梶井基次郎: 路上

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梶井基次郎: 路上
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first published:『青空』 1925年10月・通巻8号
audio: https://www.youtube.com/watch?v=1eYVBN74MPU&t=44s
desc: “我”曾和朋友一起发现了一条靠近悬崖的近路。在一个雨后的日子,我想从那道悬崖边回家,却因为路面泥泞湿滑,不断打滑、险些摔倒。我既不安地担心有没有人看到自己这副狼狈模样,可转念想到其实根本没人在看,又不由得感到一阵落寞

自分がその道を見つけたのはの花の咲く時分であった。

发现那条路,是在溲疏绽放的时节。

Eの停留所からでも帰ることができる。しかもM停留所からの距離とさして違わないという発見は大層自分を喜ばせた。変化を喜ぶ心と、も一つは友人の許へ行くのにMからだと大変大廻りになる電車が、Eからだと比較にならないほど近かったからだった。ある日の帰途気まぐれに自分はEで電車を降り、あらまし1の見当と思う方角へ歩いて見た。しばらく歩いているうちに、なんだか知っているような道へ出て来たわいと思った。気がついてみると、それはいつも自分がMの停留所へ歩いてゆく道へつながって行くところなのであった。小心翼々しょうしんよくよくと言ったようなその瞬間までの自分の歩き振りが非道く滑稽に思えた。そして自分は三度に二度というふうにその道を通るようになった。

从 E 站也能走回家,而且离 M 站并不远,这项发现令我喜不自胜。一来是因为我喜爱变化的心;二来,如果要到朋友家,从 M 站搭电车过去会绕一大段路,若是改从E站过去可就近多了。某天我回家的路上心血来潮,在 E 站下电车,试着朝我猜测的方位走。走了半晌,我感觉自己来到了熟悉的道路。仔细一看发现,它通往我平时走向 M 站的那条路。想到我在发现这件事之前,那小心翼翼的走路模样,就觉得滑稽至极。之后我每三次当中就会有两次走那条路。

Mも終点であったがこのEも終点であった。Eから乗るとTで乗換えをする。そのTへゆくまでがMからだとEからの二倍も三倍もの時間がかかるのであった。電車はEとTとの間を単線で往復している。のどかな線で、発車するまでの間を、車掌がその辺の子供と巫山戯ふざけていたり、ポールの向きを変えるのに子供達が引張らせてもらったりなどしている。事故などは少いでしょうと訊くと、いやこれで案外多いのです。往来を走っているのは割合い少いものですが、など車掌は言っていた。汽車のように枕木まくらぎの上にレールが並べてあって、踏切などをつけた、電車だけの道なのであった。

M 站算是终点站,而 E 站也是。从 E 站上车后,得在 T 站换乘。前往 T 站的这段路,若从 M 站上车,花的时间是从 E 站上车的两三倍。E 站与 T 站之间,电车只有单线往返。这条路线乘客不多,在发车前的这段时间,车长会与住在附近的孩子玩笑嬉闹,更换集电杆方向时,孩子们还要求动手拉。我问车长“这应该很少发生事故吧”​,结果他说“不,事故出奇地多呢,虽然它通过马路的情况很少”​。它像火车一样,是在枕木上架设铁轨,还设有平交道,是只有电车通行的道路。

窓からは線路に沿った家々の内部なかが見えた。破屋あばらやというのではないが、とりわけて見ようというような立派な家では勿論なかった。しかし人の家の内部というものにはなにか心惹かれる風情といったようなものが感じられる。窓から外を眺め勝ちな自分は、ある日その沿道に二本のうつぎを見つけた。

从车窗可以望见铁路沿线人家的屋内风光。虽然称不上是破屋,但当然也不是什么会特别让人想多看一眼的气派宅院。不过,住家的屋内风光,感觉似乎有什么吸引人的风情。常望向窗外的我,某天就从这条沿线上发现了两株溲疏。

自分は中学の時使った粗末な検索表と首っ引2で、その時分家の近くの原っぱや雑木林へ卯の花を捜しに行っていた。白い花の傍へ行っては検索表と照し合せて見る。箱根うつぎ、梅花うつぎ――似たようなものはあってもなかなか本物には打つからなかった。それがある日とうとう見つかった。一度見つかったとなるとあとからあとからと眼についた。そして花としての印象はむしろ平凡であった。――しかしその沿道で見た二本のうつぎには、やはり、風情と言ったものが感ぜられた。

我曾紧抱着一本国中时用的简陋生物检索表,到家附近的旷野和杂树林里找寻溲疏。来到白花旁,与生物检索表对照。箱根溲疏、梅花溲疏——虽然有类似的植物,但就是迟迟找不到真正的溲疏。某天可终于让我找到了。一旦发现,便接二连三出现眼前。这花给人的印象反而显得平凡无奇。——然而,我在沿线上发现的那两株溲疏,却令人感受到一股特别的风情。

ある日曜、訪ねて来た友人と市中へ出るのでいつもの阪を登った。

某个星期天,我和来访的友人一同前往市中心,所以走上平时惯走的坡道。

「ここを登りつめた空地ね、あすこから富士がよく見えたんだよ」と自分は言った。

“这条坡道的尽头有块空地,从那里可以清楚眺望富士山哦。​”我说。

富士がよく見えたのも立春までであった。午前は雪におおわれ陽に輝いた姿が丹沢山の上に見えていた。夕方になって陽がかなたへ傾くと、富士も丹沢山も一様の影絵を、あかねの空に写すのであった。

能清楚看见富士山,也只限于立春前。上午可以望见丹泽山山顶覆满白雪,在阳光下熠熠生辉。到了向晚时分,夕阳倾沉时,富士山和丹泽山都成了剪影画,映向暗红色的天空。

――吾々は「扇をさかさにした形」だとか「摺鉢すりばちを伏せたような形」だとかあまり富士の形ばかりを見過ぎている。あの広いすそ3を持ち、あの高さを持った富士の容積、高まりが想像でき、その実感が持てるようになったら、どうだろう――そんなことを念じながら日に何度も富士を見たがった、冬の頃の自分の、自然に対して持った情熱の激しさを、今は振り返るような気持であった。

——我们向来都说富士山是 “扇子倒过来的形状” 或是 “像研磨钵覆盖的形状”​,看的全是富士山的外形。拥有辽阔的山麓、高可参天的富士山,可以想象它的容积和高度,就此拥有真切的感受,如此一来会有什么不同呢?——我脑中想着这件事,一整天下来,多次想要欣赏富士山的风采。此刻我怀着一种回顾过往的心情,想起自己在寒冬时节对大自然抱持的热情。

(春先からの徴候が非道くなり、自分はこの頃病的に不活溌な気持を持てあましていたのだった。)

(从早春起,开始出现不吉利的征兆,我最近变得心情阴郁,近乎病态。​)

「あの辺が競馬場だ。家はこの方角だ」 

“那一带是赛马场。我家在那个方位。​”

自分は友人と肩を並べて、起伏した丘や、その間に頭を出している赤い屋根や、眼に立ってもくもくして来た緑の群落ぐんらくのパノラマに向き合っていた。 

我和友人并肩而立,面向高低起伏的山丘、坐落其中的红色屋顶,以及成群涌入眼前的翠绿环景。

「ここからあっちへ廻ってこの方向だ」と自分はEの停留所の方を指して言った。

“从这里绕往那边,就是这个方向。​”我指着 E 车站的方向。

「じゃあの崖を登って行って見ないか」

“要不要爬上那座山崖看看?​”

「行けそうだな」

“好像到得了。​”

自分達はそこからまた一段上の丘へ向かった。草の間に細く赤土が踏みならされてあって、道路では勿論なかった。そこを登って行った。木立には遮られてはいるが先ほどの処よりはもう少し高い眺望があった。先ほどの処の地続きは平にならされてテニスコートになっている。軟球を打ち合っている人があった。――路らしい路ではなかったがやはり近道だった。

我们从那里登上更高的山丘。草丛间被踩出一条平坦的红土小径,这当然不算是道路。我们顺着这条小径而上。虽然被树丛阻挡,但视野比刚才的地方更高更远。刚才那个地方的相邻处,地面已经铺平,成了一座网球场。有人正打着网球。——虽然这是一条不像道路的小径,但确实是条捷径。

「遠そうだね」

“好像很远呢。​”

「あそこに木がこんもり茂っているだろう。あの裏に隠れているんだ」

“那里不是树木生长茂密吗?就藏在那后面。​”

停留所はほとんど近くへ出る間際まで隠されていて見えなかった。またその辺りの地勢や人家の工合では、その近くに電車の終点があろうなどとはちょっと思えなくもあった。どこかほんとうの田舎じみた道の感じであった。

车站一直隐藏在树林中,直到来到附近才看得见。此外,从那附近的地势和住家的模样来看,让人一点都不觉得这附近有一座电车的终点站。感觉有点像是一条乡间小路。

――自分は変なところを歩いているようだ。どこか他国を歩いている感じだ。――街を歩いていて不図ふとそんな気持に捕らえられることがある。これからいつもの市中へ出てゆく自分だとは、ちょっと思えないような気持を、自分はかなりその道に馴れたあとまでも、またしても味わうのであった。

——我宛如走在某个奇怪的地方。像是漫步在异国。——走在街上,突然有这种感觉向我袭来。一点儿都不觉得接下来我将走向自己熟悉的市中心,尽管日后我对这条路已相当熟悉,但还是有这种感觉。

閑散な停留所。家々の内部の隙見える沿道。電車のなかで自分は友人に、

悄静的车站。可以望见住家屋内风光的铁路沿线。在电车上,我对友人说:

「旅情を感じないか」と言って見た。殻斗科かくとかの花や青葉の匂いに満された密度の濃い空気が、しばらく自分達を包んだ。――その日から自分はまた、その日の獲物だった崖からの近道を通うようになった。

“有没有感受到旅行的情趣呢?​”空气中满是山毛榉的花朵和绿叶的浓浓气味,将我们重重包围。——自从发现这条山崖的捷径后,从那天开始,我便都走这条捷径上下学。

それはある雨あがりの日のことであった。午後で、自分は学校の帰途であった。

那是某个下过雨的日子发生的事。午后我从学校踏上归途。

いつもの道から崖の近道へ這入った自分は、雨あがりで下の赤土がやわらかくなっていることに気がついた。人の足跡もついていないようなその路は歩くたび少しずつ滑った。

我从平时惯走的道路转进那条山崖的捷径,因为刚下过雨,我发现脚下的红土变得松软。这条没遗留任何脚印的小路,每走一步,就多一分湿滑。

高い方の見晴らしへ出た。それからが傾斜である。自分は少し危いぞと思った。 

我来到视野绝佳的高处。接下来是斜坡,我觉得有点危险。

傾斜についている路はもう一層軟かであった。しかし自分は引返そうとも、立留って考えようともしなかった。危ぶみながら下りてゆく。一と足下りかけた瞬間から、既に、自分はきっと滑って転ぶにちがいないと思った。――途端自分は足を滑らした。片手を泥についてしまった。しかしまだ本気にはなっていなかった。起きあがろうとすると、力を入れた足がまたずるずる滑って行った。今度は片ひじをつき、尻餅をつき、背中まで地面につけて、やっとその姿勢で身体は止った。止った所はもう一つの傾斜へ続く、ちょっと階段の踊り場のようになった所であった。自分は鞄を持った片手を、鞄のまま泥について恐る恐る立ち上った。――いつの間にか本気になっていた。

位于斜坡上的这条路更是松软。但我既不想折返,也不想停下脚步思考。我不安地走下斜坡。才往下走一步,我便认定自己一定会踩滑跌倒。——才刚想便脚下一滑,单手撑向泥泞中。但我不当一回事。我想起身,于是脚上使力,但双脚又是一滑。这次换手肘撑地,一屁股跌坐地上,连背部也抵向地面,就此以这个姿势停住。我停住的地方,地势就像是一处楼梯间,紧连另一处斜坡。我握着书包的那只手,就这样连同书包一起撑向泥泞,我战战兢兢地站起身。——我在不知不觉间认真起来。

誰かがどこかで見ていやしなかったかと、自分は眼の下の人家の方を見た。それらの人家から見れば、自分は高みの舞台で一人滑稽な芸当げいとうを一生懸命やっているように見えるにちがいなかった。――誰も見ていなかった。変な気持であった。

我心想,不知道有没有人站在某个地方看到我,我望向下方的住家。如果是这些人家看到了,肯定会以为我是在这高处的舞台,独自一人很认真地展开滑稽的演出。——完全没人看。感觉很奇怪。

自分の立ち上ったところはやや安全であった。しかし自分はまだ引返そうともしなかったし、立留って考えてみようともしなかった。泥に塗れたまままた危い一歩を踏み出そうとした。とっさの思いつきで、今度はスキーのようにして滑り下りてみようと思った。身体の重心さえ失わなかったら滑り切れるだろうと思った。びょうの打ってない靴の底はずるずる赤土の上を滑りはじめた。二間余りの間である。しかしその二間余りが尽きてしまった所は高い石崖の鼻であった。その下がテニスコートの平地になっている。崖は二間、それくらいであった。もし止まる余裕がなかったら惰力だりょくで自分は石垣から飛び下りなければならなかった。しかし飛び下りるあたりに石があるか、材木があるか、それはその石垣の出っ鼻まで行かねば知ることができなかった。非常な速さでその危険が頭に映じた。

我站起身的地方还算安全。但我仍不想折返,也不想停下脚步思考。在浑身泥泞的状态下,我想向前踏出危险的一步。我突然脑中闪过一个念头,想要像滑雪一样,一路往下溜。只要别失去平衡,应该可以一路溜到底。我那没装鞋钉的鞋底,开始在红土上滑行。滑了约四米,不过尽头处,正是高耸的石崖边缘。底下是网球场的平地。这石崖约莫就四米长。如果没能及时停下,我势必会在惯性下冲出石崖跌落。不过,跌落的地方到底是岩石还是木材,那也得来到石崖的前端才能知晓。危险以飞快的速度浮现在我脑中。

石垣の鼻のザラザラした肌で靴は自然に止った。それはなにかが止めてくれたという感じであった。全く自力を施す術はどこにもなかった。いくら危険を感じていても、滑るに任せ止まるに任せる外はなかったのだった。  

我的鞋子因石崖前端粗糙的表面而自然停下。感觉像是有某个东西让我停下。当时我完全无法有任何作为。不管感受到多大的危险场景,我也只能任凭滑行。

飛び下りる心構えをしていたすねはその緊張を弛めた。石垣の下にはコートのローラーが転がされてあった。自分はきょとん4とした。

因为已做好掉落的准备而紧绷的小腿,此时终于得以放松。石崖底下摆着一台压路机。我看了为之一惊。

どこかで見ていた人はなかったかと、また自分は見廻して見た。垂れ下った曇空の下に大きな邸の屋根が並んでいた。しかし廓寥かくりょうとして人影はなかった。あっけない気がした。嘲笑っていてもいい、誰かが自分の今たことを見ていてくれたらと思った。一瞬間前の鋭い心構えが悲しいものに思い返せるのであった。

我又开始环视四周,看有没有人在看我。低垂的乌云下,是一整排大宅院的屋顶。但不见半个人影,倍显寂寥。我觉得很无趣。心想,就算是嘲笑我也好,要是有人看到我刚才做的事就好了。先前那坚定的心理准备,现在回想起来,顿时变得可悲。

どうして引返そうとはしなかったのか。魅せられたように滑って来た自分が恐ろしかった。――破滅というものの一つの姿を見たような気がした。なるほどこんなにして滑って来るのだと思った。

为什么不想折返呢?我就像鬼迷心窍般,一路滑了下来,我对这样的自己感到可怕。——仿佛看到了毁灭的面相。同时心想,原来我是这样滑下来的。

下に降り立って、草の葉で手や洋服の泥を落しながら、自分は自分がひとりでに亢奮しているのを感じた。

我来到底下,以草叶擦去手上和衣服上的泥巴,自己一个人感到无比亢奋。

滑ったという今の出来事がなにか夢の中の出来事だったような気がした。変に覚えていなかった。傾斜へ出かかるまでの自分、不意に自分を引摺り込んだ危険、そして今の自分。それはなにか均衡のとれない不自然な連鎖であった。そんなことは起りはしなかったと否定するものがあれば自分も信じてしまいそうな気がした。

感觉刚才的滑行就像是梦里发生的事一样。怪的是,我已完全不复记忆。前往斜坡前的我、突然把我卷入其中的危险,以及此刻的我。那是某种失去平衡的不自然连锁反应。如果有人加以否认,说这种事根本没发生过,我可能也就相信了。

自分、自分の意識というもの、そして世界というものが、焦点を外れて泳ぎ出して行くような気持に自分は捕らえられた。笑っていてもかまわない。誰か見てはいなかったかしらと二度目にあたりを見廻したときの廓寥とした淋しさを自分は思い出した。

我、我的意识以及这个世界,仿佛全都失焦,往外头游了出去,我深深被这种感觉攫获。就算有人笑我也无妨。我想起自己第二次转头环视四周,确认有没有人在看我时,那心中的寂寥与落寞。

帰途、書かないではいられないと、自分は何故か深く思った。それが、滑ったことを書かねばいられないという気持か、小説を書くことによってこの自己を語らないではいられないという気持か、自分には判然はっきりしなかった。おそらくはその両方を思っていたのだった。

在返家的路上,不知为何,我深觉我非把它写下不可。那是很想将滑行的事写下的心情,还是想由写小说来陈述自我的心境呢?我自己也不明白。可能两者皆有吧。

帰って鞄を開けて見たら、どこから入ったのか、入りそうにも思えない泥の固りが一つ入っていて、本を汚していた。

回家后,我打开书包一看,有一团不知道从何而来,没道理会跑进书包里的泥巴,把书本都弄脏了。

Footnotes#

  1. あらまし:[名]前もって先のことをあれこれ考えること

  2. 首っ引き:[名]ずっと、ある一つの物と対して、それを放さないでいること

  3. 裾野:[名]山麓の緩やかな傾斜地

  4. きょとん:[副]びっくりしたり、事情がのみこめなかったりして、目を見開いてぼんやりしているさま

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永雏多氢菲
∴さて····どこへ行こうか?
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