梶井基次郎: 雪後
first published:『青空』 1926年6月・通巻16号
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desc: 作品讲述了不顾父母及亲人反对、执意结婚的行一与信子,二人质朴平淡的生活,以及随着信子怀孕,行一内心逐渐发生变化的过程,故事穿插了丰富多样的生活片段。结尾处小牛平安降生,暗示了行一与信子未来的光明与希望。在平实淡然的叙事中,梶井的景物描写极具美感
一
行一が大学へ残るべきか、それとも就職すべきか迷っていたとき、彼に研究を続けてゆく願いと、生活の保証と、その二つが不充分ながら叶えられる位置を与えてくれたのは、彼の師事していた教授であった。その教授は自分の主裁している研究所の一隅に彼のための椅子を設けてくれた。そして彼は地味な研究の生活に入った。それと同時に信子との結婚生活が始まった。その結婚は行一の親や親族の意志が阻んでいたものだった。しかし結局、彼はそんな人びとから我が儘だ剛情だと言われる以外のやり方で、物事を振舞うすべを知らなかったのだ。
当行一犹豫是该留在大学里,还是找工作时,有人给了他一个职位,虽然比上不足,却能完成他想继续研究的心愿,同时也能维持生计,这个人就是他的指导教授。这位教授在他主导的研究所内一隅,为行一特别安排了一个座位。行一就此展开朴实的研究生活。同时与信子步入婚姻生活。原本行一的父母和亲戚极力反对这桩婚事。但到头来,他所采取的做法就是任由这些人骂他任性、刚愎自用,除此之外,也没其他办法。
彼らは東京の郊外につつましい生活をはじめた。櫟林や麦畠や街道や菜園や、地形の変化に富んだその郊外は静かで清すがしかった。乳牛のいる牧場は信子の好きなものだった。どっしりした百姓家を彼は愛した。
他们开始在东京郊外过起简朴的生活。有麻栎林、小麦田、街道、菜园,具有多种地形变化的郊外,环境清幽。信子很喜欢养乳牛的牧场。他则是喜爱脚踏实地的农家。
「あれに出喰わしたら、こう手綱を持っているだろう、それのこちら側へ避けないと危いよ」
“你要是遇到的话,他们不是都这样握着缰绳嘛,你得避开,走这一侧,否则会有危险。”
行一は妻に教える。春埃の路は、時どき調馬師に牽かれた馬が閑雅な歩みを運んでいた。
行一提醒妻子注意。春天布满尘埃的路上,不时会有由驯马师牵着、迈开悠闲步伐的马。
彼らの借りている家の大家というのは、この土地に住みついた農夫の一人だった。夫婦はこの大家から親しまれた。時どき彼らは日向や土の匂いのするようなそこの子を連れて来て家で遊ばせた。彼も家の出入には、苗床が囲ってあったりする大家の前庭を近道した。
他们租屋处的房东,是长年住在这块土地上的一名农夫。房东常与他们夫妇往来。有时会带着他家身上散发着阳光和泥土气息的孩童来家里玩。而他进出家门时,也常常都是从四周满是苗床的房东家前院抄近路。
――コツコツ、コツコツ――
“叩叩叩——”
「なんだい、あの音は」食事の箸を止めながら、耳に注意をあつめる科で、行一は妻に眴せする。クックッと含み笑いをしていたが、
“那是什么声音啊?”行一停下用餐的筷子,一副专注细听的姿势,并向妻子使了个眼色。妻子别有含意地呵呵轻笑。
「雀よ。パンの屑を屋根へ蒔いといたんですの」
“是麻雀。因为我在屋顶上撒了面包屑。”
その音がし始めると、信子は仕事の手を止めて二階へ上り、抜き足差し足で明り障子へ嵌めた硝子に近づいて行った。歩くのじゃなしに、揃えた趾で跳ねながら、四五匹の雀が餌を啄いていた。こちらが動きもしないのに、チラと信子に気づいたのか、ビュビュと飛んでしまった。――信子はそんな話をした。
开始传出声音后,信子停下手中的工作,走上二楼,蹑脚走近嵌在采光纸门上的玻璃。有四五只麻雀在啄食,它们不是用走的,而是并拢着双脚蹦蹦跳跳。他们明明没动,但麻雀可能是发现了信子的存在,唧唧叫了几声,振翅飞走。——信子谈到这件事。
「もう大慌てで逃げるんですもの。しとの顔も見ないで……」
“它们慌慌张张地逃走了。也不看人家一眼……”
しとの顔で行一は笑った。信子はよくそういった話で単調な生活を飾った。行一はそんな信子を、貧乏する資格があると思った。信子は身籠った。
“人家”一语,把行一逗笑了。信子常用这类的话来调剂单调的生活。行一认为,这样的信子很会穷开心。此时信子已有孕在身。
二
青空が広く、葉は落ち尽くし、鈴懸が木に褐色の実を乾かした。冬。凩 が吹いて、人が殺された。泥棒の噂や火事が起こった。短い日に戸をたてる信子は舞いこむ木の葉にも慴えるのだった。
蓝天无限宽阔,树叶落尽,悬铃木的树上挂着干枯的褐色果实。冬天,刮起寒风,取人性命。小偷猖獗的传闻四起,火灾频发。在昼短夜长的白天,信子大门紧锁,连吹进屋内的树叶都害怕。
ある朝トタン屋根に足跡が印されてあった。
某天早上,有人在铁皮屋顶上留下脚印。
行一も水道や瓦斯のない不便さに身重の妻を痛ましく思っていた矢先で、市内に家を捜し始めた。
这里没自来水也没瓦斯,生活诸多不便,行一为身怀六甲的妻子感到心疼,于是便开始在市内找房子。
「大家さんが交番へ行ってくださったら、俺の管轄内に事故のあったことがないって。いつでもそんなことを言って、巡回しないらしいのよ」
“房东替我们去警局报警,结果警方说‘我的辖区里没出过事’。他好像总是这么说,向来都不巡逻。”
大家の主婦に留守を頼んで信子も市中を歩いた。
信子请房东太太代为看家,也去了一趟市里。
三
ある日、空は早春を告げ知らせるような大雪を降らした。
一天,天空降下大雪,就像在告知早春的到来。
朝、寝床のなかで行一は雪解の滴がトタン屋根を忙しくたたくのを聞いた。
一早,行一躺在被窝里,听到融雪的水滴咚咚咚打向铁皮屋顶的声响。
窓の戸を繰ると、あらたかな日の光が部屋一杯に射し込んだ。まぶしい世界だ。厚く雪を被った百姓家の茅屋根からは蒸気が濛々とあがっていた。生まれたばかりの仔雲!深い青空に鮮かに白く、それは美しい運動を起こしていた。彼はそれを見ていた。
打开窗户,闪亮的阳光铺满屋内。眼前是明亮耀眼的世界。积着厚厚一层雪的农家茅草屋顶,升起一道迷蒙的蒸气。天空初生的云朵,搭配蔚蓝的晴空,更显白亮,翻滚着展开一场美丽的运动。他望着那幕美景。
「どっこいしょ、どっこいしょ」
“嘿呦,嘿呦。”
お早うを言いにあがって来た信子は
是信子上楼来向他道早安。
「まあ、温かね」と言いながら、蒲団を手摺りにかけた。と、それはすぐ日向の匂いをたてはじめるのであった。
“啊呀,好温暖。”她边说边将棉被搭在扶手上。于是,它马上散发出阳光的气味。
「ホーホケキョ」
“嘎叽嘎叽……”
「あ、鶯かしら」
“啊,那是黄色莺吗?”
雀が二羽檜葉を揺すって、転がるように青木の蔭へかくれた。
两只麻雀摇晃着桧树的叶片,接着一个翻身,躲进绿树的树荫里。
「ホーホケキョ」
“嘎叽嘎叽……”
口笛だ。小鳥を飼っている近くの散髪屋の小僧だと思う。行一はそれに軽い好意を感じた。
是口哨声。行一猜是附近一家理发店的童工,他们店里养着小鸟。行一对他产生了一些好感。
「まあほんとに口笛だわ。憎らしいのね」
“还真的是口哨声呢。真气人。”
朝夕朗々とした声で祈祷をあげる、そして原っぱへ出ては号令と共に体操をする、御嶽教会の老人が大きな雪達磨を作った。傍に立札が立ててある。 「御嶽教会×××作之」と。
御岳教会有位老先生,早晚都会朗声祈祷,还会在空地上随着号令做体操,今天他做了一个大雪人,并在一旁插上了立牌。上头写着“御岳教会×××作”。
茅屋根の雪は鹿子斑になった。立ちのぼる蒸気は毎日弱ってゆく。
茅草屋顶上的积雪,模样变得像鹿身上的斑点一样。表面升起的蒸气,每天逐渐减弱。
月がいいのである晩行一は戸外を歩いた。地形がいい工合に傾斜を作っている原っぱで、スキー装束をした男が二人、月光を浴びながらかわるがわる滑走しては跳躍した。
在月色溶溶的晚上,行一到户外散步。那是一处斜度适中的空地,两名身穿滑雪装的男子在月光下轮流滑行、跳跃。
昼間、子供達が板を尻に当てて棒で揖をとりながら、行列して滑る有様を信子が話していたが、その切り通し坂はその傾斜の地続きになっていた。そこは滑石を塗ったように気味悪く光っていた。
信子提到白天时孩子们坐在木板上,用木棒当桨,排成一长排滑行,而那座开辟出的坡道,就与这处斜坡相连。像抹上了滑石粉似的,闪着奇异的光芒。
バサバサと凍った雪を踏んで、月光のなかを、彼は美しい想念に涵りながら歩いた。その晩行一は細君1にロシアの短篇作家の書いた話をしてやった。――
他踩在结冻的雪地上,沉浸于凄美的想象中,漫步在月光下。那晩,行一讲了俄罗斯一位短篇小说家所写的故事给妻子听。
「乗せてあげよう」
“我载你吧。”
少年が少女を橇に誘う。二人は汗を出して長い傾斜を牽いてあがった。そこから滑り降りるのだ。――橇はだんだん速力を増す。首巻がハタハタはためきはじめる。風がビュビュと耳を過ぎる。
少年邀少女一同坐雪橇。两人满头大汗地拉着雪橇登上长长的斜坡,接着从那里一路滑下。——雪橇速度越来越快。围巾开始随风飘扬。风声飕飕掠过耳畔。
「ぼくはおまえを愛している」
“我爱你。”
ふと少女はそんな囁きを風のなかに聞いた。胸がドキドキした。しかし速力が緩み、風の唸りが消え、なだらかに橇が止まる頃には、それが空耳だったという疑惑が立罩める。
蓦地,少女从风中听到这声低语。她心跳加速。但是当滑行速度减缓,风的呼啸消失,雪橇徐徐停止时,她满心怀疑是自己听错了。
「どうだったい」
“怎么样?”
晴ばれとした少年の顔からは、彼女はいずれとも決めかねた。
从少年那爽朗的神情中,少女难以判定是不是自己听错了。
「もう一度」
“再滑一次。”
少女は確かめたいばかりに、また汗を流して傾斜をのぼる。――首巻がはためき出した。ビュビュ、風が唸って過ぎた。胸がドキドキする。
为了加以确认,少女再次满头大汗地爬上斜坡。——围巾随风飘扬。飕飕……风声呼啸而过。她心跳加速。
「ぼくはおまえを愛している」
“我爱你。”
少女は溜息をついた。
少女叹了口气。
「どうだったい」
“如何?”
「もう一度! もう一度よ」と少女は悲しい声を出した。今度こそ。今度こそ。
“再滑一次!再滑一次!”少女的声音悲戚。这次一定要听出来。
しかし何度試みても同じことだった。泣きそうになって少女は別れた。そして永遠に。
但不管试了几次,结果都还是一样。少女泫然欲泣,就此道别。从此没再相见。
――二人は離ればなれの町に住むようになり、離ればなれに結婚した。――年老いても二人はその日の雪滑りを忘れなかった。
——两人分住不同的市街,各自结婚成家。——尽管日后上了年纪,两人还是忘不了那天滑雪的情景。
―― それは行一が文学をやっている友人から聞いた話だった。
这是行一从一位搞文学的朋友那里听来的故事。
「まあいいわね」
“好美的故事。”
「間違ってるかも知れないぜ」
“也许他们做错了。”
大変なことが起こった。ある日信子は例の切り通しの坂で顛倒した。心弱さから彼女はそれを夫に秘していた。産婆の診察日に彼女は顫えた。しかし胎児には異状はなかったらしかった。そのあとで信子は夫に事のありようを話した。行一はまだ妻の知らなかったような怒り方をした。
后来发生了一件大事。某天,信子在那座开辟出的坡道上跌倒了。因为心虚,她瞒着没告诉丈夫。待到产婆检查这天,信子全身发抖。不过胎儿似乎没有异常。事后信子才向丈夫说明情况。行一震怒,信子从没见过他这样发怒的样子。
「どんなに叱られてもいいわ」と言って信子は泣いた。
“你要怎么骂我都行。”信子泪流满面地说道。
しかし安心は続かなかった。信子はしばらくして寝ついた。彼女の母が呼ばれた。医者は腎臓の故障だと診て帰った。
但他们的安心并未持续太久。一段时间后,信子开始卧病不起。行一把她母亲找来。医生前来诊治后,判断她的肾脏有了毛病,说完便离开了。
行一は不眠症になった。それが研究所での実験の一頓挫と同時に来た。まだ若く研究に劫の経ない行一は、その性質にも似ず、首尾不首尾2の波に支配されるのだ。夜、寝つけない頭のなかで、信子がきっと取返しがつかなくなる思いに苦しんだ。それに屈服する。それが行一にはもう取返しのつかぬことに思えた。
行一就此失眠。同时在研究所的实验也遭遇挫折。行一还年轻,投入研究的时间尚短,理应不会如此,他却被这波不顺遂的浪潮支配。夜不能眠的他,心想信子一定深受懊悔的念头之苦。而他也屈服了。行一已觉得这是自己无法挽回的事。
「バッタバッタバッタ」鼓翼の風を感じる。
“啪嗒啪嗒……”他感觉到一阵振翅引来的风。
「コケコッコウ」 遠くに競争者が現われる。こちらはいかにも疲れている。あちらの方がピッチが出ている。
“咕咕咕……”远处出现竞争者。他疲惫不堪,对方却精力充沛。
「……」とうとう止してしまった。
“……”声音终于停了。
「コケコッコウ」
“咕咕咕……”
一声――二声――三声――もう鳴かない。ゴールへ入ったんだ。行一はいつか競漕に結びつけてそれを聞くのに慣れてしまった。
一声——两声——三声——之后就没再叫了。已抵达终点。不知从什么时候开始,行一将它与划船比赛联想在一起,习惯去听那鸡鸣声。
四
「あの、電車の切符を置いてってくださいな」靴の紐を結び終わった夫に帽子を渡しながら、信子は弱よわしい声を出した。
“请把电车票留下吧。”见丈夫系好鞋带,信子将帽子递给他,同时以虚弱的声音道。
「今日はまだどこへも出られないよ。こちらから見ると顔がまだむくんでいる」
“今天你一样哪儿都不能去。我看你脸还浮肿呢。”
「でも……」
“可是……”
「でもじゃないよ」
“没什么可不可是的。”
「お母さん……」
“妈妈她……”
「お姑さんには行ってもらうさ」
“我会请她过来。”
「だから……」
“所以我才说……”
「だから切符は出すさ」
“这样的话,我会给你车票。”
「はじめからそのつもりで言ってるんですわ」信子は窶れ3の見える顔を、意味のある表情で微笑ませた。(またぼんやりしていらっしゃる)――娘むすめした着物を着ている。それが産み日に近い彼女には裾がはだけ勝ちなくらいだ。
“我本来就是这么想,才跟你说的啊。” 信子那憔悴的面容,以别有含意的表情微微一笑(随即又心不在焉了)。——她穿着一件年轻女孩穿的衣服。即将临盆的她,衣服下摆时常敞开着。
「今日はひょっとしたら大槻の下宿へ寄るかもしれない。家捜しが手間どったら寄らずに帰る」切り取った回数券はじかに細君の手へ渡してやりながら、彼は六ヶ敷い顔でそう言った。
“今天我也许会顺道去一趟大槻家。如果找房子太花时间,我就不绕过去,直接回来。” 行一撕下回数票,直接递给妻子,板着脸说道。
「ここだった」と彼は思った。灌木や竹藪の根が生なました赤土から切口を覗かせている例の切通し坂だった。
“就是这里。” 他心想。灌木和竹林的根部从刚翻过的红土中露出切口,这里是先前那处开辟的坡道。
――彼がそこへ来かかると、赤土から女の太腿が出ていた。何本も何本もだった。
——他走近一看,看到从红土里冒出的似女人大腿一样的根。有好多好多。
「何だろう」
“这是什么?”
「それは××が南洋から持って帰って、庭へ植えている○○の木の根だ」
“这是××从南洋带回来种在庭院里的○○树的树根。”
そう言ったのはいつの間にやって来たのか友人の大槻の声だった。彼は納得がいったような気がした。と同時に切り通しの上は××の屋敷だったと思った。
不知道什么时候来到这里的友人大槻说道。他觉得有些明白了。同时想到,开辟的坡道上方原本是××的住宅。
小時歩いていると今度は田舎道だった。邸宅などの気配はなかった。やはり切り崩された赤土のなかからにょきにょき4女の腿が生えていた。
走了一会儿,这次来到一处乡间小路。感觉不到有人家的存在。从开挖出的红土里,同样冒出一枝枝似女人大腿的根。
「○○の木などあるはずがない。何なんだろう?」
“这里照理不会有○○树啊。到底是怎么回事?”
いつか友人は傍にいなくなっていた。――
不知何时,友人又从身旁消失。
行一はそこに立ち、今朝の夢がまだ生なましているのを感じた。若い女の腿だった。それが植物という概念と結びついて、畸形な、変に不気味な印象を強めていた。鬚根がぼろぼろした土をつけて下がっている、壊えた赤土のなかから大きな霜柱が光っていた。
行一站在该处,感觉今天早上做的梦仍旧鲜明。那似年轻女人的大腿也是。这与植物的概念联结在一起,加深那畸形又诡异的印象。须根沾满破碎的泥土垂落着,巨大的冰柱在崩解的红土中散发光芒。
××というのは、思い出せなかったが、覇気に富んだ開墾家で知られているある宗門の僧侶――そんな見当だった。また○○の木というのは、気根を出す榕樹に連想を持っていた。それにしてもどうしてあんな夢を見たんだろう。しかし催情的な感じはなかった。と行一は思った。
××是谁,他一时想不起来,但他猜是某宗门的和尚,充满霸气,向来以垦荒者的身份闻名在外。而○○树,则是让人联想到长有气根的榕树。不过,为什么会做那样的梦呢?但至少没有煽情的感觉。行一在心中暗忖。
実験を早く切り上げて午後行一は貸家を捜した。こんなことも、気質の明るい彼には心の鬱したこの頃でも割合平気なのであった。家を捜すのにほっとすると、実験装置の器具を注文に本郷へ出、大槻の下宿へ寄った。中学校も高等学校も大学も一緒だったが、その友人は文科にいた。携わっている方面も異い、気質も異っていたが、彼らは昔から親しく往来し互いの生活に干渉し合っていた。ことに大槻は作家を志望していて、茫洋とした研究に乗り出した行一になにか共通した刺激を感じるのだった。
行一提早结束实验,下午出外找寻租屋处。尽管最近心情郁闷,但这种事对个性开朗的他来说,倒是没多大影响。待找房子的事可以松口气之后,他前往本乡订购实验装置的器具,并顺道前往大槻的住处。他国中、高中、大学都和这位友人念同一所学校,不过这位友人念的是文科。从事的领域不同,个性也不同,但他们从以前就往来密切,会互相关照彼此的生活。尤其是大槻立志当一名作家,这对投入研究、抓不到方向的行一带来一种共通的激励。
「どうだい、で、研究所の方は?」
“研究所的工作做得怎样啊?”
「まあぼちぼちだ」
“普普通通啦。”
「落ちついているね」
“看你日子过得挺平顺的嘛。”
「例のところでまだ引っ掛かってるんだ。今度の学会で先生が報告するはずだったんだが、今のままじゃまだ貧弱でね」
“还卡在之前那个问题上。老师原本要在这次的学会中提出报告,但照目前的情况来看,内容还不够充实。”
四方山の話が出た。行一は今朝の夢の話をした。
他们天南地北地闲聊。行一聊到今天早上做的梦。
「その章魚の木だとか、××が南洋から移植したというのはおもしろいね」
“那章鱼树什么的,是××从南洋移植来的,这个有意思。”
「そう教えたのが君なんだからね。……いかにも君らしいね。出鱈目をよく教える……」
“因为那是你跟我说的……很像是你会说的话,对我信口胡诌……”
「なんだ、なんだ」
“哪有啊。”
「狐の剃刀5とか雀の鉄砲6とか、いい加減なことをよく言うぜ」
“例如狐狸剃刀、麻雀铁炮什么的,总是随口胡说。”
「なんだ、その植物ならほんとうにあるんだよ」
“什么嘛,如果是你说的那些植物,是真的有啊。”
「顔が赤いよ」
“你脸红了。”
「不愉快だよ。夢の事実で現実の人間を云々するのは。そいじゃね。君の夢を一つ出してやる」
“那是因为我不高兴。你拿梦里发生的事,来批评现实世界里的人。这样的话,我也来说一个和你有关的梦。”
「開き直ったね」
“恼羞成怒是吧?”
「だいぶん前の話だよ。Oがいたし、Cも入ってるんだ。それに君と僕と。組んでトランプをやっていたんだから、四人だった。どこでやっているのかと言うと、それが君の家の庭なんだ。それでいざやろうという段になると、君が物置みたいな所から、切符売場のようになった小さい小舎を引張り出して来るんだ。そしてその中へ入って、据り込んで、切符を売る窓口から『さあここへ出せ』って言うんだ。滑稽な話だけど、なんだかその窓口へ立つのが癪で憤慨していると、Oがまたその中へ入ってもう一つの窓口を占領してしまった。……どうだその夢は」
“那是很久以前的事。有 O,以及 C,还有你和我。我们四个围在一起玩扑克牌。是在哪儿玩呢,就在你家庭院。当我们准备开始时,你从一个像仓库的地方拉出一个像售票亭的小屋来。然后你走进里头,一屁股坐下,从售票的窗口说 ‘来,朝这里发牌’。虽然很滑稽,但感觉站在窗口边发牌令人生气又愤慨,于是 O 也跑到里头占领了另一个窗口……这个梦如何啊?”
「それからどうするんだ」
“然后呢?”
「いかにも君らしいね……いや、Oに占領しられるところは君らしいよ」
“真像你的作风……不,是说被 O 占领的那一部分,真的很像你。”
大槻は行一を送って本郷通へ出た。美しい夕焼雲が空を流れていた。日を失った街上には早や夕暗が迫っていた。そんななかで人びとはなにか活気づけられて見えた。歩きながら大槻は社会主義の運動やそれに携わっている若い人達のことを行一に話した。
大槻送行一来到本乡通。美丽的云霞从空中飘过。太阳落山的街道上,夜幕渐渐降临。置身其中,感觉人们看起来充满活力。大槻边走边向行一谈论社会主义运动以及投身其中的年轻人。
「もう美しい夕焼も秋まで見えなくなるな。よく見とかなくちゃ。――僕はこの頃今時分になると情けなくなるんだ。空が奇麗だろう。それにこっちの気持が弾まないと来ている」
“这美丽的晚霞,到了秋天就再也看不到了。得先看个够才行。——最近我每到这个时刻,就变得很冷漠。天空不是很漂亮吗?我却没有兴奋的感觉。”
「呑気なことを言ってるな。さようなら」
“瞧你说得可是一派轻松。再见了。”
行一は毛糸の首巻に顎を埋めて大槻に別れた。
行一把下巴埋进毛线围巾里,向大槻道别。
電車の窓からは美しい木洩れ陽が見えた。夕焼雲がだんだん死灰に変じていった。夜、帰りの遅れた馬力が、紙で囲った蝋燭の火を花束のように持って歩いた。行一は電車のなかで、先刻大槻に聞いた社会主義の話を思い出していた。彼は受身になった。魔誤ついた。自分の治めてゆこうとする家が、大槻の夢に出て来た切符売場のように思えた。社会の下積みという言葉を聞くと、赤土のなかから生えていた女の腿を思い出した。放胆な大槻は、妻を持ち子を持とうとしている、行一の気持に察しがなかった。行一はたじろいだ。
从电车车窗可以望见从树叶间洒落的美丽阳光。云霞逐渐变成死灰色。夜里,晚归的马车就像带着花束般,载着用纸围住的烛火而行。行一在电车里,想起刚才从大槻那里听闻的社会主义话题。他变得很被动,慌乱无措。他想好好经营的家,感觉就像出现在大槻梦里的售票亭一样。每次听到“社会底层”这个说法,他就会想到从红土里冒出的女人大腿。行一有妻子,且就要有自己的孩子了,作风大胆的大槻没察觉出行一的心情。行一感到怯缩。
満員の電車から終点へ下された人びとは皆働人の装いで、労働者が多かった。夕刊売りや鯉売りが暗い火を点している省線の陸橋を通り、反射燈の強い光のなかを黙々と坂を下りてゆく。どの肩もどの肩もがっしり何かを背負っているようだ。行一はいつもそう思う。坂を下りるにつれて星が雑木林の蔭へ隠れてゆく。
从坐满人的电车下车,走向终点站的人群,全都是工人打扮,劳工相当多。卖晚报和卖鲤鱼的小贩走过点着昏黄色灯光的省线陆桥,在反射灯的亮光下默默地走下坡道。似乎每个人肩上都扛着沉重的负荷。行一总是这么想。随着他们走下坡道,星星也隐没在杂树林的树荫中。
道で、彼はやはり帰りの姑7に偶然追いついた。声をかける前に、少時行一は姑を客観しながら歩いた。家人を往来で眺める珍しい心で。
在路上,他偶然遇见返家的岳母。在打招呼前,行一先暂时边走边观察岳母。抱着一种在马路上观看家人的罕见心境。
「なんてしょんぼり8しているんだろう」
“她看起来多沮丧啊。”
肩の表情は痛いたしかった。
那肩膀的动作看了令人难过。
「お帰り」
“您回来啦。”
「あ。お帰り」姑はなにか呆けているような貌だった。
“啊,你也回来啦。”岳母一副魂不守舍的模样。
「疲れてますね。どうでした。見つかりましたか」
“辛苦你了。结果怎样?找到房子了吗?”
「気の進まない家ばかりでした。あなたの方は……」
“全是一些不太满意的房子。您那边呢……”
まあ帰ってからゆっくりと思って、今日見つけた家の少し混み入った条件を行一が話し躊っていると、姑はおっ被せるように「今日は珍しいものを見ましたよ」
行一想回家后再慢慢聊,正犹豫着该不该将今天看房子得知的复杂条件告诉岳母,这时岳母就像要打断他的话似的,对他说道:“我今天看到了很罕见的一幕。”
それは街の上で牛が仔を産んだ話だった。その牛は荷車を牽く運送屋の牛であった。荷物を配達先へ届けると同時に産気づいて、運送屋や家の人が気を揉むうちに、安やすと仔牛は産まれた。親牛は長いこと、夕方まで休息していた。が、姑がそれを見た頃には、蓆を敷き、その上に仔牛を載せた荷車に、もう親牛はついていた。
她提到在街上看到母牛生小牛的事。那是货运行的牛,负责拉货车。货物送达目的地后,母牛正好要生产,而就在货运行和屋里的人担心焦急时,它就这样顺利地产下小牛。母牛一直休息到傍晚。但岳母看到那一幕时,货车上已铺好草席,小牛在其上,母牛紧随在一旁。
行一は今日の美しかった夕焼雲を思い浮かべた!
行一想起今天那美不胜收的云霞!
「ぐるりに人がたくさん集まって見ていましたよ。提灯を借りて男が出て来ましてね。さ、どいてくれよと言って、前の人をどかせて牛を歩かせたんです――みんな見てました……」
“周围聚集了好多人啊。有名男子借来了灯笼,喊着‘拜托,让一下’,要前面的人让出路来,好让牛行走。大家都在一旁观看……”
姑の貌は強い感動を抑えていた。
岳母一副强忍心中感动的神情。
行一は 「よしよし、よしよし」膨らんで来る胸をそんな思いで緊めつけた。
“我明白,我明白。”行一抱持这个念头,揪紧自己渐感激昂的心。
「そいじゃ、先へ帰ります」
“那我先回去了。”
買物があるという姑を八百屋の店に残して、彼は暗い星の冴えた小路へ急ぎ足で入った。
岳母说她还要买点东西,行一留她在蔬果店里,而后快步走进一条在昏暗中可看见明亮星辰的小路。