すり合うも54、何とやら。

萍水相逢,自是什么来着。

「足元、気をつけろよ」

「注意你的脚边。」

「うん。ご親切にどうも、だ」

「嗯。谢谢学长的提醒。」

ぼうぼうに生え放題の草をかきわけるようにして、後ろを来る神原が歩き易いように道を整えながら先へ進み、しかし、今からこの有様だと、夏場には一体どうなってしまうのだろうかと考えながら、崩壊寸前の、ともすれば崩壊後とすら見えてしまいそうな、学習塾に、入る。

我拨开杂乱丛生的杂草,一边整理出一条路同时向前进,让后来的神原能够定得轻松些。现在草就长成这样,到了夏天这里会变成什么德性呢,我一边思考一边走进即将倒塌——或者该说看上去已经像倒塌过后——的补习班。

散らかりっぱなし。

里头一片狼藉。

コンクリートの欠片だったり空き缶だったり看板だったり硝子だったり、なんだかわからないものだったりが、散らかりっぱなし、散らばりっぱなし。電気が通っていないから、夕方の段階で既にほの暗い建物内は、普通に見るよりもずっと、朽ち果てているように見える。忍野も、暇なのだったら、せめて建物の中だけでも綺麗にしておけばいいのに、と思う。こんなところで暮らしていて、ブルーにならないのだろうか。

内部四处都是水泥碎片、空罐、广告牌、玻璃,还有一些莫名其妙的东西,杂乱不堪地散乱一地。这里没有电,所以建筑物内部才傍晚就一片昏暗,看起来比平常还要更腐朽老旧。忍野要是很闲的话,至少把里头打扫干净吧,我心想。生活在这种地方,心情不会觉得忧郁吗?

まあ、それでも神原の部屋よりは幾分マシか……。

唉,这里至少比神原的房间还要好上几分……

戦場ヶ原はこの建物の散々な有様具合、忍野の自堕落ぶりに眉を顰めていたけれど、神原なら、その心配はないな……。

战场原当时看到这建筑物凄惨的模样,不禁对忍野的懒散皱起了眉头。神原的话,我就没必要担那个心了……

「汚い。酷いな、これは感心しないぞ。ここで暮らしているというのなら、忍野という人は、どうして掃除をしないのだろう」

「好脏。这也未免太离谱了,实在让人无法恭维啊。那个叫忍野的人既然都住在这里,为什么不打扫一下啊。」

「…………」

変なところで他人に厳しい女だった。

这女人在奇怪的地方上,对其他人还真严格。

というか、こいつ、ひょっとしたら自意識っていうのが、あんまりないのかもしれないな……。自分に自信があるからこその堂々とした態度だと思っていたが、案外、そういった側面もあるのかもしれなかった。

应该说,或许这家伙对自己房间的脏乱没什么自觉吧……我以为她是对自己有自信才会摆出那种堂堂正正的态度——然而,她或许也有这叫人意外的一面。

それは、戦場ヶ原とは違うところだ。

这是她和战场原不同的地方。

あの女の自意識は、異常である。

她的自觉太异常了。

忍野がねぐらにしているのは、主に四階。

忍野的老巢主要在四楼。

薄暗い中──僕は歩く。

我走在昏暗之中。

入り口から離れるに連れて、どんどん闇は深くなる──不覚だった、もう僕は何度も来ているのだから、懐中電灯くらい、持ってくればよかった。戦場ヶ原に託された、十万円の入った封筒は、持ってきたのだけれど──つまり、今日は最初から、神原の話がどうであれ、ここには来るつもりだったのだから、それなら、それくらい気を回してもよさそうなものだったのに。

离入口渐行渐远后,黑暗逐渐加深。我失策了,已经来过这么多次,今天至少要带个手电筒来才对。不过,战场原托付给我的十万块信封倒是有带来。也就是说,今天打从一开始,我不管和神原谈得如何都打算来这里一趟,既然如此,我应该注意到灯光这点啊。

でもなあ。

但是,

時と場合によるけれど、僕、今はもう、あんまり、暗いのとか、平気だからな……ついつい、そういう当たり前のことを、失念してしまう。

虽然要看时间和场合,但我现在可以毫不在乎地走在暗处……才会一时忘记灯光这种理所当然的问题。

吸血鬼だった頃の、名残、というか。

这是我曾为吸血鬼的影响吗?

「…………」

階段に辿り着いたところで振り向くと、神原の足取りは、非常に、おっかなびっくりの、ふらつき調子だった。かなり危うい、暗いのは苦手らしい。普段、気丈なスポーツ少女であるだけに、尚更その歩調が危うく、心細く頼りなく、見えてしまう。そのまま階段を昇れというのは、こうなると酷かな……左手はともかくとして、こんなことで、大事な足でも怪我をしたら、ことだしな……。前に戦場ヶ原をここに連れてきたときは、そうだ、手を繫いでやったものだけれど……。

爬上楼梯后我往后一看,神原的脚步非常提心吊胆,摇摇晃晃。看上去相当危险,看来她似乎很怕黑。正因为她平常是一个坚强的运动少女,现在的危险步伐看起来更彷徨无助。要她这样爬楼梯,实在有点残酷……先不说她的左手,要是她在这里弄伤最重要的双脚……先前带战场原来这里时,对了,我有牵她的手引导她……

戦場ヶ原と初めて手を繫いだのは、あのときだ。

第一次和战场原牵手,就是在那时候。

うーん……しかしどうしたものか。自転車の二人乗りを神原が辞したのは、その辺りのことを考えてというのもあるのだろうし、考えてみれば僕にしたって、戦場ヶ原における浮気の基準の厳しさは、昨日この身をもって教えてもらったところだからな……。

嗯——可是现在呢。今天神原会谢绝脚踏车双载,就表示她有顾虑到身体碰触的事情。再仔细想想我自己,战场原对出轨的基准很严格,这点昨天我已经切身领教过了……

「おい、神原後輩」

「喂,神原学妹。」

「なんだ、阿良々木先輩」

「怎么了?阿良良木学长。」

「右手を前に伸ばせ」

「你吧右手伸出来。」

「こうか?」

「这样吗?」

「よし。合体だ」

「好。合体。」

その手の先をつまむようにして引っ張って、そのまま僕の学生服のスラックスに通した、ベルトを握らせた。

我抓住她的指尖拉了过来,让她握住我系在学生裤上的皮带。

「こっから階段だから。つまずかないようにな。ゆっくり昇るからさ、気をつけろ」

「从这边开始是楼梯。小心不要跌倒了。我会慢慢爬,你小心一点喔。」

「…………」

いくらなんでもこのくらいの物理的接触ならば、戦場ヶ原規格でも浮気にならないだろうという、名案だった。我ながら、滅茶苦茶詭弁臭かったが、これで戦場ヶ原に対しては、とりあえずの言い訳が立つ。

不管怎样,这种程度的物理接触,用战场原规格来检视,应该也不构成出轨吧。实在是一个好方法。虽然这听起来像是诡辩,但这样至少我能对战场原有个交代。

「優しいんだな、阿良々木先輩は」

「你好温柔喔,阿良良木学长。」

神原は、まるでベルトの強度を確認でもするかのように、ぎゅっと握って引っ張るようにしながら、そう言った。

神原似乎在确认皮带的坚韧度,紧握拉扯的同时,一边说。

「よく言われないか? 優しくていい人だと」

「大家常常说你是个温柔的好人吧?」

「そんな無個性を取り繕うみたいな言葉、よく言われたくねえよ」

「那种话好像是在替自己的没个性打圆场一样,我才不希望常听到呢。」

「暗がりの案内一つに至るまで、私や戦場ヶ原先輩との関係に気を使ってもらえるなど、心底有難いばかりだぞ。心遣い痛み入る、憎い計らいとはこのことだ」

「就连在暗处带路这点,学长都考虑自己和对方的关系,我打从心底觉得很感谢。学长的关心让我甚感惶恐,处理方式也让我很佩服。」

「……思惑はバレバレなのか」

「……我的用意被你看穿了吗?」

鋭いなあ。

她还真敏锐。

普通、わからないだろ、そんなの。

一般人根本看不出来吧。

ていうか、わかったならわかったで、わざわざ言うなよ、そんなこと……滅茶苦茶決まりが悪いじゃないか。茶化した風を装った分だけ、かなりいたたまれない。

应该说,知道就算了,不用故意说出来嘛……这会让人很难为情不是吗。就算你假装在开玩笑,也会让人羞得无地自容。

「阿良々木先輩。一つ、訊きたいのだが」

「阿良良木学长。我想问你一个问题。」

「なんだよ。受け攻めの話以外なら、なんでも訊いてもらって構わないぞ」

「干嘛啊。只要是攻受以外的问题,你尽管问没关系。」

「ああ、受け攻めの話は後回しだ」

「好,攻受的问题待会再说。」

「受け攻めの話もあるのかよ!」

「你还想再讲攻受啊!」

「あとはパンツの話と露出狂の話がある」

「另外还有内裤和暴露狂的事情。」

「蒸し返すな!」

「不要冷饭重炒!」

「正直、エッチな話以外はしたくない」

「老实说,我只想谈色色的事情,其它都不要。」

「そんなキャラが存在してたまるか! 訊きたいことをさっさと訊け!」

「真这样我哪受得了!有问题就快问吧!」

「今までの話の感触からすると……どうも阿良々木先輩は、戦場ヶ原先輩に、私のことを全く話していないみたいなのだが」

「从至今的对话来看……学长好像没有对战场原学姐说我的事情。」

「はあ? いや、話してるよ。それで、お前と戦場ヶ原が、ヴァルハラコンビだったことを、僕は知ったんだから」

「嗄?不对,我有说过啊。就是因为我说了,才会知道你和战场原以前是圣殿组合。」

正確には、ヴァルハラコンビという単語自体は、羽川から聞いたものなのだけれど、戦場ヶ原本人に確認を取らなければ、戦場ヶ原ひたぎと神原駿河の関係性というものは、僕にはわからなかった。推測はできても、推測の域は出なかった。羽川に聞こうとも思わなかっただろう。

正确来说,圣殿组合一词是从羽川那边听来的,不过要是我先前没和战场原本人确认,就不会了解战场原黑仪和神原骏河之间的关系。就算我推测得出来,也跳不出推测的框架。更不会想要去问羽川吧。

「そうではなく──私の左手のことだ。私の左手が、阿良々木先輩を襲ったということを……」

「我不是说那个……我是在说我的左手。我的左手攻击阿良良木学长的事情……」

「ああ、そっちのことか。うん、それは話す余裕が、まだなくて……昨夜はそれどころじゃなかったし、それに、真相もわかってなかったし、お前の左手がそんなことになってるってことも、知らなかったし。そもそもお前が犯人だってことに対する確信すらも、全然なかったわけだしな。山勘もいいところだった。あれについては、今のところ、自転車で電柱にぶつかったということになっている」

「啊,是那个啊。嗯,我没有机会和她说……昨天也不是说那些的时候,而且我也不知道真相,也不知道你的左手变成了这样。说到底,我没办法确信你是犯人。要瞎猜也要有个限度。所以我昨天只跟她说,是我自己骑脚踏车撞到电线杆的。」

「しかしあそこまで周辺被害がでたのに、それで大丈夫なのだろうか?」

「可是昨天连那附近都坏得那么严重,学长的身体不要紧吗?」

「そこは元吸血鬼の身体、警察や病院はご法度でな。表沙汰になると僕も困るんだよ。勿論、お前のこと、戦場ヶ原に、いつまでも秘密にしておくってわけにはいかないだろうけどさ……でも、それは、僕が言うよりも、神原が言うべきことだろうと思ったから」

「我原本是吸血鬼的身体,可不能去找警察或去医院,事情要是闹大我也会很困扰。当然你的事情我不打算一直瞒着战场原……但是我觉得你应该亲口告诉她,不是由我来说。」

「私が」

「我?」

「優しいわけでも、いい人なわけでもないんだよ。ただまあ、色々、思惑が──」

「我既不温柔,也不是好人。我只是呢,有各种的考虑——」

姑息な計算が。

权宜上的考虑。

腹黒い、未練が。

坏心的留恋。

僕には、絶対に、できないことを──

一件我绝对做不到的事情——

「……ん。おっと」

「……嗯。唉呀!」

三階と四階との間の踊り場に、忍がいた。

来到三楼和四楼间的拐弯处,忍出现在眼前。

忍野忍。

忍野忍。

外見年齢八歳くらいの、透き通るように肌の白い、ヘルメットにゴーグルの、金髪の少女──踊り場に、直接腰をつけて、脚を折りたたむように、体育座りをしている。金髪だからそうは見えないけれど、佇まいとしてはさながら座敷童子わらしのようだった。

一位外表只有八岁左右、有着晶莹剔透的雪白肌肤、头上戴着防风眼镜帽的金发少女,双手抱住曲起的双脚,坐在楼层间的空旷处。她的样子宛如座敷童子,只不过金发让她的相似度打了折扣。

思わず、声を出して驚いてしまった。

我不由得惊讶出声。

忍は、じぃっと、階段を昇ってきた僕と神原を、きつく睨むようにしている。恨めしそうな、いかめしそうな、物言いたげな、物足りなげな、そんな複雑な色の眼で。 「…………」

忍朝着上楼的我和神原狠瞪了过来。那眼神带有憎恨、严厉、寂寞、不满如骨鲠在喉,复杂难解。

「…………」

無視。

我无视。

僕は、眼を逸らすように、無視し、黙殺するように、忍を迂回するようにして、そのまま、四階に、向かう。それ以外の対応を思いつかなかった。……しかし、どうしてこんな、中途半端な踊り場なんかにいるんだ? あいつ。忍野と喧嘩でもしたのだろうか……。

我挪开视线,无视忍的存在,绕过她继续走上四楼。我想不到其它的对应方式……可是为何那家伙会坐在这要上不下的楼梯间?她和忍野吵架了吗……

「な、なあ、阿良々木先輩。なんだ? あの子」

「我、我说,阿良良木学长。那个孩子是怎么回事?」

四階に辿り着いたところで、やや冷静さを欠いた、上っ調子な声で神原は言った。まあ、何の説明もなしにあんな少女が、こんな廃墟の中で体育座りをしているのを見たら、気に留めるなという方が、無茶だろうけれど……それでも、神原は今、身体の一部が怪異と化している。ひょっとすると、忍から、感じ取るものがあったのだろうか?

走上四楼后,神原的语气稍微欠缺冷静,轻浮地问。毕竟我什么也没告诉她,突然看见一个女生双手抱脚坐在废墟里头,要她不在意才难吧……不过,神原现在身体的一部分也化成了怪异,该不会她在忍身上感觉到什么东西了吧?

「めちゃくちゃ可愛かったな!」

「她超级可爱的!」

「今日一番の笑顔で何を言ってるんだお前は!」

「你用今天最灿烂的笑容在说什么鬼东西啊!」

「抱きしめたい……いや、抱かれたい!」

「我好想抱紧她……不对,我希望她能拥抱我!」

「結構気の多い奴なんだな!」

「你还挺三心二意的嘛!」

一途じゃなかったのかよ。

你不是很专情吗?

しかも相手は子供だぞ……。

而且对方可是小孩喔……

「そういうことは思っても黙っておいてくれ……」

「那种事情就算想也不要说出来……」

「しかし私は阿良々木先輩に隠しごとをしたくない」

「可是我不想瞒着阿良良木学长。」

「だからってせき裸々らら過ぎるだろ、お前は」

「就算是这样,你也说得太过赤裸裸了吧。」

「赤裸々?」

「赤裸裸?」

「裸というキーワードに反応するな! 迂闊に三字熟語も口にできないのかよ、からみづらいにも程があるだろうが!」

「不要对裸这个字反应这么大!这么简单的二字熟语你都不会吗,让人难接话也要有个限度吧。」

だけど、さかいなしというか、別に戦場ヶ原に関してだけ百合ってわけじゃないんだ、こいつ……女性幻想に限らない様々な幻想を次々と絨 毯爆撃のごとく打ち崩され、とりあえずこいつには八九寺を絶対に紹介しないことを心に誓いつつ、僕は暗澹たる気持ちをそのままに、神原に言った。

不过,这家伙简直是杂食类,她的百合不只限于战场原而已……她这样一次又一次对我做地毯式轰炸,打碎了我包括女性幻想在内的所有幻想。我在内心发誓打死也不把八九寺介绍给神原,同时用黯淡的心情对她说:

「……まあ、あれには──関わらない方がいいよ」

「……她喔,那个……你不要管比较好。」

吸血鬼。

吸血鬼的——

──の、成れの果て。

落魄下场。

吸血鬼。

吸血鬼的——

──の、搾りかす。

残渣。

それが、あの金髪の少女、忍野忍なのだから。

这就是那个金发少女,忍野忍。

鬼のいぬ間に洗濯──だ。

趁鬼不在的时候洗衣服。

「ふうむ。そうか……口惜しいな」

「嗯哼。是喔……真可惜。」

「今日一番の残念顔も見せてもらったところで、もう着いたぜ、神原。さて、忍野の野郎はいるんだかいないんだか、どうなんだか……いなかったら明日にしようなんてわけにゃ、いかねーからな。僕の命が大ピンチだ」

「在你用今天最遗憾的表情看我的时候,我们已经到了,神原。我不知道忍野那家伙在不在……如果他不在的话,我们也不能等明天再来吧。这可攸关我的小命。」

「……すまない」

「……抱歉。」

「別に嫌味で言ったつもりはないよ。お前が気に病むことなんて何もない」

「我没有讽刺你的意思。你不用放在心上。」

「いや、それでは私の気が済まない。お詫びはさせてもらわねばならないだろう。そうだ、阿良々木先輩、阿良々木先輩の好きな色は何色だ?」

「不,这样我没办法释怀。我要向学长赔罪才行。对了,阿良良木学长喜欢什么颜色?」

「あ? 色? 何かくれるのか? そうだな、別にこれってのはないけど、しいていうなら水色かな」

「啊?颜色?你要给我什么?颜色嘛,我是没特别喜欢的啦,勉强要说的话大概是水蓝色吧。」

「そうか、わかった」

「这样啊,我知道了。」

と、頷く神原。

神原点头说。

「では、これから阿良々木先輩と会うときは、できる限り水色の下着を着用することを約束しよう」

「那我答应学长,以后我跟学长见面的时候,会尽量穿水蓝色的内衣裤。」

「お前のエッチに僕を巻き込むな! 僕のせいみたいになってんじゃねえか! お前はただの欲求不満だ!」

「不要把我卷进你的黄色世界里!这样说不就等于好像是我的错一样嘛!你只是欲求不满而已吧!」

四階にある、三つの教室。どれも扉が壊れている。いるのなら、この三つの教室のどこかに、忍野はいるはずなのだけれど──

四楼有三间教室。每一间的门都坏掉了。假如忍野在的话,他肯定在这三间教室里的某处——

一番目の教室は外れ。

第一间教室,空无一人。

二番目の教室に──忍野はいた。

第二间教室,出现了忍野的身影。

「遅いよ、阿良々木くん。待ちくたびれて、もう少しで寝ちまうところだった」

「你好慢啊,阿良良木老弟。我等你等得不耐烦,差点就睡着了。」

忍野メメは──罅が入って割れまくった、つまずくどころか、裸足で歩いたら深い切り傷を負いそうなリノリウムの床に、それはもう腐っているんじゃないかというような変色した段ボールを敷いて、その上に寝転がったままの姿勢で、開口一番、そんなことを言った。相も変わらず仔細構わず、まずは見透かしたようなことを言った。

教室内铺着油布,上头布满了裂痕,别说是会绊倒,就连赤脚走过都有可能会被深深割出一道伤口。忍野咩咩在地上铺了一块变了色、看似腐烂的瓦楞纸箱,躺在上头,一开口就是这句话。他还是老样子,不管事情的原因为何,开口第一句就仿佛看透一切似的。

皺だらけの、サイケデリックなアロハ服、ボサボサの髪、総じて、汚らしい風体。清潔感や清涼感などという単語は、この男とは全く無縁の世界の単語である。この廃墟に相応しい格好であるといえばその通りなのだが、ではこの廃墟で暮らすようになる前は、果たして、忍野がどんな見た目だったのかといえば、今やもう想像すらもできない。

他身上穿着一件色彩奇幻、皱巴巴的夏威夷衫,头发蓬乱,整体看起来就很肮脏。这个男人和整洁与清爽等词汇完全没有缘分。他的造型正好和这栋废墟相符,不过他在此生活之前,外表看起来究竟是怎样呢?现在我完全无法想象。

忍野は面倒そうに、頭をかいた。

忍野一脸麻烦似地搔搔头。

そして、それから──もう辿り着いたというのに、不安からか、それともいかにも胡散臭い忍野に対する警戒からか、僕のベルトを握った右手を離そうとしない、半身を僕で隠すようにしている神原に、気付く。

接着,他注意到半躲在我身后的神原。神原或许是不安,也可能是出自对忍野这可疑人物的警戒心,我们明明已经爬上楼梯,她却不打算放开握在我腰带上的右手。

「なんだい。阿良々木くん、今日はまた違う女の子を連れているんだね。きみは会うたんびに違う女の子を連れているなあ──全く、ご同慶の至りだよ」

「搞什么啊。阿良良木老弟,你今天又带不一样的女生来喔。每次你来找我都带不一样的女生,真是可喜可贺啊。」

「うるせえ。同じ台詞を何度も言うな」

「烦死了。同样的话你要讲几次。」

「そんなことを言われても、同じシチュエーションなんだからしょうがないじゃないか。引き出しが少ないんだよ、この僕は。ん? しかも、また前髪直線の女の子だね。制服からすると同級生かい? 阿良々木くんの高校は、校則で髪型が規制されているのか? そりゃ随分と古めかしい制度が残っているんだね、興味深い」

「你要这样说我也没办法,因为每次的情况都一样啊。我辞穷嘛。嗯?而且又是直浏海的女生呢。从制服看起来是你同学吗?阿良良木老弟的高中,校规有规定发型吗?这制度还真古色古香呢,太有趣了。」

「そんな校則はねえよ」

「哪来那种校规啊。」

偶然だ。

一切都是偶然。

というか、ロングとショートの違いはあるとは言え、戦場ヶ原と神原との髪型がかぶっているのは、神原が戦場ヶ原の真似をしているからだろうと思う。戦場ヶ原の髪型の理由は知らないけれど、羽川は、まあ、真面目の象徴として、なのかな。そんなところだろう。

应该说,战场原和神原的头发虽然一长一短,但发型上却有相似之处,我想这是因为神原在模仿战场原的关系吧。我不清楚战场原用那发型的理由,但羽川我知道。她的发型大概是认真的象征吧。

「じゃあ、やっぱり阿良々木くんの好みなのか。ふーん。ならば阿良々木くん、今度、忍ちゃんの髪も、切っておいてあげるよ。忍ちゃんはほとんど伸ばしっぱなしだからな、散髪するにはいい頃だろう。だから次はワンレンの女の子を連れてきて欲しいなあ、阿良々木くん。無駄かもしれないけれど、希望を出しておくよ」

「那这是你个人的喜好咯?嗯——既然这样阿良良木老弟,下次我会为了你把小忍的头发剪成那样的。小忍头发太长,差不多也该剪了。我希望你下次可以带一个长发、发尾水平剪齐的女生过来啊。我先说出我的希望,虽然这可能只是在浪费我的口舌。」

「……忍なら階段で見かけたぜ。なんであいつ、あんなところにいるんだ?」

「……忍的话,我在楼梯那边有看到她。她干嘛坐在那里啊?」

「ああ、おやつのミスタードーナツを、僕が一個多く食べたら、忍ちゃん、拗ねちゃってさ。昨日からずっと、あんな調子なんだよ」

「啊,我们在吃点心的时候,我多吃了一个 mister donut 的甜甜圈,结果小忍就闹脾气了。她从昨天开始就那样了。」

「…………」

どんな吸血鬼だよ。

这是哪门子的吸血鬼。

そしてお前もどんなおっさんだよ。

还有你这大叔又是怎么回事。

「涙を吞んでポン・デ・リング55は譲ってあげたというのに、いやはや、心の狭い忍ちゃんだよ、本当に。量より質って日本語を教えてあげた方がよさそうだな」

「我还含泪把蜜糖波堤让给她吃了说,唉呀唉呀!小忍的心胸还真狭窄呢。看来我应该要教她『质重于量』这句话。」

「どうでもいいよ……心底どうでもいいよ。あと、忍野、一つ訂正があるんだけど。こいつ、同級生じゃない。よく見ろよ、戦場ヶ原や羽川とは、スカーフの色が違うだろ?一個下の後輩で、名前は、神原駿河。『かんばる』は、神様の『神』に原っぱの『原』、『原』って書いて『ばる』って読むんだ。駿河は……えっと」

「随你便啦……我真的打从心底觉得无所谓。还有,忍野,有个地方我必须纠正你一下。她不是我同学。你仔细看,她裙子的颜色跟战场原和羽川不一样吧?她是我学妹,名字叫神原骏河。『神原』是神明的神,草原的原。骏河是……那个——」

あれ。

唉呀。

漢字はわかるけれど、その説明は難しいな……。

汉字我知道怎么写,但要说明很困难。

国語が苦手な阿良々木暦の本領発揮だ。

国文不好的阿良良木历,发挥出了看家本领。

駿河問い56の駿河だ」

「『骏河问』的骏河。」

神原が助け舟を出してくれた。

神原替我解了围。

よかった……とはいえ、駿河問いってなんだ?

太好了……不过骏河问是什么东西?

知らない言葉だけれど、問いってことは、有名なクイズか何かのことなのだろうか? スフィンクスの問いかけみたいな、なぞなぞめいた……。

这个词我没听过,不过既然有个问字,是不是有名的谜题啊?就跟人面狮身像问几只脚的谜语一样。

「ああ、駿河問いね。わかったわかった」

「啊,骏河问啊。我懂了、我懂了。」

合点とばかりに、頷く忍野。

忍野理解地点头说,

ちぇ……忍野が知らなかったら、黙っているだけで説明を受けられたはずなのに……僕は軽く舌打ちをしてから、それでもわからないままというのは気持ち悪かったので、神原に、「駿河問いって何だ?」と質問した。

啧……要是忍野不知道的话,我只要安静在旁边等说明就好了……我咂了咂嘴,要是就这样没搞懂心里会很不痛快,「骏河问是什么啊?」于是我问神原说。

「有名な江戸時代の拷問法だ。人間の手足を後ろで一まとめにして天井から吊るし、背中に重い石を載せた上で、ぐるぐる回すのだ」

「是江户时代一种有名的拷问方式。就是把犯人的手脚绑在身后吊在天花板上,然后在他背上放一块大石头,不停地旋转他。」

「自分の名前を拷問で語るなよ!」

「别用这种拷问来解释自己的名字啦!」

「一度、受けてみたい拷問の一つだな」

「这是我想尝试一次看看的拷问方式之一。」

「………………!」

百合でBLでネコで受けでロリでマゾなのかよ!

你是百合、BL、NEKO、受、萝莉控加上被虐狂吗!?

ありえない組み合わせだろ、それ……。

这组合实在太不可思议了……

我が校のスターは、ちぐはぐな噂を流すまでもなく、人格が破綻しているようである。

我校的明星根本没必要散播那些矛盾的传闻,她早就已经人格分裂了。

言葉を失った。

我无话可说。

「ともかく、神原駿河だ」

「总之我叫神原骏河。」

そんな会話で緊張が解けたのか、ようやく、僕のベルトから手を離して──隠していた半身も忍野の前に晒し、そして、例の堂々とした自信たっぷりの迷いのない態度で、右手を胸の前に、神原は名乗った。

这对话似乎消除了神原的紧张感,她的手终于离开我的皮带,躲在我身后的半边身体也现身在忍野面前,接着,她用平常充满自信的堂堂态度,将右手放到胸前,毫不犹豫地说出自己的名字。

「阿良々木先輩の後輩だ。初めまして」

「初次见面,我是阿良良木学长的学妹。」

「初めまして。忍野メメです、お嬢さん」

「初次见面。我叫忍野咩咩,小姐。」

神原がにこにこしているのに対して──

神原一脸微笑。

忍野はにやにやしている。

相对地,忍野则是冷笑。

にこつくのとにやつくの、字面上は一字違いの似た印象だが、しかし、傍で見ているこの身としては、受ける印象は全然違う、むしろ対極といってよかった。笑顔って、ただ笑顔であればいいだけじゃないんだなあと、痛感させられる。忍野も忍野で爽やかな笑い方ではあるのだが、こいつはなんだか、爽やか過ぎて、逆に不快なのだ。忍野の場合、造形の全てが噓っぽく仕上がっているのである。

微笑和冷笑只有一字之差,但我在一旁看起来感觉却完全下同,甚至可以说这两人是一种对比。这让我深深感觉到,笑容不是只要笑就好。虽然那是忍野的爽朗笑法,但我就是觉得那笑容实在爽朗过头,反而让人觉得不愉快。忍野整体的造型就是有一种很假的感觉。

「……ふうん。阿良々木くんの後輩ってことは、ツンデレちゃんの後輩でもあるんだね」

「……嗯。你是阿良良木老弟的学妹,那也是傲娇妹的学妹咯。」

まるで神原の背中を見ているかのような、焦点をずらした遠い目線で、忍野はそう言った──それは単純に、戦場ヶ原が僕と同じ三年生だから、当然神原は戦場ヶ原の後輩でもある、という意味では、なさそうだった。

忍野说。他失焦的远目,似乎在看神原的身后一般。因为战场原和我一样是三年级,所以理所当然神原也是她的学妹——但我想他的话没这么单纯。

勘繰り過ぎかもしれないけれど。

可能是我想太多了。

「忍野──とりあえず、まずはこれ、渡しとくよ。そのツンデレちゃん、戦場ヶ原からだ」

「忍野,我先把这个交给你吧。这是傲娇妹,也就是战场原给你的。」

「ん? なんだい、その封筒? ああ、お金ね。お金お金。よかったよかった、そろそろ生活に困ってきていたんだよ。これで梅雨つゆまでしのげるさ。雨さえ降ってくれれば、なんとか喉の渇きを癒せるから、それまでの我慢だと思っていたんだけれど」

「嗯?这信封是什么?啊,是钱啊。钱钱钱。太好了、太好了,我差不多手头也有点紧了。靠这些就可以撑到梅雨季节了。只要下雨的话,就能够靠雨水解渴,我以为要撑到那时候呢。」

「多感な少年少女に嫌な話を聞かせるな」

「不要跟多愁善感的少年少女说这种事情。」

そんな苦境の中でこいつらはミスタードーナツを取り合っていたのか……そりゃ忍も拗ねちゃうよ。吸血鬼とはいえ、あいつは元々、貴族の血筋だろうが。それが今や、こんな廃墟の中で汚らしい中年のおっさんとの同居生活とは、まさに落ちるところまで落ちたという感じだな……その原因の一端を担っていると思うと、僕としては、複雑な心境だけれど……。

他们在这种困苦的生活中争夺 mister donut 吗……难怪忍会闹脾气。她虽然是吸血鬼,但好歹也是贵族血统。现在居然要和这肮脏的中年大叔,一同住在这种废墟里,实在是堕落到地狱的深渊了……一想到我自己要负一部分的责任,心情实在很复杂……

封筒の中身を、忍野はチェックする。

忍野检查信封袋内。

「うん、十万円、確かに。これで僕とツンデレちゃんとの間には、貸し借りなしだ。直接渡しに来ずに阿良々木くんを通すところなんて、好感が持てるじゃないか。ツンデレちゃんは、どうやら、ものの道理を弁えているようだ」

「嗯,刚刚好十万。这样一来我和傲娇妹两不相欠了。她托你拿来,不直接拿给我,是不是对我有好感啊。看来傲娇妹还挺明事理的嘛。」

「? 逆じゃないのか? 直接渡した方が、謝意っていうか、誠意っていうか──」

「你说反了吧?应该直接拿来给你比较有谢意或诚意——」

「そういうのはね、示そうが示すまいが、おんなじなんだよ。まあ、そういう議論を阿良々木くんとするつもりはないさ、水掛け論57もいいところだ。で──そのお嬢ちゃんは、何なのかな?」

「那种东西不管有没有都一样啦。唉呀,我不打算和阿良良木老弟争论这些,不然没完没了。话说回来,这位小姐找我有什么事?」

忍野は気楽な調子で、封筒をアロハのポケットにぐしゃぐしゃに突っ込んでから(折角のピン札が台無しだ)、顎をしゃくるようにして、神原を示す。

忍野一派轻松,把信封乱七八糟地塞进夏威夷衫的口袋后(专程准备的新钞全泡汤了),用下颚指了指神原说。

「まさか僕に可愛らしい後輩を紹介してくれるためだけに、連れてきたってわけでもないだろうし。それとも、阿良々木くんは単純に、可愛らしい後輩を僕に見せびらかしに来たのかな? もしそうだとしたら、僕は阿良々木くんという男を、甘く見ていたことになるんだけれど……はっはー、そりゃあいくらなんでも、考えにくいよねえ。となると──ん、ああ、その包帯かな? へえ……」

「你不会是想介绍可爱的学妹给我认识,才专程带她过来的吧。还是说,你只是单纯来向我炫耀可爱的学妹啊?如果真是这样,那就代表我以前实在太小看你了……哈哈——不管怎么说,那实在很难想象呢。既然这样——嗯?喔,是那个绷带吗?嘿……」

「忍野さん。私は──」

「忍野先生。我——」

神原が何かを言いかける。

当神原话说到一半时,

それを、忍野は、制するように、ゆっくりと手を振った。

忍野缓缓挥手制止了她。

「順番に聞こうか。あんまり楽しい話じゃなさそうだ。腕に絡む腕話は、いつもそうなんだよ、この僕の場合はね。ましてや、それが左手ともなると、もう尚更さ」

「照顺序来吧。看来不是什么快乐的话题。和手扯上关系的话题,每次都是这样,对我来说啦。何况还是左手,那就更不用说了。」

007#

神原駿河の部屋を片付けたとき、炭酸飲料の握りつぶされた空き缶とかスナック菓子の袋とかインスタント食品のカップとかに混じって、それ一つだけ異様に違和感のある、長細い拵えの桐箱があった。時代を感じさせる色がついていて、それは神原の扱いが荒かったからだろう、傷だらけではあったが、分厚い、丈夫そうな箱だった。多分それは、何らかの骨董品こっとうひんでも──多分花瓶でも──入れられているのだろうと、僕は思った。この日本家屋の荘厳さのことを考えれば、こういう代物があって、それらしいものが中に入っていてもおかしくはない。

在整理神原骏河的房间时,我发现被捏扁的碳酸饮料空罐、零食包装袋,以及快餐食品的杯子当中,有一个奇怪的东西混杂在里头。那是一个细长的桐木盒。盒上漆有古风的颜色,或许是因为神原未妥善保管的缘故,上头满是伤口,但看上去还是一样厚重结实。里头大概放有花瓶之类的骨董吧,我心想。从这日式房屋的庄严格调来看,就算有那一类的东西放在盒内也不奇怪。

しかし。

可是,

箱は、空っぽだった。

盒子里头空无一物。

勿論、だからといってその箱をゴミと判断することはできず、僕はとりあえずそれを段ボール箱の上に積んでおいたのだけれど、話が本題に入るくだりで、神原は、その箱に手を伸ばして、そして、僕との間に、物々しげに置いた。そして、この箱には何が入っていたと思う、と訊いてきた。僕は思った通り、花瓶じゃないのかと答えた。

当然,我不能因为这样就认定那盒子是垃圾,因此只好先将它摆在瓦楞纸箱上。不过,等到我和神原的谈话进入正题时,她突然把盒子拿了过来,接着,煞有其事地将它放在我俩之间。随后,她问我觉得这盒子原本是用来放什么的。大概是花瓶吧,我说出了刚才的想法。

「阿良々木先輩でも間違うことがあるのだな……こんなことを言うと失礼になるかもしれないが、私としてはほっとしたよ。救われたな。阿良々木先輩の人間らしさを垣間見せてもらった気分だ」

「阿良良木学长也会猜错啊……我这样说或许很失礼,不过我真的松了一口气。有一种得救的感觉。因为我终于窥见学长像人类的一面了。」

「……で、何が入ってたんだ?」

「……那这盒子里头原本放什么?」

木乃伊ミイラだ」

「木乃伊。」

神原はすぐに答えた。

神原不假思索地回答说。

「左手の木乃伊が──入っていた」

「里面原本放的是……木乃伊的左手。」

「………………」

桐の箱に入った、左手の木乃伊。

放在盒内的是木乃伊的左手。

神原がそれを初めて使用したのは──小学生の頃だったという。八年前、まだ小学三年生だったときに、母親から、この箱を、託されたらしい。

神原初次使用那个东西,据说是在园小的时候。八年前,当她还是小学三年级时,她的母亲将这盒子托付给了她。

それが母親と会った最後だそうだ。

那是她最后一次和母亲见面。

箱を渡されてから数日後──まるでそれをあらかじめ予見していたかのごとき計ったようなタイミングで、神原の両親は、交通事故で亡くなった。神原が小学校で算数の授業を受けている最中に、遠く離れた高速道路における玉突き事故で、即死だったらしい。自動車が炎上してしまい、遺体は酷い有様だったそうだ。

宛如母亲早已预见未来一样,神原拿到盒子后过了几天,她的双亲就在车祸中丧生。这时间点就像事先安排好的一样。神原在学校上数学课时,两人在远方的高速公路上遇到连环车祸,当场死亡。他们驾驶的车子陷入火海当中,遗体也因此叫人惨不忍睹。

神原は、父方の祖父祖母に引き取られた。

事后,神原被爷爷奶奶领养。

引き取られて──今の、日本家屋に。

然后,住进现在这栋日式房屋中。

それまでは、両親と三人でのアパート暮らしだったそうだ──というのも、神原の父親と母親は、駆け落ちの結婚だったかららしい。誰からも祝福されない結婚だった、という。伝統と歴史ある家系の父親と、そういったものとは一切縁のない母親……だったとか。今時そんなことがあるのかと思うような話だが、そういうことはいくらでもあると、神原は言った。

在这之前,她和双亲是住在外面的公寓。这是因为神原的双亲是私奔结婚。据说他们的婚姻没受到任何人的祝福。因为她的父亲出生在有历史传统的门第中;而母亲则和那些东西完全搭不上边。这时代还会有这种事吗?我听了不禁半信半疑,但神原却说这一类的情况是道也道不尽。

「母はそれで、随分辛い思いをしたようなのだ。父は──その風潮に逆らおうとしたみたいだが、無駄だった。ほとんど縁を切られていたようなものだ。実際、両親の葬式のときまで、私は祖父祖母に、会ったこともなかったよ。名前も知らなかった──祖父祖母も、私の名前を知らなかった。最初に訊かれたのは、私の名前だったよ」

「妈妈因为那样,似乎吃了不少苦。爸爸他……虽然试图反抗,但最后徒劳无功。他们几乎已经和爷爷奶奶断绝关系了。我是在爸妈葬礼上才第一次见到爷爷奶奶,也不知道他们的名字。对方也一样不知道我的名字。他们开口第一个问题,就是问我叫什么。」

「ふうん……」

「嗯……」

上は洪水下は大火事。

上面是洪水,下面是大火灾。

両親のことは全く気にしなくていい。

完全不用在意我爸妈。

そういうことはある──のか。

原来是因为这样……吗。

とはいえ、神原の母親との確執があったにせよ、神原は彼らにとって息子の一人娘──即ち、自分の孫だ。引き取るのが当然ということで、神原は、それまで住んでいた土地を離れ、当然、通っていた小学校から転校することになった。

话虽如此,就算两老和神原的母亲闹得不愉快,神原对他们而言是儿子的独生女,也就是自己的孙子,领养她也是应该的。因此,神原离开自己至今居住的土地,当然也转学到这里的小学。

馴染めなかったらしい。

但她似乎无法融入同学中。

「言葉が違ったからな。今はこの通りだが、両親と暮らしていた場所は、そう、この家から出来る限り距離を置きたいという思いがあったのだろう、九州の端の辺りで、かなり方言が激しくて……いじめというほどではなかったにしても、からかわれて、それで、仲良くできなかった」

「因为我们说的话不一样。虽然我现在说话很标准,不过之前我和父母居住的地方,或许他们是想离这边越远越好,所以我们是住在九州岛的最边端,那边的方言口音很重……所以我刚来到这的时候,虽然没到被欺负的地步,不过大家都取笑我,因为这样,我没办法跟大家好好相处。」

「えっと……その小学校は、戦場ヶ原とは違う小学校だったのか?」

「那个……你小学没有和战场原同校吧?」

「うん。戦場ヶ原先輩とは、中学からだ」

「嗯,我和学姐是从国中开始同校。」

「そっか」

「是吗。」

まあ、住所的には、そうだろうな。

从两人住的地方看起来,我想也是吧。

羽川とも、多分、違うはずだった。

她和羽川大概也不同小学。

「今から考えれば、新しい環境で、周囲と不調和を起こしていたことについて、私自身に責任がなかったとは言えない。やはり、当たり前なのだが、両親の死は、私の心にこたえていたのだ。だから私は心を閉ざしていた。自分が心を閉ざしている癖に、周囲に対して自分に優しくしろとは言えないよな。けれど、こんな言葉も、今だからこそ言えることで──当時の私はただ、両親の死に、深く捕らわれていた。でも、だからといって、私は両親の思い出に浸ることもままならなかったのだ。思い出に耽溺することさえもできなかった。なぜならば、祖父と祖母が、父親の持ち物も母親の持ち物も、あまさず処分してしまったから。彼らは私を、両親とは全く関係のない人間として、育てたかったようだ」

「现在想想,我在新环境中和周围格格不入这点,我自己也不能说没有责任。可是那也很正常,双亲的死影响了我的心。所以我封闭了自我。我自己不愿意和他人交流,总不能叫大家对我温柔一点吧。不过,这句话是因为现在我才敢说……当时的我,被双亲的死给深深束缚住了。然而,我却无法沉浸在双亲的回忆当中。甚至无法去想念他们。因为找爷爷奶奶,把爸爸和妈妈的东西全部丢掉了。他们两位老人家,似乎想把我养育成和双亲豪无关系的人吧。」

断っておくが、と神原は言った。

有一点我要事先声明,神原说。

「祖父と祖母は、二人とも、立派な人格者だ──私は彼らを尊敬しているし、ここまで育ててもらったことを、本当に感謝している。あくまで、彼らと両親との関係は、私の与り知らぬことだというだけのことなのだ」

「我爷爷奶奶的人格都很高尚。我尊敬他们,也很感谢他们把我养到这么大。这是因为他们和我父母之间的不愉快,和我并没有关系。」

そうなのだろう。

她说得没错吧。

単なる確執というのには、

如果只是单纯的不愉快,那时间也过太久了。

そして、だからこそ神原に残された両親の思い出は、ただ自分の記憶の中にあるそれだけと、あとは、そう、母親から託された、その桐箱しか、なかったのだという。

正因为如此,神原对双亲的回忆只有在记忆当中,以及,母亲交给她的桐木盒子而已。

厳重に封こそされていたものの。

盒子封得很密实。

開けるなとは言われていなかった。

但母亲却没有嘱咐她不准打开。

だから開けた。

所以她打开了。

木乃伊の左手。

木乃伊的左手。

ただし、その頃は──その木乃伊の左手は、手首までしかなかったらしい。箱の中には、母親からの手紙が一緒に、入っていた。いや、手紙と言えるほど内容のあるものではなかったようだ──その左手の、単なる取り扱い説明書だったらしい。

只不过,打开当时……那只木乃伊的左手,长度只有到手腕而已。盒内还有一封母亲的信。不,那内容称不上是信。单纯只是那只左手的使用说明书。

願いを叶えてくれる道具だと。

上头写着:这是可以实现愿望的道具。

どんな願いでも叶えてくれる。

它可以实现任何的愿望。

三つだけ願いを叶えてくれる。

仅限三个。

そういう、アイテムなのだと。

它就是这样的道具。

当時、学年が一つ上がって小学四年生、九歳だったのか十歳だったのか──どちらにしても、そういう夢物語を信じるかどうかといえば、微妙な年齢だろう。ぎりぎりセーフか、ぎりぎりアウトか、どちらかだ。サンタクロースを信じている子供の割合が、半々くらいになる年齢ではないだろうか? それとも、それは僕くらいの世代から見る、幻想という奴だろうか……少なくとも僕は、小学四年生のとき、サンタクロースの存在は信じていなかったと思うけれど、でも、ドラえもんの秘密道具は信じていたかもしれない。

当时,神原升到小学四年级,年纪约九岁、十岁。但不管实际年龄几岁,这年纪对这类梦幻故事,可说是半信半疑的微妙年龄。不是惊险过关,就是遗憾出局。那年纪的小孩大概有一半相信圣诞老人是真实存在的吧?不然就是跟我一样把他当作幻想……至少我小学四年级就已经不相信圣诞老人的存在,不过,那时候我或许还相信哆啦 A 梦的秘密道具。

神原は──半々のボーダーライン。

神原则是……站在信与不信的界在线。

つまり、半信半疑のそのままに、少女雑誌に掲載されているおまじないでも試す程度の、いうならば軽い気持ちで、その木乃伊に、『お願い』をしたそうだ。

也就是用半信半疑。她抱着有如在尝试少女杂志上刊载的咒语——真要说的话就是轻率的心情,对木乃伊许下「愿望」。

一つ目の願いの内容は何でもよかった。

第一个愿望的内容不管是什么都行。

おまじない程度の気持ちだったから。

因为只是抱着尝试咒语的心情而已。

まずは、試しだったから。

她只是想尝试看看。

「もし一つ目がうまくいったときの、二つ目の願いは、決まっていたけどな──」

「要是第一个愿望顺利实现的话,我已经想好第二个愿望要许什么了——」

と、神原は言った。

神原说。

言われるまでもない。

想当然耳。

それは──両親に関する願いに違いないだろう。

那一定是……和双亲有关的愿望吧。

両親の、生命に関する願い。

与双亲的生命有关。

『足が速くなりたいです』。

『我想要跑快一点』。

小学四年生の神原駿河は、木乃伊に──そう願った。その時期の神原は、鈍足で知られていたそうだ……方言のことだけじゃなく、それも、同級生からからかわれる理由の一つだったらしい。高校生になってから考えれば、そんなの、方言と同じくらい馬鹿馬鹿しい理由だけれど、しかしたとえそうでなくとも、足が遅いというのは、小学生にとっては、真剣で深刻な悩みだろう。その頃、たまたま、通う小学校で、近く運動会が開かれることになっていて──その徒競走ときょうそうで一等を取れば、みんなの自分を見る目も変わるんじゃないかと思っての、願いだったそうだ。

小学四年级的神原骏河,对木乃伊……许下第一个愿望。那时候的神原,跑得慢是出了名的……不只是方言,这也是她被同学取笑的理由之一。到了高中后回想起来,因为跑得慢和说方言被取笑,都都是很蠢的事情,但就算没被取笑,跑得慢对小学生而言,都是非常认真严肃的烦恼。那时,神原的小学刚好要举办运动会,如果能在跑步比赛中拿下第一名,那大家也会对自己另眼相待,她抱着如此心情许下愿望。

「当時の私は運動神経が致命的に鈍かったんだ。のろいというかとろいというか、普通に歩いていても、転んでしまうくらいにな」

「当时我的运动神经烂得要命。不知该说是笨拙还是迟钝,我甚至平常在走路也会跌倒。」

「ふうん……でも、今は」

「嗯……不过你现在是——」

バスケットボール部のエース。

篮球社的王牌选手。

スター。

校内明星。

「……って、じゃあ、ひょっとして」

「……难道说,那个愿望让你……」

「そうだったら、よかったんだがな」

「如果是就好了。」

むしろ、と神原は言った。

我反而希望如此,神原说。

「その夜、私は夢を見た。雨合羽を着た化物に──子供が襲われる夢だ。布団に入ってよく寝ている子供を、化物の左手が容赦なく襲う、そんな悪夢を──見た」

「许完愿的那天晚上,我做了一个梦,一个噩梦。我梦见穿着雨衣的怪物……在袭击小孩。怪物的左手,毫不留情地攻击在被窝里熟睡的孩子。」

「…………」

「勘のいい阿良々木先輩ならば、もう既にこのストーリーの落ちは見えているだろう。次の日、目を覚ました私が学校に行くと──四人の生徒が、欠席していた。四人は四人とも、私が運動会で、徒競走で一緒に走る予定だった生徒だった」

「直觉敏锐的阿良良木学长,应该已经看见这个故事的结局了吧。隔天我起床到学校后,发现有四个学生缺席。那四个人跟我一样,都是要参加跑步比赛的学生。」

猿の手。

猴掌。

いわく、猿の手は持ち主の願いを叶えてくれる。

猴掌能够实现持有者的梦想。

いわく、ただし、持ち主の意に添わぬ形で──

但是,实现的方式会违背持有者的本意——

「ぞっとした。私は慌てて、図書館で、その木乃伊の正体を探った──すぐにジェイコブズの『猿の手』に行き当たったさ。恐ろしさに、背が震えた……もしも、二つ目の願いを一つ目に持ってきていたら、一体全体どうなっていたのだろう、と。いや、その四人の同級生にしたって、場合によっては死んでいても全くおかしくなかったはずなのだ……運よく大事はなかったものの、そうなっていてもおかしくなかった」

「这让我毛骨悚然。接着,我急忙到图书馆去调查那木乃伊的真面目……很快我就找到杰考布斯的《猴掌》。恐怖让我浑身发抖……要是我一开始就许第二个愿望,那事情会变成什么样子。不,那四个同学照情况来看就算死掉也很正常……他们运气好没有大碍,可是万一真的被打死也不奇怪。」

神原は、木乃伊を箱に戻し、開ける前よりも更に厳重に封をして、押入れの奥に仕舞い込んだという。二つ目の願いも三つ目の願いも、とんでもなかった──全てから目を逸らしたかった。全部忘れてしまいたかった。

神原把木乃伊放回盒内,把它封得比打开前还要更加密实,塞进了壁橱的深处。她不敢再许第二、第三个愿望,想要逃避一切。忘记全部的事情。

けれど。

但是,

そうはいかない。

这样行不通。

どれほど忘れたくとも、忘れるわけにはいかなかった。それは運動会までは、まだ時間があったからだ──更に次の日の練習の際、神原は、他のグループに入れられることが決定した。

就算她想,也无法忘掉。因为那时离运动会还有一段时间。在隔天练习的时候,神原被分到其他的参赛组别。

今度は五人。

这次是五个人。

別の五人と──一緒に走ることになった。

她要和……另外五个人一起参赛。

「私はどうしたと思う?」

「学长觉得我当时做了什么?」

「…………」

「どうすれば、よかったと思う?」

「你觉得我该怎么办才好?」

どうするもこうするも、そのまま何もしないでいたとしたら──そんなこと、結果は火を見るよりも明らかだった。同じことが起こるだけ……同じことが繰り返されるだけだ。だから、普通に考えれば、木乃伊に願うしかない状況だろう──一つ目の願いをキャンセルしたいと、木乃伊に願うしかないだろう。けれどそれは、怖かった。木乃伊のことを既に調べてしまった神原には、怖いことだった。持ち主の意に添わぬ形で──どのような形でその二つ目の願いを叶えられてしまうか、わかったものではないから。

没有什么怎么办,要是不采取任何行动,下场再明显不过了。只会再发生同样的事情……不停地发生。所以按常理来看,现在只能向木乃伊许愿,许愿说要取消第一个愿望。但那实在太可怕了。这是已经调查过木乃伊来历的神原,最畏惧的事情。实现的方式会违背持有者的本意——她不知道许愿之后,第二个愿望会用什么方式实现。

だから、神原は、走った。

所以,神原选择奔跑。

走って、走って、走った。

奔跑、奔跑,不停奔跑。

足が遅いから──

因为她跑得很慢——

足が速くなるための、努力をした。

所以她努力要让自己跑快一点。

「自力で願いを叶えてしまうしか、なかった。そうすれば、木乃伊が同級生を襲う理由なんて、なくなるのだからな。幸い、努力を始めれば、コツはすぐにつかめた──体重が重いとか足を痛めているとか、物理的に足が遅くなる要因があったわけではなかったのでな、運動神経自体はすぐには発達しないにしても、駆け足だけなら、なんとかなった。運動会では、無事に一等を取れたよ。……それがきっかけで、クラスの連中とも、仲良くできるようには、なり始めた。さすがに、もうしばらく、時間はかかったがな」

「我只能靠自己实现愿望。这样一来,木乃伊就没有理由攻击我的同学。幸好我一开始努力,立刻就抓到了诀窍。我跑得慢的主要原因,不是因为身体太胖或脚上有伤。就算我运动神经没办法马上发达起来,还是有办法让自己跑快一点。最后在运动会上,我顺利拿到了第一名……因为这样,我和班上同学的感情开始变好了。不过,最后还是花了一段时间。」

そして、めでたく自力で願いを叶えることに成功した神原は──運動会の後も、その努力を怠らなかった。元々才能があったのだろう、なんていうととても失礼になるかもしれないが、彼女が積み重ねる努力は次々と花を咲かして実り続け、六年生になったときには、早くも中学校の陸上部から誘いが来るほどだったという。

接着,成功靠己力达成愿望的神原,在运动会结束后也努力不懈。说这话可能很失礼,或许她原本就有跑步的才能吧,她长久的努力逐渐开花结果,升上六年级时,甚至还有国中的田径社跑来邀请她入学。

『たっ、たっ、たっ、たっ、たっ、たっ』。  とか。

「咑、咑、咑、咑、咑、咑————!」

けれど、神原は陸上部に入るわけにはいかなかった。神原は、自分よりも速いかもしれない人間がいるところに、身を置くわけにはいかなかった──木乃伊に願った一つ目が、どこまで効力を持ち続けるのか、わからなかったからだ。それはひょっとすると運動会で一等を取った時点で終わっているのかもしれないけれど──ひょっとすると、一生続くのかもしれなかった。それは、確認の取りようがないことだった。確認が取れない以上、後者の可能性に、怯えないわけにはいかない。

但是神原不能加入田径社。田径社可能会有人跑得此自己快,她不能让自己置身于那种地方。因为对木乃伊许的第一个愿望,效力不知道会持续到何时。可能在运动会上拿到第一名愿望就已经失效,但也有可能会持续一辈子。这点她无法确认。既然无法确认,她当然会怕可能是后者。

神原にしてみれば。

以神原的立场来看。

自分が長距離走に向いていないことは、その頃にはもうわかっていた──小学生レベルのマラソンならともかく、中学高校と、それを続けていくことはできなかった。ほんの少しでも自分よりも速い人間がいたら、それで全てはご破算、おしまいなのだから。

这时她已经知道自己不适合长距离赛跑。如果是小学生等级的马拉松倒还好,她到了国、高中不能再继续这些项目。要是有人跑得比自己快,那一切就破局完蛋了。

だから神原は、中学で、バスケットボール部に入ったのだろう──コートの中だけにフィールドを区切り、限ってしまえば、神原に追いつけるものは、誰もいなかった。

所以神原在国中才会加入篮球社。只要将范围限定在球场内,没有人可以追上神原。

「部活に入らない、運動をしないという選択もあったのかもしれないが、いざというときのために身体をなまらせるわけにはいかないというだけではなく、ほとんど、運動は、私にとって強迫的な拠りどころみたいになっていたのでな。何かをしていないと──押し潰されそうだったのだ。スポーツ少女なんて言われているが、本当のところはそれほど大したものじゃないのかもしれない。私は恐怖につき動かされていただけなのさ」

「或许也有不参加社团、不运动的选择,不过我伯会有万一所以不能让身体钝掉,当然不光是这样,因为运动几乎已经强制性地变成了我的优点。要是我什么都不做,可能会就此崩溃。大家都说我是运动少女,其实我没那么了不起吧、我只是因为恐惧而动罢了。」

でも。

可是,

バスケットボールは、楽しかったらしい。

篮球很快乐。

好きになったらしい。

她很喜欢这项运动。

それこそ、強迫的な拠りどころでしかなかったはずの自分の足を──前向きに、ポジティヴに、活かすことができたから。木乃伊から逃げるための手段でしかなかったはずの自分の足を、それ以外の手段として、否、目的として──活かすことができたから。

过去她强迫自己奔跑,现在这双脚却可以用在积极正面的地方。以前自己练跑只是一种逃离木乃伊的手段,现在却能以不同的手段,不,是不同的目的加以活用。

それに。

而且。

チームのエースとなったことで──

她因为变成队上的王牌球员——

戦場ヶ原ひたぎに、会えたから。

而认识了战场原黑仪。

「戦場ヶ原先輩は、陸上部のエースだったから……足が速いと評判の私を、見に来てくれたんだ。戦場ヶ原先輩はもう忘れてしまっているかもしれないが、……憶えていても、どうでもいいと思っているかもしれないが、最初は、戦場ヶ原先輩の方から、私に会いに来てくれたんだぞ」

「那时候,战场原学姐是田径社的王牌选手……听说我跑得很快,特地跑来看我。学姐可能已经忘了也说不定……就算她记得,也不会觉得这有什么大不了的吧,不过一开始是战场原学姐主动来找我的喔。」

「へえ……」

「哇……」

それは少し、意外だな。

那还真叫我有点意外。

今の戦場ヶ原のことじゃなく、中学時代の戦場ヶ原のことだとしても、意外ではある。

就算不是现在,而是国中的战场原,这举动还是叫我很意外。

「非公式でいいから百メートル走をしようと誘われた。それを断らざるを得なかったのは、本当に辛かったな。素敵な先輩だった。一目惚れこそはしなかったが、でも、話すようになって三日目には、もう私は戦場ヶ原先輩のことを、好きになっていた。そばにいたいと、思うようになった。私は、戦場ヶ原先輩に、癒されたのだ」

「学姐来找我,说她想私下和我来一场百米赛跑。可是,我不得不拒绝她的要求。心里真的很难过,她是一个很棒的学姐。我虽然不是一见钟情,不过和学姐开始聊天后过了第三天,我就喜欢上学姐了。开始想要待在她身旁。因为战场原学姐治愈了我的心。」

癒し。

治愈。

それは今の戦場ヶ原からは、太陽から冥王星くらいに程遠くも縁遠い言葉だったが──しかし、実際、戦場ヶ原に会ってから、神原は、母親に託された木乃伊のことを、押入れに仕舞い込んだ桐箱のことを、意識から外せるようになったらしい。

这个词和现在的战场原,就像太阳到冥王星这般遥远,但是,神原遇到战场原后,似乎就不再去想母亲交给她的木乃伊,以及壁橱内的桐木盒子。

忘れられたらしい。

她终于能忘记这些事。

忘れたかったことを──忘れられた。

忘掉这些她想忘记的事情。

けれど。

但是,

「それでもやっぱり意識の底には残っていて、無意識のところにずっと残っていて、その後も何度か、発作的に、その木乃伊を使ってしまいたいという衝動に駆られることはあった。その木乃伊に頼ってしまいたいという衝動に駆られることはあった。たとえば、バスケットボールの試合で、強豪チームと当たったときとか。たとえば、友達と酷い喧嘩をしてしまったときとか。たとえば、戦場ヶ原先輩と同じ直江津高校に入学しようとしたときとか。……たとえば、戦場ヶ原先輩に、拒絶されたときとか」

「不过那东西还是残留在我记忆的深处,一直遗留在我的潜意识当中,在那之后,我有好几次像疯了一样想要去用那个木乃伊。被想要依赖木乃伊的冲动所驾驭。例如,在篮球比赛中碰到强敌、跟朋友大吵一架,或者是想和战场原学姐一样考上直江津高中的时候……还有,被战场原学姐拒绝的时候。」

全部──我慢した。

神原全部忍了下来。

全部、自力で、なんとかした。

她全部靠己力去克服。

あるいは、全部、諦めた。

或者全部死心放弃。

母親が自分に、その桐箱を託した理由を、その頃には神原は理解していた──母親はきっと、困難に遭ったとき、自分の力だけで対処できる人間になれと、そういう思いを込めていたのだろう。『猿の手』の物語におけるそれとは違い、運命を受容することを教えようとしたのではなく、運命を変えるならばそれは自分の手でするべきだと、そう教えたかったに違いない。母親はその母親から、母親の母親は、その母親から、母親の母親の母親は、更にその母親から──脈々と、そう受け継がれてきたものなのだ。運命は自分の手で変えるものだと、願いは自分の手で叶えるものだと、そう受け継がれてきたに、違いない。だから、足が速いのも、頭がいいのも、彼女が、彼女自身で獲得したことだった。

那时的神原,终于理解到母亲将桐木盒子交给她的原因。母亲肯定是自己成为能够靠自身力量,去克服困难的人。《猴掌》一书告诉我们要接受命运的安排,但母亲的教诲则不同,她一定是想告诉神原:想要改变命运必须要靠自己的力量。那一定是母亲从外婆、曾外婆、曾曾外婆、曾曾曾外婆,代代传承下来的教诲。用意是告诉子子孙孙们:命运可以靠自己的双手去改变,愿望可以靠自己的双手去实现的。因此,神原的飞毛腿和聪明头脑,都是靠自己的力量得到的东西。

生まれつき──だったわけじゃない。

不是与生俱来。

血の滲むような、努力の末。

是经过呕心沥血般努力的结果。

それを常に、意識しながら。

她时时刻刻意识到这一点。

だから。

因此,

木乃伊に願えば、戦場ヶ原の抱えていた秘密を、問題を、解決することができたかもしれないけれど、神原は、それもしなかった。

只要向木乃伊许愿,或许就能解决战场原的秘密和烦恼,但神原没有那么做。

黙って。

她默不作声。

自分が、身を引いた。

自愿抽身离开。

戦場ヶ原のそばにいることさえ──諦めた。

甚至放弃待在战场原身旁。

手を握り締め、唇を嚙み締め──諦めた。

她紧握双手,抿紧嘴唇……放弃了。

戦場ヶ原のためなら死んでもいい。

她为了战场原,就算赔上性命也无所谓。

はっきりとそう言ったのだった──神原駿河は。

说明白一点,神原骏河她——

戦場ヶ原のために、神原は、自分を殺したのだ。

为了战场原而扼杀了自己。

自分の想いを、見殺しにした。

对自己的思慕见死不救。

忘れたくないことを。

将不想忘记的事情,

忘れられないことを──忘れた。

和不能忘记的事情——一并忘记。

「でも、その一年後……阿良々木先輩のことを、私は、知ってしまった。阿良々木先輩とのことを、私は、知ってしまった。戦場ヶ原先輩のそばにいる、阿良々木先輩を、見てしまった」

「可是在那之后过了一年——我知道了学长你的事情,知道学姐和你的关系,看到战场原学姐身旁,有阿良良木学长你的身影。」

我慢できなかった。

她忍受不住。

なんともできなかった。

无法自拔。

諦められなかった。

她无法就此放弃。

いつ押入れを開けたのかも、いつ桐箱を取り出したのかも、いつその封を解いたのかも、いつ木乃伊に願ったのかも、神原にはもうわからない、左手首までしかなかったはずの木乃伊がどうして肘の部分まで伸びてしまっているのかということにすら丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶丶、全く考えが及ばず──気が付けば。神原の左手が──怪異と化していた。

她是何时打开壁橱、何时拿出桐木盒子、何时解开封盖、何时向木乃伊许愿的,神原自己也不知道。同时她完全没去思考,为什么原本只有到手腕的木乃伊左手,会变长到手肘长度。等她发觉时,神原的左手已经化成了怪异。

腕が、けだものの手と化していた。

手臂变成了野兽之手。

神原は──

神原她——

七年ぶりに、ぞっとした、そうだ。

事隔七年后,再次感到毛骨悚然。

「……お前、僕のストーキングを始めたのは、それからか……そういや神原、会うたびに、今日は何か変わったことはなかったかとかどうとか、僕に訊いていたな」

「……你开始跟踪我,是在左手变成那样之后吗……这么说来神原你每次来找我,都会问我今天有没有什么奇怪的事情对吧。」

それは──そういう意味だったのか。

那个问题,原来是有含意的。

雑談などではなく。

并不是普通的闲聊。

決して戦場ヶ原とのことを探ろうとしていたのではなく……大好きなバスケットボールもできなくなってしまったそんな腕で、人前に出たくもなかっただろうに、包帯でそれを隠してまで、僕の身の安全を──気に掛けていてくれていたのか。

神原的举动不是为了想探听我和战场原的事情……她的左手变成那样不能再打自己最喜欢的篮球,她应该也不想让其他人看到自己的手,但她却不惜用绷带藏住左手,跑来确认我的安全吗?

しかし、ストーキングを始めて、四日目。

然而,就在开始跟踪的第四天。

四日目の夜。

第四天晚上。

ことは──起こった。

事情终究还是发生了。

神原は夢を見たそうだ──

据说神原做了一个梦。

雨合羽を着た化物が、僕を襲う夢を。

她梦见穿着雨衣的怪物在袭击我。

だからこそ、今日、僕が二年二組の教室を訪れた段階で、神原はあんな風に、とても落ちついた態度だったのだ。

所以,今天我到二年二班的教室去找神原时,她的态度才会那么平心静气。

全てを悟っていたそうだ。

因为她早就知道了。

何が起こったのかを。

知道发生了什么事情。

それは僕の読みとは、だいぶん違う裏話だった。

这内情和我的预测相差甚远。

怪異が絡んでいること自体はわかっていたが、現象自体には、神原の意思は嚙んでいないということ……そう、その木乃伊の所為だということ。

我知道这事情和怪异有关,但我却没料想到这和神原的意志无关……对,我没料想到这是木乃伊在作祟。

いわく、猿の手は持ち主の願いを叶えてくれる。

猴掌能够实现持有者的梦想。

いわく、ただし、持ち主の意に添わぬ形で──

但是,实现的方式会违背持有者的本意——

戦場ヶ原のそばにいるためには、そう、現在戦場ヶ原が付き合っている恋人である、阿良々木暦を排除するのが、もっとも手っ取り早いと──木乃伊は思った。

木乃伊认为要待在战场原身旁,最快的方法就是除掉和她交往的男朋友——阿良良木历。

のだろう。

八成是这样吧。

それを恐れてのストーキング──

神原就是怕这样才会跟踪我——

しかし、神原の予感は的中した。

然而,她的预感正中了红心。

実際問題、僕が僕でなければ……阿良々木暦が阿良々木暦でなければ、元不死身の、吸血鬼を経験した人間でなければ、あの段階で、確実に殺されていただろう。一撃目も二撃目も避けることはできなかっただろうし、たとえできていても、三撃目で、あっさりと致命傷だった。それほどの、馬鹿げた破壊力、破壊能力だった。推測するに、小学生の頃、被害がそれほどでもなかったのは、神原の身体が小学四年生のそれで、また、運動神経が鈍い段階での、神原だったからに違いない──今の神原は、桁違いだ。皮肉にも、一つ目の願いを回避するために鍛えた身体が──二つ目の願いに関して、より酷い被害を巻き起こす結果となっている。攻撃に使っていたのは左手だけだったが、目にも留まらぬあの速度は──神原駿河の能力だ。彼女の能力の、底上げされたバージョンアップだろう。

老实说,如果我不是我……阿良良木历不是阿良良木历,不是经历过不死身的吸血鬼之人,恐怕在昨晚早就已经死透了。我大概躲不掉第一击和第二击,就算真的躲过,第三击也会让我直接受到致命伤。木乃伊的力量,就是具有如此强大的破坏力。根据我的推测,小学时被神原打伤的人会没有生命危险,一定是因为她还是小学四年级的身体,还有她那时候的运动神经没有很发达的缘故。现在的神原,破坏力不可同日而语。很讽刺的是,她为了躲避第一个愿望而锻炼的身体,在第二个愿望却引发了更可怕的灾害。昨天攻击我的只有那只左手,不过那快到眼睛无法捕捉的速度,却是神原骏河自己的能力。恐怕她自身能力的升级版吧。

能力──破壊能力。

能力——破坏能力。

暴力。

暴力。

そして。

还有,

その問題は、全くもって終わっていない──僕がこうして生き残ってしまっている以上、全くもって終わっていない。日が沈んで夜になれば、何度でも雨合羽の化物は僕を襲うだろうし──神原は、雨合羽の化物に襲われる僕の夢を見るだろう。

那个问题还没有彻底结束。只要我还活着,一切就不会落幕。只要日落西山,夜幕低垂,雨衣怪就会不停来袭击我。神原也会梦见我被雨衣怪袭击吧。

僕が死ぬまで、繰り返し、繰り返し。

直到我化成尸骸为止,周而复始,循环不断。

夢が叶うまで。

直到她实现梦想为止。

願いが叶えられるまで。

直到她实现愿望为止。

神原の、二つ目の願いが叶えられるまで。

直到神原的第二个愿望得以实现之时。

戦場ヶ原ひたぎのそばにいたい。

她想要在战场原身旁。

神原の願いは、ただそれだけのことなのに──

神原的愿望不过如此简单——

「『世の中に 人の来るこそ うるさけれ とは言ふものの お前ではなし』──」

「『人世之间,只因有人诞生,而吵杂不已,话虽如此,那人绝非是你』。」

「うん?」

「嗯?」

僕の引用に、不審そうに目を開いた神原。

神原听到我引文,一脸疑惑,双眼圆睁。

「なんだ、それは?」

「那是什么东西?」

「別に……今から訪ねていく相手が、僕らを歓迎してくれるかどうか、ちょっと考えただけなんだけれど──」

「没什么……我只是在想我们待会要去找的人,会不会欢迎我们而已——」

そして。

接着。

そのまま、着替えもせず昼御飯も食べずに、僕は自転車で、神原は駆け足で、忍野メメと忍野忍が暮らす住宅街から外れた学習塾跡へと、向かったのだった。

我俩没更衣也没吃午餐,我骑脚踏车,神原用跑的,直接朝住宅区郊外,忍野咩咩和忍野忍居住的荒废补习班出发。

で──そして、ようやく現在。

然后——终于到了现在这一刻。

現在。

现在。

その四階で、僕と神原は、忍野と向かい合っている。ことのあらましを聞き終えても、忍野は反応らしい反応を見せず、ただ、そんな高くもない天井に吊るされた蛍光灯(勿論電気が通っていないので、ただ吊るされているだけだ)を見上げるようにし、話の途中で口にくわえた、火のついていない煙草を、左右に揺らしながら──何も言わない。話せることは戦場ヶ原の話も含めて全部話したので、もうこちらとしては何も手札はないのだが……。

我和神原、忍野三人,在补习班四楼面对面交谈。忍野听完事情概要之后,没做出什么像样的反应,只是抬头看挂在矮天花板上的日光灯(当然这里没有电,所以灯只是挂着),途中他叼了一根没点火的香烟左右摇晃,一句话也没说。我能说的包括战场原的事情全都交代完了,手上已经无牌可出……

なんとなく、気まずい空気。

总觉得这气氛很尴尬。

普段は舌から生まれてきたのではないかと思うくらい無駄によく喋る癖に、たまにこういう風に黙り込んでしまうのだから、忍野メメという男は本当に対処に困る……。陽気な性格に見えて、こいつ実はすげえ根暗な奴なのかもしれないと、こういうときには思う。

平常,忍野咩咩聒噪到会让人怀疑他是从舌头先生出来的,但偶尔他会像这样突然沉默不语,实在叫人难以应对……他看起来个性很开朗,其实骨子里非常阴沉吧,每到此时我都会如此心想。

「包帯」

「绷带。」

やがて──ようやく忍野は言った。

最后,忍野终于开口说。

「包帯、解いて、見せてくれるかな? お嬢ちゃん」

「可以把绷带解开来给我看吗?小姐。」

「あ、うん──」

「啊,好——」

ちらっと、助けを求めるように、僕を見る神原。僕は、神原を安心させるために、「大丈夫」と言う。それを聞いて、神原は、右手で、包帯を解きにかかった。

神原有如在求救般,瞄了我一眼。「不要紧的。」为了让神原安心,我开口说,听到这句话后,神原用右手开始拆绷带。绷带顺利解开了。

するすると。 すると──けだものの手が現れる。

接着——野兽之手出现在眼前。

自ら袖をまくりあげ──神原は二の腕の部分までを晒す。けだものの腕と人間の腕の、つなぎ目を示すかのように肘を折り曲げて、一歩踏み出し、神原は忍野に、

神原卷起自己的衣袖,露出自己的上臂。她弯起手肘,似乎想突显兽腕和人腕的衔接处,接着踏出一步对忍野说:

「これでいいのか」 と言った。

「这样可以吗?」

「……うん、いいよ。そっか。やっぱりね」

「……嗯,可以。原来如此。果然是这样。」

「やっぱり? やっぱりって、何がやっぱりなんだよ、忍野。今日も今日とてわき目も振らずにわかりにくい態度を取りやがって──いつもいつもひっきりなしに思わせぶりなんだよ、お前は。全能感を演出するのって、そんなに楽しいもんでもないだろうに」

「果然?果然是哪样啊。忍野。你今天也是一样,心无旁骛地在装神弄鬼嘛。你每次都是一副故弄玄虚的样子。装成一副无所不能的样子很有意思吗?」

「そうせっつくなよ、元気いいなあ。阿良々木くん、何かいいことでもあったのかい?」

「别那么急嘛。你还真有精神,阿良良木老弟。是不是发生了什么好事啊?」

くわえていた煙草を、結局火もつけないままに吐き出して──いや、考えてみれば僕は忍野が、火のついた煙草をくわえているシーンを見たことがない──あのいつものにやにやとした、軽薄なお調子者の笑みを、僕に向けた。

到头来,他没点火就把嘴上的香烟直接吐掉——不,仔细想想,我从来没看过忍野叼过有点火的香烟——用平常那抹轻浮的冷笑对着我。

「阿良々木くん、それにお嬢ちゃん。最初に勘違いをただしておいてあげるとすると──それは、猿の手じゃないよ」

「阿良良木老弟,还有小姐。首先我要先纠正一下你们的误解……那东西不是猴掌喔。」

「は?」

「嗄?」

いきなり、これまでの前提を覆すようなことを、忍野は言って──僕は驚いた。神原も、不意を突かれたような顔をしている。

忍野冷不防颠覆了至今一切的前提。我吃了一惊。神原也露出意想不到的表情。

「猿の手は、ジェイコブズ以来、確かに色々派生しちゃってるんで、何が本当なのか実際はどういうものなのかなんて、実物を見てみないことにはわからないんだけどさ──持ち主の腕と一体化しちゃうなんて例、僕は寡聞にして聞いたことがないよ。ツンデレちゃんが蟹でお嬢ちゃんが猿だったら、そりゃ、日本昔話っぽくて据わりはいいんだろうけれどもさ、でも、世の中そんなうまいことはいかないよね。お嬢ちゃん、自分で調べたんだろう? なかったろ? 猿の手と持ち主とが一体化するお話なんて。もしもあったんだとしたら、無学な僕の知識不足ってことになるけれどさあ」

「猴掌在杰考布斯之后,的确出现了许多衍生物,不过哪些是真的、实际情况又是如何,我没看过实物所以不清楚。但是,猴掌和持有者的手腕一体化的例子,孤陋寡闻的我从来没听过呢。如果傲娇妹是螃蟹,小姐是猴子的话,那听起来就会像日本童话故事一样感觉很不错啦,不过世界上没有这么刚好的事情。小姐,你自己也查过了吧?找不到对吧?猴掌和持有者一体化的事例。万一真的有,那就代表我才疏学浅,知识不足了。」

「……調べたといっても、小学生の頃だから」

「……我虽然调查过,不过那是小学时候的事情。」

「だろうね。でも、それなのにどうして猿の手だって思い込んじゃったのかな? お母さんは、きみに絶対にそんな風には、言っていないはずだけれど……まあ、そうだね、大方、条件が合致したからってところかな」

「是吧。可是为什么你会认为它是猴掌?令堂绝对没跟你说它是猴掌吧……唉呀,因为它和猴掌的条件大致上吻合的关系吧。」

「条件? なんだそれ?」

「条件?那是什么?」

「つまり二つのいわくって奴さ、阿良々木くん。いわくつきのアイテム、猿の手。いわく、猿の手は持ち主の願いを叶えてくれる。いわく、ただし、持ち主の意に添わぬ形で──だっけ?」

「也就是两个传说,阿良良木老弟。有问题的道具猴掌,能实现持有者的梦想。但是,实现的方武会违背持有者的本意。好像是这样对吧?」

ふふん、と嫌らしい笑みを浮かべる忍野。

忍野哼笑了两声,浮出令人讨厌的笑容。

性格の悪そうな笑みだ。

性格恶劣的笑容。

性格が悪いというか、性根が腐ってそうな感じ。

与其说性格恶劣,倒不如说这笑容让人感觉他烂到骨子里去了。

「それが解釈として、お嬢ちゃんにとって都合がよかったんだよね──いや、気持ちがよかったというべきなのかな? まあ、そんなの、どっちでもいいんだけれど。確かなのは、それは猿の手なんかじゃないってことなのさ──元々は木乃伊だったんだっけ? それがお嬢ちゃんと同化することによって、生命を得た、か。となると──さしずめレイニー・デヴィルかな」

「把它当作猴掌,正好顺了小姐的意吧。不,应该说这样想心情会比较快乐吧?不过这不是重点啦。反正这东西不是猴掌就对了。这原本应该是木乃伊对吧?它藉由和小姐同化获得生命吗?这么一来——这东西应该是雨魔(Rainy Devil)吧。」

「れいにー?」

「雨魔?」

その単語に反応した僕に、続けての質問を許さず、そんな暇は与えずに、忍野は、「で」と、話を先へ先へと続ける。

我对这单字起了反应,但忍野不让我有时间发问,「对了,」接着继续说道。

「阿良々木くん、『ファウスト』は読んでる?」

「阿良良木老弟,你有看过《浮土德》这本书吗?」

「え?」

「啥?」

「はいその反応、読んでない。ていうか存在自体を知らないみたいだね。もうちっとも驚かないよ、そのくらいじゃあ。僕は阿良々木くんのそういうリアクションには、慣れていくことに決めたんだ。それじゃあ、お嬢ちゃんは、どうなのかな? 『ファウスト』は読んでる?」

看你的反应就知道没有。应该说你根本不知道有那本书的存在吧。当然这种程度的小事,我一点部不会惊讶啦。因为我早就已经习惯你的那种反应了。那小姐,怎么样?你有看过《浮土德》吗?」

「あ、えっと」

「啊?那个……」

突然水を向けられ、驚く神原だったが、しかしすぐに、脊髄反射のようにすぐに、「いや、不勉強で、まだ読んでない」と答えた。

问题突然转到神原身上,让她吃了一惊,但她就像条件反射一样,「抱歉,我努力不够,还没看过。」立刻就回答说。

「勿論、知識として、物語の概要と粗筋くらいは知ってはいるけれど」

「当然,故事概要和大纲的相关常识,我是知道啦。」

「そうか。いや、概要と粗筋を知っていれば十分だよ。うんうん。普通はそうだよね、高校生ともなれば、それくらいは知っているもんだよね。あーあ、阿良々木くん、恥ずかしいねえ」

「是吗。光是知道概要和大纲就够了。嗯嗯。一般来说都是这样吧,读到高中这点程度的事情应该要知道吧。啊——啊!阿良良木老弟还真是可耻啊。」

「阿良々木先輩のことを馬鹿にするな! たまたま知らなかっただけに決まっているだろう! そもそも阿良々木先輩は読書などという既存の枠に納まる人ではないのだ!」

「不要瞧不起阿良良木学长!学长一定只是刚好不知道而已!而且学长原本就不是读书这种既存框架可以容纳的人!」

忍野の言葉に突如逆上して、声を張り上げて忍野を怒鳴りつける神原だった。通常ではありえないだろうその反応に忍野がぽかんとし、説明を求めるように僕に目線を送ってくる。

神原听到忍野所言突然动怒,扯开嗓门对他怒吼说。忍野看到这超乎常理的反应愣了一下,随即用视线要求我说明。

僕は、目を逸らすしかなかった。

我只能避开自己的目光。

……神原。

……神原。

僕のために怒ってくれる気持ちは嬉しいが……、自分のために怒ってくれる誰かの存在がこうも心強いものだとは思いもしなかったが、しかし、そこで忍野を怒鳴りつけると、僕が本当に馬鹿みたいじゃないか……。

你为我生气让我很高兴啦……看到有人愿意为自己动怒,的确会让人心有依靠没错,可是你在这里对忍野大吼,不就等于我真的是笨蛋吗……

「神原……その芸風は一回限りにしておいてくれ。面白いっちゃ面白いんだけど、忍野が僕を馬鹿にするたびにそれをやっていたら、本当に話が先へと進まない……」

「神原……这种独特的反应仅限这一次吧。这反应有趣是很有趣啦,不过要是忍野调侃我一次你就来一次的话,谈话就进行不下去了……」

「む。そうか。誰とでも虚心に付き合える阿良々木先輩ならではの含蓄のあるお言葉だ。正直、何にでもすぐ業腹になってしまう、人徳が足りない私ではその言葉には承服しかねるところもあるが、しかし阿良々木先輩がそう言うのなら、私は己を律して我慢しよう」

「呜。是吗。这是不管和谁都能虚心交往的阿良良木学长,才说得出的含蓄言语。老实说,对容易动怒、品格欠佳的我来说,这话有些地方让我难以听从,但既然学长这么说,那我就自律忍耐下来吧。」 そう頷いて、忍野にぺこりと頭を下げる神原。

神原点头说完,对忍野低下头来。

「ごめんなさい」

「对不起。」

ちゃんとごめんなさいが言える子だった。

她真是一个能够虚心道歉的乖孩子。

素直な子だ。

真是率直。

「……いや、いいんだけど。確かに面白かったし。それにしても、自分の片腕がそんなことになっちゃってるっていうのに、全く元気のいいお嬢ちゃんだね。何かいいことでもあったのかい? ま、ともかく──『ファウスト』の話。ヨハン・ウォルフガング・フォン・ゲーテ、疾風怒濤しっぷうどとう時代、シュトゥルム・ウント・ドラング58の代表的作家なんだけれど、その作家の集大成しゅうたいせいとしての代表作が、戯曲『ファウスト』だよ。その内容は──お嬢ちゃん、じゃあ知ってる限りでいいから、阿良々木くんに教えてあげてくれるかな?」

「……没关系啦。你的反应的确很有趣。话说回来,小姐自己的左手都变成那样了,还可以这么有精神啊。是不是发生了什么好事啦?总之呢,就是《浮士德》的故事。约翰‧沃尔夫冈‧冯‧歌德,狂飙突进运动的代表作家,他的集大成代表作就是戏曲:《浮士德》。戏曲的内容呢……小姐,你能把自己所知道的,告诉阿良良木老弟吗?」

「ん、ああ」

「嗯,好、好。」

遠慮がちに僕を見る神原。

神原有所顾虑地看着我。

微妙に申し訳なさそうな目線。

她的视线奇妙,看似有些不好意思。

ジェイコブズの『猿の手』の梗概こうがいを話してくれたときもそうだったのだけれど、神原駿河は性格的に、目上にあたる人物に対して何かを教えるという行為には、どうやら後ろ暗さのようなものを感じてしまうらしい。

她在向我说明杰考布斯的《猴掌》概要时也一样,神原骏河在个性上对教导长辈事物的行为,似乎感到有些内疚。

徹底して体育会系だ。

彻头彻尾的体育系人物。

「ゲーテの代表作というのは、忍野さんの言った通りで……そうだな、わかりやすい特徴としては、それが二部から構成された物語であるということかな。『初稿ファウスト』、『ファウスト断片』を経て、『ファウスト第一部』、『ファウスト第二部』。そんな風に六十年以上もかかって完結した、長大な大作なのだ。全くもって頭が下がる。ゲーテといえば『若きウェルテルの悩み』や『親和力』も有名だが、渾身の一作といえば、やはり満場一致で『ファウスト』ということになるのだろう。主人公のファウスト博士が、メフィストフェレスという悪魔に魂を売り渡し──全ての知識を得ようとする物語、とでも言えば、紹介としては十分だろう。ネタバレになるから詳しくは話せないけれど、内容としては、第一部では庶民の娘であるグレートヒェンとの恋愛を、第二部では理想国家の建設を描いている。哲学思想というか、知識探求の物語と読むのが一般的だな。阿良々木先輩ならば、まあ当然ご存知だろうとは思うが、『ファウスト的衝動』という言葉もあるくらいで、それは、全てを知り、全てを体験しようという知識欲にのっとった衝動のことを言うのだ」

「就跟忍野先生说的一样,那是歌德的代表作——还有呢,这部作品最容易理解的特征,就是它是前后两部所构成的故事。先有《浮士德初稿》、《浮士德片段》后,再来是《浮士德悲剧第一部》、《浮士德悲剧第二部》。是一部花了六年以上的时间才完成的长篇大作。真是让人很佩服。说到歌德,《少年维特的烦恼》和《亲和力》也是他的名作,不过大家都公认《浮土德》是他最呕心沥血的作品。内容是叙述主角浮士德博士,将灵魂卖给一个名为梅菲斯特的恶魔,想要藉此得到一切的知识。这样以介绍来说,应该算很充足了吧。我怕会说到作品的核心部分,所以不能说得太详细,不过以内容来说,第一部是在描写主角与平民女性葛丽卿的恋爱故事,第二部则是在描写理想国家的建设。一般都把这部作品解读为哲学思想,不,应该说是探求知识的故事。我想阿良良木学长一定知道『浮士德冲动』这个字的意思是指:想要理解、体验一切事物的知识欲,所产生的冲动。」

「…………」

『ファウスト』自体を知らない先輩が、どうして『ファウスト的衝動』なんて言葉を知っていると、この体育会系の後輩は思うのだろう。

为何这位体育系的学妹会认为一个连《浮士德》都不知道的学长,会知道「浮士德冲动」呢。

「悪魔に魂を売るってところが、その話の肝なんだよね──悪魔に魂を売って、その『ファウスト的衝動』に基づく願いを、叶えてもらおうとするファウスト博士……結末がどうなるのかは、勿論、阿良々木くんに本屋さんに行ってもらうことにしよう。うん、まあ、そうなんだ。お嬢ちゃんが説明したところまでが、一般常識だ、そこまで認識できていれば、僕も話がしやすいよ。読んでないのにそこまで立て板に水で弁舌さわやかに語ることができるってのは、全くもって素晴らしい。付け加えることがあるとすれば、そうだな、案外知られていないんだけど──まあ、そうはいってもゲーテについての解説本とかを読めば普通に書いてあることなんだけどさ、実際、古典なんて今時の人間は読まないからね。お嬢ちゃんのことを言うわけじゃないけれど、読まなくても読んだ気になっちゃうような有名な話をわざわざ読む必要はないってわけだ。だから知られていなくてもしょうがないんだけど、うん、そもそも、この『ファウスト』って物語は、実在の人物をモデルにしていてね」

「把灵魂卖给恶魔,是这部作品最重要的地方。浮士德博士把灵魂卖给恶魔,想要藉此实现基于『浮士德冲动』所许下的愿望……故事的结局呢,就请阿良良木老弟亲自去书店一趟了。嗯,就是这样。小姐说明的部分是一般常识,这部分懂的话,我也比较好说明。没看过书却可以滔滔不绝、口才流利地解释这么多,小姐你还真厉害啊。如果说有什么需要补充的地方呢,对了,有一件事可能不多人知道,其实介绍歌德的解说本上通常都会写到啦,不过古典文学现在没什么人在看。我不是在说小姐啦,而是这种不用看就知道内容的有名作品,实在没必要专程花时间去看。所以现在大家不知道也很正常吧,其实《浮士德》这个故事是基于实际人物而改编的作品。」

「なに? そうなのか?」

「什么?真的吗?」

意外そうなリアクションをする神原。

神原一脸意外地说。

『ファウスト』自体を知らない先輩には、驚きのポイントがどこなのかわからない。

连《浮士德》一书都不知道的学长,完全不明白这有什么好惊讶的。

「ヨハン・ファウスト。文芸復興、いわゆるルネサンスの時代に生きたと言われているよ……まあ実在の人物といっても、その辺りはその辺りで諸説あるんだけれど、この人についてのお話が、後に民間伝承となったのさ。医者や魔術師として放浪生活を送り、やっぱり悪魔・メフィストフェレスに魂を売り、ありとあらゆる知識と経験と引き換えに、キリスト教徒の敵として行動することを悪魔と約束し、それから二十四年間に亘って、まさしく『ファウスト的衝動』のままに生きて──契約が切れたと同時に、悲惨な最期を迎えることになる。これも詳しくは自分で調べなさい、『ファウストゥス博士』に詳しいから」

「约翰‧浮士德。据说他是文艺复兴,也就是Renaissance时代的人物……虽然他是实际存在的人物啦,不过这方面也有各种不同的说法,他的相关故事,最后变成了民间传说。他以医生和魔术师的身份过着流浪漂泊的生活,当然最后他和恶魔梅菲斯特订契约,以灵魂为代价换取一切的知识和经验,并答应恶魔在行动上要和天主教为敌,在接下来的二十四年间,他完全遵从『浮士德冲动』来生活……而契约结束的同时,等待他的是悲惨的下场。这部分的细节,也请你们自己去查了,因为《浮士德博士悲剧史》一书里头写得很详细。」

「ふうん……そうだったのか」

「嗯……原来是这样啊。」

忍野の雑学に、感心した風な神原だった。まあ『ファウスト』云々はともかく、民間伝承が嚙んでいるのなら忍野の分野だから、この程度の博引旁証は恒例のことなのだけれど、この感じだと、ひょっとするとこれからは忍野のことも持ち上げるようになるのだろうか。というか、その辺りの神原の基準が僕にはよくわからない。どうやら、誰に対しても同じように差別なく褒め殺すというわけでは、ないみたいだが……。

神原似乎很佩服忍野的杂学知识。先不管《浮土德》云云,只要和民间传说有关的东西,都是忍野的专业领域,所以这种程度的旁征博引已经是惯例了。从神原的感觉来看,她该不会等一下要把忍野夸上天去吧。老实说,我搞不太清楚神原夸奖人的基准。看来,她不是对谁都可以捧上天的……

「てっきり、ゲーテの創作だとばかり思っていた。巷の言い伝えを下敷きにしていたのか」

「我还以为那是歌德的创作呢。原来是以街头小巷的传说为蓝本的啊。」

「まあ、ストーリーにゲーテ流のアレンジがかなり加えられているから、強いていうならゲーテ版『ファウスト博士』って感じだね。太宰の『走れメロス』や芥川の『羅生門』みたいなものだ。今昔物語と芥川とじゃ、『羅生門』の印象もだいぶん違うだろう? そんな感じ。ゲーテ以外にも、ファウスト伝説は色んな人が物語化しているよ。有名なところでは、イギリスのマーロウとかね。マーロウは知ってる?レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウじゃないよ? クリストファー・マーロウ59だ。シェイクスピアの先輩作家として紹介されることが多い人なんだけれど、ほら、『フォースタス博士』っていってね」

「不过呢,故事经过歌德流的手法加工过,真要说的话应该是更糟糕的《浮士德博士悲剧史》啦。就像太宰的《跑吧!梅洛斯》,芥川的《罗生门》一样,《今昔物语集》和芥川,两者的《罗生门》给人的印象差很多吧?大概就是这种感觉。除了歌德以外,还有许多人也把浮士德传说写成了故事。有名的例如英国的马罗等等。你们知道马罗吧?不是雷蒙‧钱德勒笔下的菲力普‧马罗喔。是克里斯多福马罗。许多人把他当作莎士比亚的前辈作家来介绍,作品就是我刚才说的《浮士德博士悲剧史》。」

「ファウストの方が医者というのは、少し面白い」

「浮士德是医生这点,满有趣的。」

神原は微妙なはにかみと共にそう言った。

神原带着微妙的羞涩说。

うん? と忍野が怪訝そうに首を傾げたところを見ると、そのはにかみの意味は忍野には通じなかったみたいだけれど。

「嗯?」忍野露出诧异不解的表情,看来他不懂神原羞涩的意义何在。

「けど……忍野」

「不过……忍野。」

どことなく話が逸れているような気がしたので、僕は、『ファウスト』については結局よくわからないままに、忍野と神原との会話に参加を試みることにした。

总觉得现在的话题偏离了主题,所以我决定试着参与忍野和神原的对话,虽然我不太清楚《浮士德》的结局。

「それがどうかしたのか? いつもながらのまだるっこしい60長広舌ちょうこうぜつは大いに結構なんだけど、それが現在の神原の状況にどう繫がってくるのか、僕にはわからないよ。テーマが脱線して、横滑りを起こしてるんじゃないか? 魂と引き換えに悪魔が願いを叶えてくれるってところは、そりゃ猿の手に似ているのかもしれないけれど、でも、この神原の腕が、『ファウスト』に登場する悪魔、メフィストフェレスとやらの腕ってわけじゃないだろう? 猿の手ならぬ悪魔の手だなんて──」

「那又怎么了吗?你像平常一样,拖拖拉拉说一堆长篇大论是很棒啦,不过我搞不懂这些和现在神原的状况有什么关系。我们现在是不是偏离主题,搞错焦点了?恶魔以灵魂为报酬实现你的愿望这点,或许和猴掌很类似没错,可是神原的手不是《浮士德》里头出现的恶魔梅菲斯特的手吧?你现在说这不是猴掌而是恶魔手——」

「いや、まさしくその通りなんだ、阿良々木くん。今日の阿良々木くんは冴えてるよ」

「没错,你说得对,阿良良木老弟。今天你还真聪明啊。」

忍野は──

忍野他——

びっ、と僕を、気取った風に、指さした。

装模作样地用手指向我。

「『神』原って苗字を有するお嬢ちゃんに悪魔の手じゃ、まるで出来過ぎだけれど、まあ猿蟹合戦とか、この前の迷子ちゃんほどじゃあないよね。この場合は普通に普通の暗示って感じだろ。勿論、メフィストフェレスなんて、恐ろしさも極まる別格悪魔ではないよ──もっと低俗な悪魔さ。階級の低い、そもそも階級に組み込まれてもいないだろう、体のいい使い魔のような存在。そうなるとその種類を特定するのは本来とても難しいんだけれど、猿の腕を持つ雨合羽の悪魔となれば、必然、数は限られてくる──持ち主と一体化するってのは、レイニー・デヴィルだ」

「姓『神』原的小姐,配上恶魔手实在太过巧合,虽然没有猿蟹合战和之前的迷路小妹那么巧啦。这种情况只是非常普通的暗示吧。当然,梅菲斯特不是什么特别可怕的东西,他是一种低俗的恶魔。他的阶级很低,可能根本没有阶级吧,存在就像一种体格很好的使魔吧。这样一来,原本要特定这恶魔的种类是很困难的,但是如果是拥有猴掌的雨衣恶魔,那很自然数量就有限了。要是还会跟持有者一体化的话,那就只有雨魔了。」

レイニー・デヴィル。

雨魔。

雨降りの悪魔。

降雨的恶魔。

「猿の手じゃない、悪魔の手だ。はっはー、そう考えると、わかりやすいんじゃないかい? どうして猿が人間の願いを、代償もなく叶えてくれるものかって話だろう?猿の手がどうして願いを叶えてくれるのかと言えば、インドの老行者が不思議な力を込めたからだと、そういう説明がなされているわけだけれど、悪魔なら、そんな説明も触れ込みも一切いらないだろう? 叶えてくれるさ、だって、魂と引き換えなんだから」

「那不是猴掌,而是恶魔手。哈哈——你这样去想就会比较好懂吧,为什么猿猴会无条件实现人类的愿望?猴掌会实现愿望是因为印度老行者在上头施加了神秘的力量,这点书中有特别说明到。但是换成恶魔的话,为什么就不用特别说明?恶魔当然会实现人类的愿望,这是因为我们用灵魂作交换。」

「魂──」

「灵魂——」

「魂と引き換えに、三つの願いを叶えてやろう。当たり前のことさ、悪魔なら」

「以灵魂作交换,他们就会实现人类的愿望。这很理所当然,如果是恶魔的话。」

ふん、と鼻で笑うようにする忍野。

忍野哼笑一声。

馬鹿にしきった態度だった。

他的态度完全把人当成笨蛋。

「大体、猿の手なら右手だよ。左手じゃない」

「而且,如果是猴掌的话应该是右手,不是左手。」

「……そうなのか?」

「……是吗?」

「猿の手は右手で握って使用するアイテムだからね。普通に考えれば右手だと思うけれど。しかし、悪魔の手か。体系的な悪魔ではないとはいっても、こいつはびっくりだな。阿良々木くんにしてみれば、もう吸血鬼に遭ったくらいだから、大抵のことではびっくりしないのかもしれないけれど……しかし、日本でそういう種類の悪魔ってのは、すごい話だよ。蒐集のし甲斐がある。ま、その手の願いを叶える系の妖怪っていうのは、確かに日本でもこと欠かないんだけどさ。なんだかなあ、委員長ちゃんのことといい、ツンデレちゃんのことといい、迷子ちゃんのことといい、こうしてみると同列なんだけど……ここはおかしな町だよ、本当に。挙句の果てには閻魔大王でも召喚されるんじゃないのかな。……お嬢ちゃん、その左手、お母さんから受け継いだって言ったよね? 神原っていうのは父親の姓だろう。お母さんの旧姓って、わかる?」

「因为猴掌是用右手握住来使用的道具。正常来思考的话,我想应该是右手。不过恶魔手嘛。虽然这家伙不是体系内的恶魔,不过还是吓了我一跳呢,阿良良木老弟你都见识过吸血鬼了,所以多半的事情不会让你吃惊吧……可是在日本出现这种类型的恶魔,是很稀奇的事情。很有收藏的价值。唉呀,虽然像这一类会实现人类愿望的妖怪,日本也不少啦。总觉得这样看来,班长妹、傲娇妹和迷路小妹,都是类似的情况……这个城镇还真奇怪啊。会不会最后连阎罗王都被召唤出来了啊……小姐,你刚才说那左手是从令堂那里拿到的吧?神原是令尊的姓吧?你知道令堂的旧姓吗?」

「確か──えっと、少し珍しい名前で」

「我记得好像是……有点稀奇的姓。」

神原はゆっくりと記憶を探るように、答える。

神原缓缓地摸索记忆后,回答说:

「『臥煙』だったかと。臥薪嘗胆がしんしょうたんの『臥』に、煙幕の『えん』で、『がえん』……臥煙遠江とおえというのが、母の結婚前の名前だ」

「好像叫『卧烟』。卧薪尝胆的『卧』和烟幕的『烟』,卧烟远江是我妈妈婚前的名字。」

「……へえ。ああ、そうかい。『とおえ』っていうのは、『遠い』に長江ちょうこうの『江』だよね。つまり遠江とおとうみ61か。駿河っていうお嬢ちゃんの名前は、その辺が由来なわけだ。はっはー、いいセンスだね」

「……喔?啊,原来如此。『远江』是遥远的『远』和长江的『江』吧。远江吗。小姐的骏河这个名字,原来是这样来的啊。哈哈——这名字取得真不错。」

「結婚後は勿論、神原遠江だった。しかし忍野さん、それがどうかしたのか?」

「结婚之后自然就变成神原远江了。不过忍野先生,这名字有什么关系呢?」

「どうかしたのかって? お嬢ちゃん、それはまさか僕に訊いたのかい? いやいや、どうもしないよ。間を持たすためになんとなく訊いてみただけ、何も関係ない。それに、そんな背景はどうでもいいしね、この場合。で、阿良々木くん、それにお嬢ちゃん。話は全部わかったし、その手の正体も、猿の手だったところで悪魔の手だったところで、きみ達にしてみれば同じことなのかもしれないけれど、それで僕のところを訪ねてきて、これからどうしようって腹積もりなんだい?」

「有什么关系?你该不会在反问我吧?不不不,没有关系啊。我只是无聊随便问问而已,完全没有关系。而且,在这种情况下,那些背景因素根本不重要。那么,阿良良木老弟,还有小姐。你们的事情我知道了,这只手是猴掌还是恶魔手对你们来说可能都一样吧,你们来这里找我,已经想好接下来要怎么做了吗?」

「どうしようって──」

「你问我要怎么做——」

「いや、阿良々木くん、勿論、僕はいっぱしの専門家だからね。半可通はんかつう62のなんちゃってオーソリティとして、こういう事態にあたって、力を貸すことにはやぶさかではないんだよ」

「唉呀,阿良良木老弟,当然我还算得上是一个专家啦。遇到这种事情,我不会吝啬用我一知半解的知识帮助你们的。」

「た──」

「可以——」

神原が身を乗り出す。

神原探身向前。

「助けて、くれるのか」

「可以救我吗?」

「助けないよ。力を貸すだけ。きみが一人で勝手に助かるだけだよ、お嬢ちゃん。救いを求めているのなら、僕じゃお門違いだし、そもそも、出る幕じゃないさ。でもね、この場合──阿良々木くん、僕は何をすればいいのかな?」

「我不会救你。只会助你一臂之力。想得救还要靠你自己,小姐。如果你是来求救的话,那找我就找错人了,而且我根本就没有出场的机会。不过呢,这种情况呢……阿良良木老弟,我该怎么做呢?」

意地悪い口調で──しかし、決まりきった答を求めているのではなく、僕の答を本当に待っているかのように、忍野は言葉を後に続けない。どうしてだろう? 何をすればいいのかって……そんなの、決まっているじゃないか。

忍野用坏心的口吻说。但他不是在寻求既定的答案,似乎真的在等我回答一样,没有继续说下去。为什么?你该怎么做……这还需要问吗?

「おい、忍野……」

「喂,忍野……」

「つまり、今回僕は、一体何を手伝えばいいのかということなんだよ、阿良々木くん。お嬢ちゃんの二つ目の願いを叶えるのを手伝えばいいのかい?それとも、二つ目の願いをキャンセルするのを手伝えばいいのかい? それとも、お嬢ちゃんの左腕を元に戻すのを手伝えばいいのかい? それとも、その全てかい? 全てっていうのは、少し欲張り過ぎな気もするけれどね──確かに、言えるのは、その全部が、一筋縄63にはいかないってことだ」

「也就是说,这次你希望我怎么帮你啊,老弟。是要我帮忙让小姐实现的第二个愿望?还是希望我帮你们取消第二个愿望?或者是要我帮忙把小姐的左手复原?又或者是上述的全部呢?全部都要我帮忙可能太贪心了一点,不过可以肯定的是,这一切都没办法用普通的方法解决。」

「いや……えっと」

「不……那个。」

全てと言えば──その全てになるのか?

如果回答全部……就能够全部解决吗?

でも。

可是,

「今起きている現象を、簡単に解決する方法は、とりあえず、二つあるよ。一つは、阿良々木くんが、夜、雨合羽の化物──レイニー・デヴィルに殺されること。そうすれば、お嬢ちゃんの腕も元に戻るし、願いも叶うだろう。もう一つは、そのけだものの左腕を、怪異と同化しちまったその左腕を、すぱっと、切り落とすことさ」

「这次发生的现象有两个简单的解决方法。第一个是阿良良木老弟在晚上,被穿着雨衣的怪物——雨魔杀死。这样一来,小姐的手就能恢复原状,愿望也能够实现。另一个就是把那只野兽的左手,和怪异同化的左手,一刀砍掉。」

「き、切り落とすって」

「砍、砍掉!」

忍野の物騒な提案に、僕は、にわかに慌てる。

听到忍野可怕的提议,我顿时慌了。

「……猿──悪魔の部分だけ切り落とすってことができるのか? その後から、元の腕が生えてくるとか──」

「……可以把猿猴……恶魔的部分切掉吗?在那之后,我原本的手会长出——」

「トカゲの尻尾でもあるまいし、そんな都合のいいこと、あるわけないじゃん。たかだか腕一本で状況が解決するなら、買い物としては安かろうってことさ」

「又不是蜥蜴的尾巴,哪可能有这么好的事情。只牺牲一只手臂就能解决事情的话,这买卖还算便宜了。」

気楽に言うが──そんなの、冗談じゃない。

说得倒轻松,开什么玩笑。

安かろう悪かろうもいいところだ。

什么便宜不便宜。

普通の場合でもそうだろうが、神原の場合は尚更である。そんなことをしたら、神原は、二度とバスケットボールができなくなってしまうじゃないか。バスケットボールというスポーツが、神原にとってどれほどの救いになって、今もなお彼女の支えで在り続けているのかを考えれば、そんなことおいそれと、たとえ思いついたって、口にしていいような提案ではない。

正常人都不会切,更何况是神原。要是把手臂卸掉,神原就再也不能打篮球了不是吗……篮球这个运动,对神原来说是一种莫大的救赎,现在可能还是她心灵的支柱,这样来想,那种提议就算想到也不应该随便说出口。

「あ、ああ。それはいくらなんでも、私としても、困るというか──」

「是、是没错。可是那样实在……我会很伤脑筋——」

「人間一人殺そうとしてんだぜ? それくらい、当然の代償じゃないのかい、お嬢ちゃん?」

「这只手想要杀掉一个人喔?这点程度的牺牲是很正常的吧?小姐。」

にわかに戸惑いを見せた神原に、厳しい言葉を投げかける忍野だった──こういうときの忍野は、本当に情け容赦がない。羽川のときも戦場ヶ原のときもそうだったけれど──

神原一时之间不知所措。忍野严词厉句地质问她。忍野在这种时候,真的是手下不留情。虽然在羽川和战场原的时候也是如此——

「まあ、阿良々木くんが殺されるってのも、解決法としては、それはそれで簡単でいいのかもしれないけれどね」

「其实阿良良木老弟被杀掉,也是一个简单明了的解决方法啦。」

「お、おい、言いたいことはわかるけれど、でも、ちょっと待てよ、忍野。人間一人殺そうとしてるって……それは僕のことだろう? でも、それは神原の望んだことじゃないんだ。神原はただ、戦場ヶ原のそばに──」

「喂、喂!你的意思我明白,可是等一下,忍野。你说这只手想要杀掉一个人……那个人是指我对吧?可是那不是神原的愿望啊。神原只是想待在战场原的——」

「そばにいたいだけ? 笑うねえ」

「只是想待在她身边?真是好笑。」

忍野は厳しい口調のままで僕に言う。

忍野维持严厉口吻对我说。

「阿良々木くんは、本当に優しいよね。優しくていい人だねえ──優しくていい人だよ。胸がむかつくねえ、本当にもう。その優しさで一体どれほどの人間を傷つければ気が済むんだろうね? 忍ちゃんのことだってそうだよ。そばにいたいだけだなんて、そんな甘ったるい言葉を、そのまま信じたのかい?」

「阿良良木老弟,你真的很温柔耶。温柔的好人……你真是一个温柔的好人。真的是温柔到让人心头冒火啊。你打算用那种温柔伤害多少人才甘心啊?小忍的时候也是一样。只是想待在身边,这种甜言蜜语,你就这样照单全收相信了?」

「……違うってのかよ」

「……难道不对吗?」

僕は神原を窺いながら、忍野に反論する。

我一边窥视神原,同时反驳忍野。

神原は、何も言わない。

神原一句话也没说。

「おい、神原──」

「喂,神原——」

「たとえばさ、阿良々木くん。おかしいとは思わないのかい? 小学生のとき、一つ目の願いを叶えたときの話だよ。どうしてその左手は、お嬢ちゃんの足を速くせず、周囲をぶちのめすなんて行動に出ちまったんだと思う?」

「我举个例来说好了,阿良良木老弟。你不觉得奇怪吗?她小时候实现第一个愿望的事情。你想想,为什么那只左手没有让小姐脚程变快,反而跑去痛扁周围的人啊?」

「そりゃ──だから、猿の手は、持ち主の意に添わない形で、願いを叶えるから──」

「那是……因为猴掌实现愿望的方式,会违背持有者的本意——」

「でも、猿の手じゃない」

「不过,那不是猴掌。」

忍野はきっぱりと断言した。

忍野一口断言说。

「魂と引き換えなんだ。願いは、願った通りに叶うはずさ。レイニー・デヴィルは低級悪魔だけれど、すぐ暴力に訴える悪辣な属性を有してはいるけれど、でも、契約は契約さ。取引は取引さ。足が速くなりたいと願ったのなら、普通は、そのまんま、足が速くなるはずだ。同級生をぶちのめして、それで足が速くなるのかい? その因果関係は、おかしいとは思わないかい? 一緒に走る人間をぶちのめしたところで、新しいグループに入れられることくらい、自明の理じゃないか」

「愿望必须用灵魂去交换。所以,愿望应该也会照内容实现才对。雨魔虽然是低级恶魔,虽然拥有马上诉诸暴力的毒辣性格,可是契约就是契约。交易就是交易。如果小姐希望脚程变快,正常来说,应该会直接变快才对。痛扁同学一顿就可以让脚程变快吗?你不觉得这因果关系很奇怪吗?把和自己比赛的人痛扁一顿,只会被编到其他组别,这种常理不是很显而易见的吗?」

「…………」

そう言われれば、そうだけれど。

这么说来,的确如此。

「……じゃあ、どうしてなんだよ。雨合羽の化物は、どうして同級生を──」

「……那又是为什么?为什么雨衣怪要把神原的同学——」

「同級生をぶちのめしたかったからだろ。新しい学校になじめずにずっとからかわれてたんだもんな、お嬢ちゃんは。いじめというほどじゃなかったなんて言うけれど、そんなもん、いじめられてる奴は大抵そう言うんだよ。両親が死んだばかりで辛かった時期に同級生から迫害を受けたりしたら、そいつらに復讐を考えたとしても、全くおかしくはない。考えない方がおかしいだろう、そんなの」

「因为小姐想要痛扁他们一顿吧。毕竟她没办法融入新学校,还一直被他们嘲笑。虽然还不到霸凌的程度啦,但是被欺负的人通常都会觉得自己被霸凌。在刚失去双亲的痛苦时期,要是被同学欺负的话,就算想报复他们也完全不奇怪。不想反而才奇怪吧。」

「私は──」

「我——」

言いさして──黙る。

神原欲言又止,沉默了下来。

神原は、どう釈明しようとしたのだろう。

她打算怎么解释?

そして、どうしてそれをやめたのだろう。

为什么欲言又止?

何に、気付いてしまったのだろう。

她发现了什么吗?

「無意識だろうさ、勿論。そんなことを願ったのは、無意識の内だったんだとは思うぜ? 意図的にそうしていたのなら、そうとわかるはずだから。本人の自覚としては、『足が速くなりたい』と願ったに違いない。だが、それは表で、裏は違う。その願いの裏には、暗い願望があったのさ。同級生を見返してやりたいと──同級生をぶちのめしてやりたいと。お嬢ちゃんは無意識であっても、そう願ったんだ。悪魔はその願望を、見抜いた。願いの裏を読んだんだ。でも、それは、お嬢ちゃんには、本当のところは、わかっていたはずなんだぜ? 無意識とはいえ、正直な自分の気持ちなんだから。けれど、そんなことを自分で認めたくないから、その現象に別の解釈を求めた……それが『猿の手』だったんだろう。願いが叶う云々じゃなくて、意に添わぬ形で──という、その文言こそが枢機すうきだったんだろう? 同級生を襲ったのは、あくまで自分の意思じゃないという、精神的言い訳。まあ、大事なことだよね」

「当然,你是无意识的吧。我想你是在潜意识中,许了那种愿望的吧?如果是刻意的,那你应该自己知道才对。在你的自觉上,肯定许了『希望能让自己跑快一点』的愿望。可是那只是表面,里面却不是这样。那个愿望的里面,有一个黑暗愿望。你希望报复同学,把他们痛打一顿。小姐你在当中许了那种愿望。恶魔看穿了你愿望的本质,察觉到你深层的愿望。不过,这一点其实小姐你自己知道吧?就算是在潜意识中,但那毕竟是你最真实的心情。可是你不想承认,所以才会在别种现象中寻求解答……那就是『猴掌』吧。会实现愿望这点不重要,而是实现的方式会违背自己的本意——这句话才是重点吧?这可以用来解释:攻击同学完全不是出自于自己的本意,可以当作精神上的借口。这才是最重要的地方吧。」

精神的な言い訳。

精神上的借口。

解釈の問題。

解释的问题。

「猿の手に限らず、願いを叶えるタイプの怪異っていうのは、大抵の場合、主人公が悲惨な目に遭って終わる──その意味じゃあ、お嬢ちゃんが小学生の頃に調べたってときに、別の怪異に行き当たってもおかしくなかったはずだ。たまたまそれが、ジェイコブズの『猿の手』だったってだけでね。でも、どうだい? お嬢ちゃんは実際、悲惨な目に遭っているかい? 願いが叶ったことによって不幸になっているかい? 自分をからかっていた同級生が酷い目に遭ったことが、お嬢ちゃんにとって本当に不幸だって、阿良々木くんに言えるのかい? そこはザマミロすっきりしたって思うのが、普通だとは考えないのかな?」

「不光只有猴掌,能够实现愿望的怪异,通常都会让当事人的下场很凄惨。在这层意思上,小姐在小学调查的时候,就算把这左手误以为是其他怪异也不奇怪。你刚好把他误以为是杰考布斯的《猴掌》而已。不过,怎么样?你实现愿望后有变不幸吗?嘲笑自己的同学被痛扁了一顿,对我来说真的很不幸——你敢对阿良良木老弟这样说吗?正常来说只会觉得这样很爽、他们活该而已吧?」

「……普通って、でも、忍野」

「……正常来说?可是,忍野——」

「はっはー、阿良々木くん、何の確証があってそんなことを言うんだって思うかい? だってさ、そんなの、話を聞けば、瞭然じゃないか。あからさまだよ。お嬢ちゃんのその腕……小学生のときは、どうなっていたんだい?」

「哈哈——阿良良木老弟,我是有确切的证据才会这样说的喔。因为,那一听就知道了吧。实在太明显了。我问你,小姐的那只手……在小学的时候有怎么样吗?」

「………………」

そういえば。

这么说来。

当時は手首までの姿だったという、その左手の木乃伊は──どうなっていたのだろう。

当时只有手掌的左手木乃伊,变成什么样子呢。

「包帯がどうとか、そういう話は言わなかったよね──次の日、教室に行くまで、四人の欠席を知るまで、ことが起きていることには気付かなかったんだろう? 左手がそんなことになっていたら、何かが起きていることくらいには気付くはずなのに。つまりどういうことだい? つまり、夜、同級生をぶちのめした段階で、願いは叶ってしまっていたということさ。一晩、お嬢ちゃんが気付かない内に怪異はお嬢ちゃんの左手に同化して、お嬢ちゃんが気付かない内に怪異はお嬢ちゃんの左手から離れたってことだろう。離れて、願いを叶えたその魂の分だけ──成長し、左手首から左腕になったって、ことだろうさ」

「小姐没有提到绷带吧。她到教室得知那四个同学缺席前,完全都没发现到已经出了事对吧?要是她的手有怎么样,应该会察觉到发生了什么事才对。也就是说怎么样?也就是说,她在晚上痛扁同学一顿的时候,愿望就已经实现了。怪异在一个晚上,在不知不觉间和小姐的左手同化,然后又在不知不觉间离开她的左手。离开后,左手因为实现了小姐的愿望,而得到了她的灵魂——最后从手腕下长成了下臂吧。」

「……って、おい、忍野、それじゃあ──」

「……喂,忍野,那不就是——」

その話はわかったけれど。

忍野所言我明白。

でも、その弁だと、まるで──

但照他的说法,宛如——

「だから、阿良々木くんの最初の考えで、正しかったんだよ。珍しくも阿良々木くんは正解に辿り着いていたんだ。言ったろ? 今日の阿良々木くんは冴えてるって、さ。ごちゃごちゃ複雑に考えずに、普通に、ごく当たり前に、順当に考えれば、それでよかったんだよ。加害者の言い訳を信じるなんて、本当に人がいいよねえ? 阿良々木くんは陪審員にはなれないよ。大好きな先輩を寝取った男。殺したいくらいに嫉妬したとしても、おかしくはないだろうさ。お嬢ちゃんの意思が嚙んでいないなんてとんでもない、全てはお嬢ちゃんの意思だったのさ。左手に意思など、あるものか」

「所以,阿良良木老弟一开始想的很正确。很难得你会找到正确答案。我不是说了吗?今天的你脑袋很灵光。不要去想一些乱七八糟的琐碎问题,只要很普通、很自然、很顺理成章地去思考,那一切就没问题了。想不到你居然会相信加害者的辩解,你还真是个好人啊?阿良良木老弟一定当不了陪审员的。你抢走了她最喜欢的学姐。就算她嫉妒到想杀死你也不奇怪吧。左手要杀你和小姐没有关系?笑话,这一切都是她的意识使然。左手哪有什么自我意识啊。」

と、忍野は言った。

忍野说。

008#

レイニー・デヴィルは、とても暴力的な悪魔らしい──何よりも人の悪意や敵意、怨恨えんこん悔恨かいこん、嫉心や妬心としん、総じて、マイナス方面、ネガティヴな感情を好む。人の暗黒面を見抜き、惹起じゃっきし、引き出し、結実けつじつさせる。嫌がらせのように人の願いを聞いて、嫌がらせのように叶える。契約自体は、契約として──人の魂と引き換えに、三つの願いを叶える。三つの願いを叶え終えたときに──その人間の生命と肉体を奪ってしまう、そうだ。つまり、人間そのものが、最終的には悪魔となってしまう、そういう性質であるらしい。もしも神原が、一年前、戦場ヶ原の抱える秘密を知った段階で、それを解決してくれと願ったところで、その願いは叶えられなかったということなのだろう。レイニー・デヴィルが叶えることのできる願いは、暴力的で、ネガティヴな願いだけなのだから。

雨魔似乎是非常暴力的恶魔,他特别喜欢恶意、敌意、嫉妒、怨恨和悔恨等,整体来说,就是人类所有黑暗的负面情感。他会看穿、挑起、引出人类的黑暗面,进而让其开花结果。有如故意引入不快似地听取人类的愿望;有如刻意引入不悦似地实现其心愿。契约本身须以灵魂来交换,可实现三个愿望。在三个愿望达成之时,据说他会夺取许愿者的生命和肉体。简单来说,他在性质上会让人类最后变成恶魔。神原在一年前知道战场原的秘密时,要是她想靠许愿来解决问题的话,恐怕愿望不会实现吧。因为雨魔只能实现暴力和负面的愿望。

悪魔は願いの裏を読む。

恶魔可以读出愿望的里层。

表があれば──裏がある。

有表就会有里。

足が速くなりたいのは、同級生が憎かったから。

神原想让脚程变快,是因为她憎恨自己的同学。

戦場ヶ原のそばにいたいのは──阿良々木暦が憎かったから。

想待在战场原身旁,是因为憎恨阿良良木历。

そう、裏を読む。

恶魔读出了里层。

そう、裏を見る。

看到里层的愿望。

無意識の願望を、見抜く。

他看穿神原在潜意识中许下的愿望。

見透かす──悪魔。

恶魔全部看透了。

身を引いた自分に後悔はなくとも──その位置に誰かが来ることを、許せなかった。誰かがその位置に来るなら、自分でもいいはずなのに──

神原虽然不后悔离开战场原身旁,但她却不允许有人占走那个位置。要是别人可以,那自己应该也可以才对——

だったら、私でもいいはずじゃないか。

既然这样,我神原应该也可以才对。

レイニー・デヴィル。

雨魔。

古くからヨーロッパに伝わる悪魔。

自古以来流传在欧洲的恶魔。

多く、雨合羽を着た猿の姿で描かれる。

他常被描绘成穿着雨衣的猿猴。

その意味では、一応、その左手のことを猿の手と言っても正解なのだろうけれど──とにかく、一つ目も二つ目も、願い自体は、無意識に、明に暗に、神原が望んだことだったのだ。

这样看来,说那只左手是猴掌也算正确答案吧。总之,第一和第二个愿望本身不论明暗,都是神原在潜意识中的期望。

自分をからかう同級生を。

她希望教训嘲笑自己的同学。

そして僕を。

还有教训我。

小学生のときの同級生が怪我程度で済んで、僕が殺されかけたのは、つまり、神原の想いの差だったのか……ネガティヴな気持ちの量の差だったのか。神原の運動神経の成長云々も、勿論要因遠因としてはあるのだろうけれど、しかし、それ以上の精神的なものも、あったということだ。

小学的同学只是受个伤就没事;而我却差点见阎罗王。这是因为神原在意念上的差距吗……因为黑暗情绪的份量差距吗?神原在运动神经等方面的成长,当然也是要因和远因,但再上一层还有精神方面的差距。

まあ、しかし、忍野の言う通り。

不过忍野说得对。

僕の考えが足りなかったのかもしれない。

或许我的思考不够周密。

本当に神原が、レイニー・デヴィルに『戦場ヶ原のそばにいたい』と願ったのなら、それで神原が、僕の身の安全を気にするのは、おかしい──小学生のときのエピソードを聞けば、暴力的な左手が阿良々木暦を排除しようとするのはわかる。けれど、どうだろう、神原の立場から、それが確実に起こると、どうしてわかるのだろう? 左手がどんな風に願いを叶えるのか、どんな風に意に添わない形で願いを叶えるのかなんて、本当のところ、わかるわけがないのに。

如果神原真的向雨魔许愿:「希望可以待在战场原身边。」那为何她会担心我的人身安全,这太奇怪了。听完她小学时发生的事情后,我知道那只暴力的左手打算排除阿良良木历。但是,站在神原的立场来看,为何她知道这状况确实会发生呢?左手会如何实现愿望,会如何违背自己的本意——这些她应该不可能会知道才对。

無意識に願ったことを無意識に知っていたから。

因为她在无意间,知道自己在潜意识中许下的愿望。

僕の身が危ないと、知っていたから。

因为她知道我会有危险。

怪異が自分の左手と同化して、すぐに雨合羽の化物が僕の前に姿を現さなかったのは、それでも神原が、その衝動を、抑えていたからだろうと、忍野は言った。ぎりぎりのところで軋轢あつれき64を起こし、鬩ぎあっていたのだろうと。

忍野说怪异和神原的左手同化后,雨衣怪没有立刻现身在我面前,这是因为她抑制了那股冲动吧。她在理性与黑暗的交界和左手产生摩擦,彼此斗争。

「頑張って足を速くしたなんてのは、自分に対する言い訳としては最たるものだよね。自分で願いを叶えたから、木乃伊は何もしないんだ──なんて、ちゃんちゃらおかしいよ。お嬢ちゃん自身、そう信じていたんだろうけれど、信じていたかったんだろうけれど、そしてそれは、決して間違いではなかったけれど、でも、レイニー・デヴィルが暴力によって叶えた願いは、表じゃなくて、あくまで裏だったんだ。でも、そんな風に自力で全てを何とかしてきたお嬢ちゃんの姿勢が、今回はいいように作用したってことさ……怪異は腕に同化したけれど、それが発動するのを、抑えることができた。そういう意味では、この種の怪異はアイテムみたいなものなんだよ、確かに。持ち主の意識に左右される……まあ、現実的なことを言っちゃえば、悪魔とはいえこの場合は片腕だけだから、レイニー・デヴィルもそこまでの力を発揮できないということもあるんだろうね。意識を凌駕できるほどの無意識を、引き出すことはできなかったということさ。要するに、お嬢ちゃんが阿良々木くんの身体を気にしている内は、左手は発動しなかったということだ。四日前からの、お嬢ちゃんのストーキングは、きちんと効果を発揮していたということだよ。お嬢ちゃん自身は、そんな風には思ってなかったとしてもね、全ては無意識の内のことだから。けれど──昨日かい?お嬢ちゃんは、勉強会とか言って、阿良々木くんとツンデレちゃんが、二人きりで会うことを知ってしまった。それまではあくまで噂でしかなかった、ひょっとすると違うかもしれなかった、二人の付き合いに、とうとう確信を持ってしまった。それで──我慢できなくなった。阿良々木くんの推測通りだよ」

「她努力让自己的脚程变快,这是对自己最好的一种借口。说什么只要自己实现愿望,木乃伊就不会有动作,这种说法实在笑掉别人大牙了。或许小姐自己是这么认为,想要如此相信,同时你的想法本身也绝对没有错,不过,雨魔用暴力实现的愿望是里层,不是表面。而小姐遇到问题都想靠自己解决的态度,这次反而起了好的作用……怪异虽然和她的手同化,但她却能够抑制他发动。在这层意思上看来,这类型的怪异确实就像道具一样,受到持有者的意识左右……唉呀,说句实际点的话,就算他是恶魔现在也只有单手,雨魔也无法发挥出全部的力量吧。他无法引出凌驾于自我意识的潜意识。也就是说,小姐在担心阿良良木老弟的那段期间,左手才没有发动。她从四天前开始的跟踪,如期发挥了效果。或许小姐自己不这么认为,因为这些都是在潜意识之中进行的。可是——昨天吗?小姐知道阿良良木老弟和傲娇妹两人要单独开读书会。在那之前,她觉得你们交往的传闻只是谣言,可能是哪里搞错了。但是听到你的说法后,她终于确信了。所以……她无法忍耐。这就跟阿良良木老弟推测的一样。」

心の隙間を悪魔に付け入られた。

她的内心被恶魔趁隙而入。

とは、忍野は決して言わなかったけれど。

这句话,忍野绝不会说出口。

そういう甘えた弱さを、忍野は徹底して嫌うから。

因为他彻底厌恶这种撒娇似的脆弱。

でも──

可是——

最初から嫉妬で、最後まで嫉妬だったと、ちゃんと神原は──言っていた。

一开始是嫉妒,到最后还是嫉妒,神原自己已经坦白说出口了。

言っていたんだ。

说出口了。

「ん、そろそろだろ」

「嗯,差不多了吧。」

僕の血液を、たっぷり、リミット寸前まで吸い取ってもらったところで、僕は忍にそう言って、抱き合うような形になっていた、彼女の小さな背中を、軽く、ぽんぽんと叩いた。忍は、僕の首筋に開いた二つの穴からそっと牙を外して──その際少しだけ零れた血液を、ぺろりと綺麗に、舌で舐めとった。こうして忍と抱き合っていることも、戦場ヶ原にしてみれば浮気の範疇に入るのかどうかということを、これからは考えなくてはならないのかもしれないが、しかし、この作業はこの形にならないと不可能だから、なんとか勘弁してもらうしかない。春休みならいざ知らず、今の忍の体軀は本当に小さくて、それに頼りなくて、こうして抱えていても、まるで霧か霞でも抱きしめているかのようで、まるで手応えなんてないのだから。

忍大口吸食我的血液直到极限时,我轻拍她娇小的背部说。现在我们彼此拥抱在一起。随后,忍把牙齿自我颈上的两个小洞轻轻拔出,并用舌头将拔出时渗出的少许血液舔拭干净。未来我可能需要好好思考,像这样和忍相拥在一起,照战场原的标准来说是不是也算出轨,可是不用这个姿势根本无法吸血,所以只能请她法外开恩了。春假的时候暂且不管,现在忍的身体实在很娇小、无助,就像这样抱着她,也仿佛像在拥抱雾气或烟霭一般,完全没有拥抱的感觉。

「……と、と」

「……喔、喔!」

しゃがみ込んだ姿勢から立ち上がって──少しふらつく。やっぱり、当たり前なのだけれど、吸われた直後は、貧血にも似た症状が現れるな──特に今回は、与えた量が多かった。

我从蹲姿起身,稍微有一点腿软。果然,这也很正常,被吸血之后会出现一些类似贫血的症状,特别是这次,被吸的血量多了一些。

デフォルトの五倍近い。

接近标准值的五倍。

ぴょんぴょんと、軽く跳ねた。

我连续做了几个轻跳。

まあ、そうはいっても僕自身の感覚・体感は、実のところあんまり普段と変わらないんだよな、これ……全てのパラメーターが全体に底上げされてしまうわけだから、ノーマルの状態との違いが、厳密には、よくわからないのだ。

不过老实说,我的感觉和体感和平常没什么差别……因为现在我全身的能力都获得提升,所以我不太清楚和普通状态有什么差别。

忍は、もう、体育座りの体勢に戻っていた。

忍已经回复到体育课的坐姿。

体育座り……それは、両腕で自分の身体を確かめるように、抱きかかえるような、座り方。

体育课坐姿……那是一种用双手环抱大腿,有如在确认自己身体是否存在的坐姿。

僕の方を見もしない。

她没瞧我一眼。

「…………」

優しくていい人──か。

温柔的好人……吗。

僕がいくら自分のことを、優しいわけでもいい人なわけでもないと言い張ったところで、現実問題、その被害を一番食ったのは、やっぱり、この金髪の吸血鬼なんだよな……忍野があんな風に言いたくなるのも、無理はないか。

就算我再怎么主张自己不是,就现实来看,第一个被我温柔伤害的就是这位金发吸血鬼……忍野会说那种话也不是没有道理吧。

僕がどうとか言うより、忍にとっては……。

我说什么,对忍来说都……

ゴーグルのついたヘルメットを上からわしづかみにして、ぐりぐりと、左右に揺すってみた。忍はそれでもしばらくは、無視するように反応しなかったが、その内本気でうるさくなったのか、乱暴に、僕の手を振り払った。

我大把抓住忍的防风眼镜帽,试着左摇右晃。忍一时间虽然无视于我,没有做出任何反应,但最后她似乎觉得我很烦,粗鲁地拨开了我的手。

うん。

嗯。

僕は、それにとりあえず満足し、何も言わず、忍野の主義を真似るように、別れの言葉も口にせず、忍に背を向けて、階段の踊り場から、三階へと降りた。今度忍に会うときは、D‐ポップ65あたりをお土産に持って来ようと考えながら、三階を経由して、そのまま二階へ。

我对这反应暂时感到满足,随后一语不发,有如在模仿忍野的不说再见主义一样,没有话别,直接转身背向忍,从楼梯间往下走到三楼。下次来找忍的时候,带六小福之类的伴手礼来送她吧,我一边心想,同时经过三楼来到二楼。

向かって廊下の奥の教室の扉の前で──忍野メメは腕組みをして、壁にもたれ、気楽そうに片足をぶらぶらさせながら、待っていた。

我顺着走廊来到最深处的教室。忍野咩咩在教室门前,双手抱胸,背靠墙壁,一派轻松地晃着一条腿在等我。

「お。待ちかねたよ、阿良々木くん。思ったより時間がかかったみたいだね」

「喔!我都等得不耐烦了,阿良良木老弟。你花的时间比我想象中的还久呢。」

「ああ。ちょっと、ぎりぎりの基準がわかりにくかったからさ。ひょっとすると、少し足りないかもしれないけど……でも、飲ませ過ぎるよりはいいだろ。僕にとっても、忍にとっても」

「是啊。我搞不清楚刚刚好的标准。可能让她吸太少了……不过,总比让她吸过头还要好。不管是对我而言,还是对忍而言。」

「んー。まあそれは確かにそうなんだけどね、阿良々木くん、忍ちゃんについては、そんなに神経質になる必要はないよ。僕の名前で存在を縛っちゃってるからね、滅多なことはないさ。名付けるってのは手なずけるってことなんだから。むしろ餓死がしの方が心配なくらいだよ。阿良々木くんはこれから悪魔とくんずほぐれつ66の大立ち回りを演じなくちゃならないんだからさー、そんな気を回している場合じゃないと思うぜ? 演じるのがただの三枚目さんまいめ67になっちゃうよ。すれすれまで引き出したところで、そんな勝率の高い勝負でもないと思うぜ? いくら相手は左腕だけだとはいってもさ」

「嗯——你说的确实没错啦,不过阿良良木老弟,你对小忍没必要这么神经质。她的存在被我的名字束缚住,所以不会乱来的。我替她取名字,就等于是驯服她了。我反而比较担心她会饿死呢。阿良良木老弟待会要和恶魔来一场激烈的全武行,现在应该不是在意那些的时候吧?你要演的只是一个普通的丑角喔。我想就算你把能力提高到极限,胜算也不会高到哪去吧?就算对方只有一只左手。」

……レイニー・デヴィルへの対処法。

……对付雨魔的方法。

悪魔祓いは本来、とても時間と手間のかかる大仕事であり、いくらレイニー・デヴィルが低級悪魔だとはいえ、忍野であってもおいそれと68おいそれと:[副]依頼、必要に応じて、簡単に事をするさまを表わす語はいかないそうだ。本人が言っているだけなのでその辺りは微妙だけれど──しかし少なくとも、忍野自身が手を出す気は、この場合、ないのは確かだった。

驱除恶魔本来就是费时费力的大工程,虽然雨魔是低级恶魔,但即使是忍野也无法轻易地驱除他。这是忍野本人自己说的,听起来的感觉很微妙;但现在至少可以确定一点,就是在目前的状况下。忍野没有亲自出手的打算。

戦場ヶ原のときとは違い。

这和战场原的时候不一样。

戦場ヶ原の蟹も、あるいは、願いを叶えるタイプの怪異だったと言っていいけれど──あれは神様で、今回は悪魔である。おいそれとはいかないだろうことは、素人の僕でもわかる。

或许战场原的螃蟹,也算是一种能实现他人愿望的怪异。但螃蟹是神明,这次却是恶魔。这次要解决没那么简单。这点连我这外行人都知道。

『神』原で、悪魔か。

「神」原遇上恶魔吗?

暗示というよりはむしろ皮肉だな。

这与其说是暗示,倒不如说是讽刺。

けれど──時間と手間をかけている余裕はない。

但是——现在时间和精力都不够了。

さっさとしないと、今晩にも僕の命が失われる。僕が殺されるか神原の左腕を切り落とすか──前者の答でストーリーを解決させようというほど、残念ながら僕は生きることに執着のない人間ではない。そしてそれ以上に、神原の左腕を切り落とすなど、論外だ。

不赶快采取行动,我可能今晚就会送命。我死或者是砍下神原的左腕——很可惜我对活着还有一点执着,所以无法选择前者来完结这个故事。然而,砍下神原左手这个选项,更是门都没有。

となると第三の選択肢。

既然这样,就只剩第三个选项。

「契約か……それで悪魔が大人しく魔界だか霊界だかに帰ってくれればいいんだけどな」

「契约吗……那样做的话,能让恶魔乖乖回魔界或灵界去就好了。」

「魔界も霊界も、違う世界じゃなくて、『ここ』のことなんだけれどね──ま、難しい話は、いつかと似たような議論になっちゃいそうだから、またの機会にするとして。大丈夫だよ、それくらいは保証してあげる、阿良々木くん。契約を果たすことができなければ──契約は無効になる。クーリングオフ69じゃないけれど、ちゃんとお嬢ちゃんの願いも無効になるさ。哀れ仕事を果たせなかった無能な悪魔は、何も言わずに去るだけさ」

「魔界和灵界都是指『这里』,不是不同的世界。唉呀,这不太好懂,总有一天应该会讨论到类似的话题,所以下次有机会再说吧。没问题的,这点我可以保证,阿良良木老弟。如果恶魔无法履行契约,契约就会无效。这不是什么鉴赏期啦,不过可以让小姐的愿望无效。可怜、无法完成工作的无能恶魔,最后会摸着鼻子自己离开。」

悪魔は去る。

恶魔会离开。

契約を果たすことができなければ。

只要没有完成契约。

「つまり──僕が悪魔に殺されなければ、か」

「简单来说……只要我没被恶魔杀掉就可以了吗?」

「そゆこと」

「正是如此。」

忍野はへらへら笑って言う。

忍野傻笑说。

「勿論、今の阿良々木くんが今の忍ちゃんに限界まで血を与えたところで、たかが知れてるだろうさ……春休みの頃の、実際に阿良々木くんが吸血鬼だった頃の、十分の一くらいの能力しか発揮できないと思って、それでもまだ己の力を過信し過ぎなくらいだよ」

「当然,就算现在的阿良良木老弟喂血给现在的小忍,你的能力还是有限吧……我想大概只能发挥春假——你真正是吸血鬼时的十分之一,这样说还算高估了呢。」

「……随分な数字だな」

「……这数字还真随便啊。」

「でも、あのレイニー・デヴィルは左手だけだからね──相手が全身だったら阿良々木くんじゃ勝ち目はないけど、それでおまけに人間一人分の『おもり』をぶら提げてるんだから、今の阿良々木くんでも、十分十二分十四分に勝算はあるさ」

「不过,那个雨魔只有左手而已,要是对方是整个身体的话,老弟你是没有胜算的,况且他现在还带着一个人类的『重物』,就算是现在的阿良良木老弟,也有十分、十二分、十四分的胜算。」

レイニー・デヴィルは、猿の手とは全く違う種類の怪異だ──その属性で共通しているのは願いを叶えるという部分だけで、雨合羽の悪魔と称されるように、ちゃんと、全身のパーツが揃った怪異である(この場合、何を全身と定義するかで、また見方も変わってくるのだけれど、それはここでは割愛だ)。それが左手だけで──しかも木乃伊となっていたのは、強固に『封印』されていたからだろうと、忍野は言った。

雨魔和猴掌是完全不同种的怪异。他们共通的地方只有实现人类的愿望一点,就像他被称为雨衣恶魔一样,这怪异应该有完整的身体(在这状况下,完整的定义会影响到事物的观点,因此这里请恕我省略不提)。而他现在只有左手,还是木乃伊状态下,可见他曾被下了强力的「封印」吧,忍野说。

「まあ、お嬢ちゃんの母方の家系ってのが、問題だったみたいだね──駆け落ちする羽目になったのも、案外、その辺りが原因なんじゃないのかな? ま、勝手な推測で他人の家庭事情を暴くつもりも覗くつもりもないけれどさ。悪魔の木乃伊なんて、実際、大したもんだ。人魚の木乃伊とかなら、まだ聞いたことがあるけれどね。ふうむ、まあお嬢ちゃんが受け取った当時に手首までだったとして、それならば、残りの部分がどうなったのかというのは、個人的には非常に興味があるところだな」

「小姐母方那边的家系似乎有问题。她的双亲会落得私奔的下场,可能是那边的缘故吧?我不喜欢靠独断的猜测,去揭发或窥探别人家庭的隐私啦。不过恶魔的木乃伊可是很了不起的东西。如果是人鱼之类的木乃伊,我倒是有耳闻啦。嗯——如果小姐拿到的时候只有手腕的话,那剩下的部分跑到哪去了?这点我个人非常感兴趣。」

母親、か。

母亲吗?

戦場ヶ原ひたぎ、八九寺真宵。

战场原黑仪、八九寺真宵。

それぞれの怪異に──母親が嚙んでいた。

她们的怪异……都和母亲有关系。

神原駿河もまた、その流れを汲むということか。

神原骏河也是同样的模式吗?

まあ、どうやら神原の母親も、父親同様に駆け落ちした段階で縁切りされ、神原駿河本人も、だから母方の実家とは完全に没交渉ぼつこうしょうだったようだから、その辺りは今のところ、どうにも探りようはないようだが……。

神原骏河的母亲和父亲一样,在私奔时已经和家族断绝关系,因此神原骏河本人和母亲的老家完全没有交集,所以那边的状况现时点无法究明……

「ちなみに、もしも悪魔の全身のパーツが揃っていたら、どうなるんだ? レイニー・デヴィル。忍の全盛期でも、勝てないくらいなのか?」

「说句题外话,要是雨魔凑齐完整的身体会怎样?会强到连全盛时期的忍也无法对付的地步吗?」

「まさか。所詮は低級悪魔だ、本物の吸血鬼に歯が立つわけもない。それこそメフィストフェレスを相手取るっていうんだったらまだしも、そんなの、二秒あれば決着だよ。揃った五体を粉砕され、身体中の体液をすすられて、はいそれまでよだ。忘れちゃったのかい、まして忍ちゃんは恐るべき伝説の吸血鬼だったんだぜ?到底敵わないさ、歯が立たないさ。そうだね、レイニー・デヴィルのランクから考えると、まだしも委員長ちゃんのときの色ボケ猫の方が全然強いくらいだよ。おっと、だからって忍ちゃん本人の力を借りようとしたら駄目だよ? それでも単純な退治のみならできるかもしれないけれど、そうなると、脅しじゃなくお嬢ちゃんの腕を切り落とすしかなくなる。阿良々木くんが退治するから──意味を持つんだから」

「怎么可能。那东西不过是低级恶魔,赢不了正牌吸血鬼的。如果对方是梅菲斯特的话那还说得过去,雨魔那种杂鱼只要花两秒钟就搞定了。他凑齐的身体会被粉碎,体内的液体会被吸干,然后就嗝屁啦。你忘了吗?小忍可是令人恐惧的传说中的吸血鬼喔。那种东西根本不是对手,赢不了她的。对了,从雨魔的阶级来看,之前班长妹的那只魅猫都比他强上许多呢。喔!不过你可别想借用小忍的力量喔。如果只是单纯要消灭恶魔或许还可以,不过真要这样的话,就只能砍下小姐的左手,不要说我在吓唬你。就因为是阿良良木老弟亲自去消灭恶魔,这一切才有意义。」

「レイニー・デヴィルは、願いを叶えることによって、その人間の身体を乗っ取ってしまうんだろう? 願いを叶えてもらうたびに、悪魔に近付いていく……最初は手首までだった木乃伊が肘の部分まで伸びたのは、悪魔が神原の一つ目の願いを叶えたからってことなんだろうけれど、だったら、どうなんだ? 忍野。もしも僕を殺したいと憎む二つ目の願いと、それから、何らかの最後の三つ目の願いを叶えたら、神原はどうなっちまうんだ? 乗っ取られるといっても、それなら、精々、乗っ取られて肩のところまでってことなのか?」

「雨魔是藉由实现愿望来夺取人类的身体吧?每实现一个愿望,人类就会朝恶魔靠近一步……一开始只有手腕的木乃伊会长出手肘,是因为恶魔实现了神原的第一个愿望,既然这样,之后会变成怎样?忍野。要是神原恨到想杀死我的第二个愿望实现,然后又实现了第三个愿望的话,她会变成什么样子?就算身体会被夺取,恶魔也顶多夺取到肩膀附近吧?」

「それは過去に前例がないからわからないと、お役所的な答を返すしかない質問だね。まあ、でも、順当に考えれば、割合的には阿良々木くんの予想通り、乗っ取られたとしても肩のところまでだと思うけれど。だからって阿良々木くん、それは一緒だよ。肩まで乗っ取られたら、全身乗っ取られたのとおんなじさ。株式会社でいえば、それは全株の三十パーセント獲得されたようなものなんだから」

「这个问题过去没有前例所以我不清楚。我只能用这种打官腔的方式来回答你。不过照正常来看,比例上应该和你想的一样,就算身体被夺走,恶魔也顶多夺取到肩膀附近。可是阿良良木老弟,这是一样的吧。就算只有手到肩膀这一带被夺走,也跟全身被夺走没什么两样。拿股份有限公司来说,那就跟获得全部股份的三〇%一样。」

「……だろうな」

「……我想也是。」

「魂は、どっちにしろ抜かれちゃうだろうしね。抜け殻の肉体だけが残ってもしょうがないさ。ああ、鞄とか貴重品とかは預かっといてあげるよ、阿良々木くん。そんなもの持ったままじゃ、動きにくいだろう」

「灵魂不管怎么样都会被剥离身体吧。肉体会变成没有灵魂的空壳,留下来也没用。啊,我帮你保管背包或贵重物品吧,阿良良木老弟。你拿着那些东西,手脚施展不开来吧。」

「ああ……悪いな。じゃ、ちょっと待ってくれ」

「啊……麻烦你了。那你等我一下。」

尻のポケットから携帯電話を、学ランのポケットから家の鍵を取り出して、それをリュックサックの中に放り込んでから、忍野に手渡した。「うん」と忍野は言って、スリングを肩に引っ掛けた。

我从屁股和制服的口袋中,分别拿出手机和家里钥匙,将它们放进背包内,然后交给了忍野。「嗯。」忍野应了一声后,将背带挂在肩膀上。

「しかし──一つだけいいかい? 阿良々木くん」

「不过……我可以问你一个问题吗?阿良良木老弟。」

「なんだよ」

「啥问题啊。」

「どうして、自分を殺そうとした相手まで、阿良々木くんは助けようとするんだい? あのお嬢ちゃんは、無意識とはいえ、願いの裏側とはいえ──阿良々木くんのことを、憎んでいたんだぜ。阿良々木くんのことを、憎むべき恋敵として、とらえていたんだぜ」

「为什么你连想要杀死自己的人,都会想要去救她呢?就算是潜意识、就算那是愿望的里层,那个小姐都很憎恨你喔。她把老弟你当成可恨的情敌喔。」

意地の悪い、いつもの軽口──

忍野这番话——

というわけでも、ないようだった。

似乎不是平常那坏心的贫嘴。

「そもそも、雨合羽の正体がお嬢ちゃんだとわかった段階で、阿良々木くんはどうして、お嬢ちゃんの話を聞こうなんて思ったんだい? 普通はその段階で、問答無用だろうに──その時点で、お嬢ちゃんをすっ飛ばして、僕のところに来るのが本当だっただろうに」

「追根究底来说,当你知道雨衣怪的真面目是小姐的时候,为什么会想听她的理由?正常来说,那时候应该不会去管那些。在发现他是小姐的时候,你应该马上甩开他来跑到我这边来才对吧。」

「……生きてりゃ、誰かを憎むことくらいあるだろうさ。殺されるのはそりゃ御免だけれど、神原が、戦場ヶ原に憧れてたっていうのが、その理由だっていうのなら──」

「……人只要活着,都会去憎恨某人吧。我虽然不想被杀掉,但是如果这是一切的原因,是出自于神原对战场原的憧憬——」

怪異にはそれに相応しい理由がある。

每个怪异都会有一个相符的理由。

それが理由だったとするなら──

如果这就是神原的理由——

「別に、許せるしさ」

「那我可以原谅她。」

忍野の言う通り、僕の最初の考えで正しかったとするのなら、その状況から、何も変わっていない。最初に戻っただけだ、猿の手もレイニー・デヴィルも全く関係がない。まさか恋敵と思われているとまでは想定外だったけれど、でも、それでも。

照忍野所说,如果我一开始的思考是正确的,现在的状况也不会有任何的改变。只是回到原点而已。不管对方是猴掌还是雨魔都没有关系。神原会把我当成情敌,完全出乎我的意料,但即使如此。

姑息な計算。

权宜上的考虑。

腹黒い未練。

坏心的留恋。

僕だって、優しくていい人なのかもしれないけれど、羽川のように、清廉潔白の善人というわけでは、ないのだから。

我可能是一个温柔的好人。但我和羽川不同,不是一个清正廉洁的善人。

羽川翼。

羽川翼。

異形の羽を、持つ少女。

拥有一对异形翅膀的少女。

……あいつだけは、本当に、はっきりと、羨ましい。

……只有她,让我真的很羡慕。

本当──妬ましいくらいに。

羡慕到嫉妒的程度。

「あっそ。まあ、それが阿良々木くんの決めたことなら、それでいいんだけれどね。全然構わないさ、僕の知ったことじゃない。じゃあ、まあ、とりあえず阿良々木くん、お嬢ちゃんに力、貸してあげなよ。言っとくけど、中に這入ったら、ことが終わるまで、もう出られないからね。内側からは、絶対に、扉、開かなくなっちゃうから。逃げの選択肢は最初からないものと構えておくこと。後には引けないって状況がどれほどのものか、春休みのことをよーく思い出して、覚悟決めとかなくちゃ駄目だよ?……勿論、何があっても、僕や忍ちゃんが助けに現れるなんてことはないから。忘れないでね、この僕が常軌を逸した平和主義者にして機会を逸した人道主義者だってことを。阿良々木くんがこの教室に入ったのを見届けたら、僕は四階へ寝に行くから、後のことは知らないよ。阿良々木くんもお嬢ちゃんも、帰るときは、別に挨拶しなくていいからね。その頃には忍ちゃんも眠っちゃってると思うし、勝手に帰って頂戴」

「是吗,既然这是老弟你决定的事情,那就没差啦。我没关系,这不是我该管的事情。那总之就麻烦你助小姐一臂之力了。我事先声明,你一旦走进去,事情没有解决是出不来的。因为这扇门从里头绝对打不开。你没有逃走这个选项,这点你要先有心理准备。无路可退这个状况有多可怕呢,你仔细想想春假的事情,没做好觉悟可不能进去喔……当然,不管发生什么事情,我和小忍都不会进去帮你。你可别忘了,我可是超乎常理的和平主义者,还是一个常常错失机会的人道主义者。等一下目送你进这间教室后,我会回四楼睡大头觉,之后发生什么事情都与我无关。你们要回去的时候,不用来知会我没关系。那时候我想小忍大概已经睡着了,你们就自己回去吧。」

「……世話かけるな」

「……给你添麻烦了。」

「いいよ」

「没差啦。」

忍野が壁から背を離し、扉を開けた。

忍野的背部离开墙壁,打开了门扉。

躊躇せず、中に這入る。

我毫不犹豫,走进了教室。

すぐに忍野は、扉を閉めた。

忍野随即把门关上。

これでもう、出られない。

这样一来,我已经出不去了。

二階の一番奥の教室──造りは先ほどの四階の教室と一緒だけれど、ここはこの学習塾跡の中で、唯一、窓の部分が抜けていない教室だ。とは言え、それは、他の教室のように、窓が硝子の破片と化していないという意味ではない。そんな有様になってしまった窓の枠に、まるで昔の台風対策のごとく、分厚い木の板が何枚も、釘で打ち付けられているという意味だ。どうしてそこまでというくらい、執拗に、何枚も何枚も、である。だから、扉を閉じてしまえば、光は一条も差し込んでこない──既に時間は真夜中だが、星の光さえ、差し込んでこない。

二楼最深处的教室,样式和方才四楼的教室一样,但这里是这栋荒废的补习班中,唯一一间窗户的部分没脱落的教室。但这不代表窗户的玻璃没有碎掉。而是指没有玻璃的窗架上,就像以前在防范台风一样,钉了好几块厚重的木板。反复钉上的好几层木板,让人有一种何苦钉成这样的感觉。也因此,只要把教室门关上,就连一条细光也不会渗入。目前时值深夜,但就连星光也找不到缝隙钻。

真っ暗だ。

黑漆漆的一片。

けれど──見える。

但我却看得见。

忍にたっぷりと血を与えたばかりの今の僕には、この暗闇の中が、暗いままに見通せる。そう、この状態の僕は、暗い方がよく見えるくらいなのだ──僕はゆっくりと視線を動かした。

现在的我刚喂完血给忍,就算在漆黑当中,一样能够看穿黑暗。没错,在这个状态下的我,在暗处反而看得更清楚。我缓缓移动视线。

すぐに見つける。

很快我就发现了目标。

そう広くもない教室の中に一人佇んでいた──

有一个人影,伫立在不算宽广的教室中。

雨合羽の姿を。

身上穿着雨衣。

「……よう」

「……哟!」

声を掛けてみるが、反応はない。

我打了声招呼,但对方没有反应。

既にもう──トランス状態らしい。

看来——神原早已进入催眠状态。

身体は神原駿河だが──左腕と、今の魂は、レイニー・デヴィルだというわけだ……ちなみに雨合羽は、僕が忍に血を飲ませている間に、一番近い雑貨屋まで、神原がひとっ走り行って、手に入れてきたものである。別に雨合羽自体は、必要ないといえば必要ない、少なくとも必要不可欠ということはないだろうオプションとしてのアイテムなのだが、その辺は例によっての雰囲気作り、状況設定のセレモニーという奴である。

他的身体虽然是神原骏河,但现在体内的灵魂是雨魔……顺带一提,这件雨衣是我在喂血给忍的时候,神原独自跑到附近的杂货店买来的。其实雨衣是一种选择性的道具,并非不可或缺的必备之物,但这边就和惯例一样,是制造气氛和状况设定的一种仪式。

教室の中にあった机や椅子は、邪魔だからという理由で、最初に撤去しておいた──だから今、この教室の中にいるのは、神原と僕だけということだ。レイニー・デヴィルの左腕と、吸血鬼もどきの人間以外だけということだ。

教室内的桌椅,因为太碍事所以事先撤掉了。所以这间教室里面,现在只有我和神原两个人而已。只有雨魔的左手和类吸血鬼的非人类而已。

中途半端同士、いい勝負だろう。

半吊子同志之间,应该会有一场势均力敌的好比赛吧。

いや──違った、いい勝負じゃ、駄目なんだ。

不——不对。不能势均力敌。

僕は悪魔を圧倒しなくてはならない。

我必须要一面倒才行。

昨夜と同じだ、雨合羽のフードの内側は、深い洞のようで、その表情も、どころか中身そのものが、全く窺えない──

雨帽内侧就和昨晚一样,像一个深不见底的窟窿,别说是表情,就连帽内是何物也无法一窥究竟。

「……………………」

レイニー・デヴィルや猿の手に限らず、願いを叶えるタイプの怪異への対処法としてもっともスタンダードなものは、その怪異では叶えられない願いを願うことだ。

面对这种会实现人类愿望的怪异——不只限于雨魔和猴掌——最标准的处理方法,就是许一个其怪异无法实现的愿望。

大き過ぎる願い。

一个格局过大的愿望。

あるいは、撞着どうちゃくした願い。

或是矛盾的愿望。

絶対に不可能な願い。

绝对不可能的愿望。

ダブルバインド70の板ばさみに落とし込む願い。

抑或是一个会让人陷入进退两难的愿望。

つまり底の抜けた柄杓ひしゃく71だよ、と忍野は言った。そうすることで、怪異を退けることができる、怪異を見越すことができるのだ──とか。

简单来说,就是没有底的勺子,忍野说。他还提到,这样做就能够驱除和看透怪异。

ただし、この場合は、神原は既に願ってしまっている──戦場ヶ原のそばにいたいと。そして、その想いのために──阿良々木暦が邪魔だと、阿良々木暦が憎いと、阿良々木暦を殺したいと、無意識に、願ってしまっている。レイニー・デヴィルは、その願いに、そのまま、答えようとしている。

但是,这次神原已经许了愿望——希望待在战场原身旁。而且,因为这股思慕,让她在潜意识中,觉得阿良良木历很碍事、可恨,希望将他除之而后快。而雨魔想要照实回应她的愿望。

願いはキャンセルできない。

这个愿望无法取消。

一度でもそう思ってしまったのだから仕方がない。

因为神原已经这么想了,所以没办法去政变。

ならば、理屈を裏返そう。

既然这样,就将这个道理反转过来看。

その願いこそが不可能であればいいのだ。

只要让她的愿望不可能实现即可。

阿良々木暦がレイニー・デヴィルごときでは殺せない存在であったならばいい──

只要阿良良木历是一个雨魔这种小角色杀不死的存在即可。

「理屈と膏薬こうやくはどこにでもつくって奴か──これもいまいち詭弁っぽいけど、猿知恵の猿芝居もいいところだけれど、それでも落としどころとしちゃあ……っと、おっと!」

「理由这种东西要多少有多少,这听起来有点像在硬拗,耍耍小聪明和猴戏也要有个限度,不过以一个妥协点来说……呜喔!」

何がきっかけになったのかわからないが──雨合羽は僕に向かって、突如、跳んできた。神原駿河の跳躍力──それが、恨みのパワーで、強化されている。通常ならば、昨夜と同じく目にも留まらない速さだろうけれど──今は違う。

不知道是什么原因使然,雨衣怪突然朝我跳了过来。神原骏河的跳跃力被憎恨的能量所强化。正常来说,他的速度应该会和昨晚一样快到我无法捕捉,但今晚不同了。

見えるし。

我看得见。

それに、反応でき──

而且还能做出反应——

「て、う、うわっ!」

「呜、呜哇!」

僕は自分の胴体を遠心力でねじるような形で、雨合羽の左拳をかわした──かなりのぎりぎりだった。そのまま回転するように、僕はその場から離れる──格好悪いが、一旦体勢を立て直した方がよさそうだ。

我利用离心力将身体扭开,躲过雨衣怪的左拳。闪躲得相当惊险。我随后转了几圈,离开了原本的位置。这么做虽然很糗,但最好先重整姿势比较好。

なんだ?

搞什么?

心なし、昨夜よりも更に速いような──いや、まだ目が慣れていないだけだ。とにかく、雨合羽の左手による攻撃を避けながら、隙を見て『おもり』である、神原の身体を捉え、捕まえて、力任せに押さえこめば──

他的动作和昨天相比似乎更快了。不,只是我眼睛还没习惯而已。总之,我只要躲开雨衣怪的左手,一边找机会抓住他身上的「重物」——神原的身体,用蛮力把他压制住……

「…………っ!」

既に──追いつかれていた。

他已经追上来了。

馬鹿な、速度に関してだけはどうしたって雨合羽を圧倒できるとは思っていなかったが、忍のお陰で、僕だって昨夜とは比べ物にならないくらいに強化されているはずなのに、こんないともたやすく──雨合羽の左拳が、強く振りかぶられる。左側に避けるんじゃ駄目だ、雨合羽の外側に回りこむように、何とか右側に──

不可能,我原本以为自己在速度方面,绝对可以压倒雨衣怪。在忍的帮助下,我得到了强化,已经和昨晚不可同日而语。但雨衣怪居然这么轻易用左拳朝我劈了过来。我不能往左边闪,必须要往右边回避,绕到雨衣怪的外侧才行——

むき出しの、黒い毛むくじゃらの腕が──僕の頰をかすめ、空振りする。その風圧に、身体が切り裂かれるようだったが──それにより晒された雨合羽の脇腹を目掛けて、僕は蹴りを入れた。

裸露在外、毛茸茸的黑手掠过了我的脸颊,划破了空气。瞬间产生的风压,有如要割裂我的身体般。但雨衣怪的侧腹也因此暴露在外,我朝那凌空一脚踢了过去。

……ごめん、神原!

……抱歉,神原!

心の中で、そんな風に謝りながら。

一边住心中如此道歉。

案の定左腕の部分以外は、そこまで逸脱してしまってはいない──雨合羽の身体は、蹴られた方向に、素直に吹っ飛んだ。そのままバランスを崩し、リノリウムの床に半身が倒れこむ。

不出所料,雨衣怪左手以外的部分,并没有那么超乎常理。他的身体老实地朝着被踢中的方向飞了出去。就这样失去平衡,半边身体倒在油布地板上。

やはり支配しているのが左腕だけというのは、雨合羽にとってネック72のようだ……バランスが最悪だ、明らかに、左腕の存在に、全身がついていっていない。

果然支配身体的只有左手,这对雨衣怪来说是一个障碍……他的身体平衡很糟,很明显全身的动作都跟不上左手。

けれど、それにしては、さっきの速度はどういうことなんだ……? 昨夜の段階では、雨合羽はまだ本気を出していなかったということなのか? 僕が強化されたのに合わせて、向こうも速度を上げてきたということなのか……けれど怪異が、そんな手加減手抜きめいたことをする必然性があるというのだろうか?

但就算如此,刚才的速度又是怎么回事……?难道昨晚雨衣怪没有发挥出实力吗?对方是配合我的强化而提升速度的吗……可是,怪异有手下留情的必要性吗?

わからない。

我搞不懂。

わからない内に──雨合羽は起き上がる。

在我一头雾水的这段期间,雨衣怪站了起来。

うーん……身体が神原のものであるということを差し引いて73も、やっぱり、転倒している相手に追撃をかけるというのは、僕にはできないな……。そうしなくちゃいけないことはわかっているが、どうしても、迷ってしまう。迷っている場合ですら、ないはずなのに。

嗯——就算不去管他的身体是神原的,我还是没办法追击倒在地上的对手啊……我知道自己必须这么做,但我还是会犹豫。现在根本不是犹豫的时候啊。

優しくていい人。

温柔的好人。

嫌な評価だ、全く。

这评价真是惹人厌。

無個性をフォローされちゃって、まあ。

简直是在替没有个性的我打圆场一样。

最短距離を結ぶ一直線の動きで、雨合羽の左拳が、今度は僕の右肩辺りに炸裂した──カタパルトのようなその拳が。雨合羽としては正中線を狙ったのだろうが、それを何とかずらすことはできた……が、完全にかわすことまではできなかった。見切れない──あまりにも速過ぎる。三メートルほど、僕は後方へと飛ばされる……肉体的な平衡感覚で、僕は空中でぐるりと回転し、着地。自転車を紙屑の如くにし、ブロック塀を崩壊させた雨合羽の左拳ではあったが、昨日みたいに、僕はありえないほど吹っ飛ばされることも、肉体を決定的に破壊されることもなかった。ダメージは勿論あるが、それで動けなくなるほどじゃない。肩の骨が外れ、その上罅くらいは入ったようだったが、それはすぐさま、吸血鬼の治癒能力で、回復する程度。鋭い痛みも、一瞬で退く。これこそ、懐かしい感覚。やれやれ、明日の日の出が待ち遠しい……僕はどれほどの火傷を負うことになるのだろう?

雨衣怪的左拳这次用最短的距离,像弹射器般直线打中我的右肩。雨衣怪原本是想攻击我身体的正中线,我勉强让他打偏……但却没有完全躲开。我没能看透他的攻击,实在太快了。我向后被打飞了三公尺多,随后凭借肉体的平衡感,在空中翻了一圈后落地。同样是能把脚踏车当纸屑一样打烂、让水泥墙垮掉的左拳,但我却没像昨天一样飞得大老远,身体也没受到致命的打击。当然我有受伤,但还不到动弹不得的地步。我的肩骨脱臼,骨头甚至多了条裂痕,但这点程度,很快就能靠吸血鬼的治愈能力自我恢复。身体的刺痛也在一瞬间退去。这真是一种怀念的感觉。呵呵~我等不及看明天早上的太阳了……到时候我会受到多严重的烧伤呢?

だが、そんなことを考えている余裕はなかった。着地した姿勢のところに、雨合羽の追撃が来たからだ──追撃、迫撃。雨合羽には迷いがない。左拳が、今度は僕の顔面に向かってくる。目が一向に慣れない、顔面に、そのまま食らってしまった。鼻骨が折れる音を聞かされた。今の状態の僕でそうなのだから、普通の人間の頭部など、微塵みじんにするような破壊力なのだろう、想像するだに恐ろしい。僕はみっともなく、這い蹲るように、雨合羽から距離を取る。そうしている内に、折れた鼻骨も回復する。本当、嫌な感覚だ。自分がアメーバだかなんだかになったような気分である。これで十分の一だっていうんだから──春休みの経験の、どれだけ地獄だったことか。

我没空去思考这个问题。因为在我着地瞬间,雨衣怪马上就追击而至。追击,不停追击。雨衣怪没有任何迷惘。他的左拳这次朝我的颜面贯来。我的眼睛还没适应,直接就用颜面接下了这一拳。鼻骨折断的声音在我耳边响起。目前的我都已如此,因此这一拳的破坏力,恐怕能让普通人的脑袋化为粉尘吧,光想就叫我不寒而栗。我狼狈地匍匐在地,想要远离雨衣怪拉出距离。在我这么做的同时,折断的鼻骨也在自我恢复。这种感觉真的很讨厌。好像自己成了阿米巴原虫一样。这只是原本的十分之一,可见我在春假的那段经历有多么的地狱啊。

次の拳は避けることができた。

接下来的一拳我躲开了。

けれどその次は、エッジがかする。

但下一拳却擦到了边。

「…………くそっ!」

「…………该死!」

どうしてだ?

为什么?

どうして避けきれない?

为什么没办法完全躲掉?

一直線の無駄のない動きだとはいっても、その攻撃動作自体は、左拳を、腕が肩の部分から引き千切れ、ロボットアニメのロケットパンチよろしくもげてしまうんじゃないかというくらい力任せにぶち嚙ますだけの、単純な動きだ──事前モーションが少ないというだけで、見切れないことはないはずなのに、どうして、追いつけない? 逃げ切れない? 明らかに昨日よりも何層倍もスピード値が上昇している。パワーは、そうでもないようなのに……一撃や二撃、否、何十撃単位でもろに受けたところで、今の僕の肉体なら、それで即決してしまうことはないようですらあるのに、どうしてスピードだけが、こうも段違いになる?

就算他的攻击是走直线,没有任何多余的动作,但动作本身却很单纯,只是把左拳从肩膀部分猛甩出来,活像机器人卡通中的飞拳一样,靠蛮力揍了过来而已,事前的准备动作很少,我没理由看不穿。为什么我追不上他?为什么逃不掉?我的速度很明显比昨天还要提升了好几倍……就算挨了他一、两击,不对,就算一次吃他好几十拳,以我现在的身体绝对不会被秒杀,为什么只有速度差这么多?

昨日と今日とで、何が違う……。

昨天和今天有什么不一样……

雨合羽……。

雨衣……

むき出しの左腕、けだものの手。

裸露在外的左手,野兽之手。

……右手も同じくむき出しだが、それは、フードの内側と同じく、見えているはずなのに見えていないような、深い洞のような雰囲気で──いや? そうか、そこが昨日と違う。昨日は、雨合羽は、ゴム手袋をして──腕はどちらも、むき出しになってはいなかった。だがそれがどうしたっていうんだ? ゴム手袋をはめていたところで、それで移動速度が下がるわけではないだろう。

……右手也一样裸露在外,但那边就和雨帽的内侧一样,感觉像一个深不见底的窟窿,应该看得见却看不见——咦?原来如此,这点和昨天不一样。昨天雨衣怪有戴橡胶手套,两只手没有裸露在外。但那又怎样?戴橡胶手套不至于让移动速度降低吧。

そして気付く。

接着我注意到了。

ミスに気付く。

注意到自己的失误。

ゴム手袋じゃない──長靴だ!

不是橡胶手套……而是长靴!

神原が雑貨屋で買ってきたのは雨合羽だけ……ゴム手袋と、そして長靴は、入手してきていない──雰囲気作りとはいえそこまで揃える必要がないと判断したからではなく、単純に、そこまで思い至らなかったからだと言うべきだろう。僕も僕で、たった今まで気付かなかったのだから。本家のレイニー・デヴィルが、どういう風に描かれているのか知らないが、忍野がそれをヒントにレイニー・デヴィルを連想したように、雨合羽だけでその性格は十分表されているのだとしたら、怪異として表現できているのだとすれば、神原も僕も、決して間違っていないはずだった。

神原从杂货店买来的只有雨衣……她没有买橡胶手套和长靴。这单纯是我的思虑不周,并不因为我觉得制造气氛没必要准备得这么周到。我也真是,直到现在才注意到这一点。我不知道真正的雨魔被描绘成什么样子,但就像忍野用绘画来联想雨魔的外形一样,假如靠一件雨衣就足够展现出他的性格、表现出他的怪异形态的话,那我和神原绝对没有弄错。

けれど──長靴じゃないということは、今の雨合羽は、スニーカーなのだ。一目瞭然、見たまんまである。両手がむき出しになっているように、両足もまたむき出しの裸足ということにはならない、靴は、元々神原が履いているものが、そのまま継続しているのだから。

但是,没有准备长靴就表示,现在雨衣怪脚上穿的是帆布鞋。这点一目了然,就摊在眼前。就像他的左手裸露在外一样,足下当然不可能打赤脚。那双鞋子原本就在神原的足下,当然也就直接穿在上头。

いかにも高級そうなスニーカー。

一双看起来很高级的帆布鞋。

長靴とは──出せる速度がまるで違う。

和长靴的速度简直天差地远。

神原駿河ほどのアスリートとなれば、尚更だ。

穿在神原骏河这等运动员的脚下,那就更不在话下。

「……しまった」

「……惨了。」

露骨に足枷あしかせをつけたり、足を縛ったり、前段階で神原の身体にそのようなウエイトを付属させる案は、戦略上、あるいは目的上、却下せざるを得なかったが──けれど、長靴くらいならば、ハンデとして、十分にありだったじゃないか……どうして雨合羽が百パーセント力を発揮できるような状況を、こっちからわざわざ演出してしまったんだ。本来単純な、足手まといならぬ左手まといなはずの『おもり』である神原駿河の身体が、随分と軽快に、左腕に付属している!

其实我可以事先给神原戴脚镰,或者是束缚住她的脚来增加她的重量,但以战略上或目的上来说,我不得不放弃这些露骨的偷吃步方式。但一双长靴的话,用来当作让分不是刚好吗……为何我要专程制造出可以让雨衣怪发挥百分之百实力的状况呢。本来用来妨碍左手的「重物」——神原骏河的身体,现在很轻快地跟着左手在跑!

うう……。

呜呜……

僕は本当に詰めが甘いな……。

我真是思虑不周……

こうなってしまえば、避けるだけじゃ駄目だ……今の状態で、ぎりぎりかわせるかどうか、ぎりぎり避けきれないというような割合だったらならば、この身体はダメージが蓄積することがないから、格闘ゲームのように削り殺しにされるということはないにせよ、しかしそれでは圧倒的に勝つという宿題を、果たすことはできない。目が慣れたらどうというレベルの話でもなさそうだ。だから、こうなれば雨合羽の攻撃を、相打ち覚悟で正面から受け止めるしかない──僕は低く腰を落として、ペナルティキックの際のゴールキーパーのように、両手を構える。いや──この場合は、バスケットボールの、マンツーマンディフェンスのように、と例えるのがより明確なのだろうか。

事情变成这样,我不能光靠闪躲了……要是现在的状况不是刚好闪过,就是惊险擦到边的话,我这具身体是不会有伤害累积的问题,因此不会像格斗游戏一样血条耗尽而死,但是这样一来我就无法达成压倒性胜利的目标。看来这不是眼睛习不习惯的问题。既然这样,我只能抱着玉石俱焚的觉悟,从正面接住雨衣怪的攻击。我沉下腰,就像迎战十二码罚球的守门员一样,举起双手摆出架式——不对,这个情况应该拿篮球的人盯人防守来比喻比较明确。

しかし、バスケットボールならば明らかに反則のカタパルトが(なんという反則になるのだろう?)、僕の首の根元辺りを目掛けて飛んできて、それを両手で受け止めようと、右手で雨合羽の拳そのものを、左手で雨合羽の手首をつかむように、その上で身体全体で雨合羽の左腕を包み込むように受け止めようとしたのだが──間に合わなかった。いや、間に合わなかったのではない、右手も左手も間に合ったが、カタパルトを止めることができなかったのだ。指の骨が何本か折れるのを知覚した、直後に左拳が鎖骨にヒットする。僕の身体は、ぐらりと後ろに大きく傾く──が、なんとか、後ろ足で踏ん張ることは、できた。受け止めることはできなかったが、体幹に拳が到達するまでに、その威力をある程度削ぐことに成功したということだろう。

但是,以篮球来说很明显是犯规的弹射拳(这是哪门子的犯规?),朝我的颈根飞袭而至,我用双手招架,右手抓住雨衣怪的拳头,左手抓住他的手腕,再用全身包住他的左手想要接住这一击,但这一连串的动作没有赶上。不,应该说我左右手赶上了,但却无法挡住他的弹射拳。我感觉手指折断了几根,瞬间他的左拳就击中了我的锁骨。我的身体大幅向后倾倒,勉强用后脚稳住身体。虽然我没能成功挡住,但至少在拳头击中我的身躯前,成功地消耗掉一定程度的威力。

雨合羽がその拳を引く前に、早くも折れた指が修復された両手で、その左腕をつかんだ──ようやく、当初の目的通り、雨合羽の動きを止めることができた。ついに僕は、雨合羽を捉えることに成功した。よし、このまま──

雨衣怪抽回拳头前,我的断指已经恢复,立刻用双手抓住他的左手。这才达成我当初的目的,停止了雨衣怪的动作。终于我成功抓住他了。很好,就这样——

「神原、ごめんっ!」

「神原,抱歉了!」

今度は声に出して謝りながら、振り払おうと暴れる雨合羽の左腕を両手で固定したまま、僕は足刀そくとう蹴りで、雨合羽の足に、腹に、胸に、三連続で攻撃を加える。人体構造上、普通の肉体状態ではまずできないような型の攻撃。雨合羽が攻撃に左拳しか使えないのと違い、僕は四肢ししの全てが使える、その差を、そのアドバンテージを最大限に活かさなければならない。

这次我出声谢罪,双手紧抓住雨衣怪试图挣脱的左手,用脚刀朝他的脚、腹部和胸部,连续踢击三次。在人体构造上,普通的肉体无法做到这样的攻击。雨衣怪只能用左手攻击,但是我可以使用双手双脚。我必须充分活用这个差异和优势。

雨合羽の左腕が狂ったように激しく動く。

雨衣怪的左手有如发狂般,激烈乱动。

ダメージがあるのだ。

看来似乎对他造成伤害了。

忍野の言う通りだ、レイニー・デヴィルが全身だったなら、今の僕では勝ち目はなかっただろうが、こうしてその左腕自体を封じてしまえば、圧倒することは、可能──拳自体は連続で食らわなければ一瞬で修復が可能な範囲の威力だし、だからむしろ厄介なのは神原の底上げされた脚力だが、スニーカーの件は本当にイレギュラーの計算外だったが、それもこうして捉えてしまえば──後はレイニー・デヴィルが、音をあげるまで、蹴り続ければいいだけだ。音をあげないのなら、息の根が止まるまで。まるで、駿河問いよろしくの拷問みたいで、あんまり気分はよくないけれど、しかし、まさか神原の左腕を引き千切るわけにはいかない以上、まして神原の生命を絶ってしまうわけにはいかない以上、悪魔が去るまで、攻撃を続け、痛めつけるしかない──

忍野是对的。要是雨魔有完整的身体,现在的我不会有胜算。但现在的状况,只要我封住这只左手,就有可能压倒他。只要不是连续攻击,以他攻击的威力就算被击中我也能在瞬间恢复,因此反而是神原被提升的脚力比较麻烦,帆布鞋真的是计算外的不规则变化,不过只要这样抓住他,接下来只要狂踢到雨魔投降即可。他不投降就踢到他断气为止。这有如在用骏河问拷问犯人一样,感觉不是很好,但我总不能把神原的左手整只扯下来,也不能让她有生命危险,因此我只能不停给予痛击,直到恶魔退去为止。

がくり、と雨合羽の足が崩れる。

雨衣怪的脚软了下来。

どうやら執拗に繰り返したロー・キックが遂にこうそうしたらしい──と思ったが、しかし、事実はそうではなかった。崩れた足、否、崩した足が、そのまま、僕の顎を目掛けて、最短最速の軌道で跳ね上がってきたのだ。左腕ではない、雨合羽の左脚が──神原の長い脚が上段回し蹴りの形で、僕のこめかみに、針の穴でも通すかのように、的確に当たる。その威力は、勿論左腕でのそれとは較べるべくもないが、しかしそれでも神原の脚力がそのまま攻撃力へと転化されていて、しかも僕にしてみれば完全に想定外の攻撃だったこともあり、脳が揺らされ、視点がぶれる。感覚器官へのダメージは、この吸血鬼(もどき)の身体にも確実に有効だ──それは春休みの大事な教訓。

看来我不停踢出的下段踢总算有了效果——这只是我以为而已,但事实并不是这样。他软下的脚,不,是可以蹲下的脚,用最短最快的轨道,朝着我的下颚弹了上来。不是左手,雨衣怪的左脚——神原的长腿用上段踢,有如线头穿过针孔一样,精确地踢中了我的太阳穴。这威力当然远不及左手,话虽如此,但神原的脚力直接被转换成攻击力,而且完全出乎我意料,使得我的大脑受到震荡。视野因此模糊。针对感觉器官的攻击,对(类)吸血鬼的身体确实非常有效。这点是春假时的重要教训。

僕は雨合羽の左腕から手を離してしまった。

我松开了雨衣怪的左手,

続いてきた雨合羽の蹴りを、防御するために。

为了防御他接连而来的踢击。

十字に組んだ腕の上から食らった蹴りは、やはり左腕のカタパルトほどではなかったが──その衝撃は、むしろ説明不能なそれとして、僕の思考を混乱させる。

我用十字防御挡住的踢击,虽然不如左手的弹射拳那般强劲,但这冲击反而让我无法解释现在的状况,思考陷入了混乱。

使えるのは左腕だけじゃない、ってのか……?

他能用的不只左手吗……?

だって、忍野は、『おもり』だって──

可是忍野有说过,其他地方是「重物」——

「……そういうこと、なのか?」

「……原来是这样吗?」

思い当たる答は、一つしかない。

我想到的答案只有一个。

つまり、レイニー・デヴィルが、人間のネガティヴな感情をそのエネルギー源として活動しているとするのなら、それはつまり、今の場合は神原駿河の、僕に対する嫉妬を食い物にしているということになるのだろう──左拳がカタパルトだとするなら、神原の肉体は空母くうぼそのものだ。熱い思いで、熱い想いで、高圧蒸気を膨張させて、筋肉に凝縮させている。だから、身体全体も、あくまで『おもり』として左腕に引き摺られているだけなのではなく──いや、基本的にはそうなのだろうけれど、先程のような状態、レイニー・デヴィルが危機に陥った際は、防衛行動に出るのにやぶさかではない、ということなのか……?

倘若雨魔是以人类的黑暗感情为能量来活动的话,那就表示他现在是以神原骏河对我的嫉妒为粮食吧。如果左手是弹射器,那神原的肉体就是航空母舰。炙热的心情和火热的思慕,让高压蒸汽膨胀,让肉体凝缩。所以神原的身体不是拖累左手的「重物」——不,基本上这个想法没错,不过要是雨魔和刚才一样陷入危机时,身体也会不吝啬做出防卫动作吗……?

いや、そんな言い方は詭弁だ。

不对,这种说法只是狡辩。

神原のことを許せるなんていう言葉を使いたいのなら、ここでそんな真実を大きく迂回するような表現をするべきではない──脊髄反射的な、電気を流せば蛙の足が動くがごとくに表現するのは、フェアではないだろう。

如果我想要原谅神原,就不应该用那种会让事实大打折扣的表现方式。那样的表现方式就像通电让青蛙的脚藉由脊髓反射抽动,看起来好像在动一样,这并不公平。

つまり。

简单来说。

神原本人の意思で、足は動く。

这是神原靠自己的意识在移动双脚。

神原駿河の意思が、嚙んでいる。

这一切和她的意识有关。

無意識に、神原は──拒否している。

神原在潜意识中,拒绝了一些事物。

レイニー・デヴィルの左腕を失うことを。

拒绝失去雨魔的左手。

二つ目の願いが叶わないことを。

拒绝不让第二个愿望无法实现。

僕を殺さないことを。

拒绝放下对我的杀意。

戦場ヶ原を──諦める気がない。

她不打算放弃战场原。

「……」

「……腹黒い、未練ね」

「坏心的,留恋啊。」

わかるよ、その気持ち。

神原的心情我明白。

痛いほどわかる。

我心有痛感。

痛むほどわかる。

感同身受。

僕も──失い、捨てたから。

因为我也失去了,舍去了。

もう二度と、手に入らないから。

永远无法失而复得。

雨合羽は、どうしてか、そこから動かない。単純に、磁石が磁力に従い動くように、単純に一直線に、執拗に左拳を向けていた雨合羽が、動きを止めた──まるで、何か、複雑な考えごとでもしているかのように。

雨衣怪不知为何,呆站在原地不动。方才就像磁铁顺从磁力一般,不死心一直朝我挥舞左直拳的雨衣怪,突然停上了动作。有如在思考什么复杂的事物。

あるいは。

或者,

迷っているように。

有如在迷惘。

迷いのなかった雨合羽の動きが──止まった。

雨衣怪至今毫无迷惘的动作……停了下来。

……神原駿河。

……神原骏河。

戦場ヶ原ひたぎの後輩。

战场原黑仪的学妹。

バスケットボール部のエース。

篮球社的王牌选手。

切り落としてくれ──と彼女は言った。

把我的手砍下来吧——刚才她说了这句话。

忍野から、その左腕が猿の手ではなく悪魔の手であり、願いは、神原が願った通りに叶えられただけだという、ロクでもない、暴かれなくてもいいような真相を、暴かれてしまった直後……数秒だけ目を伏せた後で、しかし気丈に顔を起こし、僕と忍野を交互に見て、そう言った。

那左手是恶魔手不是猴掌,愿望只是照你的期望实现而已——当忍野告诉神原这个不要揭露比较好的无聊真相后……她的视线低伏几秒,随后坚强地抬起头来,交互看了我和忍野——

「こんな左手、いらない」

「这种左手,我不要了。」

神原は言った。

她开口说。

さすがに、あの笑顔は、表情にはない。

她的脸上没有平常的笑容。

それは──しくも、彼女の尊敬する先輩の、現在のパーソナリティ……平坦で、淡白で、感情を感じさせない、口調だった。

神原的语气,刚好和她最尊敬的学姐现在的个性相似……平稳平淡,不带任何感情。

「切り落としてくれ。切断して欲しい。頼む。面倒かけるが、お願いする。自分で自分の腕を切り落とすことはできないから……」

「把它砍掉吧。请你们砍掉它吧。拜托。我知道会给你们添麻烦,可是拜托。因为我实在没办法砍掉自己的手……」

「や、やめろよ」

「不、不要这么说啊。」

僕は慌てて、差し出されたような形のその腕を、神原に押し返すようにした。毛むくじゃらな感覚が、手に気持ち悪い。ぞわっとする。

我慌忙将神原伸出的左手推了回去。毛茸茸的触感,摸起来很不舒服。让人毛骨悚然。

ぞっとする。

寒毛直竖。

「何馬鹿なことを言ってんだ──できるわけがないだろ、そんなこと。バスケットボールはどうするんだよ」

「你在说什么傻话,我哪能砍掉你的手啊。这样的话你以后要怎么打篮球。」

「さっき忍野さんに言われた通りだ。私は、人間一人を殺そうとしたのだぞ。それくらい、当然の代償だろう」

「刚才忍野先生说得对。我想要杀死一个人。这点程度是理所当然的代价吧。」

「い、いや──神原、僕はそんなこと、全然、気にしてないって──」

「这、这没什么,我没把那件事情放在心上,完全没有……」

滑稽、道化。

滑稽可笑。

なんて的外れな言葉だったのだろう。

我这话根本没命中问题核心。

僕が気にしているかどうかという問題じゃない。

问题不是我介不介意。

まして、僕が許せるかどうかも、この際、本来的には全く関係ないのだ──問題は、神原駿河が、神原駿河を許せるかどうかということだった。

况且,我能不能原谅她也和问题完全无关。问题在于,神原骏河能否原谅她自己。

同級生を傷つけたくないからと、走り続けた彼女。

她不想伤害同学,所以一直在练跑。

ネガティヴな感情を全て抑えつけ、圧倒し。封じ込めてきた、彼女。

她克制和压抑住所有的黑暗情感,将它们封闭在心里。

その意志の強さが──逆に、自身を縛りつける。

她的坚强意志,反而束缚住自己。

いましめる。

惩戒了自己。

「だ、大体、切り落とすなんて、ありえないだろ、そんなこと。馬鹿なこと言ってんじゃねえよ。何考えてんだ。馬鹿、お前、本当に馬鹿だよ。何でそこまで物事を、短絡たんらく的に考えてるんだ。本気にするようなアイディアじゃないだろう」

「况、况且,我根本不可能砍掉你的手吧。别说这种蠢话了。你在想什么啊。蠢蛋,你真的是一个蠢蛋。为什么你的思考要这么短浅。你这主意不是认真的吧。」

「そうか。そうだな、腕を切り落とすなんてこと、誰かに頼むべきことではなかったな。頼まれたからといって、はいそうですかと実行できるようなことでもないか。わかった、自分でなんとか、その方策を考えよう。自動車や電車の力を利用すれば、どうにかなるだろうから」

「这样啊。也对,砍掉自己的手这种事情,不应该拜托别人。就算拜托别人,对方也无法轻易帮你。我知道了,我自己想办法吧。只要利用汽车或电车的力量,应该会有办法吧。」 「それは──」

「你这样——」

自動車や電車なんて。

什么利用汽车和电车。

それじゃあ、まるで自殺じゃないか。

那样不是自杀行为吗?

自殺行為じゃなく──自殺そのもの。

不是自杀行为,而是自杀。

「切り落とすなら、いい方法があるよ? 阿良々木くん、どうして教えてあげないんだい、困っている人間に対して不親切だなあ。そんなの、忍ちゃんに協力してもらえばいいんじゃないか。刃の下に心あり──彼女の虎の子74のブレードを使用すれば、痛みを感じる暇もなく、その左腕を切断することが可能だろう。今の忍ちゃんのブレードじゃ、往年の切れ味はないだろうけれど、それでもお嬢ちゃんの細腕を切り落とすくらい、豆腐でも切るように朝飯前だよ──」

「如果要砍掉的话,我有一个好方法喔。阿良良木老弟,你干么不告诉她呢,看到人家有麻烦你怎么不亲切一点啊。这种小事只要请小忍帮忙就好了吧。心字头上一把刀——只要用她珍藏的利刃,连感觉到痛的时间都没有,就可以把那只左手砍下来啦。现在小忍的利刃虽然没以前那么锐利,不过要砍断小姐的细手就跟切豆腐一样容易——」

「黙ってろ、忍野! おい神原! そんな思いつめるようなことじゃないだろう! お前が責任を感じることなんて、ちっともないんだ──そんなの、はっきりしてるじゃないか!これは全部、猿の手……じゃない、レイニー・デヴィルとかいう怪異が元凶で──」

「你闭嘴,忍野!喂,神原!你不用这么钻牛角尖吧!你根本不用负这个责任,这点不是很清楚了吗?一切的元凶都是这只猴掌……不对,这个叫雨魔的怪异——」

「怪異は願いを叶えただけだろう?」

「怪异只是实现她的愿望而已吧。」

忍野は黙らなかった。

忍野没有收声。

尚も雄弁ゆうべんに尚も能弁のうべんに、言葉を繫ぐ。

他更加能言善辩地接着说。

「求められたから、与えただけだろう? ツンデレちゃんのときも、そうだったんじゃないのかな? 春休みの阿良々木くんのときはケースが違うんだよ。忍ちゃんのケースはそれとは全然違う──阿良々木くん、きみは怪異に何も願わなかったんだ」

「因为她要求,所以他负责实现而已吧。傲娇妹的时候不也一样吗?这和阿良良木老弟你在春假时的案例不一样喔。小忍的案例和他们完全不同。阿良良木老弟,因为你没对怪异许下任何愿望。」

「…………」

「だから──阿良々木くんに、お嬢ちゃんの気持ちはわからない。お嬢ちゃんの自責もお嬢ちゃんの悔恨もわからない。決して」

「所以,阿良良木老弟不懂小姐的心情。也不懂她的自责和悔恨。绝对不懂。」

そう言われた。

他对我说。

「ちなみに、原典の『猿の手』において、最初に猿の手を使った人間は、一つ目の願い、二つ目の願いを叶えた後、三つ目の願いで、自分の死を願ったそうだ。その願いが何を意味しているのかなんて、いちいち説明の必要があるのかい?」

「说句题外话,在原著《猴掌》当中,最一开始使用猴掌的人,实现了第一和第二个愿望之后,他在第三个愿望时,许愿结束自己的生命。这个愿望代表什么意思,需要我逐一说明吗?」

「忍野──」

「忍野——」

言っていることは、正しい。

你所说的完全正确。

でも、忍野、お前は間違っている。

但是,忍野你错了。

僕は雨合羽に相対したまま──膠着こうちゃく状態に陥ったがごとく、動けなくなった中で、ゆっくりと回想する。

我和雨衣怪维持对峙,有如陷入胶着状态,无法动弹当中,缓缓回想起先前的对话。

だって、僕にはやっぱり、わかるんだから。

因为我能明白。

痛いほど、心の傷が、痛むほど。

甚至让我内心的伤口感到疼痛。

戦場ヶ原ひたぎの気持ちも。

因为战场原黑仪和神原骏河的心情——

神原駿河の気持ちも、わかるんだから。

我都能明白。

いや、やっぱりわからないのかもしれない。

不对,或许我不懂。

ただの傲慢な思い上がりなのかもしれない。

或许这只是我自以为是的傲慢。

でも──

但是——

僕達は、同じ痛みを、抱えている。

我们都抱有同样的伤痛。

共有している。

有着同样的东西。

願いを叶えてくれるアイテムが目の前にあって、そのとき願わないと、どうして言える? 僕の春休みと同じく、それは願った結果というわけではないにしたって、清廉潔白の善人である羽川でさえ、ほんのわずかな、不和と歪みによって、猫に魅せられてしまったのだから──

如果有一个可以实现愿望的道具摆在你眼前,你敢说自己不会许愿吗?就跟我在春假时一样,就算那不是我希望的结果,可是就连清正廉洁的善人羽川,都会因为家庭的一点不和与扭曲,而被猫魅惑——

僕と忍との関係だって、本来的に、戦場ヶ原と蟹との関係、神原と悪魔との関係と、何も変わらないんだ。

我和忍之间的关系,跟战场原和螃蟹、神原和恶魔的关系,本来就没什么差别。

「構わない、阿良々木先輩」

「没关系,阿良良木学长。」

「構うよ──構わないわけ、ないだろう。何言ってんだよ。それに、戦場ヶ原のことはどうするんだよ。僕は、お前に、戦場ヶ原と……」

「有关系。怎么可能没关系。你在说什么啊。而且战场原的事情该怎么办。我希望你和战场原……」

「もう、いい。戦場ヶ原先輩のことも、もういい」

「已经,无所谓了。战场原学姐的事情,已经无所谓了。」

神原は、それこそ身を切るような言葉を、口にした。

神原这句话更让我痛彻心扉。

「もう、いいから。諦めるから」

「已经,无所谓了。我会死心的。」

いいわけあるか。

怎么可能无所谓。

諦めて、いいわけがあるか。

怎么可以这样就死心。

願いは自分で叶えるものだと──お前の母親は、悪魔の木乃伊を、お前に託したはずだろう。決して、願いを諦めることを教えるためなんかじゃなかったはずだ──

愿望是要靠自己实现的,所以令堂才会把恶魔的木乃伊托付给你吧。令堂托付给你,绝对不是叫你放弃自己的愿望。

だからそんな顔をするな。

所以不要露出那种表情。

そんな深い洞のような顔をするな。

别像一个深不见底的窟窿一样。

そんな泣きそうな顔で──何が諦められる。

用那种含泪欲哭的表情,哪放弃得了什么。

レイニー・デヴィル。

雨魔。

雨降りの悪魔──そして、泣き虫の悪魔。

降雨的恶魔,同时也是爱哭的恶魔。

そもそもは、しとしとと降る糠雨ぬかあめ75の日に、つまらないことで親と喧嘩をして家を飛び出し、山に迷い込んで野猿の群れに喰い殺された子供が、その起源だとされる。不思議なことに、家族を含め、集落の者は誰も、その子供の名前を思い出せなかったという──

在毛毛雨的日子里,有个小孩因为一些无聊的小事和双亲吵架后离家出走,最后在山中迷路被狼群吃掉,这就是雨魔的起源。不可思议的是,据说包含家人在内,村落里没有半个人想得起来那孩子的名字。

「……畜生!」

「……该死!」

膠着状態に、精神的に耐えられなくなって──まるで走馬灯みたいに巡る思考に耐え切れなくなって、僕は雨合羽に向かって、駆け出した。それは昨夜から数えても、初めて僕の方からの、受身ではない攻撃行動だった。プレッシャーのかかる邀撃の姿勢に、とうとう我慢できなくなってしまったと言ってもいい。

我在精神上耐不住这胶着状态,也无法忍受彷佛走马灯般巡回的思考,于是朝着雨衣怪冲了过去。这是从昨晚算起,我第一次主动攻击。可以说充满压力的被动迎击,终于让我无法忍受。

立ったままの姿勢じゃ駄目だ。たとえ再び左腕を押さえつけたところで、すかさずそこに蹴りが来る。ならば柔道の寝技のように、あるいはレスリングのように、雨合羽の全身を組み敷く76くらいの気持ちで、身体ごとぶつかっていかないと──

不能用站姿攻击。假如我压住他的左手,他的踢击立刻就会招呼上来。既然这样,那我只好整个身体撞上去,像柔道的寝技或摔角一样,把雨衣怪的全身按倒——

左右から雨合羽の身体を挟み込むように僕は両腕を広げたが、しかし、雨合羽をとらえることはできなかった──左右の動きならば、対応できたかもしれなかったが、雨合羽が取った動作は、そうではなかった。かといって、後ろに下がったのではない──それでも、後数歩僕が踏み込めば、対応できていただろう。

我张开双手,试图从左右两旁抱住雨衣怪的身体,但我没能抓住他。要是雨衣怪朝左右两旁回避,那我或许还能对应,但他采取的动作却不是如此。但是,他也不是向后避开。要是他退开,我只要上前几步即可吧。

雨合羽は上に跳んだのだ。

雨衣怪跳了起来。

跳んで──教室の天井に、両足の裏を貼り付けて──そしてそのまま、雨合羽は天井を駆けた。『たっ、たっ、たっ、たっ、たっ、たっ』と、重力に逆らって──万有引力の法則を無視しているが如く、天井を駆けた。

他一跳,双脚贴着教室天花板,开始在上头奔跑。「哒、哒、哒、哒、哒、哒!」他违反重力,视万有引力定律如无物,在天花板上狂奔。

そして天井から降りて──床に着地した。

接着,他从天花板降落到地上。

かと思うと、今度は横に跳んだ。

转眼间,这次他又朝侧面跳去。

かと思うと、剝がれかけた黒板に着地して──かと思うと、更にそこから跳んだ──かと思うと、次は窓に打ち付けられた、分厚い板へと着地して──かと思うと、更にそこから跳んで──かと思うと、再び天井へ。

一眨眼,他降落在半剥落的黑板上,剎那间又跳离黑板,降落在窗户的厚木板上,瞬间他又跳离木板,回到天花板上。

縦横無尽、斜め向き。

他随心所欲,不断朝斜前方跳动。

めくるめく目まぐるしさで──雨合羽は跳ぶ。

动作令人眼花缭乱。

ネズミ花火のように壁から壁へ、壁から天井へ、天井から床へ、床から壁へと、その両脚で──跳ね回る。神原駿河の鍛えられた両脚で、雨合羽は跳び回る。

他的双脚像老鼠炮一样,从墙壁往墙壁,从墙壁到天花板,从天花板到地板,从地板再回到墙壁,不停跳动。雨衣怪利用神原骏河经过锻炼的双脚,不停跳跃。

あるいは高速で撃ち出されたスーパーボール。

就像高速射击出去的超级弹力球。

乱舞芸らんぶげいさながらの乱反射。

有如乱舞一般的不规则反射。

跳躍に次ぐ跳躍。

跳跃再跳跃。

もう目で追えない。

我的眼睛已经无法追上。

僕の眼球の動きよりも、よっぽど速い。

他的速度,比我眼球的动作还要更快。

さながら落下運動のように加速している、加速に次ぐ加速、徐々に、そして大胆に、跳ねるごとに確実に速度を上げている──長靴とスニーカーの違いなんて、可愛らしいくらいに、徐々に、大胆に、確実に、視界が翻弄される。

他利用重力加速度,加速再加速,每经一个跳跃,就慢慢且大胆地提升速度。长靴和帆布鞋的差异,利用小巧可爱的动作,慢慢且大胆地在玩弄我的视线。

平面の動きが立体になるだけで、こうも変わるものなのか──被害を広げないための、間違いなく決着をつけるためのこの教室、忍野の張ったこの結界だったけれど……それに、動きの速い、俊敏しゅんびん機敏な雨合羽を相手にするにあたって、広いフィールドよりも狭いフィールドの方が有利だろうという単純な計算があったのだけれど──まるで逆効果だった。完全に裏目に出た。

只是平面动作变成立体而已,就能产生这么大的变化吗?为了不让灾害扩大,我才会请忍野在这间教室设下结界,要和他确实做个了断……而且,我还很单纯地盘算认为,面对雨衣怪这种动作敏捷的对手,选择狭窄的空间会比较有利。结果现在完全起了反效果。一切适得其反。

裏目。

适得其反。

どうしてわからなかった、こうなることが。

为何我事先没想到会变成这样。

神原が、陸上部ではなくバスケットボール部を選んだ理由──それは、バスケットボールのコートという、狭いフィールドの中でこそ、神原の両脚は、誰よりも速い、活かせる武器だったから──!あの身長で、あの体格で、軽々とダンクシュートを決めてしまう神原駿河の跳躍力が、この限定された、天井の低い空間においてどう活かされるのかと、そういうこと──!

神原选择篮球社而不是田径社的理由,就在于她的双脚在篮球场这种狭窄空间中才能充分活用,可以快过任何人!神原骏河的跳跃力,让她在那种身高和体型下还能轻松灌篮。而在这矮天花板的狭窄空间里,那股跳跃力会被如何活用,已经摆在眼前!

やることなすこと、裏目続き。

我的所作所为,一直适得其反。

誤算にもほどがある、馬鹿なのか僕は。

要错估也要有个限度吧,我脑残吗?

常にミスを怠らない。

每次都错误百出。

翻弄するように周囲を跳ね回られながらも、僕は踵を釘付けにされたように、その場から一歩も動けない。特に追いきれないのが、床から天井へ、あるいは天井から床への、上下の動きだ──そのデザインの問題で、物理的に、人間の眼は左右の動きには対応していても上下の動きには対応していない。視野が雨合羽の動きについていけないのだ。

对方有如在玩弄我一般,在周围不停跳动;但我却有如脚跟被钉住一样,在原地一步也动不了。我最看不清楚的是他在地板和天花板之间的上下移动。这是人体构造的问题,人眼在物理上可以对应左右的移动,但碰到上下移动就没辙了。因此,我的视野跟不上雨衣怪的动作。

足元から一気に背後に回られて──

他从我的脚边,一口气跳到我的身后。

天井から、ついに雨合羽は僕を目掛けて跳んできた。

雨衣怪终于从天花板上,朝我跳了过来。

セパタクロー77のローリングスパイクのように空中で身体を縦回転させ、その勢いを乗せた爪先が、僕の脳天に突き刺さる──頭蓋骨が陥没したのを感じる。その威力に前のめり78になったところに、既に床に着地していた雨合羽の、ムエタイ79の膝蹴りのような一撃が、僕の顎に入った。その二連撃、セパタクローとムエタイのコンビネーションは、タイミング的には数瞬の差もなく、まるでサンドイッチみたいに、挟み撃ちにされたのと同じだけの衝撃が、痛み以上のものとして、僕を襲った。頭部が脳髄ごとひしゃげてしまったようで、少しだけ、意識を喪失する──にわかに人事不省に陥る。

他有如藤球的空转扣踢一样,在空中转动身体,乘势用指尖朝我的脑门刺来。我感觉头盖骨陷了进去,因为这股威力而向前倾倒。此时,早已落地的雨衣怪又朝我的下颚,补上一记类似泰拳的膝击。这二连击——藤球和泰拳的组合,时间点抓得丝毫不差,形成的冲击就像三明治般将我上下夹击,而袭击我的疼痛,已经超越痛觉的极限。我因为头部和脑髓似乎整个被压碎,稍微失去了意识。片刻间不省人事。

だが死なない。

但是我没死。

傷はすぐに回復する。

我的伤口马上就恢复。

全く、地獄だ。

这简直是地狱。

等活とうかつ地獄80

等活地狱。

身体を粉々に砕かれても、一陣の風と共にそれが修繕しゅうぜんされて元に戻り、また砕かれ、また修繕され、そして繰り返し身体を粉々に砕かれて、永遠に砕かれ続ける、八大地獄の、その一──僕の春休み、そのものだ。

就算身体被粉碎,也会随着一阵凉风而复原,然后再被粉碎,再次复原,就这样无止无尽,在粉碎和复活之间循环。这是八大地狱中的第一个地狱,也就是我的春假。

「ちっ……」

「啧……」

手を伸ばす──雨合羽はそれをかわした。そして左拳を大きく振りかぶる、それに僕は反応する──いや反応じゃない、ただの反射だった。ずっと左腕に注意を集中させていたから、雨合羽の左腕の動きに、必要以上に敏感になってしまっていたのだ。けれど、先ほどの攻撃が、別に左腕を封じられたわけでもない状況からの、積極的な蹴りの二連撃だったことを、僕はもっと深刻に捉えておくべきだっただろう。あるいは、突然始まった雨合羽の、めくるめく目まぐるしいあの立体高速の攪乱かくらん加速移動、恐るべきフットワークが、どういう意味を持っているのかということを。レイニー・デヴィルの左腕だけでなく、四肢全てを使用してのその動作が、どういう意味を持っているのかということを。

我伸手向前。雨衣怪躲开后,用左拳朝我劈下。我做出了反应,不对,这不是反应,只是普通的反射动作。因为我一直在注意他的左手,因此对他左手的动作特别敏感。然而刚才的攻击,他的左手没有被封住却积极地使用二连踢来攻击我。还有雨衣怪突然运用可怕的步伐,使出那种令人眼花缭乱的立体高速移动。他不只用左手,还能利用全身做出那种动作。这些事情所代表的意义,我绝不可等闲视之。

悪魔と遊べば悪魔となるデヴィル・メイド・デヴィル・アンド・デヴィル

与恶魔游玩,就会变成恶魔。

願いを叶えてもらうまでもなく、魂を売り渡すまでもなく、肉体を乗っ取られるまでもなく、何をするまでもなく──

不用实现愿望,不用出卖灵魂,不用被夺走肉体、什么都不用做——

悪魔に願えば、悪魔となる。

只要向恶魔许愿,就能变成恶魔。

左拳はフェイント81だった。

这左拳是假动作。

これまで直線的な攻撃しか見せなかった雨合羽は──ここでついに、フットワークやコンビネーション、フェイントという、戦闘上の小技を使ってきたのだった。

至今只会直线攻击的雨衣怪,现在已经会运用步伐、连续技和虚招这类战斗上的小技巧。

いや、フェイントではない。

不,这不是虚招。

やはりここではフェイクというべきだ。

这里应该叫做假动作才对。

それは、雨合羽にとって、神原駿河の協力なくしてはできない小技なのだから──

因为对雨衣怪来说,这种小技巧没有神原骏河的帮助是办不到的。

左拳に対して身構えた僕にとっては決定的な死角である、反対側の脇腹に、雨合羽の爪先が、今度は三連続で、しかも同じ箇所に的確に、入った──同時に同座標に三連撃という相対性理論的に矛盾した雨合羽のその攻撃によって、僕の身体がくの字に折れ曲がったところで、もう片方の足の裏が、僕の胸を打ち抜く。

我的身体对左拳做出应对,自然另一边的侧腹就会产生决定性的死角。雨衣怪的脚尖朝那里,这次连续三击,而且准确地踢中同一个点。在同时间连续三次击中相同坐标——这种在相对论上会产生矛盾的攻击,让我的身体弯成了「く」字,瞬间他又抬起另一脚,用脚底踢穿我的胸口。

カタパルトのように。

就像弹射器一样。

こらえきれず、僕は後ろ向きに倒れるが、倒立後転の要領で、手のひらを床について、すぐに縦回転で起き上がり、距離を取る──雨合羽はすぐに距離を詰めてくる。

我耐不住这一击向后倾倒,但我马上利用倒立后翻的要领,用手掌撑住地板后翻起身,取出距离。雨衣怪马上就逼了上来。

蹴りが肺に入っていた。

刚才的踢击贯入了我的肺部。

多分、潰れている。

我的肺大概失去了功能。

呼吸が苦しい。

呼吸好痛苦。

駄目だ、すぐに回復しない──つまり、今や左拳よりも、雨合羽の蹴りの方が、ともすれば威力を、破壊力を有しているということか。

不行,没办法立刻回复。这表示刚才的踢击,比左拳还要有威力和破坏力吗?

神原の想いが、悪魔を凌駕しているということか。

神原的意念凌驾于恶魔了吗?

嫉妬。

嫉妒。

憎しみ。

憎恶。

ネガティヴな感情。

黑暗感情。

だったら、私でもいいはずじゃないか。

——既然这样我应该也可以不是吗?

「……お前じゃ」

「……你——」

潰れた肺のままで──僕は言う。

在肺部尚未复原的状况下,我说。

「お前じゃ駄目なんだよ、神原駿河──!」

「你是没办法的,神原骏河!」

誰かが誰かの代わりになんてなれるわけがないし、誰かが誰かになれるわけなんか、ない。戦場ヶ原は戦場ヶ原ひたぎだし、神原は神原駿河なのだから。

谁也不能代替谁,谁也不能变成谁。因为神原是神原骏河,战场原是战场原黑仪。

阿良々木暦は阿良々木暦なのだから。

就像阿良良木历是阿良良木历一样。

僕と神原との違い。

我和神原不同的地方。

忍野を知っていたかどうか。

有没有认识忍野。

身を引いたかどうか。

有没有抽身而退。

鬼だったか猿だったか。

鬼也好,猴子也好。

たまたまの巡り合わせで、偶然。

这些都是运气和偶然。

後ろめたさは、ぬぐえない。

唯独内疚是无法抹去的。

僕は後ろめたい、それは神原に対しても、戦場ヶ原に対しても。けれど、代われるものなら代わってやりたいとは、思わない──僕は今の立ち位置を譲るつもりはない。

我很内疚,无论是对神原还是战场原都一样。但是,我没想过要代替神原承受这一切——我没有打算离开我现在的位置。

そうだ。

没错。

僕がお前のにっくき恋敵なら──お前も僕のにっくき恋敵だったんだ。僕は、神原のことを、憎まなければならなかったんだ。

如果你认为我是可恨的情敌,那对我而言你也是一样。我必须去憎恨神原。

ならばそれもまた、後ろめたさの、正体か。

这也是我内疚的真正原因吗?

僕は神原を、対等な相手として見ていなかった。

我没有把神原当作对等的对手。

見下していた。

我一直在轻视她。

見縊っていた。

看不起她。

絶対に安全な高みから、たっぷりと余裕のある立場から、神原と戦場ヶ原の間を取り持ってやろうだなんて、二人を仲直りさせてやろうだなんて、それはどれほどに嫌らしい行いなのだろう。なんて優しくていい人なのだろう。なんて酷くて悪い人なのだろう。

我从绝对安全的高度,在从容不迫的立场下,想要撮合神原和战场原,想要让她们重修旧好,这是多么卑鄙的行为啊。我是多么温柔的好人,多么残酷的恶人啊。

願いは。

愿望是——

願いは、自分で叶えるものなのに──だったら。

愿望是要靠自己实现的,既然这样……

自分でなら、諦めたっていいはずなのに。

那自己应该也能去放弃它吧。

忘れなければ──諦めたって、いいはずなのに。

如果不想遗忘,那只要放弃就好了吧。

「……! ……! ……!」

一撃食らうごとに、身体の形がリアルに変形するほどに激しい、怒濤に次ぐ怒濤の攻撃を、次々と雨合羽は繰り出してくる──もう僕は、それを四回に一回も、かわすことができない。破壊された部分から順に自動修復自動再生されていくが、その速度よりも更に速く、雨合羽は僕を攻め立てる。

雨衣怪用排山倒海般的攻势,不停做出攻击。每受到一次攻击,我的身体就会猛烈变形。接续而来的四击,我一次都没躲开。虽然身体被破坏的部分,照顺序自动修复再生,但雨衣怪攻势更凌驾于我的恢复速度。

いつの間にか、僕は教室の角の部分に、追い詰められてしまっていた。後ろにも、右にも左にも動くことのできない、見えない糸で束縛でもされたかのような位置。雨合羽も、ここまで来れば、フットワークなど使わない──ボクシングでいうところの、ベタ足でのインファイトだ。それはあまりにも一方的な、インファイトだった。いくら上等のスニーカーとはいえ、あんな無茶な加速を続けていればすぐに裏のゴムが摩擦で焼け、すり切れるのではないかという、希望的観測に基づく淡い期待を抱いていたが、その前向きな目論見も、これでご破算。拳が、肘が、膝が、脛が、爪先が、踵が、順列組み合わせ様々に、矢継ぎ早に僕の身体のあちこちを苛烈にさいなむ。悲鳴を上げる暇すら与えてもらえない、究極の連撃だった。

不知不觉间,我已经被逼退到教室的墙角。这位置无法朝左右或后方移动,有如被一条看不见的丝线给束缚住一般。雨衣怪也一样,来到这里他不再使用步伐,改用拳击的逼迫近身战。而且完全是单方面的近身攻击。就算再高级的帆布鞋,这样不停地加速,很快脚底的橡胶就会因摩擦而烧焦磨破,我淡淡地抱着这种希望与期待;但这乐观的想法,也在此落空。拳头、手肘、膝盖、足胫、脚尖、脚跟,各种排序组合接连不断,猛烈地折磨我身体的各角落。这究极的连击,完全不让我有时间哀号。

それは最早打撃の範疇ではない。

这已经脱离打击的范畴。

純粋な圧力だった。

单纯是一种压力。

骨が折れるだけでは済まない、打撃された箇所が切れる、皮膚と筋肉が、破裂し、爆裂する。脚の踏ん張り、脚の踏み込みが先ほどまでとはまるで違うということなのだろう、雨合羽の左拳の破壊力もまた、どんどん増幅されているようだった。

被打中的地方不仅骨折,还会皮开肉绽,皮肤和肌肉爆裂。我稳住脚步的感觉和刚才完全不同,雨衣怪左拳的破坏力似乎不停再增强。

それでも。

话虽如此。

神原駿河の両脚ほどではないが。

破坏力还是不及神原骏河的双脚。

「せいっ……ふく」

「制……服。」

身体は不死身でも、着衣はそうではない。

我的身体虽然是不死之身,但身上的衣物可不是。

僕の服はとっくに、ずたずたになっていた。

我的衣服早就变得七零八落。

やれやれ、制服をまた一着、駄目にしてしまった。

唉,我的制服又泡汤一套了。

あと数日で衣替えなのに、高い詰襟つめえりを。

还有几天就要换季,改穿立领学生服了说。

妹達に、今度はどう言い訳したものだろう。

这次要怎么跟妹妹们解释。

「ぐぅ……っ」

「呜……」

この距離なら……。

这个距离的话……

だが、この距離なら、雨合羽がほんの少しでも隙を見せてくれたなら、その瞬間確実に、神原の身体を抱き締めるように、僕は雨合羽の動きを封じることができる……そのまま全体重をかけて、力ずくで床に押し倒してしまえば、形勢は逆転する。

如果是这个距离,只要雨衣怪稍微有机可乘,我就可以抱住神原骏河的身体,封住雨衣怪的行动……然后再利用全身体重,用力把他压倒在地板上的话,情势就会逆转。

勝機はまだ失われていない。

我还未失去胜算。

今だって、別に、ポジション的に追い詰められたというだけで、実際的に追い詰められたというわけでもないのだ──いくら雨合羽から攻撃を受けたところで、僕の肉体の有する回復力治癒能力がそれについていける間は、そんなもの、恐れるに足りないのだから。

现在我只是位置被逼到死角,而不是整个人被逼死。就算受到雨衣怪的攻击,只要我身体的恢复力能够跟上,他的攻击根本不足为惧。

痛いだけなのだから。

只是肉体会疼痛。

神原の心のように、痛いだけなのだから──

就和神原的心一样痛。

痛いということは、まだ、生きている。

会痛就表示自己还活着。

「憎い」

「可恨!」

声が聞こえた。

我听到了声音。

「憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い」

「可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨!」

神原駿河の──声だった。

是神原骏河的声音。

深い洞のような、雨合羽のフードの内側から──直接精神に響くように、訴えるように、聞こえてくる。

有如无底洞般的雨帽内发出了声音,像是在倾诉,又像是直接在我的大脑响起一般。

「憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い」

「可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨可恨!」

「………………」

憎悪ぞうお──人間一人では抱えきれないほどの憎悪。

憎恶——一个人类无法承受的强大憎恶。

悪意、敵意。

恶意,敌意。

ポジティヴな後輩の、ネガティヴな本音。

一个乐观阳光的学妹,黑暗消极的内心话。

渦巻くように──雨合羽の奥に、溢れている。

像漩涡般从雨衣怪的深处溢出。

表面張力一杯に。

充满了表面张力。

「よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくも」

「你居然你居然你居然你居然你居然你居然你居然!」

打撃と共に、声は続く。

声音伴随着打击,接着说。

憎悪の声は続く。

憎恶的声音没有停止。

「お前なんか嫌いだお前なんか嫌いだお前なんか嫌いだお前なんか嫌いだお前なんか嫌いだお前なんか──」

「我恨你我恨你我恨你我恨你我恨你我恨你!」

「……神原、ごめん」

「……神原,抱歉。」

もう一度、声に出して。

我再一次出声,

僕は神原に謝った。

对神原道歉。

「僕は、お前なんか、嫌いじゃないんだ」

「我并不恨你。」

恋敵かもしれないけれど。

或许我们是情敌。

お前と、僕とじゃ、酷く不釣合いかも、知れないけれど──それでもさあ。

我知道自己的身份可能配不上你,可是——

友達くらいには、なれないか?

难道我们不能当朋友吗?

「……■■■■■■■!」

深い洞から、何か、悲鳴のような金切り声が上がって──雨合羽の蹴りが僕の腹部を、貫いた。貫いた。襲われた内臓破裂どころではない、関節も筋肉も完全無視、比喩でなく本当に、僕のどてっ腹を見事に貫通して、肋骨と背骨を砕いて、後ろの壁にまで、その踵が到達していた。串刺くしざしだった。

无底窟窿中传出类似悲鸣般的女性尖叫声。接着,雨衣怪的踢击贯穿了我的腹部。整个贯穿了。不是只有内脏破裂,这一击完全无视我的关节和肌肉,不是比喻而是真的贯穿了我的肚子,他的脚跟弄碎了我的肋骨和背骨,抵达我身后的墙壁。就像串剌一样。

回復能力を遥かに越える──ダメージだった。それは。

这伤害——远远超过了我的恢复能力。

ずずぅ、と、脚が引き抜かれる。

他缓缓地拔出脚来。

消化器官がまとめて引っ張り出される感覚。

我感觉整个消化器官被向外扯出。

ごっそり。

一点都不留。

引きずり出され──僕の身体こそが深い洞。

脏器被扯出后,仿佛我的身体才是个无底窟窿。

洞の中には、何もない。

洞中空无一物。

「神原──」

「神原——」

まずい。

糟糕。

腹部に大きな穴を開けられたことによって──ぐらぐらとして、少し身体をじるだけでも、上半身と下半身とが、分断されてしまいそうだ。となると、もうこれ以上、下手に動くこともできない。まだ意識は残っているが、それでもこの状態では、次の一撃で──決まってしまう。なんて不甲斐ないんだ、僕が圧倒されてどうする。このままじゃ、神原の、二つ目の願いが、叶ってしまうじゃないか。それは、絶対に避けなければならないのに……。

我因为腹部被开了一个大洞,整个身体摇摇晃晃,就算是稍微扭动身体,上半身和下半身都有可能会分家。既然如此,我不能再随便移动。虽然我还有意识,但只要再一击,一切就会分出胜负。真是有够窝囊,怎么是我被他压倒性胜利。再这样下去,神原的第二个愿望不就实现了吗?这一点我必须极力避免才对……

いや、それも、ありなのか?

不,不如这样想吧?

まだ願いは二つ目だ。

现在才第二个愿望。

神原が今後……三つ目の願いを我慢することができれば──それでいいんじゃないのか? 神原の腕は、とりあえず元に戻るはずだし、それに、願いは願いだ、神原はきっと、戦場ヶ原のそばに──どんな形であれ、願いは叶うのだから。

神原今后……只要忍耐不去许第三个愿望,那不就行了吗?这次神原的手会恢复原状,而且愿望就是愿望,她一定可以回到战场原身旁,不管是什么形式,愿望都会实现。

譲るつもりは、ないけれど。

我没打算把自己的位置让给她。

譲るつもりは、ないけれど。

没打算让她代替我。

許すつもりは、あるんだから。

但是我能原谅她。

僕なんて、本来、春休みに死んでしまっているはずだったのだから……ならば忍野の言う通り、それはそれで、簡単で、いいのか。

我本来在春假就应该死去……既然这样就和忍野说的一样,直接死掉不是轻松简单吗?

生に執着はあるけれど。

我虽然对活着有执着。

死に戦慄があるわけじゃない。

但对死亡却没有恐惧。

「あ──あ、う」

「啊——啊,呜!」

呻く。

呻吟。

意味もなく、僕はただ、呻く。

我发出没有意义的呻吟。

断末魔のように。

就像死前的哀号一样。

制服を駄目にすることも、もう、ない。

我以后,再也没机会把制服弄破了。

「神原、するが──」

「神原,骏河——」

そして、そのとき。

然而,就在此时。

一刹那すら絶えることなく数十分は続いていた、雨合羽の連撃が、停まった。

雨衣怪连续几十分钟、片刻未曾歇止的连击,停了下来。

唐突に、停まった。

冷不防地停了下来。

それは──僕が待ちかねていた、隙だった。

这是我望穿秋水的破绽。

しかしそれでも、僕は、作戦通りに雨合羽を組み敷くことなどできなかった。腹部に大穴を開けられたダメージに回復の目処めどが全くたっていなかったということもあったけれど、その行動に出るための意識が既に途切れかけていたからということもあったけれど、しかしそれ以上に──僕もまた、硬直してしまったからだ。

然而,我没有按照原定计划,把雨衣怪压倒在地。我肚子开了一个不知何时才会恢复的大洞固然有关系,也因为我想压住他的念头已经消失不在,但最主要还是因为我整个人已经僵住了。

多分、雨合羽と同じ理由で。

雨衣怪大概也一样。

硬直して、しまった。

整个人僵住了。

「……随分とはしゃいでいるわね」

「……你们玩得很高兴嘛。」

教室の扉が開いた。

教室门打开了。

内側からは決して開かない扉が、外側から。

从内侧绝对打不开的门,从外侧被开启了。

そして、中に這入って来る。

接着,有一个人影走进教室。

私服姿の、戦場ヶ原ひたぎ。

是穿着便服的战场原黑仪。

「私抜きで楽しそうね、阿良々木くん。不愉快だわ」

「把我丢在一旁,自己玩得很高兴嘛,阿良良木。我很不愉快。」

感情の読めない表情──平坦な声。

无法读出感情的面孔,以及平稳的声音。

この惨状を見ても、少し眼を細める程度だ。

看到眼前的惨状,她只是稍微眯起眼睛。

常に──前触れもなく現れる。

她总是毫无预警地,突然出现在我面前。

ベルトを巻いていないジーンズに同色のインナー、サイズが大きめのざっくりとしたパーカー、緩く後ろで結んだ髪という、まるで部屋着のまま家を出てきたかのような、私服姿の戦場ヶ原ひたぎの姿だった。

没有系皮带的牛仔裤搭配同色的上衣,尺寸稍微大号的粗织连帽外套。战场原黑仪的便服,宛如直接穿居家服从家里过来一样。

「せ、戦場ヶ原……」

「战、战场原……」

腹に風穴が開いている所為でうまく喋ることができない──声にならない、戦場ヶ原に向かって呼びかけるのも難しい。

我肚子开了一个大洞,无法好好说话。不成声的声音,就连要开口叫战场原都有困难。

どうしてここに?

为什么你会在这里?

そう訊きたいのに。

我只是想问她这个问题而已。

けれど訊くまでもなく、そんな答はわかりきっていた。忍野の奴が呼んだに決まっている──この問いに、それ以外に解答などあるものか。しかしどうやって? 忍野が戦場ヶ原に対して、連絡手段なんて持っているわけがない──戦場ヶ原ひたぎが、嫌っている忍野メメに、携帯電話の番号を教えるわけがない。その機会さえなかったはずだ。

但不用开口问,这问题的答案我也心里有数。肯定是忍野那家伙叫她来的,这问题除此之外无解。但是怎么叫?忍野没有联络战场原的方法;战场原黑仪讨厌忍野咩咩,不可能会把手机号码告诉他。应该连告诉他的机会都没有。

携帯電話?

手机?

ああ、そうか。

啊!原来如此。

あの野郎──個人情報保護の理念なんて小指の先ほども考慮せず、プライバシーを完全無視して、僕の携帯電話を勝手にいじりやがったんだ。この教室に入る前に、忍野に預けたリュックサックに入れた、あの携帯電話……とりたててパスワードでロックをかけていたわけじゃない、いくら忍野が機械に不得手でも、時間をかければ、アドレス帳や着信・発信履歴程度は、探ることはできるだろう。携帯電話の使い方だけならば、あの母の日に、ある程度戦場ヶ原からレクチャーを受けていたはずだし──

那个家伙,连一点个人数据保护的理念都没有,完全无视我的隐私,随便拿我的手机乱打。我进这间教室前,请忍野保管的背包里头有手机……那支手机没有特别用密码锁,就算忍野再怎么机械白痴,信箱账号、已接来电和拨话记录这点程度的东西,只要花点时间就能找到吧。而手机的使用方法,他在母亲节时应该从战场原那边学到了一点皮毛。

だが、何故。

可是,这又是为什么?

一体何のために、よりにもよってこんな場所に、よりにもよってこんなシチュエーションに、忍野は、戦場ヶ原を、呼んだのだ──

在这种情况下,为何忍野好死不死要把战场原叫来?

途端。

突然——

雨合羽が、後ろ向きに跳ねて、天井と壁をそれぞれ二、三回ずつ経由して、僕からずっと離れた位置、教室の角から角へ、対角線の位置へと移動した。

雨衣怪往后一跳,踩过天花板和墙壁各三次,从这个角落移动到另一头的角落——离我最远的对角线位置上。

どうして?

为什么?

後一撃で、勝負は決まるのに。

明明只要再一击就能分出胜负。

願いは叶うのに。

神原的心愿就能实现了说。

ひょっとして、神原駿河としての意識が、戦場ヶ原ひたぎが教室に現れたことによって、雨合羽に提供した無意識を、一時的に抑えつけたのか? ということは、それが戦場ヶ原を呼んだ、忍野の狙いだったのか? けれど、そんなの、一時的な処置に過ぎないじゃないか。レイニー・デヴィルは、人間のネガティヴな感情を糧とするのだから、それ自体が解消されないことには、何も変わらない。昔の海外映画よろしくの、愛の力で全てが解決するなんてことが、あるわけがないのだ。戦場ヶ原を呼ぶくらいなら、お前が来いよ、忍野メメ!

该不会神原骏河的意识,在战场原黑仪现身于教室内时,一时间压抑了提供给雨衣怪的潜意识?这是忍野叫战场原来的目的吗?但这只是暂时性的处理吧。因为雨魔是以人类的黑暗感情为粮食,这么做还是一样无法消除掉黑暗感情。这不像以前的海外电影一样,不可能只靠爱的力量就能解决一切问题。叫战场原过来,不如你亲自来一趟吧,忍野咩咩!

戦場ヶ原は、しかし、そんな雨合羽の行動など一切合財まるでちっとも興味がないとばかりに、じろりと、冷酷な眼で、ほとんど瀕死状態の僕を、きつく睨んだ。それはまるで、獲物を狙う猛禽類の眼のようだった。

战场原对雨衣怪的一切行动丝毫不感兴趣,用冷酷的眼神,恶狠狠地瞪着几近濒死状态的我。那眼神,有如盯上猎物的猛禽类一般。

「阿良々木くん。私に噓をついたわね」

「阿良良木。你对我说谎了。」

「……え?」

「……诶?」

「電柱にぶつかったなんて、私を騙して、神原のことも、秘密にして。付き合うとき、約束しなかったっけ? そういうことをするのは、なしにしようって。私達は少なくとも怪異のことに関して、互いに秘密を持たないって」

「骗我说什么你撞上电线杆,神原的事情你也瞒着我。我们交往的时候,不是说好了吗?说好不做这种事情。至少在关于怪异方面的事情上,我们彼此之间不能有秘密。」

「あ、いや……」

「啊,那个……」

それは──そうなんだけれど。

这一点……的确没错。

忘れていたわけではないんだけれど。

我也没忘记。

「万死にあたいするわ」

「你罪该万死。」

酷薄に、笑顔を浮かべる戦場ヶ原。

战场原浮现出冷酷无情的笑容。

雨合羽に思う存分ボコられているときにさえも感じなかった膨大な質量の恐怖が、身体中を電撃のように走り抜ける。怖い……マジで怖い、この女。メドゥーサかこいつは。どうすればそんな眼で、他人を……ましてや恋人を見ることができるんだ? って、おい、本当かよ。そもそもそれは、今この状況で、この状態の僕を相手にするような話なのだろうか? お前には場の空気を読むということができないのか、戦場ヶ原。

就算被雨衣怪当沙包打的时候也未曾感受到的巨大恐怖,有如电击般窜过了我的身体。好可怕……这女人真的好可怕。这家伙是梅杜莎吗?到底要怎么样才能用那种眼神看人?况且我还是她的男朋友。等等,喂!此话当真?现在这种状况,应该不是把我这半死不活的人当对手的时候吧?你难道不会看场合吗?战场原。

「……でも、まあ、阿良々木くん、既に一万回くらい、死んだ後みたいだし?」

「……不过,阿良良木看起来已经死过一万次了呢。」

戦場ヶ原は──扉を開け放したままで、教室の隅でうずくまる僕に向かって、その後ろ足を、踏み切った。

战场原没有把门关上,朝着蹲在教室角落的我,后脚一蹬跑了过来。

「特別に、許してあげようかしら」

「这次我就破例原谅你吧。」

いや。

那个。

さすがに一万回は死んでないと思うけれど。

我想应该没有死到一万次啦。

雨合羽は、戦場ヶ原のその動きに、敏感に反応する──同じように、僕を目掛けて、駆けて来た。期せずして行われる、中学時代には実現しなかった、戦場ヶ原ひたぎと神原駿河との、徒競走だった。直線で結べば戦場ヶ原に較べて雨合羽は僕からの距離が数字にして倍くらいあったが、しかし戦場ヶ原は元陸上部のエースとはいえ二年以上のブランクがあるし、まして今は、雨合羽の脚力は神原の力を借りている──否、悪魔そのものと化している。動けない僕の地点に、先に辿り着いたのは、当然、神原の方だった。

雨衣怪对战场原的动作十分敏感,也同样朝着我跑了过来。战场原黑仪和神原骏河在国中时代没有实现的赛跑,在偶然的机缘下展开了。如果画直线来看,雨衣怪离我的距离,换成数字来看比战场原远了好几倍。可是,战场原虽然过去是田径社的王牌选手,但现在有两年以上的空窗期,更何况雨衣怪的脚力是借用神原的能力——不,是已经化成了恶魔。率先跑到动弹不得的我面前的,当然是神原。

ここぞとばかりに雨合羽が、僕に向かって、最後の一撃としての左拳を振りかぶり──そのタイミングで、戦場ヶ原が、遅まきながら、僕と雨合羽の間に割り込むように、到達する。

雨衣怪一到定位,立刻朝我挥下左拳,打出最后一击。就在此时,战场原才总算赶到,挤入我和雨衣怪之间。

危ない。

危险!

と、思うほどの隙間もない。

我连如此心想的空隙也没有。

雨合羽は──衝突の寸前で、後ろに弾き飛ばされた。弾き飛ばされた? 誰が今の雨合羽を弾き飛ばせる。僕には無理だし、戦場ヶ原には尚更、そんなことは不可能だ。ならば、弾き飛ばされたのではなく、順当に、雨合羽は自分から、後ろに跳んだと見るべきだろう。その結果、後ろ向きに不恰好に、倒れこんでしまったとしても。

雨衣怪在击中战场原之前,突然往后被弹飞。被弹飞?现在谁有能耐弹飞雨衣怪?我没办法,战场原更是不可能。既然这样,雨衣怪应该不是被弹飞,而是自己往后跳的才对。就算他最后是狼狈地后仰倒地。

僕は呆気にとられていた。

我目瞪口呆。

今の動き──まるで、戦場ヶ原を巻き込むことを恐れるような、戦場ヶ原を傷つけることを何より忌避するような、雨合羽の不自然な今の動き、一体、どういうことだ?

雨衣怪刚才的动作就像怕把战场原卷入、怕伤害到她一样。这不自然的动作到底是怎么回事?

やはり、神原駿河としての意識が──否。

这应该是神原骏河的意识——不对。

そんなご都合主義があり得るか。

哪有这么刚好的事情。

怪異は、合理主義だ。

怪异是合理主义者。

あくまでも、どこまでも、理に合する。

自始至终,无论如何都会顺着理字走。

その理が、人間に通じない場合があるだけだ。

只是他的道理,有时和人类不通用而已。

しかし、この場合は──

但是,这个情况下——

「阿良々木くん。どうせあなたのことだから、自分が死ねば全部解決するとか、間の抜けたことを思っていたんじゃないかしら?」

「阿良良木,你一定在想,『只要自己死掉就可以解决一切问题』这种蠢事吧?」

戦場ヶ原は変わらず、雨合羽のことなど意に介せず、僕に言った──僕に背を向けたままで、こちらを見ずに。こちらを見ないのは、血塗れ傷だらけの、僕のこの悲惨な姿を見たくないから──ではないことは、確かだった。

战场原依旧不理会雨衣怪,没回头看我一眼,背对着我说。她不是因为不想看到我浑身是血的惨状,这点我可以确定。

「冗談じゃないわよ。薄っぺらい自己犠牲の精神なんて、これっぽっちもお呼びじゃないわ。阿良々木くんが死んだら、私はどんな手を使ってでも神原を殺すに決まっているじゃない。私、確かにそう言ったわよね? 阿良々木くん、私を殺人事件の犯人にするつもり?」

「别开玩笑了。你那种牺牲自我的肤浅精神,根本不会有任何的回报。阿良良木要是死掉的话,我一定会不择手段杀死神原的。这点我之前有说过吧?阿良良木,你想让我变成杀人犯吗?」

……お見通し。

……完全被看透了吗。

全く、情の深い女だ。

战场原还真是个一往情深的女人。

うかうか死ぬこともできないってのか。

看来我不能随便死掉了。

一途なくらいに──歪んだ愛情。

她那专一而扭曲的爱情。

「私が何より気に食わないのは、阿良々木くんが、たといそんな身体じゃなくとも、同じ行為に身を投じていただろうということが、はっきりとわかってしまうことよ。不死身の身体におんぶにだっこでこんな馬鹿なことをやっているのだったら、どうぞお好きなようにという感じなのだけれど、阿良々木くんときたら当たり前みたいに、流れのまにまにそんな有様になってしまって──もう、さっぱりね」

「最让我不高兴的是,就算阿良良木你不是这种身体,你也会做同样的事情。你要依靠不死之身做这种蠢事,我悉听尊便,不过你好像很理所当然一样,甘愿变成这个样子,我真是搞不懂你呢。」

「…………」

「まあ、大きなお世話も余計なお節介もありがた迷惑も、阿良々木くんにされるなら、そんなに悪くはないのかもしれないわ──」

「不过,多管闲事也好、鸡婆也好、帮倒忙也好,如果是阿良良木带给我的,或许也没这么糟糕——」

戦場ヶ原は、最後まで僕に一瞥もくれないままに、倒れた姿勢のまま起き上がろうとしない雨合羽に向かって、ずいっと一歩を、踏み出した。雨合羽は、まるで戦場ヶ原に怯えているように、倒れた姿勢のままで、後ろに這いずる。

战场原直到最后都没看我一眼,朝着倒在地上无意起身的雨衣怪,突然踏出了一步。雨衣怪彷佛在畏惧战场原般,倒在地上向后爬行。

怯えているように……。

彷佛在畏惧一样……

怯えているように……どうして?

彷佛在畏惧一样……为什么?

そういえば──言われてみれば、昨夜のときも、そうだった。雨合羽は、僕をぶっ飛ばしたところで、突然、去っていった。それは戦場ヶ原が、忘れ物の封筒を持ってその場に現れたからだ……けれど、戦場ヶ原が現れたからといって、どうしてそれが雨合羽の逃げる理由になる? 考えてみれば、それはとても不自然なことではないか。あれが『人間』の通り魔だったり『人間』の殺人鬼だったりしたなら、自然なことだろう──しかし、『怪異』が目撃者を気にする理由なんかあるわけもない。そもそも、雨合羽の左腕の腕力があれば、戦場ヶ原一人程度、何の障害にもならないはずなのに。

这么说来,昨晚也是这样。雨衣怪将我打飞之后,冷不防就消失无踪。这是因为战场原拿着我遗忘的信封,出现在现场的关系……可是,战场原出现为什么会成为雨衣怪逃走的理由?现在想想,那是很不自然的事情不是吗?如果那是「人类」的拦路魔、「人类」的杀人狂,那的确很自然。但是,「怪异」没理由在意「目击者」。而且,凭雨衣怪左手的腕力,战场原区区一个人,根本不会构成阻碍。

なら、どうして逃げた。

既然这样,他是为何而逃?

現れたのが戦場ヶ原だったからか?

因为出现的人是战场原的关系?

どういうことなんだ?

这是怎么回事?

本当に愛の力なのか?

这真的是爱的力量?

ご都合主義にも、神原駿河の、戦場ヶ原を想う気持ちは、悪魔をも凌ぐというのか……一途な想いは世界そのものである怪異も押しのけ、地から天に通じるものなのか──否。

难道就这么凑巧,神原骏河对战场原的思慕,凌驾于恶魔之力吗……专一的感情连代表世界本身的怪异都无法抵挡,贯通了天地吗——不对。

否。

不对。

そうじゃない……わかった、想いだ。

不是这样……我明白了,是思念。

レイニー・デヴィルの左手に二つ目の願いを願い、神原の左手がけだもののそれと化した後も──それが実際に発動するまでには、四日を要した。それは、神原が、ぎりぎりのところで、僕が憎いという想いを抑えつけていたからだ。願いは自分で叶えるものだという、彼女の姿勢が、悪魔の暴力を、抑えつけていた。忍野はそういう、一つ目の願いを願ってからの七年の間に強固に根付いた神原の姿勢をちゃんちゃらおかしいと笑ったが──それは、そういう通り一遍の意味ではなかったのだ。

神原对雨魔的左手许下第二个愿望,自己的左手变成野兽之手后,花了四天左手才实际发挥力量。这是因为神原一直压抑对我的憎恨直到极限的缘故。她的想法——愿望要靠自己实现,压抑住了恶魔的暴力。神原许了第一个愿望后,持续七年都坚持这种想法,让忍野觉得很好笑。不过,那并不完全是字面上的意思。

決して間違えてない──と言っていた。

忍野还说过,她的想法绝对没有错。

神原の想い。

神原的想法。

想い──神原駿河の願い。

想法——神原骏河的愿望。

レイニー・デヴィルは人間の暗い感情を見透かし見抜く──裏を読んで裏を見る。悪魔は願いの裏を見る。足が速くなりたいのは、同級生が憎かったから。戦場ヶ原のそばにいたいのは──阿良々木暦が憎かったから。

雨魔会看穿人类的黑暗情感,读出和观看人类的内心。恶魔是看愿望的里层。想要脚程变快,是因为憎恨同学。想要待在战场原身旁,是因为憎恨阿良良木历。

でも、それは、あくまで、裏側だ。

可是,那终究是里层,

表があれば裏があるよう。

就像有表就有里一样。

裏があるなら──表がある。

有里层,就会有表层。

もしもレイニー・デヴィルが戦場ヶ原ひたぎを傷つけてしまったら──憎悪の対象である阿良々木暦を殺そうがどうしようが、関係なく、神原の表の願いを、叶えることができなくなってしまう……そうだ、愛の力なんてそんな感動的でセンシティヴな問題じゃない、もっと実際的でプリミティヴな問題なのだ。

要是雨魔伤害到战场原黑仪,不管有没有杀掉阿良良木历,神原表层的愿望都会无法达成……没错,这不是爱的力量那种让人感动且微妙的问题,而是更实际且基本的问题。

契約なのだ。

就是契约。

取引なのだ。

就是交易。

レイニー・デヴィルが叶えられる願いは裏側だけだが、それは表がないがしろにされるという意味ではない。実際、神原が小学生のときだって──同級生に復讐をという裏の願いと同時に、足が速くなりたいという表の願いも、結局は、叶っている。因果関係とは関係のないところで、しっかりと、叶ってしまっている。ちゃんちゃらおかしいのは、それが結局、レイニー・デヴィルの思惑通りでしかなかったからだった──レイニー・デヴィルは表を裏に解釈しただけだが、何もないところから裏を導きだしたわけじゃない、表があってこその裏だった。いや、それもまた忍野の言に従うなら、左手に意思など、あるわけがない。全ては、神原駿河の無意識の思惑として──表と裏の、決して交わることのない因果関係は矛盾のように成立する。

雨魔能实现的只有里层的愿望,但不代表他会轻视表层的事物。神原在小学时,报复同学的里层愿望实现的同时,脚程想变快的表层愿望到头来还是实现了。就算这没有因果关系,愿望还是确实实现了。滑稽可笑的是,那个结局完全照着雨魔意图走而已。雨魔虽然只是把表解读为里,但并不是无中生有导出里这个结论,因为有表就有里。不,如果这点也照忍野的说法来看的话,左手不可能会有自我意识,这一切部是神原骏河潜意识的意图,让表和里这两个绝对不会交织的因果关系,有如自我矛盾一般而成立。

悪魔との契約。

与恶魔的契约。

魂と引き換え。

以灵魂做交换。

クーリングオフ。

鉴赏期。

叶えられない願いを、願うこと。

许下无法实现的愿望。

ダブルバインドの──板ばさみ。

进退两难。

表と裏との、板ばさみ。

表和里之间的进退两难。

だから──だからこそ、レイニー・デヴィルは戦場ヶ原に手が出せないのだ。そういう契約だから、そういう取引だから、こうして、戦場ヶ原が僕の盾となっている内は──憎い憎い僕にさえも、手を出すことができないのだ。

所以,就是因为这样雨魔才无法对战场原出手。因为契约是如此,交易是如此,只要战场原成为我的盾牌,就算我再可恨,他也无法对我出手。

その左手を、出すことができないのだ。

他无法用那只左手攻击。

僕が悪魔を圧倒し、裏の願いの成就じょうじゅを不可能にしてしまうというのが一つの方策であったなら──それと同様に、表の願いの成就を不可能にしてしまうこともまた、一つの方策。

我打败恶魔,让里层的愿望不可能实现是一个方法;那相反的,让表层的心愿无法实现也是一个方法。

まして今、戦場ヶ原は、僕が死んだら神原を殺すとまで、悪魔の目の前で、宣誓した。知らなかったでは済まされない。レイニー・デヴィルにとって、状況はもう完全に、決定してしまったのだ。

何况战场原刚才在我的面前,还宣誓说要是我死掉她就会杀死神原。雨魔想当作没听到也没用,对他来说,这个状况已经完全将死他了。

見透かした真似を……。

这种看穿一切的手法……

悪魔なんかよりもずっと、見透かした真似を。

比恶魔还要更厉害。

忍野、お前は……お前は本当に、僕なんか比べ物にならないくらい、とんでもなく、酷くて悪い人だよな──!

忍野,你……你真的是我远比不上、了不得的残酷恶人!

「神原、久し振り。元気そうで何よりね」

「神原,好久不见。你看起来很有精神,真是太好了。」

戦場ヶ原は言った。

战场原说。

そして仰向けでずるずると後ずさる雨合羽を──いや、彼女の旧知である神原駿河を、戦場ヶ原は、自分の身体をゆっくりと覆いかぶせる形で、組み敷くようにする。

接着,战场原慢慢抱住仰倒在地、不停向后退缩的雨衣怪——不,是自己的旧友神原骏河,将她按倒。

これほどの悲惨な姿になりながら──

我变得这么凄惨——

とうとう、僕ができなかったことをする。

却还是做不到的事情,战场原做到了。

僕には、絶対、できないことを。

这是我绝对做不到的。

けだものの左腕と。人の右腕を、あやすように握り締める。

接着,她用自己人类的右手,如哄小孩般握住野兽的左手。

ホッチキスを──

订书机——

戦場ヶ原は、もう持っていない。

战场原已经没带在身上了。

「……戦場ヶ原先輩」

「……战场原学姐。」

フードの内側から、ぼそりと。

雨帽内侧传来低语。

響くような、訴えるような声。

一个清脆、有如在倾诉般的声音。

しかし、フードの内側は、もう、深い洞などではない。泣きそうな顔などではない。泣きそうじゃなくて──泣いている。はっきりと僕の眼には、涙目で泣き顔で泣き笑いの、一人の女の子が映っている。

雨帽内侧,已经不是深不见底的窟窿。也不是含泪欲哭的表情。不是含泪欲哭,而是一个已经在哭泣的脸庞。一个泪眼汪汪、破涕为笑的女孩面容,清楚地出现在我的眼前。

私は、と、しゃくりあげながら。

「我——」女孩抽泣着说。

彼女は、彼女の想いを口にする。

她终于把自己的思慕化为言语。

「私は、戦場ヶ原先輩が、好きだ」

「我喜欢战场原学姐。」

彼女は、彼女の願いを口にする。

她终于把自己的愿望说了出口。

「そう。私はそれほど好きじゃないわ」

「是吗,不过我没有那么喜欢你。」

いつも通りの口調で、

战场原用平常的口吻,

直截的に、思ったまま。

直截了当,毫不修饰。

戦場ヶ原は平坦にそう言った。

语气平稳地说。

「それでも、そばにいてくれるのかしら」

「就算这样,你还愿意待在我身边吗?」

いっぱい待たせて、ごめんなさいね。

抱歉,让你久等了。

とても平坦に、そう言った。

战场原用十分平稳的语气说。

……愚かしい。

……太蠢了。

愚かしいこと、この上ない。

没有比这还要更蠢的事情了。

全く──かませ犬82もいいところだった。

我要当配角也要有个限度吧。

我ながら、そしていつもながら、あつらえたような三枚目を演じたものである。見事なくらい、何の役にも立ってない。

我每次扮演的都是这种有如为我量身打造的丑角。整个就是没帮上忙。

ごめんなさいが言える、素直な子。

能够虚心道歉的率直孩子。

戦場ヶ原ひたぎが、どれだけ強欲な女なのかということくらい、僕はとっくに知っていたはずなのに。戦場ヶ原ひたぎが、どれだけ諦めの悪い女なのかということくらい、僕はとっくに知っていたはずなのに。

我应该早就知道,战场原黑仪是多么贪婪的女人。也早就知道她是一个不会轻易死心的女人。

それが本当に大事なものだったなら。

如果那真的是重要的东西。

戦場ヶ原が、諦めるわけがないのに。

战场原是不可能放弃的。

大きなお世話、余計なお節介。

多管闲事、鸡婆。

ありがた迷惑。

帮倒忙。

しかし、まあ……それでも、なんというか、全くもってどいつもこいつも、本当に、ひねくれてるよなあ──

可是,该怎么说呢……这些家伙真的很爱闹别扭啊。

実際、裏表のある奴ばかりだ。

其实她们都是有表里的人。

表も裏も、メビウスの帯のように、表裏一体。

不论表里,都是一体的。就像梅比斯环一样。

ならば解釈は愛の力でも、別にいいや。

既然这样用爱的力量来解释,也没关系吧。

人から忘れられるっていうのは、結構凹むから。

因为被人遗忘,真的会让人很沮丧。

僕はそんなことを考えながら、とりあえず、腹に開けられた大きな穴がふさがるまでの間、目の前で展開される百合的な情景を、野暮な突っ込みを一つも入れることなく、ただただ、見守ることにした。ここでもしも僕が忍野だったなら、似合いもしない癖にニヒルを気取って、火のついていない煙草でもくわえ、二人に向けて、何かいいことがあったのかどうかとでも訊く場面なのだろうけれど、生憎僕は、未成年だった。

我一边思考,决定在肚子上的大洞愈合之前,暂时停止不识趣的吐槽,安静欣赏在眼前展开的百合情景。如果我是忍野的话,在这边我应该故意摆酷(虽然这不适合我),叼一根没点火的香烟,开口问她们是不是发生了什么好事啦之类的,但很不巧,我未成年。

009#

後日談というか、今回のオチ。

以下是后日谈……应该说是本次故事的收尾。

翌日、いつものように二人の妹、火憐と月火に叩き起こされ、寝ぼけまなこをこすりながらも約束通り、日曜日をまるまる使っての勉強会のために、今日こそはその手料理を食べさせてもらえるんじゃないかとほのかな希望を抱きつつ、意気揚々として戦場ヶ原の家に向かおうと、今や僕の持つ唯一のマシンとなってしまった通学用の自転車に跨り、門扉を開けて家から出たところで、手持ち無沙汰っぽく電柱の前で、何故か柔軟じゅうなん体操をしている少女に、出会うことになった。私服だったが、短めのプリーツ・スカートと、そこからはみ出したスパッツという組み合わせは、制服姿のときに受ける印象とそんなに変わらない感じ──直江津高校のスター、後輩の神原駿河だった。

隔天,礼拜日,我和平常一样被两个妹妹;火怜和月火叫醒,揉着睡意朦胧的眼皮,照约定出门往战场原的家出发。这一整天都要在她家开读书会,或许可以吃到她亲手做的料理。我抱着微薄的期望,跨上我目前仅存的交通工具——上学用的脚踏车,打开门骑出家里后,我碰到一位少女。少女站在电线杆前,似乎闲得发慌,不知为何在做柔软体操。她虽然穿便服,不过还是穿着百褶短裙,配上露出裙襬的运动紧身裤,与她穿制服的印象没什么差别。这位少女就是直江津高中的明星,我的学妹:神原骏河。

「おはよう、阿良々木先輩」

「早啊,阿良良木学长。」

「……おはようございます、神原さん」

「……早安您好,神原同学。」

「ん。ご丁寧な挨拶、恐縮だ。阿良々木先輩はそういう礼儀礼節から、もう私などとは人間の質が違うみたいだな。怪我はもう大丈夫なのか?」

「嗯。这么有礼貌的问安方式,真让我觉得惶恐啊。阿良良木学长就是这么有礼貌,人品和我完全不一样。学长的伤势已经不要紧了吧?」

「ああ……今はむしろ日光がキツいくらいだけど、それも心配していたほどではないかな。ダメージの回復と、とんとんって感じか。で、どうして神原、僕の家、知ってるわけ?」

「是啊……今天反而是太阳光让我比较难受,不过还不到需要操心的程度。伤势也恢复得很顺利。话说回来,神原你怎么知道我家在哪?」

「嫌だなあ、阿良々木先輩、わかっている癖に。私に見せ場を作ってくれようというのかな? だって私は阿良々木先輩をストーキングしていたのだぞ。自宅の住所くらいは調査済みだ」

「学长你真讨厌,这不是明知故问吗?学长是故意要让我表现的吗?我之前可是一直在跟踪学长喔。家里地址这种程度,我早就已经调查好了。」

「…………」

快活に笑って言われても困惑する。

这种事情你用那么开朗的笑容说出口,我会很不知所措。

「で、何か用なのか?」

「那你找我有什么事?」

「うん、今朝戦場ヶ原先輩から電話があって、阿良々木先輩を迎えに行くように言われたのだ。あ、鞄を持たせてくれ」

「嗯,今天早上战场原学姐打电话给我,要我来接学长过去。啊!请让我帮学长拿书包。」

言うが早いか、自転車の前カゴから、僕のリュックサックをひょいと取り上げて、それを左手に抱える神原。にこにことしたあどけない笑顔で、「その自転車のチェーンにも油を注しておいたぞ。他にも何か用事があったら、遠慮せずに言って欲しい」と、僕を見る。

话一说完,神原马上拿起我放在脚踏车菜篮里的背包,用左手抱住。随后脸上带着天真无邪的微笑,看着我说:「我已经先帮学长把脚踏车链上好油啰。如果还有什么事情要做的话,请学长不用客气尽管吩咐。」

友達を通り過ぎてパシリになっていた。

她越过朋友这层关系,变成了我的跑腿小妹。

学校のスターを従え引き具す83つもりは僕には毛頭なかったけれど、しかし、あの病的なまでに嫉妬深い戦場ヶ原が、神原にはこんな役割を任せているというところから、神原と戦場ヶ原との修復された関係を、再結成されたヴァルハラコンビの間柄を読み取ろうとするのは、果たして僕の穿ち過ぎだろうか。きっと、穿ち過ぎだろうけれど。

我压根没想过要带着校内明星在外到处走,不过那位嫉妒心强到几近病态的战场原,居然会让神原担任这种角色,可见神原和战场原两人已经重修旧好,圣殿组合的关系再度成立——这么想是我想太多吗?一定是我想太多吧。

「出発前にマッサージなどいかがかな。そうは言ってもやはり阿良々木先輩もお疲れだろう。結構上手なのだぞ」

「出发前我帮学长按摩一下如何?学长的伤虽然不要紧,不过应该很疲惫吧。我的按摩技巧很厉害喔。」

「……しかしお前、部活はいいのかよ。日曜日だって練習はあるはずだろう? ほら、そろそろ試験休みなんだから、気合入れてかないと」

「……可是你不用参加社团吗。礼拜天应该有练习吧?我们差不多要放读书假了,在那之前要努力练习才对吧。」

「いや、バスケットボールは、もうできないのだ」

「那个,我已经不能打篮球了。」

「え?」

「咦?」

「少し早いが、引退だ」

「现在虽然有一点早,不过我引退了。」

神原は僕のリュックサックを持ったまま、左手を僕の前に示した。彼女のその左手は──肘の辺りまで、真っ白い包帯が、ぐるぐるに巻かれていた。その長さやその形が、若干不自然であることが、外側からでも、わかる。

神原左手拿着我的背包,伸出来对我示意。她的左手到手肘附近,包着一层层洁白的绷带。从外侧也看得出来,那只左手的长度和形状稍微有些不自然。

「全てが中途半端だったからな。悪魔は去ったが、結局、腕は元には戻らなかったのだ。いくらなんでも、この腕でバスケットボールを続けるわけにはいかないからな。でもまあ、これはこれでパワフルで、結構使い勝手はいいみたいだぞ」

「因为所有事情都实现一半的关系。恶魔虽然离开了,可是我的手却没有恢复。不管怎么说,我手变成这样,没办法继续打篮球了。不过啊,我这只手很有力,用起来还挺方便的喔。」

「……僕の鞄を今すぐ返せ」

「……你现在马上把背包还给我。」

なんというか。

该怎么说呢。

半分とはいえ、願いが叶ったのだ。

就算只有一半,她的愿望还是实现了。

それくらい、当然の代償のようだった。

这点程度的代价,是理所当然的吧。

Footnotes#

  1. 助番:[名]女番長

  2. うっかり八兵衛:日本古装剧《水户黄门》里的角色。冒失鬼来自于他的口头禅:「我太冒失了!」

  3. 末頼もしい:[形]将来が期待される

  4. 揚げ足を取ろう:言葉じりを捕える

  5. 洒落こむ:[動マ五(四)]念入りにおめかしをする

  6. お茶の子さいさい:物事が容易にできること

  7. 乳繰り合う:[動ワ五(ハ四)]男女がしのびあって情を交わし合う

  8. 出るところに出て:公の場に訴え出てどちらが正しいかを決定してもらう

  9. 相身互い:[名]同じ境遇にある者どうしが同情し、助け合うこと

  10. やたらめったら:「やたら」を強調した言い方。節度なくめちゃくちゃであるさま

  11. 走り幅跳び:[名]助走して片足で踏切り、できるだけ遠くに跳んで、踏板から着地までの距離を競うもの

  12. ずばずば:[副]思ったことを無遠慮にはばかりなく言うさま、核心に触れるようなことを容赦なく言うさまなどを表わす語

  13. ずけずけ:[副]遠慮なく露骨に、または無愛想に、強くものを言うさまを表わす語

  14. 即する:[動サ]ぴったり適合する

  15. 当意即妙:[名・形動]すばやくその場面に適応して機転をきかすこと

  16. フィリップ・マーロウ (Philip Marlowe): 雷蒙·钱德勒笔下打死不退的冷淡派侦探

  17. 肖る:[動ラ五(四)] 影響を受けて同様の状態になる

  18. 弘法:日本佛教真言宗创始人弘法大师

  19. 吝か:[副]…する努力を惜しまない。喜んで…する

  20. 手柄顔:[名]手柄を自慢する顔つき

  21. 鬼のいぬ間に洗濯:怖い人や気兼ねする人のいない間に、思う存分くつろぐこと

  22. 新機軸:[名]それまでのものとは違った、新しい工夫ややり方

  23. 謦咳:[名]目上の人のお言葉

  24. 鷹揚:[形動]小さなことにこだわらずゆったりとしているさま

  25. サウスポー (southpaw):[名]野球やボクシングなどスポーツ競技の左利き選手や、楽器などの左利き演奏者のこと

  26. 目論見:[名]計画すること

  27. 怖めず臆せず:[連]気後れしないで。恐れないで

  28. 山を張る: 万に一つのしあわせをねらって事をする

  29. 腰撓め:[形動]大ざっぱな見込みで事を行うこと

  30. まざまざ:[副]まるで目の前にあるかのようにはっきりとしているさま

  31. 鰾膠も無い: 愛想がない

  32. 元の鞘に収まる:いったん絶交または離縁した者が、再びもとの関係に戻る

  33. しれっと:[副](スル) 平然としているさま

  34. 端数:[名]数字をちょうど切れのよい位で切ったさいの、余りの分

  35. 煙たがる:[動ラ五(四)]窮屈に感じたり、近づきがたく思ったりする気持ちを態度や表情に表す

  36. オブラート ([独] Oblate):[名]比喩的に、刺激などをやわらげるためのもの

  37. 大田南畝的狂歌

  38. 業腹:[名・形動]非常に腹が立つこと

  39. 口幅ったい:[形]言うことが身の程を知らず、生意気である

  40. カタパルト (catapult):[名]圧搾空気や火薬などの力で、艦船などの甲板から飛行機を発進させる装置

  41. 鹿威し:[名]一方を削った竹筒に懸樋などで水を引き入れ、満水になると、その重みで支点の片側が下がり、水を排出する

  42. つくねん:[副]何もすることがなく、ひとりでぼんやりしているさま

  43. 横着:[名・形動]すべきことを故意に怠けること

  44. 奥床しい:[形]深みと品位があって、心がひかれる

  45. マペット (muppet):[名]中に手や腕を入れて操る人形

  46. 又候:[副]同じようなことがもう一度繰り返されるさま

  47. 我武者羅:[名・形動]後先を考えないで強引に事をなすこと。また、そのさま

  48. 由緒:[名]物事の起こり。また、今に至るまでのいきさつ

  49. いわくつき:[名]何かよくないいきさつやこみいった事情のあること

  50. PHS (Personal Handy-phone System): 一种基于低功率无线通信技术的便携电话系统,最早于1995年7月在日本投入公共服务

  51. テクノクラート (technocrat):[名]技術者や科学者出身の、高度の行政・管理能力を有する専門家;

  52. ネコ: 攻受的另一种称呼方式,TACHI (攻) 和 NEKO (受)

  53. おませ:[名・形動]年齢のわりに大人びていること

  54. 袖すり合うも他生の縁: 佛教谚语,擦肩之缘,亦是宿业

  55. ポン・デ・リング (pon de ring): 蜜糖波堤,一种日式甜甜圈

  56. 駿河問い: 江户初期的酷刑之一,将犯人手脚反绑在背后,从天花板吊起,背上再放上沉重的石块,并让身体不停旋转

  57. 水掛け論:[名]両者が互いに自説にこだわって、いつまでも争うこと

  58. シュトゥルム・ウント・ドラング (Sturm und Drang):狂飙突进运动,1760 年代晚期到 1780 年代早期在德国文学和音乐创作领域的变革

  59. クリストファー・マーロウ (Christopher Marlowe, 1564-1593):英国诗人,剧作家,代表作《浮士德博士的悲剧》(The Tragical History of Doctor Faustus)

  60. 間怠っこしい:[形](スル) 動作がにぶく感じられて、じれったい

  61. 遠江:日本古代的地名,约在现今的静冈县一带

  62. 半可通:[名・形動]いいかげんな知識しかないのに通人ぶること

  63. 一筋縄:[名]普通のやり方

  64. 軋轢:[名]仲が悪くなること

  65. D‐ポップ:一种六入盒装甜甜圈

  66. くんずほぐれつ:[連]取っ組み合ったり離れたりして、激しく争うさま

  67. 三枚目:[名]歌舞伎用語。俳優の役柄のうち,滑稽な役,またはこれを専門とする俳優のこと

  68. おいそれと:[副]依頼、必要に応じて、簡単に事をするさまを表わす語

  69. クーリングオフ:[名]割賦販売や訪問販売などで,購入契約した消費者が,8日以内なら無条件で契約をキャンセルできるという制度のこと

  70. ダブルバインド:[名]矛盾したメッセージを同時に受け取ることで相手が混乱する現象を指します

  71. 底の抜けた柄杓:用来防止船幽灵的道具。据说船幽灵出现时会喊「给我勺子」,要是真给他,他就会用勺子把海水倒入船内使其沉船,因此渔夫们都会在船上准备一个无底的勺子来应对

  72. ネック (bottleneckの略):[名]物事の進行を阻むもの

  73. 差し引く:[動カ五(四)]ある事柄の過不足などを判断する

  74. 虎の子:[名]大切にして手放さないもの

  75. 糠雨:[名]霧のような細かい雨

  76. 組み敷く:[動カ五(四)]相手と取り組んで、自分の下に押えつける

  77. セパタクロー (Sepak takraw):15世纪源自于东南亚的项目,游戏方式类似排球,但球员不能用手来击球,而是运用头、胸、脚,降球顶过网

  78. 前のめり:[名]前方に倒れそうに傾くこと

  79. ムエタイ (Muay Thai):泰拳

  80. 等活地獄:八大地狱中的第一个。犯下杀生罪的人会被打入这里

  81. フェイント (feint):[名]スポーツで、相手を惑わせる戦術

  82. 嚙ませ犬:[名]闘犬で、訓練のために若い犬がかみつく相手となる犬

  83. 引き具す:[動サ]いっしょに連れて行く

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