谷崎潤一郎: 细雪(上) 二十六

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谷崎潤一郎: 细雪(上) 二十六
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first published:『中央公論』1943年1月号・3月号
audio: https://www.youtube.com/watch?v=7EDnjjsPcn0
desc: 在大阪船场坐拥百年老店、历史底蕴深厚的莳冈家,鹤子、幸子、雪子、妙子四姐妹交织出百态人情。小说如华美画卷,循着四季流转,细致描绘出昭和十年间关西上流社会的日常光景。

三女雪子是四姐妹中容貌最为出众之人,婚事却屡屡未果,年过三十依旧独身。幸子夫妇为此忧心不已、四处奔走,性格沉默寡言的雪子却对每一门亲事都无意应允,岁月便这般缓缓流逝。

ケフカモメデタツ」ユキコ

今日乘海鸥号动身 雪子

悦子は学校から帰って来ると、洋間に雛人形を飾るべく、母とお春に手伝って貰って雛段を組み立てていたが、そこへ待たれていたこの電報が届けられた。

悦子从学校一回来,就请妈妈和阿春帮着在客厅里搭架子,准备摆列偶人。这时,等待已久的这封电报送来了。

一般に、関西の雛の節句せっくは一と月おくれにする習慣で、本当はまだ一箇月早いのだけれども、四五日前に近日出て来ると云う雪子からの便りがあった時、たまたま妙子が悦子のために菊五郎1の道成寺の人形を拵えて来たので、幸子がふっと思いついて、

按照关西的习惯,女儿节一般要晚一个月,说起来离现在还有一个月。但是,四五天前,收到雪子来信说近几天要回家,而妙子凑巧为悦子做了一个菊五郎演的《道成寺》偶人。幸子突然想起说:

「悦ちゃん、この人形と一緒にお雛さん飾ろう。―――」と、云いだしたのであった。「―――お雛さんかて、姉ちゃんを歓迎したいやろさかいにな」

“小悦,这个偶人也和女儿节偶人摆在一起吧,我想偶人也欢迎二姨回来。”

「何で、お母ちゃん。お雛さんは来月やないの」

“怎么啦?妈妈,偶人节不是在下个月吗?”

「まだ桃の花が咲いてへんよ」と、妙子も云った。「季節外れにお雛さん出しといたら、女の子が縁遠くなる云うやないの」

“桃花还没开呢。”妙子也说,“不是说不按季节摆偶人女孩子就不容易找到婆家吗?”

「そうそう、子供の時分に、いつもお母ちゃんがそない云やはって、お節句が過ぎたら慌ててお雛さん直しやはったわなあ。けど、早う飾るのんは構めへんねん。後まで飾っとくのんが悪いのやわ」

“是的,是的,小时候老听我母亲这样说,过了节她就赶紧把偶人收起来。不过,早一点摆是不打紧的,过了节还摆着就不好了。”

「ふうん、そうか、そら知らなんだ」

“哦,原来是这样,我还不知道呢。”

「よう覚えとき。物識りのこいさんにも似合わんやないか」

“好好记住吧,你这可不像个万事通了。”

この家の雛と云うのは、昔悦子の初節句の時に京都の丸平2で作らせたもので、蘆屋へ移って来てからは、結局家族たちの団欒の部屋に使われている階下の応接間が、洋間ではあるけれどもそれを飾るのに一番適当だと云うことになって、毎年そこに雛段が組み立てられるのであった。で、幸子は半年ぶりに戻って来る雪子を喜ばすために、この行事を一箇月早めて、新暦の節句から一と月おくれの節句まで、一箇月の期間飾って置こう、多分雪子もその一箇月間ぐらいは滞在することになるであろう、と云い出したのであったが、その提案がれられて、新暦の三月三日と云う今日、飾り付けが始められたところなのであった。

这家的女儿节偶人,是悦子第一次过女儿节时在京都的丸平定制的,搬来芦屋以后,每年都在楼下合家团聚用的客厅里摆设偶人架,虽是西式房间,可是大家都认为那里最合适摆列偶人。幸子说为了使半年未回的雪子高兴,准备提前一个月,从阳历的节日起到阴历节日止摆列偶人一个月,她估计雪子会在这里待这么久。这个提议被采纳了,今天是阳历三月三日,便开始装饰起来了。

「ほうら、悦ちゃん、お母ちゃんの云うのんが当ったやろ」

“瞧,妈妈说中了吧?”

「ほんに、やっぱり今日やってんなあ」

“真的,二姨果然是今天来。”

「姉ちゃんお節句にやって来やはった。お雛さんと一緒やわ」

“你二姨赶来过节,和偶人一块儿来的。”

「縁起がよろしゅうございますわ」と、お春が云った。

“真是大吉大利呀!”阿春说。

「今度はお嫁に行くやろか」

“这回该做新娘了吧?”

「悦ちゃん、姉ちゃんの前でそれ云わんときなさいや」

“当着二姨的面你可不准说这些话!”

「ふん、ふん、分ってるよ、そんなこと」

“嗯,嗯,我知道哟,这点儿事。”

「ええか、お春どんも気イ付けなんだら、この前みたいなことになるで」

“知道就好。春丫头,你也得小心一点,别像上次那样。”

「は、分っとります」

“是,我知道了。”

「どうせ知れることやさかい、蔭で云うのんは構めへんけど、………」

“反正是大家都知道的事情,背地里说说倒没什么,可是……”

「は、………」

“是……”

「こいちゃんに電話かけんでもええ?」と、悦子が興奮した声で云った。

“可以给小姨打个电话吗?”悦子兴奋地问道。

「かけて参りましょか」

“我帮您拨吧?”阿春说。

「悦ちゃん、自分でかけなさい」

“你自己去打吧。”

「ふん」と云うと、悦子は電話口へ飛んで行って松濤しょうとうアパートを呼び出した。

“嗯。”悦子说完,飞也似的跑到电话前,接通了松涛公寓:

「………ふん、そうやねん、やっぱり今日やってん。………こいちゃん早う帰って来なさい。………『つばめ』やないねん、『かもめ』やねん。………大阪までお春が迎いに行くねん。………」

“……嗯,是的,果然是今天回……小姨你可得快点回来呀……不是‘燕子’号,是‘海鸥’号……阿春要到大阪去接……”

幸子は内裏雛だいりびな3女雛めびなの頭へ瓔珞ようらく4の附いた金冠を着せながら、悦子の甲高い声がひびいて来るのを聞いていたが、「悦ちゃん」と、電話口の方へ怒鳴った。

幸子正往大内偶人的皇后头上戴挂有璎珞的金冠,听见悦子尖锐的声音传来,向电话机那边大声喊道:

「―――こいさんになあ、暇やったら姉ちゃん迎いに行ったげ、云いなさい」

“你和小姨说,有空的话叫她去接二姨!”

「あのなあ、お母ちゃんがなあ、こいちゃん暇やったら迎いに行ったげなさいて。………ふん、ふん、………大阪九時頃やわ。………こいちゃん行く?………そんならお春どん行かんかてええなあ?………」

“喂,妈妈说了,您有空就请去接二姨……嗯嗯……大阪,九点钟。小姨去吗?……那么,阿春就不用去了吧?”

妙子には、大阪駅まで雪子を迎えに行ってやれと云う幸子の言葉の意味が、よく分っている筈であった。去年、富永の叔母が雪子を連れ戻しに来た時の話では、二三箇月後には妙子も東京へ呼び寄せると云うことであったのに、上京以来本家が引き続きごたごたして、なかなかそれどころではないので、ついあれなりになっており、お蔭で妙子は前より一層自由気儘な境遇に置かれているのであったが、それだけに、雪子に貧乏くじを抽かせて自分ひとり巧いことをしているような、済まない気がしていたので、義理にも出迎えぐらいしなければならぬ訳であった。

妙子应该非常清楚幸子让她去大阪站迎接雪子的用意。去年,富永姑母说好了,雪子回去两三个月后也要把妙子叫去。可是到了东京以后,本家一直忙乱不堪,根本顾不上妙子这一茬,就把这事搁下来了,妙子反而比以前更加自由自在了。妙子觉得有些对不起雪子,好像是她让雪姐触了霉头,自己一个人得了便宜,于情于理也应该去接接她。

「お父さんにもかけとこか」

“也给爸爸打个电话吗?”

「お父さんはええやないか、もう帰って来やはるわ」

“不用打了,他就要回来了。”

夕方帰宅した貞之助も、あれから半年過ぎた今日となっては、ひどく雪子をなつかしいものに感じ、一時にもせよ、彼女に戻って貰いたくないと思ったりしたことで、自分を責める気持にさえなっていた。そして、着いたら直ぐに風呂へ這入れるようにしておけとか、夕飯は汽車の食堂で済まして来るだろうかとか、きっと寝しなにもう一度何か食べるだろうとか、細かいことに気を遣って、彼女の好物の白葡萄酒しろぶどうしゅを二三本も出して来させて、手ずからびんの埃を払い、年数を調べなどした。悦子は、明日ゆっくり会えるのだからと、皆がすすめて、どうしても待っていると云って聴かないのを、漸く九時半頃にお春に云いつけて二階へ連れて行かせたが、間もなく表門のベルが鳴って、犬が其方へ走って行く足音を聞くと、

傍晚时分,贞之助回来了。一去半年,今天,他很想念雪子,回想起自己曾有一阵子不愿让她回来,甚至深感内疚。他体贴入微地吩咐女佣准备好洗澡水,让雪子回来后马上能入浴。他想到她在餐车上吃过晚餐了,一定要让她在临睡前再吃点什么。他叫人拿出两三瓶她喜欢的白葡萄酒,亲手揩掉灰尘,查看出产年份。大家都劝悦子先睡,明天有的是时间陪二姨,她说什么也不听,一定要等二姨,眼看已经九点半了,只好叫阿春把她领到楼上。不一会儿,她听见大门的电铃响了、狗向大门跑去,她叫道:

「あ、姉ちゃんや」と云って、又降りて来てしまった。

“啊!二姨!”说着冲下楼来。

「お帰り」

“你回来啦!”

「お帰りなさいませ」

“您回来了!”

「只今」

“我回来了。”

ジョニーが喜んで跳び着こうとするのを、「これッ」と云って制しながら玄関の土間に立った雪子は、衣裳鞄を持たせられて後から這入って来た妙子の、近頃ことに張り切っている血色に比べると、汽車の疲れで、顔に著しいやつ5を見せていた。

约翰尼高兴得直往雪子身上扑,她站在大门的土间,嗨的一声喝退它。跟着进来的是拎着衣箱的妙子,与近来精神百倍的妙子相比,由于旅途疲乏,雪子的脸色憔悴许多。

「お土産何処に這入ってるのん」と、悦子は早くも自分で鞄を開けて、中を調べ始めたが、一束の千代紙ちよがみとハンカチの箱とを直ぐ見つけ出した。

“给我的礼物搁哪儿了?”悦子说着早已自己打开箱子,在里面翻了起来,并马上发现了一束彩色手工纸和一盒手绢。

「悦ちゃんこの頃ハンカチの蒐集してるのんやてなあ」

“听说小悦最近在收集手绢。”

「ふん、有難う」

“嗯,谢谢!”

「まだもう一つあるわ、その下の方見て御覧。―――」

“还有一样东西呢,你看那下面。”

「あった、あった、これやろ」そう云って悦子は、銀座の阿波あわやの包紙に包んである箱を取り出したが、中から出て来たのは紅いエナメルの草履ぞうりであった。

“找到了,找到了,是这个吧?”悦子说着拿出来一个有“银座阿波屋”字样包装纸的盒子,里面是一双红色漆皮草屐。

「まあ、ええこと。穿き物は矢張東京やわなあ。―――」と、幸子もそれを手に取って見ながら、「これ、大事に直しといて、来月お花見に穿きなさいや」

“哟,真漂亮!木屐、草屐这些东西还是东京的好。”幸子拿在手里仔细瞧着,“这得好好收着,等下个月赏花的时候再穿。”

「ふん。いろいろ有難う、姉ちゃん」

“嗯,谢谢二姨!”

「何や、悦子のお待ち兼ねはお土産の方やったんか」

“怎么?你等得着急了,就是等这些礼物吗?”贞之助说。

「さあ、もうええやろ、これみんな二階へ持って行きなさい」

“好了,行了吧,把这些都拿上楼去吧。”

「今夜は姉ちゃんと一緒やで」

“今天晚上我和二姨一块儿睡。”

「分ってる、分ってる」と、幸子が云った。「姉ちゃん今からお風呂やさかい、先へ行ってお春どんと寝てなさい」

“知道了,知道了。”幸子说,“二姨现在要洗澡,你先上去和春丫头睡吧。”

「早う来てね、姉ちゃん、―――」

“快点来呀,二姨!”

雪子が風呂から上ったのは十二時近くであったが、それからひとしきり、貞之助と三人の姉妹とは応接間の煖炉にぱちぱちはねる薪の音を聞きながら、久しぶりに顔を揃えてチーズと白葡萄酒の小卓を囲んだ。

雪子洗完澡已将近十二点了。之后,时隔多日,贞之助和三姐妹重又聚集在客厅里,大家围着摆有白葡萄酒和干酪的桌子聊天,听着壁炉里熊熊燃烧的木柴噼啪作响。

「温いわなあ、此方は。―――さっき蘆屋の駅へ下りた時にやっぱり東京と違うなあ思うたわ」

“这里可暖和多了……刚才在芦屋站一下车,我就觉得这里和东京毕竟大不相同。”

「もう関西はお水取が始まってるさかいにな」

“关西的汲水节已经开始了。”

「そない違うか知らん」

“能差那么远吗?”

「えらい違いやわ。第一空気の肌触りが、こない柔かいことあれへん。何せ名物のからッ風がひどうて、―――二三日前にも、高嶋屋へ買い物に行って、帰りに外濠そとぼり線の通りへ出たら、さっと風が吹いて来て持ってる包吹き飛ばしてしもうて、それ追いかけて取ろうとすると、ころころと何処迄でも転こんで行くよってに、なかなか取られへんねん。そのうちに着物の裾が又さっとまくれそうになるのんで、片っ方の手でそれも押えてんならんし、ほんに、東京のからッ風云うたらやない思うたわ」

“差老远呢。首先,东京的风吹到脸上没有这样柔和。那出了名的干风可厉害呢……两三天前,我去高岛屋买东西,回来时走到外壕线 的大街上,突然一阵风把我手里拎的包给吹跑了,我赶紧去追,它骨碌骨碌地直滚,很不容易抓住。这时候下摆又要被风卷起来了,一只手还得摁着它。真的,东京的干风真是名不虚传!”

「しかし、僕は去年渋谷で厄介になった時にそう思うたが、子供云うもんは何でああ早う土地の言葉を覚えるねんやろ。―――あの時は十一月やよってに、まだ東京へ行って二三箇月しか立ってえへんのんに、本家の子達はもうちゃんと東京弁使うてるねんが。それも小さい子供ほど上手やねんで」

“去年到涩谷的时候,我曾经想过,小孩子为什么这么快就学会了东京话,那是十一月,他们到东京才两三个月,就能讲一口标准的东京话,而且越是小的讲得越地道。”

「もう姉ちゃんの年になったら、あかんやろなあ」と、幸子が云った。

“像姐姐那个岁数怕是学不好了吧?”幸子说。

「そらあかん。第一姉ちゃんは覚えよう云う気イないねんもん。この間もバスの中で大阪弁で話しかけるさかいに、外のお客がみんな姉ちゃんの顔見るのんで難儀したけど、姉ちゃん云うたら、ああ云うとこはえらい心臓やねんな。顔見られても平気で話してるねんわ。そしたら、それ聞いて、『大阪弁も悪くないもんだね』云うてる人もあったけど」

“那是不行。首先是姐姐不想学。前一阵子,她在公共汽车里讲大阪话,别的乘客都瞅着她,我都觉得难为情,但是,姐姐在这一点上真有勇气,别人瞪着她也满不在乎,照说不误。当时有人听着听着还说‘大阪话倒也不难听’。”

雪子は、「大阪弁も悪くないもんだね」と云う東京弁のアクセントを上手に真似た。

雪子这句“大阪话倒也不难听”是用东京腔说的,说得很地道。

「年増の女はみんな心臓や。僕の知ってる北の芸者で、これはもう四十以上の老妓ろうぎやねんけど、東京へ行って電車に乗ったら、わざと大阪弁で『降りまッせえ』と大きな声で云うてやりまんねん、そしたらきっと停めてくれはります云う女があるねんが」

“上了岁数的妇女都脸皮厚。我认识的一个城北的艺伎,已是四十多岁的老伎了。她说,她在东京坐电车,故意用大阪口音大声说‘下车’,这样一准能让车停下来。”

「輝雄ちゃんなんか、お母ちゃんは大阪弁を使うさかいに一緒に歩くのん御免や云うてますねん」

“辉雄说他不愿意跟妈妈一起走,因为妈妈讲大阪话。”

「子供はそうかも知れんな」

“孩子们也许都是那样。”

「姉ちゃんは旅にでも出てる気持やろか」と、妙子が云った。

“姐姐还觉得是在东京旅行吗?”妙子问。

「ふん、大阪と違うて、どんなことしても誰も何とも云うもんはあれへんし、気楽なとこもあるらしいねんわ。それに東京と云うとこは、女がめいめい個性を貴んで6、流行云うもんに囚われんと、何でも自分に似合うもんを着ると云う風やさかい、そう云う点は大阪よりもええ云うてるわ」

“嗯,和在大阪的时候不同,她在东京无论做什么也没人说三道四,似乎也轻松愉快一些。姐姐还说东京这地方,女性都注重个性,穿着不必赶时髦,只拣自己适合的穿,这一点也比大阪强。”

葡萄酒のせいもあるかも知れないが、雪子はさすがによくはしゃいで例になくおしゃべりをした。その様子には、口に出してこそ云わないけれども、半歳ぶりに関西の土地へ戻ることが出来たうれしさ、―――蘆屋の家の応接間に、こうして幸子や妙子たちと夜を更かしていられる嬉しさを、包みきれないものがあった。

也许是喝了葡萄酒的缘故,雪子也破例欢快地高谈阔论起来。看样子,她嘴上虽没有说,时隔半年能够重返关西的欢欣,能够在芦屋的客厅里和幸子、妙子一起待到深夜的喜悦,都毫无掩饰地流露出来了。

貞之助は、「もうそろそろ寝ようやないか」と云いながらも話が弾むので、又立って行って何本目かの薪をくべた。

“差不多该睡了吧?”贞之助虽这么说,只是谈得兴起时他又起身去添几根劈柴。

「そのうちに一遍、あたしも東京へ連れて行って貰おう思うてるけど、渋谷の家はえらい狭いのんやてなあ。一体いつ宿変えするのん」

“过些日子也带我到东京去一趟吧,不过,听说涩谷的住房太窄了,到底什么时候换房呢?”

「さあ、―――何も家捜してるような様子ないけど」

“哎……可不像在找房子的样子。”

「そんなら、せえへんつもりやろか」

“那是不打算搬了?”

「そうやないやろか。去年はこんなに狭かったらどうもならん云うて、宿変えするする云うてたけど、今年になったら、あんまりそんなこと云わんようになってしもてん。何や、兄さんも姉ちゃんも考が変ったらしいねんわ」

“大概是的,去年还经常说这么窄,实在不像话,要换房子什么的,可是今年却很少提了,姐夫、姐姐似乎都改变想法了。”

雪子はそう云って、意外なことを語り出した。―――これは自分の観察であって、姉ちゃん達夫婦の口からはっきりそうと聞かされた訳ではないのだけれども、もともと、夫婦があれほど離れるのを嫌がっていた大阪の土地を離れて、東京へ出る決心をした動機は、兄さんが出世慾を起したこと、―――そして又、その出世慾を起すに至った原因はと云えば、親子八人もの家族を抱えて亡父の遺産では食べて行けなくなったと云う、少し大袈裟に云えば生活難を感じ出したことにあるのだから、東京へ来た当座こそ、家の狭さをかこっていた7ものの、だんだん住み着いてみるにつれて、これでも辛抱出来なくはない、と云う気持になって来たのではあるまいか。それには何よりも、五十五円と云う家賃に誘惑されたのであろう。兄さんも姉ちゃんも、何しろこんな家だけれども家賃も安過ぎると、誰に言訳するともなく云い云いしていたが、そんなことを云っているうちに、いつかその安さに釣られて居すわる料簡りょうけん8になったのであろう。それと云うのが、大阪にいればこそ家名や格式を気にする理由もあるけれども、東京へ来てしまえば「蒔岡」などと云ったって知っている者はないのだから、下らない見えを張るよりは、少しでも財産を殖やすように心がけた方がよい、と云った風な実利主義に転向したとしても不思議はない。その証拠には、兄さんは今度支店長になって月給も上り、それだけ懐にも余裕を生じた筈なのであるが、万事が大阪時代から見ると締まり屋になった。姉ちゃんも兄さんの旨を含んで、驚くほど倹約になり、日々の台所の買い物なども眼に見えて始末をする。―――尤も、六人もの子供の食事をまかなうのだから、お菜一つ買うのにも頭を使うと使わないとでは随分な違いになる訳であるが、賤しいことを云えば、お惣菜そうざいの献立なども大阪時代とは変って来て、シチュウとか、ライスカレとか、薩摩汁さつまじるとか、なるべく一種類で、少しの材料で、大勢の者がお腹一杯食べられるような工夫をする。そんな風だから、牛肉と云ったって鋤焼すきやきなどはめったに食べられず、僅かに肉の切れっ端が一片か二片浮いているようなものばかりを食べさせられる。それでもたまに子供たちが一立て済んでから、大人たちだけ別な献立で、兄さんの相手をしながらゆっくり夕飯を楽しむ折があって、鯛は東京は駄目だとしても、赤身のお作りなどが食べられるのはまあそんな時だけであるが、それも実際は、兄さんのためと云うよりは、夫婦があたしに気がねして、いつも子供たちのお附合いばかりさせて置いては雪子ちゃんが可哀そうだから、と云うようなことであるらしい。―――

雪子说罢又道出了一件意外的事情。这是根据她自己的观察,姐姐姐夫倒没有明确地说过。他们俩原来十分不愿离开大阪,但终于下决心前往东京,起因于姐夫那向上爬的强烈欲望,而产生这种欲望的原因,是这个八口之家靠吃亡父的遗产已经混不下去了,夸张点儿说,他们开始感到生活困难了。刚到东京时,他们还抱怨房子狭窄,渐渐住习惯了,便觉得并非不能忍受。最重要的是被五十五元一月的房租诱惑了,虽不是向谁解释,姐夫也好、姐姐也好,他们经常念叨这栋房子虽然不理想,但是房租太便宜了。他们这样说着说着,不知不觉间便被这便宜俘虏了,所以也就改变了主意,愿意将就住下去了。住在大阪需要注意维护门望,讲究排场,而现在已来到东京,说“莳冈”也无人知晓,与其追求虚荣倒不如多花些心思使财产增值,转而实行这种实利主义也毫不足怪。其证据是,姐夫现在身为支行经理,薪水增加了,经济上当然也宽裕些了。可是,若用大阪时代的眼光去看,凡事他都成了吝啬鬼。连姐姐也心领神会,省吃俭用到了令人惊奇的程度,每天厨房里买的食物也明显地节省了。当然,要供六个孩子吃饭,哪怕是买一样菜,动不动脑子都有相当大的差别。说得难听一点,连家常菜单也和大阪时代不同了,每餐尽可能只做一种,如土豆炖牛肉、咖喱饭和豆酱杂烩之类,只用少数几种食材而能让一大家子吃个饱。就说牛肉吧,难得吃一次火锅,也只能让你见到一两片漂在表面上的便宜肉。偶尔孩子们先吃完了,大人们另外做几个菜,雪子这时才可以悠闲地陪着姐夫吃顿晚饭。尽管东京的鲷鱼不好吃,但是有红肉鱼的生鱼片,这也只有在这种时候才能吃上。这顿加餐说是为了姐夫,实际上是为了照顾雪子,夫妇俩顾虑雪子老陪着孩子们吃,怪可怜的。

「姉ちゃん等の様子見てたら、そうやないやろか云う気イするねん。………まあ、見てて御覧、あの家変れへんよってに」

“看到姐姐他们的样子,我感到他们也就那样了……哎,看着吧,那个家不会搬了。”

「ふうん、そうかなあ。東京へ行って、すっかり姉ちゃん等人生観が変ってしもたんかなあ」

“哦,原来是这样,到了东京,姐姐他们的人生观都改变了吗?”幸子说。

「そら、雪子ちゃんの観察が或は当ってるかも知れん」と、貞之助も云った。「東京へ移住したのを機会に、今迄みたいな虚栄心を捨てて大いに勤倹貯蓄ちょちく主義で行こう。―――兄さんやったらそんな考になるのんも無理のないとこやし、誰に聞かれても結構なことやないか。あの家かて、狭いことは狭いけど、辛抱しょう思えば出来んことはないさかいにな」

“哎,说不定雪子的观察是对的呢。”贞之助也说,“趁着移居东京的机会,抛弃从前的虚荣心,大力奉行勤俭储蓄主义——姐夫这样考虑也不是没有道理的,说给谁听也是件好事。那个屋子窄是窄,但是,要将就的话还可以凑合着住。”

「けど、そんならそうとはっきり云うたらええのんに、今でも時々、雪子ちゃんの部屋がないのんが不都合やなあ云うて、人の顔を見たら言訳するのんが可笑しゅうて、―――」

“不过,既然如此跟我讲清不就行了吗?可是到现在他们还经常跟别人解释,说什么‘雪子连房间都没有真不方便’,这不可笑吗?”

「まあ、人間云うもんはそう一遍にガラリ変ってしまう訳には行かんさかいに、多少は体裁も作るわいな」

“哎,人不会那样说变就全变了,所以多少也要装装门面。”

「うち、今にそんな狭いとこへ行かんならんのん?」と、妙子は自分に一番痛切なことを聞いた。

“我还要住到那么窄小的房子里去吗?”妙子问起了与自己利害攸关的事情。

「さあ、………こいさんが来たかて寝るとこも何もあれへんけど、………」

“呀……你去了连睡的地方也没有……”

「そしたら、まだ当分は大丈夫か知らん」

“那么说,暂时不去不打紧吧?”

「兎に角今のとこ、こいさんのことなんぞ忘れてるらしいわ」

“反正眼下他们把你的事儿忘了似的。”

「おい、もう寝よう。―――」煖炉棚の置時計が二時半を打ったので、貞之助がびっくりしたように立ち上った。「―――雪子ちゃんかて今日は疲れてるやろ」

“喂,该睡了。”壁炉架上的座钟打过两点半,贞之助仿佛吃了一惊,站起身来,“雪妹今天也累了。”

「見合いのことで相談があってんけど、ま、明日にするわな」

“本想跟你商量一下相亲的事情,那就算了,明天再说吧。”

雪子は幸子のそう云う言葉を聞き流して、先に二階へ上って行ったが、寝室に這入って見ると、悦子は枕もとのテーブルの上にさっきの土産物の数々を、―――阿波屋の草履の箱までも列べて眠っていた。その、スタンドの灯影ほかげの中にある安らかな寝顔を覗き込んだ時、彼女は又もう一度、この家へ戻って来られたことの嬉しさが込み上げて来るのを感じた。そして、悦子の寝台と、彼女の藁布団わらぶとんの寝床との間に落ち込んで正体もなくうたた寝をしているお春を、

雪子没搭理幸子说的话,先上楼去了。进寝室看时,悦子睡着了,她枕头旁边的桌子上,摆着刚才那些礼物,连阿波屋的草屐盒也摆在那儿。她凝视着台灯光影中悦子静谧的睡态,又一次感到回到这个家里来的愉悦涌上心头。阿春躺在悦子和她的铺位之间的地板上,早已沉沉入睡。

「お春どんお春どん」と、二三度揺り起して、漸く下へ降りて行かしてから眠りに就いた。

“春丫头!春丫头!”摇了两三次她才醒来。雪子让她下楼去了,自己这才就寝。

Footnotes#

  1. 菊五郎: 指第六代尾上菊五郎,大正以来风靡一世的歌舞伎名演员

  2. 丸平: 位于京都市中京区四条大道,是有名的偶人老店

  3. 内裏雛:[名]女儿节人偶的一种。仿照天皇、皇后形制制成的一对男女配对人偶

  4. 瓔珞:[名]珠玉を連ねた首飾りや腕輪

  5. 窶れ:[名]病気や心労でやつれること

  6. 貴ぶ:[動バ五(四)]価値あるものとして重んじる

  7. 喞つ:[動タ五(四)]心が満たされず、不平を言う

  8. 料簡:[名](スル) 考え

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永雏多氢菲
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