谷崎潤一郎: 细雪(上) 五
first published:『中央公論』1943年1月号・3月号
audio: https://www.youtube.com/watch?v=BL_0giqvQa0&t=30s
desc: 在大阪船场坐拥百年老店、历史底蕴深厚的莳冈家,鹤子、幸子、雪子、妙子四姐妹交织出百态人情。小说如华美画卷,循着四季流转,细致描绘出昭和十年间关西上流社会的日常光景。
三女雪子是四姐妹中容貌最为出众之人,婚事却屡屡未果,年过三十依旧独身。幸子夫妇为此忧心不已、四处奔走,性格沉默寡言的雪子却对每一门亲事都无意应允,岁月便这般缓缓流逝。
「中姉ちゃん、その帯締めて行くのん」と、姉のうしろで妙子が帯を結んでやっているのを見ると、雪子は云った。 「その帯、―――あれ、いつやったか、この前ピアノの会の時にも締めて行ったやろ」
“二姐,系这条腰带去吗?” 看见妙子正站在姐姐身后为她系腰带,雪子问道,“这条带子,哦,上次听钢琴演奏会的时候,你也是系的这条吧?”
「ふん、締めて行った」
“是呀,是这一条。”
「あの時隣に腰掛けてたら、中姉ちゃんが息するとその袋帯がお腹のところでキュウ、キュウ、云うて鳴るねんが」
“那天我坐在你旁边,你一呼吸这条袋式腰带就吱吱地响。”
「そやったか知らん」
“真的吗?”
「それが、微かな音やねんけど、キュウ、キュウ、云うて、息する度に耳について難儀したことがあるねんわ、そんで、その帯、音楽会にはあかん思うたわ」
“虽然声音很小,可是你一呼吸就吱吱响,听着刺耳,很不是味儿。我当时就想,听音乐会还是不要系这条带子。”
「そんなら、どれにしょう。―――」 そう云うと又箪笥の開きをあけて、幾つかの畳紙を引き出してはそこら辺へ一杯に並べて解き始めたが、
“那么,系哪一条呢?” 妙子边说边打开衣橱,拉出许多纸盒,摆满一地,逐一揭开。
「これにしなさい」と、妙子が観世水の模様のを選び出した。
“就系这条吧?” 妙子选出一条水涡纹图案的腰带。
「それ、似合うやろか」
“那条合适吗?”
「これでええ、これでええ。―――もうこれにしとき」
“这条好,这条好,就系这条吧。”
雪子と妙子とは先に着附を終っていて、幸子だけが後れているので、妙子は子供を賺すように云いながら、又その帯を持って姉のうしろへ廻ったが、漸く着附が出来たところで、幸子はもう一度鏡の前に坐ったかと思うと、
雪子和妙子早已打扮好了,只有幸子还没完,妙子像哄孩子似的说着,又拿着这条带子转到姐姐身后,幸子终于穿戴停当,又在镜子前坐下。
「あかん」と、頓狂な声を出した。「―――この帯もあかん」
“不行!” 幸子突然惊叫一声,“这条也不行。”
「何でやねん」
“为什么?” 妙子问。
「何でて、よう聞いてて御覧。―――ほれ、これかてキュウ、キュウ云うてるがな」そう云って幸子は、わざと呼吸をして帯のお腹に当るところを鳴らしてみせた。
“还问为什么,你仔细听,喏,这里吱吱直响!” 幸子说着,又特意做深呼吸叫她们听。
「ほんに、云うてるわ」
“真的,是在响呢。”
「そんなら、あの、露芝のんは」
“那么,那条青草挂露珠图案的怎么样呢?”
「どうやろか、―――ちょっとあの帯捜して見て、こいさん」
“还不知怎样呢,你给我找一找,小妹。”
三人のうちで一人洋装をしている妙子は、身軽に彼方此方と、そこらに散らばった畳紙の中味を調べてみて、それを見附けると又姉のうしろへ廻った。幸子は結ばれたお太鼓の上を片手でおさえて、立ったまま二三度息をしてみて、
三人之中只有妙子穿西装,她利索地在那些散乱的纸盒中找到了那条带子,又转到姐姐身后,幸子一只手按住太鼓结,站着使劲呼吸了几次。
「今度はええらしい」と、口に咬えていた帯締を取って中へ通したが、そうしてきちんと締めてしまうと、又その帯もキュウキュウ云い出した。
“这下像是好了。” 说着,她拿口中衔着的扣带穿过太鼓结再一收紧时,那带子又吱吱地响了起来。
「何でやろ、これもやわ」
“为什么呢?这条也响呀。”
「ほんになあ、うふふふふふ」
“真的,呵呵呵呵!”
幸子のお腹のあたりが鳴る度に三人が引っくり覆って笑った。
幸子的腰带一发出响声,三个人就笑得前仰后合。
「うふふふふふ、袋帯を止めにせなあかん、袋帯云うもんがあかんねんわ」と、雪子が云った。
“嘻嘻嘻!不系袋式腰带算了,这种腰带不好。” 雪子说。
「いや、袋帯のせいやあれへん、地質のせいやわ」
“不,不是带子的原因,是料子不好。” 妙子说。
「そうかて、近頃の袋帯は皆その地質のもんばかりやないか。その地質で、それが袋になってるよってに尚のことキュウキュウ云うねんが」
“但是,近来的袋式腰带不都是用这种料子做的吗?用这种料子,又做成袋式的,就更加吱吱响吧?” 雪子说。
「分った、中姉ちゃん、分ったわ」と、妙子が又別な帯を引っ張り出した。 「これして御覧。これやったら音せえへんやろ思うわ」
“明白了,二姐,我明白了。” 妙子又抽出另一条腰带,“用这条试试看,一定不会响。”
「それかて袋帯やないか」
“不是一样的袋式腰带吗?”
「ま、うちの云う通りにしてみなさい、どう云う訳で鳴るか云うことが分ったよってに」
“照我说的试试看,我已经知道为什么会响了。”
「もう一時過ぎやわ。早うせなんだら済んでしまう。今日みたいな会は正味演奏する時間ほんちょっとしかあれへんで」
“已经一点多钟了,再不赶紧就听不上了。像今天这样的音乐会,正式演奏的时间只有那么一会儿。” 雪子说。
「そうかて、雪子ちゃん、自分が帯のこと云い出したんやないか」
“可是,不是你自己说起腰带的事儿吗?”
「そんでも折角聴きに行くのんに、あんな音が耳についたらどうにもならへんもん」
“是我说的,好不容易去听一次音乐会,耳边老响着这样的声音,可不是白去了吗?”
「ああ忙しい。解いたり締めたり何遍もせんならん。汗掻いてしもたわ」
“哎呀,累死我了!系了又解,解了又系,不知好多遍,我都累出汗了。”
「阿呆らしい、うちの方がしんどいがな」と、妙子がうしろで膝をついて、ぎゅうっと締め上げながら云った。
“岂有此理!我才累呢。” 妙子跪在姐姐身后,一边使劲儿系紧腰带一边说。
「注射は此方でなさいますか」と、お春が盆の上に、消毒した注射器、ベタキシンの箱、アルコールの罎、脱脂綿入れ、絆創膏、等々を載せて這入って来た。
“就在这儿打针吗?” 阿春端着盘子走进来说。盘里放着消过毒的注射器、维生素 B 药盒,酒精瓶、脱脂棉和橡皮膏等。
「雪子ちゃん、頼むわ、注射や注射や」そう云って幸子は、「あ、それからなあ、―――」と、出て行くお春の背中に浴びせた。 「―――自動車云うといてんか、もう十分したら来るように」
“雪妹,劳你驾,打吧,打吧。” 幸子说完又冲着已走出房门的阿春的背影喊道:“哦,还有呢,去叫辆汽车,叫他们过十分钟就开来。”
雪子は毎度のことなので、馴れた手つきでベタキシンのアンプールを鑢1で切って、液を注射器に吸い上げると、まだ鏡の前に立ってお太鼓に背負い上げを入れさせている幸子の左の腕をとらえて、肩の辺までまくり上げた。そしてアルコールを染ました脱脂綿で二の腕をゴシゴシ擦ってから、器用に注射の針を入れた。
因为经常给人打针,雪子技术纯熟,她麻利地用锉刀切断维生素 B 的安瓿瓶,抽出注射液。此时,幸子还在照镜子,让妙子往太鼓结里塞衬垫。雪子握住她左手,把袖子卷到肩头,用酒精棉球在胳膊上擦了几下,接着熟练地将针扎进去。
「あ、痛い」
“哎呀!好痛!”
「今日はちょっと痛いかも知れん、時間ないよってにそないゆっくりしてられへん」一瞬間、ヴィタミンBの強い匂が部屋じゅうに満ちた。雪子が絆創膏を貼った上からぴたぴた叩いて肉を揉んでやっていると、
“今天也许有点痛,没有时间了,不能像平常那样慢慢儿地进针。” 一瞬间,浓浓的维生素B的气味弥漫了整个房间。雪子给她贴上橡皮膏,轻轻拍了几下,又揉了揉。
「此方も済んだで」と、妙子が云った。「この帯やったら、帯締どれにしょう」
“我这里也好了。” 妙子说,“系这条带子,配什么扣带呢?”
「それでええやんかいな、早う、早う、―――」
“就配那根不行吗?快点儿,快点儿!” 雪子说。
「そない急からしゅう云わんといて。急かされたら尚のことかあッとしてしもて何も彼も分らんようになるがな」
“别催得那么急呀!催急了,我更加头昏脑涨,什么都不明白了。” 幸子说。
「そんでどうや、中姉ちゃん、息して御覧」
“这条怎么样?你吸口气试试。”
「ふん、ほんに、―――」妙子に云われて、幸子は頻りに息をしてみながら、「ほんに、これやったらどないもあらへん。―――何でやねん、こいさん」
“嗬,真的。” 听妙子一说,幸子连连深呼吸,“真的,这样一点声音都没有了。为什么呢?”
「帯が新しいよってにキュウキュウ云うねんが。この帯やったら、古うなって、地がくたびれてるよってに音せえへんねん」
“腰带是新的,就吱吱响,这条带子用旧了,所以不出声儿。”
「ほんになあ、そのせいやってんなあ」
“还真是这么个道理呢。”
「少し頭を働かしなさいや」
“你也要稍微动动脑子嘛。”
「御寮人さんに電話でございます、井谷さんから、―――」と、お春が廊下を駈けて来て云った。
“太太,您的电话,井谷女士打来的。” 阿春跑到走廊里喊道。
「あ、えらいこッちゃ、電話かけるのん忘れてしもてん」
“啊!糟了,我忘了给她挂电话了。”
「ほれ、もう自動車来たらしいわ」
“嗬,汽车好像来了。”
「どうしょう、どうしょう」と、幸子は鼻を鳴らしたが、雪子はまるで他人事のように澄まし込んでいた。
“怎么办,怎么办呢?” 幸子急得鼻子直哼,雪子却若无其事、事不关己似的。
「なあ、雪子ちゃん、どない云うとこう」
“喂,雪妹,怎样跟她说呢?”
「どないなと云うといて」
“怎样说都行。”
「そうかて、あの人、味善う云わなんだら承知しやはらへんねん」
“可是,她这个人,不好好儿跟她说,她不会答应的。”
「そこのとこ、ええように頼むわ」
“那就请你看着办吧。”
「そんなら、兎に角、明日のとこだけ見合せてもろとくわな」
“那么,不管怎样,请她把明天见面的事儿缓一缓吧。”
「ふん」
“嗯。”
「ええやろ、それで」
“就这样好吗?”
「ふん」
“嗯。”
立っている幸子には、坐って下を向いている雪子の表情を、どうにも読み取りようがなかった。
雪子低头坐着,站着的幸子无论如何也看不清她脸上的表情。
Footnotes
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鑢:[名]棒状や板状の鋼鉄の面に、細かい溝を多数刻み付けて切り刃をつくった切削工具 ↩