化物語(中): 第四話 なでこスネイク
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desc: 沦为吸血鬼体质的高中生阿良良木历。他所邂逅的、向猴子许下愿望的少女,以及被毒蛇缠附缠身的少女,究竟是……?
001
千石撫子は妹の同級生だった。僕には二人の妹がいて、千石撫子はその内、下の方の妹の友達だった。今現在の酷い有様と違って、小学生の頃の僕は、それなりに普通に友達のいる子供だったのだが、それでもなんと言えばいいのだろう、みんなと遊ぶのは好きだが誰かと遊ぶのは好きではないという感じで、休み時間にクラスの連中と遊ぶことはあっても、放課後にクラスの連中と遊ぶことは、滅多になかった。嫌な子供だ。語るにつけ思い出すにつけ、嫌な子供だった。語りたくも思い出したくもない。まあ、三つ子の魂百まで*というか、その逆と言うか、ただ単に、昔から僕はそういう奴だったと言うだけの話だ。そんなわけで、放課後は、特に習い事をしていたわけでもないのに、さっさと家に帰ることを常とする僕だったが、その帰った家に遊びに来ていたのが、千石撫子だったのである。今でこそ二人べったり、いつもいつでもいついつでもそばにいる、兄としては心配以上に気持ちの悪くなってしまうくらい仲のいい二人の妹ではあるが、小学生の頃は別々に行動することも多く、上の妹はもっぱらアウトドア派、下の妹はインドア派で、三日に一日は、下の妹は家に学校の友達を連れてきていた。千石撫子が特に妹と仲良しだったというわけではなく、たくさんいた妹の友達の中の一人だった感じなのだろう。『なのだろう』と、ここで語尾がいささか不確かになってしまうのは、正直言って僕がその頃のことをよく憶えていないからなのだが、そうは言っても、いざ思い出してみれば妹が家に連れてきた友達の中では、まだ千石撫子は印象に残っている方だ。それは何故なら、放課後、友達と遊ぶこともなく家に帰っていた僕は、妹の遊びに付き合わされることが多々あって(当時、二人の妹と僕は同室だった。僕が両親から自分ひとりの部屋が与えられたのは中学生になってからだ)、それは大抵の場合、人数合わせ、ボードゲームなどをするときの賑やかしということだったのだけれど、妹が千石撫子と遊ぶとき、僕にお呼びがかかる率が異様に高かったからである。要は、友達が多い妹が(これは今も変わらず、妹二人に共通して言えることなのだが、あの二人は人の中心に立つのが非常にうまい。兄としては非常に羨ましい限りである)、家に連れてくる同級生としては、千石撫子は珍しく、一人で行動するタイプの少女だったということだ。はっきり言って妹の友達なんて誰でも同じに見えてしまうので、必然、一人で、誰ともまぎれずにいた彼女の名前くらいは、僕の記憶にも残っていたというわけなのである。
千石抚子曾经是我妹妹的同学。我有两个妹妹,而千石抚子则是小妹的朋友。小学时候的我和现在这副没出息的德性不同,是一个还算有点朋友的普通小孩,不过该怎么说呢,那时候的我很喜欢和大家玩在一块;但却不喜欢和特定的人混在一块,下课时间会和班上的人打成一片,但放学后却鲜少跟大家一起玩耍。真是个令人讨厌的小孩。无论是说起来还是回想起来,都是一个讨人厌的小孩。我不想多谈,也不愿去回想。哎呀,这就叫三岁定八十,还是说恰好相反呢,总之我只是单纯地想告诉各位:自己从以前开始就是那种人罢了。因此,小时候我没特别在学什么才艺,但还是常常一放学就马上回家,而常来我们家玩的人就是千石抚子。现在我那两个妹妹总是孟不离焦、焦不离孟,三不五时腻在一起,感情好到身为哥哥的我与其说是担心,倒不如说是觉得恶心的境界;但她们在小学时,比较常分开行动,我的大妹是彻头彻尾的室外派;小妹则是室内派,每三天就会带学校的朋友回家里玩。千石抚子也不是和小妹特别要好,感觉像是小妹的众多朋友之一吧。这里用「吧」让句尾变成了不确定语气,老实说这是因为我不太记得那时候的事情;话虽如此,若突然要我回想的话,小妹带回家里的朋友当中,我对千石抚子还算有印象。这是因为,放学后没跟朋友去玩、总是直接回家的我,常被迫要去参与妹妹她们的游戏(当时两个妹妹和我同寝室。我升上国中之后,双亲才让我单独一个房间),大致上都是叫我去凑人数,玩桌上游戏喧闹一番,然而小妹和千石抚子一同玩乐时,出声叫我的机率却异常之高。简单来说,我两个妹妹的友人众多(这点至今不变,可说是两人的共通点,她们很擅长站在人群的中心。这点让我这作哥哥的羡慕至极),而两人带回家的同学当中,千石抚子是单独行动型的少女,这点可说是十分稀奇。说明白一点,在我眼中妹妹的朋友看起来都是一个样,但我会记得她的名字却是很必然的,因为她总是单独来访,没有和别人三五成群地跑来。
だが、名前くらいだ。
但是,也只有名字而已。
やはりよく憶えていない。
其他部分我还是记不太清楚。
だからこれも語尾が曖昧になってしまって申し訳ない限りなのだが、千石撫子は、内気で、言葉少なで、俯いていることが多い子供──だったと思う。思うのだが、まあ、しかし、わからない。ひょっとしたらそれは、妹の他の友達の特徴だったかもしれない。あるいは当時の僕の友達の特徴だったかもしれない。そもそも、小学生の頃の僕は、妹が家に友達を連れてくることを非常に迷惑に、鬱陶しく思っていたのだ。ましてそれにつき合わされていた相手の、印象がよいわけがないのである。今にして思えば、友達の兄貴と遊ばねばならなかった、
因此我下面这句话的语尾也会变得暧昧不清,实在是抱歉之至——在我印象中,千石抚子是一位内向不多话、总是低着头的少女……的样子。但也仅只于印象,实际如何我并不清楚。那可能是妹妹其他朋友们的特征也说不定,也或许是我当时某位朋友的特征吧。追根究柢来说,我在小学的时候,觉得妹妹带朋友回家是一件让我非常困扰及厌恶的事情。更何况我是被迫去当玩伴,对她们当然不可能有好印象。现在回想起来,妹妹那些朋友反而觉得比较困扰吧,因为她们必须要和朋友的哥哥一起玩。
妹の友達たちの方がいい迷惑だったのではないかと思うが、いずれにせよあくまでも昔の話で、あくまでも小学生の感性だと、そう理解して欲しい。実際、僕が中学生になってからは、下の妹も、家に友達を連れてくることは少なくなり、あったとしても、僕を遊びに誘うことはなくなった。部屋が別になったからというのもあるだろうが、もっと別の理由もあるだろう。そんなものだ。大体、妹は二人とも、中学は私立に行ったから、人間関係のほとんどは、彼女達の小学校卒業時にリセットされたはずである。千石撫子が妹の同級生だったのだったのは小学生の頃の話で、今はもう、そうではない。別々の学校だ。だから僕が千石撫子に最後に会ったのは、どんな贔屓目に見積もっても二年以上前、そして恐らくは六年以上前──ということになる。
不管怎么说那些事情都已经过去,只不过是当时我身为小学生的直观罢了,希望各位能够理解。实际上,我升上国中以后,小妹也很少带朋友回家里玩,就算有也不会找我一块同乐。我们不同房或许也有关系,但应该有更多其他的理由吧。就是这样。况且,我两个妹妹国中都读私立学校,人际关系也几乎在她们小学毕业时就重新洗牌了。千石抚子是小妹的同学这点,是小学时候的事情,现在早就已经不是了。她们现在不同校。因此我最后一次见到千石抚子,就算我再怎么保守估计至少也都是两年前,而实际上恐怕已经是六年前的事情了吧。
六年。
六年,
人間が変わってしまうには十分な時間だ。
这段时间已经足够改变一个人。
少なくとも、僕は自分のことを、すっかり変わってしまったと認識している。昔からそういう奴だったと言っても、やはり今と昔とでは違うのだ。小学校の卒業アルバムなど、今の僕は痛々しくて、とても見ていられない。小学生の感性がどうのこうのとつまらないことも言ったが、しかし、考えてみれば、僕は今の自分があの頃の自分よりも優れ、勝っているとはとても思えない。思い出は美化されるものだとは言っても、そう、痛々しくてとても見ていられないのは小学生の頃の僕ではなくて、小学生の頃の僕から見る、今の僕ではないのだろうか。いや、恥ずかしい限りだが、たとえば今このとき、小学生の頃の自分と道でばったり出会っても、お互いに自分の正面に立っているそれが自分自身だと、気付くことはないだろう。
至少我认为自己已经完全变了个样。就算我从以前就是这副德性,但现在和以前还是有段差距。小学的毕业纪念册让现在的我感到十分痛心,目不忍睹。我刚才还说了小学生的感性这类无聊话语;但仔细想想,我不觉得现在的自己比以前优异,或是胜过往日的自己。人们说回忆总是会被美化——不过,没错,让人十分痛心、无法久观的不是小学时代的我;而是小学时代的我看到现在的我这样,才会如此认为吧。不,假如此时此刻,我在路上巧遇小学时代的我,我俩可能都不会发现站在眼前的这个人就是自己吧。
それが悪いことなのかどうか分からない。
这是好是坏我不知道。
過去の自分に今の自分を誇れないこと。
我无法向过去的自己夸耀现在。
しかしそんなことだってある。
但是,上述的情况还是偶尔会有。
誰だってそうかもしれない。
不管是谁都一样也说不定。
だから僕は、千石撫子と再会したとき、最初、それが誰なのか、わからなかった──彼女のことを思い出すまでに、少し時間が掛かってしまった。もしも僕がすぐに、そうでなくとももっと早く、彼女のことに気付いていれば──蛇に絡まれた彼女に気付いていれば、この物語はひょっとするとあんな結末には辿り着かなかったのではないかと思うと、非常にやるせないのだが、そんな後悔は彼女に対しても怪異に対しても、きっと何の意味もない。今回の話をいきなり結末から言ってしまえば、どうやら千石撫子は、僕にとって、うろ覚えだった妹の友達から、決して忘れることのできないたった一人になってしまったと、そういうことらしい。
因此,我再次遇见千石抚子时,刚开始也不知道她是谁。我稍微花了一点时间,才想起她的事情。要是我能马上,不是马上也好,只要能早一步注意到那个人是她——注意到她被蛇缠上的话,这个故事或许就不会迎接那样的结局吧,我一想到这点就会觉得悲愁难解,但这股后悔对她抑或对怪异来说,肯定毫无意义。这次的故事,倘若要我直接从结局开始说起的话,千石抚子这个人对我而言,已经从印象模糊的妹妹朋友,升格成一个我这辈子都无法忘记的人,似乎就是这样。
002
「阿良々木先輩、待たせてしまって申し訳ない」
「阿良良木学长,抱歉让你久等了。」
六月十一日、日曜日。
六月十一日,礼拜天。
さすが体育会系というべきなのかどうなのか、午前十時五十五分、待ち合わせ時間のきっちり五分前に、待ち合わせ場所の、僕らの通う直江津高校正門前に、僕の一つ下の後輩、元バスケットボール部のエース、神原駿河は勢いよく駆けてきて、勢い余ってジャンプ一番、僕の頭の上を軽く跳び越してから、着地し、振り向いて、右手を胸の前に、爽やかな笑顔と共にそう言った。……僕も、高校三年生としては、そりゃそんなに背の高い方ではないと自覚しているのだけれど、自分よりもちっちゃい女の子に正面飛びで跳び越えられるような身長ではないはずだと思っていたのだが、その認識はどうやらここで改めなければならないようだった。
应该说真不愧是体育系吧,上午十点五十五分,比约定时间早了五分钟,在约好碰头的地方——我俩就读的直江津高中正门前,小我一届的学妹、前篮球社王牌‧神原骏河朝我狂奔而来,结果因为速度过猛而蹬脚一跃,轻松从我头上越过,随后她落地转身,将右手放在胸前,露出爽朗的笑容开口说道……以一个高中三年级生来说,我的身高虽然不算高,但应该也不是那种会被比自己还要娇小的女性,从正面飞越头顶的身高才对,看来这个认知我有必要重新修正的样子。
「いや、僕も今来たとこだよ。別に待ってない」
「不会,我也才刚到。也没等多久。」
「なんと……私の精神に余計な負荷をかけまいと、そんなみえみえの気遣いをされるとは、やはり阿良々木先輩は、気立てのよい方だな。生まれ持った度量が違う。三歩下がって見上げない限り、私ごときには阿良々木先輩のその全貌がつかめそうもない。会って数秒でこうも私の心を打つとは、阿良々木先輩の器の大きさには本当に驚かされるばかりだ。一生分の尊敬を、私は阿良々木先輩のためだけに、どうやら費やさねばならないようだな。なんてことだろう、全く、お恨み申し上げるぞ」
「没想到……阿良良木学长这么明显地在顾虑我,怕对我的心情造成多余的负担,学长果真是一个性情高尚的人物啊。与生俱来的度量就是和其他人不一样。如果不退三步抬头仰望的话,像我这种人根本无法看清楚阿良良木学长的全貌。我们才见面几秒钟,我的心就已经如此被打动,学长的器量之大,真是叫我惊讶万分啊。看来我光是为了阿良良木学长,就必须用光我这辈子所有的尊敬啊。这太惊人了,实在是让我感到悔恨啊。」
「………………」
相変わらずだな、こいつは。
这家伙还是老样子。
そしてみえみえの気遣いって言うな。
还有,别说什么我很明显地在顾虑你好吗?
さりげない優しさには気付かない振り、だろ。
这边你应该装作若无其事,假装没注意到我的温柔才对吧。
「今来たとこだってのは本当だよ。それに、たとえそうじゃなかったとしても、お前もまた待ち合わせの時間よりも先に来たんだから、僕に謝る必要なんかない」
「我是真的才刚到。而且,就算不是这样,你也比约定时间还要早到,所以没必要向我道歉啦。」
「いや、それは聞けんな。阿良々木先輩がなんと言おうと、阿良々木先輩より先にこの場にいられなかったというだけで、私が謝る理由としては十分だ。目上の人物の時間を無駄にするというのは、許されない罪悪だと私は思っている」
「不行,这点我不能遵从。不管阿良良木学长怎么说,没能比学长先到,就已经构成我道歉的理由了。我觉得浪费长辈的时间,是一个无法被原谅的罪恶。」
「別に目上じゃないだろ」
「我不算长辈吧?」
「年上の先輩なのだから目上であっている」
「你是大我一岁的学长,所以是长辈。」
「あってるけどさ……」
「是这样说没错啦……」
それは、単に歳の問題だけなんだよなあ。
那单纯只是年龄上的问题。
あるいは身長とか(物理的に目上)。
或者是身高上的(物理性质上的长辈)。
でもそれも軽く飛び越えられるくらいのものだし。
可是,那身高也是她轻松一跳就可以越过的高度。
神原駿河──直江津高校二年生。
神原骏河,直江津高中二年级生。
つい先月まで、バスケットボール部のエースとして、学校一の有名人、学校一のスターとして名を馳せていた人物である。私立進学校の弱小運動部を入部一年目で全国区にまで導いたとあっては、本人の否応にかかわらず、そうならざるを得ないだろう。中途半端な落ちこぼれ三年生であるこの僕など、本来ならば口も利けない、どころか、それこそまさに影も踏めないような存在だったはずの、恐るべき下級生だ。ついこの間、左腕に怪我をしたという理由で、キャプテンの座を後輩に譲り、バスケットボール部を早期引退──そのニュースがどれだけ衝撃的に学校中に響いたか、それは記憶に新しい。古びることさえ、ないだろう。
到上个月为止,她还是篮球社的王牌选手,全校第一的名人和明星,是一位众所皆知的人物。她加入私立升学高中的弱小运动社团一年,就带领队伍进军全国大赛,这不管她本人愿不愿意,都会变成校内名人和明星吧。我这种高不成、低不就的吊车尾三年级生,照理是不可能和她说到话,对我而言她应该是一个高不可攀的可畏学妹。前阵子,她以左手受伤为由,将队长的位子让给了学妹,提前退出了篮球社。这项消息不知在校内造成了多大的震撼,我至今记忆犹新。恐怕这记忆永远不会凋零吧。
神原の左腕には。
神原的左手,
今も、包帯がぐるぐるに巻かれている。
现在依旧缠着绷带。
「そう」
「没错。」
と、神原は静かに言う。
神原平静地说。
「私はこの通り、引退した身だ。バスケットボールしか取り柄のなかった私が、学校に対して貢献できることなど何もない。だから阿良々木先輩も、私をそのように扱ってもらいたい」
「我现在已经退出篮球社了。只有篮球这项优点的我,已经无法对学校做出任何的贡献。所以,我希望学长能够用平常的方式对待我。」
「扱うってな……お前ってなんか、何事に対しても自信ありげな癖に、微妙に自己評価低いところがあるよな。そういうこと言うもんじゃないよ。お前がバスケットボール部に対してやってきたことは、ちょっと早めに引退したくらいで、ぱっと消えてなくなることでもないだろうに」
「对待你……你对任何事情都很有自信,有时候却有点看轻自己啊。别说那种话啦。你以前对篮球社所做的贡献,不会因为你提早退出就灰飞烟灭啊。」
早期引退したことを気に病んでいる──というわけでもないのだろうが、まあ実際、あんなことがあって、そのままの自分でいろという方が、無茶な話か。けれど、僕としては、やっぱり神原には、そんな、自分を卑下するようなことを、言って欲しくはなかった。
提早退出的事情让她很在意——我想不是这样吧。老实说,发生了那种事情,要她维持原本的自己反而没有道理吧。但是站在我的立场来看,我还是不希望神原把那种妄自菲薄的话语挂在嘴巴上。
「ありがとう、阿良々木先輩。心遣い、痛み入るばかりだ。その気持ちだけは受け取っておく」
「谢谢阿良良木学长。学长的挂心让我不胜惶恐。你的心意我就收下了。」
「言葉もきちんと受け取れ。じゃあ、まあ、行くか」
「我说的话你也要听进去。唉呀,那我们走吧。」
「うん」
「嗯。」
言って、神原は素早く僕の左側に回り込み、実にナチュラルな動きで、僕の空いていた左手に、自分の右手を繫いだ。『手を繫いだ』というよりは、『指を絡めた』という感じだった。五指がそれぞれに、もつれあっている。そしてそのまま、僕の腕に自分の身体をぎゅっと、まるで抱きつくかのように、隙間なく密着させてくる。身長差の問題で、丁度僕の肘辺りに神原の胸が来て、神経が集中したその敏感な部位に、マッシュポテトのような感触が伝わってくる。
神原说完快速绕到我的左侧,以相当自然的动作,用自己的右手牵了我空无一物的左手。与其说是「牵」,感觉不如说是「手指纠缠在一块」。她的五根手指和我十指相扣。随后她直接把自己的身体,宛如在抱东西一样,朝我的手腕紧贴而来。因为我俩身高的差距,神原的胸部刚好来到了我的手肘旁,一种类似马铃薯泥的触感,朝我那神经集中的敏感部位传递而来。
「いや、阿良々木先輩。それを言うならマシュマロのような感触だろう」
「不对,阿良良木学长。要比喻的话,应该是类似棉花糖的触感才对吧。」
「え!? 僕、今の馬鹿みたいなモノローグ、声に出していたのか!?」
「咦!我有把刚才那段像白痴一样的独白念出声来吗?」
「ああ、そうじゃないそうじゃない。安心してくれ、テレパシーで伝わってきただけだ」
「啊,没有、没有。学长请放心,你只是透过心电感应传了过来而已。」
「そっちの方がより問題じゃねえか! この辺りのご近所さん、全員に聞かれているってことになるぞ!」
「你这样说反而更有问题吧!这不就等于这附近的街坊邻居全都听到了!」
「ふふふ。まあ見せつけてやればいいではないか。私も最早、スキャンダルを気にする身ではなくなったわけだしな」
「呵呵呵!就炫耀给他们听有什么关系。反正我早就不怕会有流言蜚语了啊。」
「にこにこ笑顔で僕と付き合っている奴っぽいこと言ってんじゃねえよこの後輩! 僕が付き合っている相手はお前じゃなくて、お前の尊敬する先輩だろうが!」
「你这学妹,不要笑容满面地说得好像你在跟我交往一样!我正在交往的人不是你,是你尊敬的学姐吧!」
戦場ヶ原ひたぎ。
战场原黑仪。
僕のクラスメイト。
我同班同学。
にして、僕の彼女。
同时也是我的女朋友。
にして──神原駿河の、慕う先輩である。
也是……神原骏河仰慕的学姐。
学校一の有名人、学校一のスターと、今も昔も何の取り柄もない平凡な学生との間を繫いだのは、彼女、戦場ヶ原の存在である。神原と戦場ヶ原は中学生の頃から先輩後輩の間柄で、まあ途中、色々あり、色々あって、色々あったのだけれど、今現在も、神原戦場ヶ原のヴァルハラコンビとして、仲良くやっている。神原は『尊敬する先輩の付き合っている相手』として、僕を一時期、ストーキングしていたことがあるのだ。
校内第一的名人和明星,和我这个从古到今都毫无长处的平凡学生会扯上关系,就是因为她——战场原黑仪的存在。神原和战场原国中就是学姐学妹的关系,途中虽然出了一些状况,发生了一点事情,但现在神原和战场原依旧以圣殿组合的身份,维持着良好的关系。神原过去把我当作「尊敬的学姐所交往的对象」,有段时间还曾经跟踪过我。
「大体、お前は元々、スキャンダルなんて気にしてなかっただろうが。ええい、離れろ」
「而且你原本就不在乎什么谣言吧。喂!离我远一点。」
「嫌だ。デートのときは手を繫ぐものだと、ものの本には書いてあったぞ」
「我不要。书上有写到,约会的时候本来就是要手牵手。」
「デート!? 一回でも言ったか、そんなこと!?」
「约会?我什么时候说过要约会啊!」
「む?」
「呜?」
神原はとても意外そうに首を傾げる。
神原看似十分意外,歪头不解。
「そう言えば、言ってなかったかな。阿良々木先輩から誘いがあったというだけで舞い上がってしまい、よく話を聞いていなかったのだが」
「这么说的话,学长好像没说过耶。学长光是开口约我就让我心花怒放了,所以我没仔细听学长在说什么。」
「ああ……ずっと生返事だったもんな、お前……」
「是啊……你之后的回答一直都很含糊……」
「しかし、阿良々木先輩。それはさすがにどうかと思うぞ。私もそれなりに性に開放的な方ではあるし、できる限り阿良々木先輩の意に添いたいと考えるが、デートも抜きでいきなり行為に及ぼうというのは感心できない。阿良々木先輩の将来が心配だ」
「可是,阿良良木学长。我觉得这样不太妥当喔。我的性观念还算开放,也很想尽可能配合学长的意思,可是我们连个约会都没有就突然做那档事,实在让我无法苟同。这样我会担心学长你的将来。」
「行為には及ばないし心配にも及ばねえよ! 高校二年生が性に開放的とか言ってんじゃねえ!」
「我不会对你做那档事,你也没必要担心我的将来!一个高中二年级生,不要说什么自己性观念开放啦!」
「まあしかし、ことここに至れば仕方あるまい。気は進まないが、乗り乗りかかった船だ」
「唉呀,事到如今也没办法。虽然我很不愿意啦,可是现在都已经上了贼船了。」
「ノリノリなんじゃねえかよ!」
「我看你根本就是干劲十足!」
ふと、神原の格好を見る。
我不经意地看了看神原的穿著。
ジーンズにTシャツ、長袖のアウター。高級そうなスニーカー。日差しが強くなってきたということもあってか、頭には野球帽をかぶっていて、それがこのスポーツ少女にはやけに似合うが、しかしそれはまあいいとして。
牛仔裤和T恤,配上一件长袖外套。一双看起来很高档的帆布鞋。或许是因为最近阳光变强的关系,她头上还戴了一顶棒球帽,这身衣着和这位运动少女十分搭配,不过这些还算好——
「長袖長ズボンで来いって言ったのは、一応、守ってるみたいだが……」
「要你穿长袖长裤过来这一点,你似乎有遵守啦……」
しかし。
不过,
そのジーンズはお洒落にもあちこちが破れているものだったし、Tシャツは丈が短くて、神原のくびれたウエストが惜しげなく晒されていた。過激というか、なんというか……無論、日曜日にどんな格好をしようとも、それは個人個人の自由なのだけれど……。
她那件牛仔裤太过新潮,上头到处破了好几个洞;T恤的衣摆过短,将神原的蛮腰毫不吝啬地暴露在外。这不知道该算是尺度超过,还是算什么……当然,礼拜天要穿什么衣服,都是个人的自由啦……
「……本当に何も聞いていなかったんだな、お前」
「……你真的什么都没听进去呢。」
「何がだ」
「什么东西没听进去?」
「僕ら、これから山に行くんだけど」
「我们等一下要去山上。」
「山? 山で行為に及ぶのか」
「山上?要去山上做那档事吗?」
「及ばない」
「并不是。」
「ふむ、なかなか野性的で悪くないな。阿良々木先輩もなかなかどうして男らしい。私も乱暴にされるのは嫌いじゃないぞ」
「嗯,充满野性还不错嘛。阿良良木学长实在是一个正派的男子汉。要霸王硬上弓我也不排斥喔。」
「及ばねえっつってんだろ! 聞けよ!」
「就跟你说不会了!学长在说你有没有在听啊!」
長袖長ズボンで来いというのは、山中で、虫やら蛇やらに対する用心だって、ちゃんと説明したはずなんだけどな……。それなのに、そんな隙間だらけの服じゃ、あまり意味がないような……。
要她穿长袖长裤过来,是为了防范山中的蚊虫或蛇类,这点我应该已经仔细说明过了……然而,她穿这身「漏洞百出」的衣服来,实在没什么意义……
「まあよい。阿良々木先輩が行く場所であれば、私はどこにでもついていくだけだ。阿良々木先輩についてくるなと言われようともな。たとえ火の中水の中、木の中だって金の中だって土の中だって、お構いなしだ」
「算了,没关系。只要是阿良良木学长要去的地方,不管哪里我都会跟随学长的。就算学长不让我跟也一样。就算是去火中、水中、木中、金中或土中,我都不在乎。」
「金の中っていうのは、あんまり苦しくなさそうだけどな……」
「去『金中』那个,听起来好像不怎么痛苦的样子……」
むしろ楽しそうだ。
反而很爽。
しかし、昨日、神原の家に電話を掛けた段階でも、生返事というか、むしろそんなことばかり言って(『行き先など聞くまでもない。阿良々木先輩の向かう方向が、私にとっていつでも指針だ』とか)、僕の話を一向に聞こうとしなかったし……こいつの思い込みの激しさは、一種、感心さえしてしまうところがある。羽川とは違う種類の、思い込みの激しさだ。視界が狭いというか、真っ直ぐにしかものが見れないのかもしれない。
不过昨天,我打电话到神原家时,与其说她是回答含糊,倒不如说她是一直将那种话挂在嘴边(「要去哪里我无须过问。对我来说阿良良木学长要去的方向,永远都是我的指针」之类的),完全不打算听我说话……这家伙想法激进的程度,甚至有让我感到折服之处。她的激进和羽川是不同种类的。与其说她的视野狭窄,不如说她只看得见正前方的东西吧。
「とにかく、デートじゃないから」
「反正我们不是要去约会?」
「そうか、デートではないのか……私はてっきりそうだと思って、気合を入れてきたのだが」
「是喔,不是要约会吗……我以为我们肯定是要去约会,还鼓起了干劲的说。」
「気合?」
「干劲?」
「うん。何と言っても生まれて初めての、異性とのデートだからな」
「嗯。毕竟这是我出生到现在,第一次和异性约会嘛。」
「そうか、初めてのデートのつもりだったのか」
「这样啊,你以为这次会是你第一次约会吗。」
『異性との』はスルー。
「和异性」这三个字我直接无视。
突っ込みにくいから。
因为太难吐槽了。
「どのくらい気合を入れてきたかと言えば、これまでの人生十七年間、主義として決して持たないと堅く誓っていた携帯電話を、今日のために購入したほどだ」
「要说我多有干劲的话,我至今活了十七年都坚持个人主义,发誓绝对不带手机在身上,为了今天我还特地破戒去买了说。」
「…………」
……重っ!
……好沉重!
「万一、阿良々木先輩とはぐれてしまい、連絡が取れなくなっては最悪だからな。公衆電話の数もすっかり減ってしまったこの世の中、携帯電話はデートに必携のツールだろう」
「万一要是和阿良良木学长走散无法取得联络的话,那可就糟透了。公共电话大量减少的现代,手机是约会必备的工具吧。」
「ま、まあ……そうだな。は、はは、この辺りは田舎だから、公衆電話も結構、生き残ってるけどさ……」
「也、也对……你说得没错。哈、哈哈,不过这一带是乡下地方,所以公共电话还满多的啦……」
「更に言うと、四時起きでお弁当を作ってきた。阿良々木先輩の分と私の分、両方だ。待ち合わせが十一時だから、阿良々木先輩とお昼をご一緒することになるだろうと踏んだのだ」
「而且,我四点就起床做便当了。我准备了两份,阿良良木学长和我的。因为我们是约十一点,所以我想说会和学长一起吃中饭。」
言って神原は、包帯の左腕で持っていた、風呂敷包みを僕に示す。……うん、最初から気付いてはいたんだけれど、その縦に長い直方体の形は、明らかに重箱1かなんかなんだよな……。
神原说完,包着绷带的左手拿起一个包袱向我示意……嗯,刚开始我没注意到,不过那个高度加上长方体的形状,很明显是多层饭盒之类的东西…
更に重っ……。
我觉得更沉重了……
重箱だけに、重ねて重っ……!
因为多层饭盒,让我觉得更沉重了……!
昼時になることくらいは僕もわかっていたから、用事を済ませたら、先輩としてファーストフードくらいご馳走してやろうかと思っていたのだが、この後輩はそんな生易しい次元では物事を考えていなかった。
我也知道待会就要中午了,所以我原本打算办完事情后,以学长的身份请她到快餐餐厅之类的地方去吃顿饭的说,然而这位学妹思考的次元却不是那么地简单。
手作り弁当と来たか……。
居然来手制便当这一招。
予想外の攻めだ。
好一个让我意想不到的攻击。
「敬愛する阿良々木先輩とデートということだったから、楽しみで楽しみで、あまり眠れなかった上に早く眼が覚めてしまったからな、いい手遊びになったものだが」
「我原本以为可以和自己敬爱的阿良良木学长约会,心里期待得不得了,结果昨天晚上没睡好,然后一大早就醒来了,所以做便当刚好成了一个不错的消遣。」
「はあ……手遊びねえ。でも、それ、全部弁当なのか? 結構な量だな……言っとくけど、僕、そんなに食べられないぞ」
「嗄……消遣吗?不过那些全都是便当吗?量还满多的耶……先说好喔,我可吃不下那么多。」
「基本的には半分ずつだが、何、阿良々木先輩が食べられない分は私が食べればいい話だ。私は食べ物を粗末にする行為が嫌いだからな、その辺りはちゃんと計算して作ってある」
「基本上是我们一人一半,不用担心,学长吃不下的份,我来吃就可以了。我最不喜欢浪费食物了,所以我做这些份量是经过仔细计算的。」
「ふうん……」
「嗯——」
僕は丸出しの、神原のへその辺りを見る。
我看了神原裸露在外的肚脐附近。
体脂肪率十パーあるかないか、くらいか?
她的体脂肪大概才百分之十左右呢?
蜾蠃2少女って感じ。
感觉是一个纤细少女。
するががすがる。
骏河很纤细。
なんか回文っぽいな……。
总觉得念起来很像回文……
なってないけど。
虽然完全不是。
「お前って、神原、ひょっとして、いくら食べても太らないってタイプ?」
「神原,你该不会是那种吃不胖的人吧?」
「うーん。というか、むしろ必死になって食べないとガンガン瘦せていくタイプだな」
「嗯——应该说我是那种不拚命吃的话,就会一直变瘦的人吧。」
「そんなタイプがあるのか!?」
「有那种类型的人吗!?」
それって女子の間じゃ相当羨ましがられるだろう……というより、男子の僕でも羨ましいぞ、そんな体質!
那肯定会让女生们超羡慕的吧……应该说,那种体质就连我这个男生都很羡慕了!
「一体どうすればそんな体質になれるんだ?」
「要怎么做才能变成那种体质啊?」
「簡単だ。まず毎朝十キロダッシュを2セット」
「很简单。首先每天早上冲刺十公里,跑两趟。」
「わかったもういい」
「我知道了,你不用说了。」
そうだった。
没错。
こいつは基本的な運動量が違うのだ。
这家伙的基本运动量,本来就和别人不一样。
どうやら神原駿河、バスケットボール部引退後も、自主トレは欠かしていないということらしい。立派なものだ。まあ、左腕の怪我なんて言ったところで、その真実は全く違うところにあるのだから、それは当然、そうだろうが。
看来神原骏河退出篮球社后,也一直持续在做自我练习。真是了不起。她虽然是以左手受伤为由退出,然而真相却完全不是如此,所以她会继续练习也是当然的。
「はあ」
「唉!」
そこで神原は、大仰にため息をついた。
说到这,神原夸张地叹了一口气。
「でも、それもこれも、全部無駄だったのだな……なんだ、デートではなかったのか。とても楽しみにしていたのに。一人ではしゃいでしまって、まるで馬鹿みたいだ。赤っ恥とはこのことだ。身に余る夢を見てしまった。高貴な阿良々木先輩が愚かなる私ごときとデートしてくれるはずがないことくらい、考えたらわかりそうなものなのに、思い上がりも甚だしい……。私の勝手な勘違いで迷惑をかけてしまって、申し訳なかった。じゃあ、携帯電話と重箱は、荷物になるから、その辺に捨てていこう。阿良々木先輩、ちょっと待っててくれ、すぐにジャージに着替えてくるから」
「可是我所做的一切全都白费了……原来不是要约会啊。我还很期待的说。一个人在那边兴奋,简直跟笨蛋一样。真是丢脸丢到家了。这场美梦真是和我的身份不合啊。高贵的阿良良木学长不可能和我这种愚蠢之辈约会,这点我只要动脑就会知道的说,实在是得意忘形过头了……我个人的误解给学长添麻烦了,实在很抱歉。既然这样,手机和饭盒会变成累赘,我先在这附近把它们丢掉再走吧。阿良良木学长,请稍等一下,我马上回去换运动服。」 「デートでした!」
「是约会没错!」
僕の負け。
我输了。
弱っ……。
我太弱了……
「今日はお前とデートでした! 神原! 今思い出した、ああ、僕もまた、とてもとても楽しみにしていたんだ! やったあ、憧れの神原さんとデートだ! ほら、な! だから携帯と重箱はそのまま持っていろ! 着替えて来なくてもいい!」
「今天我是要和你约会没错!神原!我现在想起来了,啊啊!我也一样好期待、好期待啊!太棒了,可以跟自己憧憬的神原同学约会!所以啊!你就把手机和饭盒拿在手边吧!也不用回去换衣服了!」
「本当か?」
「真的吗?」
ぱあっと表情を輝かせる神原。
神原瞬间露出灿烂的表情。
やべえ、超可愛い。
惨了,超可爱的。
「嬉しいぞ。阿良々木先輩はとても優しいな」
「我好高兴。阿良良木学长好温柔喔。」
「ああ……この優しさがいつか身を滅ぼす気がしてしょうがないけどな……」
「是啊……不过我有强烈的感觉,这股温柔总有一天会招来杀身之祸……」
…………。
彼女である戦場ヶ原よりも先に、その後輩の神原とデートをすることになってしまった……。あのツンデレ女にしては珍しいことに、戦場ヶ原は神原には異様に甘いから、これが浮気扱いされるということはないだろうが、これは意志薄弱の謗りをまぬがれないよなあ……。
我居然抛下女友战场原,先和她的学妹神原约会了……战场原对神原溺爱有加——以那个傲娇女来说,这算很稀奇的事情——所以我这样应该不会被她当作劈腿论处吧,不过意志薄弱这个指责我是避免不了的吧……
ちなみに、そんな話をしている間も、手は繫ぎっぱなし、指は絡まりっぱなしである。さりげなく振りほどこうと試みたのだが、スクラムのようにがっちり組みあっていて、びくともしない。
倌得一提的是,我们在这段谈话当中,手还是一直牵着,十指也紧扣不离。我试着想若无其事地甩开她的手,然而她就像挽着我的臂膀般和我纠结在一块,文风不动。
なんだか知恵の輪みたいというか、関節技でも極められている気分だ。
总觉得这种感觉就像在玩益智环,或者说是被关节技锁住一样。
蛇に絡まれてる感じ。
就像被蛇缠住了一般。
「けど、神原。一応、そのアウターの前は閉じとけ。山に入るのにへそ出しっぱなしってのはいかさままずいだろ。クラッシュジーンズは──まあ、気をつけりゃ大丈夫なレベルか」
「不过,神原。你先把外套扣起来吧。跑到山上露出肚脐有点糟糕吧。那条破洞的牛仔裤嘛……唉呀,那种程度只要小心一点应该没关系吧。」
「ふむ。では仰せの通りに」
「嗯。那我就照学长的吩咐做吧。」
言われるがままに、上着のボタンを閉じる神原だった。くびれたウエストが見えなくなる。ちょっとばかり残念な気がしなくもないが、そういった邪な感情は彼女の後輩に対して向けるべきものではないはずだ。
神原照我说的,扣起上衣的扣子。看不见纤细的蛮腰让我觉得有点可惜,但我不应该对女友的学妹抱持这种邪念。
「じゃあ、行こうか」
「那我们走吧。」
「阿良々木先輩、そう言えば今日は徒歩なのか?」
「对了,阿良良木学长,我们今天是徒步吗?」
「ああ。向かう場所が山だからな。どこに駐輪場があるかもわからねえし。一台しかない自転車を盗られちゃ敵わない」
「对啊。因为我们要去山上嘛。我不知道那边哪里有地方停车。要是我唯一仅存的脚踏车被偷走的话,那可麻烦了。」
外出用のマウンテンバイクは、木っ端微塵にされてしまったからな……誰かさんの『左腕』によって。まあ、嫌みったらしくなってはいけないから、いちいちそんなことは言わないけれど。
因为外出用的越野脚踏车变成一团废铁了……拜某人的「左手」所赐。唉呀,这挖苦人的话可不能说出口,所以我没有把它挂在嘴边。
「それに、そんな遠出ってわけでもないしな。ほら、神原、もうこっからでも見えるだろ? あの山だよ──」
「而且,我们没有要去很远的地方。你看,从这边看得见吧?就是那座山。」
と言いながら、僕はふと、思い出す。先月、神原と会話をするようになって間もない頃、神原は戦場ヶ原を慕うあまり、その彼氏と身体が接触することを嫌い、僕の自転車の後部座席に乗ることを辞して、自転車の横を伴走するという常識的観念からすればびっくりするような選択をしたことがあった。……そんな彼女は、今、僕と手を繫いで、指を絡めて、胸をぐいぐい押し付けてきている……。
我说话的同时,突然想到一件事。上个月,我刚和神原聊天没过多久的时候,神原因为太过恋慕战场原,而讨厌和她的男友有身体上的接触,拒绝坐上我脚踏车的后座,而选择了从常识来看会让人感到惊讶的方式——用跑的跟在我脚踏车旁边……那样的她现在却和我手牵手,十指相扣,胸部还不停挤了上来……
「ふふふ」
「呵呵呵!」
神原は無邪気ににこにことはにかんで、スキップするような足取りだった。
神原露出天真无邪的腼腆微笑,脚步轻快地跳跃着。
「阿良々木先輩、阿良々木先輩、阿良々木先輩、阿良々木先輩、阿良々木先輩~~~」
「阿良良木学长,阿良良木学长,阿良良木学长,阿良良木学长,阿良良木学长,阿良良木学长~~~」
「………………」
なつかれちゃったなあ、おい!
她完全跟我混熟了,喂!
鼻歌交じりだよ!
还一边哼歌吗!
「ところで、お前さ……神原。前から言おうと思ってたんだけど、その、阿良々木先輩っての、やめないか?」
「对了,你……神原。之前我就想跟你说了,那个,可以不要叫我阿良良木学长吗?」
「え?」
「诶?」
想定外のことを言われた感じに、きょとんとする神原。
神原有如听到出乎意料的话语般,整个人呆若木鸡。
「どうしてだ? 阿良々木先輩は阿良々木先輩だろう。阿良々木先輩を阿良々木先輩以外の呼称で呼ぶなど、考えられない」
「为什么?阿良良木学长就是阿良良木学长吧。我想不到『阿良良木学长』以外的称呼来叫学长了。」
「いや、それ以外にも色々あるだろ」
「除了那个以外还有很多种叫法吧。」
「気仙沼3先輩とかか?」
「例如气仙沼学长之类的吗?」
「名前の方を変えるな」
「不要把我的姓改掉。」
そっちじゃねえ。
我说的不是那里。
誰だよ、気仙沼。
气仙沼是谁啊。
「僕が言ってるのは『先輩』って呼称の方だ。なんだか畏まってる感じじゃん」
「我说的是『学长』这个称呼。你不觉得听起来感觉很毕恭毕敬吗?」
「そう言ってくれるな。事実、畏まっているのだ」
「学长别这么说。因为我是真的很毕恭毕敬。」
「うーん。そりゃ、まあ、確かに僕はお前の先輩だけどさ。でも、なんだか生真面目過ぎるっていうかさ。『阿良々木先輩』って、フルネームよりも長くなっちゃってるし」
「嗯——我是你学长没错啦。不过总觉得那种叫法有点严肃。『阿良良木学长』也比我的全名还要长。」
僕のフルネームは阿良々木暦。
我的全名是阿良良木历。
あららぎこよみ。
阿良良木历。
七文字。
七个字。
『阿良々木先輩』は八文字だ。
「阿良良木学长」是八个字。
「ふうむ。となると、『阿良々木さん』とでもすればよいのか?」
「嗯那就把称呼改成『阿良良木哥哥』怎么样?」
「まあ、そうなるのかな? でも、一個くらいの年齢差なんだから、そんな改まらなくてもいいと思うんだよ。いちいち堅苦しいだろ?つーか、僕、『さん付け』ってなんか落ち着かないんだよな。僕をそんな風に呼ぶ小学生がいるけど、あいつは言葉遣いそのものが馬鹿丁寧だからな」
「要变成那样吗?不过我们才差一岁,所以我想没必要那么客气吧。那些叫法都很死板吧?而且,『哥哥』这种叫法感觉让我浑身不对劲。我认识一个小学生就是那样叫我,不过那家伙的用词遣字整个就是礼貌过了头,所以那样听起来还算可以啦。」
性格は最悪だが。
不过她的个性很差。
ああ、そういや最近見てないな、八九寺の奴。
啊!这么说来,最近都没看到八九寺那家伙呢。
…………。
ちょっと寂しい。
我觉得稍微有点寂寞呢。
「戦場ヶ原のことで色々あったけどさ、僕としてはお前とはもうちょっと対等な関係でいたいと思ってんだよ、神原」
「我们之间因为战场原发生了很多事情,不过我个人是希望可以和你站在稍微对等一点的关系上啊,神原。」
「なるほど。嬉しいお言葉だ」
「原来如此。学长这话让我好高兴。」
「まあ、学校一のスターのお前相手じゃ、僕の方で釣り合いが取れないかもしれないけど」
「唉呀!你是校内第一明星,应该是我这边比较不对等吧。」
「馬鹿な、そんなことなどありえない。阿良々木先輩とこうしていられる幸福を、私は何よりかけがえのないものだと考えている。戦場ヶ原先輩と和解できたことと同じくらい、阿良々木先輩と知り合えてよかったと考えている。私が阿良々木先輩に対し不満に思っていることがあるとすれば、それはどうして私ともっと早く出会ってくれなかったのかということだけだ」
「怎么会,没那种事情。能够像这样待在阿良良木学长身边,我觉得这份幸福是无可取代的。能够认识学长,就跟能够和战场原学姐和好一样棒。如果要说我对学长有什么不满的话只有一个地方,那就是学长为什么不早一点和我相遇。」
「……そっか」
「……是吗?」
本当に自己評価の低い奴だ。
这家伙真的很妄自菲薄。
ま、先月聞いた話を思えば、わからなくもない。
不过,想想上个月听到的那些话,我也不是不能理解。
こいつにも、色々あるのだ。
因为这家伙也经历过许多事情。
「では、阿良々木先輩、察するに、私は阿良々木先輩のことを、もう少し親しげな風な呼び方をしてもいいということなのかな?」
「那么,照阿良良木学长的说法,我可以用稍微亲密一点的叫法来称呼学长吗?」
「ああ。何とでも呼んでくれ」
「可以啊。随便你怎么叫吧。」
「では、暦」
「那么,历。」
「………………」
…………。
僕のことをそう呼ぶのは両親だけだ……!
那样叫我的人只有我爸妈而已。
「暦も私のことは、駿河と呼んでくれていいぞ」
「历也可以叫我骏河喔。」
「だからなんでお前はそんなに僕と付き合っている奴っぽいんだよ! そんな重要イベントをどうして彼女の後輩と迎えてるんだ、この僕は! 戦場ヶ原だって僕のことはまだ『阿良々木くん』って呼んでんだぜ!? どんな一足飛ばしだよ!」
「就跟你说不要搞得好像你在跟我交往一样!为什么我要和女朋友的学妹迎接那么重要的事件!连战场原都还只叫我『阿良良木』而已耶!哪有人跳那么多级的啦!」
「暦は突っ込みが激しいな。今のはわざと、つまりボケに決まっているではないか、暦」
「历的吐槽好激烈啊。刚才那个称呼方式当然是我故意装傻的啊,历。」
「それにしては呼称が直ってねえぞ駿河!」
「但是你的称呼方式还是一样没改喔,骏河!」
「『駆け抜ける迅雷の騎士』暦」
「『极速飞奔的迅雷骑士』历。」
「お祖父ちゃんにつけてもらった僕の名前に勝手なキャッチコピー4を冠するな! 駆け抜けもしねえし迅雷でもねえし騎士でもねえよ! そもそもそれじゃフルネームの二倍くらい長くなってんじゃねえか! 当初の目的を見失うな!」
「不要随便在我爷爷取的名字前面冠上宣传文句啦!我没有极速飞奔,也不是迅雷,更不是骑士!而且那种叫法是我全名的两倍长吧!别忘记你原本的目的了!」
「『今世紀最後の英雄』暦」
「『本世纪最后的英雄』历。」
「今世紀最後!? 結論はやっ!」
「本世纪最后!这结论也太快了吧!」
「まあ、そうでなくとも、私は年上の先輩を呼び捨てにすることなど、とてもできない。だから『暦』は却下だ。当然、『阿良々木』も却下」
「唉呀,不管怎么说,我对比自己大的学长没办法直呼名讳。所以『历』这个称呼方式也驳回。当然,『阿良良木』也不行。」
神原は言う。
神原说。
「というわけで、キャッチコピーならぬニックネームというのはどうだろう」
「所以我们想一个非宣传文句的昵称,学长你看怎么样?」
「ニックネームか……」
「昵称吗……」
神原のセンスは、どっかずれているからな……。
神原的品味实在有点脱序啊……
ずれているというか、外れているというか。
该说脱序,还是完全出轨呢。
想像するに、恐らくはロクなニックネームをつけられそうもないのだが、でもまあ、そうは言ってもものは試しである。僕は神原に、「じゃあとりあえず、何か考えてみてくれよ」と言った。
我想她恐怕取不出什么象样的昵称吧,不过呢,凡事就是要勇于尝试。「那你就先想个外号来听听吧。」我对神原说。
「うん」
「嗯!」
神原は少し目を閉じ、思案する素振りを見せる。そして数秒、ぱっと顔をあげ、
神原稍微闭上眼,做出思考的动作。接着过了几秒后,她猛然抬起头来——
「思いついたぞ」 と言った。
「我想到了。」
「おお。早いな。言ってみろ」
「喔喔!还真快。说来听听吧。」
「ラギ」
「拉吉。」
「予想に反して格好いい! 無駄に!」
「出乎我意料还挺帅的!帅得离谱!」
そして格好良過ぎて名前負けで、なんだか嫌がらせを受けているみたいだ……。ちょっとトンガリ過ぎというか、日本の高校三年生につけるようなニックネームじゃないよな……。
况且,太帅反而名不符实,总觉得她好像在嘲讽我……或许是我太过乖僻了,不过那不是日本的高中三年级生该取的昵称啊……
「『あららぎ』の下の方を取って、ラギなのだ」
「我拿『阿良良木』下面两个字,取作良木。」
「そりゃわかるけどさ……ニックネームなんだから、もうちょっと愛嬌がある方がいいんじゃないのか?」
「这我知道……不过现在是昵称,取可爱一点的不是比较好吗?」
「それもそうだ。となると、『あららぎこよみ』の真ん中の方を取って……」
「说的也对。那就从『阿良良木历』的正中间取几个字……」
「取って?」
「取几个字?」
「らぎ子」
「良木子。」
「それは明らかに嫌がらせだな!」
「你那很明显是在玩我吧!」
「そう言ったものじゃないぞ、らぎ子ちゃん」
「别说那种话嘛,小良木子。」
「お前はもう帰れ! お前に用なんかねえよ!」
「你滚回去!你这家伙没利用价值了!」
「らぎ子ちゃんが私を苛める……ふふふ、だが苛められるのは嫌いじゃない」
「小良木子欺负我……呵呵呵,可是我并不讨厌被欺负耶。」
「くっ! マゾ相手に罵倒は通じない! ひょっとしてこいつは最強か!?」
「呜!破口大骂对被虐狂没用!难道这家伙是最强的吗?」
楽しい会話だった。
很愉快的对话。
ちょっと楽し過ぎるくらい。
有点愉快过头了。
何をしている最中なのか忘れそうだ。
让我差点忘了自己现在要做什么。
「こういうこと言っちゃ不謹慎なんだろうけどさ……神原。さっきお前が言った台詞じゃないけれど、僕、戦場ヶ原と付き合う前にお前と出会ってたら、案外お前と付き合っていたんじゃないかと思うよ……」
「我这么说可能有点不太好……神原。虽然这话和你刚才说的有些出入啦,不过我要是和战场原交往之前遇到你的话,我想自己搞不好会跟你交往吧……」
「うん。実は私も、そう思っていた。戦場ヶ原先輩に惹かれる前に阿良々木先輩と出会っていたら、とな。異性に対してこんな気持ちになることは、私にしてはとても珍しい」
「嗯,其实我刚才也在想一样的事情——要是我在被战场原学姐吸引之前,先遇到阿良良木学长的话,之类的。我很难得会对异性会有这种感觉。」
「はあ……」
「是吗……」
まあ、戦場ヶ原がいなければ僕は神原と知り合うことはなかったし、それは神原の方にしても同じなので、ありえない仮定なのだけれど。
不过没有战场原,我和神原也就不会认识,这点对神原来说也是一样,所以那是一个不可能实现的假设。
「どうだ、阿良々木先輩。いっそのこと、あの邪魔な女を二人で殺して埋めてしまおうか」
「怎么样?阿良良木学长。干脆我们两个把那个碍事的女人宰了埋掉吧。」
「怖いこと言ってんじゃねえよ!」
「不要把那种恐怖的事情挂在嘴巴上!」
これだけ言葉を交わしているのにお前のキャラがいつまでたってもつかみきれねえよ! 計り知れねえ! どれだけ深い奴なんだ、神原駿河!
我跟你聊了这么多,就是一直捉摸不透你的性格!实在摸不着边!你到底是多么深不可测的家伙啊,神原骏河!
「戦場ヶ原はお前にとって尊敬している先輩なんだろうが……ったく、意外と腹黒い奴なんだな、お前は」
「战场原也是你尊敬的学姐吧……拜托,你这个人意外地还挺『腹黑』的嘛。」
「あまり褒めるな。照れてしまう」
「学长不要太夸奖我。我会害羞。」
「褒めてねえ」
「谁在夸奖你啊。」
「阿良々木先輩には何を言われても嬉しいのだ」
「因为阿良良木学长不管对我说什么,我都会很高兴。」
「このマゾ女……」
「你这个被虐女……」
「マゾ女。いいな。もっと言ってくれ」
「被虐女。好棒啊。再多说一点。」
「…………」
中学時代の戦場ヶ原を信奉していた彼女が、現在の戦場ヶ原の本性に触れ、うまくやっていけるものなのかどうか僕は密かに心配していたのだが、その特殊な感性がある限り、いらぬ心配は無用のようだった。
国中时代以战场原为偶像的她,要是知道现在战场原的本性,两人的友情还会顺利存在吗——这点我之前私底下很担心,不过只要她有被虐的特质,我似乎就没必要操那个心。
ともあれ、神原駿河。
不管怎么说,神原骏河,
彼女は、実は百合である。
她其实是百合。
ここまでのやり取りでわかる通り、先輩として慕っているだけではなく、戦場ヶ原ひたぎのことを、心の底から愛している。言ってしまえば、そう、神原と僕とは恋敵の関係にあるのだった──それなのにこうして、僕と腕を組んで歩いているというのだから、わからない。まあ大方、先月末のことで、僕に対して負い目があるというか、僕に対して恩義を感じてしまっているというか、そんなところなんだろうけれど……。
从至今的对话也可看出端倪,她不只把战场原黑仪当成学姐尊敬,还打从心底深爱着她。真要点破的话,没错,神原和我其实是情敌关系——然而,现在她却和我挽着手走在路上,实在让我搞不懂。这大概是因为上个月底的事情,让她觉得自己亏欠于我,抑或是让她感觉我有恩于她吧……
後輩になつかれるのは、先輩としては気分悪くはないが、でも、それが誤解の産物だというのは、少し居心地が悪い。
以一个学长来说,学弟妹和自己混熟感觉其实也不错,但如果那是基于误会而产生的情感,会让我感觉不太舒服。
忍野の言葉を借りれば──戦場ヶ原同様。
假如借用忍野的说法,神原和战场原一样。
神原もまた、一人で勝手に助かっただけなのに──
她也是自己救自己的啊——
「………………」
まあ、しかし、そうだな。
不过,也对。
恩義や誤解云々はともかく、神原の中で過度によくなってしまっている僕のイメージを、ある程度調整しておく必要はあるかもしれない。イメージを崩しておくというのか……、あんまりいい印象持たれ過ぎていると、いざなにかあったとき、必要以上に失望させちゃうことになるし。
恩惠和误解之类的先不管,或许我有必要调整一下我在神原心中过度被美化的形象。我要让那形象垮台才行……要是我的形象好过头,以后万一出了什么状况,反而会使她更加失望。
というわけで、阿良々木暦イメージ悪化計画。
于是,我决定进行「阿良良木历形象丑化计划」。
その一。
计划一。
金にだらしのない男。
金钱观念不检点的男人。
「神原、財布を忘れてしまった。すぐに返すから、お金を貸してくれないか」
「神原,我忘了带钱包出门。你可以借一贴钱给我吗?我很快就会还你。」
「わかった。三万円くらいでいいか?」
「好。三万日币够吗?」
お金持ちでした!
她好凯!
うーん、時間にだらしのない男……は、待ち合わせに僕が先んじて来ていた以上説得力がないだろうから……。
嗯——那换成时间观念不检点的男人……可是今天是我先来赴约的,既然如此这说法就没有说服力了……
阿良々木暦イメージ悪化計画その二。
阿良良木历形象丑化计划之二。
やたらとエロい男。
非常猥琐的男人。
「神原、僕は今、女性の下着に興味があるんだ」
「神原,我最近对女生的内衣裤很有兴趣呢。」
「ほう、奇遇だな、私もだ。女性の下着は芸術品だと、私は思っている。なんだ、話が合うではないか、阿良々木先輩」
「哇!还真巧,我也是耶。我觉得女性的内衣裤是艺术品。什么嘛,原来我们臭味相投啊,阿良良木学长。」
話が合っちゃった!
居然臭味相投了!
そうだよ、僕がエロさで神原に敵うわけがないじゃないか……いや待て! 普通のエロでは無理でも、それが特殊なエロならば僕にも勝機があるはず……!
对喔,要比猥琐我根本赢不了神原吧……不对,等一下!普通的猪哥或许赢不了,可是如果是比较特殊一点的猪哥方式,我肯定会有胜算……!
「特に興味があるのは小学生の下着なんだ!」
「我特别喜欢小学生的内衣裤!」
「益々話が合うな! さすがは阿良々木先輩! 世間の荒波何するものぞ、素晴らしい生き様だ!」
「我们又更加臭味相投了!不愧是阿良良木学长!完全不在意世俗的眼光,这种生活方式实在太棒了!」
「評価が上がっちゃったー!」
「我的评价居然上升了!」
なんでだよ。
为什么啊。
えーっと、じゃあ、阿良々木暦イメージ悪化計画その三(もう既に面白くなってきたので当初の目的は見失っている僕)。
那我再想想,好,阿良良木历形象丑化计划之三(因为变得很好玩了,所以我早忘了当初的目的)。
誇大妄想的な夢を語る男。
满口夸张梦想的男人。
「神原、僕は将来ビッグになる男だぜ!」
「神原,我将来会变成一个大人物喔!」
「言われなくとも知っている。というより、既に阿良々木先輩は途方もなくビッグではないか。それ以上大きくなられては、そばでお仕えするのも一苦労だな」
「学长不用说我也知道。应该说,阿良良木学长已经是一个非常了不起的大人物了。要是学长又变得更伟大的话,在身旁服侍的我也会很辛苦呢。」
「くっ……!」
「呜……!」
いや、この程度は予想範囲内!
没关系,这点程度还在我的计算之内!
更に続けるぜ!
我还有后着!
「僕はミュージシャンになる!」
「我要变成音乐家!」
「そうか。ならば私は楽器になろう」
「这样啊,那我就变成乐器吧。」
「意味はわからねえけどなんだか格好いい!」
「你的话虽然莫名其妙,但是却很酷!」
僕の中での神原の評価が上がった。
我心中对神原的评价上升了。
だから、なんでだよ。
可是为什么啊。
「阿良々木先輩、さっきから何を言っているのだ? わざわざそんな風に言い聞かせてくれずとも、私は阿良々木先輩のことを既にこれ以上なく敬愛しているぞ?」
「阿良良木学长,你从刚才开始就在说什么啊?学长不用刻意说那些话给我听,我也已经十分敬爱学长了。」
「ああ、どうやらお前には何を言っても無駄なようだな……」
「是吗,看来跟你说什么都没用了……」
僕に何を言われても嬉しいのと同様、僕がどんな人間であってもとにかく敬愛するつもりらしい。
就跟我不管说什么她都会很高兴这点一样不管我是哪一种人,神原都打算敬爱我的样子。
「しかしわからない。どうしてお前はそこまで僕のことを過大評価するんだ」
「可是我不懂。为什么你会那么高估我啊?」
「何を言うかと思えば」
「我还以为学长要说什么呢。」
と、神原は笑う。
神原笑答。
「これまで私は、愚問とは『グッドモーニング』の略かと思っていたが、どうやらそういう質問のことを言うらしいな」
「我一直以为愚问这两个字是『Good morning』的缩写呢,原来那是指这种愚蠢的问题啊。」
「………………」
一瞬格好いい台詞かとおもったが、よく聞いてみるとその台詞はただの馬鹿だな。
一瞬间我觉得这话听起来还挺帅的,不过仔细一听,那不过是普通的耍白痴而已。
「私はこの生涯を、阿良々木先輩に捧げると誓ったのだ。戦場ヶ原先輩との仲を取り持ってくれたからというのではない。阿良々木先輩がそうするに値する人だと思うから、そう誓ったのだ」
「因为我已经发誓要把这一生献给阿良良木学长了。这不是因为学长帮我和战场原学姐重修旧好的关系。因为学长值得我这么做,所以我才发誓的。」
「誓った、か……」
「发誓吗……」
「ああ。常に人々を照らし、恵みを与え続けるあの太陽に誓おうと思ったが、そう思ったのが夜だったので、とりあえずその辺の街灯に誓っておいた」
「对啊。我原本想向那颗总是普照着人们、赐予我们恩惠的太阳发誓,结果那个时候刚好是晚上,所以我就姑且在附近找了一根路灯发誓。」
「適当極まりねえ!」
「实在有够随便!」
「街灯だって人々を照らし、恵みを与え続けているではないか。街灯がなかったら大変だぞ?」
「路灯不也是一样总是普照着人们、给予我们恩惠吗?没有路灯的话可是很辛苦的喔?」
「そりゃそうだけど……」
「是没错啦……」
せめて月に誓えよ。
至少你也跟月亮发誓吧。
曇っていたのか?
难道当时乌云蔽月?
「まあ、生涯を阿良々木先輩に捧げるなどとだいそれたこと、私には約不足5かもしれんがな」
「不过,要把一生奉献给阿良良木学长这个想法,真是太狂妄了,对我来说可能有点『大才小用』啊。」
「その言葉の誤用は今となっては指摘する方が照れてしまう類のものなんだが、しかし漢字まで間違っているというケースは珍しいな……」
「这句话到现在还是常有人用错,让我都不太好意思去指正别人,可是连字都写错的例子算是很少吧……」
うーん。
嗯——
阿良々木暦イメージ悪化計画、頓挫!
阿良良木历形象恶化计划,触礁!
「……ふむ」
「……呼。」
阿良々木暦。
阿良良木历。
神原駿河。
神原骏河。
そう言えば、この二人には、戦場ヶ原のことを外したところで、共通項がある。
这么说来,这两个人除了战场原的事情以外,还有一个共通点。
それは二人とも、人間ではないということだ。
那就是两个人都不是人类。
いや、そうは言っても、勿論、ほとんどの部位は、人間である。ただ──
话虽如此,当然大致上的部位都是人类。只是——
阿良々木暦は血液が。
阿良良木是血液。
神原駿河は左腕が。
神原骏河是左腕。
それぞれ、人間ではない。
皆不是人类所有之物。
僕の血液は少なからず鬼のそれだし──神原の左腕はまるごと、猿のそれである。僕が襟足を伸ばして、首筋にある吸血鬼の牙の痕跡を隠しているのと同様に、神原は猿の左腕を、包帯によって隠しているというわけだ。輝かしいエースだった神原が、部活を早期引退しなくてはならなかった真の理由はそれである。当然だ、猿の腕のままで、バスケットボールなど、できるわけもない。
我的血液中混有不少鬼的血液;而神原的左手整只都是猿猴之手。就跟我将发际留长,想要藏住脖子上的吸血鬼齿痕一样,神原也用绷带藏住了猿猴的左腕。神原原本是球场上耀眼的王牌选手,却必须提早退出社团活动的真正理由,就在于此。这很自然,因为左手是猿猴之手,根本不可能打篮球。
僕も神原も、怪異に関わってしまった者なのだ。
我和神原都是和怪异扯上关系的人。
……怪異というなら、僕の彼女にして神原の先輩、戦場ヶ原ひたぎもまた、同じように怪異に関わっている。
……说到怪异,我的女友也就是神原的学姐战场原黑仪,也一样和怪异有所牵扯。
僕は鬼。
我是鬼。
神原は猿。
神原是猿猴。
戦場ヶ原は、蟹だった。
战场原则是螃蟹。
だが、戦場ヶ原と、僕と神原との違いは決定的だ──戦場ヶ原は二年以上の間、怪異と対立し続けて、ついに、その怪異を祓い、人間に還った。僕と神原は、怪異を祓いこそしたものの──人間でない部分が、体内に残ってしまっている。言うなら僕らの場合、僕達自身が怪異みたいなものなのだ──怪異にかかわって、怪異になってしまったようなものなのだ。
不过,战场原和我们两人有着决定性的差异——战场原和怪异对抗持续了两年,才终于将怪异驱走,变回了人类。而我和神原虽然将怪异驱除,但体内却残留着非人类的部分。我们的情况说明白一点,其实本身就跟怪异差不多——因为和怪异扯上关系,所以变成了怪异。
それは。
这一点,
あまりにどうしようもない、共通項だ。
是我们无可奈何的共通点。
「ん? どうした? 阿良々木先輩」
「嗯?怎么了?阿良良木学长。」
「え……いや、別に」
「诶……不,没什么。」
「そんな暗い顔をしていては、折角のデートが台無しだぞ」
「学长要是露出那么阴沉的表情,我们难得的约会可就泡汤了。」
「デートって……いや、もういいけど」
「约会……算了,已经没差了。」
「ところで、阿良々木先輩。さっきは聞きそびれてしまったのだが、山に行って、それからどうするのだろう。行為に及ぶ以外に、山でやることなどあるのか?」
「对了,阿良良木学长。我刚才没机会问学长,我们到山上之后要做什么啊?去山上除了做那档事以外,还有别的事情可以做吗?」
「それを本気で言っているんだとしたら、お前はワンダーフォーゲル6部にだけは入っちゃいけない奴だな……つーか、お前、山にあんまり馴染みとかないのか?」
「你这句话如果是当真的话,那你千万不能参加山岳活动社……话说,你以前不常到山上去吗?」
「中学生の頃、クロスカントリー7もどきということで、山中ダッシュを部活のトレーニングに盛り込んだことはあったな。捻挫する者が出てしまい、中止に追い込まれたが」
「国中的时候,我有模仿跑山运动,把山中冲刺编入社团活动的训练中。结果有人扭到脚,最后那个训练就被迫中止了。」
「はあん」
「是喔。」
お前にとっちゃ山もトレーニングの舞台か。
对你而言,山也是训练的舞台吗?
まあ、こいつをバスケットボール部のエースにせしめた8のは、技術云々というよりも、僕の背丈を軽く飛び越せてしまうような、その圧倒的な脚力だからな。
这家伙能够抢下篮球社王牌的宝座,技术等方面还是其次,最重要的是因为她有能够轻松飞越我头顶的压倒性脚力。
「そういう阿良々木先輩は、どうなのだろう、山に馴染みがある人なのか?」
「那阿良良木学长呢,以前很常去山上吗?」
「いや、特にそういうわけでは……」
「也不是很常去啦……」
「しかし男子は子供の頃、カブトムシやらクワガタやら、取りに行くものだろう」
「可是男生小的时候,都会去山上抓独角仙或鹿角锹形虫之类的昆虫吧。」
「クワガタねえ」
「鹿角锹形虫吗?」
「うむ。黒いタイヤだ」
「嗯。还有去捡黑色轮胎。」
「タイヤは普通黒いだろう……」
「轮胎本来就是黑色的吧……」
しかもそんなものが山で採れるか。
而且那种东西在山上哪捡得到。
それはもう、ただの不法投棄だ。
那种已经算是非法弃置了吧。
「まあ、いずれにせよ、デートで行くような場所じゃないのかもな──季節も季節だし。昨日も、一通り説明したつもりだったんだけど、ほら、忍野からの仕事だよ」
「不管怎么说,应该都不是约会会去的地方吧。现在还是这种季节。昨天我应该有跟你大致上说明过吧,就是忍野给我们的工作啊。」
「忍野? ああ、忍野さんか」
「忍野?啊,忍野先生吗?」
そう聞くと、神原が複雑な顔をした。この後輩にしては珍しい反応だが、まあ、さもありなんという感じだ。
神原反问完后,露出复杂的表情。以这学妹来说这反应倒算稀奇,不过我想会这样也很正常吧。
忍野メメ。
忍野咩咩。
僕にせよ神原にせよ戦場ヶ原にせよ──全員、その男に助けられた。いや、助けられたなんて言い方を、やっぱり忍野は許さないだろう。一人で勝手に助かったと、それはあくまでも、そう言うしかないのだ。
无论是我、神原或战场原——都是被这男人所救。不对,被他所救这种说法,忍野应该不会认同吧。到头来也只能说,是我们自己救自己的而已。
怪異の専門家にして根無し草の放浪者。
他是对付怪异的专家,也是一个居无定所的漂泊人。
趣味の悪いアロハに軽薄な性格。
穿着一件品味差劲的夏威夷衫,个性轻浮。
大人として尊敬のできる相手では決してないが、それにしても、僕らがあいつに世話になったことは、揺るぎのない事実である。
他绝对不是一个值得尊敬的大人,然而我们受到他的帮助这点,却是不动如山的事实。
「ああ。あの山の中に、今はもう使われていない小さな神社があるそうなんだけど、そこの本殿に、お札を一枚、貼ってきてくれ──っていう、そういう仕事」
「没错。那座山上有一个现在已经没人参拜的小神社,他要我们去那个神社的本殿,贴上一张符咒。」
「……なんだそれは」
「……那是什么意思?」
不思議そうに聞き返してくる神原。
神原一脸不可思议地反问说。
「お札というのも不可解だが、しかし、そんなの、忍野さんが自分でやればいいのではないのか? あの人は基本的に暇なのだろう?」
「虽然符咒的部分也让我无法理解,可是这种事情忍野先生自己来贴不就好了?那个人基本上很闲吧?」
「僕もそう思うけど、まあ、『仕事』だよ。僕はあいつに世話になったとき、洒落にならないような多額の借金をしちまってるからな。……お前だってそうなんだぜ? 神原」
「我的想法跟你一样,不过这是『工作』嘛。因为我受到他帮助的时候,欠了一笔为数可观的债务……你也一样吧?神原。」
「え?」
「咦?」
「お前のときはなんだか有耶無耶になっちゃってるけど、あいつはあれでもれっきとした専門家なんだから。ロハ9で力を貸してくれるほど甘くはないさ。世話になった分は、働いて返さなきゃ」
「你那次最后虽然变得不了了之,不过别看他那副德性,人家可是个无庸置疑的专家呢。他不会天真到白白助人一臂之力。受到他帮助的份,我们要用劳力回报才行。」
「ああ、それで──」
「喔喔,所以学长才——」
神原は得心いった風に頷く。
神原有如完全认同一般,点头响应。
僕はそんな神原の言葉を「そう」と、継いだ。 「だから、僕はお前を呼び出したってわけ。昨日、忍に血ィ飲ませに行ったとき、忍野に頼まれてな。お前も一緒に連れて行くよう、忍野から言われたんだ」
「没错,」我接着神原的话继续说。「所以我才会找你出来。这是昨天我去喂血给忍喝的时候,忍野拜托我的。他还说要我带你一起去。」
「そう言えば、忍野さんは執拗なほど、『力を貸す』というような言い方をしていたな……ふむ。なるほど、借りたものは返さなければならないというわけか」
「这么说来,所以忍野先生才会那么坚持『助你一臂之力』这个说法啊……嗯——原来如此,这表示受到帮助就必须要回报他才行吗?」
「そういうこと」
「没错。」
「わかった。そういうことならば是非もない」
「我知道了。既然这样那也没办法。」
神原はぎゅうっと、より強く、僕の腕に抱きついてきた。その行為の意味は複雑そうで推し量ることができないが、どうやら、何かを決意したらしい。まあ、そういう意味では、貸し借りとかに関しては、神原駿河、とても義理堅そうな性格をしているようだしな。
神原更加用力地抱住了我的手臂。这行为的含意很复杂,让我无法推量,看来这是表示她下定了决心,要去做某件事情的意思。从这层意义来看,神原骏河在恩义人情的事情方面,个性上非常不喜欢亏欠于人。
「しかし、あの山なら何度か近くを通ったことがあるが、神社があるとは知らなかった」
「可是,那座山我去过那附近好几次了,都不知道那边有神社呢。」
「僕も知らなかったよ……もう使われていないとは言え、そこにあることくらいは知っててもよさそうなものなのに。なんであいつ、地元の人間が知らないようなスポットを知ってんだろうな。今あいつが住み着いてる、学習塾跡にしたってそうなんだけど」
「我也不知道……就算说已经没人去参拜,不过我应该也会知道那边有神社才对。为啥那家伙会知道那种连当地人都不知道的地方啊。现在那家伙定居的补习班废墟也一样。」
怪異と言うより、案外、廃墟に詳しい奴なのかもしれない。しかしまあ、公衆電話のこともそうだけれど、そんな神社やら学習塾やらの廃墟が、変な奴らのたまり場になったりしないところが、果てしなく田舎町だよなあと、僕は思う。……学習塾の方に関しては、忍野と忍が住み着いちゃってる段階で、変な奴らのたまり場になっていると言えなくはないのだが……。
要说忍野精通怪异,倒不如说他对废墟比较精通吧。可是刚才说的公共电话也是,那种神社和旧补习班的废墟,居然没有变成奇怪家伙们的聚集地,这里实在是一个超级乡下的城镇啊,我心想……不过补习班那边,从忍野和忍定居在那里开始,已经可以算是变成怪人的聚集地了吧……
「しかし──そういう言なら、戦場ヶ原先輩もまた、今日は一緒に来なければならなかったのではないのか? 阿良々木先輩。戦場ヶ原先輩も確か、忍野さんの世話に──」
「不过这样说的话,战场原学姐今天应该也要一起来才对吧?阿良良木学长。学姐也受过忍野先生的——」
「戦場ヶ原はその辺如才ないからな、もう借金は返済済みだよ。あのとき、お前の目の前で、僕、忍野に十万円渡してたろ? あれだ」
「战场原对钱可不马虎啊,她已经把欠款还完了。那时候,我当着你的面把十万块交给了忍野对吧?就是那个。」
「ああ、そう言われてみれば、そんなことを言っていたような気もするな。なるほど、あれはそういう意味だったのか……ふうむ。さすがは戦場ヶ原先輩だ」
「啊,听学长这么一说,你们当时好像有提到过。原来是这个意思啊……嗯。真不愧是战场原学姐。」
「あいつは義理堅いとか言うより、他人に借りを作ることをよしとはしないって感じだけどな。自分一人で生きてるような奴だから」
「与其说她不喜欢亏欠于人,不如说不想欠对方人情。因为她就像一个独行侠嘛。」
「阿良々木先輩、今日のことについて、戦場ヶ原先輩は何か言っていたのか?」
「阿良良木学长,今天的事战场原学姐有说什么吗?」
「んー? いや、別に。気をつけてねの一言もなかった」
「嗯——?没说什么啊。她连叫我小心一点都没有。」
本当になかった。
真的没有。
名目上、戦場ヶ原の後輩を連れ出す形になるから、一応、神原を誘う前に戦場ヶ原に話は通しておいたのだが、あの女、実にそっけないものだった。そんな些細なことで私の気を煩わせないでと言った感じだった。お前がそんなんだから、僕はお前とデートするよりも先にお前の後輩とデートする羽目になってんじゃねえのかよと、思わず自分の意志の弱さを棚に上げた恨み言を言いたくなってしまう。
名目上我必须带战场原的学妹出来,所以在约神原之前我有事先知会她一声,可是那个女人真的很冷淡。她当时的反应仿佛在说「不用因为那种小事来烦我」。就是因为你那样,才害我落得要先和你学妹约会的下场——我把自己的意志薄弱束之高阁,不由得想要出声埋怨几句。
「神原、お前には何か言ってたか?」
「神原,她有跟你说什么吗?」
「んー。目一杯可愛がってもらってきなさいと言われた」
「嗯,学姐要我去让学长好好地疼爱一番。」
「………………」
本当に神原に甘いんだな、あいつ。
那家伙真的对神原宠爱有加啊。
ツンデレとか言って、なんで彼氏にデレないで後輩にデレてんだよ。
她说自己是傲娇,为什么不是对男朋友傲娇,而是对学妹呢。
「こうも言われた。『阿良々木くんから粗相を受けたら、隠し立てすることなく私に逐一報告なさい。あの男に、山に埋められるか海に沈められるか、嫌いな方を選ばせてあげる』」
「她还说,『要是阿良良木对你做了什么轻率的举动,你要逐一跟我报告不要隐瞒。看他是想被埋在山上,还是要沉到海里,我会让他选择自己最讨厌的死法来料理他。』。」
「嫌いな方を選ばせるんだ!」
「居然要我选择自己最讨厌的死法!」
容赦ねえ。
实在毫不姑息啊。
まあ──しかし。
唉呀,不过——
それは、そうは言っても、戦場ヶ原ひたぎにとっては、決して悪い傾向ではないはずだ。高校入学前に怪異とかかわり、全てを捨て、全てを諦めたかに見えた戦場ヶ原にとって──それは原状回復なのだから。自分一人で生きているような奴が──他人と触れ合うことを覚えるのが、悪いことであるはずがない。
那种说法对战场原黑仪来说,绝对不是一个坏现象。她在高中入学前和怪异扯上关系,看似舍弃、放弃了一切的事物,对她而言那反而是一种恢复原状的象征。那个有如自己独活一样的家伙……学会和他人接触这一点,绝对不会是坏事。
僕としても望むところだ。
我个人也是如此希望。
人間の彼女は──それでいい。
人类的她,只要那样就好。
「ああ、そうだ、神原。戦場ヶ原の話で思い出したけど、あいつ、もうすぐ誕生日だろ」
「啊,对了,神原。说到战场原我才想到,那家伙的生日快要到了吧。」
「うん。七月七日だ」
「嗯。七月七号。」
「……やっぱ当然のように押さえてるんだな」
「……你果然知道得很理所当然一样。」
「愛する人のことだからな」
「因为学姐是我深爱的对象嘛。」
「で、それにあたって、お願いがあるんだけど」
「关于她生日,我有件事情想拜托你。」
「何でも言ってくれ。もとよりこの身体は阿良々木先輩のものだ。いちいち断りなど入れず、思うがままに使ってくれればそれでよい」「何でも言ってくれ。もとよりこの身体は阿良々木先輩のものだ。いちいち断りなど入れず、思うがままに使ってくれればそれでよい」
「学长尽管说。我这个身体本来就是阿良良木学长的东西,学长可以随心所欲地使用我,不用一一请示我没关系。」
「いや、そんな大袈裟なもんじゃなくってさ、まあほら、アニバーサリーってことで、あいつの誕生日を祝ってやろうと思うんだが。でも、僕は長らくそういうイベントからは離れていたからな、どうにも勝手がわからない。そこで神原、お前に協力してもらおうと思って」
「呃,也没那么夸张啦,就是那个啊,生日算是个纪念日,所以我想要帮她庆生。不过我已经很久没参与那种活动了,搞不清楚该怎么准备,所以我才想要找你帮忙。」
「なるほど。脱げばいいのか?」
「原来如此。那我只要脱衣服就行了吧?」
「そういうイベントじゃねえことくらいは僕にも分かるよ! 僕の彼女の大事な誕生日をどんな日にするつもりなんだお前は!」
「好歹我也知道生日不是那种活动!你想要把我女朋友最重要的生日变成什么日子啊!」
「む。勇み足10だったか」
「呜,我太得意忘形了吗?」
「どんなに時機を見てもその足を踏み出す機会はねえよ、一生引っ込めてろ。だからまあ、色々、セッティングとか、プランニングとか、そういうのを手伝ってくれれば嬉しいと思ってさ。ブランクがあるとは言え、戦場ヶ原のことについてはお前の方が詳しいだろ、それだけだ」
「不管你再怎么等,都不会有让你脱衣服的机会,给我一辈子缩到一边去吧。所以说,如果你可以帮我做一些布置或是规划之类的东西,我会很高兴的。虽然你们之间有段空白期,不过战场原的事情还是你比较清楚吧,就是这样。」
「ふうむ。しかしどうだろう、阿良々木先輩、付き合って最初の誕生日なのだから、そこはそれ、ムードを作って二人きりで過ごすべきなのではないのか? 私の手助けなど、この場合は余計なだけだと思うが」
「嗯——可是啊,阿良良木学长,这是你们交往后的第一个生日,学长应该要营造气氛,两个人单独过生日吧?我想在这种情况下,我只会帮倒忙而已。」
「余計なだけ?」
「只会帮倒忙?」
「うん。小さな親切大きなお世話というか、ただの迷惑だな」
「对。一个小小的亲切会变成大鸡婆,或许应该说只会替你们造成困扰。」
「あー。僕としてもそれは考えたんだけどさ、まあでも、最初の一回は、賑やかな方がいいと思ってさ。忍野やら忍やら、あと知り合いの小学生やらも、呼べるものなら呼んでやって、軽く誕生日パーティーでも開いてやりたいなって──」
「啊——你说的我也有想过,不过我觉得第一次庆生,热闹一点会比较好。我想要找忍野和忍,还有我认识的小学生之类的,能找多少就找多少,帮战场原办一个简单的生日派对。」
このアイディアの問題点は、戦場ヶ原が忍野や忍や八九寺のことを嫌いだというところなのだが、そこは力業で何とかするしかない。嫌いでも嫌だといえない状況を作り出すことに腐心11する必要があるだろう。
这个点子的问题点就在于战场原讨厌忍野、忍和八九寺,不过这点也只能靠努力去克服了。我必须处心积虑,营造出一个就算她讨厌也无法说出口的情境。
「まあ──阿良々木先輩がいいなら、それでいいが」
「唉呀——阿良良木学长觉得好的话,我是没关系啦。」
「なんだよ、歯切れ悪いな」
「什么啊,这回答真不干脆。」
「いや、言わせてもらえるなら、阿良々木先輩のそのご意志気遣いは立派だと思うのだが、戦場ヶ原先輩としては、阿良々木先輩と二人で過ごしたいんじゃないかと思うのでな」
「不是,要我说的话,我是觉得学长的想法和顾虑很好,不过我想学姐应该想要和学长两个人过吧。」
「そんな殊勝な女か? あいつが」
「她有那么好吗?那家伙。」
未だデートもしてくれないんだぞ。
她现在连跟我约会都不肯喔。
結構露骨に誘ってるのに。
我已经很露骨地在约她了说。
神原のことだったり、その後の実力テストだったりで、それどころじゃなかったっていうのもあるんだけれど。
虽然前阵子因为神原,还有之后实力测验的事情,让我们无心去约会啦。
身持ち堅いんだよなあ、あいつ。
那家伙可是很矜持的呢。
「ていうか、お前、結構普通に、僕と戦場ヶ原のこととか、考えてくれるんだな。戦場ヶ原のことに関しちゃ、僕とお前って、恋敵なのに」
「话说,你倒是很平静地为了我和她的事情着想嘛。战场原的事情方面,我和你明明是情敌的说。」
「いや、それは確かにそうなのだが……しかし、今現在の私は、阿良々木先輩と付き合っている戦場ヶ原先輩が好きだという感じだからな……、そして戦場ヶ原先輩の恋人である阿良々木先輩のことも同じくらい好きなのだ」
「学长说的确实没错……不过,现在的我喜欢和学长交往的战场原学姐……也一样喜欢学姐的男朋友,也就是学长你。」
「…………」
今、何気に告られなかったか?
刚才,她是不是若无其事地向我告白了?
やばい、ちょっとどきどきしてきた。
惨了,我稍微有点心跳加速。
腕を通して心臓の鼓動が伝わりそう。
心脏的鼓动,仿佛通过手臂传达了过来。
なんて簡単なんだ、僕は。
我怎么这么头脑简单。
「……お前、戦場ヶ原の影響、ちょっと強過ぎだぞ。太陽に誓ったのか街灯に誓ったのか知らないけれど、戦場ヶ原の彼氏だからってだけで、僕のことをそんな好意的に見る必要なんかないんだ。戦場ヶ原が好きな奴のことを、お前も同じように好きになる必要なんか──」
「……你受到战场原的影响太深了喔。我不管你是对太阳还是对路灯发誓啦,可是你不用因为我是她的男朋友,就对我抱持那么大的好感。战场原喜欢的人,你没必要也跟着去喜欢!」
「違う。そういうことではない」
「不是的。不是因为那样的。」
やけにはっきり言う神原。
神原非常明确地说道。
その剣幕に少し気圧される。
那气势汹汹的模样,让我稍微被震慑住。
相手が先輩であろうと目上であろうと言うべきことははっきり言う。
她不论对方是学长姐还是长辈,该说的事情就是会说清楚。
「じゃあ、お前、ひょっとして、やっぱ先月のこと、引き摺ってんのか? 僕はあんなの全然気にしないって……ほら、よく言うじゃんか、罪を憎んで尻を隠さず12 ──」
「那你该不会是因为上个月的事情还在内疚吧?那件事情我完全没放在心上啊……人家不是常说吗,『对事不对马嘴』——」
「そういうことでも──ない」
「也不是……那个问题。」
神原は言った。
神原说。
僕の言い間違いをさらっと無視して。
她很爽快地无视了我说错的部分。
「阿良々木先輩のそういった水で割ったような13性格には、私は随分救われているが、しかし、そういうことでも、ないのだ」
「阿良良木学长那种用水都能切开的个性,对我来说是一种救赎,可是不是学长说的那样。」
「水で割ったような性格って……」
「用水都能切开的个性……」
薄そうな奴だなあ。
看起来很单薄的感觉。
しかし、間違ってない気もする。
可是感觉又好像没说错。
簡単だし。
而且简单明了。
「いいか、阿良々木先輩。よく聞くのだ。私は阿良々木先輩をストーキングしていたのだぞ」
「阿良良木学长,你仔细听我说。我可是跟踪过阿良良木学长的喔。」
「…………」
堂々と言うな。
别说得那么光明正大。
諭すみたいにそんなこと言うな。
也不要说得你好像在开导我一样。
「だから──阿良々木先輩がどういう人間なのか、私はよく知っているつもりだ。そうするに値する人だと、私は本当に思っているのだ。戦場ヶ原先輩の彼氏でなくとも、先月のことがなくっても、どんな形で出会っていても──私は阿良々木先輩を、尊敬に値する人物だと看做していたはずだぞ。それは私の脚にかけて、保証する」
「所以……我想,我很清楚阿良良木学长是一个什么样的人。我是真心认为学长值得我这么做。就算学长不是战场原学姐的男朋友,就算没有上个月的事,不管我在什么情况下遇到学长——我都会把学长当作一个值得尊敬的人物。这点我可以赌上自己的双脚来保证。」
「……そっか」
「……是吗?」
まあ、だから。
所以说,
神原と僕が、こんな形以外で出会う可能性を探ること自体、馬鹿馬鹿しい、ありえない仮定なんだけれど……。
要去探索我和神原以其他方式相遇的可能性这点,本身就是一件很愚蠢,也绝无可能的假设……
それでも。
即使如此。
「脚にかけられちゃ──しょうがないな」
「你都赌上双脚了……那我也没辙了。」
「そう……私は阿良々木先輩のことを、たとえ忍野さんに頼まれた仕事だと称して私を人気のない山中に連れ込み、無理矢理に欲望のたけをぶつけられたとしても、それを笑顔で許せるくらい、尊敬している」
「对……就算学长以忍野先生拜托我们工作当借口,把我带到前不着村、后不着店的山中,硬是把自己的兽欲施加在我的身上,我也可以用笑容来原谅学长,我对学长就是如此地尊敬。」
「そんな尊敬はいらねえ!」
「我不需要那种尊敬!。」
そして『称して』って何だ!
而且「借口」是什么意思!
全然信用してないってことじゃねえか!
你根本完全不信任我嘛!
「え……? あれ、ひょっとして阿良々木先輩、本気で何の行為にも及ばないつもりなのか?」
「咦……?奇怪,难道阿良良木学长,真的没打算要做那档事吗?」
「何だそのさも意外そうな反応!」
「你那一脸意外的反应是什么意思!」
「それとも、さては阿良々木先輩は女性の方から誘わせるつもりなのか? ははーん、そして戦場ヶ原先輩に対しては『誘われたのだから浮気ではない』と言い張るつもりなのか」
「还是说,阿良良木学长希望女性自己主动来诱惑你?啊哈!然后学长就可以跟战场原学姐主张说『是对方来诱惑我的,我没有花心』。是吗?」
「わかった、さては神原、お前はあれだ、そうやって僕と戦場ヶ原との関係を破局に追い込もうと企んでいるんだな! 身体を張った妨害作戦なんだな!」
「我懂了,原来神原你是打那种如意算盘,想要用那种方法害我和战场原的关系破局吧!好一种舍身式的妨碍作战啊!」
「バレたか」
「穿帮了吗?」
「てへって感じに舌出してんじゃねえ! えらく愛らしいじゃねえか馬鹿野郎!」
「不要吐舌头故作调皮样!这不是非常可爱吗,混账东西!」
本当に腹黒い奴だ。
这家伙真的很「腹黑」。
いや、まあ、冗談なんだろうけど。
不过,唉呀,那是开玩笑的吧。
……冗談なんだよな?
……应该是开玩笑吧?
「しかし、誕生日と言えば、阿良々木先輩。この前、戦場ヶ原先輩が蟹に取り憑かれていたという話を聞いたときは、私は少しばかり暗示的だと思ったものだぞ」
「不过,说到生日,阿良良木学长。我之前听说学姐被螃蟹附身的时候,觉得稍微有一点暗示性的意思在。」
「まあ、取り憑かれていたっていう言い方ちょっと違うかもしれないんだけど……うん? 暗示的? 蟹のどこが暗示的なんだ? 誕生日なんか関係ないだろ」
「被附身这个说法可能有点奇怪啦……嗯?暗示性?螃蟹哪里有暗示性了?那和生日没有关系吧。」
「ほら、だって、戦場ヶ原先輩、かに座だろう?」
「学长你想想,学姐是巨蟹座的吧?」
「え?」
「呃?」
七月七号。
七月七号。
だよな。
是吗。
「何言ってんだ。七月七日生まれはふたご座だろ」
「你在说什么啊。七月七号是双子座吧。」
「え? いや……その、違うと思うけれど」
「咦?那个……我想不对吧。」
「あれ? じゃあ、僕の思い違いか? 七月七日って聞いたとき、すぐに、ああじゃあこいつ、ふたご座なんだって思ったんだけど……」
「嗯?那是我搞错了吗?我听到她是七月七号生的时候,马上就心想这家伙是双子座的说……」
こんな奴が双子で性格もそっくりだったら嫌だなあと思ったから、よく憶えている。
那时候我觉得她的个性也很像双子座,感觉很讨厌,所以我记得很清楚。
「まあ、僕も星座の細かい日付まで、憶えているわけじゃ……いや、でも、かに座って、確か、七月二十三日からじゃなかったけな」
「唉呀,星座详细的画分日期,我也不是记得很清楚……不对,可是巨蟹座我记得是从七月二十三号开始的不是吗?」
「あ」
「啊!」
神原が何かに気付いたようだった。
神原似乎注意到了什么。
「……阿良々木先輩。ここで一つクイズだ」
「……阿良良木学长,在这边我有一个谜题。」
「なんだよ」
「什么啊?」
「十二月一日生まれの人間は、何座だ?」
「十二月一号生的人是什么座?」
「はあ?」
「嗄?」
なんだそれ。
那是什么问题。
クイズじゃないじゃん。
根本不算谜题吧。
「それくらいわかるよ。へびつかい座だろ?」
「那种程度的事情我知道。是蛇夫座吧?」
「ふはっ!」
「噗哈!」
神原駿河が爆笑した。
神原骏河开怀大笑。
「は……はははは、あはは!」
「哈……哈哈哈哈,啊哈哈!」
膝が震えるくらい、立ってくれないくらいにツボに嵌ったらしく、僕の腕に、最早すがりついてくるかのような有様だった。胸を肘に押し当ててくる形から、胸の谷間に僕の二の腕を挟み込むような形になったが、そんな降ってわいたような幸せを享受するためには、神原の不愉快な笑い声が非常に邪魔だった。
看来我似乎点到她的笑穴,让她笑到膝盖颤抖,站也站不住脚,几乎已经整个人搂住我不放了。原本她的胸部压在我的手肘上,现在变成仿佛用胸沟夹住了我的上臂一样,但神原的笑声却让我非常不舒服,让我无福消受这从天而降般的幸福。
「な、何がおかしいんだ……僕はそこまで取り返しのつかない失敗をしたのか」
「有、有什么好笑的……我做了什么无法挽回的错误吗?」
「へ、へびつかい座……ふ、ふははは、今時、へびつかい座……あはは、じゅ、十三星座で、十三星座で考えてる……」
「蛇、蛇夫座……噗、噗哈哈哈,现在这个时代,蛇夫座……啊哈哈,十三星座,学长是用十三星座在思考……」
「……………」
ああ。
啊!
そういうことね。
原来是这样啊。
そうか、わかった、十二星座では、七月七日はかに座なんだな……。
那我明白了,在十二星座当中,七月七号是巨蟹座啊……
「あー、笑った笑った。五年分くらい笑った」
「啊——笑死我了,笑死我了。我一口气笑了五年份了。」
神原はようやく、顔を起こした。涙目である。気持ちはわからないでもないが、いくらなんでも笑い過ぎだ。
神原总算抬起头来,眼中泛着泪光。她的心情我不是不明白,但实在是笑过头了。
「さ、じゃあ行くぞ、らぎ子ちゃん」
「好了,我们走吧,小良木子。」
「扱いがあからさまに雑になってる! 先輩に対する尊敬がどっか遠くに行っちまった! こうなると割と傷つく!」
「那种叫法实在太随便了!对学长的尊敬都不知道跑哪去了!你这样子我会反而比较受伤!」
「あ、ああ。間違えた。阿良々木先輩」
「啊!是吗,我叫错了。阿良良木学长。」
「あんだけ笑かしてやったんだ、フォロー入れろよ」
「你刚才笑得那么过分,好歹也给我一个台阶下吧。」
「フォローと言われても……あそこまで堂々と言われてはフォローのしようがないぞ。そもそも、どうして十三星座なのだ」
「就算学长这么说……刚才学长说得那么名正言顺,我实在找不到台阶让你下啊。话说回来,学长为什么是用十三星座啊?」
「そんなこと訊かれても……だいぶん前に十二星座から十三星座に移行したんじゃなかったのか?」
「你问这个问题……不是很久以前就从十二星座改成十三星座了吗?」
「移行したが普及しなくて廃れたのだ。阿良々木先輩ともあろうお人が、どうしてそんなことを知らない」
「是改了,不过后来没有普及,十三星座就没人在用了。阿良良木学长这么厉害的人物,怎么会不知道这件事情呢?」
「うーん……。その頃から星座占いに興味がなくなったから、かな……」
「嗯……从那时候开始,我就对星座占卜不感兴趣了,应该吧……」
そうか……。
原来……
普及しなかったのか……。
后来没有普及吗……
「怪異と一緒だな。どんな恐ろしい魑魅魍魎でも、人口に膾炙しなけりゃ、それは最初からいなかったことになるわけだ」
「这就跟怪异一样。不管是多么可怕的魑魅魉魍,如果不脍炙人口的话,那打从一开始就不会存在了。」
「いや、そんな深い話ではないと思うが……」
「不,我想问题没那么深远吧……」
「へびつかい座って、そもそも何なんだろうな」
「说到底,蛇夫座究竟是什么样的星座啊?」
「夏の星座で、α星はラス・アルハゲ14だ。あらゆる恒星中最大の固有運動を持つバーナード星を、その星座の中に持つことで有名だな」
「蛇夫座是夏季星座,α 星是 Rasalhague。在那星座里头含有恒星当中,自行运动最快的巴纳德星,因此相当有名。」
「いや、星自体じゃなくて……へびつかい座って、どういう由来なんだろうなって話。笛吹いて蛇を操ってる奴の星座なのかな?」
「不,不是星体本身的事……我是想问蛇夫座的由来是什么。是弄蛇人的星座吗?」
「確かあれは、ギリシャ神話の、アスクレピウスという医聖の姿を表わしたものだったと思うぞ。そのアスクレピウスが蛇を握っているから、へびつかい座だ」
「我记得蛇夫座好像是象征希腊神话中,一位叫作『阿斯克勒庇俄斯』的神医。因为那个阿斯克勒庇俄斯手上握着蛇,所以是蛇夫座。」
「へえ」
「哇——」
頷く僕。
我点头。
全く知らなかった。
我以前完全不知道。
「しかし、神原、星自体の知識にしろ星座の由来にしろ、そんなこと、よく知ってるな。ひょっとしてお前、星とか詳しいのか?」
「不过,神原你不管是对星体,还是对星座的由来都很懂呢。你该不会对星体之类的很有研究吧?」
「らしくないか?」
「我看起来不像吗?」
「まあ、正直」
「老实说,不像。」
「ふむ。確かに詳しいというほどではないが、夜空を眺めるのは好きだな。簡易的なものでよければ、天体望遠鏡も持っている。年に二度は、他県の天文台で開かれている、天体観測のイベントに参加するぞ」
「嗯——我不能说是很有研究没错,不过我很喜欢眺望夜空。我还有一个简易的天文望远镜呢。每年我还会去参加其他县的天文台举办的天体观测活动呢。」
「へえ。プラネタリウムじゃねえんだな。知識よりは実践って感じか」
「哇。原来你不是去天文馆啊。感觉你是实践重于知识呢。」
「プラネタリウムも好きだが、あの施設には流れ星がないだろう? 恒星や星座もいいのだが、私ははかない流れ星が好きなのだ」
「我也喜欢去天文馆,可是在那里看不到流星吧?恒星和星座是很不错,不过我更喜欢稍纵即逝的流星。」
「なるほど。ロマンチックだ」
「原来如此。你真是罗曼蒂克啊。」
「うん。地球もその内流れ星になればよいと思う」
「嗯!要是地球有一天也能变成流星就好了。」
「そのとき僕ら人類は無事で済むのか!?」
「那时候你想我们人类会平安无事吗?」
とんでもねえこと考えてやがる。
这家伙的想法还真是要不得。
ロマンスからは程遠い。
那和罗曼蒂克差远了。
それではパニックムービーだ。
根本已经是灾难片了。
「……とかなんとか言ってる間に、目的地に到着したぞ。忍野の言うことにゃ、その辺から階段があるらしいんだが──ああ、あったあった。……まあ、ただの獣道に見えなくもないけれど──」
「……我们东扯西扯之间,已经走到目的地了。照忍野说的,那附近好像有一个楼梯——啊,有了有了……不过,那看起来满像普通的小路——」
道路沿いにある山。
这座山位于马路旁。
山の名前は知らない。 忍野も知らないとのことだった。
名字我并不清楚。忍野说他也不知道。
山の間を縫うように道路が作られていると見るべきなのだろうが、歩道の脇から、山の頂上へ向かって、階段──少なくとも昔は階段があったらしい痕跡が見て取れる。いや、今も一応、階段は階段だ。だけど、さっきの神原の話じゃないが、我が校の運動部の連中がこの辺りまでジョギングに来ているという話は聞いたことがあるが、しかし、この階段を昇って山中に入っているということは、なさそうである。草木がぼうぼうで、あらかじめ言われていなければ、これが階段であるとは、とても気付けそうもない。かつて階段であったとも、やはり思わないだろう。
应该说是马路穿过山间建造而成的比较适当吧,人行道的旁边,有座通往山顶的阶梯——至少那里看起来以前有座阶梯。不,现在姑且还称得上是阶梯。不过,我听说我们学校的运动社团,有慢跑来到这附近(这和神原先前说的那个无关),不过看起来似乎没有爬上这座楼梯,进到山里的样子。因为楼梯口杂草丛生,如果没事先听说的话,我根本不会发现这里有座阶梯。就算这里以前有座阶梯,我也料想不到吧。
獣道。
小路。
ん、いや──よく見れば、草が踏み潰されているような跡がある。足跡だ。なるほど、この階段、全く誰も使っていないというわけではないのか。だけど、だとしたらこれは、どんな人間の足跡なのだろう? 確か忍野は、その神社には近付いてもいないと言っていたから、この足跡は忍野のものじゃないはずだ。神社は既に廃れてしまっていると言っていたから、そこの関係者ということでもないだろう……。
嗯?不对……仔细一看,杂草有被践踏过的痕迹。是足迹。原来,这座阶梯并不是完全无人使用啊。倘若如此,这又是谁的足迹呢?忍野说他从没靠近过那座神社,所以这足迹不会是他的。他还说过那间神社早已荒废,故也不会是神社的相关人士吧……
変な奴らのたまり場になっている。
那边已经变成了奇怪家伙们的聚集地——
ことは──ないはずだけど。
这点应该不可能吧。
「…………」
僕の左腕に付着している神原を見る。
我往黏在我左手上的神原看去。
こいつはこの通り、やけにガードの甘い、その癖可愛らしい女の子だからな……大丈夫だろうか。変な奴らと言うのが、文字通り変な奴らだった場合……僕一人にできることには限界がある。鬼の血が体内に残っているとは言っても、その血は僕の場合、基本的には新陳代謝や回復力の方面にしか働かないのだ。
这家伙看起来非常没有防备,又是一个娇小可爱的女生……这样没问题吧。要是照字面一样,真的出现了奇怪的家伙们……我一个人能做的事情有限。就算我的体内残留着鬼的血液,但那些血液基本上只能提升我的新陈代谢和恢复能力而已。
「ばるかん後輩」
「『原神』学妹。」
「なんだ、らぎ子ちゃん」
「什么事?小良木子。」
「その左腕──どんな調子だ?」
「你的左手……感觉怎么样?」
「うん? どういう意味だ?」
「嗯?那是什么意思?」
「いや、何か変わったことはないかと思って」
「没什么,我只是想问问你的手有没有什么不对劲的地方。」
「特にない」
「没有什么特别奇怪的地方。」
特にない──か。
没有特别奇怪的地方……吗。
まあ、何気に重そうなその風呂敷包み、ちっとも持ち替えることなく、左手で持ち続けているし……。
唉呀,毕竟她一直用左手拿着那个看似很重的包袱,完全没有换过手……
じゃあ、心配いらないのかな……元々の基礎体力に加えて、猿の左腕のパワーがプラスされている、それが今の神原のデフォルトの状態であるのだとすれば……。
那我就不用担心了吧……原本的基础体力,再加上猿猴的左手——如果这是神原的预设状态的话……
「ああ。左腕一本で阿良々木先輩をベッドに押し倒せるくらい、力は有り余っているぞ」
「没错。我现在左手的力气,要把阿良良木学长压倒在床上是绰绰有余呢。」
「押し倒す場所がベッドである必要をいまいち感じないんだが」
「你压倒我的地方好像没必要选在床铺上吧。」
「じゃあ、阿良々木先輩を左手一本でお姫様だっこできるくらい、だ」
「那,要用一只左手把学长公主抱,还绰绰有余呢。」
「片手でやったらお姫様だっこじゃなくて、むしろ町娘を攫う山賊っぽいぞ……いや、それならまあいいや」
「用单手就不是公主抱了,反而比较像是山贼抢村姑吧……算了,那就好。」
「ふふふ」
「呵呵呵!」
すると、なんだかいやらしい感じに神原は笑う。
随后,神原发出了感觉有些猥琐的笑声。
なんだか嬉しそうだ。
她看起来很高兴。
「阿良々木先輩は本当に優しいなぁ……こんな私のことを本当に心配してくれている。ああもう、阿良々木先輩には心身の全てを委ねても安心していられるなぁ……」
「阿良良木学长真的很温柔呢……居然真的担心起我来了。啊啊!我感觉自己可以放心地把身心全都托付阿良良木学长呢……」
「頰を赤らめて感慨深そうに言うな。お前はサトリの妖怪15かよ。焚き火を起こすぞこの野郎。人の心をぽんぽんぽんぽん、気軽に読みやがって」
「不要红着脸说得好像很感慨一样。你是妖怪觉吗?我要生火了喔,你这家伙。居然随便就读出我心里在想什么……」
「これでもバスケットボール部の元エースだ。目を見れば、相手の考えていることくらい、大体わかるのだ。まして尊敬している阿良々木先輩のお考えだぞ? 忠実なる徒たる私にしてみれば、手玉に取るようにわかる」
「别看我这样,我可是前篮球社的王牌选手。我只要看对方的眼睛,大概就能知道对方在想什么了。何况是我尊敬的阿良良木学长的想法。以我这个忠实的使徒来说,可说是『操控自如』呢。」
「手玉に取ってどうする、実は悪女なのかよお前は。ふうん……目を見ればねえ。本当かよ。それこそテレパシーみたいだな……。じゃあ神原、今、僕の考えてることを当ててみろ」
「操控自如还得了,你其实是一个心机女吧。嗯……看眼睛吗,真的假的?那样就跟心电感应一样了……那好,神原你猜猜看我现在在想什么。」
「こんなところだろう。『この女、頼んだらブラジャー外してくれねえかなあ』」
「学长应该是在想,『这女人,如果拜托她把胸罩脱掉的话,她会不会听我的啊。』。」
「お前は僕のことをどんな目で見てんだよ!」
「你到底是用什么眼光在看我啊!」
「外そうか?」
「要我脱掉吗?」
「う、く……いらねえよ!」
「呜,哼……不需要!」
不覚にも数瞬迷ってしまった。
失策,我居然瞬间犹豫了一下。
神原は「そうか」と軽く頷いて、変わらず腕に抱きついているだけだった。……僕の数瞬の迷いを突っ込んでこずにあっさりスルーするあたりが、男の下心に寛容な包容力溢れる母性をアピールしているようで、素直にムカつく……。
「是吗。」神原微颔首,还是一样抱着我的手没有其他反应……她无视了我那瞬间的犹豫,没有对我吐槽,仿佛像在强调自己的母性光辉充满包容力,能够宽容男人的不良居心一样,实在让我觉得很不爽……
そもそもお前が振ってきた話じゃねえか。
追根究底来说,是你先开口说那种话的吧。
なんで姉さん女房気取り16だよ。
为啥要装得一副好像姐弟恋当中的大姐姐一样。
「行くぞ……ああもう、山に登る前から疲れてきた」
「走吧……啊啊!真是,还没爬山之前我就累了。」
「うむ」
「嗯。」
「一応、足の方、気をつけとけよ。虫刺されの方はともかくとして、この山、やたら蛇が出るらしいから」
「多注意脚边。被虫咬的话倒是还好,这座山上好像有很多蛇类出没的样子。」
「蛇か」
「蛇吗?」
くすっと、神原が笑った。
神原窃笑。
さっきのへびつかい座の話を思い出したのかもしれない。
她大概又想起了刚才蛇夫座的事情。
構わず、僕は話を続ける。 「まあ、無毒の奴ばっかりらしいけどな。けど、蛇の牙は長いからな、こんなところで咬み傷もらってもつまらんだろ」
我毫不在意,继续说道:「不过,好像都是没有毒的啦。可是蛇的牙齿都很长,在这种地方被咬很不值得吧。」
「……阿良々木先輩は首筋だったな」
「……阿良良木学长被咬的是脖子吧。」
「ああ。蛇じゃなくて鬼だけど」
「是啊。不过这是被吸血鬼咬的,不是蛇。」
山中の階段を昇りながら、そんな話をする。さっきまでと座標がそこまで極端に変わったわけでもないのに、山に入るや否や、湿度が一気に上昇したらしく、酷く蒸し暑い。忍野の話だと、この階段が直接、その神社に繫がっているはずなのだが、神社のその高度までは聞いていない。さすがに頂上ってことはないと思うが……まあ、それでもいいだろう。どうせ、そんな高い山でもない。
我们一面爬上山中的阶梯,一面聊着上述的话题。现在的坐标和刚才相比,没有什么极端的改变,然而一进入山中,周围的湿气似乎急遽上升,变得非常闷热。据忍野所言,这阶梯应该是直通那间神社,但我没有问他神社的高度有多少。我想应该不会在山顶吧……唉呀,那也没关系吧。反正这座山也不是很高。
「私の左腕は」
「我的左手,」
神原は言った。
神原开口说。
「忍野さんの話では、二十歳までに、治るそうだ」
「照忍野先生说的,好像二十岁前就会恢复了。」
「へえ? そうなのか?」
「咦?真的吗?」
「うん。まあ、このまま何もしなければ──だが」
「嗯。不过啊,他还加了一句,如果维持现状什么都不做的话。」
「そりゃよかったな。二十歳過ぎりゃ、またバスケットボールができるってことじゃないか」
「那真是太好了。就是说你二十岁后,又可以继续打篮球啰?」
「そうだな。勿論、身体がなまっては望みも潰える、そのための自主トレはかかせないが」 と、神原。
「这个嘛。当然,要是我的身体钝掉,继续打篮球的希望也会落空,所以我才会持续做自主训练。」神原说着。
そして続ける。
然后,她开口问:
「阿良々木先輩は──どうなのだ?」
「阿良良木学长……会怎么样啊?」
「え? 僕?」
「咦?我?」
「阿良々木先輩は──一生、吸血鬼なのか?」
「阿良良木学长……一辈子都会是吸血鬼吗?」
「……僕は」
「……我嘛,」
一生。
一辈子。
一生──吸血鬼。
一辈子……都是吸血鬼。
人間もどき。
类人。
人間以外。
非人。
「それでもいいと、思ってるよ。大体──神原の左腕とは違って、今でもそれほど、不自由はないしな。太陽も十字架も大蒜も、全然、平気だし。はは──怪我してもすぐ治っちゃうから、むしろ得なくらいなんじゃないのか?」
「我觉得那样也无妨啦。毕竟……我的状况和你的左手不一样,现在也没有什么不方便的地方。而且我完全不怕太阳、十字架和大蒜。哈哈!受了伤也可以马上恢复,反而是好处多多吧?」
「私は強がりが聞きたいのではない。阿良々木先輩。忍野さんから聞いた話では──忍というあの少女を助けるために、阿良々木先輩は吸血鬼に甘んじているとのことだったが」
「我想要听的不是逞强的话。阿良良木学长。忍野先生告诉我……学长是为了救那位叫作忍的少女,才会自愿当吸血鬼的呢。」
忍。
忍。
それが、僕を襲った吸血鬼の、今の名前。
那是先前袭击我的吸血鬼,现在的名字。
金髪の吸血鬼。
金发的吸血鬼。
彼女は今──忍野と共に、学習塾跡の廃墟にいる。
她现在和忍野,一起住在那栋废弃补习班。
「…………」
あの野郎、それにしても、口が軽いな。
话说回来,那家伙还真是大嘴巴。
まさか戦場ヶ原には話してないだろうな……恐らく、相手が『左腕』の神原だからこそ、参考にすべき先例として、あえてその話をしたって感じなのだろうから、大丈夫だろうけれど……。
他该不会也跟战场原说了吧……他大概因为对方是「左手」化成怪异的神原,所以才会把我的事情当作值得参考的前例,刻意告诉她的吧,所以是不要紧啦……
「そんなことはないよ。これは、ただの後遺症だ。忍のことは──まあ、責任だ。助けるなんて、そんなだいそれたもんじゃない。これでも、折り合いをつけて、ちゃんとやってるさ。大丈夫だ。……僕はバスケットボール部の元エースとかじゃねえから目を見てもわからないけど、神原、僕のことを心配してくれてんだろ?」
「没那种事情啊。这只是普通的后遗症。忍的事情……唉呀,算是我的责任吧。什么救不救的,没那么严重啦。别看我这样,我有找一个妥协点,很守分寸在做的。我不要紧啦……我不是前篮球社的王牌,看对方的眼睛也不知道人家在想什么啦,不过神原,你在担心我吧?」
「……まあ」
「……是啊。」
「大丈夫だ。心配には及ばないよ──勿論、行為にも及ばない」
「我不要紧。你不用担心啦……当然,我也不会对你做那檔事。」
最後は茶化すようにそう言って、僕はこの話を打ち切った。神原はまだ何か言いたそうだったが、それは言うべきことではないと思ったのだろう、そのまま、黙った。言うべきことははっきり言うが──言いたいだけのことは、律する。全く、僕の左腕に巻きつかせておくには惜しい女だ。
最后我开玩笑似地说完,结束了这个话题。神原似乎还有话想说却转为沉默,她大概觉得那不是自己该说的话吧。该说的事情会清楚说出口;但自己想说的事情却会加以克制。这样的好女孩,搂着我的手真是可惜了。
「あ」
「啊!」
「お」
「喔?」
と、会話が途切れた、その丁度いいタイミングで、階段の上から、人が降りてきた。小走りで危なっかしく、この頼りない階段を駆け下りてくる。
谈话中断后,在这时间点恰巧有一个人影,从楼梯上方跑了下来。对方踏着不稳的步伐,自这座老旧的阶梯小跑步而下。
中学生くらいの女の子だった。
人影是一个年纪约国中左右的女孩。
長袖長ズボンの完全防備。
身上全副武装,穿着长袖长裤。
腰にウエストポーチをつけていて。
腰上挂着腰包。
頭には帽子を深くかぶっている。
头上戴着一顶帽子,帽沿拉得很低。
それゆえ、前が見えているのかいないのか非常に不確かで、しかも、見えていたとしても足元だけを見て駆け下りてきている感じだったので、下手をすれば僕達と正面衝突していただろう。たまたま会話が途切れたタイミングだったのが本当によかった、僕と神原は、彼女に、通常よりも早いタイミングに気付き、それぞれ、階段の脇に寄って避けることができた。
因此让人不确定她是否看得见前方,就算看得见,感觉也只是看着脚边不停往下奔跑,要是一不小心,可能就和我们撞在一块了吧。我和神原凑巧结束谈话真是太好了,因为这样我俩才能比平常更早一步注意到女孩,各自往靠楼梯的两旁回避开来。
すれ違う瞬間。
在交错的刹那间。
彼女は僕らを見て──そこで初めて僕らに気付いたようで、ぎょっとした顔をして、したかと思うと、それから更にペースを上げて、階段を降りていった。あっと言う間に、その背中が見えなくなってしまう。道路に出るまでに絶対に二回は転ぶと思わせるほどの、それはペースアップだった。
女孩看了我俩一眼……仿佛当下才注意到我们一样,大惊失色的瞬间,更是加快了脚步,跑下楼梯。转眼间,她的背影已经消失不见。她到马路之前肯定会跌倒个两次——女孩飞快的脚步,让我有如此的联想。
「………………?」
んん?
嗯嗯?
なんか、今の子……。
总觉得刚才那个女孩……
見たことがあるような、ないような。
好像似曾相识的样子。
「どうした? 阿良々木先輩」
「怎么了?阿良良木学长。」
「ん、いや……」
「嗯,没事……」
「それにしても、こんな山道で人間とすれ違うとは、意外だったな。阿良々木先輩の手前口には出せなかったが、私はてっきりこの階段、死道だと思っていたぞ。それに、随分と可愛い女の子だった。もう使われていない神社と言っていたが、案外、使っている人はまだ使っているのではないのか?」
「话说回来,能在这种山路和人擦身而过,真是意料之外啊。刚才当着阿良良木学长的面我没能说出口,我原本以为这个楼梯是死路的说。而且,那个女孩还挺可爱的。学长说这间神社已经没人在用了,不过搞不好会来参拜的人还是会来参拜吧?」
「しかし、あんな女の子がか?」
「可是,对方是那种年纪的女孩喔。」
「信仰に年齢は関係あるまい」
「年龄和信仰是没关系的。」
「そりゃそうだけどさ」
「话是这样讲没错啦。」
「恋愛に年齢が関係ないように」
「就跟年龄和恋爱是没关系的一样。」
「それは付け加える必要のない台詞だな」
「这个补充是多余的吧。」
言いながら、どこで見たことがあるのか、思い出そうとしたが、しかし、とうとう、思い出すことはできなかった。いや、そもそも、あんな女の子のことは知らないのかもしれない、ただのデジャヴなのかもしれないと、僕はここでは結論づけて、
我说话的同时,试着想先前曾在哪里看过她,然而最后还是想不到。不对,追根究柢来说,或许我根本就不认识那样的女孩,可能只是既视感而已,我下定结论。
「ま、登ろうぜ」 と神原に言った。「上から人が来たってことは、とりあえず上に何かがあるってのは確かってことだ。ひょっとしたら忍野が僕に嫌がらせをしているんじゃないかという可能性をずっと考えていたが、とりあえずその線は消えたってことだ」
「好了,我们继续爬吧。」我对神原说。「有人从上面下来,就表示上面一定有什么东西吧。我刚才一直在想可能是忍野故意要恶整我,看来这个可能性消失了。」
「うむ。阿良々木先輩が私を騙しているという線もこれで薄くなった」
「嗯。阿良良木学长在骗我的可能性,也变低了。」
「その線は本当にあった上、消えないんだな……」
「你真的以为有那种可能性,而且还不是完全消失啊……」
「笑顔で許すぞ」
「我会笑着原谅学长的。」
「黙れ欲求不満」
「闭嘴,欲求不满的家伙。」
「過ちで構わない。うるさい女になるつもりはない」
「就算这是个错误也没关系。我不想变成一个啰嗦的女人。」
「既に相当うるせえよ」
「你已经够啰嗦了。」
「そうか。それならばどうだ、阿良々木先輩。いっそのこと阿良々木先輩が私の欲求不満を解消してくれたら、結構静かになると思うぞ。さかりのついた動物を鎮める、一番手っ取り早い手段は、それだろう」
「这样啊。那你看这样如何,阿良良木学长。干脆学长来满足我的欲求不满,我想这样我就会变安静下来了喔。要让发情期的动物安静,这是最简单的方法吧。」
「自分で自分のことをさかり17のついた動物扱いする奴を、僕は初めて見たよ……」
「我还是第一次听到有人把自己比喻成发情期的动物……」
「恥ずかしいのは最初だけだ、阿良々木先輩。むしろこういうことはさっさと済ませてしまった方が後腐れがなくていい」
「会觉得不好意思也只有一开始而已,阿良良木学长。这种事情要赶快处理掉才不会留下祸根。」
「先に行くぞ」
「我先走了。」
「なるほど、放置プレイか」
「原来如此,放置 Play 吗?」
「先に帰れ!」
「你滚回家!」
「阿良々木先輩はどうも私の誘いに冷たいな。女の子が積極的なのは好みではないのか? となると、どうやら阿良々木先輩には、多少嫌がっているような振る舞いを見せた方がよいようだな」
「阿良良木学长对我的诱惑还真冷淡啊。学长不喜欢女生太积极吗?既然这样,看来我要假装有一点讨厌学长可能会比较好的样子。」
「勝手にしろ」
「随你高兴。」
「想像するがいい。今私は、嫌々阿良々木先輩と手を繫いでいる……弱味を握られ、暴力で脅され、命令されて無理矢理手を握らされている……そこで私がおどおどした口調で一言、『こ、これでいいんですか……』」
「学长你想象一下吧。现在我是不情不愿和学长牵手……因为学长有我的把柄,我被暴力胁迫,学长命令我硬是强迫我牵手……这时候,我战战兢兢地开口说了一句话:『这、这样可以了吗……』」
「う……そう考えるとそそるものが──あるか!」
「呜……这样一想实在勾起了我的欲望……才怪!」
ない。
绝对不会。
皆無である。
完全没有勾起。
「ふうむ。阿良々木先輩は身持ちが堅い。冷たいというよりはつれない感じだ。こうもぞんざいに扱われると、自分の女としての魅力に自信がなくなってくる。阿良々木先輩は私のことなんてどうでもいいのだろうか」
「嗯——阿良良木学长真是矜持啊。与其说是冷淡,倒不如说是无动于衷。被这样草率应付,我对自己身为女生的魅力,变得越来越没自信了。阿良良木学长难道不在乎我会变成什么样子吗?」
「いや、お前のことをどうでもいいなんて思ってないよ。ただ、僕には戦場ヶ原という彼女がいるんだから、つれない態度を取らない方が問題だろう」
「不是,我没有不在乎。只是,我现在有战场原这个女朋友,不无动于衷才会有问题吧。」
「しかし見たところ阿良々木先輩と戦場ヶ原先輩はプラトニックな関係のようだ。ならばもてあました性欲をぶつける場所が必要だと思うのだ」
「可是,照我的观察,学长和学姐是柏拉图式爱情的样子。既然这样,我觉得必须要有个地方,让学长发泄多余的性欲吧。」
「必要ねえよ! そんな場所に志願するな!」
「没必要!你不要自愿当那种角色!」
「精神面は戦場ヶ原先輩がケアし、肉体面は私がサポートする。見よ、これこそ見事な黄金のトライアングルだ」
「精神方面有战场原学姐照顾,肉体方面由我来辅助。看吧,这就是一个漂亮的黄金三角形。」
「違う、お前こそよく見ろ、それこそ見事なドロドロの三角関係だ! 僕は絶対に嫌だよ、そんな気まずいオレンジロード18 !」
「不对,你才要看清楚,那根本是一种剪不断、理还乱的三角关系!我绝对不要,那种让人尴尬的《古灵精怪》关系。」
「と言いつつ、阿良々木先輩は私の胸から目が離せないようだった。なんだかんだ言っても男の本能には逆らえないようである」
「嘴巴上这么说,阿良良木学长的视线似乎一直停留在我的胸部上。看来男人不管嘴巴怎么说,身体的反应都是诚实的。」
「なんでお前がモノローグを語る!?」
「为什么是你在当旁白!」
「今回は番外編だから私が語り部なのだ」
「这次是番外篇,所以我负责当旁白啊。」
「何言ってんだお前!?」
「你在说什么鬼话啊!」
ていうか。
而且,
何のどんな番外編でも、お前が語り部になることはないと思う。
不管是哪种番外篇,我想你都不可能当上旁白。
十八禁に指定されちゃうもん。
因为作品会被认定为十八禁。
「むう。なかなかうまくいかないものだ、私の肉体をもってすれば阿良々木先輩くらい軽く虜にできると思っていたのに」
「呜。看来没有这么顺利的样子,我原本以为只要用我的肉体,就可以轻松把阿良良木学长变成我的俘虏说。」
「そんなことを思っていたのか!?」
「原来你在打那种歪主意吗!?」
プラトニックな関係ねえ……。
柏拉图式的爱情吗……
デートもしてくれない冷淡な彼女が、ものは言いようだな。でも、そういうのってやっぱり見てわかるものなんだ。漫画とか読んでて、成立したはずのカップルが、いつまでも引っ付いたり離れたりを繰り返しているのを見て、もういいからさっさと行き着くとこまで行っちゃえよと茶々を入れていたものだけど、
冷淡、连跟我约个会都不肯的女朋友,话真是要看人怎么说啊。不过,这种事情果然一看就会明白了。我以前在看漫画的时候,每次看到应该已经成对的情侣一直分分合合,就会想要从旁插嘴要他们赶快冲向终点,不过和战场原交往之后,我才知道:
うん、あれはリアリティだったんだと、彼女ができて初めてわかった。
嗯,原来漫画上的那些都是真实的。
無理無理。
没办法、没办法。
行き着くとこまでなんかそうそう行けないって。
终点没有那么简单就到得了。
「身持ちが堅いって言うなら、あいつこそ、なんだかんだで身持ち堅いんだよなあ」
「说我矜持的话,那家伙才更矜持吧。」
「そういうのもいいではないか、阿良々木先輩。戦場ヶ原先輩の過去を思えばそれもまたわかる話ではあるし、照れ照れの初々しい彼女なのだと思えば、それもまた萌えポイントだ」
「那样不也很好吗,阿良良木学长。只要想想战场原学姐的过去,就能明白原因了,而且把学姐当作是一个羞答答、未经世故的女朋友,也是一个萌点吧。」
「照れ照れねえ……萌えポイントだと意識してしまった段階で、それは萌えではなく売りになってしまうと、僕は思うんだよ」
「羞答答吗……如果萌点可以意识到的话,我想那就已经不是萌点,而是卖点了。」
「売っているなら買って悪い道理はあるまい」
「是卖点的话,买下来岂有不对的道理。」
「そりゃそうだ」
「那倒也是。」
階段を昇る。
我们爬上楼梯。
入り口のところで気付いた、草を踏み潰した足跡は、あの子のものだったのだろうか、などと考えながら、神社についたのは、五分後だった……それもまた、階段同様、事前に神社だと聞いていなければ神社だとは思えないような、荒れ果てた様相を呈していた。変な奴らが溜まってたらどうしようという心配は全くもって無意味だった。田舎だろうがどこだろうが、こんな場所には一秒だっていたくないというのが、正常であろうと変であろうと共通した、人間の考え方だろう。かろうじて、鳥居があるから神社跡だとわかるだけで、建物の方は、どれが神殿なのだか判然としない。位置関係から判断するしかなさそうだ。
刚才在入口处我发现草有被践踏过,那些足迹是那女孩的吗?我一边想着事情,走到神社已经是五分钟后的事情了……那间神社的外观也和阶梯一样整个都荒废了,如果不是事前听说,根本不会觉得那是一间神社。看来我担心这里会变成奇怪家伙们的聚集地一点,是完全没有意义的。不管这里是乡下还是哪里,不管是正常人还是怪人都一样,只要是人就不会想在这种地方多待上一秒吧。因为眼前有一个鸟居,才能勉强看得出这里是神社的遗址,而建筑物方面,则无法判断哪里是神殿。看来只能从位置关系来判断了。
さっきの女の子も、ここにきたのだろうか。
刚才那位女孩,也有来过这里吗。
しかし、何のために?
但是,是为了什么?
明らかにこの神社に、神様はいない。
这间神社很明显已经没有神明了。
神様だって逃げ出すはずだ。
就连神明也会落荒而逃。
忍野風に言うなら、神様はどこにでもいる──んだろうけれど、それでも、ここにだけはいないような気がした。まあいいか……とりあえず、仕事を済ませるとしよう。お札を貼れば、それだけでいいんだから、これまでに忍野から頼まれた仕事と比すれば、楽勝の部類である。僕はポケットから、忍野に渡されたお札を取り出した。
照忍野流的说法,神明是无处不在——的样子,可是我觉得唯独不会存在于此地。算了……反正赶快先把工作做好吧。只要贴上符咒即可,这和至今忍野拜托我的工作相比,算是比较轻松简单的了。我从口袋中拿出忍野交给我的符咒。
と、そのとき。
就在此时,
「ううん」
「唔——!」
神原がすっと──僕の腕から、離れた。
神原忽然从我的手腕上离开。
ずっとあった好ましい感触が、肘から消える。
本来一直感觉到的可喜触感,从手肘上消失。
「どうした? 神原」
「怎么了?神原。」
「……少し、疲れたというか」
「……我好像,稍微有点累。」
「疲れた?」
「有点累?」
何が?
什么?
あの程度の階段で、か?
因为那种程度的阶梯吗?
そりゃ、確かに結構な段数ではあったけれど、体育会系の神原があれでへたれるとは思えないのだけれど。実際、僕ですら、多少息が上がっている程度なのに。
阶梯的阶数是稍微多了点没错,但我想体育系的神原不会因为那样就累垮吧。老实说,就连我也是稍微有点喘而已。
しかし、どうやら神原は本当に疲れているらしく、心なし顔色も悪い。こんなコンディションの神原を見るのは僕は初めてだった。
但是,神原似乎是真的累了,或许是心理作用,她的脸色看起来也很差。我第一次看到神原变成这样。
「ふうん……じゃあ、どっかその辺で休むか? えっと……そうは言っても、座れそうな場所は……石の上くらいしかねえよな……。けど、神社の石って下手に座ったりすると罰が当たりそうな気がするし……」
「嗯……那我们找个地方休息吧?我看看……话是这么说没错,不过能坐的地方……也只有石头上而已……可是,要是随便坐神社的石头,总感觉好像会遭天谴……」
この神社に罰を与える神様がいるかどうかは別として──それでも、なんだかよくない気はする。これまでの経験上、心理がそう働く時点で、それはやめておいた方がいいことだろう。
这间神社有无会惩罚人的神明姑且不论,我的心里就是有那种不祥的预感。从我至今的经验来看,每当我心中有那种感觉时,最好还是别轻举妄动来得好。
しかし、ではどうしようか。
可是,该怎么办才好?
悩んでいると、神原の方から、
我正在烦恼时,
「それより阿良々木先輩、食事にしないか?」
「对了,阿良良木学长要不要先吃个东西?」
と、提案してきた。
神原对我提议说。
「食事?」
「吃东西?」
「うん。後輩の身から食事を申し出るなど、作法に反した不躾なお願いかもしれないが、私は、気分が悪いのは、大抵、おなか一杯ご飯を食べれば治るのだ」
「嗯。由我这个晚辈提议要吃饭可能有失礼数,不太礼貌,可是我身体不舒服的时候,基本上只要把肚子吃饱饱就会好了。」
「………………」
漫画のキャラみたいな奴だな。
这家伙就跟漫画里头的人物一样。
体調の悪いときまで、面白い後輩だ。
就连身体不舒服的时候,她也是一个很好玩的学妹。
「けど、お札貼るときまでは何も食うなって言われてんだよな……身を清めるとかなんとかでよ。いいや、じゃあ、神原、お前どっか、その重箱広げられそうな場所、探してくれよ。寂れた神社でお昼ご飯っていうのもぞっとしないけど、それもまた風情ってもんだ。その間に僕は、ちゃっちゃとこのお札、貼ってくるから」
「不过,忍野要我在贴符咒之前,什么东西都不要吃呢……说什么要净身之类的。随便啦,那神原,你去找一个可以把那个多层饭盒摆开的地方吧。在荒废的神社前吃午饭也不会很可怕啦,可是还是要考虑到气氛的问题。在那段时间,我先去把这个符咒贴好。」
「うむ。そうだな、そうしよう。申し訳ないが、仕事の方は阿良々木先輩に任せることにする」
「嗯。也好,就这么办吧。抱歉,工作方面就交给阿良良木学长了。」
「じゃ」
「待会见。」
そう言って、僕は神原に背を向け、草を踏み分けるようにして建物の方に向かう。忍野には本殿に貼るよう言われているけれど、本殿のどこに貼ればいいのかまではちょっとわからない感じだな……中に貼ればいいのか、それとも戸に貼ればいいのか。それがわからないのは、はっきり言って忍野の指示が足りない所為だったが、何、あいつの指示が足りないのはいつものことである。自分で考えろということなのかもしれない。
我说完背对神原,用脚蹚开草丛往建筑物的方向前进。忍野要我把东西贴在本殿,但是我不太清楚该贴在本殿的哪里……要贴在里头,还是贴在门窗上好呢?我会不知如何是好,讲白一点就是忍野的暗示不够清楚的缘故,没关系,反正他的指示每次都不清不楚。或许他是要我自己去想吧。
とりあえず、一通り建物を見ながら、僕は再度、さっきすれ違った女の子のことを考える。なんだろう、やけに気になる……いや、気になるというよりは。
我先将建筑物整个看过一遍,同时一边想着刚才和我们擦身而过的女孩。怎么回事,我竟会如此在意……不对,要说是在意——
見覚えがあるとか。
倒不如说她很眼熟。
会ったことがあるとか。
或是似曾相识。
それ以前の問題として──感じるものがあった。
最重要的是——我好像有感觉到什么。
それが何かまでは──わからないが。
虽然我不是很清楚……那种感觉是什么。
「でも、会った気がするのも、また確かなんだよな……どこで会ったんだっけ。中学生と知り合う機会なんて、そうそう……」
「不过,我一定有见过她……是在哪里遇见的来着。要和国中生认识的机会,本来就不是……」
妹ならまだしも……。
要是我两个妹妹的话倒还好……
妹?
妹妹?
「ん……なんだろう」
「嗯……到底是怎么回事呢。」
結局、僕は本殿とあたりをつけた建物の戸に、お札を貼った。というより、その戸を開けてしまえば建物自体が崩れてしまいそうな予感がしたので、それ以外に選択肢はなかったと言っていい。
最后,我把符咒贴在一栋看似本殿的建筑物门上。应该说,我有预感要是把那扇门打开,整栋建筑物可能就会倒塌,所以我除了贴在门上以外,没有其他选择。
そっと建物を離れ、僕は鳥居のところに戻る。神原はまだ戻ってきていなかった。携帯電話を取り出す……が、まだ神原から、電話番号を教えてもらっていないことに気付く。そう言えば神原にも、僕の番号を教えていない。
我放轻脚步离开建筑物,回到鸟居的地方。神原还没回来。我拿出手机……这才发觉到,神原还没把她的手机号码告诉我。对了,我也还没把号码告诉神原。
携帯電話、意味ないじゃん。
这样手机根本没有意义吧。
「おーい、神原──!」
「喂——!神原——!」
というわけで、大声で呼ぶ感じになった。
因此,我放声呼喊。
が、返事がない。
不过,她没有回应。
「神原!」
「神原!」
一層大きな声で呼んでみたが──同じだった。
我试着更大声去呼喊,但结果还是一样。
途端、不安になる。
此时,我感觉到不安。
ここらにいるのなら、今の声が聞こえないわけがない。戦場ヶ原ならともかく、神原に限って、僕を置いて勝手に帰ってしまうなんてことはありえないだろう。こんな廃墟で人を見失うということが意味するのは──
要是她在这附近,没理由听不见我的声音。如果是战场原的话姑且不谈,神原绝对不可能把我扔下自己先回去吧。在这种废墟看不见她的人影,就表示——
「神原!」
「神原!」
わけもわからないまま、僕は駆け出した。
我在搞不清楚状况下,开始起步奔跑。
気分が悪いと言っていた。まさか、食事の場所を探している内に、どこかで倒れてしまったとか……、そういうことなのだろうか?
她刚才说身体不舒服。该不会她在找地方吃饭时,在某处昏倒了……会是这样吗?
最悪のケースが、僕の脳裏をよぎる。その場合、僕はどう対処すればいいのか──どうするべきなのか。何かあったら、戦場ヶ原にもあわせる顔がない。
我的脑中闪过最坏的情况。在那情况下,我该如何处理,该怎么办才好。她要是出了什么事,我也没脸去见战场原了。
しかし、幸いなことに、その最悪のケースは、最悪の形では、訪れなかった。そう広くない境内を走り回っている内に、僕は神原の後ろ姿を、見つけることができたのだ。
然而幸运的是,那个最坏的情况,没有以最坏的形式前来造访。因为我在巴掌大的神社院内四处奔跑之间,看见了神原的背影。
重箱を脇に置いて。
多层饭盒就放在她的身旁。
呆けているように──佇んでいる。
她有如呆滞一般,伫立在那里。
「神原!」
「神原!」
声をかけ、肩に手を置く。
我出声叫她,把手放在她的肩膀上。
「ひゃうんっ!」
「呀!」
びくっと──震えて、神原は振り向いた。
神原颤抖了一下,转过头来。
「あ、ああ……なんだ、阿良々木先輩か」
「啊、啊啊……原来是阿良良木学长啊。」
「おいおい、なんだとはご挨拶だな」
「喂喂,这算什么回答方式啊。」
「あ……申し訳ない。私としたことが、大恩ある阿良々木先輩に対して、考えられない物言いだった。つい、気が動転してしまって……阿良々木先輩が急に私の肉を触るから」
「啊……对不起。我怎么这么不小心,居然用了这种无法想象的措辞,跟对我有大恩的阿良良木学长说话。我一个不注意就惊慌失措了……因为学长突然摸我的肉。」
「肉っていうな」
「别用肉这个字。」
肩だ。
是肩膀。
「失言の償いは身体でさせてもらう。ひょっとしたら抵抗する素振りを見せるかもしれないが、それは場を盛り上げるための演技だから」
「失言的代价,请让我用身体来弥补。我可能会做出抵抗的动作,不过那是为了炒热气氛而做出来的演技。」
「そういう軽口が言えるってことは、どうやら精神状態は正常なようだな、安心したぜ神原。ああ、僕は軽口だってわかってるぞ。はいこの話は終わり。全く、随分可愛い悲鳴をあげるじゃねえか」
「你还能开这种玩笑,看来你的精神状况很正常嘛,我松了一口气了,神原。啊!我知道你是在开玩笑。好,这个话题结束。真是的,你的尖叫声还挺可爱的嘛。」
顔色は──悪いままだ。
她的脸色……还是一样很差。
むしろ、より悪くなった感じである。
或许应该说,感觉变得更糟了。
意外な悲鳴を茶化していられる雰囲気でもない。
看来这气氛,我没办法嘲笑她刚才那出人意料的尖叫声。
「なんだよ、大丈夫か? そんな気分が悪いんだったら──そうだ、さっきの本殿の縁側とか、軽く掃除すれば、横になれそうだったぞ。おぶってってやるから、そうしろよ。衛生面に不安があるなら、そうだな、僕の上着を敷けばいいから──」
「你干么啊,不要紧吧?如果你身体那么不舒服的话……对了,刚才那个本殿的外廊只要稍微扫一下,应该就可以躺吧。我背你过去,你去躺一下吧。如果你怕脏的话,这个嘛,只要把我外套铺在下面就好——」
「いや……阿良々木先輩。そうじゃなくて」
「不是……阿良良木学长。我不是身体不舒服,」
神原は──正面を指さした。
神原她……指着正前方。
「あれを、見てくれ」
「你看那个。」
「え?」
「咦?」
僕は言われた通り、神原の指さす方向を見た。
我照她的指示,朝神原手指的方向看去。
境内から少し外れた山林。
稍微远离院内的山林中。
その中の、一本の太い木。
其中一棵粗壮的树木。
その木の根元に──切り刻まれた蛇がいた。
在那棵树木的根部……有一条被切碎的蛇。
ぐねぐねと長い、にょろりとしたその身体の節々を──刃物で五等分されて殺された、一匹の蛇の死体があった。
那条被人宰杀的蛇,长而蜿蜒的尸体各节,被利刃剁成了五等分。
五等分。
五等分。
殺されている。
被人宰杀。
しかし、その頭部はまだ生きているかのように。
但是,它的头部宛如还活着一般。
舌をちろちろと震わせ、口を大きく開けて。
舌头还在微微抽动,嘴巴张得斗大。
苦しそうに、うめいている。 ように──見える。
看起来像是在痛苦呻吟着。
「………………っ」
そんな光景に、絶句する中──
当我哑口无言,看着眼前的光景时——
僕は唐突に、あの子の名前を、思い出した。
我突然想起了那孩子的名字。
すれ違った女の子。
刚才和我们擦身而过的女孩。
そうだ。
没错。
彼女の名前は──千石撫子だ。
女孩的名字叫作……千石抚子。
003
「これと──これかな。あ、その本はあんまりためにならないかも。書いてくださっている先生には申し訳ないんだけれども、結局、暗記を勧めているだけになってるから。効率を求めるなら、そっちの本の方がいいと思う」
「这本……还有这本吧。啊!那本书可能派不上什么用场。这么说可能对写书的老师很抱歉,不过那本书到头来只是在建议我们死背而已。如果要讲求效率的话,我想那边的书会比较好。」
羽川翼は──そう言って、次々と、本棚から参考書を引き出し、僕に手渡して行く。一冊、二冊、三冊、四冊、これで五冊。
羽川翼说完……接连从书架上拿出好几本参考书,交到我的手上。一本、两本、三本、四本,总共五本。
直江津高校からそう遠くない大型書店──である。
我们现在位于,距离直江津高中不远的大型书店。
六月十二日、月曜日。
时间是六月十二号,礼拜一。
その放課後。
时段是放学后。
いよいよ今週末の金曜土曜にと迫った文化祭の打ち合わせと準備を終えた、クラス委員長の羽川と、副委員長の僕は、その帰り道、一緒に本屋さんに寄った。というか、僕が羽川に頼んで、一緒に来てもらった格好だ。
文化祭迫近眉梢,将在本周末的礼拜五、六举办,今天班长羽川和副班长我,终于结束了讨论和准备的工作,在回家的路上顺道去了书店一趟。应该说,是我拜托羽川陪我来的。
三つ編み、眼鏡。
麻花辫、眼镜。
委員長の中の委員長。
班长中的班长。
究極の優等生、羽川翼。
超级优等生,羽川翼。
「悪い、羽川……そろそろ予算枠を超えそうだ」
「抱歉,羽川……我差不多快超出预算了。」
「へ? 予算枠って?」
「咦?预算是?」
「一万円。家に帰れば、もうちょっとあるんだけど、財布の中には、それだけだ」
「一万日币。回家拿的话应该有一点,不过我现在身上只有那么多钱。」
「あー。参考書って割と高いからね。内容を鑑みれば、しょうがないことではあるけれど。じゃ、参考書の良し悪しの他に、費用対効果も考えようか。この本は返却して、こっちを、と」
「啊。因为参考书还满贵的。如果考虑到内容,贵一点也是没办法的事情。那我看这样吧,除了参考书的好坏以外,也把成本效益列入考虑吧。这本书放回去,换成这一本。」
羽川翼──
羽川翼——
彼女もまた、怪異にかかわった者である。しかし彼女の場合は、僕や神原、あるいは戦場ヶ原とはまた別枠で数えるべきかもしれない──何故なら、彼女は怪異とかかわった、その記憶自体を、喪失してしまっているからだ。僕の春休みの地獄に匹敵する、ゴールデンウィークの悪夢を、まるっきり、忘れてしまっているのだ。
她也曾经和怪异扯上关系。但是跟我、神原或战场原比起来,她的情况应该算是特殊案例——因为,她完全丧失了和怪异相关的记忆。她已经彻底忘记了黄金周的恶梦(那足以和我的春假地狱匹敌)。
けれど僕は憶えている。
但是我记得。
僕は鬼。
我是鬼。
神原は猿。
神原是猿猴。
戦場ヶ原は蟹。
战场原是螃蟹。
そして羽川は──猫。
然后,羽川是……猫。
「でも」
「不过,」
羽川は唐突に言った。
羽川突然开口说。
「私は、少し、嬉しいな」
「我稍微有点高兴呢。」
「……何が?」
「……高兴什么?」
「阿良々木くんが、参考書選びを手伝って欲しいとかさ、そんなこと、言い出すなんて。阿良々木くんが真面目に勉強する気になったんだとすれば、私の努力も無駄じゃなかったんだなあって」
「阿良良木居然会希望我帮你选参考书。如果你愿意认真读书的话,那我的努力也不算白费了啊。」
「………………」
いや。
不对。
お前の努力はあんまり関係ないんだが。
你的努力没什么太大的关系。
こいつ、僕のことを不良と勘違いしていて、更生させるために無理矢理僕を副委員長にしたところがあるからな……。
这家伙似乎一直误会我是不良少年,硬是把我提拔为副班长,想让我改过自新……
的外れというか、ほとんど暴走だ。
她完全搞错了,或许应该说她几乎走火入魔了。
「うーん、真面目に勉強とか、そういうんじゃなくってな……僕もそろそろ進路のことを視野に入れようかと思って」
「嗯——也不是要认真读书啦……我想自己差不多也该考虑一下未来的出路了。」
「進路?」
「出路?」
「というか、進学と言うか……この間、戦場ヶ原とそんな話をしてさ。それから、あいつの志望校を聞いたんだが……」
「或者应该说升学的事情吧……之前,战场原有跟我谈过这个话题。然后,我就问她想要考哪间学校……」
「ああ。戦場ヶ原さんは確か、地元の国立でしょ? 推薦で行くはずよね」
「啊。战场原同学要去读这里的国立大学吧?她应该可以靠推荐入学进去。」
「……お前は何でも知ってるな」
「……你真是无所不知呢。」
「何でもは知らないわよ。知ってることだけ」
「我不是无所不知,只是刚好知道而已。」
いつも通りのやり取り。
稀松平常的对话。
というか、戦場ヶ原のことに関しては、羽川は僕よりも先んじて、ずっと気に掛けていたのだから、委員長として、それくらいは知っていても当然なのかもしれない。そう言えば、戦場ヶ原の方も、珍しく、羽川のような度を過ぎたお節介のことを、そこまで過度に嫌ってはいないようだ。多分羽川なら、現在計画中の、戦場ヶ原の誕生日パーティーに招待しても、それほど激しい怒りを買うことはないはずである。
应该说,羽川一直以来都比我还要更担心战场原的事情,因此身为一个班长,这点小事她会知道或许也是理所当然的吧。说起来,很难得战场原对于羽川这种过度热心的个性,没有流露出超常的厌恶感。如果是羽川的话,邀请她来参加正在计划中的战场原生日派对,应该不会让战场原火冒三丈才是。
しかし、誕生日パーティーを開くことによって、怒られることを考慮しなければならない恋人って……。
可是,开个生日派对,居然还要顾虑女友会不会发飙……
「何?それじゃ、阿良々木くん、ひょっとして、戦場ヶ原さんと同じ大学を目指すってこと?」
「咦?那阿良良木你该不会想和战场原同学考同一间大学吧?」
「まだあいつには言うなよ。変な期待させたくねえし」
「你先别跟她说喔。我不想让她抱有奇怪的期望。」
照れ隠し──というわけでもないが、なんとなく、手元の参考書の一冊を、ぱらぱらとめくる素振りをする僕。
我下意识拿起手边的一本参考书,啪搭啪搭地随意翻阅。这个举动不是因为我想要遮羞。
「というか、ものすごく冷たいことを言われそうだ」
「应该说,她会对我说一些很冷淡的话吧。」
「冷たいことなんて……彼氏彼女なんでしょ?」
「冷淡吗……你们是男女朋友吧?」
「まあ、そうなんだが。でもあいつの場合、親しき仲にも冷気ありって感じなんだよな……」
「是没错啦。不过,她给人一种对亲友也会很冷漠的感觉啊……」
「んん? ああ、なるほど。親しき仲にも礼儀ありの礼儀と、冷たい空気の冷気を掛けた駄洒落なのね? あはは、阿良々木くん、面白い」
「嗯嗯?啊,原来是这样啊。你把『对亲友也要有礼数』的礼数,换成冰冷淡漠的冷漠,变成了一语双关的俏皮话吗?啊哈哈!阿良良木真有趣。」
「わかりやすく説明するな!」
「不要解释得这么明白!」
あと駄洒落って言うな。
还有别说这是俏皮话。
口に出して面白いとか言うな。
也别说这很有趣。
「あはは、阿良々木くん、きっと『冷たいことを言われそうだ』って言った段階から、もうその表現を考えてたんでしょ? そう言えば私が『彼氏彼女なんでしょ?』って返すことは読めるもんね。もう、いちいち緻密なんだから」
「啊哈哈!阿良良木你肯定是在说『她会对我说一些很冷淡的话吧』的时候,就已经想到那个俏皮话了吧?这样说起来,你也预料到我会说『你们是男女朋友吧』这句话了吧。真是的,你想得还真是周到呢。」
「話の組み立てを解体しないでくれ!」
「不要把对话的构造拿出来分解!」
なんかもう丸裸だ。
总觉得我已经一丝不挂了。
僕は話を戻す。
我把话题拉回。
「別に具体的な目標がどうこうってわけでもないんだが、この間の実力テスト、僕、思ったよりも点、取れてな。赤点じゃなきゃいいくらいにしか考えてなかったのに……そりゃ、お前や戦場ヶ原に較べりゃ全然なんだけど、まあ、久々に真面目に勉強したから、それなりに」
「我也没有什么具体的目标啦,上次的实力测验,我考的分数比自己想得还要高。我原本想说不要不及格就好……我和战场原比起来还差得远啦,不过我隔了好久难得认真看书,所以考的分数还不错。」
「戦場ヶ原さんにマンツーマンで勉強見てもらったんだっけ?」
「上次好像是战场原同学一对一教你功课的吧?」
「そう」
「是的。」
ちなみに、その戦場ヶ原は、僕のような落ちこぼれの勉強を見ながら、学年七位の総合得点を、飄々と獲得していた。見事というか天晴れ19というか、あそこまでいけば、最早感心するしかない。
值得一提的是,那位战场原教我这种吊车尾的人,还能轻松地考出学年第七名的总成绩。这不知该用厉害还是用牛逼来形容,到了那种境界,我也只有五体投地的份了。
もう一つちなみに、総合得点一位は羽川翼だ。
再附带一提,总成绩第一名的是羽川。
言うまでもなく。
这点自然不在话下。
全教科一位を達成している。
她考出全科目第一名的成绩。
ほとんど満点だったような。
每一科几乎都是满分。
さておいて、僕は数学以外は順位が貼り出されるような得点ではなかったが、それでも、これまでの実力試験から見れば飛躍的に、その得点は伸びていた。
另外,我除了数学以外其他都不是可以上榜的成绩,但从至今的实力测验来看,我的成绩有了显著的进步。
それは、ちょっと、夢を見てしまうほどに。
进步到会让我稍微抱持一点梦想。
今が六月。
现在是六月。
これから半年、みっちりと勉強すれば──
接下来的半年,假如我好好读书的话——
とか、そんな風に思わせるくらいには。
我的脑中甚至浮现出这种想法。
「なんか、戦場ヶ原に勉強見てもらってさ、久し振りに、勉強の仕方がわかったっていうか……中学生のときの感覚を思い出したよ。僕、入学したての一年生の頃に、そういうの、どっかで諦めちまってたからな」
「总觉得战场原教我功课,让我阔别已久地又掌握了读书的方法……应该说,她让我回想起国中时候的感觉。因为我在一年级刚入学的时候,就已经放弃课业了。」
「ふうん……いいことだと思うよ。彼女と同じ大学に行きたいからなんて、ちょっと動機が不純な気もするけど、学問の扉は常に開いているからね。うん、そういうことなら、私も全面的に協力させてもらうわ」
「嗯——我觉得这是一个好现象。虽然你是因为想要和女朋友读同一所大学,动机有点不纯,不过学问之门永远都是敞开的。嗯,既然这样,那我也会全面地协助你的。」
「………………」
戦場ヶ原の教育も怖いけど、お前の教育も怖いんだよな……。
战场原的教导方式很可怕,你也不遑多让啊……
言わないけど。
不过这话我不会说出口。
それに、どう考えても、僕の大学合格に、羽川翼の協力は不可欠だろう。
而且,我要考上大学,不管怎么想羽川翼的协助都不可或缺吧。
「そんなわけで、うまく目処がつくようだったら、夏休みから予備校に通おうかと思ってるんだが、どっかいいところ知ってるか?」
「所以,要是我的预测顺利的话,我打算从暑假开始上补习班,你知道哪一家比较好吗?」
「うーん。それはわからない。私、塾とか通ったことないし」
「嗯——那个我不知道。因为我没有上过补习班。」
「そうなのか……」
「是吗……」
この天才肌め。
你这该死的天才。
「でも、友達に聞いておいてあげるわ」
「不过,我会帮你问一下我朋友。」
「基本的に面倒見いいよな、お前は。助かるよ。まあ、現実問題、今年の合格は危ういかもしれないが、一年の浪人を見込んで勉強すれば、いけるんじゃないかと思う」
「你实在是乐于助人啊。帮了我一个大忙。唉呀!不过实际情况来看,今年要考上可能有点困难,我估计如果重考一年的话,应该可以考上吧。」
「やる前からそんな志の低いことでどうするの。どうせなら、一発合格を狙いなさい。……で、戦場ヶ原さんにはいつ言うつもりなの?」
「还没做之前,志向就这么低怎么行呢。既然要考就一次合格……那战场原同学那边,你打算什么时候告诉她啊?」
「だから、ある程度、目処がついたら、かな……あいつの協力もまた、不可欠だろうし。戦場ヶ原の受ける国立大学って、試験にも色んな方式を採用してるらしいからな、とにかく数学を重視した受験方式を選んで……」
「所以说,要等我安排到一定的程度吧……毕竟她的帮助也是必须的。战场原要考的国立大学,好像有很多种考试的方式,总之我就选择重视数学的考试方式……」
「なるほどね」
「原来是这样啊。」
ぽん、と一冊、参考書を、更に僕に手渡す羽川。
啪一声,羽川又把一本参考书放到我的手上。
「はい。これでぴったり、一万円」
「来。这样刚好一万。」
「……え、噓。値段をうまく丁度に揃えたの? お前、そんな器用なことできるの?」
「……咦?真的假的。你把钱算得这么刚好吗?你做得到这么巧妙的事情吗?」
「ただの足し算でしょ、こんなの」
「这只是普通的加法而已吧。」
「………………」
確かに、ただの足し算といえばただの足し算だけど……基本四桁で、暗算で、話しながらだぞ……。僕、自分で数学が得意なつもりでいたんだけど……算数のレベルから、もう羽川の相手にはなってないということか。
这么说确实没错……可是数字基本上都是四位数,还要用心算,而且你还一边和我讲话耶……我原本以为自己很擅长数学……其实我从小学程度的数学开始,就已经不是羽川的对手了吗?
ちょっとやる気なくすというか、凹むな……。
这让我有点受挫,或者该说是让我意志消沉吧……
思い切り出鼻をくじかれた感じだ。
感觉自己刚鼓起干劲,就被人狠狠泼了一桶冷水。
これから半年、僕は戦場ヶ原ひたぎと羽川翼に対する計り知れない劣等感と共に頑張らなくちゃならないわけか……。
未来半年,我必须要跟战场原黑仪和羽川翼带给我的,无法斗量的自卑感一块奋斗吗……
まあ。
唉呀。
頑張るしかないのだが。
不过我也只能努力了。
「ところで、阿良々木くん」
「对了,阿良良木。」
「なんだよ、改まって」
「干么啊,突然这么正经。」
「さっき聞いた話の続きなんだけど。そのすさんだ神社跡で、五等分にされた蛇の死体を見つけて──それから、どうしたの?」
「刚才说我们聊的那个,你们在荒废的神社发现被切成五等分的蛇尸体……然后接下来呢?」
「え……ああ、その話か」
「诶……啊,你是说那个啊。」
放課後、文化祭の準備をしていたときに、そんな話をしたのだった。単に忍野の近況を伝えるだけのつもりだったのだが、やはり昨日の今日だ、印象に残っていたその話をしてしまった。小動物が無残に殺されていたなんて、聞いててあまり気持ちのいい話ではないだろうから、すぐに打ち切ったのだが、どうやら羽川は羽川で、その話を気にしていたらしい。
放学后,我和羽川在准备文化祭时聊到了那件事。本来我只是想告诉她忍野的近况而已,不过毕竟昨天的事情让我留下深刻的印象,于是我告诉了她。小动物被杀害分尸的话题,会让人听起来不太舒服,所以我马上就打住了,看来羽川她也很在意的样子。
「別に。一応、その蛇は、神原と二人で、穴掘って埋めてやったんだけど……けど、それからさ、その辺を散策してたら、蛇の死体だらけで」
「也没怎么样。总之我和神原两个人,挖洞把那条蛇埋了……不过在那之后,我们在附近闲逛的时候,发现四周都是蛇的尸体。」
「死体──だらけ?」
「都是……蛇的尸体?」
「うん。ばらばらに刻まれた死体だらけ」
「对。全都是被切得七零八落的蛇尸体。」
五、六匹はいた。
有五、六条左右。
途中から数えるのをやめた。
我数到一半就停止了。
埋めるのも──諦めた。
也放弃要让它们入土为安。
神原が本気で気持ち悪そうにしていたからだ。
因为神原当时看起来真的很不舒服。
「結局、すぐに山を降りてさ……それから、近くの公園で、神原が作ってきたというお弁当を頂いた。やけにおいしくてびっくりしたんだが、聞いてみれば、お祖母ちゃんに手伝ってもらったんだってさ。というか、むしろ逆で、お祖母ちゃんが作っているのを、神原が手伝ったみたいだな。『お前は何をしたんだ?』と訊いてみれば、『包丁を準備した』とか『お湯を沸かした』とか『鍋が吹き零れないように見ていた。まあ吹き零れてしまったが』とか、そんな感じでさ。まあ、あそこまで運動能力が高くて、その上料理も得意ってんじゃ、ちょっと欲張り過ぎだよな」
「最后,我们马上就下山……然后在那附近的公园,吃神原做的那个便当。因为实在太好了,让我吓了一跳,结果我一问之下才知道那是她请她奶奶帮忙做的。应该说是相反,是神原她奶奶在做,她在旁边帮忙的感觉。因为我问她:『你做了什么?』她说:『我有帮忙准备菜刀、烧开水、还有看着锅子不让煮沸的水溢出来,不过最后还是溢出来了啦。』之类的。话说回来,她的运动能力已经高得离谱,要是还很擅长料理的话,那就有点太过贪心了。」
「それはそうかもしれないね。でも、本当に惜しいよね、神原さん。腕の怪我さえなければ、今頃は大会の真っ最中なのに」
「或许你说得没错吧。不过神原同学真的好可惜喔。要是她的手没受伤,现在应该下场比赛了吧。」
「…………」
おっと。
好险。
そのあたりのことは、伏せてるんだっけ。
那方面的事情,我要瞒着其他人才对。
危うく、口が滑るところだった。
刚才我差点就说溜嘴了。
神原駿河引退の真相を知っているのは、直江津高校内においては、僕と戦場ヶ原だけだ。それ以上増えることはないし、それでいいと思う。
知道神原骏河引退真相的人,在直江津高中里头只有我和战场原而已。我俩知道就够了,不能再让其他人知道。
笑えるのは、お弁当を食べたら、本当に神原の気分が復調したことだった。あのスポーツ少女、エネルギーの吸収効率が尋常でなくいいらしい。
好笑的是我们吃完便当后,神原的身体状况真的恢复了。那个运动少女,能量的吸收效率似乎非比寻常地好。
「まあ……大変だったね、阿良々木くん」
「唉呀……阿良良木你还真是辛苦呢。」
「ああ。蛇をあんな風に殺すなんて、どっか儀式めいててさ、考えさせられたぜ。ぞっとするっつーか、ぞっとしないっつーか。場所が神社跡っていうのも、なんかな。あ、ひょっとして羽川、あそこに神社があったの、知ってた?」
「是啊。蛇被人那样杀害,我总觉得好像有人在做什么仪式一样。感觉有点让人毛骨悚然。地点是旧神社也让我有点在意。啊,羽川你该不会早就知道那边以前有一间神社了吧?」
「うん」
「嗯。」
あっさり頷く。
羽川很干脆地点头。
当然のように。
仿佛理所当然。
「北白蛇神社よね」
「那边是北白蛇神社吧。」
「……蛇、か。てことは」
「……蛇吗。这就表示——」
「そ、蛇神信仰って感じなのかな。私もそこまで詳しいわけじゃないんだけれど。地元だからたまたま知ってるってだけで」
「对。那边好像是信仰蛇神的吧。我也不是很清楚啦。因为我是本地人,所以刚好知道而已。」
「そういうのは普通、地元だからこそ知らないことだと思うけどな……十分詳しいと思うし。でも、そうか……蛇神信仰をしてた場所で、蛇殺しか……やっぱ、儀式めいてるな。一応、忍野に報告しておいた方が……いいのかな」
「那种事情,我想通常就是因为是本地人所以才会不知道吧……而且我觉得你知道的已经够多了。不过,这样啊……在信仰蛇神的地方杀蛇吗……那果然很像某种仪式。我先向忍野报告一下……会比较妥当吧。」
怪異。
怪异。
思い過ごしだといいけれど。
如果是我想太多就好了。
でも──千石のこともある。
可是……还有千石的事情。
千石撫子。
千石抚子。
「………………」
……しかし、この話の流れはまずいな。
……不过,这对话的方向不太妙呢。
羽川は、怪異とかかわった記憶をなくしている。忍野に世話になったことくらいは覚えているが、自分が猫に魅せられ、何がどうなったのか──それを、忘れてしまっている。だからというわけでもないのだが、僕としては、そんな羽川に、あまり怪異にかかわって欲しくない。戦場ヶ原のことも神原のことも、あるいは八九寺のことだって、羽川は知らなくていい──これまでも、これからも。
羽川已经遗忘了和怪异有关的记忆。虽然她记得自己曾经受过忍野的照顾,然而她已经忘了自己被猫魅惑,最后发生了什么事情。不完全因为这个缘故,总之我就是不希望羽川和怪异扯上关系。战场原、神原或者是八九寺的事情,羽川都没必要去知道——至今是如此,未来也是一样。
そう思う。
我如此心想。
こいつは、いい奴なのだから。
因为这家伙实在是个好人。
「でもね、阿良々木くん」
「可是啊,阿良良木。」
とはいえ、この場合、そんな心配は杞憂だった。
话说回来,现在想这些只是在杞人忧天而已。
「私が言っているのは、そういうことじゃなくて。神原さんのこと、大変だったねって」
「我想说的不是那个。我是说神原同学的事情,让你很辛苦吧。」
「…………」
むしろ。
反而,
僕は僕の心配をした方がよさそうだった。
我要担心自己才对。
「か・ん・ば・る・さ・ん・の・こ・と。大変だったねって、言ってるんだよ」
「神、原、同、学、的、事、情。让你很辛苦吧,我想说的是这个。」
一言一句、区切って言われた。
她一字一句,断句分明地对我说。
にっこり笑っている。
脸上还带着笑容。
その笑顔が、逆に怖い……。
那笑容反而让人背脊发凉……
「あ、ああ……そうだな、突然体調崩すからさ、なんだったのかと思ったけど……でも、大事なくてよかったよ」
「对、对啊……没错,因为她突然身体不舒服,我还以为她怎么了……不过,没什么大碍真是太好了。」
「そういうことじゃ、なく」
「我不是说那个。」
真面目な口調で、羽川。
羽川的口吻严肃。
いや、ほとんどの場合、こいつの口調は真面目なのだが、今回は特に真面目だ。
不对,这家伙的口吻基本上都很严肃,但是这次特别严肃。
「阿良々木くん、彼女の後輩と仲良し過ぎるのって、問題ない? そりゃ、戦場ヶ原さんと神原さんの仲を取り持ったのは阿良々木くんなんだから、ある程度仲良しなのは、いいと思うんだけど。腕を組むのはまずいでしょ」
「阿良良木,你和自己女朋友的学妹走那么近不会有问题吗?让战场原和神原同学重修旧好的人是你,你们会有某种程度的友好,我想也无可厚非。不过手勾手不太好吧。」
「しょうがねえだろ。人懐っこい奴なんだよ」
「我也没办法吧。因为那家伙很平易近人嘛。」
「そんな言葉が言い訳になると思う?」
「你觉得那可以当作借口吗?」
「それは……」
「这……」
ならないよなあ。
没办法吧。
どう考えても。
不管我怎么思考。
「まあ、阿良々木くんにとっては、後輩って初めてだろうから、わからなくもないけどね。中学生のときも帰宅部だったんでしょ? 可愛い後輩って、嬉しいもんね。それとも、単純に神原さんのおっぱいの感覚が気持ちよかったのかな? 阿良々木くん、いやらしい」
「唉呀,你大概是第一次有学妹吧,所以我也不是不能体会啦。你国中的时候也没参加社团吧?有可爱的学妹,会让人很高兴呢。还是说你单纯只是因为神原同学的胸部,感觉起来很舒服的关系?阿良良木你好猥亵喔。」
「ぐっ……」
「呜……」
微妙に反論できない。
很微妙地,我无法反驳。
違うのだが、違うと言っても、如何せん噓くさい。
她说的不正确,但就算我去否认,听起来也像是在说谎。
「神原さんも、部活を引退することになっていくらか不安定なんだと思うけど、それは阿良々木くんが、びしっとこう、けじめをつけるべきところなんじゃない?」
「我想,神原同学也是因为退出社团的关系,心情有点不稳定,不过阿良良木,你现在应该要好好地划清两人之间的界线吧?」
「うーん」
「嗯——」
「折角阿良々木くんが取り持ったヴァルハラコンビが、阿良々木くんが原因で再解散しちゃってもつまらないでしょ?」
「难得你让圣殿组合重修旧好,要是因为你的关系又害她们解散了,不就没意义了吗?」
「まあ、そりゃそうだ」
「你说得没错啦。」
意志薄弱というか。
我意志薄弱。
弱くて薄いんだよな、僕が。
应该说我是一个软弱、容易受人左右的家伙。
「まあ、そういう意味じゃ、神原さんも男慣れしてなさそうだもんね。変な言い方になっちゃうけど、ずっとスター扱いだったから、むしろ逆に、そういう機会はなかったのかも」
「唉呀,这样看来,神原同学看起来好像也不擅长和男生相处吧。我这么说可能很奇怪,不过她一直被当成明星看待,所以反而没那种机会吧。」
「だろうな」
「也对啦。」
百合だし。
毕竟她是百合。
戦場ヶ原ラブだし。
又爱战场原。
それも秘密。
这些也是秘密。
「阿良々木くんも、そういうコミュニケーションは苦手そうだもんね。でも、苦手だからって許されることと許されないことがあるよ」
「阿良良木你也很不擅长那种交际方式呢。不过,有些东西不擅长可以被原谅,有些则不行。」
「でもなー。僕、戦場ヶ原から、神原の面倒をちゃんと見るように、言われてるんだよな。『私の後輩に無礼があったら承知しないわよ』とか、なんとか。どんな力関係なんだよ、みたいな。三角関係だとしたらとんでもねえ二等辺三角形だぜ。神原の方も、僕の世話になるよう、戦場ヶ原から言われてるみたいだし」
「可是啊,战场原她说要我好好照顾神原,还说什么『要是你对我的学妹失了礼数,我可不会饶过你』之类的话。感觉我们之间,好像有什么作用关系一样。如果是三角关系的话,就是不合情理的等腰三角形。战场原好像也叫神原可以多来麻烦我。」
そうだ。
没错。
この場合、わからないのは戦場ヶ原の心理だ。
这种情况下,让人搞不清楚的是战场原的心理。
あいつは一体、何を考えているんだろう?
那家伙到底在想什么?
「それは、そうね。こんな感じなんじゃない?」
「那是,这个嘛,是这种感觉吧?」
言って。
语毕,
羽川は、そっと、その両手を僕の頭に伸ばしてきた。それぞれの手で、左右から僕の頭を触り、固定する。僕は両手に参考書の山を抱えるようにしているので、その手を振り払うことができない。
羽川将双手轻轻伸向我。接着,用双手从左右两旁触碰我的头,将其固定住。我双手抱着一堆参考书,无法挥开她的手。
「え? え、何?」
「诶?咦,怎么了?」
「はい、どうぞ」
「来,请吧。」
羽川は両手で僕の頭の角度を調節し、僕を見上げるようにした自分の顔と、ぴったり正面に、向かい合うようにする。眼が合う。と思ったが、羽川は目を閉じていた。眼鏡の奥の眼は閉じられて、睫毛が震えているようだった。同じように閉じられている唇が、自然、僕に何か言いたげで──
羽川用双手调整我头部的角度,自己抬头看我,让我俩刚好可以正视彼此的脸庞。我们四目对望。瞬间,羽川闭上双眼。眼镜后方闭起的眼眸,睫毛似乎在颤抖着。同样闭起的唇瓣,很自然地,像是在对我述说着什么——
「え? え? え?」
「诶?诶?诶?」
な、何、このシチュエーション?
这、这状况是怎么回事?
というか、この流れはなんだ?
应该说这发展是怎样?
いや、羽川は、委員長で、僕にとっては忍野と同じくらい、いや、間違いなくそれ以上に恩人であって──
可是羽川是班长,她和忍野一样是我的恩人,不对,她绝对比忍野还要更有恩于我——
で、でもなんか、しなきゃいけないのか?
可、可是我好像必须要亲才行?
どうぞとか言ってるし……。
她刚才都说请了……
ちょっと眼鏡が邪魔っけだけど……、いや。
虽然她的眼镜有点碍事……不对。
むしろこの状況で、何もしない方が……!
应该说在这种状况下,我什么都不做才……!
「……って感じかな」
「……就是这种感觉。」
そこで、ぱっと。
说完,
羽川は、手を離した。
羽川突然放开了手。
悪戯っぽく、笑顔を浮かべている。
脸上浮现出调皮的笑容。
「あと一秒って感じだった? 阿良々木くん」
「还差一秒的感觉对吧?阿良良木。」
「い、いや……何言ってんだよ」
「哪、哪有……你在说什么啊。」
我ながら、声が明らかに裏返っている。
我的声音很明显高了八度。
何言ってんだよは自分だった。
「你在说什么啊」这句话是说我自己才对。
「だから。阿良々木くん、弱くて薄いのよね」
「所以说。阿良良木你很软弱,容易受人左右。」
「………………」
他人から言われると響くな、その言葉。
这句话从别人口中说出来特别响亮啊。
しかも言い返せない。
而且我无法反驳。
あと一秒だったとは思わないが、心に迷いが生じてしまったことは否定しようのない事実だ。
我想应该没有差一秒这么夸张,但我内心有所犹豫是无法否定的事实。
「阿良々木くんって誰にでも優しいじゃない? そういうのって、戦場ヶ原さんから見たら、結構不安だと思うのよね。戦場ヶ原さんには阿良々木くんだけだけど──極論すれば、阿良々木くんは、誰でもいいって感じなんだもん」
「阿良良木你对谁都很温柔吧?这样站在战场原同学的角度来看,她应该会很不安吧。战场原同学只有你一个人——可是讲极端一点,你的感觉好像不管对方是谁都没关系的样子。」
「……不安って」
「……不安吗?」
そんな情緒溢れる奴かな、あいつ。
她是那种情绪丰富的人吗。
でもまあ、あいつのそういう部分を解消したくて、僕は、戦場ヶ原と神原の間を取り持ったというところは、確かにある。とすると、戦場ヶ原の方も、僕のそういうところを解消したくて──か? いや、それだとわけがわからない。理由になっているとはとても言えない。
不过呢,没错,我是想要改正战场原那种冷漠的个性,才会居中让她和神原重修旧好。这么一来,战场原也想要改掉我软弱、容易受人左右的个性,所以才……是吗?不对,那不可能。完全称不上是理由。
「状況に流され易いし、人を傷つけたくない。まあ、優しいっていうのは、普通、いいことなんだけど、それが相手のためにならないこともあるしね。戦場ヶ原さんとしては、あんまり、阿良々木くんに、神原さんと仲良くして欲しくないんじゃないかな? けど、仲良くしないでなんて言えないし、むしろ逆のことを言っちゃう──違うか。仲良くしてもいいんだけど、むしろ仲良くして欲しいんだけど、けじめはちゃんとつけて欲しいというか……戦場ヶ原さんと神原さんとを較べた上で、ちゃんと自分を選び取って欲しいって感じなのかな」
「你容易被气氛牵着鼻子走,又不想要伤害到别人。温柔一般来说是很好啦,不过有时候对对方是没有好处的。以战场原同学的立场来说,她可能不希望你和神原同学的感情太好吧?可是她却说不出口,反而说了反话——不是吗?她可能觉得你们亲近一点也无妨,或者她是真心希望你们感情好一点,不过她希望你能够好好地划清界线……应该说,她希望你在比较过她和神原同学两个人之后,依旧能够选择她。」
「なんだそりゃ。わけわかんねえぞ」
「什么鬼。听起来莫名其妙。」
「戦場ヶ原さんもジレンマじゃないのかな? 阿良々木くんは大事な彼氏だし、神原さんは大事な後輩だし」
「战场原同学也是进退两难吧?毕竟你是她最重要的男朋友,神原是她最重要的学妹。」
「ううん」
「嗯。」
その上、神原は百合だしな。
而且神原还是百合。
それを戦場ヶ原は、もう知っているし。
这点战场原已经知道了。
そう考えれば、とても複雑な人間関係だ。
如此来思考的话,这是一串非常复杂的人际关系。
「まあ、戦場ヶ原さん、ツンデレだから」
「唉呀,因为战场原同学是傲娇嘛。」
会話を締めるような調子で、羽川は言った。
有如在总结对话一般,羽川说。
「その行動原理は、一辺倒で理解しようとしちゃいけないと思うよ。常に裏を読まなくちゃ。阿良々木くんも戦場ヶ原さんが大事なら、ちょっとした誘惑で揺らいじゃ駄目だと思うな。誰にでも優しいって、やっぱりちょっと無責任だからね」
「她的行动原理,我们不能用一面倒的方式去理解。必须要时常观察她的内心变化才行。如果你也觉得战场原同学很重要的话,就不可以因为一点小小的诱惑就动摇了。因为对任何人都很温柔,实在有点不负责任呢。」
「ああ……身に染みてわかったよ」
「嗯……你说的我感同身受。」
あの実践演習は効いた。
刚才的实际演练很有效果。
自分の薄弱さを思い知った気がする。
我似乎能够体会自己的意志有多么地薄弱。
……でも、会話の締めが『ツンデレだから』でいいのだろうかとは思ってしまう……っていうか、羽川翼、ツンデレって言葉の意味、ちゃんとわかるんだ……。
……可是,用一句「因为是傲娇」来总结真的好吗……话说回来,原来羽川翼也知道傲娇这个词的意思啊……
つくづく、何でも知ってる奴だ。
这家伙真的无所不知呢。
いい加減、羽川には、戦場ヶ原が教室で被っている猫の仮面の下が、見えてきているということなのかもしれない。
战场原在教室总是戴着猫的面具装乖,羽川可能早就看透她面具底下的真面目了吧。
まあ、猫は羽川の方が専門だしな。
毕竟,猫是羽川的专业领域嘛。
「そう言えば、羽川はどこに進学するんだ? やっぱ東京か? それとも、全国模試で一位を取れるくらいの奴は、海外の大学とか行くのか?」
「对了,羽川你大学要读哪啊?应该是东大吧?还是说,在全国模拟考能考第一名的人,都会去读国外的大学?」
「え? 私、進学しないよ?」
「诶?我不升学啊。」
「…………は?」
「…………咦?」
なんだその爆弾発言。
这劲爆的发言是怎么回事。
素でびっくりした。
我真的瞠目结舌。
「進学……しないの?」
「你不……升学吗?」
「うん」
「嗯。」
「お金の問題か? でも、お前なら、それこそ推薦くらい……」
「是钱的问题吗?可是,你的话应该可以推荐入学……」
ドラフト20一位の取り合いだろうに。
应该会变成各校争夺的第一指名啊。
給料をもらいながら大学に通ってもおかしくない。
就算要她一面领薪水,一面读大学也不奇怪。
「そういうんじゃなくって。別に私、大学で勉強することとか、ないし。……そうだね、阿良々木くんにはもう言っておいてもいいかな。私、卒業したら、ちょっと旅に出るの」
「不是那个问题。我也不是很想去读大学……这个嘛,先跟阿良良木你说应该没关系吧。我毕业之后,想要出外旅行一趟。」
「た、旅?」
「旅、旅行?」
「二年くらいかけて、世界中を見てこようかなって。今見ておかないとなくなっちゃいそうな世界遺産って、いっぱいあるし。私、知識ばっかりに依ってるところがあるからね、色んな経験積んだ方がいいと思ってさ。もしも大学に行くのなら、それから行っても遅くはないしね」
「我想花个两年左右的时间,去世界各地看看。因为世界上有很多现在不看,以后就看不到的世界遗产。我一直都在依赖知识,所以想要出外去累积各式各样的经验。如果想读大学的话,旅行完再去也不迟啊。」
「…………」
思いつきで夢見がちなことを言い出した。
她一时兴起说出这种白日梦——
のでは、ないんだよな……。
看来并不是这样吧……
受験戦争からの現実逃避をしなければならないような成績では、羽川はない。明日入試だと言われても十分に対応できるくらいの実力を、平然と備えている。今この瞬間に試験開始といわれたって、それがどこの大学であれ、楽々と悠々と合格できるはずだ。そんな羽川のことだから、多分、その旅のプランというのも、もう相当に、変更が不可能なほどに、練り込まれていることだろう……。
羽川的成绩没有糟到必须要逃避现实,不去参加联考战争。就算明天是升学考试,凭她的实力也能够充分应对。就算此时此刻开始考试,不管是哪所大学她应该都能不费吹灰之力地轻松考上。因为羽川是这样的人,所以恐怕她的旅行计划也已经筹备到一个阶段,无法变更了吧……
「学校の先生とかには、まだ秘密にしておいてね。言ったら、きっとびっくりしちゃうんじゃないかと思うから」
「老师那边你先帮我保密喔。要是告诉他们的话,他们一定会吓一跳吧。」
「ああ……だろうな」
「嗯……是啊。」
「タイミングを見て、切り出すつもり」
「我打算找个时间跟他们说。」
「そうか……どんなタイミングで切り出しても、びっくりするどころの騒ぎじゃ済まないと思うが……」
「这样啊……你不管什么时候说,我想他们都不是吓一跳就可以了事的……」
間違いなく、上を下への大騒ぎだろう。
肯定会造成举校哗然的大骚动吧。
進学校のトップが、自分の進路にそんな選択をしたなんて前例が残れば、学校の伝統にかかわりかねない。将来を嘱望されているにも程がある羽川のことなのだ。無論、そんなこと、本人だって十分過ぎるほどわかっているだろうけれど……。
升学高中的状元居然对自己的未来做出这样的选择,若此例一开,学校的传统校风恐怕会受到影响。而且做出这种决定的人,还是将来备受期望的羽川。当然,她本人肯定也十分清楚吧……
「お願いね。その代わり、私も、今回のところは、神原さんとのことは、戦場ヶ原さんには秘密にしておいてあげるから」
「拜托你啰。相对地我也会把这次的事情,神原同学的事情,帮你保密不告诉战场原同学。」
「別に僕は後ろ暗いところがあるわけじゃないんだけどな……」
「我又没做什么亏心事……」
「私も後ろ暗いわけじゃないよ。でもさ」
「我也不觉得心里有愧疚啊。可是呢……」
「うん。まあ、わかるよ」
「嗯。好,我知道了。」
ふうむ。
嗯——
ひょっとして、忍野の──影響なのだろうか。
这该不会是忍野……的影响吧。
あの根無し草のことを、羽川は、至極真面目に尊敬しているところがある。少なくともその影響力は、無視できないだろう。もしもそうなのだとすれば、忍野の罪は重いような気がする……あいつ、本当に迷惑な野郎だ。
羽川对那无根浮萍的某些地方,是非常尊敬的。至少他的影响力不容忽视。倘若是这样,我觉得忍野的罪孽会很深重——那家伙真的是一个麻烦人物。
そうか……そうなのか。僕はてっきり、羽川は、高校を卒業したあとも、何かの委員長であり続けるのだろうと、それが神に選ばれた委員長の宿命だと思っていたのだが、一人旅に出てしまうのでは、委員長も何もあったものではない。
原来……原来是这样吗。我一直以为羽川高中毕业后,还会继续担任某种班长,一直以为这是被神选上的班长的宿命,不过她只身去旅行的话,就不会身居班长或任何职务了。
なんだか、ため息をつきたい気分だった。
我现在的心情,很想叹一口气。
うまくいかないもんだな。
真是人算不如天算。
落ちこぼれの僕が今更大学を目指す決意をし。
吊车尾的我,事到如今才准备要考大学。
優等生の羽川翼は、自らアウトサイダーを志す。
优等生羽川翼,立志跳脱社会的既成框架去行动。
神原駿河はバスケットボール部を早期引退。
神原骏河提早退出篮球社。
八九寺真宵だって、もう元には戻れない。
就连八九寺真宵,也无法回到过去。
戻れるのは──
能恢复原状的人——
戦場ヶ原ひたぎだけなのだ。
只有战场原黑仪一个人而已。
「……、痛っ」
「……好痛!」
と。
此时。
そこで唐突に、羽川は右手を、今度は自分の頭部に添えた。
羽川突然用右手抵住自己的头。
支えるように。
有如在支撑一般。
「? どうした?」
「嗯?怎么了?」
「いや、ちょっと──頭痛が」
「没事,只是突然……头有点痛。」
「頭痛?」
「头痛?」
昨日、神原が神社でいきなり体調を崩したことを思い出し、僕はやにわ、焦燥にかられる。が、羽川はすぐに顔を起こして、「ああ、大丈夫大丈夫」と言った。
我想起神原昨天在神社突然身体不适的事情,不由得焦急了起来。不过,「啊!不要紧、不要紧。」羽川马上抬头说。
「ちょっと前から、たまにあるんだ。急に頭が痛むの」
「从前阵子开始,我就偶尔会这样突然开始头痛。」
「おいおい……大丈夫じゃねえだろ、それ」
「喂喂……这样哪里不要紧了。」
「うーん。でも、すぐ治っちゃうし。原因はわからないんだけど……最近、文化祭の準備にかまけて、勉強サボってるからかな」
「嗯——可是痛一下就会好了。我不知道原因啦……不过大概是因为最近忙着准备文化祭,都没有读书的关系吧。」
「お前は勉強をサボると頭が痛くなるのか?」
「你不读书就会头痛吗?」
どんな体質だ。
那是什么体质。
孫悟空のリングでもつけられてるのか。
她头上戴着孙悟空的金箍吗?
真面目が堂に入っている。
她认真的程度,已经到了登堂入室的境界。
骨髄に入っているのかもしれない。
或许已经深入骨髓了吧。
「何なら家まで送ろうか?」
「那我送你回家吧?」
「いや、いい。家は──」
「没关系,不用。我家那边——」
「ああ……そうだったな」
「啊……对喔。」
失態。
失态。
余計なことを言った。
我太多嘴了。
「でも、ちょっとごめん。先に帰るね。阿良々木くんは、もう少し、参考書、選んどきなよ。私のお勧めはその辺だけど、結局はそういうのって、個々人の好みがあるからさ」
「不过,不好意思。我要先回去了。阿良良木你再多选一下参考书吧。你手上的是我推荐的没错,不过这种东西到头来还是要看个人的喜好。」
「ああ。じゃあ──」
「好。那就——」
「うん」
「嗯。」
そう言って。 羽川は、逃げるように、本屋さんから出て行った。
说完,羽川飞也似地离开了书店。
それでも、その辺までは見送って行くべきだったのかもしれないが──あれはあれで結構意固地というか、他人に弱いところを見せるのをよしとはしないところがあるからな。本人が大丈夫と言っている内は、あまり構うべきではないだろう。
不管怎么说,我都应该送她到家里附近才对,但别看羽川那样,她其实还挺固执的,或许应该说她不喜欢让别人看见她软弱的一面。既然她本人都说不打紧,我也不应该多加干涉吧。
けれど。
可是。
頭痛、か……。
头痛吗……
ちょっと気になるな。
这让我稍微有点在意。
羽川の場合、頭痛というのは……。
羽川的话,她的头痛就表示……
「………………」
羽川は──戦場ヶ原の蟹のことも八九寺の蝸牛のことも神原の猿のことも、そして自分の猫のことも、今となっては知らないけれど──
羽川对战场原的螃蟹、八九寺的蜗牛、神原的猿猴,以及自己的猫等事情,至今一概不知。
でも、僕の鬼のことは、知っている。
可是,她知道我的鬼的事情。
だからどうというわけでもない。
虽然这不能代表什么。
けれど、僕にとって羽川が恩人であるという事実は、揺らぎようもない。それは単純に、怪異のことだけではなく──あいつの言葉で、いちいち僕がどれだけ救われていることか。
可是羽川对我有恩,这是一个不动如山的事实。不光是因为怪异的事情——单凭是她说的话,一字一句就不知道为我带来多大的救赎了。
今日だってそうだ。
今天也是。
だから、なんとかあいつの力になりたいと、僕は願っているのだけれど……。
所以我很希望自己能够帮上她的忙……
はあ。 構いたいなあ。
唉!我真想多关心她一下。
「……一応、他のコーナーも見ておくか」
「……先到别区去看一下吧。」
羽川の忠告に従って、僕は参考書のチェックを続けたが、やはり慣れないことは慣れないこと、どの参考書も同じようにしか見えず、とりあえずは羽川に言われたものだけを買うことにし(結局、最終的には六冊になった。一応僕も時間をかけてゆっくりと計算してみたが、本当にぴったり一万円だった。すげえ)、僕は参考書コーナーを離れる。予算きっちりなのでこれ以上何を買うこともできないが、まあ、本は眺めるだけなら無料なのがいいところだ。多量の参考書を抱えたまま漫画の新刊をチェックするというのも馬鹿みたいだが、しかし、参考書を抱えているとそれだけで頭がよくなった気がするので、そういう時間を過ごすのも悪くない……というか、この考え方が既に馬鹿な気もする……。
我顺从羽川的忠告,继续挑选参考书,然而做不惯的事情就是做不惯,每本参考书在我眼中看起来都一样,最后我决定暂时先买羽川推荐的这几本(最后总共买了六本。我也花了时间慢慢算了一下,结果真的刚好一万块。太强啦),随后离开了参考书区。由于预算刚好用尽,我无法再多买什么,不过呢,好在看书是免钱的。虽然检阅最新一期的漫画杂志时,手上抱着一堆参考书还挺蠢的,可是只要抱着参考书,就让我觉得自己似乎变聪明了些,就这样打发时间其实也不坏……不过,我觉得会有这种想法就已经够蠢了……
「……ん?」
「……嗯?」
とりあえず、移動しかけて──僕はそこで硬直してしまった。ありえないものを目にして、思わず、硬直してしまった。危うく、抱えていた参考書を取り落としてしまうところだった。
我想要往别区移动时,瞬间驻足在原地。眼前出现一个不可能的事物,让我不由得僵在那里。手上抱着的参考书差点掉落在地。
いや。
不对。
ありえないというほどじゃない。
这并不是不可能。
同じ町内に住んでいる人間同士が、その町で一番大きな本屋で遭遇する可能性は、決して低くはないだろう──少なくとも、一見ではそこに道があることもわからないような、寂れた神社に続く階段で、たまたますれ違う可能性よりは、ずっと高いはずである。
住在同一个城镇的人,会在镇上最大的书店相遇的可能性绝对不算低吧——至少比在通往废弃神社、猛然一看还找不到的阶梯上,碰巧擦身而过的可能性还要高很多才对。
それだって、確率としてはゼロじゃない。
但上述的情况,以机率来看也不是零。
だから──それが二日連続で起こっても。
所以……就算连续两天碰到面,
不思議じゃ、ない。
也不是,不可思议的事情。
「……千石」
「——千石。」
参考書コーナーのすぐそばの、呪術・オカルトコーナーで、分厚い本を立ち読みしていたのは、千石撫子──妹の昔の友達、千石撫子だった。
站在参考书区旁的咒术 · 超自然区中,拿着一本厚重的书籍正在阅读的人,正是千石——小妹以前的朋友,千石抚子。
一心不乱に本を読んでいるようで──向こうは僕には気付いていない。さすがに正面には回れないので、僕の方からも、横顔が窺える程度なのだが……それでも、面影が窺える。小学生の頃、僕の家に遊びに来ていた……というか、遊びに連れて来られていた、千石だ。千石撫子と、変わった名前だったから、フルネームで憶えている。特に『撫子』だ。お前その漢字は『なでしこ』だろう、なんで一文字足りないんだと、小学生ながらに疑問を感じていたものだったが……。
她似乎全神贯注地在阅读,完全没注意到我的存在。我无法绕到她的正面,所以只能窥视到她的侧脸……但我依旧能看出她昔日的容貌。她就是小学的时候,常来我们家玩的……应该说是被带来我们家玩的千石。她的名字千石抚子很独特,所以我记得她的全名。特别是「抚子」两个字。你那个汉字是念「NADESHIKO」才对吧,为什么会少一个音啊——小学时候的我总是感到不解……
下の妹と同じということは。
她和小妹同年。
今──中学二年生か。
就表示她现在是……国中二年级吗。
私服だからわからないが、恐らくは公立の、僕が卒業した中学校に通っているのだと思う。僕の妹達のように、この地方で私立の中学校を選択する子供はほとんどいない。
她应该是读我毕业的那所公立国中吧,虽然她现在穿便服我看不出来。在这一带鲜少有人会像我两个妹妹一样,选择就读私立国中。
「………………」
僕は千石を思い出したけれど。
我是想起了千石的事情没错。
あの子は、僕のことを、覚えているのだろうか?
不过她还记得我吗?
昨日すれ違ったとき、彼女は驚いたような顔をしたけれど──あれは単に、あんな山の中に、自分以外にも下から登ってくる者がいたことに驚いただけなのかもしれない。友達の兄貴なんて、普通、記憶には残らないだろうし……だとすれば、ここで声を掛けるのも変な話だ。
昨天我们擦身而过时,她露出了惊讶的表情,不过那或许只是因为在那种山中,居然会有自己以外的人从下面爬上来,让她感到讶异罢了。毕竟朋友的哥哥这种小事,平常根本不会有人记得吧……倘若如此,我在这边贸然向她搭话也满奇怪的。
しかし。
可是。
蛇。
蛇。
そう、蛇、だ──
没错,蛇——
している内に、千石は、読んでいた本を本棚に戻し、その場から動き始めた。僕は見つからないように、咄嗟に身を隠す。別に隠れる理由もないのだが、ここで反射的に隠れてしまったことにより、声を掛けるタイミングは完全に逸してしまったことになる。本棚を壁に、迂回するように僕は歩いて、千石の姿が見えなくなったのを確認し、先程まで彼女がいた場所へと移動した。
我还在思考时,千石把阅读的书放回书架上,准备要离开这里。我立刻躲起来,免得被她发现。我没有躲躲藏藏的理由,但却反射性地做出动作,让我在此完全失去了出声叫她的机会。我以书架为墙迂回地绕了一圈,确认看不到千石的身影后,往她刚才站的地方走去。
何の本を読んでいたのか、気になったのだ。
因为她刚才看的那本书,让我很在意。
僕はそのタイトルを確認する。
我确认那本书的书名。
「ちょっと……これは」
「等等……这是——」
その本は──一万二千円の、ハードカバーだった。
那本书是一万两千块的硬壳书。
中学二年生に買える本ではない。高校三年の僕だって、今の手持ちじゃ無理だ。
不是国二生买得起的东西。就连高中三年级的我,现在手头的钱也无法带它回家。
参考書が買えなくなってしまう。
买下它的话,我就不能买参考书了。
だから、立ち読みで済ませていたのだろう。
所以,她才会在店里把它看完吧。
だが──そんなことより。
然而——这些都不重要。
問題は、そのタイトルだった。
问题是那本书的书名。
僕はその奥まったコーナーから出、店内に千石の姿を探したが、既に彼女は見当たらなかった。別のコーナーの奥の方に入っていったのかもしれないが、もう店から出ていったと見る方が正しそうだ。それに、彼女のあの私服……。
我从深处的书区走出,在店内寻找千石的身影,但已经看不到她了。或许她跑到别的书区去了,但眼下她已经离开书店才是正确答案吧。而且,她那套便服……
長袖、長ズボン。
长袖衣裤。
深い帽子に、ウエストポーチ。
深戴的帽子和腰包。
僕の勘に間違いがなければ……というパターンだ。
如果我没猜错的话……她八成是要去那里吧。
「くそっ……しょうがないな」
「可恶……没办法了。」
とりあえず、参考書を買うためにレジへと向かう。レジには結構買い物客が並んでいたが、根気よく待った。慌てて急いてもろくなことにならない。まずは冷静になるべきだ。どうするべきか考えながら、トレイに一万円札を置く。レジの店員さんが、会計がぴったり一万円になったことに驚いているようだったが、それは僕の功績ではないので、どうでもよかった。
我决定先到柜台买下参考书。柜台排着许多等候结账的客人,但我还是耐心等待。焦急没有好事。我应该先冷静下来才对。我一边思考接下来该怎么办,同时将万元钞票放在托盘上。柜台的店员似乎因为刚好是一万元而吓了一跳,不过那不是我的功劳,所以怎么样都无所谓。
ううん。
不对。
昔の知り合いとは言え……一人じゃきついか。
就算我们以前认识……我一个人还是有点勉强吧。
一人でできることには限界がある。
一个人能做的事情有限。
となると、ここは行きがかり上……あいつに協力を仰ぐしかなさそうだった。こういう案件には、あいつ、ことのほか強そうだし。……さっき羽川に釘を刺されたばかりではあるけれど、この場合は仕方がない。
既然这样,照这个发展来看……我也只能请那家伙帮忙了吧。对这一类的事情,那家伙应该特别厉害吧……虽然羽川才刚叮咛过我,可是现在的情况也莫可奈何。
手提げ袋に入れてもらった参考書を左手に、僕は店を出てから携帯電話を取り出し、昨日、あれから教えてもらった携帯電話の電話番号へと、発信した。一昨日、あいつの自宅に電話したときもそうだったのだが、初めての番号に電話をかけるというのは、やはり緊張する。
店员帮我把参考书放入手提袋后,我左手提着袋子,走到店外后拿出手机,拨打昨天在那之后,那家伙给我的电话号码。前天打电话到她家去的时候也是一样,第一次拨打的电话号码,总是会让我觉得紧张。
呼び出し音が五回くらい。
电话响了五声左右。
「神原駿河だ」
「我是神原骏河。」
繫がったと思ったら、いきなりフルネームで名乗られた。なんだか珍しいケースだったので、ちょっと驚いた。
电话一接通,她马上就报出全名。这情况实在很少见,让我稍微吃了一惊。
「神原駿河。得意技は二段ジャンプだ」
「神原骏河。得意的招式是二段跳。」
「噓をつけ。あれは人間業じゃない」
「骗鬼耶。那种东西人类哪做得到啊。」
「ん。その声と突っ込みは阿良々木先輩だな」
「嗯?这个声音还有吐槽的方式,是阿良良木学长吧。」
「……いや、そうだけどさ」
「……是我没错啦。」
声と突っ込みで判断って。
居然用声音和吐槽的方式来判断对方是谁。
昨日、こっちも番号教えたじゃん。お前、僕の電話番号をアドレス帳に登録してないのか? それは寂しい……ああ、いや、まだ携帯電話という機器を使いこなせていないだけか……機械、苦手そうだもんなあ。
昨天我不是告诉你我的号码了吗。你没把我的号码记在电话簿里吗?这还真让我伤心……啊,或许她还没摸熟手机这种工具的使用方式吧。毕竟她看起来对机械很不擅长的样子。
「神原、暇だったら、ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけど……今、何してた?」
「神原,你有空的话,我想请你帮我一个忙……你现在在干么?」
「ふふ」
「呵呵!」
なんだか不敵に笑う神原。
神原发出无畏的笑声。
「暇であろうとなかろうと、阿良々木先輩に望まれたとあっては、たとえそこがどこであっても私は出向く所存だぞ。理由など聞くまでもない、場所さえ教えてもらえれば私はすぐさまそこへ行く」
「不管有没有空,只要阿良良木学长希望,不管要去哪里我都奉陪。我没必要听理由,学长只要把地点告诉我,我马上就会过去。」
「いや、そういうのはいいからさ……別に暇じゃないんだったら、無理してくれなくってもいいんだよ。昨日も昨日で引っ張り出したばっかりで、こっちもかなり心苦しいんだしさ。神原、今どこで何してたんだ?」
「你这样说是很好啦……如果你没空的话,不用勉强也没关系啊。昨天我才硬把你叫出来过而已,现在找你我心里也很过意不去。神原,现在你在哪?在做什么啊?」
「えっと……何をしていたかと言えば……」
「那个……问我在做什么的话……」
「なんだよ、煮えないな。本当に暇じゃないのか? だったら──」
「干么啊,真不干脆。你真的有空吗?这样的话——」
「いや、その……うん」
「不是,那个……嗯。」
意を決したように神原は言った。
神原有如下定决心般说。
「やはり阿良々木先輩に隠し事はできないな。私は今、自宅の自室で、いやらしい本を読んでいやらしい妄想にふけっていた」
「我还是无法隐瞒学长啊。现在我在自己的房间里,正在看A书,沉溺在猥亵的妄想当中。」
「………………」
しつこく聞くんじゃなかった。
我不该逼问她的。
僕がセクハラ野郎みたいになってしまった。
搞得我自己变成了性骚扰狂一样。
「ああ、でもこれだけは誤解しないでくれ、阿良々木先輩。いやらしい本と言っても、全部ボーイズラブだ」
「啊!可是有一点请千万不要误会,阿良良木学长。我是在看 A 书没错,不过全部都是 BL 的。」
「頼むからそれだけは誤解させておいてくれ!」
「拜托!唯独这点请你让我误会吧!」
「今日は新刊の発売日だったものでな、試験中だったから買えなかったものも含め、二十冊ほど購入したのだ」
「因为今天是新刊的发售日,包含在考试中没办法买的那些,我一共买了二十本左右。」
「はあ……いわゆる大人買いって奴な」
「是喔……这就是所谓的大人式购物吧。」
「ちっちっち。この場合は乙女買いと言って欲しい」
「啧啧啧。在这种情况下,希望学长能用少女式购物这种说法啊。」
「うるせえよ!」
「你少啰嗦!」
ということは、神原もこの放課後、この本屋さんに来ていたのかな……この辺りでボーイズラブまで常置してある規模の本屋さんと言えばここくらいだろうし、かもしれないな。しかし、だとすると、本当に狭い町内だ……これがギャルゲーだったらフラグ立ちまくりだよ。
这么说来,神原在放学后也有来这间书店吗……这附近就连BL书籍也很齐全的书店,论规模来看也只有这里而已,所以八成是吧。可是,这样一来这城镇真的很小……如果这是美少女游戏的话,我已经完成了一堆必要的条件了。
「つまり、要は暇なんだな」
「也就是说,你很闲吧。」
「まあ、そう言われても仕方がないな。阿良々木先輩と忍野さんとの絡みを考えることを、忙しいとは言えない」
「唉呀,学长这么说也没错啦。我正在思考学长和忍野先生缠绵情节,所以不能说很忙啦。」
「それがお前のいやらしい妄想なのか!?」
「那就是你的猥亵妄想吗!」
「で、私はどこへ行けばよいのだ?」
「对了,我该去哪里才好?」
「話を逸らすな、いや、話を戻すな! 神原、教えろ、どっちが攻めでどっちが受けなんだ!? 僕が受けだったら許さないからな!」
「不要转移话题,不对,不要把话题拉回去!神原,你快告诉我谁是攻、谁是受!我如果是受的话可饶不了你!」
馬鹿な会話だった。
脑残的对话。
神原とはいつもこんな調子だ。
每次和神原讲话都是这样。
「やれやれ……。僕はたまにはお前と知的な会話を交わしたいよ……お前、確か、結構、頭いいはずだろ?」
「唉唉……我偶尔也想和你聊一些比较有知性的话题……你的头脑应该不错吧?」
「うん。私は成積はいい方だぞ」
「嗯。我的『成积』算很好喔。」
「その漢字だと、成績は悪そうだけど……」
「从你的用字来看,你的成绩似乎很差的样子……」
ともかく、と僕は言う。
总之,我说。
こんな馬鹿な会話を交わしている間にも、千石はどんどん、この書店の位置から離れていくのだ。……まあ、どんなに離れていったところで──その目的地は、わかっているのだが。
在这一来一往的脑残对话当中,千石正逐渐在远离这间书店……不过就算她离得再远——我也知道她的目的地是哪里。
私服姿の千石撫子。
穿着便服的千石抚子。
垢抜けないセンスではあったが、そんなことより。
品味有些朴素,不过那不是重点。
長袖長ズボン──だった。
重点是长袖长裤。
これから、山に入るかのごとく。
仿佛她等会要去山上一样。
「昨日行った神社。そこの階段に入る前の歩道で、待ち合わせだ。えっと、位置的には──お前の方が近いだろうけど、僕は自転車だから、多分先について待っている」
「昨天我们去的那间神社。待会在阶梯前面的人行道碰头。从位置上来看嘛,你那边虽然比较近,不过我是骑脚踏车,所以我应该会先到那边等你吧。」
「困るなあ、阿良々木先輩。この私が二日連続で阿良々木先輩を待たせるとでも思っているのか?だとすれば私の信用も地に落ちたものだな。私にも意地がある、そこまで言われては黙っていられない、この機会に汚名を晴らし、名誉は回復させてもらう。絶対に私の方が先に着く」
「这可伤脑筋啦,阿良良木学长。学长觉得我会连续两天都让学长等吗?如果是的话,我的信用也扫地了啊。既然学长都这么说,那我也不能闷不吭声了,我要趁这个机会洗刷污名,挽回我的名誉,今天我一定会先到的。」
「変な意地を張られても、僕が困るんだが……まあ、なるたけ急いでくれ。ああ、長袖長ズボン、忘れずにな」
「你坚持的地方好奇怪,真让我伤脑筋啊……不过麻烦你尽量快一点吧。啊!别忘了穿长袖长裤喔。」
僕は学校帰りで、制服のまま、衣替えがあったばかりでカッターシャツが半袖だけど、これはもう致し方ない。下半身はスラックスなのだから、よしとするしかないだろう。大体、僕の場合、多少虫に刺されようが蛇に咬まれようが、大事ないからな──いわゆる、吸血鬼の後遺症。
我从学校正要返家,身上还穿着制服。最近才刚换季,制服是短袖的,但这也没办法。下半身是西装裤,只能凑合一下了。而且,我稍微被虫螯蛇咬也不会怎么样——这就是所谓吸血鬼的后遗症。
「わかった。阿良々木先輩の仰せの通りに」
「我知道了。那就照阿良良木学长的吩咐。」
「じゃ、よろしく」
「那麻烦你了。」
そう言って僕は電話を切り、本屋さんの裏手、駐輪場に行って、自転車の錠を外す。千石が店を出てから十分以上経過している……あいつの交通手段は知らないが、昨日は、階段の入り口辺りにそれらしき自転車が停められていなかったことからして、徒歩だったようだ……まあ、いずれにせよ、あの神社が目的地なのだとすれば、距離的にはもう追いつけまい。
我说完挂掉电话,走到书店后方的停车场,打开脚踏车的锁。千石离开书店已经超过十分钟了……我不知道她的移动方式,不过昨天在阶梯的入口附近,没有脚踏车之类的东西放在那里,所以她似乎是徒步……不管怎么说,假如她的目的地是那间神社,在距离上我已经追不上她了吧。
そう言えば、神原の奴、本当に、呼び出された理由を聞かなかったな……。
话说回来,神原那家伙,真的没问我叫她出来的理由呢……
恐ろしい忠誠心だ。
她的忠诚心真是可怕。
勿論、神原にとっては、戦場ヶ原の方が命令系統としては上位なのだろうが、あんなステータスの高い人間がこうも甲斐甲斐しく自分に尽くしてくれるというのは、正直、嬉しいというよりはちょっと怖いよな……。
当然对神原来说,战场原的命令系统大概是更上位的东西吧,不过那样能力高超的人,居然这么勤快地为我尽心尽力,老实说我与其说是高兴,倒不如说是有点害怕啊……
でも、イメージを崩すのは無理みたいだし、こうなるとあいつの前では理想の先輩を演じたくなるというか、その過大な期待を裏切りたくないと思ってしまう。
可是,我无法丑化神原对我的印象,如此一来我在她面前,不由得就会想扮演一个符合她理想的学长,或者应该说我不想背叛她那过度的期待。
まあ──悪いことではないのだろうが。
唉呀,这也不是坏事啦。
「戦場ヶ原は、どうだったんだろうな」
「战场原她是怎么做的呢?」
中学時代──それこそ、ヴァルハラコンビは蜜月だったはずだけど、その頃の二人は、一体どんな感じだったのだろう。
国中时代,正是圣殿组合的蜜月期吧,那时候的两人,感觉到底是怎么样呢。
そんなことを思っている内に、目的地に到着した。
当我在想这些事情时,已经抵达了目的地。
名も知らぬ山の、神社への入り口。
来到那座不知名的山前,通往神社的入口处。
さすがに自転車、速い。
不愧是脚踏车,真快。
と思ったのだが、神原はもうそこにいた。
我这么想的瞬间,发现神原已经在入口处了。
「………………」
こいつの足には車輪でもついているのか?
这家伙的脚上有装车轮吗?
俊足駿足にも程がある……ちょっとした原チャリくらいだったら、この後輩は余裕で追い抜き、ぶっちぎれるような気がする。恐らく、人類がみんなこいつと同じスピードで走れるのなら、自動車は発明されなかったのではないだろうか。どうだろう、電話からすぐに準備したとして……しかし、ちゃんと言われた通りに、長袖長ズボン(しかも昨日から学習しての、破れていないズボンに、へそのみえないシャツだ)に着替えてるし……。
飞毛腿也要有个限度……如果是电动脚踏车之类的东西,这学妹恐怕可以轻松超车,把它甩开吧。要是人类可以和这家伙一样用相同速度奔跑的话,汽车大概就不会被发明出来吧。怎么说呢,就算她在挂掉电话后马上准备出门……不过她真的有照我说的穿长袖长裤来呢(而且还记取昨天的教训,裤子没有破洞,衬衫也没露出肚脐来)……
「いやいや阿良々木先輩、着替えにそんなに手間はかからなかったのだ。私は夏場、家ではいつも下着姿だからな」
「唉呀唉呀,阿良良木学长。因为我换衣服也没花多少时间。我夏天在家都只穿内衣裤而已。」
「神原……、純粋にお前のことが心配だから言うんだが、僕の煩悩をこれ以上刺激したら、いい加減お前の貞操の保証はできないぞ……?」
「神原……我单纯是因为担心你才这么说的,你要是再刺激我的欲望,我可不能保证你的贞操平安无事喔……?」
「覚悟はできている」
「我已经有所觉悟了。」
「こっちにゃ覚悟がねえんだよ!」
「我没有那种觉悟啊!」
「私は阿良々木先輩の理性を信じているのだ」
「我相信阿良良木学长的理性。」
「僕はそこまで自分を信用できない!」
「我可没有那么相信自己!」
「なんだ、それは意外だな、阿良々木先輩にとって部屋着が下着姿というのは、そこまでの萌え要素なのか?」
「这真叫我意外啊,原来对阿良良木学长来说,在家里只穿内衣裤是一种很棒的萌点吗?」
「たとえお前が猫耳メイドだったとしても、僕はお前に萌えることはないな!」
「就算你穿成猫耳女仆的样子,我也不会萌上你!」
「なるほど。ということは、裏を返せば阿良々木先輩は、私でさえなければ猫耳メイドに萌えるということだな」
「原来如此。那反过来说,这就表示只要对象不是我,学长就会萌上猫耳女仆啊。」
「しまった、引っ掛け問題だったのかっ!」
「惨了,原来你是想套我的话!」
とりあえず、自転車を停める僕。
总之,我先把脚踏车停好。
まあ、違法駐車には罪悪感があるが、少しの間だけだから勘弁してもらおう。撤去されてしまえば、もうそのときはそのときと諦めるしかない。背に腹は代えられない、だ。
虽然违法停车让我有罪恶感,不过只是暂停一下,就麻烦法外开恩吧。要是被人拖吊,到时候我也只有认命的份了。毕竟一点小牺牲是无可避免的。
「けど、それを差し引いてもお前、本当に足速いよな……普通に頑張ってりゃ、オリンピックとか出られるんじゃねえの?」
「不过,扣掉换衣服的时间,你的脚程真的很快耶……如果你稍微努力一下,应该可以参加奥运吧?」
「オリンピックは足が速いだけでは出られないからな……それに、そもそも私は陸上競技は、向いていない」
「奥运不是脚程快就可以参加的……而且田径项目本来就不适合我。」
「そうだっけか」
「是吗。」
戦場ヶ原は中学時代、陸上部だった。バスケットボール部のエースが健脚だと聞いて、戦場ヶ原の方から神原に会いに行ったのが、二人の馴れ初め──だとか。
战场原在国中时代是田径社。当时她听说篮球社的王牌脚程很快,所以亲自跑去找神原,那是两人第一次相遇——之类的。
「しかし、僕に言わせりゃ、お前の足の速さは人類の枠に収まらないと思うんだよな」
「不过,要我说的话,我觉得你跑步的速度已经超越人类的极限了。」
「ふむ。人類の枠に収まらないとなると……なんだろう、私は両生類なのだろうか?」
「嗯——超越人类的极限……是什么意思呢,代表我是两栖类吗?」
「両生類に足の速い印象なんかねえよ!」
「两栖类跑步哪里快了!」
「まあ、ないな」
「啊,的确是。」
「ていうか、神原、自分を両生類にたとえてお前に何か得があるのか?」
「话说,神原,你把自己比喻成两栖类对你有什么好处?」
「損得の問題ではない。阿良々木先輩がそう呼んでくださるのなら、私は喜んで両生類を名乗ろう」
「这不是有没有好处的问题。如果阿良良木学长要那样叫我的话,我会很乐意地说自己是两栖类的。」
「いや、喜んでって……」
「这,什么叫很乐意……」
「阿良々木先輩、さあ、早く、私のことを『この卑しいペットが!』と呼んでくれ」
「阿良良木学长,来,快点对我说:『你这只低贱的宠物!』」
「同じくらい大事な突っ込みどころが二つあって長台詞になるから、最後まで嚙まずに突っ込むことが難しそうなので普通なら普通にスルーするところだけど、しかし神原、僕はお前のことが大好きだからちゃんと突っ込んでやる! 第一に僕は両生類をペットに飼ったりしないし、第二にそれはもう違う種類の喜びだ!」
「如果一句话有两个很重要的地方需要吐槽,整句话就会变得很长,要一口气吐槽不吃螺丝是一件很难的事情,所以通常都会直接无视,不过神原,我非常喜欢你,所以我会好好吐槽你的!第一我不会把两栖类当作宠物养,第二你刚才那句话已经是另一种类型的愉快了!」
ちなみに僕がイメージしたのはチーターとかだ。
顺带一提,我脑中想象的动物是猎豹。
まあ、それにもペットのイメージはないが。
不过,那也不能拿来当宠物啦。
あーもう、大好きだって僕からも告っちゃったよ。
啊——真是的,我刚才跟她告白,说我非常喜欢她。
やりい、両思いだ。
我们果然是两情相悦。
「そんなつれないことを言わず、阿良々木先輩、お願いだ。『この卑しいペットが!』と言ってくれ。試しに一回だけでいいんだ。そうすればきっとわかってくれるはずなんだ」
「别说那么冷淡的话嘛,阿良良木学长,拜托你。请你对我说:『你这只低贱的宠物!』学长只要试一次就好。这样学长一定会了解我的心情。」
「なんでそんな必死よ!?」
「你干么那么拼命!」
「ううむ……、どうして誰もわかってくれないんだろう……戦場ヶ原先輩にも嫌だと言われてしまったし……」
「呜……为什么大家都不了解我的心情呢……战场原学姐也说她不要——」
「さすがのあいつでも嫌なんだ!」
「就连那家伙也说不要吗!」
ていうか。
话说回来。
そりゃまあ嫌だろ。
会拒绝很正常吧。
言うだけならまだしも、それで喜ぶんだもん。
因为如果只是说出口也就算了,她还想要用那句话来自娱。
「で、阿良々木先輩。私は何をすればいい?」
「对了,阿良良木学长。我该做什么才好?」
「ああ、そうだったな。楽しい雑談に興じている場合じゃなかった」
「啊,对喔。现在不是快乐聊天的时候。」
「脱げばいいのか?」
「我只要脱光就行了吧。」
「だからなんでお前はそんな脱ぎたがりなんだよ!」
「为什么你就这么喜欢脱衣服啊!」
「無論、脱がせてくれても構わないが」
「当然,如果学长要让我脱,我也不介意。」
「受動態か能動態かの話をしてんじゃねえ! お前は僕の中学一年生の頃の妄想が具現化した姿なのか!?」
「这不是主动或被动的问题吧!你是我国一时候的妄想具体化的样子吗!?」
「私は明るいエロを追求する者だ」
「我是开朗的色情追求者。」
「お前の主義主張なんかどうでもいいよ……」
「谁管你的主张主义怎么样啊……」
「ではこう言い換えよう。私は明るいエロスを追求する妖精だ」
「那我换个说法吧。我是追求性爱的开朗妖精。」
「なんてことだ! エロをエロス、者を妖精と言い換えただけで、なんだか崇高なことを言われているような気が……してこない!」
「怎么会这样!你只是把色情换成性爱,者换成妖精而已,听起来却好像变得很崇高一样……个屁!」
男相手でもセクハラは成立するということを、この女に教えてやるにはどうすればいいのだろう。ちょっとした課題だった。
就算对方是男生也会构成性骚扰,这点我该怎么教导这女人才好呢。这会是一个小小的课题。
「では、何をすればいい。遠慮せずにはっきり言ってくれ。私は無骨な人間だからな、腹芸が通じないのだ。遠回しに言われても、まろどっこしい……まろどっこ……まろどっこ……」
「那我该做什么好?学长不用客气,直接告诉我吧。我是一个粗人,学长不说我是不懂的。拐弯抹角只会拉拉拖拖浪费时间……拉拖……拉拖拉……」
「まどろっこしいなあ、おい!」
「是拖拖拉拉吧,喂!」
「申し訳ない。しろどもろどになってしまった」
「抱歉。我有点『伦无语次』了。」
「確かにしどろもどろだが!」
「的确很语无伦次!」
「で、なんだ」
「那是什么事情呢?」
「いや──だから、多分、この上に」
「也没什么……我以前的一个朋友,」
僕は階段を指さす。
我手指着楼梯。
「僕の昔の知り合いがいるんだが」
「现在大概在上面吧。」
「うん?」
「嗯?」
「昨日、この階段を昇る途中ですれ違った女の子、憶えてるか?」
「你记得昨天我们爬楼梯的时候,和我们擦身而过的女孩子吗?」
「うん。ちっちゃくて可愛らしい女の子だった」
「嗯。是一个很娇小可爱的女孩。」
「その憶え方はどうかと思うが……」
「我觉得你的记忆方式有点……」
「阿良々木先輩風に言うなら、腰の形がプリティーな女の子だった」
「照阿良良木学长流的说法,就是腰部的形状很 pretty 的女孩子。」
「僕がプリティーなんて言葉を使うか!」
「我哪会用 pretty 这个字眼啊!」
まあいいか。
算了。
百合だし。
毕竟她是百合。
憶えてないよりは、話の通りがいい。
总比她不记得还好,这样也比较好说明,
「あいつ、どっかで見たことあると思ってたんだけどさ……実は後から思い出したんだよ。それでも昨日は確信を持ててなかったんだけど、今日、さっき本屋で見かけて、はっきりした。下の妹の旧友みたいなんだ」
「那时候我一直在想好像有在哪里见过她……其实之后我又想起来啦。可是昨天没办法肯定,不过我刚才在书店看到她,整个就弄清楚了,她好像是我小妹以前的朋友。」
「なんと」
「哎呀!」
その言葉に、面食らった素振りの神原。
神原听到这句话,露出了吃惊的表情。
「それは、偶然だな……驚いた」
「那还真巧啊……真叫我惊讶。」
「ああ。僕もびっくりしたよ」
「是啊。我也吓了一跳呢。」
「ああ。こんなに驚いたのは、今朝起きたら目覚まし時計が止まっていたとき以来だ」
「对啊。上次让我这么惊讶,是在今天早上起床发现闹钟停住的时候。」
「えらく最近だな! しかも大したことねえよ、その驚き! 普通過ぎるだろ!」
「时间上未免也太近了吧!而且那也不是什么了不起的惊讶!太过普通了吧!」
「ふむ。では、訂正しよう。えーっと、こんなに驚いたのは、カンブリア21大爆発以来だ」
「嗯——那我更正一下吧。这个嘛,上次让我这么惊讶,是在寒武纪大爆发的时候。」
「今度は昔過ぎるし、そこまですごくはねえよ! 小さな町で旧知の人間と再会した程度の偶然に対して、地球史上もっとも偉大な事件を引き合いに出すな! よく考えてみたらあんまり驚くようなことじゃなかったみたいな気分になっちゃったじゃないか!」
「这次变得太过古老,而且哪有这么了不起啊!不要把在小镇上偶然和以前的朋友再会这点小事,拿来和地球史上最伟大的事件做比较!仔细想想,这样你给人的感觉其实根本就不惊讶吧!」
「阿良々木先輩の要求はどうにも高いな。で──その子が、今日もここの神社に来ていると?」
「阿良良木学长的要求实在很高啊——然后,那个女孩今天也来这里的神社了?」
「そういうことだ。多分な」
「没错。大概吧。」
その反応から見る限り、神速の神原も、さすがに千石より先にここに到着していたわけではないようだった。まあ──千石が本屋を出てからここに来たはずだというのは、ある程度の確信があるとは言え究極的には僕の勝手な予測だし、いなければいないで、それが一番いいのだが。
从神原的反应来看,就连神速的她,似乎也没比千石还要早来到这里。不过,我有某种程度的肯定,千石在离开书店后会来这里,但说到底那只是我个人的推测,她不在这里当然是最好的。
だが──本屋さんで、千石が読んでいた本。
不过……千石在书店看的那本书。
それが問題だった。
那才是问题所在。
「読んでいた本……?」
「看的那本书……?」
「うん。まあ、それは後で話すよ。ともかく、お前に頼みって言うのは──その、昔の知り合いとは言え、声、掛けづらくてな。つーか、向こうは僕のことなんか覚えてないだろうから、変なナンパみたいになっちまいそうだし──思春期入りたての女の子の防衛本能って、割と怖いし」
「嗯。我待会再告诉你吧。总之我想拜托你的事情就是……那个,就算我以前认识她,现在我也不太敢出声叫她。而且,对方大概不记得我了吧,这样会变得好像我在跟她搭讪一样。毕竟刚进入思春期的女生,防卫的本能还满可怕的。」
「経験がありそうな物言いだな」
「学长的说法听起来好像很有经验呢。」
「まあ、なくはない」
「唉呀,也不是没有啦。」
誰にでも優しいと、色んな人からあちこちで言われる僕ではあるが、無論、その代償として、痛い目を見ることだってあるというわけだ。まあ、別にそれで損をしたとは思ってないけれど、それで助けられるはずの相手を助けられなくなっても、あんまり面白くない。
大家都说我对任何人都很温柔,当然,我有时也会因为温柔而尝到一些苦头。唉呀,我不觉得苦头会带给我什么损失,但如果因为那样,而害我不能帮助到原本可以帮助的人,那可就不好玩了。
「そこへ行くと、神原、お前は年下の女の子に強そうだからな。何せ学校一のスターなんだから」
「等一下到那边之后,神原,你很擅长应付年纪比你小的女生吧。毕竟你是校内第一的明星。」
「今はもう違うし、昔も別にそうだったとは思わないが、なるほど。阿良々木先輩の言いたいことはわかった。阿良々木先輩の慧眼には恐れ入る、確かに私は、年下の女の子には強いぞ」
「现在我已经不是了,而且我也不觉得自己以前是,不过原来如此。我明白阿良良木学长的意思了。学长独具慧眼,真让我感到佩服。没错,我的确很擅长应付年纪比我小的女生。」
「だろうな。お前を呼んで正解だったよ」
「我想也是。把你找来是正确答案。」
それこそ羽川じゃないが、面倒見よさそうだし。
而且,神原看起来也很会照顾人,虽然她不是羽川。
中学高校と、連続でキャプテンを務めていた女だ。
她连续在国、高中都担任队长的职务。
そういうところは、今の戦場ヶ原とは真逆だな……いや、中学時代の戦場ヶ原を継いでいる、と言うべきなのかもしれない。
这点和现在的战场原可说是完全相反……不,或许应该说是承继了战场原在国中时代的个性吧。
「具体的に言うと、年下の女の子ならば、誰であれ十秒以内に口説ける自信がある」
「具体啦说,只要对方年纪比我小,我都有自信在十秒以内把对方攻陷。」
「お前を呼んだのは人生最大の間違いだった!」
「把你找来是我这辈子最大的错误!」
そこまでの強さはいらねえ!
我不需要你强到那种地步!
少女の人生を狂わせる気はねえんだよ!
我可不想让一个少女的人生就此错乱!
「まさかバスケットボール部って、お前にとってただのハーレムだったんじゃないだろうな……」
「该不会篮球社对你来说只是一个后宫吧……」
「そこまでは言わない」
「我没说到那种地步。」
「どこまで言うつもりだよ!」
「那你打算说到哪种地步!」
「『ただの』が抜ける」
「『只』这个字要拿掉。」
「大して変わらねえ!」
「根本没什么差吧!」
「ん? 下の妹の昔の友達、か……ということは、阿良々木先輩には妹がいるということだな……しかも、最低二人以上」
「嗯?小妹以前的朋友吗……也就是说阿良良木学长有妹妹……而且至少有两个以上。」
「…………っ!」
まずい!
糗了!
百合の娘に僕の妹の情報が伝わった!
我把自己妹妹的情报,告诉一个百合女了。
「ふふふ……そうか、阿良々木先輩の妹か……ふ、ふふ、ふふふ。どうなのだろう、阿良々木先輩に似ているのかなあ──」
「呼呼呼……这样啊,阿良良木学长的妹妹吗……呼、呼呼、呼呼呼。长什么样子呢,跟学长很像吗——」
「変なこと考えんなよ、お前……って、おいなんだ、その見たこともねえ嫌な笑顔! それが滅私奉公が売りのお前がその対象である僕に向けて浮かべる笑顔か!」
「你不准动歪脑筋……喂,你那种我之前从来没看过的诡异笑容是怎么回事!那是以克己奉公为卖点的你,对我这个侍奉对象该露出的笑容吗!?」
ちなみに。
附带一提,
割と似ている、二人とも。
她们两个跟我长得满像的。
「いやだなあ、勿論、阿良々木先輩の妹に手を出したりはしないぞ。たとえ誰の妹であろうとも、年下の女の子の一人や二人、口説くことなど私にとっては呼吸するよりも容易いが、阿良々木先輩が私に親しく接してくれている限りは、そんなことをする理由がない」
「讨厌啦,我当然不会对阿良良木学长的妹妹出手啊。不管是谁的妹妹,要攻陷一、两个年纪比我小的女生,对我来说根本是手到擒来的事情,比呼吸还简单啊。只要学长你对我好的话,我没理由做出那种勾当的。」
「てめえ、暗に脅しを……っ」
「王八蛋,你拐弯抹角地在威胁我……」
「脅し? おやおや、これは人聞きの悪いことを言われてしまったな。敬愛する阿良々木先輩からそんなショックなことを言われてしまっては、気の弱い私は動転してしまって、何をするか自分でもわからないぞ。なあ阿良々木先輩、阿良々木先輩はもっと他に、私に対して言うべき台詞というものがあるのではないかな?」
「威胁?唉呀呀,这种说法很难听呢。我最敬爱的阿良良木学长说这话让我好震惊,懦弱的我整个乱了分寸,连我都不知道自己会做出什么事情来呢。我说学长,你应该有其他的话要对我说才对吧?」
「く、くお……」
「唔、唔喔……」
受けている……。
她被影响了……
この後輩は確実に、『今』の戦場ヶ原からの影響を受け始めている……!
这个学妹,确实开始受到「现在」的战场原的影响……!
まさしく悪影響だった。
这绝对是个不好的影响。
「はあ、走ってきたから少し胸が凝った。誰か揉んでくれる人はいないだろうか」
「唉呦!我用跑的过来,胸部有点酸痛呢。有没有人可以帮我揉一下啊。」
「その取引で僕がどんな損をするんだっ!?」
「帮你揉胸部我没什么损失吧!」
「冗談はともかく」 神原は真剣な口調になって、言った。 「阿良々木先輩がそういう以上、勿論手伝うにやぶさかではないが──阿良々木先輩は、当然、昨日のあれを、含んでいるのだろう?」
「玩笑先说到这里。」神原用严肃的口吻说。「既然学长这么说,我当然也会全力协助——不过,这当然也包括昨天的那个吧?」
「まあ──そうだ」
「嗯……没错。」
「じゃあ──そういうことなんだな」
「那……就是那种事情对吧。」
「……うん」
「……嗯。」
「やれやれ」
「唉呀呀。」
神原は、仕方なさそうに、肩を竦めた。包帯の左腕で頭をかきかけ──やめて、右手で、その動作をする。
神原耸耸肩,一脸无可奈何。她用包着绷带的左手想要搔头时,突然停住换成了右手做动作。
「阿良々木先輩は誰にでも優しい──という戦場ヶ原先輩の言葉は、どうやら本当らしいな。まあ、それ自体は私もストーキングの最中に、散々思い知ったことではあるのだが──こうして目の当たりにすると、印象が違う」
「看来战场原学姐说得没错,学长对任何人都很温柔。这件事情我在跟踪学长的时候,就已经充分体会过了——可是像这样亲眼看到的话,给人的印象还是不一样呢。」
「神原……」
「神原……」
「恩を感じるのがむなしくなる──と戦場ヶ原先輩は言っていた」
「对他抱有恩情会让自己感到空虚,这是战场原学姐说的。」
「…………」
「いいのだ。独り言だ。いや、失言だった。では行こう、阿良々木先輩。早くしないと、彼女が用事を済ませてしまうかもしれない」
「这些话不重要。是我在自言自语。不,我失言了。那我们走吧,阿良良木学长。不快点的话,她可能已经把事情办完了。」
用事。
事情。
廃れた神社に、用事。
来到荒废的神社里头,办事情。
「ああ……そうだな」
「嗯……你说得对。」
僕らは、昨日も昇ったその階段に、並んで一歩を踏み出した。
我俩并肩踏上昨天也爬过的那座阶梯。
今日は──神原は、手を繫いでは来なかった。
今天……神原没有过来牵我的手。
「なあ、神原」
「我说,神原。」
「なんだ」
「怎么了?」
「お前、進路とか、考えてる?」
「你有考虑过未来出路之类的问题吗?」
「進路……左腕がこうなる前は、スポーツ推薦で大学に行こうと思っていたのだが、それは今となってはもう無理だからな。真っ当に受験で、進学するつもりだ」
「未来的出路……我在左手变成这样之前,原本想要靠运动保送进大学的,现在手变成这样已经没办法了。所以我打算直接参加考试,然后升学。」
「そうか」
「这样啊。」
左腕が治るにしても、それは二十歳までに、という話だ。現在十七歳の神原にとって、その三年は、あまりに長く、あまりに重いものだろう。
她的左手虽然会好,但那也是在二十岁前的某一天。对现在才十七岁的神原来说,长则三年的光阴实在太过漫长、太过沉重了吧。
「具体的にどこの大学と決めているわけではないのだが、バスケットボールが強い大学がいいな──となると、やっぱり体育大学か」
「我还没有决定要读哪一所大学,不过还是篮球强一点的大学比较好——这样去想的话,我应该会选体育系的大学吧。」
「戦場ヶ原と同じ大学とか、考えないのか?」
「你没想过要和战场原读同一所大学吗?」
「なんだ。阿良々木先輩はそうなのか?」
「原来阿良良木学长有那个打算啊?」
「実はな」
「老实说,」
戦場ヶ原には秘密にしとけよ、と僕。
这件事情你要对战场原保密喔,我说。
うん、と神原は頷いた。
嗯,神原点头。
素直な分には可愛い後輩だった。悔しいが、ここのところは、確かに羽川の言う通りだった……可愛い後輩は、それだけで嬉しい。
这学妹真是率直得可爱。虽然我很不甘心,不过这点确实和羽川说的一样……光是有一个可爱的学妹,就会让人很高兴。
「お前の学力なら、戦場ヶ原の後を追うことも可能──なんだろ?」
「以你的成绩,要和战场原考同一所大学也是……有可能的吧?」
「それはどうだろう。私は努力型だからな、今の偏差値を維持するので精一杯というところはあるのだ」
「这个嘛。我是努力型的人啊,光是要维持现在的偏差值,我就已经很拼了。」
「そうだったな。でも──」
「对喔。可是——」
「それに」
「而且,」
神原は続けて言った。
神原接着说。
「戦場ヶ原先輩の足跡を追い回してばかりいても、仕方あるまい」
「一直追寻战场原学姐的脚步,也不是办法。」
「…………」
それは──どういう心境の変化なのだろう。
这是……哪一种心境的变化呢。
神原らしからぬ発言……いや、これに関しては、僕の見込みが甘かった、神原のことを見損なっていたということなのだろうか。でも、先月、会ったばかりの頃の神原は、そのもの、戦場ヶ原ひたぎの足跡を追いかけることだけに専念する女だったはずなのに──
这不像神原会说的话……不,这可能是我的预测太过天真,或者是我错估神原了吧。不过,上个月我刚认识神原的时候,她应该是个一心只想追寻战场原黑仪脚步的女孩啊——
怪異を通して。
透过怪异,
何か、変わったのだろうか。
她有什么地方改变了呢?
怪異──それは、悪いばかりではない。
怪异——不完全都是有害的。
そもそも、いい悪いの問題ではないのだ。
追根究底来说,怪异没有好坏之分。
「まあ、そうは言っても、どんな進路を選ぶにせよ、戦場ヶ原先輩や阿良々木先輩とは、卒業後も関係を続けたいものだな。できればお二人とは、こう、三人で集合して、記念写真を撮るような最終回を迎えたいものだ」
「不过啊,不管未来选择哪一种出路,我都希望毕业之后还能跟学姐和学长保持联络。可以的话,我希望能够三个人聚在一块,跟你们小两口拍一张纪念照来迎接最终回。」
「最終回って……」
「最终回……」
「あるいは、夕暮れの空を見上げて、そこに映るお二人の姿を眺めるような最終回……」
「或者是我抬头仰望黄昏的天空,看着映照在半空中的两人身影,来迎接最终回……」
「僕と戦場ヶ原、死んでるじゃん!」
「照你这种说法,我和战场原不就挂了吗?」
嫌な最終回だった。
讨人厌的最终回。
というか、ただの嫌な話だ。
应该说,这是个讨人厌的说法。
「僕のクラスに、羽川って奴がいるんだけど」
「我班上有一个叫作羽川的人。」
「ふむ」
「嗯。」
「知ってるか?」
「你知道她吗?」
「いや──存じ上げていない」
「没有,我不认识她。」
「まあ、学年が違うしな……けど、三年じゃ有名な奴なんだぜ。何せ、成績、学年トップだからな。一年生のときから一度もその席を譲ったことがない、絵に描いたような優等生だ。キャラ的にはもうギャグだろ、そんな奴。この間教えてもらったんだが、トップと言うなら、学校どころか、全国模試でもトップを取ったことがあるらしい。確か、お前と戦場ヶ原と、同じ中学出身のはずだぜ」
「毕竟学年不一样嘛……不过,她在三年级可是很有名的喔。因为她的成绩是学年第一。她从一年级的时候开始,就没有把第一名的宝座让出来过,是一个典型的优等生。那种角色设定根本就是在开玩笑了吧,她就是那种人。之前我有请她教我功课过,要说第一的话,她不只是在校内,就连在全国模拟考也拿过第一名。她跟你还有战场原,应该是同一所国中毕业的。」
「そうなのか。すごい人がいるものだな……」
「真的吗?原来还有那么厉害的人物啊……」
「でも、そのすごい人は、大学にはいかないそうだ」
「不过那个厉害的人物,不打算读大学的样子。」
「……そうなのか」
「……是吗?」
「色々見たいものがあるからって、旅に出るんだとさ。別に、それがどうってわけじゃないんだけど、なんか、色々考えさせられちゃって……ああ、これも一応、秘密な。学校に知れたら大変なことになるから」
「她说她想要去旅行,去见识一下各式各样的东西。我不是说她的想法不好,不过总觉得她的话让我想了很多……啊,这算是秘密喔。学校要是知道的话,肯定会闹得满城风雨吧。」
「心得た……しかし、確かに考えさせられる話ではあるな。直江津高校は、その性格上、進学以外にほとんど選択肢はないと言ってもいいのに──あっさりと、道なき道を選ぶとは」
「我知道了……不过,这番话的确发人省思呢。直江津高中在体制上,除了升学以外,几乎可以说是没有其他的选择——没想到那位学姐居然很干脆地,选择了没有道路的道路。」
「あっさりと──かどうかは知らないけどな。でも、迷いはないみたいだった」
「干不干脆我是不知道啦。不过她似乎没有迷惘的样子。」
一度通って、知っている道だったからだろう。昨日よりも早く、僕と神原は、階段を昇りきり、神社へと辿り着いた。
或许是昨天走过已经认识路的关系吧,我和神原比昨天还要快爬上楼梯,来到了神社。
当たり前だが、昨日のまま、荒れ果てた神社だ。
当然,这里犹如昨日,还是一间荒废的神社。
遠目に──本殿に貼られたお札が見える。土曜日に忍に血を飲ませたところだから、視力が上昇しているので、朱筆で書かれたお札の文字まで、はっきりと見える。
我看见远方贴在本殿上的那张符咒。礼拜六我才刚喂忍喝过血,视力也获得了提升,因此就连符咒上用朱笔写的文字也能一目了然。
あれだけが、昨日との違いだ。
和昨天不同的,只有那张符咒。
「………………」
ふと見れば──神原の顔色が、悪い。さっきまでそうでもなかったのに──普通に会話していたのに、明らかに疲れているようだ。
这时,我偶然发现神原的脸色很差。刚才她不是这样的——我们很稀松平常地在聊天,然而她现在却明显地面露疲态。
それも、昨日と同じ。
这点也跟昨天一样。
いや、昨日よりも──酷い。
不对,比昨天还要……更严重。
これは──階段を昇った所為じゃない。
这不是因为爬阶梯的关系。
体調を崩したのでもない。
也不是她身体不舒服。
境内に入った途端──鳥居をくぐった途端、だ。
而是在踏进神社的瞬间穿过鸟居的瞬间。
「……おい、神原」
「……喂,神原。」
「大丈夫だ。それより──急ごう」
「不要紧。我没关系……我们走快一点吧。」
神原は、しかし、気丈に、そんな風に、歩みを止めずに前に進むよう、僕を促した。明らかに無理しているのが見て取れる。何か言おうとしたが、結局、僕は神原のその言葉に従う。素早く用事を済ませる方が、この場合は先決だろう。
但是,神原却一副从容不迫的样子,催促我继续往前走,不要停下脚步。她看起来很明显是在勉强自己。我原本打算说些什么,但最后我还是顺从了神原的建议。在这情况下,赶紧把事情处理完才是第一要件吧。
この神社には。
这间神社里头,
何かがある。
有某种东西。
神原の身体に異変を来たすような何かが。
有某种东西让神原的身体出现了异状。
元々は──忍野の仕事だった。
这原本是……忍野拜托的工作。
楽な仕事など──忍野の頼みに、あるわけがない。
轻松的工作在忍野的请托当中,是绝对不存在的。
「……千石っ!」
「……千石!」
僕は、境内の隅の方に、長袖長ズボン、深い帽子にウエストポーチの、大きな石の前でかがみこんでいる彼女の姿を見つけるや否や──思わず、そう、大声で呼びかけてしまった。これでは神原に、わざわざ来てもらった意味がない。
我一看见穿着长袖长裤、帽子深戴、系着腰包的她,蹲在神社角落的一颗大石头旁,不由自主地大声呼喊了。这样专程麻烦神原过来,就没有意义了。
しかし、怒鳴らずにはいられなかった。
可是,我无法不大声怒吼。
千石の左手には、頭を摘まれた蛇。
因为千石的左手,掐着一条蛇的头部。
千石の右手には、彫刻刀。
而她的右手,正拿着一把雕刻刀。
石に押しつけられるようにして──
她将蛇压在石头上──
蛇は、まだ生きている。
那条蛇还活生生的。
けれど──今にも殺されそうだった。
不过,现在似乎随时都会被杀死。
「やめろ、千石っ!」
「快住手,千石!」
「あ……」
「啊……」
千石は──僕を見た。
千石……看向我。
目深にかぶった帽子の庇を、彫刻刀の先であげて。
她用雕刻刀的前端,推起深戴的帽沿。
千石撫子は──ゆっくりと、僕を見た。
千石抚子……慢慢地看向我。
「暦お兄ちゃん……」
「历哥哥……」
お前は。
你。
お前はまだ、僕のことを、そんな風に呼んでくれるのか── とか。
你还愿意那样称呼我吗——
正義の道を歩みながらたった一つの判断ミスから果てない外道へと身を落とし、聞くも涙、語るも涙の艱難辛苦を経験した末に闇の組織の幹部となり、言うに耐えず見るに耐えない悪行を繰り返していた最中に、かつて正義だった頃の同志が現れ、その同志から昔の名前を呼ばれたダークヒーローのように、僕はそう思った。
我觉得自己现在就像一个原本走在正义的道路上,却因为一个错误的判断而误入歧途,随后走过会让人泪干肠断的艰辛路程后,变成了黑暗组织干部,在反复做了许多让人不堪入目、不堪言状的恶事后,一位昔日的正义伙伴突然现身,并用过去的名字称呼我的黑暗主角一样,这正是我此刻的感受。
004
「蛇切縄」
「蛇切绳。」
忍野は──しばらく思案した末、やけに重苦しい口調で、なんだかとても嫌そうに、そう切り出した。軽い、ともすれば皮肉げとも取れる言葉遣いで話すことの多い忍野からすれば、それはあまりない口調ではあった。
忍野他……稍微思考了一下后,用十分沉重的口吻,表情看似很厌恶般说出这个名字。以平常说话多用轻浮、不然就是讽刺口吻的他来说,这是一个不太常见的语调。
「それなら蛇切縄でまず間違いないだろう、阿良々木くん。断言できる、それ以外にはない。蛇切、蛇縄、蛇きり縄、へびきり縄、へびなわ、そのものそのまんま、くちなわって言われることもあるけれど──」
「照你说的八成是蛇切绳没错吧,阿良良木老弟。我可以断言,除此之外没别的了。蛇切、蛇绳、蛇切绳,也有人直接称呼他为口绳——」
「くちなわ──つまり、蛇か」
「口绳,就是蛇吗?」
「そう」
「对。」
忍野は繰り返す。
忍野重申。
「蛇だよ」
「就是蛇。」
蛇。
蛇。
爬虫綱有鱗目蛇亜目の爬虫類の総称。
爬虫纲、有鳞目、蛇亚目的无足爬虫类的总称。
円筒形の細長い身体と身体を覆う鱗が特徴。
圆筒形的细长身体,以及布满全身的鳞片是其特征。
脊椎骨が数百あり、身体を自由にうねらせる。
脊椎骨有数百个,能够自由扭动身躯。
鬼、猫、蟹、蝸牛、猿ときて──次は蛇か。
鬼、猫、螃蟹、蜗牛、猿猴……再来是蛇吗?
鬼は例外として──蛇と言うのは、中でもあんまり印象がよくないな。いかにも不吉の象徴という感じがある。おどろおどろしさが、猫や蟹や蝸牛や猿の、比ではない。
把鬼当作例外来看——蛇在这当中,给人的印象实在不是很好。感觉就是一个不吉利的象征。它带来的惊恐感,不是猫、螃蟹、蜗牛和猿猴能够匹敌的。
はっはー、と忍野は、そこでそれまでの重い口調を半ば強引に切り替えるように、いつものように、エセ22爽やかに笑ってみせた。
「哈哈——!」这时忍野半强迫自己改变沉重的口吻,一如往昔地露出了似是而非的爽朗笑容。
「いや──その印象は間違ってないよ、阿良々木くん。蛇は昔から、そういうものとして看做されることが多い。蛇関係の怪異はやたらと多いしねえ。まあ、あいつら肉食だし、『寸にして人を吞む』とか言われるしね。その上、致死性の毒持ちがいるから……、仕方のないことではあるんだろうけど。毒蛇、日本じゃ、マムシとかヤマカガシとかハブとかね。もっとも、逆向きに、蛇を聖なるものと看做す、蛇神信仰ってのも少なからずあるわけで──それは世界中のほとんどの地域で共通している。聖と邪を併せ持つ象徴──それが蛇さ」
「唉呀!你的印象没有错啦,阿良良木老弟。蛇从以前就常被当成那种东西。毕竟和蛇有关的怪异也很多嘛。它们是肉食性动物,还有人说『一寸蛇能吞人』。而且,有些蛇还有致死性的剧毒……所以这也是没办法的事情。在日本,说到毒蛇大概就是腹蛇、赤练蛇、眼镜蛇之类的。不过,反过来说也有人把蛇当作神圣的东西,信仰蛇神的也不在少数这点在世界的各区域几乎是共通的。同时具有正邪两面的象征,那就是蛇。」
「あの神社も──蛇神信仰だったんだよな」
「那间神社……也是信仰蛇神的吧?」
「うん? あれ、秘密にしておいたのにどうして知ってるんだい? ああ、なるほど、委員長ちゃんに聞いたのか」
「嗯?奇怪,我没跟你说,你怎么会知道?啊!原来如此,你问班长妹的吧?」
「……よくわかったな」
「——你很清楚嘛。」
「阿良々木くんの周りでそれを知ってそうなのは、委員長ちゃんくらいだからね──はっはー、こんなことならお札の仕事も委員長ちゃんに頼んだ方がよかったかな? 阿良々木くんは歩けば厄介ごとを引っ張ってくるんだもんなあ。そこへいくと委員長ちゃんはしっかりしてそうだ」
「阿良良木老弟身旁会知道那种事情的人大概也只有班长妹啦。哈哈!早知道贴符咒的工作,我应该拜托班长妹比较好的样子喔?因为老弟你去外面走,总是会带来一些麻烦的事情回来啊。这样的话,班长妹看起来比较可靠呢。」
「あいつは──もう、支払い終えてるだろ」
「她已经……不欠你了吧。」
「だっけね」
「是这样吗。」
忍野はとぼけるように言う。
忍野装傻说。
相変わらずの反応だ。
反应一如以往。
「そうは言っても、僕なんかにゃ、蛇っつったら邪悪なイメージしかないけどな。蛇神信仰と言われてもいまいちぴんと来ない。邪悪じゃないイメージは、せいぜいツチノコ23くらいだ」
「不过,我这种人一说到蛇,脑中只有邪恶的印象而已。你说的蛇神信仰,我实在搞不太懂。没有邪恶印象的蛇类,顶多只有野槌蛇吧。」
「ツチノコか。懐かしいなあ。懸賞金欲しさに、僕、頑張ってあいつを探したことがあるんだよ。見つからなかったけどね」
「野槌蛇吗?好怀念啊。我以前想要拿奖金,还很拼命地去寻找它的踪迹呢。可是最后还是没找到。」
「それって専門家としてどうなんだろうな……。しかも見つからなかったんだ……。あと、そうだ、あれは怪異じゃないのかな? ウロボロス24って奴。自分の尻尾食って、輪になってる……」
「以一个专家来说那实在有点逊啊……而且还没找到啊……还有,对了,那个不是怪异吗?一种叫作衔尾蛇的东西。它吃自己的尾巴,变成一个圆环……」
「ああ、あれね。自分の尻尾ってわけじゃないけど、それを言うなら阿良々木くん、蛇を食べる蛇ってのもいるんだよ? キングコブラだったかな。蛇が蛇を吞む図って、写真で見ると、かなり壮絶なんだよね」
「啊,那个啊。那不是它自己的尾巴,要说那个的话,阿良良木老弟,也有蛇会吃蛇的喔?好像是眼镜王蛇吧。蛇吞蛇的景象,照片上看起来还挺壮烈无比的。」
「ふうん……まあ、僕に言わせれば、蛇ってのは理屈じゃなく、生理的に怖い動物だよ。見ただけで、まず身がすくんじまう」
「嗯……唉呀,要我说的话,蛇这种动物不是理论上怎么样,而是生理上让我觉得很恐怖。我光是看到就会全身僵硬。」
「まあ、あんな形の陸上生物は珍しいからねえ。魚が陸で泳いでるようなもんだ、特殊といえば特殊だし、異様な目で見られてしまうのは仕方がないだろうな。海鼠を初めて食べた人間は偉い──なんて、そんな感じだね。はっはー。その上、蛇って、異常に生命力が強いんだよ。なかなか死なない。殺しても殺しても──ね。蛇の生殺しなんて言葉があるけど、あれは逆説的に、蛇の持つヒットポイントの高さを表わしているよね。あの大きさの生命としては、明らかにカウンターストップしているだろうな。ただ、蛇が人間にとって害獣ってわけでもないぜ。マムシ酒とかハブ酒とか、阿良々木くんも聞いたことはあるだろう」
「因为那种形状的陆上生物很少见的关系吧。就跟鱼在陆地上游泳一样,要说特殊也很特殊,人类会对它抱持异样的眼光也无可厚非吧。第一次吃海参的人很伟大——就像那种感觉一样。哈哈!而且蛇的生命力还异常地高喔,要杀死它不太容易。不管你怎么杀、怎么杀啊。有一句话叫作『蛇的半死不活』,那句话反过来说,就是在表示蛇的 HP 很高的意思。以那种大小的生命体来看,蛇的能力很明显已经达到上限值了吧。不过,蛇对人类来说也不是害兽。腹蛇酒和眼镜蛇酒之类的东西,阿良良木老弟也听过吧。」
「飲んだことはねえよ」
「我可没喝过喔。」
「じゃあ、食べたことは? 僕は沖縄で、ハブ酒と一緒に海蛇料理を食べたことがあるぜ。蛇は長寿の食材なんだよね」
「那你有吃过吗?我以前在冲绳曾经一口饭匙倩酒,一口海蛇料理呢。因为蛇是一种会让人长寿的食材。」
「蛇を食べるなんて、あんまり考えられないな……確かに、海鼠ほどじゃねえけどさ」
「吃蛇我实在无法想象……虽然那应该没有海参夸张啦。」
「了見が狭いねえ。というか、根性がないな。蛇くらいで音を上げるなんてさ。大陸の方じゃわんわんを食べる地域だってあるんだぜ?」
「你的心胸真是狭窄啊。应该说是没有骨气吧。区区一条蛇就让你受不了啦。中国大陆那边还有一些地方会吃汪汪耶?」
「その食文化自体を否定するつもりは毛頭ないが、食材として扱うときにわんわんって言うな!」
「我一点也不想否定他们的饮食文化,但是在说食材的时候你不要用『汪汪』这两个字!」
相変わらずのやり取り。
稀松平常的对话。
なのだが。
但是,
しかし──それでも、忍野のその表情は、どことなく暗い──ような気がする。それは、僕の気のせいかもしれないけれど。
我总觉得忍野的表情有一点阴沉。这或许只是我的错觉吧。
学習塾跡の廃ビル。
旧补习班的废弃大楼。
その四階。
在四楼。
僕は火のついていない煙草をくわえた変人、もとい恩人、軽薄なアロハ野郎こと、忍野メメと──向かい合っていた。
我正和一个叼着烟没点火的怪人——不对,是恩人,同时也是一个轻浮的夏威夷衫混蛋,即忍野咩咩,面对面站在一起。
一人、である。
只有我一个人。
神原駿河と千石撫子には、待機してもらっている。どこで待機してもらっているかと言えば──阿良々木家の、僕の部屋でだ。中学入学と同時に与えられた、僕の部屋。両親はともかくとして、二人の妹は勝手に部屋に這入ってくることがあるが、鍵をかけていれば、数時間程度なら、大丈夫なはずだ。……本当は、ああいう性格で、しかも百合でもある神原駿河を、千石や妹達と同じ屋根の下に、監視なしで放置することについて、若干の危機感を覚えないでもないのだが、そこはそれ、僕は後輩を信じることにする。
神原骏河和千石抚子那边,我请她们在某处待机。要说详细地点的话——就是在阿良良木家,我的房间。升上国中的同时,父母给我的那个房间。父母那边先不管,我两个妹妹有时会随便进我房间,不过只要把房门上锁,要撑几个小时应该不是问题……在没有任何监视的情况下,让那种性格、又是百合的神原骏河,跟千石以及我两个妹妹处在同一个屋檐下,老实说我也觉得有那么一点危险,不过最后我还是决定相信我的学妹。
それに。
而且,
なにより僕には、神原や千石を──ここに連れてきたくない理由があった。ここに連れてきて、忍野に会わせたくない理由が──
最重要的是,我有不想带她们两人……来这个地方的理由。我不想让忍野见到她们——
あれから。
在那之后。
僕と神原は千石を連れて──僕の家に向かった。自転車の後部座席に、千石を乗せて。神原は、まるで平然と、伴走だった。案の定というか、山を降りれば、神原の体調は元に戻ったのだった。昨日の、昼ご飯を食べたら体調が治った云々は、どうやら僕の誤解だったらしい。
我和神原带着千石,往我家出发。我让千石坐在脚踏车的后座。神原宛如很自然地,在一旁陪跑。我们下山之后,神原的身体就康复了,这应该算在预料之中的事情吧。昨天,她吃完午餐身体就复原的事情,看来似乎是我的误解。
幸い、家は無人だった。
好在我家没半个人。
妹達は二人とも、お出かけらしい(帰宅した形跡はあった)。あの二人の眼を欺くのが家に這入るに当たって一番の厄介ごとだったにもかかわらず全くの無為無策、行き当たりばったりの帰宅だったので、素直に助かったという感じである。特に下の妹の方……小学生の頃の友達を憶えているかどうかはともかくとして、少なくとも見れば確実に思い出すだろう。自分の昔の友達を、自分の兄が連れて帰ってきたりしたら、一体何があったのかと思うはずだ。
两个妹妹似乎都外出了(两人有回过家的痕迹)。要骗过她们两人的眼睛进到家里是最麻烦的一件事情,然而我却完全漫无计划,只是听天由命地跑回家里,所以她们不在家真的是帮了我一个大忙。特别是我的小妹……先不管她记不记得小学时代的朋友,要是让她看到肯定会想起来吧。自己的哥哥带着自己以前的朋友回家,她一定会觉得事有蹊跷。
そのまま、僕の部屋に這入る。
我们直接进到我的房间。
「暦お兄ちゃん……」
「历哥哥……」
千石が、消え入るような声で言った。
千石用有气无力的声音说。
俯いたまま、聞こえるか聞こえないかの声だ。
她低着头,声音听起来若有似无。
「部屋……変わったんだね」
「你的房间……换了呢。」
「ああ。一人部屋になった。妹達は二人とも、前と同じ部屋だよ。……しばらくしたら帰ってくると思うけれど、会っていくか?」
「对啊。我现在自己一个房间。我妹她们的房间还是以前那间……她们应该待会就会回来吧,你要去找她们吗?」
ううん、と力なく首を振る千石。
千石无力地摇头说不。
声も小さいし──リアクションも小さい。
她的声音很小,反应也一样。
心なし、体つきも小さく見える。
或许是心理作用,她的体型看起来也很娇小。
六年分、ちゃんと成長しているはずなのに──昔、一緒に遊んでいた頃より、ずっと小さくなっているようにも見える。それはあくまでも相対的な話で、僕もまた、六年分成長しているからなのかもしれないが──
过了六年,她应该有成长才对——然而她现在看起来,却比我们以前玩在一块的时候还要更加地娇小。这只是一个相对性的问题,或许是因为我在这六年当中也有长大的缘故。
なんとなく──沈黙してしまう。
我不由得……陷入了沉默。
すると、
这时,
「ふむ。ここが阿良々木先輩の部屋か」
「喔?这里就是阿良良木学长的房间啊。」
と、そんな、なんとなく気まずく沈みそうだった空気を打ち破るかのように、神原がその張りのある声で、部屋をぐるりと見渡した。
神原用她那充满活力的声音,不经意地打破了房内尴尬沉闷的气氛,同时环视我的房间。
「思ったよりも整頓されているのだな」
「比我想象的还要整齐耶。」
「まあ、お前の部屋に較べればな……」
「还好啦。跟你的房间比起来的话……」
「ふふふ。男の子の部屋に這入るのは初めてだ」
「呵呵呵!这是我第一次进男生的房间。」
「あ……」
「啊……」
言われて、気付いた。
听她这么一说我才注意到。
そう言えば、僕の方も、家族以外の女が部屋に這入るのは、これが初めてだった。戦場ヶ原も、まだ家に来たことはないのだ。女の子を部屋に招くと言うのは年頃の男の子としてはとりあえずどぎまぎする通過儀礼なのだろうが、しかし彼女よりも先に、彼女の後輩が部屋に這入ってしまった……いいんだろうか。デートに続いてまたしてもという感じだが……いいか、まあ、妹の昔の友達も、一緒なわけだし──非常事態だし。
这么说来,我也是第一次让家人以外的女性进到房间里来。因为战场原还没来过我家。邀请女生来自己的房间,对我这个年龄的男生来说,应该是一种会让人心跳加速的人生阶段之一吧;可是我却先让女朋友的学妹进到房间里来了……这样好吗?继上次的约会之后,感觉我这次又做了蠢事……算了,反正小妹以前的朋友也一起来了,况且现在又是紧急状况。
あの神社で、千石が言ったのだ。
在那间神社,千石细若蚊声——
小さな声で。
说了这么一句话。
『理由を言うから──どこか、人目につかない屋内に連れて行って欲しい』、と。
「抚子会说出理由的,所以希望你们带我去一个不会被别人看到的室内。」
理由。
理由。
何の理由?
什么理由?
蛇を──殺した理由。
杀蛇……的理由。
切り刻んだ、理由。
再把它分尸的理由。
まず最初に思い浮かんだのは神原の家だったが、神原がそれを言い出す前に、その案は僕が心の中で勝手に却下した。何故なら、先述の通り、神原の部屋は、無法地帯、いやさ戦闘地域と言っていいほどの散らかり具合だからである。あんな部屋を、純真無垢な中学生に見せるわけにはいかない。となると、必然的に、僕の家を選択するしかなかった。全く知らない場所では千石も不安だろうし、そこへ行くと僕の家なら、彼女も昔、何度となく遊びに来た場所である。
我最先想到的是神原家,不过早在神原开口前,我在心中就已经否定了这个选项。因为正如前述,神原房内零乱的程度,可说是一个无法地带,不,要说是一个交战区域也不为过。我不能让一个纯洁的国中生看到那种房间。既然这样,很必然的选项就只剩下我家了。要是带千石去她不熟悉的地方,她也会很不安,这样想的话,她以前来我家玩过好几次了,算是一个最好的选择。
「さて、それではエロ本でも探すか」
「好,那我们来找小黄书吧。」
「それは男友達が男友達の部屋に遊びに来たときに発生するイベントだろうが! いいからお前はその辺に座ってろ!」
「那是男生到男生家去玩的时候,才会发生的事件吧!够了,你给我坐在那边就好!」
「しかし阿良々木先輩の好みを把握しておくことは、私にとって無益だとは思わない」
「可是早一步掌握阿良良木学长的喜好,对我来说也有好处。」
「僕にとっては無益どころか有害だ!」
「什么有好处,对我来说根本就是有害啦!」
「そう、つまり有害図書を……」
「是吗,那我就来找有害图书……」
「お前が生きた有害図書だ! そこに座るか窓から飛び降りるか、二つに一つだ神原!」
「你就是活生生有害图书!神原你现在要嘛坐在那里,要嘛就从窗户跳下去,二选一!」
「なんてな、勿論冗談だ、阿良々木先輩。阿良々木先輩の好みなど、以前阿良々木先輩をストーキングしていた際に、きちんと洗ってある。ここ最近、阿良々木先輩がどんなエロ本を購入したかは、完全につかんでいるのだ」
「唉呦!我当然是开玩笑的,阿良良木学长。学长的喜好我在之前跟踪你的时候,就已经调查得一清二楚了。最近学长买过什么小黄书,我可是了如指掌。」
「何ぃ!? そんなまさか! あのとき店内には誰もいなかったはずだ! 僕はちゃんと確認したぞ!」
「什么!那怎么可能!那时候店里应该没有其他人才对!我可是仔细确认过了!」
「なかなかマニアックな好みをお持ちで」
「学长的喜好还挺特殊的嘛。」
「選択肢は一つだ、窓から飛び降りろ!」
「现在只剩下一个选择了,你马上从窗户给我跳下去!」
「それはあんなプレイを迫られれば、大抵の女の子は窓から飛び降りてでも逃げるだろう。ふふ、しかし無論、私ならば余裕でこなせるような、造作もないプレイだがな」
「要是有人逼你玩那种 play,大多数的女生就算跳窗也都会逃走吧。呵呵!但是当然,对我来说那种游戏一点都不费功夫,我可以掌握自如。」
「誇らしげだー!」
「你自豪个屁啊!」
見れば。
我转头一看。
千石が、くすくすと、声を潜ませて、笑っていた。
千石压低声音,正在窃笑。
僕と神原とのやり取りが、受けたらしい。
看来我和神原的对话,似乎逗得她发笑。
ううん、気恥ずかしい。
真让我觉得尴尬。
ここまでの道中でもそうだったのだが、昔の知り合いというのは、どういう距離感で話していいのかわからないところがある。
来到这里的路上也是一样,我不太清楚该用什么距离,和以前的朋友说话才好。
それに──千石は、とにかく、物静かだ。
而且……千石整个人就是很文静。
無口で、恥ずかしそうに、あまり喋らない。
她寡言,看起来很害羞,开口说没两句话。
ここのところ、忍に忍野に羽川に戦場ヶ原に八九寺に神原と、その傾向はどうあれ(忍→高慢横柄、忍野→軽薄皮肉、羽川→説教指導、戦場ヶ原→暴言毒舌、八九寺→慇懃無礼、神原→甘言褒舌)、とにかく立て板に水の雄弁多弁な奴とばっかり知り合っていたから、この無口なキャラクターは、新鮮だった。まあ、子供の姿になった後の忍は、無口なんだけど……。
最近这些日子,我认识的都是一些像忍、忍野、羽川、战场原、八九寺和神原这类的人物,先不管他们各自的倾向如何(忍→自大傲慢、忍野→轻浮讽刺、羽川→说教指导、战场原→毒舌谩骂、八九寺→有礼无体、神原→甜嘴蜜舌),总之都是一群辩才流利、能言善道的家伙,因此这种无口系的角色,对我来说算是新鲜。话说变成小孩子模样的忍,也一样很沉默寡言就是了……
千石のこのもの静かさは、子供の頃と変わらないのだろうか。確かに、よく俯いている子だったような気がするが──正直、そんな細かいところまで、はっきりとは憶えていない。
千石的这份文静,和小时候完全一样吧。我记得她以前好像也是常低着头。老实说那么琐碎的地方,我记不太清楚。
思い出せない。
我想不起来。
内気で、言葉少なで、俯いて──
她内向,话少,总是低着头——
だが。
不过,
向こうの方は、僕を憶えていたようだ。
她似乎记得我的样子。
暦お兄ちゃん。
历哥哥。
そうだ、千石撫子は昔──僕のことを、そんな風に、呼んでいたのだった。僕は彼女をなんと呼んでいたか──それは、忘れてしまったけれど。考えてみるに、なでこちゃんか、それともなでしこちゃんか。いずれにしても、もうそんな風に呼ぶことは、できない。
对,千石抚子以前……是那样称呼我的。我是怎么叫她的这点我已经忘了。我想应该是抚子妹妹之类的吧。不管是什么,我现在已经无法那么叫她了。
千石は千石──だ。
千石……就是千石。
「暦お兄ちゃん……それに、神原さん」
「历哥哥……还有神原姐姐。」
やがて、千石は言った。
终于,千石开口说。
あくまでも物静かに。
语气依旧十分文静。
「少し……後ろを向いていてもらえますか」
「可以请两位……稍微向后转一下吗?」
「…………」
黙って、言われた通りにする。
我不发一语,照着她的话做。
千石に背を向け、壁に向かう。
背向千石,面对墙壁。
まあ、掛け合いの都合で窓から飛び降りろとか言ったものの、やっぱり神原に来てもらってよかったと、僕は胸を撫で下ろしていた。実際、神社で彼女に声をかけてから、硬直してしまった千石を相手にどうしていいかわからなかった僕の横合いから、彼女の心を巧みに開いたのは、ほとんど神原だったと言っていい。神原駿河の手柄だ。さすが、年下の女の子なら十秒以内に口説けると公言するだけのことはあった。はっきり言って、あの状況、暦お兄ちゃんだけでは、どうにもならなかっただろう。あたふた戸惑うだけが関の山だった。振り返ってみれば、硬直どころか──千石は、僕に声をかけられ、もうこの世のおしまいだという風に、がっくり肩を落として、放心してしまっていたのだ。あそこから引き戻すのは、僕の器量ではおおよそ不可能だっただろう。
刚才唱双簧的时候我虽然叫神原从窗户跳出去,不过我现在还是很庆幸自己有请她过来。实际上,刚才我在神社出声叫了千石后,她整个人僵在那里,我完全不知道该怎么去应对,而巧妙地打开千石心扉的人,就是我身旁的神原。几乎都是她的功劳。她宣称能在十秒以内攻陷年纪比自己小的女生这点,果然不是盖的。说明白点,那种状况下要是只有我一个历哥哥的话,肯定是束手无策吧。我充其量只有慌张彷徨的份。回想当时的情况,千石被我叫住后,宛如好像世界末日一样,整个人就像个泄了气的皮球,神情恍惚。要把她从那个状态来回来,凭我的器量大概是不可能的吧。
「阿良々木先輩」
「阿良良木学长。」
と、僕と同じように壁を向いていた神原が、潜めた声で、僕に向かって話しかけてきた。声を潜めているのは千石に聞こえないようにという配慮だろうから、僕も同じくらいのトーンで、
跟我一样面向墙壁的神原,压低声音对我说。她这么做大概是顾虑到千石,不想让她听见,所以我也用同样的音量响应。
「なんだ」
「干吗?」
と応じる。
我说。
「阿良々木先輩にとってはあまり歓迎できることではないかもしれないが、ここから私は、少しテンションを上げていこうと思う」
「学长你可能不太喜欢这样啦,不过这边还是让我稍微把气氛炒热一点吧。」
「あん? なんだそりゃ」
「嗄?这是什么意思?」
「阿良々木先輩もお気付きだとは思うが──あの子、千石ちゃんは、かなり──精神的に不安定になっているようだ。年上年下かかわらず、私はこれまで、ああいう子をたくさん見てきた。あれは、重度だ。ちょっとしたショックで、いつ自傷に走ってもおかしくない」
「我想学长应该也发现了,那个孩子,千石……在精神上相当不稳定的样子。不管是年长还是年幼,我至今看过很多这种女生了。她的情况很严重。只要稍微一点小打击,她随时都有可能会自残。」
「自傷……」
「自残……」
彫刻刀。
雕刻刀。
取り上げるのを──忘れていた。
我忘记……把它没收了。
彼女のウエストポーチに、入っている。三角刀から切り出し刀まで、ワンセット五本、全部揃って──だ。
刀子现在放在她的腰包里。从三角刀到平口刀,一盒五支,一应俱全。
大袈裟なことを言っているとは思わない。
我不觉得神原说得太夸张。
実際。
实际上来说,
神原の対応が遅ければ、僕が千石に声をかけたあの時点で──そうなっていても、ちっともおかしくなかったと、そう思う。
当时如果神原的反应太慢,我在出声叫千石的时候——她就算拿刀自残,我想也一点都不奇怪。
それくらいは、僕にもわかる。
这点程度的事情,连我都知道。
「阿良々木先輩は心優しい人だから、落ち込んでいる人間を前にはしゃぐなんて真似はとてもできないかもしれないが、相手と一緒になって落ち込んであげることは、この場合は逆効果だ。マクスウェルの悪魔25の話ではないが、こちらができるだけ明るく振舞って、千石ちゃんの気持ちを引き上げてやる必要がある」
「阿良良木学长很温柔,所以在消沉的人面前可能没办法开心喧闹吧,可是和对方一起消沉,在这种情况下只会带来反效果。这不是马克斯威尔的恶魔的理论啦,但是我们必须尽量装得开朗一点,让千石妹妹的心情变好。」
「……ふうん」
「……嗯。」
なるほど、さっきのエロ本関連の話も、その流れの一環だったのか。うむ、どうやら僕は神原を過小評価していたようだ。あの場におけるあの発言は、ただの空気の読めない奴なのかと疑ったが、それは僕の短絡的な判断だったらしい。神原駿河、思いの外色々と考えている奴だ。
原来如此,刚才小黄书的话题也是这个流程的一环吗。嗯,看来我似乎太小看神原了。我刚才听到她的发言,还怀疑她是一个不会看气氛的白目,看来我似乎太过武断了。神原骏河,出人意表地其实很细心。
「わかった。そういうことなら、存分にやってくれ。僕も付き合おう」
「我知道了。既然这样你就放手去做吧。我也一起来吧。」
「うん。テンションが上がり過ぎて阿良々木先輩に襲い掛かってしまう可能性もあるが、それもご寛恕願いたい」
「好。我怕等一下如果我太 High 了可能会推倒学长,到时候希望学长可以原谅我。」
「ご寛恕できるか! どんな方向にテンション上げてんだよ、お前は!」
「最好是能原谅你啦!你到底想要把气氛往哪个方向炒啊!」
小声で怒鳴るという荒業を成し遂げた僕だった。
我做到了小声吶喊的吃力工作。
「駄目だ、僕のテンションが下がってきた……ちょっとしたショックで、いつ自傷に走ってもおかしくない」
「不行了,我的心情『荡』下来了……稍微一点小打击,我随时都有可能会自残。」
「そう捨て鉢になるな、阿良々木先輩。よく言うだろう。冬が来たら氷河期が来て、夜が来ると暗黒の世紀が来る」
「不要自暴自弃,阿良良木学长。大家不是常常这么说吗,冬天到来冰河期就会随之而来,黑夜到来黑暗的世纪就会一同降临。」
「よく言わねえよ! どういう意味の慣用句だよ、それは!」
「最好是很常说啦!那是哪一个美国意思啊!」
「どんな苦境に思えても、結局は今が一番マシなときという意味だ」
「意思就是说,不管是哪种困境,到头来都是现在的情况最好。」
「ポジティヴなようでいて最悪に後ろ向きだな!」
「你的话乍听之下好像很正面,可是最后却消极到不行!」
「洪水にならない雨はない」
「降雨都会造成洪水。」
「あるよ! 洪水にならない雨だってあるよ!」
「错!也有不会造成洪水的雨!」
「ふふふ。ほら、阿良々木先輩、前向きになった」
「呵呵呵!看吧,阿良良木学长变得有精神了。」
「はっ! 嵌められたかっ!」
「啊!你算计我吗!?」
ふと、後ろから忍び笑いが聞こえた。
突然,我听见身后传来窃笑声。
声を立てないよう、必死で我慢している感じ。
那声音感觉像是拼命在忍耐,以免发出声音的样子。
千石だ。
是千石。
どうやら、微妙に聞こえているらしい。
看来她多少有听到我们的对话。
そこまで神原の計算通りなら──
要是连这点都照着神原的计划走——
本当に大したものだが。
那她就太厉害了。
「もういいです。こっちを向いてください」
「已经可以了。请两位转过头来。」
と、千石は言った。
千石说。
僕達が振り向くと、そこには全裸になった千石撫子が──ベッドの上で、恥ずかしそうに俯いて、直立していた。
我们转头一看,看到全裸的千石抚子……一脸害臊地低着头,站在床铺上。
いや──全裸ではない。
不对,她没有全裸。
帽子は勿論、靴下まで脱いでいるが、下半身にはブルマーを穿いている。それ以外は──一糸も纏っていない。その両手のひらで、控えめな胸を隠すようにはしているが。
当然她连帽子和袜子都脱掉了,不过下半身还穿着一件灯笼裤。除此之外……她一丝不挂,用双手掌心,适度地遮住了自己的胸部。
「……って、ブルマー?」
「……耶,灯笼裤?」
あれ?
奇怪?
千石は、予想通り僕が卒業したのと同じ中学に通っているとのことだったが、あの学校、僕が入学した段階で、既にブルマーは廃止され、短パンが導入されていたはずなのだけれど。
千石和我预料的一样,读的是我毕业的那所国中;不过那所学校在我入学时就已经废止了灯笼裤,换成了短裤才对。
「ああ。阿良々木先輩、あれは『たまたま』私が持っていたものを貸したのだ」
「啊!阿良良木学长,我『刚好』带了一件灯笼裤在身上,所以就借给她穿了。」
「ほう。神原後輩、お前は『たまたま』ブルマーを所持していることがあるのか」
「哦?神原学妹,原来你有时候会『刚好』带一件灯笼裤在身上啊?」
「レディとして当然の嗜みだ」
「以一个淑女来说,这是应该要准备的东西。」
「いや、変態も同然の企みだ」
「不对,你的企图和变态没两样。」
「こんなこともあろうかと準備しておいたのだ」
「因为我怕会有这种状况,所以事先准备好的。」
「どんなことがあると思ってたんだ。お前、本当は、僕にどういう用で呼び出されたつもりだったんだ? 僕は僕の信頼度を疑うよ。というか、そもそもブルマーなんてどうやって手に入れたんだ。昔の漫画風に言うなら、ブルマーってのは、『馬鹿なっ! あいつらはもう絶滅した種族だっ!』て感じの物品だろうが」
「你以为会有什么状况。你以为我是为了什么目的才叫你出来的啊?我对自己的可信度感到怀疑了。而且,灯笼裤这种东西你是怎么拿到手的?用以前的漫画风格来说,灯笼裤这种东西是『怎么可能!那个种族已经绝种了啊!』的感觉。」
「うん。そこはそれ、こう見えて私は先見の明があるからな。いずれ滅びるであろう文化であることを見越して、事前に百五十着ほど、保護しておいたのだ」
「嗯。这就表示我看起来虽然这样,还是有先见之明的。我早就预料到灯笼裤文化迟早会灭亡,所以我事先保存了一百五十件左右的裤子。」
「それは保護じゃなくて乱獲じゃねえのか?」
「你那叫滥捕,不叫保存吧。」
お前が滅ぼしたんじゃねえのかよ。 ブルマー。
是你让灯笼裤灭亡的吧。
「………………」
ほぼ全裸の女子中学生をベッドの上にあげて直立させ、それを肴にブルマーについての議論を行なう高校三年生男子と高校二年生女子。見ようによっては、かなり深刻な苛めのシーンとも見て取れた。
一个高三男生和高二女生,让一个几近全裸的国中女生耸立在床铺上,然后对她身上的灯笼裤品头论足。从别的角度来看,也可以将其解读成一种相当严重的霸凌场面。
帽子で隠れていた千石の前髪は思いのほか長く、目元を覆うようになっている。いや、恥じらいから、わざとそうしているのかもしれない。キューティクル26の光る、艶のある黒髪。脱いだ服は布団の下に隠したらしい。神原の指示通りにブルマーを穿いていることといい、ブラジャーまで外していることといい、どうやらこの旧知の少女、肌を見られるよりも下着を見られる方が恥ずかしいと判断したようだ。ブルマー一丁のその姿は、どう考えても、明らかに本人が考えている以上に扇情的になってしまっていると思うのだが、女子中学生の感覚はわからない……。
千石藏在帽子下的浏海比我想象中的还要长,盖住了她的眼睛。不,或许她是因为害羞故意弄成那样的。角质层散发光芒的鲜艳黑发,脱下的衣服似乎藏在棉被底下。照神原的指示穿上灯笼裤也好,连胸罩都脱掉这一点也罢,看来这位旧识的少女,似乎觉得让人家看到内衣裤,比自己的肌肤被人看光还要来得丢脸。只穿一件灯笼裤的模样,不管怎么想,很明显都比她本人想象的还要来得煽情,国中女生的感觉我实在搞不懂……
が。
然而。
残念ながら──というのだろうか。
应该说……很可惜吗?
これは、そんな色気とは無縁の状況だった。
现在的情况和性感两字完全不搭调。
「なんだ……それ」
「那是……什么东西。」
遅ればせながら、僕は、千石撫子のその肌に──驚きの声を漏らした。
事到如今,我才对千石抚子的皮肤,发出了惊讶声。
その肌に──鱗の痕が刻まれていた。
她的皮肤上……刻有鳞片的痕迹。
両足の爪先から、鎖骨の辺りに至るまで。
从她的双脚脚尖,直到锁骨附近。
びっちりと──くっきりと、鱗の痕跡が。
布满了清晰的鳞片痕迹。
一瞬、身体に直接鱗が生えているのかと思ったが、よく見れば、そうではない。鱗を、版画のように押し付けられて──皮膚に型になって残っているという感じだ。
瞬间,我误以为是她身体长出了鳞片,但仔细一看却不是如此。鳞片就像版画按压在她身上一样……在皮肤表面留下形状的感觉。
「緊縛の痕に似ているな」
「这很像紧缚后留下的痕迹。」
神原が言った。
神原说。
確かに、ところどころ内出血すらしているらしい、その痛々しい痕跡は、縄で縛られた痕であるかのようだった──どうして神原駿河が緊縛痕について詳しいのかは、触れるとややこしそうなので、ここでは触れない。
没错,那似乎全身都在内出血,看了会让人心痛的痕迹,就像被绳子束缚过后留下的痕迹一样——为什么神原骏河会对紧缚痕这么清楚?现在要是触及到这点似乎会很麻烦,所以我暂且不提。
いや──緊縛痕というか……。
不对……要说是紧缚痕……
実際、爪先から、脚を辿って胴体へ──
实际上,从脚尖顺着双脚到身体──
何かが巻きついているかのようだった。
好像有某种东西缠住她一样。
見えない何かが。
某种肉眼看不见的东西。
全身に隈なく、鱗の痕。
那东西全身布满鳞片的痕迹。
巻きついて。
缠附的千石。
巻き──憑いているかのようだった。
缠附宛如附在她身上一样。
鱗の痕跡がないのは、精々両腕と、首から上の部位だけだ。ブルマーに隠された腰部下腹部も、わざわざ見せてもらうまでもないだろう。
没有鳞痕的地方顶多只剩下双手,以及头部以上的部分。灯笼裤遮掩住的腰部和下腹部,不用特别去看也能知道结果吧。
鱗。
鳞片。
鱗といえば──魚か?
说到鳞片……是鱼类吗?
いや、この場合、魚じゃなくて、爬虫類──
不对,这种情况不是鱼类,而是爬虫类──
蛇。
蛇。
蛇……くちなわ、だ。
是蛇……口绳。
「暦お兄ちゃん」 千石は言った。
「历哥哥。」千石说。
相変わらずの、消え入るような声で。
她的声音仍旧有气无力。
がたがたと震える、その声で。
不停颤抖着。
「暦お兄ちゃんはもう大人だから……、撫子の裸を見て、いやらしい気持ちになったりは、しないんだよね?」
「历哥哥已经是大人了……所以看到抚子的裸体,不会有色色的想法吧?」
「え? あ、ああ。そんなの当たり前じゃないか。なあ神原」
「诶?不、不会啊。那还用说。对吧,神原。」
「うん? えっと……そう……なのかな?」
「嗯?那个……是这样……吗?」
「話を合わせろよ! いつもの忠誠心はどうした!」
「你要附和我啦!你平常的忠诚心跑哪去了!」
「強いて言うなら、千石ちゃん、大人だからこそ、少女の裸にいやらしい気持ちになることもあるという側面は、後学27のために知っておいた方がよいかもしれないぞ」
「硬要我说的话,千石妹妹,正因为是大人,才会对少女的裸体产生色色的想法,这一点为了你的将来,还是早点知道比较好喔。」
「裏切られた! 今まで仲良くやってきたのに!」
「你背叛我!到目前为止我们的感情明明都很好的说!」
「しかしどうだろう、阿良々木先輩、この場合、少女の裸に全く興味がないという方が、男性として気持ち悪いというか、女の子に対しては失礼な気がするのだが」
「可是该怎么说呢,阿良良木学长,我觉得在这种情况下对少女的裸体完全不感兴趣,以一个男生来说反而很恶心,或者应该说对女生很失礼吧。」
割合に真面目な話のようだった。
这句话和刚才相比,感觉起来比较正经八百。
まあ、言われてみればその通りだ。
她这么说也没错啦。
色気とは無縁の状況とは言え、それに全身という全身に蛇の鱗が刻まれているとは言え、だからと言って、女の子の裸に何も感じないというのも不躾な話だ。戦場ヶ原も、そういうときは感想くらい言うのが礼儀だと言っていたような気がする。
就算这状况和性感两字完全不搭调,而且她全身还布满了蛇鳞,但我也不能因为这样,就说我对女生的裸体没有任何的感觉,这样实在太没礼貌了。战场原好像也说过,这种时候要说一些感想才是礼貌的行为。
僕は千石に向き直った。
我重新面向千石。
そしてできる限り真面目な口調で、彼女に言う。
然后,尽可能用严肃的口吻对她说:
「訂正しよう。千石の裸に、少しはいやらしい気持ちになったりはする」
「我更正一下吧。我对千石的裸体稍微有一点色色的念头。」
「……う」
「……呜!」
千石は、声を押し殺すように、肩を揺らし。
千石压抑住声音,双肩颤动。
「う、うううう……ううう」
「呜、呜呜呜呜……呜呜呜!」
涙をぼろぼろと流し──泣き始めてしまった。
她的泪珠一颗接着一颗滴下,开始哭了起来。
「こら神原! お前の言う通りにしたら女子中学生を泣かしちまったじゃねえかよ! 女子中学生だぞ! なんてことだ、僕はもう終わりだ! どうしてくれる!」
「喂,神原!我照你说的做,结果害一个国中女生哭了啦!对方可是国中女生耶!怎么会这样,我完蛋了!你要怎么赔我!」
「あんなストレートに言うと誰が思う……」
「谁知道学长会说得那么直接……」
神原は僕に対し、かなりな呆れ顔を浮かべていた。
神原用十分傻眼的表情看着我。
計画的に僕を陥れたわけではないらしい。
看来她不是故意要挖洞给我跳。
「撫子」
「抚子,」
千石は、ぺたりと、ベッドの上にしゃがみ込んで──がくりと俯いて、呟くように、聞こえるか聞こえないかというくらいの声で──
千石整个人瘫坐在床铺上,泄气地低下头,有如在呢喃般,用若有似无的声音——
しかし、それでも。
但是,
はっきりと、言った。
却十分清楚地说。
「撫子、こんな身体──嫌だ」
「抚子,讨厌……这种身体。」
「……千石」
「……千石。」
「嫌だよ……助けてよ、暦お兄ちゃん」
「我讨厌这样……救救我,历哥哥。」
涙混じりの声で──そう言った。
她声泪俱下,如此说道。
005
そして──
于是——
それから、一時間後。
在那之后,过了一个小时。
僕は、忍野と忍が住処としている、学習塾跡の廃ビルを、土曜日に訪れたときから一日しか間を空けずに、訪れたと言うわけだ。
自礼拜六的访问只间隔了一天,我又来到忍野和忍的住处——旧补习班的废弃大楼。
「遅かったね。待ちかねたよ」
「你好慢啊。我都等得不耐烦了。」
と、忍野は見透かしたような言葉で、僕を迎えた。
忍野用了一句似乎看透一切的话语来迎接我。
忍野メメ。
忍野咩咩。
怪異関係のエキスパート。
处理怪异的行家。
専門家、オーソリティ。
专家,泰斗。
春休み、時代遅れにも吸血鬼に襲われ、吸血鬼になってしまった僕を、その夜の帳から引き上げてくれた──僕の恩人。
在春假时,我被吸血鬼袭击(这种事情在现代来说实在是过时了),而变成了吸血鬼,就是他把我从那夜幕中拯救出来的——他是我的恩人。
年齢不詳の、アロハ服のおっさん。
是一个年龄不详的,夏威夷衫大叔。
定住地を持たない、旅から旅への駄目大人。
居无定所,四处旅行的差劲大人。
猫に魅せられた羽川翼も。
被猫魅惑的羽川翼,
蟹に行き遭った戦場ヶ原ひたぎも。
遇到螃蟹的战场原,
蝸牛に迷った八九寺真宵も。
迷路蜗牛的八九寺真宵,
猿に願った神原駿河も。
以及向猿猴许愿的神原骏河。
みんな、忍野から──力添えをもらった。
她们都受过忍野的帮助。
その恩は、返しても返しきれないだろうが、しかし──はっきり言って、恩人でもなければ、あんまり親交を深めたいタイプの人間では、忍野は、ない。ありえない。
他的大恩,大概是报也报不尽吧;但是说明白一点,如果他不是恩人,忍野这种人绝对不是会让人想深交的类型。
性格は悪い。間違っても、善意の人間ではない。気まぐれの権化のような男である。春休みからの長い付き合いになるが、未だにそのパーソナリティには、理解不能なエリアが多い。かつてはここで勉学に励んでいた子供達が使用していたであろう机を、ビニール紐で縛り合わせて作った簡易ベッドの上に胡坐をかいて、僕の話をそこまで聞き終えたところで、忍野は、重苦しい声で、嫌そうに──
他的个性很差,绝对算不上是一个友善的人,有如善变一词的化身。我从春假开始和他认识了一段满长的时间,但他的性格还是有很多地方让我无法理解。忍野盘腿坐在简易的床铺上。床铺是将过去在此勤学的学生们所用的书桌,以塑料绳绑起做成的东西。他听完我说的原委后,用沉重的声音,表情厌恶地开口说:
「蛇切縄」と言ったのだった。
「蛇切绳。」
「蛇切縄か……聞いたことのない怪異だな」
「蛇切绳吗……这怪异我没听过呢。」
「割と有名だよ。蛇神遣いの一種かな」
「这还满有名的。好像是蛇神使的一种吧。」
「蛇神遣い? 蛇遣いじゃなくて?」
「蛇神使?不是蛇夫吗?」
「蛇遣いは、ギリシャ神話だろ。蛇神遣いは日本だよ。蛇神憑きとか……まあ、その辺は阿良々木くんに言っても仕方のないことか。でも、蛇切縄か……うーん。阿良々木くんの、後輩……ってことになるのかな? その子」
「蛇夫是希腊神话吧。蛇神使是日本的。像蛇神凭依之类的……唉呀,那方面就算跟老弟你说也没用吧。可是,蛇切绳吗……嗯——那个女生……是老弟的学妹吗?」
「歳が離れ過ぎていて、あんまり後輩って感じじゃあないな。だから、妹の友達──だよ」
「我们年纪差太多,感觉不太像学妹吧。所以说,她是我妹的朋友啊。」
「ふんふん。妹的存在か」
「喔喔。像妹妹一样的存在吗?」
「僕の知り合いを勝手なポジションに配置するな」
「不要把我认识的人随便乱归类。」
「暦お兄ちゃん、だもんね」
「因为你是历哥哥嘛。」
「………………」
余計なことまで話してしまった。
连一些多余的事情我都说了。
僕って正直者だよな。
我为人还真是正直啊。
噓がつけないっていうか……。
我不擅长说谎……
いや、隠しごとが下手なだけか。
不,应该说我只是不太擅长隐瞒别人吧。
「その暦お兄ちゃんも、今となってはらぎ子ちゃんか……光陰矢のごとし、時の流れを感じるねえ」
「那位历哥哥,到了今天也变成了小良木子吗……真是光阴似箭,岁月如梭啊。」
「らぎ子ちゃんなんて呼ばれてねえよ! それは神原の言った冗談だ!」
「没有人叫我小良木子好吗!那是神原开的玩笑!」
「けど、割と嵌ってる気がするんだけれど」
「不过,我觉得那个叫法还挺适合你的说。」
「ほっとけ!」
「关你屁事!」
「そうだね、ツンデレちゃんはツンデレちゃん、委員長ちゃんは委員長ちゃんなのに、阿良々木くんのことだけは阿良々木くんと呼ぶことに、僕は軽い差別を感じていたところだったんだ。これからは平等に、阿良々木くんのことはらぎ子ちゃんと呼ぶことにしよう」
「对了,我都用傲娇妹称呼傲娇妹,用班长妹称呼班长妹,唯独叫阿良良木老弟的时候是用阿良良木,我正好觉得有点不公平呢。以后我要公平一点,就用小良木子来称呼你吧。」
「お願いだからやめてくれ!」
「拜托千万不要!」
「でも、なんだか定着しそうな気はするよね」
「可是,我总觉得那个叫法已经定型了说。」
そんなやり取りがあったところで、忍野は、「それはともかく」と言う。
对话进行到这里时,「叫法就先不管吧。」忍野说。
「そんなことはあったけれど、仕事は滞りなく済ませることができたってわけだ。お疲れさま、阿良々木くん」
「虽然发生了一些事情,不过你还是顺利完成工作了。辛苦你了,阿良良木老弟。」
「ああ……まあな」
「呃……还好啦。」
まさか忍野からねぎらわれることがあるとは思わなかったので、面食らってしまい、なんだか変な応対になってしまった。
没想到忍野居然会对我说出这种慰劳的话,我不禁惊慌失措,响应的方式也变得有些奇怪。
「あれは、とてもじゃないけど、僕にはできないことだったからね。あのお嬢ちゃんにもお礼を言っておいてよ。えーっと、あの──」
「那件事情我自己实在是办不到啊。你记得帮我跟那位小姐也说声谢谢。那个,嗯——」
そこで、考えるようにする忍野。
忍野在此沉思。
あのお嬢ちゃんというのは、当然、神原のことだろうが……ああそうか、神原の呼称を、迷っているのか。そう言えば、神原の呼び方が、まだ決まっていなかった。羽川が委員長ちゃんで、戦場ヶ原がツンデレちゃんで、八九寺が迷子ちゃんだから……神原は、そうだな、さしずめ、スポーツ少女ちゃんってところかな?
那位小姐当然是指神原吧……啊,原来,他是在犹豫该怎么称呼神原吗。这么说来,神原的称呼方式还没有决定。羽川是班长妹,战场原是傲娇妹,八九寺是迷路小妹……神原嘛,照目前来看应该是运动少女妹吧?
「あの、えろっ子ちゃん」
「那个小色妹。」
「…………」
どうやら神原は忍野から、スポーツキャラよりもエロキャラとして認識されているようだった。
看来在忍野的心中,神原的好色性格似乎大于运动性格。
いや、わからなくもないけれど。
这点我能理解。
僕も的を射ているとは思うけれど。
我也觉得这个称呼正中了红心。
「せめて百合っ子ちゃんくらいで止めておいてやってくれないか……あいつもあれでも、女の子なんだ……」
「你用百合妹称呼她就好了吧……那家伙虽然那样,不过好歹也是一个女生……」
「うん? そうかい? じゃあ、百合っ子ちゃんでもいいけれど。とにかく──これで、彼女と僕も、貸し借りなしだ。そう伝えておいて頂戴」
「嗯?是吗?那用百合妹也可以。总之,这样一来她和我就两不相欠了。麻烦你帮我跟她说一声吧。」
「貸し借り──なしか」
「两不……相欠吗?」
「うん」
「对。」
「忍野。一個、確認しておきたいことがあるんだけど──いいか?」
「忍野。我想要先问你一个问题……可以吗?」
「なんだい?」
「什么问题?」
「あの神社の境内に入った途端、神原の体調が、どっと急激に崩れていたみたいなんだけど……あれって、何かあるのか?」
「我们走近那间神社之后,神原就突然觉得身体不舒服……那是为什么?」
神原のいないシチュエーションで、忍野にこれを確認したかったから、僕は神原に、家で待機してもらっているのだ。
我想趁神原不在场的时候,向忍野确认这个问题,所以我才会请她在我家等我。
んー、と忍野は流し目になる。
「嗯——」忍野斜眼看我。
「阿良々木くんは──どうだった?」
「阿良良木老弟……你有怎么样吗?」
「え?」
「咦?」
「体調。気分が悪くなったり、しなかった?」
「身体的状况。你有觉得身体不舒服吗?」
「いや──僕は別に」
「没有,我是还好。」
「そっか。まあ、前日に忍ちゃんに血をあげたところだからね──そんなものなのかもしれないな。運がよかったってところだね」
「是吗。因为你前天才刚喂血给小忍嘛,大概是因为那样的关系吧。这算是运气好吧。」
「運って……」
「你说运气……」
「さっき言ったろ? とてもじゃないけど、僕にはできないことだった──ってね。あの神社はね、この町の中心だったんだ」
「我刚才有说过吧?那件事情我自己实在办不到。那间神社啊,是在这个城镇的中心点。」
「町の中心? そうか? 位置的にはむしろ──」
「城镇的中心点?是吗?从位置上来看应该——」
「位置的な話じゃなくてさ。まあ、とっくの昔に滅んだ神社だし、みんな忘れちゃってるような場所だから、本来、なんでもないはずだったんだけどさ──忍ちゃん」
「不是位置上的问题啦。反正那间神社很久以前就已经没落了,大家都忘了它的存在,原本那边应该没有任何东西才对。可是小忍」
「忍がどうした?」
「忍怎么了?」
「忍ちゃんが、ふらふらとこの町に来たじゃない──貴族の血統の、伝説の吸血鬼。怪異の王、吸血鬼。その影響で活性化しちゃったって感じなのかな。よくないものが──あの場に、集まり始めていた」
「小忍她不是闲逛到这个城镇来吗?她是传说中的吸血鬼,有贵族的血统。是怪异之王,吸血鬼。好像是因为她的影响所以才会开始活性化的样子。有一些脏东西……开始聚集在那个地方。」
「あの場って──あの神社にか」
「那个地方……是指那间神社吗?」
神様だっていそうもない──あの神社に。
连主神都不存在的,那间神社。
よくないもの。
脏东西。
「うん。丁度、エアポケット28というか、吹き溜まりになったみたいでさ──あるんだよ、そういう、中心って表現すべき場所が。忍ちゃんのことが終わってからも、この町に僕がとどまり続けていたのは、その吹き溜まりを探すためでもあったんだよね──無論、怪異の蒐集というのが、第一目標だったけどさ。はっはー、まあ、そのお陰で、委員長ちゃんやツンデレちゃんなんかとも知り合えたから、なかなか楽しかったね」
「嗯。刚好就像一个气袋,应该说像聚集地比较贴切那种用中心点来称呼的地方,是确实存在的。小忍的事情处理完后,我还一直待在这里,其中一个原因就是为了找那个聚集地——当然搜集怪异是我第一个目标啦。哈哈,也因为这样啦,我才会认识班长妹和傲娇妹,还满快乐的。」
「よくないものって──具体的には、何なんだ?」
「你说的脏东西……具体来说是什么?」
「色々、さ。一言じゃ言えない……というか、今の段階では名前もないような、そんなもの達だ。怪異と言えるような段階でもないな」
「各式各样。无法一言蔽之……应该说,那些东西目前连名字都没有。现在他们还称不上是怪异。」
変な奴らの溜まり場。
那间神社——
に──なっては、いたわけだ。
已经变成了……奇怪家伙们的聚集地。
ただし、それらは──人間ではなかった。
只不过那些家伙……不是人类。
文字通りの、変な奴ら──だ。
正如字面上写的一样,真的是一群奇怪的家伙。
「神原の気分が悪くなったのは──その影響なのか?」
「神原的身体会不舒服……是因为他们的关系吗?」
「そうだよ。あの百合っ子ちゃんの左腕は、今も猿のままだからね──よくないものの影響を、強く受けやすいのさ。阿良々木くんもまたそうなんだけど、でも、お嬢ちゃんの猿と、阿良々木くんの忍ちゃんじゃ、怪異としてのランキングに圧倒的な格差があるからね。お嬢ちゃんがそういう事象に対する抵抗力を失っている状態なのに対し、阿良々木くんは、よくないものに対するそれなりの耐性があったってことだな」
「没错。因为百合妹的左手,现在还是猴掌啊。所以她很容易受到脏东西的强烈影响。阿良良木老弟也一样,不过和小姐的猿猴比起来,老弟的小忍在怪异的排名上有着压倒性的差距。也就是说,小姐现在对那种事物和现象失去了抵抗力;而老弟对脏东西却有相当的抗性。」
「……忍野、お前にはわかってたのか? 神原が──ああなるってこと」
「……忍野,你早就知道了吗?你早就知道神原会……变成那样。」
「そう怖い目で見るなよ。阿良々木くんはいつも元気いいなあ、何かいいことでもあったのかい? 百合っ子ちゃんに具体的な何かがあったわけじゃないだろうに。それに──貸し借りだ。少しは苦しい思いをしないと、割に合わない。特に、あの百合っ子ちゃんの場合はね。そうだろう?」 「…………」
「不要用那种可怕的眼神看我嘛,阿良良木老弟总是很有精神呢,是不是发生了什么好事啦?百合妹也没有真的出什么事情啊。而且……那是她欠我的。她不稍微吃点苦的话,我不划算啊。特别是那个百合妹。对吧?」
そう──なのかもしれない。
或许他说得没错。
そこまでシビアに考えることは、僕にはできないというだけで……、あれは、神原にとっては、あるいはしかるべき痛苦なのかもしれない。少なくとも、神原本人は、それを知ったところで、忍野に文句を言ったりはしないだろう。そういう奴だ。
我没办法用那么苛刻的方式去思考……那对神原来说,或许是她应得的痛苦吧。至少,神原本人就算得知这件事,也不会向忍野抱怨吧。她就是那种人。
「まあ、これで後は、あの百合っ子ちゃん次第だね。あの左腕がどうなるのかは、彼女自身の問題だ。二十歳まで、何事もなく過ごせれば──彼女は怪異から解放される」
「唉呀,接下来就要看百合妹自己了。那只左手会变成什么样子,是她自己的问题。二十岁之前如果平安度过的话——她就会从怪异的手中得到解放。」
「そうなれば──いいな」
「那就……就太好了。」
「ふん。阿良々木くんはいい人だね。相変わらず──」
「喔。阿良良木老弟真是一个好人呢。你还是老样子——」
「なんだよそれ。なんだか、含むところのありそうな物言いだな」
「什么啊。你说话的方式好像话中有话的样子。」
「別に。羨ましくは──妬ましくはないのかと思ってさ。同じ人間以外から、さっさと人間に戻っちゃう、百合っ子ちゃんのことが、さ」
「没有啊。我只是想说你不会羡慕……或是忌妒吗?你们同样是非人类,结果先变回人类的却是百合妹。」
「……別に。僕は、もう、自分の身体のことに関しちゃ、納得いってんだからよ。整理整頓、終わってんだから──そんな、引っ搔き回すようなことを言うなよ、忍野。神原にも余計なことを言うのはやめてくれ。あいつの負い目になりたくない」
「……不会啊。因为我已经可以接受自己的身体了。我的心情已经整理好了。你别说那种会蛊惑人心的话,忍野。也麻烦你不要对神原多嘴。我不希望让她觉得自己亏欠于我。」
「そうだね、悪かった。お札は本殿の戸に貼ったんだっけ? 仕事としちゃあちょっと横着29だけど、まあいいや。それでよくないものは、ある程度、分散されるだろう」
「是吗,抱歉。你把符咒贴在本殿的门上来着?以工作来说那样算有点偷懒啦,不过算了。这样一来,脏东西也会有某种程度的消散吧。」
「ある程度って……」
「某种程度……」
「素人が貼ったお札程度で状況はそう劇的に変わったりはしないよ。大体、劇的に変わっちゃまずいしね。あくまで自然の流れを、ちょっとゆがめる程度にしておかないと──別の場所で何が起こるかわからない。その意味じゃ、戸に貼るっていう横着な選択肢は、悪くない選択だったと思う」
「外行人贴的符咒,不会替现状带来什么戏剧性改变的。而且,要是有戏剧性改变那可就糟了。我只是把大自然的流动稍微做一点扭曲而已——不然在其他地方不知道会发生什么事情。在这层意义上,你选择偷懒的方式把符咒贴在门上,我想也不坏。」
「……なんで、お前にはできないことだったんだ? 怪異だろうがそれ以前のよくないものだろうが──それはお前の専門だろうに。それとも、神原の貸し借りをなくすために、仕事を無理矢理捻出したって形なのか?」
「……为什么你自己会办不到?不管对方是怪异,还是变成怪异前的脏东西……那些都是你的专业领域吧。还是说你是为了不想让神原欠你,才勉强找一个工作来给她做的?」
「それがないとは言わないけど、でも、僕には難しいことだったのは本当だよ。ほら、僕って見ての通り、細っちょろい肉体してるからさ。山登りをする体力なんてないのさ」
「这点也不能说没有啦,可是对我来说很困难是真的喔。你看,正如你所见,我的身体这么瘦弱,哪有体力爬山啊。」
「旅から旅への放浪者の台詞じゃねえな」
「这不是到处流浪的人说的话吧。」
「はっはー。見え透いてるかい? まあ、そうだね、今のは冗談だ。体力的な問題じゃない──もっとメンタルな話でね、阿良々木くんと百合っ子ちゃんが怪異であるがゆえに──だったように、僕は専門家であるがゆえに──よくないものを、変に刺激しちゃうのさ。向こうから襲い掛かってきたら、僕としては対応せざるを得ないし、そうすると、あんな吹き溜まりに絶好の真空地帯が生じちゃう。次に何が流れ込んでくるかわからないぜ──最悪の場合、忍ちゃんの再来だ」
「哈哈。被你发现啦?也对啦,刚才我是开玩笑的。不是体力方面的问题而是比较心理层面的问题,就像阿良良木老弟和百合妹是怪异一样,我是一个专家,我去的话反而容易刺激到那些脏东西。他们要是攻击过来的话,我就不得不反击,这样一来,那块聚集地就会产生一个绝妙的真空地带。下次会跑来什么东西,我就不知道了——最糟的情况下,就是小忍类型的怪异再现。」
「よくわからないけど……自然界のバランスを人間の都合で左右しちゃいけないって感じか? そのために、強過ぎる忍野よりも、僕や神原くらいが行った方が、連中にとって防衛意識が働きにくかった、とか……」
「我听不太懂……不过感觉就是人类不能因为自己的方便,去左右自然界的平衡对吧?所以和力量强大的忍野比起来,我和神原这种程度的人过去,那些东西就会比较没有戒心是吗……」
「ま、その理解でいいよ」軽く言う忍野だった。
「嗯,你就那样解释就好。」
本当はもう少し複雑な事情なのだろうが──あるいは全然違う事情なのだろうが──この話をこれ以上突っ込んで聞いても、仕方がなさそうだ。
当然有更加复杂或者是完全不同的理由吧,但是这个话题再深入问下去,似乎也没用。
神原が、忍野に対し、これで貸し借りなくなった。
这样神原就不欠忍野了。
それだけはっきりしていればいい。
我只要弄清楚这点即可。
「百合っ子ちゃんだけじゃないよ」
「不只是百合妹喔。」
忍野は飄々とした風に言った。
忍野一副悠然的模样说道。
「阿良々木くんの貸し借りも、これで帳消しだ」
「阿良良木老弟欠我的,这次也扯平了。」
「……え?」
「……诶?」
僕は、忍野からの思わぬその言葉に、驚きを隠すことができなかった。
这出乎意料的话语,让我藏不住惊讶的神色。
「僕の借りって……確か、五百万円」
「我欠你的……是五百万日币没错吧。」
「金額にすればね。今回の働きは、それくらいのことはあったよ。何せ、妖怪大戦争を未然に防いだようなもんなんだから」
「金额上来看啦。这次的工作有那个价值。因为,你防范了妖怪大战于未然嘛。」
「そ、そんな大ごとだったのか……」
「有、有那么严重吗……」
教えておいて欲しかったな、それは。
这种事情,真希望你事先告诉我。
しかし、考えてみれば、あれほどの大事だった神原の貸し借りが、一気にチャラになるほどの働きだったのだ──僕の分も、相応に、そして相当に差し引かれるだろうというのは、予想できてもよさそうなものだった。自分を勘定に入れないというのは、言葉の上ではなるほど美しいのかもしれないが、実際にはこんな風に、ただの間抜けって感じなんだな……。
不过仔细想想,神原的事情那么严重,这次的工作都可以将其一笔勾销;那我欠的部分应该也会有相对且相当份量的扣除,这一点我在事前应该可以预料到才对。我没把自己纳入考虑——这种说法听起来好像满好听的,不过老实说,我现在这样感觉就像是一头蠢驴……
「帳消しというか、僕としては阿良々木くんにはちょっとお釣りをあげたいくらいだよ。まあいいや。その子──その妹的存在のお嬢ちゃんについての話をしようか。聞いている限り、結構切羽詰まっているみたいだし」
「何止是抵销,我还想要找零给你呢。好啦,那个女孩那个像你妹妹一样的小姐,我们来聊聊她的事情吧。毕竟就我听到的部分来看,现在的状况还挺急迫的。」
「そうなのか?」
「是吗?」
「無事なのは、両腕と、首から上だけなんだろ? そりゃまずいよ。蛇切縄が顔まで来たら、それはもうそれまでだ。阿良々木くん。蛇切縄は、人を殺す怪異なんだ。それをよく、わかっておいてくれ。今回のケースは──割かし、マジだぜ」
「她没事的地方只有双手和脖子以上吧?那很不妙喔。蛇切绳要是来到脸部,一切就玩完了。蛇切绳是用来取人性命的怪异。这一点你要先搞清楚。这次的事情……可不是开玩笑的。」
「………………」
そうだろうとは──思っていた。あの鱗の痕から、そんな禍々しい気配は、感じていた。が、専門家の忍野の口から改めてそれを聞くと、重みがまるで違う。
这点我早就猜到了。那些鳞痕,让我有一种不祥的预感。然而,从忍野这个专家口中听到这一点,给人的重量完全不同。
死ぬ怪異じゃない。
不是让人自然死亡的怪异。
殺す怪異──だ。
而是……用来取人性命的怪异。
「蛇毒は人を殺す──というけどね。神経毒、出血毒、溶血毒、なんでもござれだ。ちゃんと血清を持って対処しないと、こっちだって巻き込まれちゃう。蛇は──難しいんだよ」
「因为——蛇毒会杀人嘛。有神经毒、出血毒、溶血毒……等等,各式各样。处理的时候不准备好血清的话,连我们都会跟着遭殃。蛇是……很难对付的。」
まあ、食材としては、存外、毒のある方がうまいというけどね──と、忍野。
不过以食材来说的话,听说有毒的反而好吃呢,忍野说。
「忍野……蛇切縄って、どんな怪異なんだ?」
「忍野……蛇切绳是哪种类型的怪异?」
「その前に、阿良々木くんが本屋さんで見たっていう、そのお嬢ちゃんが立ち読みしていた本のタイトルを教えてよ。あとでって言って、阿良々木くん、結局百合っ子ちゃんにまだ教えてあげてないでしょ? 何を読んでいたのさ、その子。それを見て、阿良々木くんは、その子に何かがあるって確信したようだけれど」
「在这之前,老弟你先告诉我那位小姐在书店看的那本书,书名叫什么吧。你那时候说晚一点会说,结果到头来你还是没告诉百合妹吧?那个女孩到底看了什么书?老弟好像是看到那本书,才确信她有什么地方不对劲的吧。」
「ああ……いや、まあ、そのまんまなんだけどさ。『蛇の呪い全集』って、一万二千円のハードカバーだよ」
「是啊……就跟你说得差不多。那本书的书名叫作『蛇咒全集』,是一万两千块的硬壳本。」
「……タイトルからすると、最近の本だね。戦前とか江戸とかって感じじゃない」
「——这名字听起来相识最近的书呢,感觉不像二次世界大战或江户时代以前的书。」
「まあな。表紙も真新しかったし」
「大概吧。因为封面满新的。」
ただし、そのタイトルは──前日に見た、五等分にぶつ切りにされた蛇の死体を連想させるには、十分だった。そもそもそれ以前に、日曜日に蛇の死体を見た段階で、直前に階段ですれ違った千石に、ある程度の疑いは向けていたのだが……その疑いが確信に変わったのは、その本のタイトルを見た瞬間だった。
但是那个书名,已经足够让我联想到,前天看到的那只被分尸成五等分的死蛇。说到底的话,我在礼拜天看到蛇尸的时候,就已经对先前和我们擦身而过的千石,抱有某种程度的怀疑……但是一直等到我看到那个书名的瞬间,心中的怀疑才转为确信。
長袖、長ズボン。
长袖长裤。
ただし、千石のあの長ズボンは──山の中に這入るからというよりは、脚にくっきり刻まれた、蛇の鱗の痕を見られないようにするためだったのかもしれない。
不过,千石的那件长裤……与其说是爬山的穿着,毋宁说她是为了不让别人看见,清楚刻印在她脚上的蛇鳞痕吧。
いや、確実にそうだろう。
不,我的猜想是正确的吧。
こんな身体。
这种身体。
こんな身体、嫌だ──と。
抚子讨厌这种身体她曾说过这句话。
神原には、きっと、千石の気持ちがよくわかるだろう。あいつの左腕の包帯もまた、猿の腕を隠すために巻いているのだ。咬まれた跡を隠すための僕の襟足などとは、考えてみればレベルが違う。そう言えば、神原も、包帯の下の左腕を僕に見せるとき、人に見られたくないからと──僕を自分の家に招いたのだった。
神原一定非常理解千石的心情吧。那家伙在左手缠上绷带,也是为了藏住猴掌。仔细想想,这和我用发际想要藏住咬痕的等级完全不同。这么说来,神原让我看她绷带下的左手时,就是因为不想让其他人看见,才会找我去她家的。
そういう意味では、似た境遇の二人。
在这层意思上,她们两人的境遇雷同。
あの二人。
那两个人。
今、どんな話を──しているだろう。 …………。
现在……在聊什么呢。
口説いてないだろうな、あの百合っ子。
那个百合妹,应该没有攻陷她吧。
信用してるぞ……信用してるからな……。
我相信你喔……我可是很相信你的……
「その本がどういう本なのか、僕は寡聞にして知らないけど……でもまあ、きっとその本に、蛇切縄のことは載っているんだろうね。蛇神遣いと言えば、『蛇の呪い』としちゃ、代表例みたいなもんだし──」
「我孤陋寡闻,不知道那本书是一本什么样的书……不过呢,那本书里头一定有写蛇切绳的事情吧。因为说到蛇神使,『蛇咒』是一个代表性的例子。」
「蛇神遣いってのは、犬神遣いみたいなもんなのか?」
「蛇神使和犬神使是一样的东西吗?」
「まあ、そうだ。自然発生的な怪異じゃなくて──明白な、あるいは明確な、人の悪意によって遣わされた怪異ってわけさ。……まあ、悪意とは限らないけどさ。でも、蛇切縄を遣わすとなったら、こりゃ、悪意としか思えない」
「嗯,对。他们很明显、很明确地,是人为的恶意所操控的怪异,不是自然产生的……唉呀,也未必是恶意啦。可是,如果是驱使蛇切绳的话,肯定就是恶意的。」
「ああ……僕も、それは聞いたよ」
「嗯……关于这一点,我也有问过她。」
「うん? そうなの?」
「嗯?是吗?」
「まあ、そうなんだ」
「是啊。」
千石は、名前は明かさなかった。
千石没有说出对方的名字。
あいつの引っ込み思案な態度は、強く質問するのを許さない雰囲気があるので、僕が訊ききれなかったというのもあるが──とにかく、頑なに、千石は、名前を明かさなかった。
她那畏首畏尾的态度,不让人有逼问的空间,所以我也无法打破砂锅问到底——总之,千石就是坚持不肯透露姓名。
犯人の名前を。
犯人的姓名。
ただし──同級生だということは教えてくれた。
不过……她有告诉我,对方和她同年级。
クラスメイトの──友達らしい。
似乎是同班的……朋友。
そんな呪いをかけられてしまった今となっては、友達だったらしい、と過去形で言うべきなのだと、僕は思うけれど。
在千石被下咒的今天,我想应该用过去式「曾经是朋友」来称呼比较适当吧。
「まあ、中学生のお呪いみたいなもので──どうやら、そういうのがはやってるらしいんだよ。オカルト関係の、ちょっと深いところに入ったお呪い……勿論そんなの、ほとんどが空振りなんだろうけど、運悪く、千石は当たりを引いちまったって感じなんだろうな」
「反正,就像是国中生的咒语一样的东西,那种东西现在似乎很流行的样子,一个和超自然有关,稍微艰深一点的咒文……当然那种东西几乎都不会成功,感觉就好像是千石倒霉才会中咒的。」
「運悪く──ね」 意味深に、忍野は言う。
「倒霉……吗。」
「お呪いで、呪い、か。まあ字は一緒だしね。しかし阿良々木くん、その話じゃ、仕掛けた方は素人も素人、ど素人の中学生ということになりかねないんだけど……蛇切縄は素人に扱えるような怪異じゃないはずだよ」
「用咒语来诅咒人吗?唉呀,都有一个咒字吧。不过阿良良木老弟,照你说的,下咒的人或许是外行人,可能还是个天字第一号大外行的国中生……不过,蛇切绳应该不是外行人可以操控的怪异喔。」
「下手な鉄砲も数撃ちゃあたるじゃねえけど、まぐれってこともあるだろ」
「枪法再烂多开几枪还是会打中的,也有瞎猫碰上死耗子的时候。」
「あるかなあ。うーん。そもそも、なんでそのクラスメイトのお友達は、お嬢ちゃんに呪いをかけようとしたんだい?」
「是这样的吗。嗯——那为什么那个同班的朋友,会想要对小姐下咒?」
「途切れ途切れの言葉から推測するに、どうも色恋沙汰らしいぜ。惚れた腫れたの話だよ。その友達が好きだった男の子が、千石に告って、千石がそれをそうとは知らずに、振っちゃった──それで逆恨みされて、みたいな話」
「从她断断续续的话来推测,好像是感情纠纷吧。你爱我、我爱你的那种事情。有一个男生跟千石告白,千石不知道那个朋友喜欢他,结果就拒绝了对方——然后那个朋友就反过来憎恨她之类的。」
「ふうん。ありがちだね」
「嗯——还挺普通的嘛。」
「まあ、中学生の色恋だしな」
「唉呀,毕竟是国中生的恋爱。」
高校三年生まで女の子と付き合ったことのなかった僕がそんな風に言っても、いまいち説得力はないだろうけれど。
到高中三年级才和女生交往的我,这样说似乎欠缺了说服力。
「でも、知らずに付き合っちゃったってんならともかく、知らずに振っちゃったってんなら、別に問題ないように思えるよね」
「不过,假如是在不知情的情况下和对方交往也就算了,拒绝对方的话应该没什么关系吧。」
「その辺は情緒の問題になっちゃうからな。推理するに、自分が好きな男の子を振るなんて、自分の大切なものをぞんざいに扱われたみたいで業腹だったんじゃないのか?」
「这个部分就是情绪上的问题了。照我的推测,对方大概是觉得自己喜欢的男生居然被千石那样糟蹋,而气愤难平吧?」
まるで僕が自分でそう解釈したみたいに言っているけれど、これは神原の推理である。中学生の女の子の心理など、僕にわかるわけもない。神原がそう思うなら、そうなのだろうと、なんとなく思うだけだ。
这是神原的推测,我却说得好像是我自己的看法一样。我不可能会懂国中女生的心理。神原如果这么想的话八成不会错吧,我心中就是有这种想法。
「ふうん。ま、理由なんかどうでもいいか。人が人を憎むのに理由はいらないよね。それで仲違いの末、呪い──か。全く、友情って果敢ないなあ。だから僕は友達を作らないんだよ」
「嗯。总之,理由怎么样不是重点。人类要憎恨一个人是不需要理由的。友情这种东西还真是空虚啊。所以我才不交朋友的。」
「……そうか」
「……是吗。」
突っ込みたい台詞だけどなあ。
他这句话让我很想吐槽。
こういうところにいちいち突っ込んでたら、忍野との会話は夜が明けても終わらないし……ここは我慢の子だ。いつまでもあの二人を待たせっぱなしにしておくわけにはいかないからな。
这种地方要是我一一吐槽的话,恐怕我和忍野聊到天亮也聊不完……这边我要当一个忍耐的小孩。因为也不能让神原她们一直等下去啊。
「『蛇の呪い全集』を読んでいたのは、呪いを解く方法を調べてたんだってさ。今日初めてあの本を読んだんじゃなく、ずっと前から、何度も何度も、毎日のように読んで、読み続けて、確認しながら──解呪の儀式というのかお祓いというのか、憑き物落としというのか、そういうのを、一人で、おこなっていたらしい」
「她读『蛇咒全集』是为了找解咒的方法。她不是今天第一次看那本书,从很久以前开始,她每天都有跑去看书,已经持续看一阵子了,一边确认解咒仪式、驱邪方法和驱除附身物之类的方法,然后自己依样画葫芦的样子。」
それが。
据说方法就是——
あの、蛇のぶつ切り──だという。
把蛇分尸。
儀式めいた──どころか、儀式そのものだったわけだ。彫刻刀を使うなんて猟奇的な、と僕は最初思ったけれど、あれはただ単に、それ以外の刃物を、千石は持っていなかったということのようだ。中学生女子ということを考えれば、案外、一番身近な刃物なのかもしれない。
何止是类似……那根本就是一个仪式。刚开始我觉得她用雕刻刀实在太异常了,不过那单纯只是因为千石没有其他的刀刃而已。从国中女生这一点来思考,雕刻刀或许是离她最近的刀刃吧。
「蛇を殺せば蛇の呪いが解ける──なんて、噓臭い話だけどな。実際、そうやって蛇殺しを始めてから、むしろ状況は悪化したって言ってたし──」
「杀蛇就可以解开蛇咒这实在太诡异了。而且,她说开始杀蛇以后,状况反而更加恶化——」
「いや、阿良々木くん。蛇のぶつ切りは、蛇切縄の撃退法としちゃ、間違っていないよ。というか、正法だね。多分、その『蛇の呪い全集』とやらに、蛇切縄とセットで載ってたんじゃないかな。……しかし、一人で蛇を捕まえて殺すなんて、なかなか度胸のあるお嬢ちゃんじゃないか。素敵だね。物静かだとか言葉少なだとか、阿良々木くんはそんな風に形容したけれど、その行為を見ている限り、とてもそうは思えないよ」
「不对,阿良良木老弟。把蛇分尸,的确是击退蛇切绳的方法没错。应该说是正确的方法啦。那本『蛇咒全集』大概把击退方法和蛇切绳一起写进去了吧……不过,那位小姐居然敢自己抓蛇杀蛇,胆量还满大的嘛。了不起。阿良良木老弟说她是一个文静、话不多的女生;不过从她的行为举止来看,我实在是无法那么认为啊。」
「まあ、この辺、なんだかんだ言って田舎だからな。蛇くらい、手でつかめる女の子がいても不思議じゃないさ」
「这附近怎么说都是乡下嘛。就算有女生敢用手抓蛇也不奇怪吧。」
「シティーボーイの僕には信じられない話だねえ」
「身为 City Boy 的我实在难以置信啊。」
「お前のどの辺がシティーボーイなんだ」
「你是哪门子的 City Boy 啊。」
まあ。 千石の場合、それくらいまで呪い──蛇切縄に追い詰められていたのだと、そういう風に見るのが正しいのかもしれないが。
哎呀。千石已经被诅咒蛇切绳逼到必须不得不那么做的地步,或许应该用这个角度来解读才是正确的吧。
泣いていた。
她哭了。
度胸があるなんてとんでもない。
说她有胆量实在是不合道理。
むしろ、デリケート過ぎるくらいだ。
她反而是一个纤细过头的人。
「蛇を殺せば蛇の呪いが解けるという解釈じゃなくてね、ここでは、蛇をぶつ切りにすれば──というところが肝要なんだよ、阿良々木くん。この場合、蛇は縄のメタファーだ。蛇切縄──縄だよ。どれほど強く緊縛されていても、その縄自体を切ってしまえば、解放される」
「我不是说杀蛇解咒的解释正确,要把蛇分尸这点——才是最重要的地方喔,阿良良木老弟。在这个地方,蛇是绳子的隐喻。蛇切绳,就是绳子啊。不管他紧缚得再紧,只要把绳子本身切断,就能够得到解脱。」
「緊縛──」
「紧缚——」
緊縛痕。
紧缚痕。
蛇によって──縛られている。
被蛇给……束缚住。
縄……か。
绳子……吗。
「蛇に咬まれて朽ち縄に怖ずという言葉があるけど、この場合、蛇と縄はイコールなんだね。蛇、切る、縄、で、蛇切縄だ。縄は切れるからこそ縄なんだよね」
「有句话说一朝被蛇咬十年怕草绳,在这个情况下,蛇和绳子是画上等号的。蛇、切掉、绳子,就是蛇切绳。绳子就是因为可以切断,所以才叫作绳子。」
「……でも忍野。じゃあ、おかしいじゃないか。忍野、千石はもう、十匹以上、あの神社で蛇を殺してるって言ってたぞ? それなのに、呪いが解けるどころか──」
「……可是忍野,这样一来不是很奇怪吗?千石说她在那间神社已经杀了十几条蛇了喔?结果诅咒没有解开,情况反而——」
むしろ状況は悪化した──と。
情况反而更加恶化。
殺せば殺すほど、蛇の鱗は、つま先から上に、速度をあげて、巻き上がってくるかのように登ってきたと──そう言っていた。それは、確実に、呪いが進行している証だろう。
千石说越是杀蛇,蛇鳞的速度就越是加快,从脚尖有如缠绕而上一般爬了上来。这点肯定是咒术越演越烈的证据吧。
「だから、僕はいつも言ってるじゃん。手順が必要なんだよ──そういうことには。妹的存在のお嬢ちゃんもまた、素人も素人のど素人──なんでしょ? 基本的に呪いを解くのは呪いを掛けるより難しいんだから、生半可な知識でやったら、状況が悪化するのは当然だよ。蛇に憑かれているときに蛇を殺したら、そりゃ蛇だって怒っちゃうさ。それは阿良々木くんの言う通りだ」 「…………」
「所以我不是常常在说吗?这种事情要照顺序来啊。像你妹妹一样的小姐,也是外行到不行的天字第一号大外行……对吧?基本上,解咒比下咒还难,要是照着一知半解的知识依样画葫芦,状况会更加恶化也是很正常的。被蛇凭依的时候还去杀蛇,蛇当然会生气吧。这点就跟老弟你说得一样。」
「でも、話している内に、同じくど素人の女子中学生が掛けたはずの呪いが上首尾に終わってる理由の方は、わかったよ。最初は、女の色恋の恨みは恐ろしいからかなあなんて漠然と思ったけど、ちょっと違ったみたいだね。運悪く──だよ」
「不过,我们聊过之后,我知道为什么同样是大外行的国中女生所下的咒,会成功的理由了。一开始我是茫茫然地以为,大概是女生的感情怨恨很可怕的关系,不过好像不是喔。真的是……倒霉啊。」
「どういうことだ?」
「什么意思?」
「多分、そのお嬢ちゃんは、呪いが発動するよりも先に、呪いを掛けられた事実を、知っちゃったんだろうね。犯人がはっきりしているところから予測するに、本人から直接、その事実を聞かされたんだろうな。『あんたに呪いを掛けてやったわ』とか、なんとかさ。それで動揺しちゃって、本屋さんでお祓いの方法を調べて、蛇をぶつ切りにするために──蛇が多く生息していると言われる山に入った。神社は偶然見つけたって感じかな……まあ、あらかじめ知ってたのかもしれないけどさ。で、お嬢ちゃんはせっせと、蛇殺しに勤しんだわけだ」
「我想那个小姐在咒术生效前,就已经知道自己被下咒了吧。从她很清楚犯人是谁这一点来推测,大概是犯人亲口告诉她的吧。像是『我对你下咒了』之类的吧。所以她就开始不安了,跑到书店去调查驱除的方法,为了把蛇分尸……而跑到传闻有很多蛇类栖息的山中。神社应该是她碰巧发现的吧……不过也可能她早就知道了。然后,小姐就拼命在杀蛇。」
「それのどこに、『運悪く』の要素があるんだ?」
「你说的哪里有『倒霉』的地方啊?」
「場所だよ。エアポケットの吹き溜まり──って言っただろう?」
「就是地点啊。我不是说过那边是——气袋的聚集地吗?」
「あ」
「啊!」
よくないものが──集まっている。
那边聚集着脏东西。
忍の存在によって活性化された、よくないものが。
因为忍的存在而活性化的脏东西。
「それが──呪いを強めたのか」
「那个地方……让咒术增强了吗?」
「強めたというか、あの場所じゃなかったら、発動さえしなかったろうね。阿良々木くんや百合っ子ちゃんとは違って、お嬢ちゃん、肉体自体はただの人間のはずだから──体調を崩したりはしなかったろうけど、よくないものの影響は、蛇切縄の方にしっかりと現れていたというわけさ」
「何止增强,如果不是那边的话,咒术根本不会发动吧。小姐跟阿良良木老弟和百合妹不一样,应该只是普通的身体吧——虽然她的身体没有感到不适,不过脏东西的影响,却很明显地出现在蛇切绳身上了。」
抵抗力も──耐性もない。
没有抵抗力,也没有抗性。
ど素人。
天字第一号大外行。
「自分から傷を深くしたようなもんだな」
「这样感觉好像是她自己让伤口加深的。」
「自分で傷をつけたようなものさ。残酷な言い方になっちゃうけどね。何もしなきゃ、恐らくは何も起こらなかったのに。つーか、その『蛇の呪い全集』って本自体が、そもそもいい加減な記述だったのかもしれないな。読んでない本を悪く言うのは、控えたいところだけど、その可能性は高いと思う。その上でそんな場所で、素人判断の解呪の儀式を行なっちゃったわけだ。そこでも、よくないものは、よくない方向に、作用しただろうね」
「就像自残一样啊,用狠一点的说法来说啦。要是她什么都不做的话,大概什么事情都不会发生的说。说到底,那本『蛇咒全集』上面的内容,搞不好本身就是虎头蛇尾。我不想批评自己没看过的书啦,不过我想这个可能性很高。然后,又在那种地方,进行外行人自以为是的解咒仪式。然后在那里,脏东西又让咒术往不好的方向发展了吧。」
「泥沼じゃねえか」
「那样不就越陷越深吗?」
「泥沼だよ」
「是越陷越深啊。」
運悪くというか。
这不光是倒霉两字可以带过的。
ついてないにも──ほどがある。
倒霉……也要有个限度。
「まあ、すんでのところで阿良々木くんと再会したっていうのは、不幸中の幸いなのかもしれないな──阿良々木くんは当然、その子をなんとかしてあげるつもりなんだろう?」
「唉呀,她在快出事之前和阿良良木老弟你再会,应该算是不幸中的大幸吧——老弟你当然会想办法帮她吧?」
「……悪いかよ」
「……不好吗。」
「別に悪くはないさ。義を見てせざるは勇なきなりだもんね。でも、僕あたりにゃちょっとわからないかな。可哀想だって思うのはわかるけれど、どうしてそこまで親身になってあげるんだい? 妹さんの昔の友達だから? それとも苗字の『千石』が、恋人である『戦場ヶ原』ちゃんを連想させるからなのかな?」
「没什么不好啊。见义不为非勇也嘛。不过我就有点不懂了。我知道你觉得她很可怜,可是为什么你可以设身处地为她做到这种地步呢?因为她是你妹以前的朋友?还是说因为她姓『千石』,让你联想到自己的女朋友『战场原』小姐啊?」
「あん? ああ、戦国な。なるほど。でも、そんなこと、考えもしなかったよ。今言われて初めて気付いたさ。別に──あんなあからさまに困ってるんだ。何かしてやりたくなるのは──当然だろ」
「嗄?啊,战国时代啊。原来如此。不过那种事情我想都没想过。现在听你说我才第一次发现到勒。我只是……看到她那么无助,会想要去帮她一把……是很正常的事情吧。」
「いい人だね」
「你真是一个好人啊。」
忍野は言った。
忍野说。
嫌な感じだ。
这感觉真讨厌。
「江戸時代中期に纏められた本に、『蛇呪集』ってのがあってね──蛇についての怪異だけを集めた、異本なんだけど。蛇切縄は、書物においてはそこで初めて、登場する。絵つきでね」
「有人在江户时代中期,整理出一本叫作《蛇咒集》的书,是一本专门收集有关于蛇类怪异的异本。蛇切绳第一次出现就是在那本书里。还附图呢。」
「絵? どんな絵だ?」
「图?什么图?」
「一人の男が大蛇に巻きつかれている絵だよ。尻尾の方は荒縄のデザインになっていて、蛇の頭は──男の口の中に這入っている。男の顎は、限界まで開かれちゃって、まるで蛇──って感じの絵。蛇は鶏くらい、丸吞みにしちゃうからねえ」
「一个男人被大蛇缠住的图啊。蛇的尾巴画成了粗草绳的样子;蛇的头部呢……钻进了那个男人的口中。男人的下颚被硬撑到最开,感觉就像……蛇一样。蛇可以把一只鸡直接吞下肚嘛。」
「巻きつかれて──」
「被缠住——」
「巻き憑かれて」
「被缠附住。」
「…………」
「つまり、阿良々木くん。そのお嬢ちゃんの身体には──今現在もなお、そんな大蛇が巻き憑いているということなんだよ。巻き憑いて、お嬢ちゃんを締め上げているんだ。きつく──容赦なくね」
「简单来说,阿良良木老弟。那位小姐的身体……现在也被那种大蛇缠附着啊。蛇缠附着小姐,把她整个人勒住。紧紧地……毫不留情。」
「いや……痛みはないって言ってたぞ」
「不对……她说她不会痛啊。」
「そんなの、噓に決まってるだろう。我慢しているんだよ。信頼が大事だって、これもいつも僕が言っていることだろう? 無口な子を相手にするときは、こっちが心を読んでやらないと駄目じゃないか。相手の眼を見て──さ」
「那当然是骗你的。她一直在忍耐。信任是很重要的,这一点我也常常挂在嘴边吧?对方如果是一个沉默寡言的女生,我们就必须去读她的心才行。你要看着对方的眼睛——」
「眼を──見て」
「看着……眼睛。」
そう言えば、神原は、千石が痛みはないと言ったとき、何か言いたげにしていたようだが……そういうことだったのか。言うべきことははっきり言うが──言いたいだけのことは、口が裂けても言わない。神原らしいと言えば、とても神原らしいが。
这么说来,千石说她自己不会痛的时候,神原似乎欲言又止的样子……原来是因为这样啊。该说的事情她会清楚说出口;但自己想说的事情却会加以克制。这的确很像神原的作风。
「蛇は、獲物を食べる際、まず相手にぐるぐるに巻きついて、獲物の骨を粉砕し、食べやすくしてから飲み込む習性があるからね。巻きついたら、そう簡単には離れないよ」
「蛇在吞食猎物的时候有一个习性,它会先缠住对方挤碎他的骨头,让猎物比较容易吞食之后再把他吃下肚。它要是缠上的话,不会轻易离开的。」
「そっか……そうだよな、怪異だから服とかは無視できるんだな」
「这样啊……也对,因为它是怪异,所以才可以无视衣服啊。」
肌にだけ痕跡があり、ブルマーはともかく、服の脱ぎ着は自由にできるようだったから、自然、怪異が今も千石の身体に巻き憑いているという発想は持たなかったけれど、そうか、それは──見えなかっただけか。
千石只有皮肤上有痕迹,姑且不论灯笼裤,她似乎可以自由穿脱衣物,所以我很自然地不会认为怪异现在也缠附在她的身体上,原来,那只是因为……我看不见而已。
「縄──だったな。緊縛──だっけ。じゃあ、身体中にあるあの鱗の痕は、痕と言うよりは──姿の見えない蛇が、今まさに食い込んでいる証明ってことなのか」
「绳子……吗。你刚才说紧缚来着。那她身上的那些蛇鳞痕,与其说是痕迹……倒不如说是有一条看不见的蛇,正在紧紧勒住她的体内吗?」
僕や神原には、そして無論千石にも、その大蛇、蛇切縄が見えないから、その怪異が千石の皮膚に残す食い込みだけがただ、透けて見える──というわけだ。
我和神原,当然还有千石都看不见那条大蛇——蛇切绳,只看得见那个怪异残留在千石皮肤上的透明勒痕。
「それでも、阿良々木くんや百合っ子ちゃんといった、半人半妖みたいな存在だからこそ、その痕だって見えるんだと思うよ。巻き憑かれている本人である、お嬢ちゃんもまたしかりだ。恐らくきみ達三人以外の人間には──たとえば、ツンデレちゃんや委員長ちゃんなんかには、その痕さえも、見えないはずだよ。内出血程度は見えるかもしれないけれど──」
「那个痕迹,我想正因为老弟你和百合妹是类似半人半妖的存在,所以才看得见吧。被缠附的小姐本人当然也看得见。恐怕除了你们三个以外——像傲娇妹、班长妹她们应该连痕迹都看不到吧。她们看起来大概像内出血那样吧——」
長ズボンで痕跡を隠す必要なんかないんだよ。
小姐没必要用长裤遮住那些痕迹。
その身体を恥じることもない。
也不用对那种身体感到羞愧。
そう、忍野は言った。
忍野如此说道。
けれど、そんな問題じゃないと思う。そりゃ、理屈ではそうなのかもしれないけれど──今回は偶然、それを見たのが僕と神原だったというのが、またしても千石にとってはついてなかったのかもしれないけれど──でも、本人にそう見えているというだけで、案件としては十分過ぎるほど十分なのではないだろうか。
但是,我想不是那种问题。理论上忍野或许是对的,这次千石凑巧被我和神原撞见,对她来说或许也算是一件倒霉的事情吧;然而,光是她本人看得到蛇鳞,就已经有足够的理由,把这件事情立案处理了。
「かもね。うん、そうかもしれない」
「大概吧。嗯,或许是这样没错。」
「なんだよ、えらくあっさり認めるな」
「搞屁啊,你承认得还挺干脆的嘛。」
「たまには僕も素直にはなるさ。暇だからね」
「我偶尔也要老实一点。因为我很闲啊。」
「お前は暇なときしか素直になれないのか……」
「你只有在很闲的时候,才会老实一点吗……」
「そう言えば、普段着は長袖長ズボンでいいとして、これまでその子、学校はどうしていたんだい? 阿良々木くんの卒業した中学校は、女子の制服はスカートじゃなかったの?」
「对了,这段时间她可以穿长袖长裤便服没错,不过学校那边勒?阿良良木老弟毕业的国中,女生的制服不是裙子吗?」
「スカートっつーか、まあ、ワンピース型の制服だった。こう、オールインワンのな。調査中に見たことないか?」
「该说是裙子吗,唉呀,就是连身裙的制服啦,整个 All in one 这样。你在四处调查的时候没看过吗?」
「ああ、ある。そうか、あれが阿良々木くんの母校の制服なのか。可愛いね──でも、結局、それじゃあ脚がむき出しになっちゃうじゃない」
「啊,有看过。原来那是老弟母校的制服啊。很可爱耶——不过到头来她还是把脚露出来了不是?」
「だから千石の奴、痕跡が出てきてからは、学校、休んでるんだってよ。靴下で隠れてた頃は、まだ我慢できてたらしいんだけど──じゃあ忍野、逆に、その蛇切縄本体を、なんとか見ることはできないのか? たとえば、お前だったら」
「所以千石那家伙,自从痕迹出现之后,她就请假没去上学啦。前阵子用袜子还藏得住的时候,她似乎还可以忍受——那忍野,反过来说,我们有办法看得到那个蛇切绳的本体吗?如果是你的话。」
「無理だよ、僕は人間だもん」
「没办法喔,我是人类嘛。」
あっさり言うじゃないか、この専門家。
你这个专家说得还挺干脆的嘛。
仕事放棄に等しいぞ、その台詞。
这句话等于渎职喔。
「僕に限らず、今回のようなケースでは、憑かれている本人に見えないものを他の人が見ようっていうのは、基本的に難しいと思うけどなあ。いくら阿良々木くんが元吸血鬼だって言ってもね。補足しておくと、蛇切縄の姿を見ることができるのは、憑かれている本人じゃなくて、その蛇を遣わした方だろうね──それも、今回は偶発的なケースだから、きっと、遣わした方にさえも、見えないだろう。だからそのお友達は、呪いが成功していることにすら、気付いていないはずだ。気付いていたら教室で大騒ぎ……いや、まあ、お友達も、見えているのに黙っているだけなのかもしれないけどね。だとすれば、本格的な悪意だけど……いくらなんでも、そこまで本格的な悪意じゃないだろう。そうだったら、お嬢ちゃんはとっくに殺されてしまっているはずだ。ま、こんな可能性の話をしても仕方がない。当て推量もいいところだ。ああ、でも──そうだ、阿良々木くんなら、見るのは無理でも、触ることはできるかもしれないね」
「不只是我,这次的案例来看,被凭依的本人看不见的东西,其他人要看见我想基本上是很困难的。就算阿良良木老弟以前是吸血鬼也一样啊。我先补充说明一点,能看见蛇切绳的人,不是被凭依的本人,而是送那条蛇过来的人吧——不过因为这次是偶发的事件,我想肯定连送蛇过来的人都看不到吧。所以那个朋友,应该连咒术成功的事情都没发现到吧。要是她发现的话教室内就会乱成一……不对,搞不好那个朋友看到了只是没作声而已。如果我说对了,那她就是真正带有恶意……可是,不管怎么想应该都不是这样吧。如果她真的有恶意,那小姐应该早就被杀掉了才对。唉,现在聊这些可能性的话题也于事无补。瞎猜也要有个限度。啊,不过——对了,如果阿良良木老弟的话,虽然看不到,不过或许可以摸得到喔。」
「ん……いつかお前がやったみたいにか?」
「嗯……就像先前某一次你做的那样吗?」
「さーて、なんのことかな」
「唉呦,是哪一次啊。」
すっとぼける忍野だった。
忍野装糊涂说。
そこでとぼける意味がわからないけれど。
我搞不懂这边他装傻的意义何在。
「触ることができたら、引き剝がすこともできるだろうけど……それはやめておいた方がいいか。蛇は気性の荒い動物だからね。そんなことをしたら、間違いなく、蛇切縄は阿良々木くんに襲い掛かってくるだろう。それを何とか回避したところで、今度は呪いを掛けた、そのクラスメイトのところに返っちゃう」
「如果摸得到它,应该也可以把它扒下来啦……可是,还是不要这样比较好。因为蛇是一种脾气暴躁的动物啊。要是你这样做的话,蛇切绳肯定会袭击老弟你。就算你想办法躲开了,待会那条蛇就会回去找那个下咒的班上同学。」
「呪い返し──ってことか」
「那是……咒术反弹吗?」
「人を呪わば穴二つ──だよ。まあ、別にその子も、本気でお嬢ちゃんを殺そうと思ったわけじゃないはずだし、呪い自体、全然信じちゃいなかったんだろう。本当に『あんたに呪いを掛けてやったわ』程度の、嫌がらせのつもりだったんだろうなあ。ふうむ。とはいえ、そんな気持ちでオカルトに手を出されても、困る……僕みたいなはぐれ者はくいっぱぐれだ。商売さがったりだよ」
「害人害己啊。唉呀,那个女生应该不是真的要杀小姐啦,搞不好她完全不相信诅咒这回事吧。其实她只是想说说『我对你下咒了』,故意恶整小姐一下吧。嗯。不过,抱着那种心情乱碰超自然界的东西,会让人很伤脑筋……像我这样的怪人会没饭吃啊。生意都没了。」
「あってるようで間違ってるな、その言葉」
「总觉得你这句话很有道理,又好像有一点不对。」
「はっはー。まあ……でも、いいか」
「哈哈。唉呀……不过算啦。」
忍野はそう言って、簡易ベッドから降りた。そして、てくてくと歩いて、この教室から出て行こうとする。僕は慌てて、そんな忍野の後ろ姿に、「おい、どこに行くんだよ」と声を掛けた。
忍野说完,从简易的床铺上下来。接着,他迈开脚步打算离开教室。「喂,你要去哪啊?」我连忙对着忍野的背影说。
「んー。ちょっと待ってて」
「嗯——你在这边等我一下。」
それだけ言って、本当に教室から出て行った。
他丢下这句话后,真的离开教室了。
気まぐれと言うか、あれではただのわがままだ。
那样要说他善变,倒不如说他是任性比较贴切。
参ったな……待ち時間があるのなら忍の様子でも見に行きたいところだが、それで忍野と入れ違いになっても馬鹿馬鹿しいし……、そういえば、忍はどの教室にいるのだろう? 忍野と違う教室にいるというのは珍しい。またぞろ、ミスタードーナツ関連で、忍野と喧嘩でもしたのだろうか。
伤脑筋——要我等的话,我想趁机去看一下忍,不过要是因此和忍野交错而过,感觉也满蠢的……对了,忍在哪间教室啊?很难得她和忍野不在同一间教室。她又因为 Mister Donut 的事情和忍野吵架了吗?
仕方ない、中間報告を入れるか。
没办法,我先做中间报告吧。
僕は携帯電話を取り出した。神原に電話を掛けようとしたのだ──ちなみに千石は、田舎の中学二年生らしく、まだ携帯電話は所有していないとのことだった。まあ神原のことだ、たとえ両親に見つかっていたところで、うまくかわすことだろうが……、本格的な百合だということと、かなり強度のエロだということさえバレなければ、あいつはあれで、とても模範的な、文武両道の学生に見えるはずなのだから。
我拿出手机,打算拨电话给神原。附带一提,千石很像一个乡下国中的二年级生,现在还没有手机。神原的话,就算她被我爸妈看见,应该也可以巧妙地化解状况吧……只要她是一个正牌百合和大色魔的事情没有露出马脚,她的外型看起来就像一个文武双全的模范生。
しかし、アドレス帳を開こうとした瞬間、忍野が、
不过,正当我打开电话簿的瞬间,
「お待たせ」
「久等了。」
と、戻ってきた。
忍野回来了。
早い。
好快。
僕の行動を見越しているかのように、早い。
宛如预料到我的行动一样。
本当、見透かしたような奴だ。
这家伙好像真的看透了一切。
「お。なんだい、その文明の利器は。誰かに電話するところだった?」
「喔?那个文明利器是怎么回事。你要打电话给谁啊?」
「いや……ほら、神原と千石に、先に連絡入れようかと思ってさ。思ったより時間、掛かりそうだったから」
「就是……我想要先联络一下神原和千石。因为这件事看起来,好像会比我想象的还要花时间。」
「だったら、電話する必要はないよ。僕の話はもう終わりだからさ。はい、これ」
「那你不用打电话了。因为我的话已经说完了。来,这个给你。」
忍野はそう言って、ドア口からダイレクトに、僕に向かって、右手に持っていた何かを投げた。突然の投擲に、僕はちょっとあたふたしながら、しかし、なんとか取りこぼすことなく、それをキャッチすることができた。
忍野说完,在门口直接把右手拿着的东西朝我丢了过来。突如其来的动作,让我稍微慌了手脚,不过我还是成功接住了它,没有失手。
それは、お守りだった。
那东西是一个护身符。
一般的な形の──しかし、無地の、お守り。
形状普通但是却没有任何花纹。
交通安全とも子宝祈願とも、書かれていない。
上头没有「交通安全」或「子宝祈愿」的字样。
無地。
没有花纹图样。
「なんだよ──これ」
「这是什么啊?」
「それで祓えるよ。蛇切縄」
「用这个可以赶走牠,蛇切绳。」
「…………」
「中にお札が入ってるんだ。護符って奴だね。阿良々木くんに貼ってきてもらった奴とは、別の奴なんだけど……その袋に、意味はない。それは鞘だよ。ちょっと強力なお札なもんでね、安全装置が必要なんだ。安全装置というか、リミッターかな。といっても、キョンシーみたいにそのお札をお嬢ちゃんの額に貼ればいいってわけじゃないからね、誤解しないで。むしろ、その袋から、お札を絶対に取り出しちゃ駄目だよ。安全装置、リミッター。何が起こるかわからない。というわけで、正式な手順はこれから説明するから、頑張って憶えて帰ってくれ。僕が直接出向いてもいいけど、そうしない方がいいだろう──信頼関係って意味じゃ、阿良々木くんと百合っ子ちゃんが、もう築けてるみたいだし。十秒以内に口説けるっていうのも、誇大広告じゃなさそうだよね。すごいなあ、羨ましいなあ。はっはー、それに、阿良々木くんは憶えてなかったみたいだけど、お嬢ちゃんにしてみれば、阿良々木くんとの思い出は、結構綺麗な思い出だったんじゃない? でないと、男の部屋でいきなり裸になったりはできないよね、暦お兄ちゃん」 「…………」
「里头放有符咒。就是护符啦。这跟我请老弟你去贴的那个护符不一样……那个符袋本身没有什么意义。那是刀鞘。因为那个符咒稍微强力了一点,所以需要一个安全装置。或者说是限制器比较贴切吧。可是你不要误会喔,这不是像僵尸一样把符咒贴在小姐的额头上就可以的。相反地,你千万不可以把符咒从里头拿出来。那是安全装置,限制器。拿出来没人知道会发生什么事情。就这样,等一下我会说明正式的步骤,你努力记下来然后回去吧。要我直接出马也可以啦,但是不要比较好吧。毕竟,老弟和百合妹似乎已经和小姐建立好信赖关系了。看来十秒以内就能攻陷对方这点,不是夸大不实的广告呢。好棒啊,我真羡慕。哈哈,而且,老弟虽然你不记得了,不过对小姐来说,她和你的回忆应该挺美好的吧?不然,她也不会突然在男生的房间里头脱光衣服吧,历哥哥。」
正直、その辺はよくわからないのだけれど。
老实说这点我不太清楚。
戦場ヶ原や神原、羽川や八九寺のように、のべつ幕なしによく喋ってくれる奴は、その言葉からその内面を推測できなくはないのだが──その言葉が率直なものであるにせよ裏腹なものであるにせよだ──無口というのは、対応しにくい。シャイな性格。押しに弱く、すぐに俯いてしまう──
如果千石和战场原、神原、羽川和八九寺一样,说话滔滔不绝的话,那我多少可以从话语中推测出她内心的想法——不管她说的是真心话还是假话,但如果是沉默寡言我就很难应付了。她的个性腼腆,没有自信,动不动就会低下头来——
でも、そんな千石が、男の子からの告白をはっきり断ったというのは、考えてみれば、なんだか意外ではあるな。あの手の性格は、頼まれたら嫌とは言えず、なあなあでずるずると恋人関係に巻き込まれていきそうなものだけれど……いや、返す返すも、ぼくが恋愛について語れることなんて、何一つないのだが。
可是仔细想想,那样的千石居然会果断地拒绝男生的告白,这还挺令人意外的。像她那种类型的人,被人拜托的话应该不会拒绝对方,而会莫名其妙、糊里胡涂地和对方变成男女朋友才对……可是,不管怎么想,我还是不够格谈论恋爱的话题啊。
「お医者さんの前で裸になるのは恥ずかしくない、みたいなもんだと思うよ。それが信頼関係って奴だ。ああ、そう言えば、へびつかい座のアスクレピウスは、医聖なんだっけね。これも暗示かな」
「我觉得这就跟在医生面前裸体,不会觉得害羞一样吧。那就是信赖关系。啊,对了,蛇夫座的阿斯克勒庇俄斯,好像是神医来着吧。这也是一种暗示吗?」
「けど、忍野……いいのか」
「可是,忍野……没问题吗?」
「いいのかって、何がだよ」
「什么东西没问题啊?」
「こんな……簡単に、あっけなく、祓う方法教えちゃって。いつもお前、もっと勿体ぶるじゃん。ごちゃごちゃと、細かいことっていうか、ひねくれたことを言って。心なし、博引旁証の雑学コーナーも、今回は少なかったような気がするぞ。お前まさか、僕と貸し借りがなくなったからって、適当にやってんじゃねえだろうな」
「你这么……轻松简单地把驱除的方法告诉我。你平常应该会更装模作样一点,说一些杂七杂八、零零碎碎的东西,或者说是一些乖僻的话。是我的心理作用吗,这次博引旁证的杂学讲座好像比较少喔。你该不会是因为和我两不相欠了,所以才随便打发我吧?」
「あーもう、絡むねえ、阿良々木くん。雑学コーナーが多ければ多いで文句を言う癖に。全く、ツンデレなのはツンデレちゃんじゃなくて阿良々木くんの方なんじゃないかという気がしてきたぞ。もう本当に元気いいなあ、何かいいことでもあったのかい? 別に僕は意地悪でそんなことを言ってたわけじゃないよ。委員長ちゃんのときだってツンデレちゃんのときだって迷子ちゃんのときだって百合っ子ちゃんのときだって、そして阿良々木くんのときは言うまでもなく、きみ達は全員、自分から怪異に首を突っ込んでいただろう?」
「啊——真是的,老弟你这是在无理取闹啊。杂学讲座要是太多,你明明也会抱怨。拜托,我开始觉得傲娇的人是老弟你,而不是傲娇妹了喔。你真的是很有精神耶,是不是发生了什么好事啦?我可不是因为坏心眼才说那些东西的。那是因为班长妹、傲娇妹、迷路小妹、百合妹,当然还有阿良良木老弟你,你们全部都是自己去干涉怪异的吧?」
「あ……それは」
「啊……那是——」
それは。
那是——
「言うなら、きみたちは全員、加害者側の人間だった。意図があろうがなかろうが、きみたちは怪異と共犯関係にあったんだ。手を汚した人間が足を洗うには、それなりの手順が必要──なんだよ。今回のケースは違うじゃないか。千石撫子は明らかに、ただの可哀想な被害者だ。何も悪くない。蛇切縄をけしかけられる理由すらも薄弱だ。怪異にはそれに相応しい理由がある──しかしこの場合の理由は、お嬢ちゃんには全くないね。蛇を十匹かい? 殺しちゃったけれど、それだって防衛策だ。運が悪かっただけ、ついてなかっただけ──さ。誰かの悪意によって狙われた被害者にまで、自己責任を求めるほど、僕は狂っちゃいない。そういう人は、ちゃんと救ってあげなくゃ」 「………………」
「真要说的话,你们全都是加害者。是不是故意的先不管,你们和怪异是属于共犯关系。弄脏双手的人要金盆洗手,一定的步骤是……不可少的。可是这次的事情不一样吧。千石抚子很明显只是一个可怜的被害者。她没有任何的错。就连被下蛇切绳的理由也很薄弱。怪异的出现都会有一个适当的理由——但是这次的理由却和小姐完全无关。因为她杀了十条蛇?她是杀了没错,可是那只是一种自我防卫的方法。她只是倒霉,运气不好而已。我不会连这种因为某人的恶意而被盯上的被害者,都要他们承担责任的,我没那么神经病。这种人必须要好好地帮助他才行。」
そうなんだ。
原来是这样。
ごめん、意地悪で言ってると思ってた……。
抱歉,我一直以为你出于坏心眼才会说那些的……
そうか、最初に蛇切縄の名を口にしたとき、やけに重苦しい口調だったのは、そういう理由だったのか……。あれは、蛇切縄自体がどうというわけではなかったんだ。忍野は被害者の、千石撫子のことを、純粋に──考えていたんだ。
难怪,一开始忍野说出蛇切绳之名时,语气才会那么沉重,原来是因为这样啊……那不是针对蛇切绳。只是单纯因为,忍野是站在被害者——千石抚子的角度在思考。
「罪は償わなくてはならないけれど、犯してもいない罪で裁かれることはあってはならない。困っている人は救ってあげないと──ね。確かに僕は性格のいい方じゃないけどね、そんな奴の心にだって、その程度の人情味は残っているさ。とは言え、完全にボランティアってわけにもいかないよね──こっちも仕事だし」
「赎罪是必不可少的;但是不能因为一个对方没有犯下的罪,而去审判他。遇到有困难的人就要去帮助他嘛。我的个性确实不算好啦,可是对那样的人,我还是有一点人情味在的。不过,可不是免费当义工喔——我也是做生意的嘛。」
「まあ、そりゃそうだろうな」
「你说的也没错啦。」
「でも、いいよ。今回、阿良々木くんと百合っ子ちゃんが働いてくれた分の、お釣りってことにしておこう。妹的存在のお嬢ちゃんは、特に何もしなくていいよ」
「不过没关系。老弟你和百合妹帮我工作,这次就算是我找零给你们把。像你妹妹一样的小姐,她不必特别做什么。」
「……そうか」
「……这样啊。」
被害者加害者の問題があるとは言え。
就算有被害者、加害者的问题在,
なんか、こうなると、贔屓っぽいよな。
但我总感觉忍野这样有点偏心。
中学生が好きなのだろうか。
该不会他喜欢国中生吧。
「でもね、阿良々木くん。一つだけ、注意しておくと──人を呪わば穴二つ。繰り返しになるけど、この言葉をよく憶えて、この言葉の意味もよく考えておいてね」
「不过啊,阿良良木老弟。我给你一个忠告就好——害人害己。我再告诉你一次,你要把这句话记好,先仔细想想这句话的含意吧。」
「ああ……いや、別に、憶えるも考えるも、よく聞く言葉じゃないか。生きてりゃ、自然に身につくことだ。怪異がらみじゃなくても、思い知る機会は多々あったよ」
「嗯……可是,没必要去记或是去思考吧,这句话不是很常听到吗,只要活在世上,很自然就会学到的。就算事情和怪异没有关系,还是会有很多机会去体验那句话吧。」
「そりゃそうなんだろうけどさ──でもね、阿良々木くん。阿良々木くんがどう思ってるのか知らないけれど、僕はさ、いつまでもここに住んでるわけじゃないんだよね」
「你这话说得没错啦。不过呢,阿良良木老弟。我不知道你是怎么想的,可是我啊,不会一直住在这里喔。」
忍野は、軽薄なままの口調で、そう言った。
忍野维持轻浮的语气,如此说道。
「蒐集も調査も、いつかは終わっちゃうもんだし。実際、懸念事項というか、大きな目的の一つは、阿良々木くんと百合っ子ちゃんが、ちゃんと解決してきてくれたしね。いつかは僕も、この町を出て行く。そうなったとき、僕はもう、阿良々木くんの相談に乗ってあげることはできないんだよ?」
「因为搜集和调查总有一天会结束的。实际上,我担心的事情,或者应该说我待在这里的最大一个目的,阿良良木老弟和百合妹已经帮我处理好了啊。总有一天我会离开这个城镇。到时候,我就不能指点老弟你了喔。」
貸し借りも──もうなくなったし。
而且……我们也已经两不相欠了。
忍野は続ける。
忍野接着说:
「僕も、放浪生活を始めて長いけどさ、ここまで一人の人間と、たくさん会話をしたのは初めてだよ。阿良々木くんが絶え間なく怪異にかかわるからっていうのもあるけどさ──その怪異に、いちいち対応しようとするのが、阿良々木くんのちょっと変わったところだよね。怪異にかかわると、その後、怪異にひかれやすくなる。それは本当なんだけど、普通、一度怪異にかかわった人間は、怪異をその後、避けようとするものなんだけれど」
「我流浪了很长一段时间,也是第一次和一个人聊这么多事情啦。阿良良木老弟一直和怪异扯上关系这点也有关啦——可是,老弟你满怪的,你会想要一一去处理那些怪异。和怪异扯上关系后,会变得容易被怪异吸引。这点是真的没错,可是通常遇过怪异的人,之后都会想要去避开怪异才对。」
「…………」
「そうやって、バランスが取れるのさ。さっきのツンデレの話じゃないけど、お節介とか面倒見いいとか、阿良々木くんは女の子のことを色々言ってるけど、それは全部阿良々木くん自身のことなんだよね──いや、それ自体は別にいいよ。僕もそんな性格の阿良々木くんが羨ましいもんだからね、ついつい憎まれ口を叩いちゃうけど、それはそれでいいと思うんだ。でもね──僕がいなくなった後は、どうするつもりだい?」
「这样才能取得平衡啊。我这么说跟刚才说你傲娇没有关系啦,不过老弟你说了很多女生的事情,什么鸡婆啦、爱照顾人之类的,可是其实那些都是你的特质——唉呀,这一点是没差啦。我也很羡慕老弟你这样的个性,所以才会说一些惹人厌的话,我觉得你这样很好啦。可是呢……我要是不在的话,你以后打算怎么办?」
「いや──それは」
「那个……关于这一点——」
そんなことは──考えてもみなかった。
我从来没想过这个问题。
勿論、忍野がいつまでもこの町に滞在し続けるなんてことはありえないと、それは考えるまでもなくわかっていたことではあるけれど──忍野がいなくなったその後の話なんて、それはあまりに、唐突過ぎる。
当然,我不用想也知道,忍野不可能一直待在这个城镇里可是,忍野不在以后该怎么办的问题,对我来说太过唐突了。
今しなくちゃいけない話なのか?
我们现在一定要聊这个吗?
「怪異ってのは、当たり前のようにそこにいるものなんだからさ──意図的にかかわるべきものじゃないんだよ。それは、どうあれ、加害者になりかねない。阿良々木くんは、心配性過ぎると思うな。過保護過ぎる。ほっといてもいいものまで──どうにかしようとする傾向にあるよ」
「怪异的存在是很理所当然的,不应该刻意去和他扯上关系。因为不管原因如何,那样都有可能会变成加害者。我觉得老弟你太过操心了。太过度去保护别人。就连一些不用去管的事情,你都会想要去插手。」
「でも……」
「可是……」
それでも。
话虽如此。
「知ってしまったら──どうしようもないだろう。そういうものがあるってことを、僕はもう、どうしようもなく知ってしまっているんだから──見てみぬ振りはできないし、知って知らぬ振りもできないよ」
「我既然知道的话……也没办法把。我很无奈,已经知道那些东西的存在了,所以我没办法视而不见,也不能假装自己不知道啊。」
「はっはー、いっそ、委員長ちゃんみたいに、全部、忘れちゃえればよかったかい? 阿良々木くんみたいなのには、ひょっとしたらその方がいいのかもね。忍ちゃんのこととか──全部忘れてさ」
「哈哈,还是说你干脆像班长妹那样,全部都忘掉比较好?对老弟你这种人来说,或许那样比较好吧。把小忍的事情之类的……全部都忘掉。」
「忘れるなんて──」
「要我忘掉——」
そんなこと。無理に決まっている。
那种事情,肯定是没办法的。
羽川みたいには、いかないのだ。
我不能变得像羽川一样。
「そうだ、忍ちゃんのことも──そうだよね。うん。僕がいなくなったら、忍ちゃんの面倒は、阿良々木くんが一人で見なくちゃいけないんだよね。それは、阿良々木くんが選んだ選択肢なんだから──勿論、忍ちゃんを見捨てようとどうしようと、それは阿良々木くんの勝手だけど」
「对,小忍的事情……也是一样。嗯。我如果不在的话,阿良良木老弟就要一个人照顾小忍了。这是老弟你选择的答案——当然,要不管小忍还是怎么样,都是你个人的自由。」
「それは──忍野」
「那个……忍野——」
「常に意識していなくちゃ駄目だよ。忍ちゃんは、人間じゃないんだから。変な感情移入はするべきじゃない。吸血鬼なんだから。あんなナリになっても、それは変わらず──ね」 「…………」
「你要多提防她喔。因为小忍不是人类。你不应该对她抱有奇怪的感情。她是吸血鬼。就算变成那副德性,这点还是一样啊。」
「意地悪、言っちゃったかな? まあ安心していいよ、ここまで深い仲になったんだ、ある日突然、挨拶もなしで姿を消したりはしないさ。僕も大人だからね、そこら辺は弁えてる。でも、高校卒業後の進路のことを考えるんなら──ついでに、そういうことを考えてみてもいいと思うよ」
「我说的太坏心了吗?唉呀你放心啦,我们已经这么熟了,我不会某天一声不响就突然消失的。我也是个大人嘛,这点道理我懂的。不过,如果你要想高中毕业后的出路——我觉得你也可以顺便想一下我刚才说的话。」
「手当たり次第人を助けようとするのは、無責任だってことか? 誰にでも優しいのは無責任──羽川にも言われたけどよ。でも、忍野。僕はお前みたいにはなれないよ。お前の言う通り、僕は一割くらい、吸血鬼──怪異そのものだからな。怪異を祓う側の人間にはなれないさ」
「你是想说我随便看到人就帮,是一种不负责任的行为吗?对谁都很温柔是一种不负责任的行为——羽川也对我说过这句话。可是,忍野。我没办法变得像你一样。你说得没错,因为我有十分之一左右是吸血鬼……本身就是一个怪异。所以我没办法变成驱除怪异的人。」
そうなったとき、まず、いの一番に祓わなければならないのは、この僕自身だ。
倘若真的变成那种人,那我第一个要驱除的就是我自己。
そして忍だ。
然后是忍。
それは──できない。
这……我没办法。
僕には、できなかった。
我做不到。
「そうでもないと思うけれどね。所詮こんなの、知識とノウハウだし。半人半妖の憑き物落としなんて、漫画のキャラみたいで格好いいじゃん」
「我想不用那样吧。驱除这种事情,需要的只不过是知识和技巧。半人半妖的驱魔人就像漫画的角色一样,还满帅的啊。」
「まあ……アロハ服の専門家がいるんだから、それもありなのかもしれないけどな……」
「唉呀……既然都有穿夏威夷衫的专家了,就算有那种人也不奇怪吧……」
「それに」 忍野は言った。 「阿良々木くんは、いつだってその気になれば……、忍ちゃんを見捨てればいつだって、完全な人間に戻れるんだってこと──僕としては、それも、忘れないでいて欲しいな」
「还有,」忍野说。「只要阿良良木老弟想的话随时都可以……只要不去管小忍,你随时都可以变回一个完全的人类——我个人希望你不要忘了这点。」
006
場所は、例の神社跡だった。
地点是那间神社遗址。
山の上の、廃れた神社。
山上的荒废神社。
時間は、準備をしている内に、真夜中になった。
当我们在做准备的时候,时间已经到了深夜。
翌日に回すことも考えたが、あと一日もすれば鱗の痕──蛇切縄の巻き憑きは首にまで達する恐れがあったため(そうなったら隠しようがない。まさかこの季節にマフラーを巻くわけにもいくまい──いくら、常人には見えない鱗の痕跡だとは言ってもだ)、一刻一秒を争うと考え、夜中であろうと、実施することに決めた。僕の家は僕に関しては放任主義だし、神原もまた言うに及ばずだったが、千石は現役中学生ということで、門限に関して若干の問題が生じたが、学校の友達にアリバイ作りを依頼し(お泊り会があるとか、なんとか)、その点は回避した。当たり前だが、呪いを掛けてきたその友達以外にも、千石には友達はいるらしい。
我也有想过明天再处理,但只怕再过一天,鳞痕——蛇切绳的缠附痕就会到达颈部。要是真的变成那样可就藏不住了。总不能在这个季节还用围巾吧——就算那些鳞痕普通人看不见。现在分秒必争,我才会决定在深夜进行驱除仪式。我家对我是采取放任主义,神原当然也不用说;但是千石现在是国中生,回家的时间方面可能会有一点问题,不过她拜托学校的朋友帮忙制造不在场证明(例如要住在同学家之类的),所以避开了这个麻烦。千石除了对她下咒的那个朋友以外,似乎还有其他的朋友,这很理所当然。
友達が多いのは結構なことだ。
朋友多一点真的不错呢。
と、思う。
我心想。
そもそも、ことの原因となった神社跡でことを行なうということについて、僕は最初、少なからず不安を覚えたものだったが、忍野は「それは大丈夫だよ」と太鼓判を押した。もうお札を貼ったからそう言うのかと思ったが、そうではなく、手順の問題だという。たとえ相手がよくないものであっても、それを味方につければいいだけの話だ──そうだ。そういう場であるからこそ、蛇切縄の存在が際立つ──とか、触れやすくなる──とか、そんなことを言っていた。
老实说,在事发原因的神社遗址举行驱邪仪式这点,刚开始让我有点不安;但是,忍野挂保证说没问题。他会那么说,我原以为是因为贴了符咒的关系,然而却不是,只是因为步骤的问题。就算对方是脏东西,只要让他们站在我们这边就好。他说正因为是那种地方,蛇切绳的存在才会变得很醒目,比较容易触摸到之类的。
正直、よくわからなかったが。
老实说我听不太懂。
まあ、専門家の言うことだ。信用しよう。
唉呀,这是专家说的话。就相信他吧。
三階の部屋にいた忍に軽く挨拶してから(やはりミスタードーナツ関連で忍野と喧嘩をしたらしい。また忍野が、忍の好きなドーナツを全種類食べてしまったそうだ。忍野メメ、大人気ないというより子供っぽい)、学習塾跡を出、僕は寄り道をせずに、自宅へ帰った。果たして、神原は、ずっと同じ部屋にいた千石にも、帰ってきていた二人の妹達にも、手を出してはいなかった。
我跟在三楼教室里的忍稍微打过招呼后(她果然因为 Mister Donut 的事情又和忍野吵架了。忍野好像又把她爱吃的甜甜圈全都吃光了。忍野咩咩,要说他没有大人样,倒不如说他是幼稚比较贴切),离开了废弃补习班,直接回到了家里。神原真的没对共处一室的千石和我两个已经回家的妹妹出手。
「よく頑張ったぞ、神原! よく我慢した!」
「你做得太好了,神原!你竟然忍住了。」
「うん……阿良々木先輩のその真剣な褒め言葉を聞いて、初めて、私は今まで、ちょっと阿良々木先輩の前でふざけすぎたのかもしれないと、後悔しているぞ……」
「嗯……听到阿良良木学长这么认真地在夸奖我,我开始后悔自己至今在学长面前开的玩笑,可能开得太过头了……」
落ち込み気味の神原だった。
神原有些消沉。
口説くどころか、ちゃんと千石の話し相手になってあげていたらしい。むしろ引っ込み思案な千石の方から、
她不仅没有攻陷千石,还很认真地在陪她聊天。反而是畏首畏尾的千石看不下去,
「暦お兄ちゃん。神原さんは優しかったよ」
「历哥哥,神原姐姐对抚子很亲切喔。」
と、見かねたフォローがあったくらいだ。
出声帮神原说话。
「ブルマー、貸してくれたし」
「而且她还借抚子灯笼裤。」
「それは優しさの基準にはならない」
「那不能当作判断亲不亲切的标准吧。」
千石に対する記念すべき初突っ込みだった。
这是我对千石的初次吐槽,值得纪念。
とにかく、他の連中と違って、千石との会話には途中にギャグがほとんど入らないので、僕としてはやりづらい。あいつらのせいで、すっかり僕は、普通の会話と言うものができない奴になってしまったらしい。悪いが、千石にはその流儀に付き合ってもらうことになる。
总而言之,千石和其他人不一样,我在和她的谈话当中,几乎找不到能够穿插玩笑的地方,所以对我来说很痛苦。都是那群家伙的关系,让我变成了一个无法进行普通对话的人。抱歉了千石,以后可能要请你也用那种方式和我打交道了。
僕が妹二人の相手をしている隙に、二人には家を抜け出してもらい、その後、僕は堂々と、外に出た。妹達は怪しんではいるようだったが(特に下の妹。いい勘をしている)、最後は強引に振り切って、打ち合わせた位置で、合流。遅くまでやっている雑貨屋(コンビニにあらず)で、必要器具を購入し(何分突然の流れで、神原も千石もお金をあまり持っていなかったので、全額、僕が支払った)、それから、例の山へと向かった。全員徒歩である。
接着,我请她们趁我牵制住两个妹妹时趁机离开我家,随后我大摇大摆地走出家门。妹妹们似乎觉得很奇怪(特别是小妹,她的第六感很敏锐),最后我硬是甩掉她们,到事先约好的地方和神原两人碰头。我们在经营到很晚的杂货店(不是便利商店),购入必要的工具(毕竟事出突然,神原和千石身上都没什么钱,所以这里由我全额支付),接着我们朝那座山出发。三人都采徒步的方式。
「千石」
「千石。」
「あ、何……暦お兄ちゃん」
「啊!怎么了……历哥哥。」
びくっと反応する千石。
千石的反应有些心惊。
怒られると思ったのかもしれない。
或许她以为我要责骂她。
硝子細工のようにデリケートな奴だ。
她真是一个像玻璃工艺般纤细的女孩。
「お前、本当は、その痕──痛いんだってな。大丈夫なのか?」
「听说你身上的那个痕迹……其实很痛吧。不要紧吧?」
「あ……」
「啊……」
千石の顔が、さっと真っ青になった。
千石的脸色瞬间铁青。
「そ、その……怒らないで、暦お兄ちゃん」
「那、那个……你不要生气,历哥哥。」
「……いや、責めてるわけじゃないんだが」
「……不是,我没有要骂你的意思。」
噓をついたことを𠮟られるとでも思ったのだろうか。気が弱いというか、被害者意識が強いというか……漫画やなんかでそういうキャラクターを見るたび、ああ、こういう奴が現実にいたらさぞかし鬱陶しいんだろうなあと思っていたが、こうしてみると、結構、まんざらでもないな……。僕がいい人かどうとかいう以前の段階で、素直に保護欲を刺激される。まあ、かなり年下の子供相手だからというのも、あるのだろう。
千石可能以为我在责怪她不老实吧。这应该说是个性软弱呢,还是被害意识过于强烈呢……每当我在漫画之类的东西里头看到这种角色,都会觉得这种人要是出现在现实当中,想必会很惹人厌吧;不过,这样实际感受一下之后,我想其实也不坏吧……先不管我人好不好,老实说千石已经刺激到我的保护欲了。唉呀,她的年纪比我小很多这点,或许也有关系吧。
「大丈夫なのかって、思って」
「我只是在想你不要紧吧?」
「そ、その」
「那、那个,」
ぎゅっと、帽子を深く被り直す千石だった。
千石重新将帽子紧紧地深戴。
顔を隠すように。
为了遮住脸蛋。
見られたくないかのように。
似乎不想让我看见一般。
「締め付けられるようで、痛いけど……我慢できないほどじゃないよ」
「感觉好像被勒住一样,会痛没错……可是还不到无法忍受的地步。」
骨を砕いて──食べやすくする。
把猎物的骨头弄碎,便于吞食。
蛇の習性。
这是蛇的习性。
「……我慢しなきゃいけないのが、そもそもおかしいんだよ。痛いときは痛いで──いいんだ」
「……为什么你要忍耐,这样很奇怪吧。痛的时候,你老实说出来就行了。」
「その通りだぞ」 神原が横から口を挟んできた。 「縛られるだけならまだしも、縛られっぱなしというのは、存外、肉体的にはきついものだ。蛇だろうが縄だろうがな」
「没错。」神原在一旁打岔说。「只是被束缚住倒是还好,如果被一直绑住的话,对肉体的负担出乎意料地大呢。不管是蛇还是绳子。」
「縛られるだけがまだしもになる理由も、暗に精神的なきつさを除外した理由も、僕にはわからねえよ、神原」
「我不懂『只是被束缚住倒还好』的理由,也搞不懂为何你会不经意地忽略掉精神上的负担,神原。」
後悔が全く活かされていない。
她根本一点都没在后悔。
千石はそんなやり取りに、忍び笑い。
千石听到我们的对话,在一旁窃笑。
気が弱い割に、案外笑い上戸30なのかもしれない。もしそうなのだとすれば、神原でさえあの有様だったのだ、千石の前で十三星座の話題は絶対にタブーだな、と僕は思った。笑い死にしてしまうかもしれない。
她虽然个性软弱,不过出乎意料还挺爱笑的。如果真是如此,那我绝对不能在千石面前提起十三星座的话题,因为连神原都笑成那副德性了,她搞不好会笑死也说不定。
山に入る前に、雑貨屋で買ってきた虫除けスプレーを、お互いの身体に掛け合う。時間は真夜中、目下の敵は、怪異よりも先に、まずは虫だった。一応、全員、長袖長ズボンの完全防備ではあるが、僕と神原は念のため、千石に関しては後々のため、だ。
在入山之前,我们互相喷了在杂货店买的防虫喷雾。时值深夜,早一步出现在眼前的敌人是蚊虫,而不是怪异。我们三人大致上都穿长袖长裤,有完全的防备;不过我和神原为了安全起见,而千石则是为了待会做准备,所以还是用了喷雾。
作業を終えて、山に入る。
喷完之后,我们走进山中。
当たり前だが、真っ暗だ。
不用多说,山中一片漆黑。
三人三様に、同じく雑貨屋で購入した懐中電灯で前を照らしながら、階段を昇った。野生の動物や虫の声がやけにうるさい。昼間はそんなことなかったのに、ちょっとした探検冒険気分だ。ジャングルに迷い込んでしまったような錯覚がある。
我们各拿了一支同样在杂货店买的手电筒照着前方,同时爬上阶梯。野生动物和虫鸣声非常地吵杂。白天根本不会这样,现在好像是在冒险或探险似的。有一种彷佛自己在丛林中迷路的错觉。
「そういや、千石」
「对了,千石。」
「何?」
「怎么了?」
「一個気になったんだけど、なんでその男の子からの告白、断ったんだ? お前はその男の子が、友達の想い人だってことを、全然知らなかったんだろう? だったら断る理由なんて、なかったと思うんだけど」
「我有件事情很在意,为什么你要拒绝那个男生的告白啊?你完全不知道你朋友喜欢那个男生吧?既然这样,我想你应该没有拒绝的理由才对啊。」
「それは……」
「那是因为……」
黙り込んでしまう。
她沉默不语。
この程度の質問で黙り込んでしまうメンタルの持ち主が、他人からの告白を断れる理由が、だとすると益々分からないのだが……。
这点程度的问题就让她陷入沉默,我更搞不懂她为什么能明确地回绝对方了……
「ご、ごめんなさい」
「对、对不起。」
謝られた。
她向我道歉。
意味もなく。
没有原因理由。
「いや、謝ってもらうようなことじゃないけど……」
「那个,你不用跟我道歉吧……」
「あ、そ、そうだよね。ご、ごめんなさい。撫子は……その、……ごめんなさい」
「啊,也、也对。对、对不起。抚子……那个……对不起。」
一つの鍵括弧の中で二回謝られた。
一个括号里头,接连道了两次歉。
合計三回。
总共三次。
謝られ過ぎだ。
她道歉得太过头了。
「千石、そうじゃなくて……」
「千石,我不是那个意思……」
「阿良々木先輩。その質問はいささかデリカシーに欠けるな。阿良々木先輩らしくもない。気遣いが足りないぞ」
「阿良良木学长,你的问题有点太粗线条了。这样一点都不像学长的个性,不太体贴了。」
「あ……そうか?」
「啊……是吗?」
「そうだぞ。断る理由なんて幾らでもある。そもそも、好きでもない人と付き合う理由なんてあるものか」
「对啊。拒绝对方的理由要多少有多少。况且,千石没必要和自己不喜欢的人交往吧。」
「ううん……」
「呜呜……」
まともな意見だ。
十分正确的见解。
神原からまともな意見が出ると驚いてしまう自分に気付いてしまった。
我发现自己听到神原说出这种正确的见解,居然会感到惊讶。
「私だって、阿良々木先輩が好きだからこそ……」
「我也是因为喜欢阿良良木学长……」
「付き合ってねえだろうが!」
「我们没有交往吧!」
「え……そうなの? 暦お兄ちゃん」
「咦……真的吗?历哥哥。」
千石が、とても意外そうに、反応した。
千石一脸意外。
「神原さんと付き合ってるんじゃないの?」
「你和神原姐姐不是男女朋友吗?」
「違う!」
「没有!」
「そ、そうなんだ……、仲良さそうだったから……てっきり付き合ってるんだと思ってた」
「这、这样啊……我看你们感情很好……还以为你们一定在交往呢。」
「仲がいいのは、まあ、認める」
「感情很好这一点,好吧,我承认。」
八九寺とどっちが仲良しかって感じだ。
八九寺和神原两人,我跟哪一个感情比较好呢。
まあ、八九寺と違って神原は、そうは言っても決して僕の悪口は言わないからな……、そういう意味で、頭一つ抜けているのは、神原の方なのかもしれない。
唉呀,神原和八九寺不一样,就算我说这种话,她也不会对我恶言相向……这样看来,神原或许略胜一筹吧。
……実際に付き合っている相手である戦場ヶ原は、僕の悪口しか言わないんだけど……。
……不过我的正牌女友战场原,只会说我坏话就是了……
「神原。お前からもちゃんと否定してやれ」
「神原,你也好好否定一下吧。」
「うむ。確かに付き合ってはいない」
「嗯。我们真的没有在交往。」
千石に対して、神原は説明口調で言う。
神原用说明的语气,对千石解释道,
「私と阿良々木先輩はあくまでも仲良く遊んでいるだけだ──まあつまり、遊びの関係だな」
「我和阿良良木学长只是感情很好的玩伴。简单来说,就是玩玩而已啦。」
「その言い方には大いなる語弊があるな!」
「你的说法有很大的语病喔!」
「何かあっても事故で済むほど仲がいい」
「我们的感情好到如果不小心发生了什么事,都可以当成意外来处理。」
「あるのは語弊じゃなくて悪意だったのか!? お前なんか大嫌いだよ!」
「原来有的不是语病,而是恶意吗!?我最讨厌你了。」
「あ。今のはちょっと傷ついたぞ」
「啊。这句话让我有点受伤呢。」
「う……あ、ごめん。大好きです」
「呜……啊,抱歉,我最喜欢你了。」
僕には何を言われても嬉しいとか言っていた癖に、扱いの難しい奴だ。
她明明说过不管我说什么她都会很高兴,还真难搞啊。
というかここで謝る僕が弱い。
话说,我还真懦弱,居然道歉了。
「そっか……付き合ってないんだ」
「这样啊……原来你们没有交往啊。」
僕と神原のやり取りをかたわらに、千石はそんな風に、どうしてなのか安心したようにひとりごちてから、
千石自言自语地说。她在一旁听到我和神原的对话,不知为何似乎松了一口气。
「断ったのは、他に好きな人がいるからだよ」
「会拒绝对方,是因为抚子已经有喜欢的对象了。」
と、教えてくれた。
接着,她告诉我们说。
照れているっぽい口調が、初々しい。
有些害羞的语调,相当纯真。
「でも……その友達には誤解されちゃったみたいで……こんなことになっちゃって……な、撫子が悪かったのかな……」
「可是……我的朋友好像误会抚子了……事情才会变成这样……是抚子不好吗……」
「自分を責めるような問題じゃないよ。そもそも、本来なら、ここまでなるような事態じゃなかったんだろうけどな──あの神社の所為で」
「你不用责怪自己。真要说的话,事情本来不会变成这样吧——都是那间神社的关系。」
あの場の所為で。
都是那个地方所导致的。
「そう言えば、神原。多分、お前、また気分悪くなると思うんだけど……お札の効果って、そんな即効性のあるものじゃないらしいし」
「对了,神原。我想等一下你的身体大概又会不舒服了吧……因为那张符咒好像不是立即生效的东西。」
「構わない。最初からそうと分かっていれば、覚悟の決めようもあるのだ」
「没关系。要是一开始就知道的话,那我就可以事先做好心理准备。」
「そっか」
「是吗。」
体育会系。
运动系。
見事な根性論だ。
漂亮的骨气论。
普通、そんな非科学的なことをと、否定したくなるところだが、言っているのが神原だから、なんとなく信用できてしまう。こいつはその根性とそれに見合った努力だけで、運動神経の鈍い少女から、全国区のバスケットボール選手にまで上りつめた恐るべき女だからな。
通常那种非科学的事情(有心理准备,身体就不会不舒服),会让我想要否定它,不过因为这话是神原说的,总会让我不由自主地就想相信她。因为这女人相当可怕,她凭借着骨气和相对的努力,让自己从运动神经迟钝的少女,蜕变成进军全国的篮球选手。
「暦お兄ちゃん。昔のこと、どれくらい、覚えてる?」
「历哥哥,以前的事情你记得多少呢?」
「あー……いや、正直、あんまり。僕、記憶力のいい方じゃないからさ」
「啊……老实说,不是很多。因为我的记忆力不是很好。」
「そうなんだ……」
「这样啊……」
千石はあからさまに残念そうだった。
千石失望的表情全写在脸上。
僕は慌てて、話題を切り替えるように、「千石の方こそ」と言った。「よく、僕のこと、憶えてたな。ちっちゃい頃、何回か遊んだだけの相手のことなんて。しかも、友達の兄貴だろ? 普通だったら、そんなこと、忘れちまうよ」
「千石你才是,」我慌忙改变话题说:「你竟然还记得我的事情。我们小时候才玩过几次而已。而且,我还是朋友的哥哥吧?一般来说,这种事情很快就会忘记的说。」
「撫子、あんまり、人と遊ぶこと、なかったから」
「因为,抚子以前,不太常跟别人玩在一块。」
千石は言った。
千石说。
「あの頃、放課後まで一緒に遊ぶような友達って、ららちゃんくらいだったし……」
「而且,那个时候放学之后还会一起玩的朋友,只有良良而已……」
ららちゃん、というのは、僕の下の妹のことだろう。そうだ、確か、あいつは、家に連れてくる友達から、そんな風に呼ばれていた。小学生の頃のニックネーム。『あららぎ』の、真ん中を取って、『ららちゃん』──だ。今は上の妹と合わせて、栂の木二中のファイヤーシスターズだけど……。
良良大概是说我的小妹吧。对了,没错,以前她带回家里的朋友,是那样称呼她的。那是她小学时的昵称。取「阿良良木」的正中间,所以是「良良」,现在她和我大妹,两人并称「栂之木二中学的爆热姐妹花」就是了——
変われば変わるものだ。
真是说变就变啊。
人が変わるのは、当たり前のこと。
人会改变是很自然的事情。
まあ、あの頃と言うならあの頃の僕はと言えば、妹が家に友達を連れてきて、その遊びに付き合わされることを、迷惑に思っていたところがあるからな……。
唉呀,说到那时候的我,当时妹妹带朋友回家的时候,我都会被逼着陪他们玩,让我觉得有点困扰啊……
女の子と遊ぶのが恥ずかしい年頃だった。
因为那个时候,我正值和女生玩会觉得丢脸的年纪。
そんな感じだ。
感觉就是这样。
「ららちゃんとは、中学で別々になっちゃったけど……、ららちゃんや、暦お兄ちゃんと遊んだことは、全部、大切な、思い出だから」
「抚子和良良升上国中之后就不同校了……可是,和良良还有历哥哥一起玩的事情,全都是抚子宝贵的回忆。」
「そっか──」
「这样啊——」
だったら──いいんだけれど。
这样就好。
ちなみに、千石に対して、僕と神原がそれぞれに抱えている怪異のことについては、伏せている。ある程度その方面にかかわりを持っていることを、匂わせている程度だ。明かしてしまってもいいのだが、あるいは信頼関係という意味ではそうするべきなのかもしれないが、しかし、千石の追い詰められたメンタルを加速させかねないということで、神原との相談の結果、そういう配慮をすることにしたのだった。だから千石は、どうして神社に行けば神原の気分が悪くなるのか、多分、よくわかっていないだろう。霊感が強いから、程度に理解しているのかもしれない。そう考えても、まああながち、間違いではないのだが。
附带一提,我和神原各自所承受的怪异问题,并没有告诉千石。只有让她觉得,我们和那方面的事情有某种程度关系而已。坦白告诉她其实也无妨,或许站在信赖关系的角度上我应该那么做才对;但是,我怕那样会让千石内心承受的压力加剧,所以和神原商量过后,才会做出这种考虑。因此,为何到神社神原的身体会不舒服,千石大概不知道吧。她可能会觉得,是因为神原八字轻的关系。这种思考方式,其实也不一定是错的啦。
「撫子、一人っ子だから」
「因为抚子是独生女。」
千石は言った。
千石说。
「お兄ちゃんって──羨ましかった」
「很羡慕别人……可以有哥哥。」
「………………」
それは、ないものねだりだと思う。
我想那是因为你没有,所以才会想要。
妹のいない人間が妹を欲しがるようなものだ。
这就跟没有妹妹的人,会想要妹妹一样。
僕だって、兄や姉、弟が欲しいと思うときがある──それを持つ人間を、羨ましく思うことはある。ただ、しかし、僕のように実際に妹を持つ人間と、一人っ子の千石の意見とは、また別なのかもしれないな。
我有时候也会希望自己能有哥哥姐姐或弟弟——会去羡慕有这些东西的人。不过,像我这种真的有妹妹的人,和独生女千石的见解,或许又不一样了吧。
一人っ子──か。
独生女……吗。
「そう言えば神原。お前、兄弟は──いないよな」
「对了,神原。你也没有……兄弟姐妹对吧。」
「いないぞ。私も一人っ子だ」
「没有啊。我也是独生女。」
「そっか」
「这样啊。」
戦場ヶ原もそうだよな。八九寺も、羽川も。
战场原也是。八九寺和羽川也一样。
なんだ、一人っ子ばっかりじゃないか。
大家都是独生女啊。
忍は──どうなんだろう。
不知道……忍怎么样。
吸血鬼には、兄弟って、いるんだろうか?
吸血鬼也有兄弟姐妹吗?
「よし──着いたぞ」
「好——到了。」
一番前を歩いていた僕が、当然、一番乗りだった。
走在最前面的我,当然是第一个到。
神社跡。
神社遗址。
荒れ果てた、うらぶれた風景。
荒废没落的景象。
お札は変わらず──貼られたままだ。
符咒还是一样……贴在那里。
「神原。気分は大丈夫か?」
「神原。身体不要紧吧?」
「うん。思ったより平気だ」
「嗯。比我想象的还要好。」
「何か馬鹿なこと言ってみろ」
「那你说一些蠢话来听听。」
「私は車の中で本を読んで、酔って気分が悪くなるのが好きだ」
「我很喜欢在车内看书,然后晕车不舒服的感觉。」
「何か面白いことを言ってみろ」
「说一些有趣的话来听听。」
「仕方ないではないか! やらなければお金をくれないと脅迫されたのだ!」
「我也没办法啊!对方威胁我说如果我不干就没钱拿啊!」
「何かエッチなことを言ってみろ」
「说一些色色的话来听听。」
「好きな女の子が処女かと思ったら猩々だった」
「原本以为自己喜欢的女生是处女,没想到居然是猩猩。」
「よし」
「很好。」
最後のが軽く微妙だが、まあ、大丈夫なようだ。
最后那句感觉有一点微妙,不过没问题吧。
脇で、千石は腹を抱えて、ぶるぶると震えながら、うずくまっていた。どうやら相当、ツボに入ったらしい。
千石在一旁捧着肚子颤抖着,同时蹲在地上。看来这几句话,似乎点到她的笑穴了。
やっぱり笑い上戸だ。
她果然很爱笑。
どうやら会話の内容以上に、僕と神原とのやり取り自体を面白がってくれているようだが、まあそれはそれで、観客としてはいいリアクションなので、そんなに悪くないな。
看来比起对话的内容,我和神原的对答本身更让她觉得有趣,这样也不错啦,以一个观众来说她的反应很好,感觉不会很差。
「じゃ、さっさと……とっとと準備するか」
「那我们快点……赶快着手准备吧。」
「阿良々木先輩、今の、どうして言い直した?」
「阿良良木学长,为什么你要用两个不一样的副词啊?」
適当な場所……つまり、草木がそこまで傍若無人に茂っていない場所を探し、その四方に、それぞれの持っていた三つと、鞄に入れていたもう一つの懐中電灯を設置する。スクエアの、中心を照らすような配置だ。
我们找了一个适当的场所……也就是草木没有长得太「目中无人」的地方,把手电筒——我们手上的三支,和放在包包里头的一支——设置在四方。让灯光照着四角形的中心。
地面は土。
地面是泥土。
その土に、その辺りの木の棒を使って線を引き、懐中電灯同士を繫いで、本当にスクエアを形成する──いわゆる結界という奴だ。相当に簡易式だけど、それで構わないと忍野は言っていた。結界は、とりあえずは区切られていることだけが重要──なのだそうだ。スクエアの中に、ビニールシートを敷く。このビニールシートも、勿論雑貨屋で購入したものである。
随后我们用一旁的木棍在地上画线,将四支手电筒相连,变成一个真正的四角形——这就是所谓的结界。样式虽然相当简单,不过忍野说这样无妨。他说结界最重要的,就是要先画出一个范围。随后,我们在四角形的中间铺上塑料布。这塑料布当然也是在杂货店买的东西。
そして、そのスクエアの内部に──千石が這入る。
接着,千石进到四角形里头。
一人で。
单独一人。
スクール水着姿で。
穿着学校泳装。
「………………」
その水着は、雑貨屋で購入したものではなく(そんなものは雑貨屋には売っていない)、ブルマーと同じように、神原が『たまたま』準備してきたものだった。
那件泳装不是在杂货店买的(杂货店不会卖那种东西),而是神原「刚好」准备在身上的,就跟灯笼裤一样。
「……お前は懐中電灯を買う金も持ってなかった癖に、なんでブルマーやらスクール水着やらを持っていたんだ」
「……你身上连买手电筒的钱都没有,为啥会有灯笼裤和学校泳装啊。」
「お金よりも大切なものが、世の中にはある」
「这世界上有些东西比钱还重要。」
「僕もその通りだとは思うが、それはブルマーやスクール水着じゃない」
「我也是这么认为,不过那些东西不会是灯笼裤和学校泳装。」
「私としては阿良々木先輩の好みに合わせたつもりだったのだが」
「我个人原本是打算配合阿良良木学长的兴趣啦。」
「合わせるな」
「不用你来配合。」
「好みなのは否定しないのだな」
「『兴趣』这个部分学长不否认吗?」
確認すると、やはり千石は、結界の中で、小さく笑っていた。……このギャグ一つのために、お前はこんな古びた神社の中、スクール水着姿でいるわけなのだが、笑っていていいのか……。
我转头确认,结界里头的千石果然在窃笑——因为这个笑梗,你才会在这间老旧神社里头穿着学校泳装。这样你还笑的出来吗……
ともあれ。
总而言之。
蛇祓いの経過を見るために、長袖長ズボンのままではまずいということで、術式の最中には肌の鱗痕が見えるようにしておくこと、との忍野からのお達しだったのだが、さすがに屋外で、ブルマー一丁というわけにはいかない。それはもう、正直者の僕でさえ忍野に隠し通したことではあるが、僕の部屋で、千石から蛇切縄の痕跡を見せてもらったとき、うっかり彼女が胸から両手を外してしまうというハプニングがあったりしたのだから、尚更だ(一旦泣きやんだ千石がもう一度泣いた)。
为了要看到驱蛇的经过所以不能穿长袖长裤,因此在解咒仪式中要能清楚看见皮肤上的鳞痕才行,这是忍野的指示;不过,在屋外实在不能只穿着一件灯笼裤。刚才千石在我房间秀出蛇切绳的痕迹时,结果双手不慎从胸部上移开,因为这样在室外就更不可能让她裸体穿灯笼裤(那时候原本止住哭声的千石,又再哭了一次),这个意外事件就连老实行事的我,也对忍野闭口不提。
というわけで、スクール水着だった。
所以,她才会改穿学校泳装。
神社で着替えたわけではなく、小学生みたいに、家から、長袖長ズボンの下に着てきたのだった。スクール水着では、脚の鱗痕は見えても、体幹部分はほとんど隠れてしまうから、被害の具合は分かり辛いのだが、ただ──気の持ちようなのか、鱗の痕が、首の辺りにまで掛かっているように、僕には見えた。夕方に見たときよりも──巻き憑きが、進行している……のだろうか?
这身泳装不是在神社换上的,而是像小学生一样,在家里事先穿在长袖衣裤底下。穿着学校泳装虽然看得见脚上的鳞痕,但是身体部分几乎都被包住,很难看得出整体的被害状况——不过,随着看法不同,我看鳞痕似乎已经到了颈部周围,状况比黄昏的时候还要更——这表示缠附的征状正在恶化……吗?
ならば、急いだ方がいい。
既然如此,尽早处理为妙。
見えないだけで。
只是我们看不见而已。
千石の身体には──今も大蛇が、巻き憑いている。
此时此刻有一条大蛇……正缠附在千石的身体上。
僕は忍野から渡されたお守りを、千石に手渡した。
我将忍野给我的护身符,递给了千石。
「で、真ん中に座って……シートの上な。そのお守りを力一杯握って、目を閉じて、呼吸を整えて──祈れば、いいんだってさ」
「总之,你就坐在正中间……垫子上面。用力握着这个护身符,闭上眼睛,调整呼吸——然后,祈祷就行了。」
「祈るって……何に?」
「祈祷是要……向谁祈祷?」
「何かに。多分、この場合は──」
「对某种东西。这个状况下大概是——」
蛇。
蛇。
蛇神。
蛇神。
蛇切縄。
蛇切绳。
「わかった……頑張る」
「好……抚子会加油的。」
「おう」
「哦!」
「暦お兄ちゃん……ちゃんと見ててね」
「历哥哥……你要仔细看好喔。」
「任せとけ」
「包在我身上。」
「撫子のこと……ちゃんと見ててね」
「仔细看着……抚子喔。」
「……ああ、任せとけ」
「……好,包在我身上。」
どの道──見るくらいしか、できない。
不管怎么样,我也只有看的份而已。
ここから先は、正直、千石次第だ。
从现在开始,老实说都要看千石自己。
結局──何がどうであれ。
不管结局……会怎么样。
助かる奴は、一人で勝手に助かるだけ──なのだ。
因为得救的人,是自己救自己的。
僕は結界から外に出て、蚊取り線香の設置を終えた神原と並んで、少し離れた位置から回り込むように、千石の正面に移動する。
我走出结界,和摆好蚊香的神原一起,稍微远离结界,用绕行的方式移动到千石的正面。
「じゃ……」 と。
「那么……」我说。
千石は既に目を閉じていた。
千石的双眼已经合上。
両手をぎゅっと──胸の前で握り締めている。
双手在胸前紧握。
儀式は、既に、始まっていた。
仪式已经开始了。
どれくらい時間がかかるのかは、忍野もわからないと言っていた──最悪、一晩覚悟しておけと言っていた。僕と神原はともかく、千石の精神がそんなに持つかどうかはわからないが、こればっかりは、やってみるしかないだろう。ぶっつけ本番でしかできないことなのだ。
会花多少时间,连忍野也不知道。他说最早的情况下,要有花上一整晚的心理准备。我和神原姑且不提,千石的精神状况不知道能否撑那么久,不过也只能试一试了。因为我们没时间排演,只能硬着头皮上了。
懐中電灯の光が。
手电筒的光线。
四方から、静かに──彼女を照らす。
从四方静静地……照耀着她。
「なあ──阿良々木先輩」
「我说……阿良良木学长。」
隣から、神原が僕に向けて、話しかけてきた。その声は、聞き漏らしてしまうほどに小さい。結界内で集中している千石に対する気遣いなのだろうが、しかしそれなら、もう喋らない方がいいくらいの状況だと思うのだが。
神原在一旁开口对我说。那声音小到会让我听漏掉。她是顾虑到结界里头聚精会神的千石,才那么小声的吧;可是用那种声音,不如别说话来得好。
「なんだよ。ここから先は楽しい会話は禁止だぞ」
「干吗。从现在开始,搞笑的对话一律禁止喔。」
儀式の最中、千石に笑い出されても敵わない。
要是千石在仪式当中笑出来,那我可受不了。
そんなことになっては台無しである。
那样的话,一切的苦心就白费了。
「わかっているのだが……しかし、阿良々木先輩。ここに来て私は、少し不思議に思ったことがあるのだ」
「这我知道……可是,阿良良木学长。来到这里之后,有件事让我觉得挺奇怪的。」
「なんだ?」
「什么事?」
「千石ちゃんが一人で健気に行なっていた蛇殺し。あっちの方はどうなったのだ?」
「千石一个人坚强勇敢地做的那个杀蛇仪式。那个仪式没有用吗?」
「健気な蛇殺しというのもすごい語感だが……ああ、あれか。蛇のぶつ切り」
「坚强勇敢地杀蛇这句话,听起来实在很猛……喔,你说那个吗,把蛇分尸的仪式。」
「うん。こんなしち面倒な儀式をせずとも、そちらを、ちゃんとした手順で行なうのが正しい作法だったのではないのか?」
「嗯。我们不用做这么麻烦的仪式,好好地照步骤把那个方法做一遍,才是最正确的方式吧?」
「そりゃそうなんだけど……僕もそう言ったんだけど、そっちの方が、むしろ手間らしいんだよ。忍野が言うにはな。というのも、蛇のぶつ切りで大事なのは、むしろ場所らしくて」
「你说得没错啦……这点我也有对忍野说过,不过那个方法似乎比较费功夫。照忍野说的来看啦。因为,把蛇分尸的那个方法,最重要的好像是地点。」
「場所……ここにはよくないものが集まるから……」
「地点……因为这里有脏东西聚集的关系……」
「いや、この場所は確かに最悪過ぎるんだが、だからといって、ここでなければどこでもいいってわけじゃないんだとさ。詳しく聞く時間はなかったけど、東北の蛇でないと、効果が薄いとか、なんとか」
「不,这里虽然是一个最糟糕的选择,不过也不是除了这里以外的地方都可以。我没时间仔细问忍野,可是如果不用东北地区的蛇,效果好像都会很差之类的。」
「地域差か」
「地区差异吗?」
「地域差だ。怪異では重要だろ」
「就是地区差异。这对怪异来说很重要吧。」
人口に膾炙しなければ──だ。
如果不脍炙人口的话——
千石は、蛇が出るということでこの山を選んだわけだが、しかし、そもそも、儀式のためには、山と蛇を、もっときちんと選別しなければならなかった──そうだ。もっとも、そんなことを言い始めてしまえば、千石撫子の場合は、最初から何もしなければ、それが一番よかったのだが。
千石会选这座山是因为有蛇出没,可是追根究底来说,要举行仪式的话,山和蛇都必须仔细挑选过……的样子。不过,千石抚子的情况真要说的话,她打从一开始什么都不做,才是最好的方法。
よりによってこの吹き溜まりを。
她偏偏选上这个聚集地。
よくないものの、集う場所。
这个脏东西聚集的场所。
とはいえ、皮肉にも今となっては──僕達は、そのよくないものを、怪異祓いの味方につけなければ、ならないのだ。
不过讽刺的是,事到如今我们必须要把那些脏东西,变成驱除怪异的伙伴。
「なるほど、合点いった。しかし、忍野さんも、怪異祓いのお守りとは、随分と便利な代物を持っていたものだな」
「原来如此,我知道了。不过,没想到忍野先生居然会有驱除怪异的护身符,真是方便的东西啊。」
「少し突っ込んで聞いてみりゃ、それほど便利なもんでもないらしいんだけどな。このようなケースでもないと使えないらしいし」
「我稍微吐槽他问了一下,那东西好像也不是多方便啦。而且要遇到这种事情才派得上用场。」
人間から遣わされた怪異だからこそ──だ。
因为这次是人为驱使的怪异。
それに、蛇だからこそ。
而且,正因为对象是蛇。
「反則手は反則手ということか」
「用小动作对抗小动作吗?」
「外法は外法って言ってたよ」
「他说是以异端制异端啦。」
「まあ、千石ちゃんが助かるのなら、それでいいがな……しかし、阿良々木先輩は本当に、手当たり次第、人助けを行なうのだな」
「唉呀,只要千石可以得救就行了啦……不过,阿良良木学长真的随便看到人就帮呢。」
誰にでも優しい。
对谁都很温柔。
誰にでも優しい──無責任。
对任何人都很温柔不负责任。
「……手当たり次第ってほどじゃないにせよ、まあ、できる限りは、な。知り合いとなったら、そりゃ、尚更だし」
「……也不到随便的地步啦,我只是尽可能去帮助别人而已。而且,对方如果是我认识的人,那就更不用说了。」
「戦場ヶ原先輩はそんな阿良々木先輩のことを好きなんだと思うし、そういうところが阿良々木先輩の魅力なのだと私も思う。今では私は、私はそんな阿良々木先輩が、戦場ヶ原先輩の彼氏でよかったと思っている。でも、願わくば」
「我想战场原学姐就是喜欢这样的学长,而且我觉得这也是学长的魅力所在。我真的很高兴学长是学姐的男朋友。不过我希望,」
神原は言った。
神原说。
「もしも──それでも誰か一人を選ばなくてはならない状況が訪れれば、そのときは迷わず、戦場ヶ原先輩を選んであげて欲しいな」 「…………」
「要是哪一天,学长遇到只能选择救一个人的状况时,能够毫不犹豫地选择战场原学姐。」
「自分を犠牲にするのは、阿良々木先輩の自由だけれど、戦場ヶ原先輩のことは、大事にしてあげて欲しい。……まあ、本当は、私にこんなことを言う資格はないのだろうけれどな」
「要牺牲自己是学长的自由,不过我希望你可以多珍惜一下学姐……其实要说这种话我还不够格啦。」
神原の左腕は。 かつて、僕を殺そうとした。
神原的左手,过去曾经想要杀掉我。
使役されて──ではなく。
她不是被左手操控,
確固たる意志を持った、怪異として。
而是化身为一个拥有坚决意志的怪异。
「神原……僕はお前に、それを言う資格は、あると思うよ。むしろそれは、お前だからこそ──言えることだろう」
「神原……我觉得你有资格这么说。应该说正因为是你,才能说这种话吧。」
「……なら、いいのだが」
「……那就好。」
「お前が、僕が戦場ヶ原の彼氏でよかったと思ってくれるのと同じくらい、僕はお前が戦場ヶ原の後輩でよかったと思っているよ」
「就跟你觉得我是战场原的男朋友很好一样,我也觉得你是她的学妹真是太好了。」
「そう言ってくれると──本当に救われる。あ……阿良々木先輩」あれ、と神原は、正面を指さした。
「听到学长这么说——我真的觉得自己得到了救赎。啊……阿良良木学长,你看那边。」神原指着正面说。
一心不乱に何かに祈る、千石の身体を、指さした。
她指着专心在向某种东西祈祷的千石身体。
見ると。 千石の身体の、スクール水着に覆われていない部分から覗く鱗の痕跡が──びっちりと、くっきりと刻まれていた痕が、徐々に──薄らいでいた。一晩覚悟しておけと忍野は言っていたが、まだ十分も経っていない。
仔细一看。千石的身体上,裸露在学校泳装外的鳞痕——布满全身的清晰痕迹,正慢慢地淡去。忍野说要有花上一整晚的觉悟,可是现在连十分钟都还不到。
なるほど──強力だ。
原来如此……符咒的效果很强力。
そして、順調だ。
而且很顺利。
首元から、鱗痕が──消えていく。
鳞痕逐渐从……颈部上消失。
鎖骨から、鱗痕が──消えていく。
鳞痕逐渐从……锁骨上消失。
蛇切縄が、千石から、離れていく。
蛇切绳,逐渐离开千石。
「滞りなく──進みそうだな」
「看来进行得满顺利的。」
「うん」
「嗯。」
「よかった」
「太好了。」
裏目以外を引かない男とまで言われたこの僕が同席していながら、この具合は、正直言って意外な展開とも言えたが、とにかく、よかった。これであとは、あと一分ほど、千石自身が気を緩めなければ──
有这个号称只会让状况事与愿违的男人在场,这么顺利的发展老实说让我有一点意外,不过实在太好了。只要千石再坚持一分钟,不要松懈——
「しかし──、そうは言っても、蛇祓いをおこなって、これで終わりというわけじゃないんだよな」
「可是……不是把蛇驱除之后,事情就落幕了。」
僕は言った。
我说。
それこそ、千石のテンションが下がってはいけないので、そういうことは、敢えて事前には言わなかったけれど。
为了避免让千石沮丧,这件事情我在事前刻意不提。
「少なくとも、その友達との人間関係は、修復不能だろう」
「至少她和那个朋友之间的友谊,已经没办法修复了吧。」
「まあ……そうかもしれない」
「嗯……或许是吧。」
神原も、そこでは頷く。
神原也点头说道。
「そこで許せるような人はなかなかいない。いないだろう。……そもそも、千石ちゃんが修復を望んでいるとも思えないし、向こうに修復する気があるとも限るまい」
「发生了这种事情,没几个人可以既往不咎。我想应该没有吧……而且我也不觉得千石会想跟对方和好,对方也不见得会有那个心吧。」
「人間関係の破綻──か」
「友谊破灭……吗。」
怪異よりも人間の方が怖い。
人比怪异还要恐怖。
なんて、そんなありふれた台詞を、わざわざ改まって口にする気はないけれど。
我不想刻意故作正经,说出这种老掉牙的台词。
「色恋沙汰は怖いな。……しかし、千石の好きな相手って誰なんだろう。あんな可愛らしい子に惚れられるなんて、ちょっと妬けるぜ」
「感情纠纷好可怕啊……不过千石喜欢的人到底是谁啊。居然可以被那么可爱的女生看上,真让我有点嫉妒呢。」
まあ、これがラブコメチックな漫画だったりしたら、千石の想い人というのが実はこの僕だったりするのだろうが、さすがにそんなことはないだろう。精々僕など、『お兄ちゃん』止まりだ。
唉呀,如果这是恋爱漫画的话,千石喜欢的人搞不好就是我了,但是这绝对不可能吧。我顶多只能当她的「哥哥」而已。
兄妹──か。
兄妹……吗?
無論、妬けるとか言っても、彼女のいる身で千石から好意を寄せられても、僕としては恐らく困るだけなのだが……。でも、これを機に、千石との親交を復活させるというのは、悪くないかもしれない。なんだか好ましい感じだし、目を離せない危なっかしさもあることだし。妹が何と言うか知らないが……。
当然,我口头上说会嫉妒,可是万一千石对已经有女友的我抱持好感,我恐怕会很伤脑筋吧……不过,藉由这个机会,让我们再次恢复到友好的关系,或许也不坏。毕竟我对她就是有一种好感,而且她给人一种无法弃之不顾的感觉。至于我家那两个妹妹会说什么就不知道了……
「女の子だからな。それに──十四歳か」
「因为她是女生啊。而且……十四岁吗?」
ふふ、と軽く笑って、神原。
呵呵,神原轻笑。
「私もそうだったが、あの年頃の女の子が、みんな、白衣の王子様を待ち焦がれているとは限らないさ」
「我以前也是一样,不过那个年纪的女生,不见得每个人都在等待白衣王子的出现啊。」
「いや、そりゃそうだろうが……」
「呃,你说得没错啦……」
それを言うなら、白馬の王子様だろ。
应该是白马王子才对吧。
白衣って……医者か?
白衣是指……医生?
へびつかい座。
蛇夫座。
「こらこら、楽しい会話は禁止って言っただろ、神原後輩──まだ終わってないんだから、集中力を切っ……」
「喂喂,我不是说过搞笑对话一律禁止吗?神原学妹。仪式还没结束呢,要是松懈的话——」
「阿良々木先輩!」
「阿良良木学长!」
神原が、突如、怒鳴った。
神原突然大吼说。
集中力を切っていたのは、僕の方だった。千石から──うっかり、目を離していた。視線を戻すと──千石撫子は、地面に敷いたビニールシートの上に、仰向けに倒れ──びくんびくんと、変な、しかし激しい、痙攣をしていた。
松懈的人其实是我。我的视线不小心……离开了千石。当我转头望去时,千石抚子已经仰倒在塑料布上,身体不停抽搐,方式相当异常却很剧烈。
口が。 大きく、開いている。
她的嘴巴。大大地张开。
顎骨が限界まで開いている。
颚骨撑到了极限。
卵を飲み込む──蛇のごとく。
宛如要吞蛋的蛇一般。
蛇の頭でも──咥えているがごとく。
有如口中含着蛇的头一样。
「な──何があった!」
「发……发生了什么事!」
「わ、わからないが──突然……」
「我、我不知道,突然就……」
千石の身体から──鱗の痕は消えている。
鳞痕从千石的身土消失了。
半分くらい、消えている。
有一半已经消失不见。
だが──半分は残っている。
但是——有一半还残留在她的身上。
消えずに、残っている。
残留未消。
そして。
同时,
先刻までなかったはずの、千石の首にさえ、くっきりと、鱗の痕があった。蛇が──蛇切縄が、巻き憑いている。
至今毫无痕迹的千石颈部上,也出现了清晰的鳞痕。蛇——蛇切绳正缠附着她。
何だ……何が間違っていた?
怎么回事……有什么地方弄错了?
どこが違った?
什么地方不对了?
忍野が言っていた、『蛇呪集』にあるらしい蛇切縄の絵──全身を蛇に巻きつかれ、口から身体の中に侵入されんとする一人の男──死ぬ怪異ではなく、殺す怪異。
忍野提过的那本《蛇咒集》里头有类似蛇切绳的图——一条蛇缠绕着一位男性,想要从他的口中侵入身体他是会取人性命的怪异,而不是让人自然死亡的怪异。
蛇神。
蛇神。
蛇神憑き。
蛇神凭依。
「失敗したのか……!? そういうことなのか、阿良々木先輩! 失敗して、むしろ祓いが、悪い方向へと作用し、暴走して──」
「失败了吗……?是这样吗,阿良良木学长!我们失败了,驱除仪式反而产生不好的作用,结果失控——」
「いや──そんな乱暴な術式じゃないはずだ……そんな力業じゃないんだ。力業じゃないからこそ外法なんだ、マッチポンプ31みたいなことは起こらない、起こる理屈がない。だってこれは、怪異との、交渉、ネゴシエーションみたいなもののはずなんだから──」
「不对……这个仪式应该不是那种粗鲁的东西……不是那种靠力气驯伏对方的东西。就是因为不是靠蛮力才是异端,不会有类似自导自演的情况发生,也不可能会发生。因为这个方法就跟和怪异交涉、协商一样——」
お願い。
请愿。
お願いするんだよ──と忍野は言っていた。
忍野说过,这是一种请愿。
下手に出て。
以谦虚的姿态。
それなのに……ならば戦場ヶ原のときのように千石の集中力が切れたのか? それにしたって、こんな……いきなり怪異の最終段階に至るようなことが……。
然而……千石是跟战场原的时候一样,集中力放松了吗?就算是好了,怪异也不会这么突然……就进行到最终阶段啊……
だって、現実に、半分まで、うまくいったのに……!
因为,仪式明明已经顺利进行到一半了啊……!
「……半分?」
「……一半?」
あっ──と、僕は、遅まきながら、気付いた。
啊!事到如今我才恍然大悟。
ビニールシートの上で、悶える千石。
在塑料布上痛苦挣扎的千石。
スクール水着から、伸びる、まだ肉付きの薄い、その両脚──その両脚からも、鱗の痕は、半分ほど、消えている。
学校泳装下笔直伸展的纤细双脚,上头的鳞痕已经消失了一半。
ただし──半分と言っても、それは露骨だった。
但是……这一半,也实在太过明显了。
右脚からは鱗痕は全て消えて──左脚は爪先から付け根まで、完全に鱗痕が、残っている。
鳞痕已经从她的右脚上完全消失;但左脚的鳞痕从脚尖到大腿根部,却完全残留未消。
一枚分さえも、消えていない。
就连一片也没有消失。
胴体部分は見えないが、首元、それに鎖骨の辺りの痕跡からも、そうとわかってしまえば、それは瞭然だった──
身体部分我看不见,不过她的颈部和锁骨附近的痕迹也是一样的状况,这样一来答案就很明显了——
「神原……勘違いしてた。見えてさえいれば、こんなの、すぐにわかることだったのに──」
「神原……我搞错了。要是看得见的话,这种事情应该可以马上发现才对——」
「どういうことだ!?」
「什么意思?」
「蛇切縄は──一匹じゃなかったんだ。二匹いたんだよ」
「蛇切绳不是只有一条,而是两条啊!」
「…………っ!」
それでも──
话虽如此——
気付くべきヒントはあった。
有几个征状我应该要注意到才对。
両腕と、首から上以外に、びっちりとまんべんなく、鱗痕はあったのだ。爪先から、むこうずねからふくらはぎまで──脚は二本ある。一匹の蛇が、両脚にまんべんなく巻きつくなんてこと──構造的に、不可能に決まっている。たとえば、蛇が一匹なら、内腿に鱗痕が残るわけがない。
千石除了双手和颈部以上,全身都布满了鳞痕。从脚尖、胫骨到小腿肚。人有两条腿。一条蛇在构造上,绝对不可能将双脚完全缠绕住。蛇如果只有一条的话,大腿内侧不可能会有鳞痕。
それぞれの脚の爪先から。
这就表示,自双腿的脚尖上——
一匹ずつ──蛇切縄は巻き憑いていたのだ。
各缠附着一条蛇切绳。
千石の身体を締め上げるように。
彷佛勒住千石的身体一般。
二匹。
两条。
「……畜生!」
「……该死!」
一匹は、忍野のお守りの力で──解けた。
其中一条因为忍野给的护身符之力,而解除了。
蛇切縄は、還った。
蛇切绳回去了。
そこここに──還った。
回到他……应该存在的地方。
だけど、お守りの効力は、そこで終わったんだ。
但是护身符的效力,到此就结束了。
僕の言葉が足りなかった──蛇切縄が二匹いることに僕が気付いていれば、忍野もそれに対応した策を打てたはずなんだ。今までと違い、今回に限っては、あいつの力添えに制限はない。被害者である千石撫子に出す援助は、惜しみがない。それなのに、蛇切縄が一匹だという前提で相談してしまったから、忍野も一匹分だけの対策しか──
我的说明不够充足——要是我有注意到蛇切绳有两条,忍野应该也会有相当的对策。这次的情况和以往不同,他给予的帮助是无限上纲的。对身为被害者的千石,他不会吝啬伸出援手。然而,我是在蛇切绳只有一条的前提下和他商量,所以忍野也只有准备对付一条的方法。
だから、もう一匹が──暴走したのだ。今まで一緒に巻き憑いていた大蛇が一匹、祓われたのだ──そうならない方がおかしい。
因此,另一条才会失控。至今和他一起缠附的另一条大蛇被驱除了,要他不失控才奇怪。
「神原っ! そこにいろ──いや、離れてろ!」
「神原!你待在这里不对,你站远一点!」
「忍野さんに連絡した方が──」
「联络一下忍野先生是不是比较——」
「あいつ、携帯持ってねえんだよ!」
「那家伙没有手机啊!」
主義でも何でもなく──機械が苦手だから。
这跟个人主义之类的东西无关,因为他是一个机械白痴。
だから──強硬手段しかない。
所以,我只能采取强硬的手段。
僕は駆け込んで、簡易式の結界、懐中電灯に照らされたスクエアの中へ──侵入した。がしっと、千石の身体を抱え起こす──身体が熱い。相当な熱を持っている。彼女を触る僕の手が、火傷をするんじゃないかと思うほどに──首元の鱗痕。 今や痕というのもおこがましいほど、食い込んでいる。身体の輪郭そのものが変わってしまいそうなほど、食い込んでいる。骨を砕き──そのまま、細い肉体を千切られてしまいそうなほど、食い込んでいる。
我冲了过去,侵入简易式的结界手电筒照亮的四角形当中。接着用力抱起千石的身体。她的身体好烫。热度相当地高。让我感觉碰触她的手,彷佛会烫伤一样颈部的鳞痕,现在已经整个陷进她的身体,要把它称作「痕」实在太过可笑。鳞痕彷佛要改变她身体的轮廓一样,整个陷了进去。宛如要勒碎千石的骨头,直接把她纤细的身体弄成碎片一样。
ぶつ切りにされてしまいそうなほど。
犹如要把她分尸一样。
食い込んでいる。
陷入了身体里。
みしみしと──軋む音すら聞こえそうだ。
我的耳边,彷佛可以听到骨头「嘎吱」作响的声音。
「千石……」
「千石……」
白目を剝いて──最早意識はない。
她已经翻白眼,失去了意识。
完全に──吞まれてしまっている。
完全被吞噬了。
「く……っ!」
僕は、抱え上げた千石を──一旦ビニールシートの上に、再度、横たえる。そして、千石の身体に向けて、ゆっくりと、両手を伸ばした。
我把手上的千石,再次放到塑料布上。接着,我朝千石的身体,缓缓地伸出双手。
いや、千石の身体に向けてじゃない。
不对,我不是朝着千石的身体。
蛇切縄に向けてだ。
而是朝着蛇切绳。
「見えなくても──触れるはずなんだ」
「虽然看不见,但是应该摸得到。」
そう言っていた。
忍野有说过这句话。
春休み以来、僕には吸血鬼の血が──流れている。血。血液。言うなら僕が怪異そのものだ──怪異なら怪異に、触れられるはずなんだ。
从春假之后,我的体内就流着吸血鬼的血。血。血液。真要说的话,我本身就是怪异!是怪异的话应该可以碰触到怪异。
触ることができれば、引き剝がすこともできる。
能够碰触到,也可以把他扒下来。
そうなんだ。
没错。
重要なのはイメージすることだ。千石の身体に刻まれた鱗の痕から、蛇切縄本体の形を、想定し──その蛇切縄がどんな風に千石に巻き憑いているのかを、思考する。間違っちゃ駄目だ。くそっ……上の妹ならまだしも、僕は下の妹と同様、インドア派だったからな……蛇に触るなんて経験、これが初めてだ。初めて触る蛇が、怪異なのか……。
现在最重要的就是想象。从刻印在千石身上的鳞痕,推测出蛇切绳本体的形状,思考蛇切绳是如何缠附住千石。我不能搞错。该死……大妹就先不谈,我和小妹一样都是室内派的……这是我摸蛇的初体验。第一次摸的蛇是怪异吗……
怯むな。
不要畏惧。
その下の妹と遊んでいた千石でさえ、自力で蛇を、十匹以上、捕獲したんじゃないか──お兄ちゃんの僕がその程度できなくてどうする。
就连和小妹玩在一块的千石,都靠自己的力量抓了十几条蛇不是吗——做哥哥的我,连这点程度的事情都做不到怎么行。
「う……うぐっ!」
「呜……呜喔!」
ぬめり、と。
黏糊的感觉。
嫌な感触が──両手のひらにあった。
我的手心一种讨厌的触感。
粘液の中に手を突っ込んだような感覚。
感觉好像双手伸进了黏液当中。
鱗がざくざくと、手に刺さる感覚。
感觉有许多鳞片刺弄我的双手。
素直に気持ち悪い。
说实话,这很恶心。
何が気持ち悪いと言って──見えないものに触るというのが、こうも生理的に気持ち悪いことだったとは、思いもしなかった。あれほど強く、触ることを望んでいながら──僕は今や、一秒でも早く、この怪異から手を離したい。
要说哪里恶心的话我从来没有想过,触碰到自己看不见的东西,居然会让我在生理上感到如此恶心。我刚才非常渴望触碰到他;但是现在我却巴不得想早一秒放开这个怪异。
ぬめりを逆に利用して、スライドさせるようにして、自分の手の位置を、調整する。筋肉自慢の男の大腿部くらいありそうな蛇の円筒形の体幹を、左右から挟みこむようにして、そして──力任せに、引っ張る。
我反过来利用那股黏糊感,用滑动的方式调整自己双手的位置。蛇粗壮的圆筒形躯干,就像一个肌肉发达的男性大腿一样。我从左右两旁夹住他,接着,使尽吃奶的力气用力拉扯。
体力までが吸血鬼なわけじゃない。
我可不是连体力都是吸血鬼等级。
それに──滑る。
而且,他很光滑。
鱗の並びの方向と、引っ張る方向が一致しているから、力がうまく作用しないのだ。僕は考えを変えて、大蛇の身体に爪を食い込ませる風にして(蛇の身体は柔らかく、その身体に指が沈み込むかのようだった)、もう一度、引っ張る──
因为他鳞片排列的方向,和我拉扯的方向一致,因此我的力量无法完全发挥作用。我改变思考模式,把指甲掐入大蛇的身体(蛇的身体很柔软,我的指头就好像沉入他的身体一样),再次用力猛拉。
引き剝がす──!
把他扒下来!
「ぐ……うあああああああっ!」
「呃……呜啊啊啊啊啊啊啊!」
とんでもない激痛が──右腕に走った。
一股无法比拟的激烈疼痛,窜过了我的右手。
痛みのあった箇所を見れば、血が──噴き出している。手首と肘との間くらいが、圧搾機に挟まれたがごとくひしゃげていて、ひしゃげたその部分に、深い深い穴が、穿たれていた。
我往疼痛处一看……鲜血喷出来了。我的手腕和手肘之间,宛如被压缩机夹到一样整个被压扁,同时还开了两个深不见底的窟窿。
「──す、既に!」
「——他、他已经!」
既に──千石の口から、蛇の頭は、抜け出していた──僕が体幹に指を食い込ませたことを、攻撃を受けたと理解したのだろう、蛇切縄は千石の体内を出、僕に対して反撃に転じてきたのだ。見えないから咬まれるまで気付かなかった──
蛇的头部,已经从千石的口中溜了出来。我用手指掐住他的身体,蛇切绳可能认为是一种攻击行为吧,现在他离开千石的体内,对我做出了反击。因为我看不见,所以直到被咬中以后才发现到——
「い……ってええええええ!」
「好……好痛啊啊啊啊啊啊!」
あまりの痛みに、僕はわけもわからず、その場からごろごろと、転がるように飛びのいた──身体中に巻き憑いていた蛇切縄が解けていく過程だろう、千石の身体が、スクエア内のビニールシートの上で、ばたばたと不規則に跳ねる。見えないからおおよそを推測するしかないのだが、この状況、恐らくそうだろう。
在剧烈的疼痛下,我不管三七二十一,连滚带爬地急忙抽身闪开。这时,只见千石的身体在四角形内的塑料布上,啪搭啪搭地不规则弹动,大概是缠附在她身上的蛇切绳正逐渐离开的缘故吧。因为我看不见,只能够做大致上的推测,不过从眼前的状况来看,八成是如此吧。
ということは──今度は僕に巻き憑いてくる!
这就表示,现在蛇切绳要缠附到我身上来了!
その前に、と、僕はひしゃげた右腕の部位を、地面に叩きつけた。更に激しい痛苦が僕を襲う──が、叩きつけるその寸前に、食い込んでいた牙──恐らく、蛇切縄の牙──が、ずぼりと引き抜かれるのを知覚した。頭部を地面とサンドイッチしようとした僕の目論見を察知して、事前に回避したのだろう。結果、僕は傷んだ右手をただただ意味もなく地面に打ち付けることになってしまった。
我在那之前,把右手被压扁的部位,朝地面重压而下。一阵更加剧烈的苦痛朝我袭来,然而当我重压在地的剎那间,我感觉到那一对咬住我的牙齿——恐怕是蛇切绳的牙齿——已经从我手上拔了出来。他察觉到我想把他的头撞在地板上变成夹心饼干的企图,所以他早一步避开了吧。结果,我只是把受了伤的右手,毫无意义地撞在地板上而已。
腕が千切れたかと思った。
我还以为手会被他撕碎。
瞬間、今度は脚。
而下一秒间,这次换成脚部。
左足首だった。
我左脚的脚踝。
ぐしゃっと──ひしゃげる音。
喀嚓!一个东西被压扁的声音。
腕もそうだったが──この蛇、咬み付くだけで人間の身体を砕くことができるのか……なんて化物みたいな顎の力だ。いや、みたいも何も、文字通り化物なんだけど、それにしたって──
咬中我右手的时候也一样,这条蛇只要咬中就可以压扁人体吗……这种咬合力就像怪物一样。不对,没什么像或不像,他就是一个怪物,可是这也未免太——
僕は、それでも、足首に穿たれた牙の痕から、蛇切縄の頭の位置を想定し、無理矢理、足首と蛇口の間に指を挟み込み、それをこじ開け──冗談みたいな口を閉じる力だったが、わずかに生じた隙間を利用して、ねじるように、足を引き抜く。骨まで根こそぎやられたようだが、それでも神経は無事なようだ、動く、動く。
然而,我还是从开在脚踝上的牙痕,估计出蛇切绳的头部位置,硬是把手指塞进脚踝和蛇口之间,把他的嘴巴撬开。他的咬合力虽然夸张,但我利用那一丝缝隙,使劲把他从脚上拔开。我似乎连骨头都被他咬伤,不过好像没有伤到神经。我试着动了动左脚。
そのまま蛇の口を持っていられたらよかったのだが、びちゃりという感覚(恐らく、二叉に分かれた蛇の長い舌で舐められたのだろう)に、僕は反射的に手を離してしまう。
要是我可以就这样抓着蛇嘴不知该有多好,然而此时却传来一阵湿淋淋的触感(恐怕是蛇分岔的长舌头,舔到了我),让我反射性地放开了手。
「くっ!」
「啧!」
それでも、でたらめに、当てずっぽうで放った反対側の足での蹴りは、蛇切縄にヒットしたようで、そういう感覚があった。ゴム鞠を蹴ったみたいに柔らかい手ごたえがあっただけなので、正直、向こうにダメージがあったのかどうかは、怪しいが。僕はそのまま、更に後転するようにして、二回転、三回転、蛇切縄から、距離を取る。
话虽如此,我凭空乱踢的右脚,感觉好像踢中了蛇切绳。我只有感觉到一股有如踢到橡胶球般的柔软触感,老实说,对方八成不会觉得痛吧。接着,我直接后滚翻,两转、三转,和蛇切绳取出距离。
忍に血を飲ませたのは、つい一昨日だ。
我前天才刚喂血给忍。
だから、僕の身体の回復能力は、普段よりも一層、強いはず──だが、ひしゃげた右腕と左足首は、そう簡単には治らなかった。治癒する傾向すらも、見られない。痛みも全く引かない……なんだ……蛇切縄っていうのは、ひょっとして毒蛇なのか?
因此,我身体的恢复能力,应该比平常还要更上一层才对——然而,我被压扁的右手和左脚踝,却没能轻松地恢复原状。就连复原的迹象也看不见。疼痛也完全没有消退……这是怎么回事……蛇切绳该不会是毒蛇吧?
吸血鬼も毒には弱い。今の僕程度の吸血鬼性なら、尚更だ。全盛期の忍なら、無論、こんな負傷、苦にもしないだろうが──
吸血鬼也很怕毒。像现在我这种程度的吸血鬼,就更不用说了。假如是全盛时期的忍,这点程度的伤应该不会觉得难受吧。
片脚で、けんけんするように、立ち上がる。右腕はだらんと垂れ下がるだけ……あまりの激痛に、あげていられない。
我用单脚,蹦蹦跳跳地站了起来。右手只能够无力垂下……过度剧烈的疼痛,让我无法将手举起。
怪異や──それに類するもの、それに準ずるものとのバトルは、この数ヵ月の間に、経験がないわけではない。むしろ、期間を思えば、その経験は豊富な方だろう。だが──見えない怪異との戦闘は、これが初めてだった。透明人間なんて、この時代には笑い話としてももう通用しない滑稽な概念だと思っていたが、見えない敵というのが、こうも恐ろしいものだったとは……!
这几个月的时间,和怪异、类怪异以及准怪异打斗的经验,我也不是没有。以期间来看,我反而算是经验丰富吧。可是……我是第一次和看不见的怪异对打。透明人在这个时代,是一个以笑话来说已经不通用的滑稽概念,我原本是这么认为的;可是,没想到看不见的敌人竟会如此地可怕……!
相手は蛇だ。
对方是蛇。
確か蛇にはピット器官という組織があって、赤外線を感知することが出来、温度で獲物を探すことができるらしい──ならば視点の高低差は、あまりいいように働いてくれそうもない。こちらは見えないが、向こうは見えるどころの騒ぎじゃない。
蛇好像有一种叫作颊窝器官的组织,能够感受到红外线,可以凭借温度来寻找猎物——这样一来,视点上的高低差似乎不会为我带来有利的局面。我看不见对方,但对方岂止是看得见我而已。
ざざざざざ。
沙沙沙沙沙!
と、そんな音がする。
眼前传来声响。
這う音、這い寄る音。
贴地爬行的声音,正在靠近我。
「…………っ、お、おお!」
「喔、喔喔!」
立つことはできても、左脚はもう、足としては使用できない、移動効率は最低ランクにまで落ちているが、しかし──多分あったであろう、蛇切縄からの、僕の上半身を目掛けてきた攻撃を、僕は恐らく、かわすことができた。
现在就算我站得起来,左脚也已经失去了脚部应有的功能,移动效率跌到了谷底;然而大概是凑巧的吧,蛇切绳朝我上半身攻来,我似乎躲开了。
振り返り、その着地点を予測する。
我随即转头,预测他的落地点。
蛇切縄の着地点は。
蛇切绳的落地点,
はっきりと──わかった。
非常清楚可见。
「い──いけるかも」
「或……或许行得通。」
もしかしたら──いけるかも。
搞不好可行。
僕は、自分の推測を確認するために、身構える。
我为了确认自己的推测,摆好了架势。
蛇切縄からの第二撃目を待つ。目を離さずに──蛇切縄の現在位置から、目を離さずに。相手の気持ちを知るためには──相手の眼を見ること。見るべきなのは蛇の眼か、それともピット器官なのか、それはわからないし、そもそも蛇切縄は、見えないけれど──
等待蛇切绳的第二次攻击。我目不转睛地,看着蛇切绳目前的位置,没有移开视线。要了解对方在想什么,就必须要看着对方的眼睛。我不知道自己应该看蛇眼还是颊窝器官,况且我也看不见蛇切绳——
動いたっ!
他动了!
僕は、横っ飛びで、それを回避した。
我向侧面跳开,避开了他。
ばちぃんと、トラバサミが閉じるような音が、すぐ横でした──空振りに終わった、蛇切縄の、口が閉じる音だろう。ぞっとする──あんなのに頭でも挟まれたら、一巻の終わりだ。間違いなく、食い千切られるだろう。
喀锵!我的身旁传来了一阵类似捕兽夹合上的声响——大概是蛇切绳的攻击落空,嘴巴咬上的声音吧。我寒毛直竖。要是被那种攻击咬到头部的话,就万事皆休了。我肯定会被他撕碎吧。
だが……、 勝機は、見えた。
不过……我看到胜机了。
場が──僕に、味方してくれている。
地利是站在我这边的。
地面は土。
地面是泥土地。
草が生え放題。
杂草横生乱长。
そして蛇は──地を這う生き物だ。
而蛇类……是贴地爬行的生物。
生き物が怪異でも、それは同じ。
就算这个生物是怪异也一样。
蛇切縄自体は見えなくとも、それが移動した痕跡は、はっきりと残る──あたかもそれは、千石の身体に刻まれた鱗痕のように。
就算我看不见蛇切绳,他的移动痕迹却清楚可见。就像刻印在千石身上的鳞痕一样。
土はうねり、埃を上げ。
泥上翻腾,尘埃飞扬。
草は邪魔だとばかりに、搔き分けられる。
杂草仿佛挡人去路似地,被一一拨开。
これが、地面がアスファルトやコンクリートだったなら、こうはいかなかった。蛇祓いを、戦場ヶ原のときや神原のときのように、忍野の住む学習塾跡で行なっていたら、おしまいだった──いや、もしかしたら。
倘若是柏油路或水泥地的话,可就不会有这种状况发生了,如果这次像战场原和神原的时候一样,在忍野居住的废弃补习班举行驱蛇仪式的话,现在已经完蛋了。不对,搞不好——
これ自体、忍野の演出なのかもしれない。
这或许是忍野布的局。
そうだ、考えてみれば、服を無視できる怪異なのだ。土や草を、本来ならば無視できないわけがない。ざざざざ──と這う音さえも、口を閉じる音さえも、本来ならば、こちらに聞こえるわけがないのである。それでも、蛇切縄が物理的にフィールドを無視できないのは──場の所為だ。この境内においては、蛇切縄も──見えないだけで、あくまで、存在している。
对,仔细想想,这个怪异能够无视衣服的存在。本来他应该也可以无视泥土地和杂草才对。按理来说,我不会听见沙沙沙的爬地声,也不会听到他合上嘴巴的声音。然而,蛇切绳在这里却无法忽视那些东西,是因为地点的关系。在这间神社内,蛇切绳只是肉眼看不见,却是实际存在的。
怪異なのだから。
因为他是怪异。
僕や神原と同じように。
就跟我和神原一样。
悪戯半分の呪いが、成就してしまったように。
就像半恶作剧的诅咒会成功一样。
エアポケットの──吹き溜まり。
气袋的聚集地。
よくないものが──集結している。
脏东西正聚集在这个地方。
そのよくないものを味方につければいいと、忍野は言っていた──ならばこれはやっぱり忍野の対応だ。基本的には結界を作る上での策略だったのだろうが、それでも舞台を学習塾跡にしなかったのは、こういった万が一の、想定外のケースに備えるため──音が聞こえるのも、触れるのも、あるいは、このフィールドの底上げあってのことなのかもしれない。
忍野说过,只要让那些脏东西站在我们这边即可。既然如此,这肯定也是忍野的对应手段之一。这个驱除方法基本上还是要做一个结界,但是他没有把地点选在废弃补习班,就是为了预防万一,以应付出乎意料的状况。我能够听到声音,触碰到蛇切绳,或许是因为这个地区的加成也说不定。
忍野メメ。
忍野咩咩。
僕は自分の無力を痛感する。
我痛感自己的无能为力。
何のことはない、戦場ヶ原のことも神原のことも、僕は結局、忍野に下駄を預ける形になっている──一から十まで、あいつに頼りっぱなしだ。忍野はいつまでも、この町にいるわけじゃないのに。それなのに僕は、手当たり次第に──今回さえも!
不管是战场原还是神原的事,到头来,我全部都要依靠忍野我自始至终,都太依赖他了。忍野不会一直待在这个城镇啊。然而,我却一有问题就——这次也一样!
後悔が活かされていないのは僕じゃないか。
完全不懂得后悔的人是我才对吧。
忍野との付き合いから、何も学んでいない。
我和忍野打交道,却一点皮毛都没学到。
何も──見えていない。
什么也预测不到。
「く……」
「呜……」
蛇切縄の、次の攻撃も、かろうじて、かわす。
蛇切绳接下来的攻击,我也勉强躲过了。
しかしこれ……埒が明かなくないか。意識を集中して、回避することだけに集中すれば、境内に集まったよくないものがの力もあいまって、土の動き、草の動きから、蛇切縄の位置、動作は、ある程度の精度で推測できるが──そこから攻撃に転ずることは、かなり難しいぞ。攻撃の場合は、どうしたって、当てずっぽうにならざるを得ない。それに、右腕と左脚が使えない状況で、どうやって十全な攻撃をすればいいというのだ。
可是这样下去……会没完没了。我集中意识,专注地去闪避的话,在神社内的那些脏东西的帮助下,我能够从泥土和杂草的动向,做出某种程度的精准推测,但要我转守为攻,可是相当困难。要攻击的话,我实在只能靠凭空推测的方式。况且,在右手和左脚无法使用的状况下,我要怎么样才能做出万全的攻击呢。
まるで──治癒しない。
伤口完全没有恢复。
痛みも増すばかりだ。
疼痛也只有加重的感觉。
気のせいか、痛みが広がってくるようだ。
或许是心理作用,疼痛似乎逐渐扩展开来了。
本当に──毒なのだろうか。
真的有毒吗?
神経毒、出血毒、溶血毒。
神经毒、出血毒、溶血毒。
血清が──必要だ。
血清是必要的。
大体、僕の攻撃が怪異相手に通じるのか? 普通の蛇でさえ、殺しても殺しても死なないほど、生命力が強いのだ。
况且,我的攻击对怪异有用吗?就算是普通的蛇,也有杀也杀不死的强韧生命力。
僕のような中途半端な、吸血鬼の後遺症が残る人間という程度で、対抗できるのか? 指を食い込ませるや否や、蛇切縄がこちらに攻撃を仕掛けてきたところを見ると、全くもって意味がないというわけではないらしいが──このままでは、精々徹底して逃げ回るだけが、関の山32じゃないのか?
像我这种半吊子、有吸血鬼后遗症的人类,能够对抗他吗?我一把指甲陷入蛇切绳的肉里,他就对我发动攻击。从这一点来看,我的攻击似乎不是完全没有作用。但是,现在这样下去,我充其量也只能东躲西逃吧?
どうすればこの怪異を退治したことになるんだ?
该怎么做才能消灭这个怪异呢?
いや。
不对。
そもそも、もっと根本的な問題として……果たして退治してしまっていいのだろうか──この怪異。退治して、それで終わりでいいのだろうか。そっちの方が手っ取り早いと──忍野メメなら、言うとでも?
追根究底来说……这个怪异,我真的可以消灭他吗?消灭他之后一切就会结束了吗?消灭他比较简单利落——如果是忍野咩咩的话,会这么说吗?
鬼や、猫や、蟹や、蝸牛や、猿や──
鬼、猫、螃蟹、蜗牛、猿猴,还有——
蛇。
蛇。
蛇は、神聖な生き物とも──
蛇也是一种神圣的生物——
「阿良々木先輩っ!」
「阿良良木学长——」
神原が。
神原她,
神原駿河が──そこに、駆けて来た。
神原骏河她,朝我这里冲了过来。
全速力で。
马力全开。
その超高校生級の脚力で──特攻するように。
用她那超乎高中生水平的脚力,有如发动自杀攻击般。
馬鹿な、離れておくよう言ったのに──いや!
这怎么可能,我明明叫她不要过来了不对!
「…………っ」
そうか……、神原なら!
对了……如果是神原的话!
神原の左腕なら、猿の手、猿の腕なら──蛇切縄に対する、恐るべき攻撃力、対抗力となりうる! 素手でコンクリートブロックを打ち抜いてしまうようなカタパルトが──神原の左腕には宿っているのだ。蛇切縄が鋼鉄の身体だったところで、神原のフルパワーの前には何の効力もなさない。
如果是神原的左手,猴掌、猿猴之手的话——那股可怕的攻击力,或许可以和蛇切绳抗衡!能够空手打穿水泥墙的弹射拳,现在就寄宿在神原的左手上。就算蛇切绳是钢筋铁骨的身体,在神原的全力攻击下也没有屁用。
だが──問題があるとすれば、神原は僕と違って、治癒能力を持たないということだ。その左手での攻撃を外し、蛇切縄から反撃の咬傷を与えられてしまえば、その傷はもう取り返しがつかない、回復不能な不可逆なそれになるだろうし──僕の読み通り、蛇切縄が毒持ちの蛇だとすれば、どう甘く見積もっても、ダイレクトに命にかかわる。皮肉な話だ、回復力を持つ僕は攻撃力を持たず、攻撃力を持つ神原は回復力を持たない。もう一つ考慮すべきは、相性の問題もあるのだろう、神原にとって、このフィールドは明らかに鬼門だ。今だって、それ相応に、気分は悪いはず──
但是问题在于神原和我不同,她没有恢复能力。要是她左手的攻击扑空,被蛇切绳反击咬伤的话,一定会造成无法挽回和恢复的不可逆伤害。假设蛇切绳和我预测的一样是毒蛇的话,就算我再怎么乐观推估,伤势都会攸关生死。真是讽刺,有恢复力的我没有攻击力;而有攻击力的神原却没有恢复力。另外,契合度的问题也必须列入考虑吧,对神原来说,这个地方很明显和她八字不合。此刻,她应该也十分不舒服才对——
果たして。
她到底想做什么。
しかし。
然而,
「──阿良々木先輩、許せ!」
「阿良良木学长,原谅我!」
神原が攻撃したのは──僕だった。
神原攻击的对象是我。
蛇切縄ではなく、僕だった。
不是蛇切绳,而是我。
僕の首根っこを、その左腕で力任せにつかみ、そのまま勢いに任せて、自慢の脚で跳ねるように──突き飛ばした。片脚の僕が、そんな神原に対し、踏ん張れるわけもない。あっさりと、風に砂塵が舞うがごとく──吹っ飛ばされる。がっちりと、神原の左手は僕の首元に食い込んでいて、離れない。離さない。放さない。そのまま、空中を五メートルくらい飛ばされて──
她用那只左手使劲抓住我的颈根,接着用她自豪的双脚顺势一蹬,将我整个人撞飞。面对神原这一撞,单脚的我当然无法站稳,有如沙尘在风中飞舞般,轻易地就被她撞飞。神原的左手紧紧掐住我的颈部,我无法挣脱。她不放开,也不离开。我就这样,腾空被撞飞了五公尺左右——
地面に、叩きつけられた。
整个人砸落在地。
草木に包まれた柔らかな土の地面とは言え。
就算地面是杂草丛生的柔软泥土地,
全身を強く打った感覚に、僕は絶息する。
窜遍全身的强烈痛觉,让我险些气绝。
いつかの話ではないが、本当に神原は、左腕一本で僕を押し倒したのだった。場所は、ベッドの上では──なかったけれど。
先前我们也开过类似的玩笑,神原真的用一只左手就把我压倒。只是——地点不是在床铺上。
「な、何を──神原!」
「你、你干什么,神原——」
僕はわめくが、神原はそのまま無言で、僕の上に折り重なるように、柔道でいう縦四方固めのように、左腕だけでなく、全身をフルに使って、僕の動きを拘束する。右腕と左脚がこの状況では、抵抗らしい抵抗など、できるわけが──否。
我嚷嚷道,但神原不发一语,灵活运用四肢(不只用左手),整个人重叠在我身上,使出类似柔道中的纵四方固,牵制住了我的动作。右手和左脚负伤的我,根本无法做出象样的抵抗!不。
たとえ僕のコンディションが万全でも。
就算我的身体状况极佳。
たとえ神原の腕が猿でなくとも。
就算她没有猿猴之手。
神原が本気で僕を押さえつけようとしたら、相手になるわけがないのだ。全国区の体育会系と、帰宅部の落ちこぼれである。年齢差など、体格差など、この場合、ちっとも問題にならない。どんなに暴れようとしたところで、まず身動きからできない。身体をぴったりと密着させられ、そんなに重くないはずの神原の肉体なのに、ずっしりと押し潰されそうにすら感じる。
神原要是真的想压制住我,我根本不会是她的对手。我们一个是全国大赛的运动员;另一个则是没参加社团的吊车尾。年龄和体格的差距,在这个状况下根本不成问题。即便我再怎么挣扎,也都动弹不得。她的身体紧贴在我身上,明明神原不是很重,我却感觉快要被她压扁了一样。
「神原……お前──」
「神原……你——」
「大人しくしろ! 興奮するな!」
「不要挣扎!别太亢奋了!」
「興奮するなって──」
「什么别太亢奋!」
「興奮すれば毒が回るぞ! 阿良々木先輩──」
「太亢奋的话蛇毒会发作的!阿良良木学长——」
神原は、間近な距離の中──それもほとんど接触しているかのような、互いの顔と顔の距離の中、僕に対し、割れんばかりに声を張り上げる。
神原在极近距离下仿佛快和我紧贴在一起般,当着我的面扯开喉咙对我大吼。
「蛇は気性の荒い生き物だが臆病なんだ──人間から接近して攻撃を仕掛けない限り、向こうは何もして来ない! 刺激するからいけないのだ! 大人しくやり過ごせば、蛇はどこかに行ってしまう!」
「蛇虽然是一种很暴躁的生物,可是却很胆小。只要人类不去攻击他,他就不会主动攻击!不可以刺激他!我们乖乖待在这里不要理他,蛇就会自己走掉的!」
「…………っ」
蛇の──性質。
这是蛇的性质。
それは、怪異になったところで──変わらない。
就算他是怪异,这点也不会改变。
巻き憑きしかり、ピット器官しかり。
如同缠附和颊窝器官一样。
だから──
所以——
それは、神原の言う通りなのだった。
神原说得没错。
僕だって──それくらいは知っている。
这种事情,我也知道。
僕がやり過ごせば──蛇切縄は、この場を去る。
只要我不去理会,蛇切绳就会离开这里。
既に、千石からは引き剝がしている。
我已经把他从千石身上扒下来了。
蛇は──帰るのだ。
所以——蛇要回去了。
「……だ、だが神原! それじゃあ──」
「……可、可是神原!那样的话——」
それは、帰るだけだ。
那只会让他回去。
還るんじゃない。
不是返回自然界。
返すん──だ。
而是——反弹。
呪い返し──
咒术反弹。
人を呪わば穴二つ。
害人害己。
人を呪わば──穴二つ。
诅咒别人,除了要替对方挖坟墓外,也要挖好自己的。
蛇の牙で穿たれたがごとく──穴二つ。
就像被蛇牙咬穿一样……两个坑洞。
「阿良々木先輩! 頼むから──」
「阿良良木学长!拜托你——」
神原は、悲痛な声で言った。
神原用悲痛的声音说。
僕に、訴えるように。
宛如在向我倾诉一般。
「──助けるべき相手を、間違えないでくれ」
「——该帮的人是谁,请学长不要搞错了。」
ざざざざざ。
沙沙沙沙!
ざざざざざ。
沙沙沙沙!
ざざざざざ、と。
沙沙沙沙!
音がする。
周围传来声响。
蛇切縄が、地面を這う音──この角度からでは、舞い上がる土煙も、搔き分けられる草も見えない。けれど──その音が、確かな速度を伴って、遠ざかっているのは、わかる。蛇切縄は──這い去ろうとしていた。神原の左腕によって、一気に五メートルも移動させられた僕を、見失ったのかもしれない。それとも、そもそも、蛇切縄は僕のことなど、最初から相手にしていなかったのかもしれない。
是蛇切绳贴地爬行的声音。从这个角度,看不见飞舞的尘土,也看不见左右倒开的杂草——但是,我知道那个声音,伴随着一定的速度正在远离我们。蛇切绳正打算爬离这里。或许是因为我被神原的左手推飞了五公尺之远,所以他找不到我的踪影。也有可能是因为,蛇切绳打从一开始就没把我放在眼里。
蛇は──帰る。
蛇要回去了。
遣わした者の場所へと。
回到施咒者身边。
呪いを──持ち帰るために。
为了将诅咒……带回去给对方。
「………………」
がくり、と全身から力が虚脱していくのを、感じた。もう、間に合わないだろう。追いかけようとしても、見えない蛇を追うなんて、僕には無理だ。この境内から出られてしまえば、音も気配も、なくなってしまうのだから。そもそも、それ以前に、この神原の拘束を、自力で解くことからして、僕にはできない。
我感觉到全身逐渐虚脱无力。已经,来不及了。就算上前追赶,我也没办法追上看不见的蛇。因为他离开这间神社之后,就会变得无声无息。况且,有一个先决问题,我根本无法凭己力解开神原的压制。
できたとしても──できそうもない。
就算可以挣脱她……我也没办法那么做。
「阿良々木先輩……」
「阿良良木学长……」
ぐったりと力が抜けたのを感じたのだろう、神原が、心配そうに──僕に声を掛ける。
神原大概是发现到我全身虚脱无力,一脸担心地出声叫我。
「ごめん」
「抱歉。」
僕は神原に、謝った。
我对神原道歉。
それしか、思いつかなかった。
我脑中只想得到这句话。
「辛い役目をやらせて、ごめん」
「抱歉,让你扮黑脸了。」
「謝らないで欲しい……立つ瀬33がない」
「请不要向我道歉……我会很难受。」
「うん……ごめん」
「嗯……抱歉。」
「阿良々木先輩」
「阿良良木学长。」
「ごめん……神原……、本当にごめん……」
「抱歉……神原……真的很抱歉……」
ごめん──としか言えない。
我只有……抱歉两个字。
なんだか、神原には、肝心なところで、謝ってばかりいる気がする。本当に申し訳ない。負担を強いて……こんな情けない先輩で、本当に──悪いと思っている。
总觉得我在紧要关头,都一直在向神原道歉。真的很对不起。逼你接下这种担子……我是一个没出息的学长,真的……很抱歉。
実際、神原の判断は正しかった。それは認めるしかない。あのまま続けていても、僕が蛇切縄を打倒できる可能性なんて、ほとんどなかったのだから。怪異もどきの僕が、怪異そのものに、対応できるわけもない。蛇の咬撃を回避するために激しく動いて、毒が早めに身体に回って、ぶっ倒れるのがいいところだっただろう。
神原的判断实际上是正确的。我只能点头承认。因为就算继续和蛇切绳对峙,我也没有丝毫的可能性能够打倒他。类怪异的我,无法对抗真正的怪异。刚才我为了回避蛇的咬击而激烈运动,使得毒性提早在体内扩散,刚才就算我倒地不起也不奇怪吧。
単に──諦め切れなかっただけだ。
我单纯只是因为无法死心而已。
だだをこねていたようなものだ。
就像一个在耍任性的小孩。
だからこそ、痛感する。
正因如此,我才深有痛感。
右腕の痛みも、左脚の痛みも。その痛感に較べれば、まるで皆無だ。
右手和左脚的疼痛,和那个痛感比起来,简直是鸡毛蒜皮。
僕は、薄い。
我很单薄。
僕は、弱い。
我很脆弱。
僕は──本当に無力だ。
我真的是一个软弱无力的人。
「暦お兄ちゃん……」
「历哥哥……」
蛇が去り──
蛇离开了——
意識を取り戻したらしい千石が、僕と神原のところへ、覚束ない足取りで、近付いてきた。怪異なき今、あの結界はもう意味をなさない──千石の、スクール水着から覗く肌に、食い込んでいた鱗の痕は、全身隈なく、消えている。
千石似乎恢复了意识,踏着摇摇晃晃的步伐,走进我和神原的身边。怪异消失后的现在,那个结界已经没有任何的意义——千石穿着学校泳装的肌肤上,刚才陷入体内的鳞痕,已经消失殆尽。
半分じゃない。
不是一半。
全部、消えている。
而是全部都消失了。
色白の、きめ細かい、綺麗な肌だ。
恢复成白皙、细致的美丽肌肤。
もう彼女は、苦しくない。
她已经不再痛苦。
もう彼女は、痛くない。
她已经不再疼痛。
もう彼女は、泣かなくていい──
她已经不需要再哭泣——
「暦お兄ちゃん。助けてくれて、ありがとう」
「历哥哥。谢谢你救了我。」
やめてくれ。
不要这么说。
千石。
千石。
お願いだから、ありがとうなんて、そんな聞くに堪えない言葉……言わないでくれ。僕に、お前からそんなことを言ってもらう資格はない。僕は、あろうことか──お前を呪った人間までも、助けようとしていたのだから。
拜托,请你不要说谢谢这种……让我不堪入耳的话语。我没资格接受你的道歉。因为我,甚至连对你下咒的人,都想要去帮助他。
007
後日談というか、今回のオチ。
以下是后日谈……应该说是本次故事的收尾。
翌日、いつものように二人の妹、火憐と月火に叩き起こされ、僕はそのまま、学校へ行く準備をする。六月十三日、火曜日、平日。右腕と左脚は、どうやら、日常生活が可能なくらいには、回復しているようだった。あれから、情けなくも神原と千石に、両側から抱えられるような格好で、僕は例の学習塾跡に向かって、忍にいくらか血を吸ってもらい、回復力を底上げしたのだった。いくら放任主義と言っても、片手片脚がひしゃげた状態で家に帰ることはできなかった。忍は相変わらず、そんな僕に対して、何も言わなかった。呆れているのかもしれないし、何も思っていないのかもしれない。しかしいずれにせよ、予定外に僕の血を多く飲めることは、忍にとっては損なことではないはずだから、機嫌はむしろよかったくらいだろう。一応は筋ということで、ことのなりゆきを、簡単に忍野に報告しておいたが、忍野もまた、多くは語らなかった。やはり、呆れているのかもしれないし──何も思っていないのかもしれなかった。
隔天,我一如往常被两个妹妹:火怜和月火叫醒后,准备要去上学。六月十三号,礼拜二,平常日。我的右手和左脚,似乎已经恢复到可以过日常生活的程度。在那之后,我狼狈地在神原和千石的左右搀扶下,走到废弃补习班,请忍吸一点血提高了我的恢复力。就算家里再怎么放任主义,我也不能带着被压扁掉的手脚回家。忍看到狼狈的我,还是老样子没有对我说半句话。她可能觉得很惊讶,又或许她没有任何的想法吧。不管答案是什么,能够意外地多喝到我的血,对忍来说应该不算吃亏,因此她反而很高兴吧。随后出于礼貌,我把事情的原委简单地向忍野报告了一下,然而他也没多说什么。他也一样,可能觉得很惊讶,又或许没有任何想法吧。
その後、学習塾跡の一室で、みんなで夜を明かした。千石は親に、友達の家でお泊り会だと噓をついていたので、彼女はどこかで夜を明かさねばならなかったのだ。他に適当な場所がなかったので、そのまま学習塾跡で眠ったというわけだ。最初は修学旅行の夜みたいなノリになったが、やはり全員疲れていたのだろう、すぐに、眠ってしまった。
之后,众人在废弃补习班的一间教室内,待在早上。千石骗爸妈说要住在朋友家里,所以她必须找个地方待到早上才行。由于没有其他适合的地方,所以我们就直接睡在补习班废墟里。刚开始就像校外教学的夜晚一样,大家很兴奋,不过最后很快就睡着了,其实大家都累了吧。
冬が来れば春が来て。
冬天过去后,春天就会到来。
夜が来れば朝が来る。
黑夜过去后,白昼就会降临。
神原と二人で千石を家まで送って、再会を約束し、別れた。しばらく、戦場ヶ原の誕生日パーティーの計画を練ってから、神原とも、交差点で別れる。そしてやっと家に帰り、ベッドでの二度寝を目論んだところを、妹達に叩き起こされたというわけだ。なんとなく、僕は月火に、「千石って、憶えてる?」と訊いた。
我和神原两人把千石送回家,约好择日再见后就道别了。我和神原商量了一下战场原生日派对的计划后,也在十字路口和她告别。接着我终于回到家,躺在床铺上打算睡回笼觉时,就被两个妹妹挖了起来。「你记得千石吗?」当下我不经意地问月火说。
憶えてるとの返事だった。
她说记得。
せんちゃんのことでしょう。
是小千对吧。
言われて、思い出した──そうだった、僕が千石に暦お兄ちゃんと呼ばれていたように、僕は千石のことを、せんちゃんと呼んでいたのだった。
听她这么一说我才想到——没错,那时候我是用小千称呼千石,就跟她用历哥哥称呼我一样。
とはいえ、やはり──
话虽如此,现在——
今更、そんな風には、呼べないけれど。
我还是没办法,那样称呼她。
制服に着替えながら、僕は考える。
换上制服的同时,我动脑思考——
蛇切縄が二匹いた理由。
蛇切绳有两条的理由。
二匹の蛇が──千石に巻き憑いていた理由。
两条蛇……缠附在千石身上的理由。
彼女のことを逆恨みしていたのは、友達だった女の子だ──意中の男の子が、千石に告白し、挙句に振られてしまったことを、恨みに思っていた。だから、学校で流行していたオカルトの、中でもとびっきりの呪いを行使した。腹いせみたいなもので、それが発動するとは、まさか思ってもいなかっただろうが──
无端怨恨千石的人,是她的一位女性友人——因为那个朋友喜欢的男生,向千石告白结果被拒绝,所以她怀恨在心。因此,她才会从校内流行的超自然咒术中,选了一个最恶毒来下咒。她只是想发泄,压根都没想过那个咒术会成功吧。
しかし、その事件だけを見ても、もう一人──千石のことを恨んでいるだろう人物は、想定できそうだった。そう、千石に袖にされたという、その男の子だ。友達だった女の子同様、僕にとっては名前も知らない人間だが──彼が千石を逆恨みしていたとしても、不思議ではあるまい。むしろ、心理的には、順当と言える。単純な──色恋沙汰。惚れた腫れたの話である。学校ではやっているお呪いが、何も女の子の専売特許とは限らない。馬鹿正直に、わざわざ対象の本人に、呪いを掛けたことを教えないことだって、あるだろう。あるいは、本気で呪いをかけることだって──ある。
但是,光看这件事情,我应该能够事先预料到,还有一个人会憎恨千石吧。对,就是那个被千石拒绝的男生。就跟那个女性友人一样,我连那个男性的名字都不晓得——但是,就算他会反过来怨恨千石,也不奇怪吧。以心理上来说,那可以说是很理所当然的。单纯的感情纠纷。爱来爱去事情。使用校内流行的咒术,不见得是女生的专利。有些人不会老老实实地,专程把自己下咒的事情告诉对方。也有人是真的想要……诅咒对方。
人を呪わば穴二つ。
害人害己。
なんて、そんなの、全部、勝手な推測だ。確たる証拠は何もないし、たとえそうだったとしても、あの蛇切縄が、女の子と男の子、どちらに帰ったのか、返った呪いが一体どうなったのかまでは、どうしたって僕にはわからないことである。
这些全都是我独断的推测。毕竟我没有确切的证据,就算我的推测正确,我也不知道那条蛇切绳会去找女生还是男生,以及咒术反弹之后会造成什么后果。
千石も知らなくていいことだ。
千石也没必要知道。
それはどう考えても、蛇足だろう。
这种事情再怎么思考,都是画蛇添足吧。
Footnotes
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重箱:[名]食物を入れる重ねの箱 ↩
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蜾蠃:[名]「じがばち(細腰蜂)」の古名 ↩
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気仙沼:宫城县东北部城市 ↩
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キャッチコピー (catch copy):[名]人の注意をひく広告文、宣伝文 ↩
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应为 役不足 ↩
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ワンダーフォーゲル ([独] Wandervogel):[名]グループで、山野を徒歩旅行する活動 ↩
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クロスカントリー (cross-country):[名]田野・丘陵・森林などを横断するように設定されたコースで行う長距離競走 ↩
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せしめる:[動マ下一]たくみに図って自分のものにする ↩
-
ロハ (「只ただ」の字が片仮名のロとハを続けた形であるところから):[名]代金や料金などが要らないこと ↩
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勇み足:[名]調子づいて、やりすぎたり、仕損じたりすること ↩
-
腐心:[名] (スル)ある事を成し遂げようと心をくだくこと ↩
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应为 頭隠して尻隠さず:悪事・欠点の一部を隠して全部を隠したつもりでいる愚かさをあざける言葉 ↩
-
应为 竹を割わったよう: 気性のさっぱりしているさま ↩
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ラス・アルハゲ (Rasalhague):阿拉伯文,为「抓蛇人的头」之意 ↩
-
サトリの妖怪:能够读出对方心思的妖怪。有一名旅人在山中生火时遇到了觉,觉威胁说要读出它的心思,结果刚好火堆中有一颗树果因高热而弹飞,恰好击中觉的眼睛而吓跑了它 ↩
-
女房気取り:[名]女房でないものがある男の女房であるかのようにふるまうこと ↩
-
さかり:[名]動物が1年の一定の時期に発情すること ↩
-
きまぐれオレンジ☆ロード:一部描写三角关系的漫画 ↩
-
天晴れ:[形動]驚くほどりっぱであるさま ↩
-
ドラフト:[名]人を選抜すること ↩
-
カンブリア (Cambria):寒武纪 ↩
-
似非:[接頭]似てはいるが本物ではない、にせものである、の意を表す ↩
-
ツチノコ: 日本的一种未确认生物,有许多人目击过,但一直没人实际捕捉到。日本兵库县曾经开价悬赏,金额高达两亿日币 ↩
-
ウロボロス (ouroboros): 一个古老的符号,形象为一条蛇(或龙)正在吞食自己的尾巴,形成一个循环的圆环 ↩
-
マクスウェルの悪魔: 马克斯威尔的恶魔,马克斯威尔建构出的一种热力学装置,理论为:拿一个封闭的盒子,中间用木板隔成左与右两个区域,左边放入一堆处于较低温、右边则放入温度较高的气体分子。如果将隔板抽掉,让两边的气体混在一起,平衡后的温度会介于原先的高低两温度之间 ↩
-
キューティクル (cuticle): 角质层 ↩
-
後学:[名]将来、自分のためになる知識や学問 ↩
-
エアポケット (air pocket): 气穴,指飞机在飞行中突然遭遇的、小范围的强烈下降气流区域 ↩
-
横着:[名・形動]すべきことを故意に怠けること ↩
-
上戸:[名]他の語の下に付いて複合語をつくり、酒に酔うとよく出る癖の状態を表す ↩
-
マッチポンプ (〈和〉match + [オランダ語] pomp):[名]自分で問題やもめごとを起こしておいてから収拾を持ちかけ、何らかの報酬を受け取ろうとすること ↩
-
関の山:[名]それ以上できないという限度 ↩
-
立つ瀬:[名]立場 ↩