谷崎潤一郎: 细雪(上) 九

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谷崎潤一郎: 细雪(上) 九
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first published:『中央公論』1943年1月号・3月号
audio: https://www.youtube.com/watch?v=-gLrT0SQAio
desc: 在大阪船场坐拥百年老店、历史底蕴深厚的莳冈家,鹤子、幸子、雪子、妙子四姐妹交织出百态人情。小说如华美画卷,循着四季流转,细致描绘出昭和十年间关西上流社会的日常光景。

三女雪子是四姐妹中容貌最为出众之人,婚事却屡屡未果,年过三十依旧独身。幸子夫妇为此忧心不已、四处奔走,性格沉默寡言的雪子却对每一门亲事都无意应允,岁月便这般缓缓流逝。

「明日御都合がお悪いのでしたら、十六日は大変日がいのだそうですが、十六日にきめて戴く訳には参りませんでしょうか」―――幸子は先日、出しなに電話に掴まった時にそう云われて、しょうことなしに承知させられてしまったのであるが、「ではまあ行って見てもよい」と云う言葉を、どうにかこうにか雪子の口から引き出す迄にはそれから二日かかったことであった。

“如果明天不方便,听说十六号是个大吉日,就定在十六号怎么样?” 那天幸子出门前被井谷的电话缠得不能脱身,井谷这样催逼道,幸子无奈只得应承下来,整整两天费尽唇舌,才好不容易劝得雪子吐出一句话:“那就去看看也行。”

それも、井谷が双方をただ何となく招待すると云うかねての約束に従って、努めて見合いのような感じを起させないようにと云う条件附きで、当日時間は午後六時、場所はオリエンタルホテル、出席者は、主人側は井谷と井谷の二番目の弟の、大阪の鉄屋国分商店に勤めている村上房次郎夫妻、―――この房次郎が先方の瀬越なる人の旧友であるところから今度の話が持ち上った訳なので、これは是非とも当夜の会合かいごうに欠けてはならない顔であった。―――瀬越側は、当人一人と云うのも淋しいし、と云ってわざわざ国元くにもとから近親者を呼び寄せるべき場合ではないので、幸い瀬越の同郷の先輩で、房次郎の勤め先国分商店の常務をしている五十嵐いがらしと云う中老の紳士がいたのを、房次郎から頼んで介添かいぞえ役に出て貰うことにし、此方側は貞之助夫妻に雪子の三人で、主客八人と云うことになった。

而且,雪子还附加了一个条件,即井谷得遵从事先的约定,只是随意招待双方吃餐饭,尽量不使人产生相亲的感觉。时间定在当天下午六点,地点是东方饭店。出席者,东道主方面是井谷及其在大阪铁屋公司国分商店工作的二弟村上房次郎夫妇。房次郎是濑越的老朋友,这一次又是他牵线,当然是当晚聚会不可或缺的人物。濑越方面只他一人出席未免显得孤单,但这种场合也不宜特意到家乡去请近亲,幸好他有一位同乡长辈五十岚先生,在房次郎任职的那个国分商店任常务董事,便由房次郎邀请这位中老年绅士作陪。女方有贞之助夫妇加上雪子三人,主客共有八人。

その前の日、幸子は当日の頭髪あたまを拵えるために雪子と二人で井谷の美容院へ出かけたが、自分はセットだけのつもりなので、雪子を先にやらせて、番の来るのを待っていると、井谷がちょっと仕事の隙に這入って来て、

此前一日,幸子为第二天聚会要做个头发,便和雪子一起上井谷的美容院来了。她自己只打算做个发型,便让雪子先去烫头发。幸子正在等着轮号,井谷抽空走进来了。

「あの、―――」と、小声で云いながら彼女の顔の方へ腰をかがめた。「―――あの、実は奥さんにお願いがございますの」井谷はそう云って、耳元へ口を寄せて、「こんなこと、申し上げないでも無論お分りと存じますけれど、明日は何卒どうか奥さんは思いきり地味にお作りになって戴きたいんですの」

“我说……” 她小声说着弯腰贴近幸子的脸,“说实话吧,我对夫人有个请求。” 随后她凑近幸子耳边,“这事儿我不说您自然也知道,请您明天尽量穿素净一些。”

「ええ、それは分ってます」

“好,这我知道。”

と、幸子が云うのに押っ被せて、「でもちょっとぐらい地味にお作りになったんではいけませんのよ。ほんとうに、思いきり地味にして下さらなけりゃ。―――お嬢さんもお綺麗でいらっしゃいますけれど、何しろああ云う細面の淋しいお顔だちですから、奥さんとお並びになると一二割方御損ですわ。奥さんの方は又非常にぱっとした派手なお顔だちで、それでなくても人目につき易くっていらっしゃるから、どうか明日だけは、十も十五も老けてお見えになるようにして、精々お嬢さんを引き立ててお上げになって下さい。でないと、奥さんが附いておいでになったばかりに纏まるものも纏まらないでしまうなんてことが、ないとは限りませんからね」

井谷不让她说完便抢着说:“稍微素净些还不行,真的,要尽可能素净。当然,小姐也很漂亮,但是不知怎么的,脸有点儿长,又老是愁眉苦脸的,和夫人站在一起,就显得有几分逊色了。夫人面容又特别明朗艳丽,不怎么打扮也容易招人注意。所以明天无论如何您要显得老十岁、十五岁,还要请小姐尽量打扮得出众一些。不然的话,一桩本来有希望成功的亲事,只因有夫人陪伴,说不定又吹了。”

幸子はこう云う注意を受けるのは今度が始めてではなかった。今迄にも雪子の見合いに立ち会ったことは数回あるが、「あの姉さんの方は陽気で近代的だけれども、妹さんは少し内気で陰性に見える」とか、「あの姉さんの若々しい明るい顔があたり一杯にひろがって見えて、妹さんの顔の印象が消されてしまう」とか、よくそう云われたことがあり、中には「本家の姉さんだけ立ち会うて下すって御分家の姉さんは遠慮して戴きたい」などと云い入れる者さえあった。

幸子并非初次听到别人如此提醒她。至今为止,她曾有几次陪同雪子去相亲。有人说:“那姐姐明朗、时髦,而妹妹看上去有点腼腆、阴郁。” 还有人说:“那位姐姐面容青春靓丽,光照四座,妹妹与她相比就黯然失色了。” 有人甚至说:“只由本家的大姐陪她就行,请分家的二姐回避一下吧。”

幸子はそれを云われる度に、そんなことを云う人は雪子ちゃんの顔のよさが分らないのだ、なるほど私の顔のように陽性で賑かなのが、近代的と云うものかも知れないけれども、こう云う顔は近頃の世間にはザラにあるので、珍しくも何ともない、自分の妹のことを褒めるのはおかしいけれども、ほんとうの昔の箱入娘、荒い風にも当らないで育ったと云う感じの、弱々しいが楚々とした美しさを持った顔と云えば、先ずうちの雪子ちゃんなどの顔ではあるまいか、あの美しさが分ってくれて、是非ともああ云う人がほしいと云うのでなければ私の妹は上げられない、と、雪子のために大いに弁じたものであったが、

每当听到这样一些说法,幸子总会为雪子极力辩解,她说,说这些话的人是不会欣赏雪子的美。的确,像自己这种开朗的面容可说是现代型的,但有这种外貌的人近来多了去了,一点也不稀罕。也许夸赞自己的妹妹有点可笑,从前那种娇生惯养的大家闺秀,看上去弱不禁风,楚楚动人,我家雪子不就是这种风韵的美貌吗?如果不能领略雪子的美丽,不说非她不娶,自己绝不会把妹妹嫁给他。

でも本心は、さすがに優越感を抑え難いところもあって、「あたしが一緒やったら雪子ちゃんの邪魔することになるねんて」と、夫の貞之助の前でだけは幾らか誇らしげに云ったりした。貞之助も亦、「そんなら僕だけ附いて行ったげる。お前は遠慮しとき」と云ったり、「いかん、まだそれでもいかん。もっともっと地味に作らなんだら、又妹のお株を取る云われるがな」と、化粧や着附のやり直しをさせたりしながら、矢張内心はそう云う花やかな妻を持ったことに喜びを感じている様子が、幸子の眼にははっきりと見えた。

但是,她内心仍有难以抑制的优越感,不过,只是在丈夫贞之助面前,她才多少流露出来,她不无骄矜地说:“我陪雪子前去相亲,倒还妨碍了她呢。”贞之助也说:“那么我一个人陪她去得了,你还是回避回避吧。” 有时,贞之助要幸子再改一改衣着和化妆。他说:“不行!这样还是不行!不弄得再朴素一点,人家又会说你抢了妹妹的风头。” 可是,幸子清楚地看到,贞之助在为自己有这样如花似玉的妻子而沾沾自喜。

それで、幸子は、雪子の見合いに立ち会うのを差控えたことも一二度あったくらいであるが、大概の場合、本家の姉の代理としてどうしても出席しなければならないようにさせられたし、雪子がまた、中姉ちゃんが附いて来てくれなければ嫌だと云うことが多かったので、そんな時には、随分地味な拵えをして行くように努めはしたものの、日頃の衣裳持ち物が派手なものばかりであるから、そう云っても凡そ限度があって、 「あれでもまだいけない」と後になってから云われることがしばしばあった。

就为这事儿,幸子有一两次没有陪雪子去相亲。但是,作为本家大姐的代表,大多数场合幸子还是不得不出席,而且雪子也往往说二姐不陪她就不去。这种时候,幸子只有尽可能装扮得不那么惹眼,不过,她日常使用的衣着、饰物都很华丽,怎么换也有个限度,事后还是屡屡有人挑剔说:“这样还是不够素净。”

「………ええ、ええ、いつも皆さんにそない云われますのんで、よう分ってます。仰っしゃるまでものう、明日はほんまに地味にして行こう思うてましてん。………」

“……好,好,我常常听到大家这样说,我知道了。您不用再讲了,我明天一定穿朴素一些去……”

待合室には幸子が一人いただけで外には誰も聞いている者はなかったけれども、すぐ隣の室の間仕切に垂れているカーテンが絞ってあって、雪子がその部屋の椅子にかけつつ頭からドライアーを被せられている姿が、鏡に反射して二人の方へまともに見えていた。井谷のつもりでは、ドライアーを被っているから当人に聞える筈はないと思っているのらしいけれども、二人がしゃべっている様子は雪子の方にもよく見えていて、何を話しているのか知らんと、上眼づかいに、じっと此方にひとみえているらしいので、幸子は唇の動き工合からでも推量されはしないであろうかとハラハラした。

候客厅里,只有幸子一人,谁也不会听见她们谈话。但是,用以区隔相邻的美容室的帷幕却揭起来了,雪子正坐在那间房里,头上罩着烘发罩,通过镜子反射她能清楚地看见她俩的正面。井谷满以为雪子罩着烘发罩,听不见她们的谈话。可是,她俩交谈的情形,雪子却是一目了然。似乎雪子想知道她们在说什么,一直眼睛向上直勾勾地盯着她俩。幸子担心,雪子会不会根据口型推测出谈话的内容。

当日雪子は姉妹たちに手伝って貰って三時頃から拵えにかかったが、貞之助も事務所の方を早じまいにして帰って来て、化粧部屋に詰めると云う張り切り方であった。貞之助は着物の柄とか、着附とか、髪かたちなどに趣味を持っていて、女たちのそう云う光景を眺めることが好きなのであるが、一つにはこの連中が時間の観念を持たないことに毎度ながら懲りているので、午後六時と云う約束に遅れないように監督するためでもあった。

当天下午三点左右,姐妹俩开始帮雪子化妆,贞之助也提前从事务所赶回,一时间化妆室里竟有人满为患的感觉。贞之助对衣服的花色、搭配和发型之类都颇有兴趣,喜欢欣赏女人们梳妆打扮。另外,这几姐妹一贯缺乏时间观念,使他吃过不少苦头,今天晚上约定时间为六点,为免迟到,他也得在旁监督。

悦子は学校から帰ると鞄を応接間へ投げ出して置いて、上って来て、

悦子从学校回来,把书包往客厅里一扔就跑上楼来,冲进门就叫:

「今日は姉ちゃんお婿さんに会うのんやてなあ」と、勢込んで這入って来た。

“听说今天二姨去相女婿呀!”

幸子ははっとして、鏡の中の雪子の顔色が直ぐに変ったのを看て取りながら、さあらぬ体で、

幸子吓了一跳,瞧见镜中雪子的脸色骤变,她不动声色地问:

「そんなこと、誰に聞いたん」

“这事儿你听谁说的?”

「今朝お春どんに聞いたんよ。―――そうやろ、姉ちゃん」

“今天早晨听阿春说的呀!是吗,二姨?”

「違うがな」と、幸子が云った。「今日はお母ちゃんと姉ちゃんと、井谷さんに呼ばれてオリエンタルホテル御馳走になるねんが」

“不是。” 幸子说,“今天是井谷女士邀妈妈和二姨上东方饭店吃饭。”

「そうかて、お父さんも行くのんやないか」

“可是,爸爸怎么也去呢?”

「お父さんかて呼ばれてはるねん」

“也请了你爸爸呀。”

「悦ちゃん、下へ行ってらっしゃい」と、鏡を視つめたままの姿勢で雪子が云った。「―――下へ行って、お春どんにちょっと来るように云うて頂戴。悦ちゃんは上って来んかてよろしい。―――」

“小悦,你下楼去吧!”雪子对着镜子说,“下去叫春丫头来一下,你就不用上来了。”

いつもは彼方へ行きなさいと云ってもなかなか云うことを聴かないのであるが、雪子の語調に何かただならぬけはいを察して、「ふん」と云うと、悦子は出て行った。

平常雪子支使悦子走开,她并不怎么听的,今天她察觉雪子口气不同寻常,便 “嗯” 了一声乖乖地走开了。

そして程なく、「何ぞ御用で、―――」と、お春が恐る恐るふすまを開けてしきい1ぎわに手をついたが、悦子に何か聞かされたものと見えて、これも顔色を変えていた。その間に貞之助も妙子も、形勢険悪と見て早いこと姿を消してしまった。

不一会儿,阿春诚惶诚恐地推开隔扇,两手撑着门槛边伏身问道:“您有什么吩咐?” 看来,她已从悦子那里听见了一些风声,脸色也变了。一见形势不妙,这时贞之助和妙子也赶紧溜走了。

「お春どん、あんたお嬢ちゃんに、何ぞ今日のこと云うたんか」幸子は今日の見合いのことを女中達に話した覚えはないが、特に彼女達に知られないように気を付けていなかった越度はあるので、こうなって見ると、雪子の手前、自分がお春をただ2ねばならない責任を感じた。「なあお春どん、………」

“春丫头,今天的事情,你为什么对小姐说?” 幸子记得,今天相亲的事并未向女佣们说过,但是,自己也有过错,本不应让她们知道,却不小心走漏了风声。这样,幸子感到自己有责任当着雪子的面追究阿春。“你说呀!春丫头……”

「………」お春は下を向いたきり、「悪うございました」と云うことを恐縮した体つきで示した。

“……” 阿春低着头战战兢兢地说:“我错了。”

「あんた、お嬢ちゃんにいつ云うたん」

“你是什么时候对小姐说的?”

「今朝でございます。………」

“今天早晨。”

「何と思うて云うたん」

“为什么要跟她说?”

「………」

お春と云うのはまだやっと十八になる娘であったが、十五の時から奉公ほうこうに来、今では上女中かみじょちゅうを勤めているので、殆ど家族の一員のように親しまれていて、そのせいと云う訳でもないけれども、この女だけ初めからの呼び癖で、特別に「どん」附けにされていた。(悦子は「おはアどん」と云う愛称で呼び、時には「おはア」と呼び捨てにした)そして毎日、悦子が学校へ往復するのに、交通事故の多い阪神国道を越えなければならないので、必ず誰かが送り迎えをすることにきめてあったのが、大概お春の役になっていた。で、だんだん問い詰めて行くと、今朝学校へ送って行く路で悦子に話したらしいのであるが、平素へいそはひどく愛想のよい女であるのに、叱られると俄然がぜん気の毒なくらいしおれてしまうのが、余所目には却って可笑しみを誘った。

阿春是位刚满十八岁的姑娘,十五岁就来做用人,现在在内宅侍候,被当成家里人一样看待。当然,也不完全是这个原因,一开始因为顺口就只在她的名字后加个 “丫头”(悦子有时尊称她为 “阿春姐”,有时就直呼其名 “阿春”)。悦子每天上下学,都得穿过交通事故多发的阪神国道,必须要人护送,一般总是由阿春迎送。这样一步步盘问方才知道,阿春是今天早晨送悦子上学途中说的。平素阿春能说会道,受到责问后,竟然神色沮丧,显出一副可怜相,旁人看来反而觉得可笑。

「―――そら、あたしかて、この間からあんたのいてるとこで電話かけたりしたのんは、注意が足らなんだかも知れん。けどあの電話聞いてたら、なおのこと、今日は何もそない改まったことやない、ほん内証の集りや云うこと、あんたにも分ってる筈やろ。たとい又何であるにしたかて話してええことと悪いこととあるやないか。―――そんな、まだどうなるやら分りもせんこと子供に話す云うことあるかいな。―――あんた、いつから此処の家にいてるのん。昨日や今日奉公に来たんやあれへんのに、それぐらいのこと分らんのんかいな」

“哎,早几天我当着你们的面打电话,这也许是我的疏忽,不过,既然听到了那个电话,就更应该知道今天并不是正式的相亲,只是普通的聚会,而且不能对外人说。即使真有那么回事,不也有该说和不该说的么?何况这事情还没谱儿,能对小孩讲吗?你是什么时候来我家的?又不是初来乍到,这点儿事还不明白吗?”

「このことばかりやあれへん」と、今度は雪子が云った。「あんた一体いつも口数が多うて、云わんでもええことおしゃべりするのん、悪い癖やわ。………」

“不光是这一件事。” 这下雪子开腔了,“你总是多嘴多舌,不该说的也要说,真是坏毛病……”

二人に代る代る云われている間、聞えているのかいないのか分らないようにじーっとして、俯向いたまま身動きもしないでいたお春は、「もうええ彼方あっちへ行き」と云われてからもまだ暫く死んだようになっていたのが、「もう行きなさい」と二三度云われると、漸く聞き取れない程の微かな声で詑び言を云って立って行ったが、

她俩轮番说的话,阿春是否听进去了不得而知,她只是低着头跪在那里,动也不动。“好了,你可以走了。” 幸子说过这话之后,她还像死人一样动也不动,直到幸子说了两三遍 “你走吧”,她才用几乎听不见的声音赔了不是,起身走出去。

「いつも云われてる癖に、何と云うおしゃべりやろ」と、幸子はまだ機嫌の直らない雪子の顔色を窺い窺い云った。「やっぱり私が不注意やってんなあ。電話かけたりする時に何とかあの人等に分らんような云い方もあってんけど、まさか子供に教せたりするとは思てえへんよってに、………」

“经常劝导她也不顶用,还这样翻嘴弄舌!” 幸子说着,瞟了一眼尚未息怒的雪子,又说,“都怪我没注意。打电话的时候本可以说得隐晦一些,让她们听不懂。没想到她竟会讲给孩子听……”

「電話もそうやけど、この間からお春どんの聞いてるとこで見合いや何や云うて相談してたのん、気になってたんやわ」

“不只是电话,最近我们商量相亲什么的,都没有避开春丫头。我一直担心着这事儿。”

「そんなことあったか知らん」

“有这种事吗?”

「何遍もあったわ。―――話してるとこへ這入って来ると、その時は誰も止めるけれど、出て行ってまだドーアの外にいるのんに、大きな声で話しやはるよってに、あれ聞えてたに違いない思うててん」

“有好多次了。我们正说着话,她走进来了,这时候谁也不吭声了。可是,她刚走出去,人还在门外,我们这里又高谈阔论了,我想她一定听见了。”

そう云えば、先日から数回、いつも悦子が寝てしまってから、夜の十時過ぎ頃に、貞之助、幸子、雪子、時には妙子も加わって、応接間で今日の見合いのことについて相談したことがあり、そこへお春が時々飲み物などを運ぶのに、食堂を通って這入って来たが、その食堂と応接間の境界は三枚の引き戸になっていて、戸と戸の間が指が入れられる程いているところから、食堂にいると応接間の話声が可なりよく聞えるのであった。まして夜更けの静かな時は尚更であるから、余程小声で話さなければいけなかったのに、誰もその辺にあまり注意を払わなかったのは事実である。但し雪子だけは気が付いていたと云うなら、そうかも知れないが、今になってそれを云い出すくらいなら、あの時その場で注意してくれたらよかったものを、―――雪子ちゃんは地声が小さいのだから、あの時にしても殊更ことさら小声で話していたようには感じられなかったし、黙っていたんでは誰にも分りようはありはしない。全く、お春のようなおしゃべりも困るが、この人のようにいつも言葉数の足りないのも困ってしまう。―――と、幸子は思わずにはいられなかったが、それでも雪子が、「大きな声で話しやはる」と、敬語で云っているところを見ると、彼女の批難はもっぱら貞之助に向けられているのらしく、そしてあの時黙っていたのも貞之助に対する遠慮だと取れば、頷けないこともないのであった、実際貞之助の声は変によくとおる甲高い声なので、ああ云う場合一番人に聞かれ易いのであるから。

雪子所说的是,前几天有几次时过十点,悦子入睡后,贞之助、幸子和雪子,有时还有妙子,在客厅里商量今天相亲的事,阿春不时通过餐厅送饮料之类来客厅。餐厅与客厅之间用三张拉门区隔,拉门之间都有手指宽的缝隙,即使在餐厅里也能很清楚地听见客厅里的谈话。何况已是夜深人静,交谈时本应格外小声,可是,事实上谁都没注意到这一点。也许唯独雪子有此意识,不过,她何苦直到现在才说出来呢?当场提醒岂不更好?雪子说话素来轻柔,当时也并未使人觉得她在有意压低声音,她自己不说,谁也不会理会到她有这种戒心。的确,像阿春那样饶舌固然令人恼火,但像雪子这样成天闷声不响也够受的。尽管如此,幸子从雪子用敬语说 “高谈阔论” 来看,她的批评似乎是冲着贞之助去的,而且也不难理解当时雪子没有直说,是出自对贞之助的客气。事实上,贞之助的声音特别高亢,在那种场合最容易被人听见。

「雪子ちゃんそれに気イ付いてたのんやったら、あの時云うてくれたらよかったのんに、―――」

“你既然注意到了,当时提醒一下就好了。”

「まあ、これからあの人等の前でこう云う話せんようにしてほしいわ。あたしかて見合いするのんは嫌やないねん。………そのつどあの人等に、又今度もあかなんだのかいな思われるのんが辛いさかい………」急に雪子の声が鼻にかかって、涙が一滴鏡の面に影をきながら落ちた。

“唉,我希望以后再也不要当着她们说这些事儿!我并不讨厌去相亲……但是,每次让这些人认为这次又吹了,我很难受。” 雪子说着说着突然带有鼻音,幸子看见镜中雪子的脸上一滴晶莹的泪珠摇曳着坠下去了。

「そない云うけど、今迄かて先方から断られたのんは一つもあれへんねんで。―――なあ、雪子ちゃん知ってるやろ、いつも見合いの後で先方は是非に云うてくれはるねんけど、此方が気に入らんのんで、壊れてたんやないか」

“话虽这么说,但是至今为止,被男方拒绝的一次也没有。喏,雪子,你是知道的,对方总是请求许婚,只是我们觉得不中意才吹的。”

「けど、あの人等はそない思うてくれへんもん。今度もあかなんだ云うたら、あの人等きっと、又断られた思うやろうし、思わんまでもそんな噂云い触らすにきまったあるさかい………そやさかい………」

“不过,她们可不会这样想。假如这一次又不成功,她们一定会认为又是别人拒绝了我,她们即使不这样想,也一定会把这事情传出去……所以……”

「もうええ、ええ。その話止めといて。―――私等が悪かったよってに、これからきっとそないするわ。顔が壊れてしまうやないか」幸子は寄って行って顔を直してやろうと思ったが、今直ぐでは一層涙を誘い出しそうな懸念があるので差控えた。

“好了,好了,话就说到这里吧。都怪我们不好,以后一定照你说的做。脸上的妆没弄花吧?” 幸子想走近雪子给她补妆,又担心这样做反而会惹得雪子泪流不止,就停住了。

Footnotes#

  1. 閾: [名] 門戸の内外の区別のために下に敷く横木

  2. 糺す: [動サ五(四)] 物事の理非を明らかにする

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永雏多氢菲
∴さて····どこへ行こうか?
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